レビュー一覧

本ブログはゲームレビューを専門とするサイトである。
レビューは個人の主観による所が大きいため、レビュアーと趣味趣向が合う人でない限りは余り参考にならないものと思う点は留意されたい。
レビュー記事の更新ペースは1ヶ月に1本を予定(目標)しているが、場合により増減する事もある。あくまでも目安として欲しい。
なお、レビュー内のスクリーンショットは特別な記載がない限りは全て筆者が撮影したものである。
また、記事は誤字・脱字、ゲームのアップデートなどにより予告なく加筆・修正を行う場合がある。ご了承願いたい。

レビューの感想や意見交換などしたい場合には以下に送って頂けると非常に嬉しい。
また、一緒にレビューを書きたい(書いてみたい)という人も募集しているので、興味がある方は気軽に声をかけて欲しい。
本ブログ管理人のX(旧Twitter)
Game's WolvesのDiscordサーバー [Wolves Party]
・メール[contacts99wolves@gmail.com]

本ブログはビデオゲームのレビューのみをコンテンツとしているが、レビュー以外の話題に関してはYouTubeチャンネルにて取り扱う。
こちらは不定期の更新となってしまうためご了承頂きたい。


 

ARMORED CORE Ⅵ : FIRES OF RUBICON

アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ

アイドルマスター ポップリンクス

Assassin's Creed Origins

Assassin's Creed Valhalla

ASTRAL CHAIN

ABZÛ

嘘つき姫と盲目王子

ウマ娘 プリティーダービー

Echocalypse -緋紅の神約-

SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズ

SDガンダム バトルアライアンス

Elden Ring

大神

オクトパストラベラー

オクトパストラベラーⅡ

 

グランディア

Grand Theft Auto Ⅲ

絢爛舞踏祭

幻影異聞録♯FE

原神

こちら、母なる星より

Ghost of Tsushima

 

三國志13

三國志14

実況パワフルメジャーリーグ2009

シャドウハーツ

シャドウハーツⅡ

真・三国無双8

じんるいのみなさまへ

スターオーシャン ブルースフィア

Starlink : Battle for Atlas

聖剣伝説2

聖剣伝説3

聖剣伝説3 Trials of Mana

聖剣伝説 Echoes of Mana

聖剣伝説 Legend of Mana

SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE

ゼノブレイド

ゼノブレイド2

ゼノブレイド3

ゼノブレイドクロス

ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom

ゼルダの伝説 時のオカリナ

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス

ゼルダの伝説 Breath of the Wild

ゼルダ無双 厄災の黙示録

戦場のヴァルキュリア4

ZOIDS VS.Ⅲ

ZOIDS 邪神復活!~ジェノブレイカー編~

 

大貝獣物語

Dark Souls

Dark Souls Ⅲ

テイルズ オブ アライズ

テイルズ オブ ヴェスペリア

Death Stranding

DAEMON X MACHINA

Dorfromantik

TRIANGLE STRATEGY

ドラゴンクエスト モンスターズ テリーのワンダーランド

ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅

Dragon's Dogma

Dragon's Dogma Ⅱ

 

 

Harvestella

鋼の錬金術師 Mobile

Baldur’s Gate 3

百英雄伝 Rising

ファイアーエムブレム エンゲージ

ファイアーエムブレム ヒーローズ

ファイアーエムブレム 封印の剣

ファイアーエムブレム 風花雪月

ファイアーエムブレム無双 風花雪月

ファイナルファンタジーⅥ

ファイナルファンタジーXVI

ファイナルファンタジー クリスタルクロニクル

Fate/Samurai Remnant

FREDERICA

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントムストライカーズ

ポケットモンスター スカーレット/バイオレット

ポケットモンスター ソード/シールド

ポケモン レジェンズ アルセウス

星のカービィ スターアライズ

星のカービィ ディスカバリー

ホワイトライオン伝説 ピラミッドの彼方に

 

MAGLAM LOAD

マリオテニス ACE

Metal Gear Solid V : The Phantom Pain

モンスターハンター ストーリーズ2 ~破滅の翼~

モンスターハンター ライズ

 

妖怪ウォッチ4 ぼくらは同じ空を見上げている

よるのないくに2

 

ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~

ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~

ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術師と秘密の鍵~

ラストストーリー

リアセカイ

リバース:1999

LOOP8

ルーンファクトリー5

Red Dead Redemption 2

Lost Ember

ロックマンエグゼ

 

わるい王様とりっぱな勇者

【レビュー】Dragon's Dogma Ⅱ

その冒険は、英雄譚として刻まれる

Dragon's Dogma Ⅱ(以下、DD2)はCAPCOMより販売されたオープンワールド型のRPGタイトルだ。
オンライン専用タイトルも存在したが、純粋なナンバリングとしては10年以上のブランクがある。
モンスターハンターなどのRPG的要素が含まれるタイトルも存在するが、本格的なRPGタイトルは主戦場ではないだろう。
しかし、Dragon's Dogmaは日本ゲーム界の低迷期にオープンワールドに挑戦した作品でもあり、その作品がナンバリングタイトルとして帰ってくるのは嬉しい限りだ。

 

【PS5】ドラゴンズドグマ2

【PS5】ドラゴンズドグマ2

  • 発売日:2024/3/22
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

物語としての説得力は微妙だがライフシム世界としては魅力的だ

ヴェルムントという地域のメルヴェ村にてドラゴンに襲われて心臓を奪われる。そうして主人公は「覚者」という存在になった。
ヴェルムントでは覚者は世界に一人しか誕生せず「覚者王」として敬われる文化があるという。
しかし、長らく覚者が現れず空位時代を過ごす中で利権争いが起きるようになってしまい、その中で公妃派による手引きにより偽の覚者王が擁立されてしまう。
そんな状況を変えたい反公妃派の勢力がおり、その人物と協力して行動していくのが物語導入だ。

本作冒頭のチュートリアルデザインも丁寧に作られている。
プレイヤーキャラクターを選択あるいは作成するシーンもストーリーの延長として機能するようになっているのも良くできていているが、冒頭は牢獄から開始するため行動が制限されておりチュートリアルとして機能させやすいシチュエーションにもなっているのだ。

前作と同様にストーリーとしてもゲームプレイとしても特徴的なのは「従者ポーン」という存在となる。
「システム」の項でも後述するが、ポーンという仲間NPCが随伴する形で物語を進行していく事になるのが基本だ。
ポーンは移動・戦闘・クエストなどの様々なシチュエーションでヒントなどを喋りかけてくれるようになっている。
そのためシングルプレイのRPGでありながら、仲間と一緒に冒険してる感を味わいながらプレイできるように作られているのがストーリー進行における本作独自の色合いだ。

本作で特に知っておくべき内容についても記載したい。
それは本作が「ファンタジー世界ライフシム」のような志向性が強いという点だ。
ゲームプレイ部分にも大きく関わる内容となるが、ライフシム的な側面を強調しているために全体的に進行テンポや利便性を意図的に低くしている部分がある。
例えば、セーブが1つしかないためロードによって以前の状態に戻すことが困難な作りであったり、アップデートにより変更されたが再度ニューゲームを実行する事ができなかったりした。これに関しても「ライフシム(疑似的人生)」である事の強調だ。
そのため、曖昧な言い方だが”ゲームらしい体験”を強く求めている場合にはミスマッチになる可能性がある。
逆に言えば「ファンタジー世界での生活感ある冒険」という側面を体験したいのであれば期待に応えてくれるだろう。

ストーリー自体にももう少し触れたいが、メインとなるストーリーは説得力や納得感がやや欠けている。
例えば、主人公はヴェルムント世界においては正統な覚者王の資格のある唯一の存在であるハズなのだが、そんな主人公に対して反公妃派が依頼してくるクエストがそこらの傭兵や間者が受け持つような内容の危険なものになっているのだ。
もちろん、ゲームとして刺激がなければ面白くない事も理解できるのだが、失敗時の自組織の失脚に関して依頼者が考慮していないように感じられ浅薄に思えてしまう。
また、ネタバレとなるため詳細な記載は控えるが、終盤になると前作にもあったような展開が待ち受けている。
しかし、前作のような円環の物語が因果関係としてしっかりと作られた物語にはなり切れていないため、世界観・世界設定の理解はできるだろうが物語と言う単位での落とし込みまではできていない。
細かな部分にもなるがフルボイスでの会話であるにも関わらずセリフの自動送りがないのも地味に違和感がある。
と言うのも本作はライフシムという志向性を持った作品であり、そんな作品であるのにセリフをボタンを押して送る不自然さを残しているのは思想に一貫性が感じられない。
生活感や生きている感を出すためにもセリフは自動送りさせた方が良かっただろうし、最低限でもオプションがあるべきだ。

サブクエストは豊富になったがNPCのリアクションは物足りない

本作では多くのネームドNPCが登場する。
前作と比較してもNPCのサブクエストが非常に充実しているうえにNPCの存在感を示すためのNPC図鑑も用意されている。
しっかりとストーリーが用意されているのはもちろん、サブクエストが別のサブクエストと関連しているケースもあるなどの関連性が構築されているため充実したコンテンツになっている。
また、移動中には突発でランダム生成されたイベントが発生する事もあるなど、オープンワールドと言う環境を活かせる偶然性に重きを置いたデザインも見受けられる。
本作はライフシム的な側面が強調されており、こういった偶然性もそれを補強するものになっている。
とはいえ、ランダム生成イベントに関しては単純なものであるためちょっとしたタスク程度のものだと考えた方が良いだろう。

そこまでは良く出来ているのだが、広範なNPCのデザインは物足りなさが強い。
何故ならクエスト外でのNPCの対応が機械的であるためだ。
例えば、サブクエストの時には色々と経緯や思いを喋ってくれるのだが、ひとたびクエストが終わってしまうと同じセリフを喋るだけのマシーンと化してしまう。
このギャップの大きさがより機械的に感じる要因と言っても良いだろう。
そもそもNPCに話しかける事ができるようにしているにも関わらず、誰に話しかけても大したセリフを喋ってくれない事も同様だ。
その他にも特定のドレスコードでなければならない場所があるのだが、しっかりと基準を満たしているのに注意をするセリフが発せられプレイヤーを困惑させてしまうといったケースも存在する。
こういったNPCはとにかく物量が多くなってしまう事から作り込むのは大変なのは理解できるが、世界の生活感にも直結する要素でもあるためもう少し配慮して欲しかった部分だ。

 

システム

ここではゲームプレイに関わる要素について記載する。

 

キャラクタービルド

様々な個性を持ったジョブによって立ち回りが大きく異なる

プレイヤーキャラクターと仲間NPC従者ポーン(メインポーン)を一人ずつ作成、ビルドしてゲームプレイを行っていく事になる。
キャラクタークリエイトは単純な外見という意味合いに留めず、身長などの体格によって最大積載重量も変化するような仕組みになっている。
一見するとキャラクター作成方法によって不公平さが生まれてしまうゲームとしては問題ある仕組みだが、それは本作がファンタジー世界ライフシムとしての側面を強調しているがためにあえて採用しているものとなっている。

作ったキャラクターにはジョブが設定される。
ジョブは簡単に書けば剣士や魔法使いなどのキャラクターの戦闘における役割を設定する項目だ。
近接向きや遠距離向き、支援向きなどの特徴があるため、自身が行いたいジョブに応じてポーンは相対的に決定していき、偏った構成にならないようにパーティー編成を考えるのがベターだろう。

プレイヤー自身にもレベルの概念があるが、ジョブにも熟練度の概念が存在する。
ジョブが熟練していく事で新しいアクティブスキルやパッシブスキルを設定できるようになり、特にパッシブスキルに関しては他のジョブであっても付ける事が出来る。
様々なジョブをこなしていって、有用なスキル構成を考えるのも良いだろう。

もちろん、キャラクタービルドには装備類も含まれる。
装備品はジョブに応じたものしか装備不可であり、またいわゆる重ね着・ファッション装備のような「実際の装備と見た目の装備は別」という事が行えないため、見た目にもこだわりたい場合には工夫が必要となる。
特に頭装備を非表示化させることもできないため、装備によってはせっかく作ったキャラクターのご尊顔を拝めなくなってしまう。
この辺りもユーザビリティーよりもライフシム的な側面に準拠したデザインになっており、不便さはあるものの性能と見た目の両立をプレイヤーが工夫する楽しさでもある。

 

戦闘

非常に軽快で相変わらずユニークなアクションが強化されている

DD2はCAPCOMらしい制御性に優れたアクションによるモンスター攻略に重きを置いた戦闘が楽しめるのは大きなポジティブポイントだ。
更に前作の時点で実装されていたユニークな「掴む」を利用したアクションも健在である。
特に大型のモンスターの中には特定の部位が弱点である事も少なくないため、敵に掴まってよじ登り、弱点の部位に対して直接攻撃を仕掛けて大ダメージを与えられるなどの立ち回りの幅が用意されている。
一般にはアクション要素のあるゲームで大型モンスターと対峙すると足元ばかりを攻撃する事になりがちで、せっかくの体格が活かされないような事も多い。
それを解決する手段としても有効に働いている。

HPは前作と同じ仕様で被ダメージによってHPとは別に最大HPも削られる。
前作とは異なり削られた最大HPはキャンプや宿屋でしか回復せず、回復アイテムでは最大HPまでしか回復しなくなっているという変更もある。
また、プレイヤースキルだけで何とかなるという事を極力排除しており、防御や回避などの敵の攻撃を凌ぐ行動は特定のジョブが限られる。
つまり、攻撃によっては被ダメージが避けられないようなケースも存在するという事だ。
これらは回復手段として用意されている宿屋やキャンプと言った生活感や冒険感を演出させる要素達をプレイスキルが高まったとしても有効性を失わないものとして存在できるようにしているのではと思われる。

プレイヤーの攻撃手段は剣などによる近接攻撃の他にも弓や魔法による遠距離攻撃も存在する。
魔法には属性が設定されており、モンスターによっては苦手とする属性が存在するケースもあり、上手く活用する事で効率的な立ち回りが行いやすい。
例えば、空を飛ぶグリフィンは地上に降りてこないと有効な攻撃を行いにくく、相手に好き勝手に立ち回らせてしまうと攻撃機会が減少する事に繋がってしまう。
そんなグリフィンには炎属性を当てられれば体が炎上して落下してくるので、こちらの土俵で戦いやすくなるのだ。
それ以外にもユニークな立ち回りが行えるのは幻術師というジョブだ。
このジョブでは敵にのみ認識される幻の壁や床を生成する事ができたり、敵の攻撃を一手に引き受けられるデコイを生成したりと敵の挙動をハックするようなスキルで構成されている。
幻術師は火力に乏しくパーティー全体のDPSが落ちてしまうため結果としては効率的とは言えないが、プレイヤーの工夫次第で敵を手玉に取るようなゲームプレイができる非常に珍しい個性的な体験ができるだろう。

戦闘において気になる点があるとすればザコ敵のバリエーションの少なさだ。
道中に一番多い頻度で遭遇する小型・中型のザコ敵達も新鮮に感じられる最初のうちは楽しめるが、ゲームプレイに慣れてくればそうではなくなるのは想像に難くない。
これは多くのゲームで共通する事だが、本作の場合には土地が変わっても同じような敵ばかりで構成されているため、ゲームを進めても進めても最初に食べた味と同じ料理を出され続けてしまうのだ。
詳しくは後述するが徒歩以外の移動手段に乏しい本作においては、道中が楽しい事が望ましいがそれが実現できているとは言い難い。
そのためプレイを重ねていく事でしんどさも増してきてしまうだろう。

困った挙動も散見される

敵の攻撃は困った挙動も見受けられる。
特に困るのが敵が攻撃モーションに入ってからターゲットが切り替わるような挙動をするケースがある事だ。
画像を確認して頂ければわかるかと思うが、明らかにこちらを向いてない状態から、正面への飛び掛かりモーションが真横に近い角度で出ている。
もっと見て頂ければモンスターの正面に別のキャラクターがいる事も確認できるだろう。
つまり、元々はそちらをターゲットしていたのではないかと思うのだが、モーションの予備動作をそのままにプレイヤー側に飛び掛かっているのである。
これは流石に予見するのは困難だ。このような行動がまかり通るようではリスク管理を行うことは難しく、プレイヤーの行動を萎縮させかねない。

 

ポーン

攻略を強力に手助けしてくれる仲間NPCポーンが主軸だ

DD2のメインコンテンツと言えるのが従者である「ポーン」だ。
ポーンのイメージしやすい立ち位置は仲間NPCで、自律的に行動してモンスターに攻撃したり、回復を行ったりしてくれるような存在である。
しかし、ただの仲間NPCの域を脱しているのは「ポーンは他プレイヤーの世界で経験を積み、そこで得た情報をプレイヤーにフィードバックできる」という点である。
ポーンはモンスターを倒したり、クエストをクリアする事で経験を積んでいく事が出来る。
そういった経験を得た他プレイヤーのポーンを雇う事で攻略を行いやすくする事が出来るように作られているのだ。

もちろんポーンは自身がクリエイトするメインポーンも同様の事が可能だ。
自身のメインポーンもモンスターやクエストの攻略情報を蓄積して、他プレイヤーの攻略の手助けになるほか、他プレイヤーが自分のポーンを雇った際に行った行動によって攻略情報を逆輸入してくれるような事もある。
このような他プレイヤーとの緩い繋がりを用いているのが本シリーズの特徴であり、それを仲間NPCが攻略の援助と言う形でフィードバックしてくれるのはユニークだ。

このポーンは最大で2名雇う事が可能で、自身のメインポーンも含めて4人パーティーになる。
ポーンにもプレイヤーと同様にジョブが設定されているため、パーティーのバランスを考慮して雇うべきだろう。
例えば、遠距離ジョブに偏ってしまうと敵に近寄られた際の対処が行いにくくなってしまう。

メインコンテンツでもあるポーンだが、このポーンには問題ある仕組みも導入されている。
それは「竜憑き」と言われる稀にポーンが発症する病の事だ。
竜憑きはオンライン上で貸し出しなどが行われた際に低確率で感染するものとされ、潜伏期間があり初期症状としてはポーンは言動や見た目に変化が表れ始める。
これを野放しにしていると街のNPCを大量殺害に至ってしまう事になると言う。
筆者自身はこの竜憑きに遭遇した事はないという上で記載するが、この竜憑きの仕組みはお世辞にも良いとは言えない仕様だ。
まず顕在化する問題として被害が大きすぎるという点が挙げられる。
本作のNPCは希少な専用アイテムを用いる事で復活させることが可能だが、プレイヤーにそういった手間を強いる事になる。
そしてそれがモンスターの襲撃のようなイベントではなく、メインコンテンツであるポーンが行ってしまうのは問題だ。
何故ならメインコンテンツでもあるポーンを利用する事をプレイヤーが委縮してしまう切っ掛けに繋がってしまう可能性があるためだ。
本作の固有の面白さ出すコンテンツであるにも関わらず、それを行いたくない気持ちにさせてしまうのは本末転倒だ。
開発意図としてはそれも含めた偶然性や一回性のライフシム(人生というドラマ)として機能させたいのだろうが、実際にはプレイヤー側には手間と委縮を与えているだけに過ぎない。
プレイヤーに体験して欲しい内容を実現するために余りにも愚直な手段を採用してしまっている。
開発側の意図は汲み取れるだけに、それが機能不全を起こしているのは苦しい部分だ。
なお、この竜憑きに関してはアップデートにより感染が見分けやすく、また感染しにくく調整が行われたようだ。

 

フィールド

フィールドは完全なシームレスに

DD2のフィールドは完全なシームレスなオープンワールドになっている。
フィールド上には中継地点となるようなキャンプ場所が用意されている。
キャンプは旅を演出する要素としての機能はもちろんだが、夜を明かして最大HPも完全に回復できる恩恵も存在する。
特に夜は形骸的な存在ではなく本当に暗く視認性が悪いため積極的に活用したくなるだろう。
そのため基本的なゲームプレイサイクルも「移動→キャンプ→目的地→移動…」というサイクルによって構築されており、旅・冒険を中心とした「ファンタジー世界ライフシム」としてプレイして欲しいという意図が汲み取れるものとなっている。

フィールド上にはモンスターが跋扈しているが、そのモンスターが市街に迷い込んで暴れまわるような事もある。
場合によっては大型のモンスターが入り込むような事もあり、戦闘が長期化したりするとNPCが死亡してしまう可能性もある。
人々の生活圏とモンスターの生態圏が地続きになっているリアル志向な表現だと言えるだろう。

フィールドはシームレスなだけではなく広さに関しても前作よりも広くなったが、ライフシム的な側面を強調したためか移動に関しては前作よりも不便になっている。
まずファストトラベルに関してだが、前作と同じようにファストトラベルを行うためには専用アイテムが必要となる。
しかし、前作と異なりファストトラベル用のアイテムが消費アイテムに変更されている。店売りもされているのだが、かなりの高額であるためホイホイとは買えないものになっている。
更にこれまた前作と同様だが、ファストトラベルを行うためにはファストトラベル先となる目印アイテムを配置する必要がある。
このアイテムは入手が困難な作中で最も希少なアイテムの1つといっても過言ではないものだ。
そのため既知の拠点の再訪が難しいものになっており、それが長距離になると厳しさがより際立ったものとなる。
このような状況を補うために牛車という安価な移動手段が用意されているが、こちらは電車のようなもので行き先が固定であり、結局は徒歩に頼る必要がある。
また、牛車はモンスター襲われる確率が非常に高く、筆者が試した範囲内ではまず間違いなく道中に襲われた。
その上、相手が悪いと牛車を破壊されてしまうため、残りの距離を徒歩で行く必要があるなど移動手段としては欠陥が多いものになっている。

しかし、ここまでの話だけでは問題であると言えるものではない。
どういう事かというと「移動が楽しいなら問題にならない」からである。
だが、残念ながらその本質となる部分もやや影が落ちている。
確かに本作では道中にも小規模ダンジョンがそれなりに用意されており、ダンジョン内では装備品が見つかるなどの嬉しいリワードもある。
問題になるのは積載量となる所持重量制限が存在するという点だ。
所持重量は前作と同様だが段階的に設けられており、重くなればなるほどに徐々に移動速度が遅くなる仕組みになっている。
そのため多くの荷物を持ち過ぎれば苦しい移動がもっと苦しくなってしまうのだ。
もちろん、仲間NPCであるポーンに荷物を預けてパーティー全体で負荷分散を行えばある程度の重量には耐えられるが、ポーンに所持している荷物を渡す際に複数選択が行えないうえなどの制限や手間が多い。
そのため「重くなると面倒だから探索は最低限に控えたいな…」という心理になってしまうケースが生じる事も無理はない。

移動とは多くのゲームにおいて必ず必要な行為であり、重量制限にしても、ポーンを活用した負荷分散にしても「旅情」という本作の一貫したライフシムの側面だ。
だが、本作が用いている数々の手法はプレイヤーに強制的に時間を使わせる事を強いる”時間強盗”であり、ゲームを慣れていくほどにストレスになっていくだろう。
最初こそ未知の旅路を歩くことに面白さを見出せるものの、ゲームに慣れてきたり既知の土地に行く必要がでてきたりする事によって無意味さが増してしまうのだ。
実現したいコンセプトは痛い程に伝わるが、それを実現する手法が余りにも愚直過ぎるような気がしてならない。
どうにかコンセプトとプレイアビリティを共に納得できる折衷的な落としどころを見つける事は出来なかったのだろうか。

モンスター同士が争っている事も

ライフシムとしてのファンタジー世界を表現しているDD2の世界ではモンスター同士が争っている事もある。
モンスター達が「プレイヤーを邪魔するだけの機械」として表現されていないため、モンスターと言う存在もまた世界の厚みとして機能している。

キャンプは旅を演出するが、もう少し作り込みが欲しい

既に簡単には記述しているが、フィールド上では野営でキャンプをして休憩する事ができる。
キャンプを行った際には狩った動物などから手に入れた肉などを使って食事を行いステータスにバフを付けられる。
何よりも夜を明かせるのは本作においてはありがたい。
多くのゲームにおいては「夜」といっても視認性はある程度はあるものだが、本作の場合には夜は本当に暗い。
それを解決する手段としても活用したいが、周囲のクリアリングが甘いと寝ている最中に敵襲にあってキャンプ用品が壊されてしまうような事もある。
寝る際には注意が必要だ。

「戦闘」の項で述べた通り前作では最大HPを回復アイテムで回復可能だったが、本作では最大HPを回復するには宿屋かキャンプで休憩する必要がある。
しかし、宿屋の料金も高額とは言わないがバカにできない金額であり、基本的にはキャンプで野営して回復するのが基本になるようにデザインされている。

キャンプは本作のコンセプトである旅情を強く感じさせる要素として機能するが、もう少し作り込みが欲しいと感じるものでもある。
キャンプではポーン達と一緒に休憩するが、全員が全く同じ棒立ちならぬ棒座りでくつろいでいる姿はかなり奇妙な光景なのだ。
旅情もポーンも本作のメインコンテンツであり、そうであるならばもっと作り込みが欲しい。
座っている者、踊っている者、歌っている者、焚き火の番をしているものなどポーンの個性に応じた複数の行動を行って欲しいのだ。
肝心な部分が蔑ろにされているようで非常に勿体ない。

 

グラフィック

美麗に描写された自然と人々

フィールドは草原から森林地帯、荒地の岩山などいくつかのシチュエーションを用意している。
ビジュアル自体は非常に美しく、また前述しているが前作と同じく夜をしっかりと暗く表現しているのも素晴らしい。
そこらに生えている草木に関しては炎によって燃やすことが可能だが、葉先から徐々に燃えていくような表現がされているなどの細かい表現も見受けられる。

キャラクターのアニメーションに関しても細かく作り込まれている。
例えば、階段の昇り降りがしっかりと専用モーションになっていたり、仲間のポーンに対して行う指示出しも自分とポーンとの位置関係によって変化する。
それ以外にも雨天などのシチュエーション別のモーションも作られている。
色々と作り込まれている事には目を見張るのだが、困ったものも存在する。
それは勝利エモートだ。
勝利後にポーンの近くに寄ると一緒に勝利を喜ぶエモートが発生するのだが、最初こそ「おお!こんなものも用意しているのか」と感動するものの、勝利エモートに移行してしまうと途中キャンセルが行えないためプレイを重ねるにつれて邪魔に思えてしまうのだ。
勝利後にポーンの近くに寄ると強制的に発生し、ジョブにもよるが戦闘後にはモンスターの近くにポーンがいる事は少なくない。
モンスターの素材を得ようとモンスターに近寄ろうとしたら、その近くにいたポーンと解除不可の勝利エモートが発生するのは地味にストレスになってしまう。

映像面で気になるのはNPCが描画されるのが、プレイヤーが近くを通った時である事だ。
筆者はPS5の環境でプレイしたが、全体のフレームレートこそ多くの場面で安定しており総じて問題は起きなかった。
しかし、NPCが非常に多い場所では30FPSを明確に切ったような瞬間がたまにあり、近くに行かなければ描画しないようにしているために安定性が実現できているのだろう。
バランスが難しい所だが、色々な部分でプレイフィールを不便にしてまで生活感を感じさせるライフシムを重んじている本作でNPCがヌッっと表示されるのは違和感に繋がる。

痒い所に手が届かないがフォトモードがある

やや簡易的だがフォトモードも存在する。
とはいえ、軸をズラして撮る事ができないなど細かい操作が行えず、こだわったアングルでのスクリーンショットは難しい。

実写映像を使うという荒業

キャンプでは肉を焼くなどの料理が行えるが、なんと実写が使用されている。
現代では余りないような手法であるだけに少し驚くかも知れない。
しかも、ディティールの凝った料理という訳ではないワイルドなリブを焼くだけのシーンを実写映像にしている。
確かにこのシーンのためだけにわざわざ高精細な肉の3Dモデルを起こすよりは、実際に肉を購入して焼くシーンを録画した方が安価で済むうえに効果的な映像が作れるのかも知れない。

 

サウンド

大型モンスターとの戦いでは形成有利になるとBGMが変化するなどの大型タイトルには採用例が多いインタラクティブミュージックが主体である。

一緒に行動するのが基本となるポーンのボイスパターンは前作よりは多くなっているが
しかし、それでもパターンとしてはまだまだ少ないと言わざるを得ない。
ポーンを雇うとき、ポーンに話しかけるとき、ポーンから助言を受けるときなどなど、シチュエーション毎のセリフはあるのだが肝心の喋る内容に変わり映えがない。
ポーンは本作の個性を象徴する存在であるため、もう少し個性といった違いが感じられるものである事が望ましい。

 

総評

Dragon's Dogma Ⅱはファンタジー世界で旅と冒険をするライフシムを全体を通して一貫して、そしてストレートに表現したRPGだ。

しかし、プレイヤーに体験して欲しい「ファンタジー世界ライフシム」という内容に余りにも愚直にアプローチした結果として不便さが際立ってしまっている。
そのため、あらゆる体験が新鮮に感じられる最初のうちは感動が勝るものの、ゲームに慣れてくる頃になるとゲーム側から強要される不便さが目立ちストレスが上回ってくるだろう。
この愚直なアプローチの数々は意図は痛いほど伝わるものの開発側の独り善がりの域を脱しておらず、ライフシム的な側面を可能な限り維持しつつユーザビリティーを高める折衷案をもう少し検討しても良かったように感じられる。

口を開けばネガティブな部分ばかりを取り上げたくなってしまう本作だが、それでも全体を通してみれば非常に良くできた面白いゲームである事も事実として忘れてはならない。
個性ある戦闘やポーンの仕組みはもちろんだが、嘘をつかない事による不便さによって表現されているライフシムとしての部分も「まさにそれが体験したい」という人にとっては最高の一作になるハズだ。

 

外部記事

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー。ポーンのコンセプトは“親の顔が見たい”。前作のプレイ感を踏襲しつつ覚者とポーンの冒険はグッと厚みが増した【TGS2023】 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

[TGS2023]ファンタジー世界のシミュレータを目指して――「ドラゴンズドグマ 2」開発者インタビュー

[インタビュー]「ドラゴンズドグマ 2」が目指すのは,プレイヤーごとに体験が異なる「人に話したくなるゲーム」

『ドラゴンズドグマ 2』ではポーンが“嘘レンタル”されるとの報告。“偽プレイヤー”に借りられ、異界から帰還するポーンたち - AUTOMATON

実在しているかのようなファンタジー世界をゲームで表現したい 『ドラゴンズドグマ 2』開発者インタビュー

進化したAIや新要素「キャンプ」など『ドラゴンズドグマ 2』ディレクターインタビュー

【独占】『ドラゴンズドグマ 2』ディレクターインタビュー! 目指したのは、NPCと三角関係になれるほどに徹底的に作り込まれた異世界転生シミュレーター

開発者インタビュー:『ドラゴンズドグマ 2』の濃密な世界は、「冒険の価値」とは何かを追求して生まれた

『ドラゴンズドグマ 2』開発者インタビュー:スフィンクスへの拘り - YouTube

『ドラゴンズドグマ 2』キャラクリインタビュー:スキルに依らない理想の造形を実現できることを第一に - YouTube

『ドラゴンズドグマ 2』開発者インタビュー:“友達”に進化したポーンシステム - YouTube

『ドラゴンズドグマ 2』ディレクターインタビュー:制作裏に込められた伊津野英昭のこだわり - YouTube

『ドラゴンズドグマ 2』クリエイターインタビュー:世界観構築の裏側 - YouTube

『ドラゴンズドグマ 2』伊津野D&平林Pインタビュー。一歩歩けば何かが起こる、絶対に退屈させないオープンワールドは“前作の不完全燃焼”から生まれた - AUTOMATON

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー:「ポーン」の開発エピソードを聞いてきた

『ドラゴンズドグマ 2』インタビュー。ストーリーの自由度やジョブの種類、オンライン要素はどうなる? - 電撃オンライン

「ドラゴンズドグマ 2」インプレッション&インタビュー - GAME Watch

【レビュー】Dragon's Dogma

和製オープンワールド型ファンタジーの意欲作

Dragon's Dogma(以下、DD)は日本ゲーム業界の暗黒期に生まれたオープンワールド型のRPGだ。
当時としては大型タイトルの開発規模肥大化が始まっており、それに上手く順応できなかった日本メーカーは大きく苦戦していた時代であった。
例えば、「JRPG」という用語にしても現代ではおおよそジャンルに近いような扱われ方をしているが、かつては「進化に乏しい旧態依然のゲーム」というニュアンスが強かった用語だ。

本作がJRPG的な文脈かと言うと議論は出そうだが、そんな時代の中で日本がオープンワールドを採用するという意欲を感じさせた本作を今回はレビューしたい。
なお、今回は拡張版「Dark Arisen」を内包したリマスター版をベースとしたレビューとなる。

 

ドラゴンズドグマ:ダークアリズン -Switch

ドラゴンズドグマ:ダークアリズン -Switch

  • 発売日:2019/4/25
  • メディア:Video Game
ドラゴンズドグマ:ダークアリズン - PS4

ドラゴンズドグマ:ダークアリズン - PS4

  • 発売日:2017/10/5
  • メディア:Video Game
ドラゴンズドグマ:ダークアリズン - PS3

ドラゴンズドグマ:ダークアリズン - PS3

  • 発売日:2013/4/25
  • メディア:Video Game
ドラゴンズドグマ - PS3

ドラゴンズドグマ - PS3

  • 発売日:2012/5/24
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

厳しいご時世だよな

漁村で暮らしていた主人公は目覚めたドラゴンによって心臓を奪われ「覚者」という存在になってしまう。
自身の心臓を取り返すのがメインの物語となる。
本作で特徴的なのは主人公である覚者とそれに付き従う従者ポーンが必ずいる状態で冒険を進めていく点だ。
ポーンは移動中、戦闘中、クエスト中にもプレイヤーに喋りかけてくれ、情報を既に知っている場合にはヒントを喋ったりする事もある。
ソロプレイながらも、仲間と一緒に旅をしている感を演出するものになっている。
また、メインやサブの各クエストはマーカーがしっかりと設定されているのでクリアするハードルもそう高いものではないハズだ。

海外のRPGの潮流を取り入れたタイトルだが、ストーリーや会話はかなり淡白なものだ。
政治劇もしっかりと存在するが会話内容がやや一足飛びであり、ある程度の脳内補完を行えば説得力としては問題ないが、ストーリーとしては淡白な印象になってしまうだろう。
また、そこらを歩いている余り重要ではないようなNPCは全員が同じセリフを喋るうえに、中核を担うコンテンツでもあるポーンのボイスパターンも多くない。
そのため、設定や会話を重点的に楽しみにしている場合には肩透かしになってしまうだろう。
本作はあくまでもゲームプレイが主役になっている作品なのだ。

とはいえ、本作独自の世界観を用いた円環的なストーリーになっているのはユニークだ。
メインのストーリーを進めていき、本作の世界の成り立ちなどを知れば「なるほど。あれはそういう事だったのか!」「これがそうなるのか!」という納得感のある展開が用意されているのはストーリー部分の長所となるだろう。

 

システム

当時の和製作品としては意欲的なオープンワールドの採用

当時の日本としては先鋭的なオープンワールドを採用した作品となっている。
例えば同時期・同系統の海外産RPGであるThe Elder Scrollsなどの影響もふんだんに感じ取る事ができるところが多い。
これらも自分の土俵を捨てて戦おうとしている所を見るに、海外産ゲームへの日本メーカーのコンプレックスだと受け取る事も可能だろう。
そのため辛辣な書き方をしてしまえば二番煎じのような立ち位置であり、先駆していた海外産RPGと比較を行ってしまうと広さに対しての密度に関しては物足りなさが感じられるのが正直なところである。
現にゲームクリアまでの時間は当時の標準的な水準から考えても短く、内容としてもクリア後の周回プレイが用意あるいは推奨されているデザインになっている。

一応、システム的な部分を記載しておけば移動では移動速度が装備や持ち物の重量によって変わるため持ち過ぎは厳禁である。
この移動速度の変化は段階的に設けられているため「最大積載量を超えなければ良い」というものではない。
これは一見すれば面倒な仕様でもあるが、海外産RPGにも採用される事があるようなロールプレイおよびライフシム的な側面が表現されているのはもちろん、後述する「ポーン」というパーティーメンバーに荷物を渡して負荷分散を行う事が推奨されているデザインとしても機能している。
可能な限り不要な資材は手元のインベントリではなくアイテムボックスに置いて、重量を軽くする事で移動が軽快な戦闘が行いやすい。
回収可能なアイテムはフィールド上の敵やアイテムとなるが、基本的にはこれらは回復アイテムの調合素材であったり、装備品の強化素材であったりとなっている。
むしろ、それ以外の用途は薄いため、コレクション・観賞用のアイテムなどはない。
なお、敵やアイテムのリポップ頻度は高めだ。

フィールド関連での問題点を挙げるとするならばファストトラベルのアクセス性と機能性の悪さだ。
DDのファストトラベルは専用アイテムを使う必要があり、場所を移動したいがために専用アイテムを使用する必要がある。
そのアイテムは使用しても無くなる訳ではないが単純に「マップから直接」ではなく「インベントリを開いて、該当アイテムを選択して…」というアクセスが面倒なのである。
また、ファストトラベル先の場所は「プレイヤーが別の専用アイテムを配置した場所」というマーキング形式でのファストトラベルが基本となる。
ファストトラベル先となる別の専用アイテムも無尽蔵に手軽に入手できるものではないため、ファストトラベル可能な行き先が実質的に限られている作りにしているのだ。
これはゲーム内世界における移動の重要性を伝えるための世界表現としての不便さではあると理解はできるのだが、既知の場所に気軽に再訪できないのは億劫だ。
ランダム生成クエストを筆頭に移動中にユニークなイベントなどが用意されており、移動自体が楽しめるものに昇華されていれば問題ないのだが、残念ながら移動はかなり作業に近く時間を無理矢理使わされている印象が濃い。
この移動の不便さに関しては海外産RPGに代表されるオープンワールドほどの広さではない事が幸いになっているとも言えるだろう。
とはいえ、この水増しされた億劫さによってゲームボリュームの割には濃い体験が実現されている側面がある事も事実である。

キャラクタービルドではジョブの選択が大切だ

本作ではキャラクタークリエイトを行う事になるが、作成するのはプレイヤーだけではなく後述する重要な要素「ポーン」という仲間NPCも作成する事になる。
ポーンは端的に言えば自律的に行動してくれる仲間キャラクターの事だ。

このキャラクタービルドではジョブを選択する事になる。
キャラクターの扱える攻撃手段はこのジョブによって変化するため、自分が行いたい立ち回りに応じたジョブを選択するのが良いだろう。
また、ポーンのジョブも選択する事になるためパーティーのバランスを鑑みておいた方が良いだろう。
ジョブは後から変更も可能なので軽い気持ちで選択しても問題ないが、余りにもコロコロと変えていると器用貧乏化しかねないので注意しておくべきだろう。

仲間NPCである「ポーン」は本作の主軸だ

本作を単純な海外産RPGの後発模倣品の域を脱し、固有の個性を付けている要素が「ポーン」だ。
既に何度か書いてしまっているが、わかりやすい書き方をするのであれば仲間NPCの事である。
プレイヤーは1人のメインポーンを召喚する事が可能で、メインポーンに関しては前述の通りキャラクタークリエイトで見た目などを設定する事が可能となる。
そして「メイン」があるという事は、そうではないポーンも存在する。
それは別プレイヤーが作成したポーンを拝借する事が可能なのだ。
もちろん、自分が作成したポーンを他プレイヤーが呼び出すケースもある。
これにより自身が作成したメインポーン、別プレイヤーが作成したポーンで合計3名を連れて戦闘をする事が可能になる。
連れ歩くことによるデメリットは全くないため、余程の縛りプレイで、なおかつ本作の本質的な面白さを体験する気がないような非常に風変わりな趣向でもない限りは3人を連れ歩いておくのが無難だ。
また、ポーンを含めたパーティー構成は各キャラクターのジョブとの兼ね合いを考えておくのが望ましい。
例えば、全員が魔法使いのようなジョブで構成してしまうと、敵を引き付けてくれるキャラクターに欠けてしまうため戦況が崩れやすい。

ここまでの情報ではよくある仲間NPCの域を出ないが、ポーンの最大の特徴は「知識を増やしていける」という点である。
どういう事かというとモンスターと戦ったり、クエストを攻略したりする事でその情報を蓄積していくのだ。
これが何に活用できるかというと例えば他プレイヤーに貸し出された時がわかりやすい。
例えば、自分が他プレイヤーのポーンを拝借したとしよう。
その借りたポーンがモンスターやクエストの攻略情報を有していれば、クリアするための助言をしてくれるのである。
また、自身のメインポーンが他プレイヤーに貸し出された先で未知の情報を仕入れてくることもあり得るようになっている。
このポーンという存在を介した他プレイヤーとの間接的なコミュニケーションと情報の蓄積が本作のユニークな仕組みになっている。

とはいえ、ポーンは基本的には自分と同じレベルのポーンを雇うしかなく、そうなると攻略の進捗状況も必然的に同程度とも想定されるため、本当に有用な情報が得られるような仕組みにできているのかは疑問がある構造にはなっている。
もしも本作がもっと横の広がりを持ったゲームとしてデザインされているのであれば有用性は高かったが、メインストーリーはリニアな作りであるため進捗がレベルと比例しやすい。
仕組み自体は面白いだけに、もっとこの仕組みが活かされるゲーム構造を構築して欲しかった部分だろう。

「掴む」というユニークな手段をベースとした戦闘

オープンワールド型のARPGとしてはアクション要素が多めである事も本作の個性となっている。
一般にも採用されるような地上戦だけではなく、ジャンプ攻撃なども存在する。
また、ファンタジーらしくキャラクターの魔法による攻撃も可能である。
魔法は近接攻撃と比較すると非常に派手さがあり面白いが発動するまでに時間がかかるためパーティー構成が悪いと攻撃ができないので注意した方が良いだろう。
しかし、魔法はいわゆるMPのようなポイント消費する行動ではないため何度でも使用が可能なので戦闘において気兼ねなく全力で戦いやすい。

HPの仕様も一般のソレと少し異なり被ダメージによってHPとは別に最大HPも削られる。
回復の魔法も存在するのだが、回復魔法では削られた最大HPの分までしか回復は行えないのだ。
魔法は何度でも使用可能と前述したが、何度でも使える魔法では回復できる量が限られてしまうという事である。
そのため、回復役さえいれば宿屋で休まなくても安心という訳ではない。
最大HPまで回復するには回復アイテムか宿屋で休む必要があり、それらの役割がしっかりと生み出されている作りにしている。

戦闘のメカニクスで最も個性的なのは「掴む」というアクションがある事だ。
掴むでは物を掴んで投擲し攻撃の手段にしたり、小型や人型の敵を羽交い絞めにして仲間で袋にしたり、あるいは大型の敵に掴まってよじ登って攻撃するなど多彩な方法が楽しめる。
大型の敵の中には体の上部に弱点部位があるようなケースも少なくないため、よじ登って弱点を叩くような使い方をする事になる。
特にこの手のアクションゲームにおいては遠距離攻撃ならまだしも近接主体となると、せっかくの巨体を相手にしていても攻撃するのは足元ばかりになったりと体格の割には地味な光景になる事が少なくない。
それをよじ登る事によって巨体ならではの攻略法を設けているのは見事だ。
また、スキルの中にも高所に飛び移りやすいものが用意されていたり、掴むアクションを活用したサブクエストがあったりとお膳立てもされている。
そして物を掴む、敵を掴む、大型の敵によじ登るという少し珍しいアクションを全く同じ1つの操作で利用可能にしてわかりやすくまとめている点も素晴らしい。

 

Dark Arisen

Dark Arisen

Dark Arisenは追加要素が加わった拡張版に当たる。
Dark Arisenでは黒呪島という新規マップに加えて、エンドコンテンツらしい装備品などの入手が可能となる。
もちろん、新規のモンスターなども登場するため本編よりも歯応えを感じる戦闘が楽しめるだろう。

 

グラフィック

かなりの頑張りを感じるディティー

海外産RPG程のディティールには流石に及ばないものの、当時のJRPGの水準から考えれば非常に健闘したものになっている。
印象的なのは夜で、本当に暗いのだ。
多くの場合には夜と言っても周囲がある程度見渡せる程度には明るいものだが、本作では遠くが全く見えないくらいには暗い。
そのため、明かりを確保するか、素直に宿屋で一泊してしまうのが賢明だ。
しっかりと昼と夜の立ち位置の違いを表現しているのはむしろ珍しいパターンだ。

動きの面としてはキャラクターの会話などにおけるリアクションモーションがややチープだが、カプコンらしくアクション部分はしっかりと手応えを感じるモーションが作り込まれている。
ゲームのメインコンテンツはやはりバトルになるので、しっかりと力を入れるべき場所にリソースを注いでいる印象だ。

 

サウンド

本作の楽曲は作曲家が同様であるためだがモンスターハンターのような雰囲気を感じさせるようなBGMが印象的だ。

ボイスに関してはDark Arisenから日本語化に対応している。
しかし、キャラクタークリエイトで使用できるボイスにはピッチを変更しただけと思われる高音・低音の使い分けもあり、やや不自然に感じるのは気になるところだ。

 

総評

Dragon's Dogmaは海外産RPG的な文脈を踏襲しながらも物語や世界の成り立ちよりもゲームプレイに比重を置いている点において和製らしさが感じられる意欲作だ。

当時の日本メーカーとしては希少なオープンワールド型のRPGを採用しており、様々な面で海外産RPGの模倣が見て取れるが、それらに関しては見劣りするのが正直なところである。
しかし、従者ポーンを主軸とするオンラインを介した間接的なコミュニケーションによる相互的な攻略を促し、巨大な相手によじ登って攻撃ができるなどの意欲的なメカニクスが独特な個性を醸し出し、単純な海外産RPGの模倣品の域を脱している事も事実だ。

物語は補完込みでの説得力はあるがあくまでもゲームプレイが主体であり、全体的に非常にあっさり味で濃密な設定や会話などを期待する場合にはミスマッチになってしまうだろう。

 

外部記事

ドラゴンズドグマ 発売記念サウンドスタッフインタビュー! Vol.1

『ドラゴンズドグマ:ダークアリズン』開発スタッフインタビュー【完全版】 - ファミ通.com

ポーンを使った遊びこそが「Dragon's Dogma」の原点であり一番表現したかったこと――ディレクター 伊津野英昭氏へのインタビューを掲載

「ドラゴンズドグマ:ダークアリズン OST」発売記念インタビュー。コンポーザーの牧野忠義氏を直撃! 牧野氏自ら5.1chのサラウンドミックスまで手がけた楽曲を収録。本人による楽曲解説、サントラプレゼントも! - GAME Watch

【レビュー】Grand Theft Auto Ⅲ

偉大なるレガシーゲーム

Grand Theft Auto Ⅲ(以下、GTA3)は世界において良い面でも悪い面でもゲーム業界を問わずに多大な影響与えた作品である。

トップビュー視点でのゲームプレイだった前作までと打って変わって、フル3D・シームレス・オブジェクト密度を兼ね備えた作品へと進化した。
とは言え、クライムアクションという作品が大きく目立った結果としてビデオゲーム全体が社会問題としても取り上げられるきっかけともなってしまった。

本作は色々な方向で歴史を築いたGTA3をレビューしたい。
なお、今回はリマスター版でのレビューとなる。

 

 

ストーリー

淡々とした裏社会シム

主人公であるクロードは集団犯罪を行うも仲間に裏切られて警察に逮捕されてしまう。
その後、刑務所へと護送されてる最中にギャング組織の手引きによって脱走に成功する。
その際に一緒に脱走したマフィアグループから仕事を斡旋されるようになり、それらの仕事がきっかけとなっていき徐々に大きな裏の犯罪集団と関係を持つ事になる。
なお、本編においてはクロードという名前は明かされておらず、いわゆる無個性型の主人公として描いている。そのため、名前の初出は後作のGTA:SAである。

作中には様々なマフィア組織が登場するが、それらはステレオタイプな描かれ方をしている傾向が強く、物語としても裏社会ものにありそうな人間ドラマの部分も薄い。
そのため、ストーリーとしては古めのB級マフィア/ヤクザ映画にありそうなシチュエーションの部分だけを寄せ集めたようなイメージを持つと良いだろう。

このストーリーの舞台となるのは”リバティーシティー”と言われる架空の都市で、モチーフはニューヨーク周辺となっている。
これはマップの外観・全体像を見てもなんとなく感じ取れるだろう。
前述の話でお察しの通りかと思うが、このリバティーシティーには多くのマフィアやギャングが縄張りを持っており非常に治安が悪い。
この辺りの主人公の設定や土地柄の設定はクライムアクションが前提となっているのが理由として大きいと思われる。

ストーリーでは会話などが演技も含めてかなりアッサリとしており、終始「○○で××が△△しやがった。ケジメをつける必要がある。ヤツらを始末するんだ。」程度だ。
良く言えばテンポが良いが、悪く言うとドラマとしてはチープに感じられてしまうだろう。

選択肢こそ多いが、攻略はシーケンシャル

ストーリーのミッションはプレイヤーが行える選択肢の割にシーケンシャルなプレイを強要されてしまう。
車で逃亡する相手の車を事前に壊そうものなら「○○に気付かれた!」などの微妙な理由で失敗になってしまう。
ゲームにおける「自由度」という曖昧な概念を広げた本作ではあるが、ストーリーの進行方法自体はレガシーな構造のままとなっているのだ。
せっかくシームレスな空間があるのであれば「気が付かれない時の攻略方法」「気が付かれた時の攻略方法」などマルチなアプローチが出来るようにしておくべきだっただろう。
本作では攻略法・進行方法は思ったよりも固定的なので困惑したり、理不尽にすら感じる事もあるかも知れない。
なお、これは後のGTAシリーズでも同様の問題が継続している。

 

システム

画期的だったオープンワールド型クライムアクション

GTA3はオープンワールドという概念とクライムアクションを世界に浸透させた歴史的なタイトルだ。

オープンワールドは広いフィールドをシームレスに表現した概念であり、当時としてはロードによる切り替えを挟まずに驚くほどの広さを表現しながら、オブジェクトの密度も両立させるという部分に衝撃を受けたプレイヤーも多いハズである。
とは言え、近年のものと比べると流石にフィールドはそこまで広くないので、今から始めて遊ぶというプレイヤーからするとその驚きは伝わりにくい部分だろう。
なお、オープンワールドというのは後付けされた名前であり、この当時には特にこの概念に名前は付いていなかった。
このシームレスなフィールドには随所にコレクションアイテムが隠されていたりと探索要素もあるため、能動的に街中を歩き回る理由も設定されている。
このコレクションアイテムは、集めると自宅前に武器などが配置されるようになり、無料で武器を入手できるので可能な限りは取得しておくのが好ましい。

クライムアクションは車を盗んだり、街中を歩くNPCにすら暴力を行えるアクションで、こちらも当然だが全てシームレスに行える。
このクライムアクションという題材も当時のプレイヤーには衝撃が大きかったポイントだ。
この時代の特に日本では敵ではないNPCとのインタラクションと言えば会話をするのが関の山であり、攻撃できる事はおろか、ランダムな大人数を動的に描画するということ自体もプレイヤーの発想として身近なものではなかったのだ。
その結果として当時はこのクライムアクションが日本市場においてはかなりの議論を呼ぶことになり、CEROが現在のレーティング区分に至る大きなきっかけとなったのも本作が主要因である。

このような「オープンワールド」や「クライムアクション」という珍しい要素を持った本作が登場した事によって、プレイヤー層では「自由度」と言われる不定形で曖昧なデザインをゲーム側に強く求める傾向が強くなった記憶がある。
そのため、一時期はシーケンシャルでリニアなゲームプレイを要求するタイトルの評価が必要以上に凋落した時代ともなってまったのだ。
この辺りはまだゲーム業界全体に本当の意味での多様性が育まれていなかった事の証左でもあるだろう。
なお、実際には「ストーリー」の項で前述した通りGTA3もシーケンシャルな部分は強い訳だが「当時としては」という枕詞を付けて頂ければと思う。

チュートリアルとして機能するメインミッション

ストーリーのメインミッションはチュートリアルにもなっており、新しく解禁された要素を活かした内容になる。
武器の使い方、車の操作の仕方はもちろんだが、その他にも例えば新しい操作感がある銃器や車種を使うためのメインミッションが用意されているのだ。

ミッションはその多くが難易度が高く、ワンミスが命取りになったりする事が多い。
また、「○○(地名)にある特定の車種を取ってこい」という指示があるが、いわゆるミニマップしか存在しない上に、そのミニマップには地名が書いてないため非常に困る。
リマスター版では全体のマップが確認が出来るようにはなったが、やはり地名まで記載されておらず頼りにならない。
また、マップ内にはフィールド上の様々なランドマーク的なものも記載がないので「あそこに行きたいが、どこだったか覚えていない」という時にも活用できない。

多数の車両とそれに付随する要素

車には多数の種類が用意されている。
車内ではラジオが聴けるほか、車の中でもタクシーや救急車などの特定の車種ではミニゲームが遊べるなど芸が細かい。

車はクレイジースタントと呼ばれるアクションがあり、ジャンプ台から回転しながら長い距離を飛んだりするなど”芸術点”に応じたリワードが手に入る。
ミッションや探索要素以外にも広いフィールドを遊び場に出来るデザインが成されているのも良いポイントだ。

車両はダメージが蓄積したり、横転すると廃車になってしまうため、基本的には使い捨てのものと認識するのが良い。

ただし、お気に入りの車などは自宅のガレージに保管する事が可能となっており、コレクションしておきたいような車があった場合には利用しよう。
ガレージに入れる事でダメージも回復するので愛車は大切にしやすいだろう。

犯罪を(ある程度)行うと手配される

ゲーム内で犯罪を行うと状況によって手配度が上がり、警察に追われるようになり、警察から逃げ切るか、捕まるとリセットされる。
捕まったり、体力が0になったりしてしまうと装備品などが全て没収されてしまうので注意が必要だ。

シビアで大味すぎる部分が多い

当時の水準から考えればプレイヤーの自由に行動できる事が多いのだが、ではそれが面白い体験に繋がっているのかというとそこは微妙なところだ。

メインミッションや戦闘、ミニゲーム、その他の指名手配などのシステム面において駆け引きがあるという訳ではないため全体的に面白さは大味で、最初の一口は美味しいと感じるかも知れないが、その美味しさは決して長続きするものではない。
また、ダッシュはボタン連打が必要だったり、根本的に泳げなかったり、射撃のエイムもわかりにくく、お世辞にも操作性や攻略の調整が上手くいっているとは言い難い。
真剣にプレイするには辛い部分が多く感じられるが、公式のチートコードを駆使したり、バグ・グリッチを含めたちょっと変な挙動に楽しさを見出す側面が強いのである。
そのため、純粋にゲームデザインによる意図されたシナジーのような部分で素晴らしいと言えるポイントは少ないのが実態である。

 

グラフィック

ディティールは粗いが高い密度を誇る

ディティールこそ粗いが実際にありそうな世界を表現したのは素晴らしい。
特に当時としてはそのような方向性のフル3Dゲームと言うのも珍しく、その上で信じられない程のオブジェクト密度を誇っていたのだ。
しかし、現代で初めて本作に触るプレイヤーにはその衝撃を感じ取るには難しいものがあるかも知れない。あくまでも当時の文脈から言って素晴らしいという部分になってしまうのだ。

キャラクターモーションもディティールは良くないが、大まかなシチュエーションのモーションはしっかりと用意している。
車に乗車する際に発進を急ぐとドアを閉めずに発進するが、少しニュートラルな時間を設けるとちゃんとドアを閉めるモーションが挟み込まれる。
路上で車の前に立てば主人公はお行儀の悪いポーズを取ったりもする。
血痕の上を歩いたり、車が通ると血の跡が伸びるなどの細かい部分も表現されている。

イースターエッグ的な要素も

細かい部分になるが、イースターエッグ的な要素もあるので見つけてみるのも良いだろう。

 

サウンド

GTA3では現在のオープンワールドゲームで主流となっている環境BGM主体の構成が既に構築されている。
車内ではゲーム内ラジオを聴く事が可能で、その点も印象的だ。
当時としては現実世界のシチュエーションをこのように落とし込んだゲームも珍しいため衝撃もなおさらである。
かくいう筆者もGTAシリーズの影響で興味を持った洋楽は数知れない。
最初こそよくわからないかも知れないが、プレイを継続していくという単純接触効果によってゲーム内ラジオで公開されている楽曲の中にお気に入りを見出し、自分の新たな好みのジャンルも開拓できるかも知れない。

なお、筆者のお気に入りのゲーム内ラジオはクラシック音楽の流れる「Double Clef FM」だ。

 

総評

Grand Theft Auto Ⅲは様々な意味で時代のターニングポイントを生み出した偉作だ。

真面目にメインミッションをプレイするのは辛いものがあるが、自分好みの車でスタントアクションを行ったり、ミニゲームが用意されていたり、隠しアイテムを見つける探索を行ったりと能動的に遊べる要素が取り入れられている。

何よりも当時としては画期的であったフル3Dでのシームレスな体験とクライムアクションのインパクトは凄まじい。
しかし、現代でそのインパクトを本作から感じ取ることが困難であるのは寂しい所で、結果として今から初めてプレイするというプレイヤーには「色々と辛いゲーム」という印象にしかならないのかも知れない。

 

外部記事

『グランド・セフト・オート:トリロジー:決定版』のローンチが混沌。「雨」が激しすぎる問題にぶっ飛び交通事故多発、PC版販売にトラブルも - AUTOMATON

『グランド・セフト・オート:トリロジー:決定版』PC版配信再開。一時取り下げの原因は、かつて物議醸した“Hot Coffee”関連か - AUTOMATON

「グランド・セフト・オート3」を有害図書類指定へ――神奈川県 - ねとらぼ

2001年の「9・11テロ」が同年発売の『GTA III』に与えた影響 | GameBusiness.jp

【レビュー】ゼルダの伝説 時のオカリナ

時代を変えた伝説

ゼルダの伝説 時のオカリナ(以下、ゼルダOT)は筆者などが言うまでもなくビデオゲーム史上において最も重要な作品の筆頭に挙げられるタイトルである。
当時のNintendo64でプレイをしていた筆者も同時期に発売された3Dタイトルとは一線を画すようなレベルでハマっていた記憶があるくらいである。

今回は筆者がレビューするにはややおこがましいタイトルではあるが、思い出のタイトルでもあるため記録としての意味でも記載をしていきたい。

 

ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D - 3DS

ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D - 3DS

  • 発売日:2011/06/16
  • メディア:Video Game
ゼルダの伝説 時のオカリナ

ゼルダの伝説 時のオカリナ

  • 発売日:1998/11/21
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

冒険と成長、そしてシリーズに強い影響を与えた物語

ゼルダOTは森の妖精の子達が住むコキリの森にて育ったリンクが主人公だ。
ある日、不吉な予感を感じさせる意味深な夢を見る。
そこからハイラルを救うリンクの物語がスタートしていく事になるが、ハイラルの支配を目論むガノンドロフに裏をかかれてしまう…というのが大まかなストーリーとなっている。

物語は冒頭からチュートリアルも兼ねた探索から始まり、そして剣を携えての冒険が始まっていく。
ワクワクするようなシチュエーションによってプレイヤーを牽引して、進めていく事で新しい土地で様々な人と出会い、そして新しいアイテムが使えるようになるなどの成長も感じさせてくれるのだ。
このような少年心を掴むような展開にしている点も見事だ。

本作の物語的な特徴は子供時代と大人時代を行き来する物語になっている点である。
簡単に書いてしまえば子供時代に出会った人物が大人時代で少し変化しているのだ。
少々ネタバレな部分もあるが、大人時代にはハイラル世界がガノンドロフに支配されており各地で魔物が暴れているような状態になっている。
そのため、子供時代で出会った人々も世界の動乱に伴い大人時代ではやや卑屈な感情になっている事も珍しくなく、時間を経た事によるドラマを感じさせるものになっている。

とは言え、任天堂作品には多いがストーリーは非常に簡潔で、ゲームプレイを邪魔しないように作られているためストーリー重視のものとして楽しむのはミスマッチだ。

親切さも忘れていない

クラシックなタイトルではあるが、プレイヤーに対しての親切さも忘れていない。
敵の攻略方法がわからない場合にはナビィがヒントを出してくれる。
また、次に何をするのかを忘れてしまった場合にはナビィやサリア、あるいはマップが行くべき場所を教えてくれたりする。
そうは言ってもこれだけでは痒い所に手が届かない場合も少なくないのだが、それでも適宜ナビゲーションしてくれるのは当時としては親切な水準だ。

 

システム

巧みなカメラ制御によって時代を一変させた3Dアクション

ゼルダOTは3D空間で剣や弓を用いて戦うARPGとなっている。
まず、本作を何も知らずに今からプレイした場合には面白さこそ伝わるかも知れないが、何か特別な特徴や強烈な個性がある作品だとは感じにくいハズである。
そのため、本作の特筆すべきポイントを書くにはまずは当時の時代背景を記載し、その文脈から優れている理由を述べた方が適切だろう。
当時としては各社が3Dゲームの制作に着手してきている段階であり、フル3Dゲームではなく、(ハード的制約のために)一部だけ3Dになっている作品も多かった時代でもある。
そのような各社3Dゲーム制作のノウハウが全くない状態であったため、3Dである必要性が余り感じられないような3Dモデルを活用しただけに近い試作的なタイトルも少なくなかったのだ。
また、3Dの近接攻撃要素のあるゲームでは新たに登場した”奥行き”という概念の影響から「敵との距離感が掴めない」という状態が珍しくなく、そのため「攻撃をしても虚空をきる」というアクションを行うだけでも地味なストレスが多かった時代だったのである(ただし、それがマイナスという訳ではなく、当時はそれが「当たり前」であった)。

そんな時代の中でゼルダOTが非常に魅力的な要素だったのがアイコニックな「Z注目」だ。この機能に関しては名前は聞いたことがある方も少なくない事だろう。
敵をロックオンするだけの単純な機能というのは以前から存在していたのだが、本作のZ注目システムが特異であったのはロックオン(キャラクター制御)とカメラワークを組み合わせている事である。
それは上の2つの画像を参照して頂ければ少し伝わるものがあるだろう。
Z注目の状態に移行するとリンク(プレイヤーキャラクター)は敵に正対し、更にカメラは両者が常に画角に収まるようにしつつ、お互いが斜めのライン上に結ばれて表示されるようにカメラ制御されるようになっている。
もしも「プレイヤーキャラクターが敵に正対し続けるだけ」の機能では射撃は行えてもチャンバラは難しいし、「敵を中心に据えるだけ」のカメラワークでもプレイヤーの移動位置によって視認性が悪くなるのである。
また、カメラワークにしても完全なビハインドビュー状態では距離感がわからないし、かと言ってサイドビュー状態では3Dゲーム感を喪失させてしまう。
それらを解消するためのキャラクター制御とカメラ制御を両立させ、近距離でのチャンバラアクションが行いやすくなっているのだ。
なお、このカメラ制御に関しては戦闘だけに留まらず様々なシチュエーションで細かく行われており、情報量の多い3D空間でプレイヤーが操作を行いやすいように配慮がされている。
後世では右スティックによるマニュアルによるカメラ操作が一般化したが、この時代では右スティックという存在自体がないなどの環境面の状況も併記しておく。

このような要素や以降に紹介する要素に関しても、後の時代のあらゆる3D作品に大きな影響を与えている。
本作は「3Dゲームのスタンダードを築いた始祖」と表現しても何ら疑問の余地を持たないレベルの作品であり、それは本作を現代で遊んだとしても決して現代の感覚から大きく逸脱したような体験にはなっていない事からも理解できる事かも知れない。
「本作を初見の現代プレイヤーは何が特別なのかわからないのでは」と前述したのだが、それが正に答えでもあるのだ。
特別なものを感じないのは本作が作り上げた機能やシステムは今なお3Dゲームのスタンダードであり続けているからなのである。
黎明期に作り上げられたハズの本作が、現代で遊んでもなお「普通にプレイできてしまう」ことこそが本作の傑出度の証左となっているのだ。

物理と科学を世界に入れた作品でもある事も忘れてはならない

3Dの黎明期でありながら、物理や化学といった要素同士の相互作用を世界構築と謎解きに活かしている点も驚異的だ。
火で燃やしたり、物体の重さでスイッチを押したり、時には高所から落ちる衝撃を用いて床の障害を取り除く。
現実世界では当たり前であるこれらの直感的な要素をゲームに取り入れ、世界自体の厚みはもちろんだが、謎解きとしてユーザーに楽しんでもらうためのギミックにもなっている。

3D空間であることをフルに活用したレベルデザインである点も見事である。
前述した通り、当時は3Dモデリングしてゲームを作った程度の3Dの必要性・利点が薄いと感じてしまうような作品も少なくなく、特に2Dドット時代では表現しにくかった「3Dの奥行(トップビューからの旅立ち)」といった側面ばかりに着目されがちであったように感じられる。
しかし、本作は上図の右のように3Dの空間を立体的に活用しており、「横」「高さ」「奥行き」の3D空間の全てを駆使するようにダンジョンがデザインされているのだ。
つまり、3D空間だからこそできるゲーム体験をしっかりと提供している点においても見事なのである。

また、一番最初のダンジョンである「デクの木様の中」には上述した本作の様々な基本理念となる物理と化学、3D空間を駆使した謎解き要素を散りばめているため、全体のチュートリアル的な役割もしっかりと果たしている。
そのため、最初から密度の高い遊びが感じられる事となり、この後にはどんな体験が待っているのかがワクワクさせてくれる事だろう。

これらのギミックはダンジョン内で入手できるアイテムで更に拡張されていく。
アイテムを1つ入手する事でプレイヤーが出来る事はもちろん、行く事ができる場所も拡張されるのだ。
「このアイテムであれば、あそこにも行く事ができる!」といったようなパラダイムシフトが引き起こされて世界の見え方も変わるのである。

なお、この他にも「ストーリー」の項で説明した通り子供と大人に変化する。
つまり、子供状態と大人状態でも行えるアクションやフィールド自体にも変化が表れるため、1度で2回美味しい体験にも繋がっている事も記載しておきたい。
このような主人公の行えるアクションに変化を取り入れる仕組みは後作にも影響を及ぼしている要素にもなっている。

ミニゲームまでも充実

様々な要素によってハイラルと言う世界の密度を高めている本作であるが、ミニゲームまでもが充実している。
射的、釣り、流鏑馬などなどの多くのサブコンテンツが用意されており、それらもしっかりと遊びとして成立するものとして作られているためハイラル世界を更に満喫できる要素になっている。

他にも収集系のやり込み要素である「黄金のスタルチュラ」というものもある。
これは簡単に書けば、各地の夜にだけ現れる特殊な黄金のスタルチュラを倒せば倒すほどにリワードが貰えるものになっている。
こちらは立体的なフィールド更に細かく探索する要素として機能させている。

サブコンテンツという枠組みとは少し異なるが、空きビンを所持していれば水中にいる魚や草や石の下に隠れている虫を捕まえられたりできるのも地味ながら楽しい要素だ。
このような部分も少年心を掴むような要素としてポジティブなポイントとしても良いだろう。

 

グラフィック

フル3Dで描かれた魅力的な広いフィールド

ゼルダOTは基本的にフル3Dで描画されている作品となっている。
フィールドでは昼と夜がリアルタイムに切り替わり、ハイラル平原と言う中央にある広いフィールドが各地のハブのような役割を持っている。
ロケーションも湖や山地、砂漠など多岐にわたり、世界を冒険している感を演出してくれている。
フィールドはエリアに区切られているため、各所には切り替え場所が設置されているが、その切り替え場所では奥に行くにしたがって道幅を狭くして遠近感を与える工夫をして世界が狭く感じないようにしている。
なお、街にあるような家の屋内などの一部はプリレンダ3Dによって描画しているケースが多い。

キャラクターのリアクションもしっかりと作られている。
例えばリンクの待機モーションは環境に応じて変化したりするなどの細かな作り込みがされているのだ。
もっと地味なポイントで言えば足場の高さに合わせて足の接地が変化する細かな作り込みもされている。

3D特有の異質な空間を生み出した森の神殿

フィールドやダンジョンでは3Dをしっかりと活かした奥行や高低差が表現されている。
3Dならではの映像表現を取り入れたダンジョンとしては森の神殿を述べても良いだろう。
上図は森の神殿の一部のエリアなのだが、空間全体が捻じれている表現がされている。
上下左右・奥行きといった要素以外にもこのような表現も積極的に取り入れているのが特徴的だと言えるだろう。

こだわりの看板斬り

インタラクションとしての側面もあるが、看板にもこだわりが感じられる。
この看板はリンクが横に斬れば横に、縦に斬れば縦に、斜めに斬れば斜めに切断されるようになっているのだ。
更に切った看板は近くの水場に着水すれば、慣性ですぅーっと浮かびながら移動する。
このようにプレイヤーの行った行動に応じたリアクションが行われるため、世界の厚みを表現に寄与していると言えるだろう。

 

サウンド

ゼルダOTの楽曲に関しても後のゼルダシリーズに大きな影響を与えたものが多く、様々なアレンジで使用されるケースが多い。
特に「ゼルダの子守歌」「時の歌」はシリーズを通してのアイコニックな楽曲となっている。
逆に本作ではゼルダの伝説シリーズのメインテーマが使用されていなかったりもする。
ついでに筆者がお気に入りの楽曲の一部を紹介させて欲しい。

爽やかな「ハイラル平原メインテーマ」

後のシリーズでもアイコニックな「ゼルダの子守歌」「時の歌」

不気味な雰囲気もある「嵐の歌」

荒野の決闘を思わせるようなカッコいい「ゲルドの谷

なお、炎の神殿のBGMはサンプリング元の題材に問題があったことから後期ROMからは変更されているようで、リメイクやリマスターなどの移植されたタイトルでは変更されたBGMが収録されている。

BGMは現代でいう所のインタラクティブミュージック的な運用もされておりハイラル平原や戦闘BGMなどはシーンやプレイヤーの状態に応じて変化が伴うようになっている。

オカリナでの演奏

本作ではオカリナの演奏が行えるのだが、特定の入力で音程の上げ下げなどが行えるという細かな要素もある。
本来は不要であるハズの実装だが、こういった遊び心をしっかりと提供しているのは本作の品質の高さを感じさせる1つのポイントとなっているだろう。

 

総評

ゼルダの伝説 時のオカリナは現代の全ての3Dタイトルに影響を与えていると言っても決して過言ではない特異点的傑作だ。

物理・科学・カメラ制御・サウンド制御・レベルデザインなど3Dゲームの黎明期とは考えられない程に細部まで作り上げられた質と量によって同時代の作品としての傑出度は比肩するものがない次元である。
また、ストーリーにしても、ゲームプレイにしても少年心を鷲掴みにしてくれる内容に仕上がっている事も素晴らしい。

本作は現代の全ての3Dゲームのスタンダードであり後世に多大な影響を及ぼした。
それは、今でも違和感なく遊べるという事からも確認できる事実である。

 

外部記事

時を超え遊び継がれる『ゼルダの伝説』 - 任天堂

宮本茂プロデューサーが語る『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の世界 - 任天堂

社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』|ニンテンドー3DS|任天堂

「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の情報・産地直送! - ほぼ日刊イトイ新聞

ゲームシナリオの解剖学FROM各務都心:第54回――『ゼルダの伝説 時のオカリナ』 時を超えた傑作を再訪

【レビュー】Baldur’s Gate 3

RPGの原体験が現代に

Baldur's Gate 3(以下、BG3)は全てのRPGの始祖ともいえるTRPG「Dungeons & Dragons(以下、D&D)」を母体とするRPG作品である。
日本向けの発売が少しタイムラグがあった事もあり、海外での高評価の声は聞こえてはいたものの購入を見送るつもりでいたのだが、The Game Awardsにて大賞となるGame of the Yearを獲得するにまで至ったため購入を決意した経緯である。

今回は日本では余り馴染みのないであろうBG3のレビューを行いたい。
なお、今回は「RPG」という表現を行うとテーブルトーク側を示しているのかビデオゲーム側を示しているのかがわかりにくいため、物理媒体をTRPGビデオゲームRPGCRPG、両者を指す場合にRPGとして区別して記載する。

 

 

ストーリー

TRPG文脈の強いCRPGの原体験

ストーリーは大まかに2通りが用意されている。
1つは全てを自分で紡いでいくTRPG系譜らしい「カスタム」とJRPGなどに多い事前に決められたキャラクターのストーリーを追体験できるような「オリジン」だ。
海外系のCRPGの文脈に慣れているプレイヤーであればカスタムから、JRPGの文脈しか知らなかったり自分で色々と設定したりするのが面倒だったり不安だったりするならばオリジンを選択するような形で良いだろう。

大まかに全体で共通しているストーリーは以下の通りだ。
主人公はイリシッド(別名:マインド・フレイヤー)という太古より存在するクトゥルフモチーフの種族により囚われ、イリシッドの幼生を植え付けられてしまう。
その場からは何とか逃げ出す事には成功したものの、そのままに放置していれば自分を宿主にして幼生がイリシッド化してしまうため、それを取り除くための冒険だ。

このような大まかなストーリーはもちろん用意されているが、カットシーンによる映画的なものが繰り広げられるというものではなく、ロールプレイによるゲームプレイ自体がストーリーになるというナラティブなストーリーテリングが主体となっている。
例えば、イリシッドとは敵対的な関係であるが、物語の展開のさせ方によっては友好的なイリシッドと共闘関係になるなど、プレイヤーのインタラクション次第で多様な状況で進行していく。
エンディングの差分にしても17,000以上あるとされており、NPCキャラクターの生存や勢力の肩入れ具合などによってエンディングの状況や組み合わせが変わるものになっている。
プレイヤーのロールプレイによる選択がゲームプレイに反映されるTRPG的体験に繋がる要素とも言えるだろう。

数々のTPRG的要素

TRPGらしいストーリーテリングはナラティブな面だけに留まらない。
Baldur's GateというゲームがD&Dを母体としているために「TRPGビデオゲームで体験できるようにしたい」という志向性が随所に感じられる。

まず、補足説明やプレイヤーキャラクターが感じ取った内的描写などをナレーションによる語り部が代弁する。
リアリスティックな志向のゲーム体験と対比して考えれば「この自分でない謎のナレーターは誰なんだ?」となってしまう所だが、TRPGにおける「GM(正確にはD&Dの場合には"DM")」のような役回りをあえて作る事によってよりTRPGらしさの演出に繋がっている。

また、ゲームプレイ部分のシステムとも密接に関わるが本作では非常に多くの行動がダイスを振って成否が判定される。
自身の能力によってもダイスにプラス補正 / マイナス補正がかかるため完全な運とはならないが、結局は運が関わるため時として意図しない結果にもなってしまう事だろう。
この偶然性によってもプレイヤー固有のナラティブな体験を生み出す事に寄与している。
なお、ダイスの直前でセーブを行うなどして臨む結果になるまで粘る事も無理ではないので、どうしても成功させたい選択肢がある場合には検討すると良いだろう。
ただし、本作はあくまでも失敗も含めた物語を楽しむものである事が前提であることは忘れない方が良いだろう。
失敗体験も含めてゲームプレイであり、そこにこそナラティブな体験が生まれるのだ。

しかし、本作はTRPGを母体としているという事は、それは旧来のCRPGと同じ志向性を有するという事でもである。
そのため、レガシーなCRPG的な進行が多く、全体として手探り状態で進行する事になる。
いわゆるクエストマーカーも存在するのだが、マーカーのある場所に行けばクエストがクリアできると言ったような現代的なゲームではないのである。
マーカーはあくまでもクエストに関係のある人物がいる、関係のあるエリアである、関係のあるアイテムがある程度の大まかなものなのだ。
そのため、探索する事にも労力を割く必要があるため、手探りゆえの世界への没入ができるというポジティブな側面がある一方で、それなりの時間的な余裕がないと楽しむことは難しい。

また、”不可逆”である事も注意点として記載したい。
ストーリーは章形式のようになっているのだが、章を跨いだ場合には以前のフィールドマップに戻る事ができない。
そのため、フィールドマップでやっておきたいことは全て完了させておくのが望ましい。
なお、章が進んで戻れなくなるような場面にはアナウンスが行われる。
知らず知らずのうちに勝手に進んでしまい戻れなくなると言った事はないので安心して大丈夫だ。

シングルプレイではTRPG的体験が徹底できていない

Baldur's Gate 3におけるネガティブな部分についても触れておきたい。

まず、選択肢の選択ボタンがデフォルトで先頭が選択された状態になっているのは困った事になる。
先頭が選択状態になってしまうと、会話を送った際に誤って意図しない選択をしてしまう可能性があるためだ。
選択する事がゲーム体験のメインともいえるような内容であるだけに、デフォルトでは全て未選択状態にするなどの配慮がもう少しあっても良かったのではないだろうか。
これからプレイするという場合には会話を手動で送る際には気を付けて頂きたい。

本作は膨大なテキストが用意されているがローカライズを頑張っている。
これ自体は賛辞を贈るべき部分だ。
しかし、根本的なゲーム自体がローカライズを想定しているとは思えない構造だ。
特に気にかかるのが移動中の会話なのだが、会話が発生するとボイスと共にテキストが表示される。
ローカライズはその労力とコストの面から「テキストのみ」のローカライズであり、多くの日本プレイヤーであればテキストを読むことになるだろう。
しかし、テキストは話者の頭上に表示されるだけであり、画面上に話者が映っていなければテキストが映らないという仕様なのだ。
後ろに付いて歩いているような仲間キャラクターに至っては画面上に映るような状態が非常に稀なため、会話内容がかなり把握しにくいものになってしまっている。
つまり、仲間キャラクターの会話内容を知るためには後ろを振り向く必要があるのである。
これでは移動はままならない本末転倒な事態だろう。
画面にキャラクターが表示されていなくとも、画面上の隅にテキストは表示されるなどの近年(2020年代)でも珍しくないような最低限の仕組みは作っておくべきであったように感じられる。
そのため、上述の通りローカライズされる事を考慮したような作りには根本的にしていないのである。

そして、TRPG的体験を徹底できていない点が気になる可能性も考えられる。
一人プレイの場合には操作キャラクターを仲間のキャラクターに変更できたり、戦闘で仲間を操作する事になったりする。
これは例えば脳筋キャラクターにした場合に開錠や説得が成功しにくく、プレイ体験の幅を狭めてしまう事を避けるために採用したのではないかと考えられる。
しかし自分以外のキャラクターを操作するという行為は「自分を世界の中に投影する」というロールプレイ原理主義的な思いがあるプレイヤーにとってはノイズとなってしまう可能性があるのだ。
マルチプレイで楽しんでいる場合には各キャラクターをそれぞれが操作する事になるため、ボイスチャットなどを使用して「ここの鍵を開けられる?」「この人を説得して」といったお願いをして役割に応じたプレイをする事でTRPGらしい体験に繋がるのだろう。
しかし、その機能的メリットをソロプレイの場合でも享受できるように配慮した結果として「主人公=プレイヤー」という図式が崩れて「一人二役どころではないプレイ」になってしまう体験になりやすいのはコンセプトにブレがあるようにも感じてしまう。
D&Dでも参考元と考えられる"同行キャラクター(NPC)"というものは存在はするが、それと比べても仲間キャラクターはプレイヤーと同格の存在であるため主張の強すぎる立ち位置になってしまっている印象なのだ。
理想を言うのであれば、CRPGという側面を活かして仲間キャラクターが自律的にそういった行動を行ってくれたり、そうでなくとも仲間キャラクターに「○○をやってくれ」とお願いする程度のコミュニケーションを介した間接的な操作に留めたりする事で一人でマルチプレイに近いTRPG的体験が可能になったのではないかと感じられる。

 

システム

ここからはゲームプレイに関わるシステムに関しての記載を行うが、その前に本作の難易度についての話を書いておきたい。
本作にはイージーやハードに相当するようなプリセットされた難易度が用意されているが、中にはカスタマイズが可能でより詳細に自分好みの変更が可能なものも用意されている。
最初はまだ不明点も多いかも知れないのでひとまずプリセットの難易度を選択し、2週目プレイなどでカスタマイズするなどして楽しむといった事が可能になっている。

クリアまでの時間も決して短いとは言えないものの、何度プレイしても楽しい作品でもあるためそういったプレイの場合には嬉しい要素だろう。

自身を投影するキャラクタークリエイト

TRPG的文脈が色濃い海外CRPGでは自己投影を行いやすくするためにキャラクタークリエイトが採用されるケースが少なくないが、もちろん本作も例外ではない。

キャラクタークリエイトでは性別や外見の編集などのほかにも種族やクラスを選択する事ができる。
選択した種族によっては更に細かな分類(亜種族)が選択可能で、エルフにもハイエルフとウッドエルフが存在すると言ったような形である。
各種族は外見的特徴はもちろんだが、得意分野が設定されているので自分のプレイスタイルに応じた種族選択をするのも良いだろう。

クラスの選択ではプレイヤーキャラクターの戦闘での立ち回りに影響を及ぼす。
いわゆるジョブのような概念だと思って良いものだ。
近接での立ち回りが得意だったり、魔法による攻撃や補助が得意だったりと言ったクラスに応じたしっかりとした個性が存在する。

個性を引き出すキャラクタービルド

ここではキャラクタービルドについていくつか記述していきたい。

キャラクターには前述している「クラス」が設定されており、入手した経験値によってクラスのレベルを上昇させ、そのクラスに応じたスキルを覚えていくような成長システムとなっている。
クラスは一定程度成長するとサブクラスが選択できるようになり、より専門的なスキル構成のキャラクターにする事ができるようになる。

また、マルチクラスというシステムも存在する。
サブクラスが「基となるクラスの派生」であるのに対して、マルチクラスは「根本的に別のクラスを追加する」というものである。
極端な使い方をいえば剣士クラスに魔術師クラスを後付けで追加するようなものだ。
マルチクラスはいくつでも設定が可能であるが、キャラクターの最大レベルは12であり、マルチクラスの習得でレベルを1つ使用する事になるため注意が必要である。
そのため、剣士クラスで8レベル使用して、残りの4レベルを魔術師クラスに割り当てるなど計画的なレベル上げが必要となる。

各クラスで覚える事ができるスキルもしっかりと役割が設定されたものになっている。
戦闘で役に立つような攻撃スキルやフィールド設置スキルはもちろんだが、解呪を行うもの、脂を周囲にばら撒くもの、能力補正が行えるものなど多岐にわたる。
中には動物や死者との意思疎通を行うようなものもあり、冒険を手助けしてくれる情報が得られることもある。
それぞれに有用な活用法があるため、どのように利用するのかを考える楽しさもあるだろう。
ただし、利用の仕方に関しても丁寧なチュートリアルはないため手探りで使い道を見つけていく事になるだろう。

なお、敵に関してもリポップするような事はないため決められた場所に決められた数だけ配置されている形式である。
つまり、入手可能な経験値が事前に固定になっているため、ゲームバランスが開発側の意図から大きく崩れないようなバランスになるようなデザインになっている。

SRPGのような戦闘システム

戦闘はターン制、コマンド選択式のSRPGのようなバトルとなっている。
仲間も敵もターンが来た時にキャラクターを移動させて攻撃を行うというものである。
こちらにしてもTRPGを母体としていることを認識していれば理解しやすい部分もあるだろう。
TRPGでは紙やブック内のフィールドマップ上に自身を含めたキャラクターユニットである人形を置いて遊ぶケースも少なくない。本作ではその文脈をそのままゲームとして落とし込んでいるのである。

本作は「ストーリー」の項でも述べたようにマルチプレイも可能で、最大で4人で戦闘を行う事が可能だ。
一人でのプレイだったとしても仲間となるNPCを連れ歩くことが可能なので、それらをユニットとして操作して戦闘を行う事になる。
攻撃方法に応じて威力だけではなく、射程距離や攻撃範囲や効果が異なるので、状況に応じて有効になりそうな行動で攻撃するのが好ましい。

特に戦闘では化学反応的な要素も利用できる。
例えば、水場に氷の呪文などを当てれば路面が凍り踏破性が下がる事で敵の進行を妨げる事ができるし、油をまいた場所に火の呪文を投げ込めば大ダメージを狙えるのだ。
複数人のユニットを操作して戦闘する事が前提なので、こういったシナジーを考慮して立ち回ると更に面白いだろう。
またそれを促すように、本作では行動順が仲間で固まっていれば順番を入れ替えて行動する事もできるようになっているので、まず油を撒けるキャラクターを使って、次に火の魔法が使えるキャラクターで発火させるといった事が行いやすい。
マルチプレイで遊ぶのであればボイスチャットなどを駆使して、仲間と連携して攻撃すればより楽しさが増すだろう。

操作の最適化は不足している

非常に大ボリュームなBG3であるが、細かな部分で操作の最適化に問題を抱えており小さなフラストレーションが定期的に溜まりやすい。

まず、全体的にコンソール向けの最適化に欠けており操作は煩雑な傾向だ。
また、カメラ操作も困った挙動になる事が少なくない。
近場をカメラで映そうとした時に、カメラが全く意図しないような位置にギュンっとワープするかのような挙動になるケースがままある。
これは室内などのオブジェクトが近くに存在しやすい環境で発生しやすい。

アイテムを取得したいのに、キャラクターに話しかけてしまうなどの誤操作も発生しやすいのもフラストレーションとなりやすいものである。
特に敵ユニットの死体などの下にアイテムが落ちているような状況下になると取得するのは非常に大変だ。
死体は持ち上げて別の場所に移動させることは可能だが、重量のあるモンスターなどはそれもできないため困りやすい。
この辺りはNPCとのインタラクトと落ちているアイテムを取る行為を別のキーに割り当てするなどの配慮が欲しい所だ。

 

グラフィック

ディティールはしっかりしているが稀に描画が崩れる事も

BG3のグラフィックはディティールこそあるが、オブジェクトのめり込みなどの細かい部分は割り切って作成している。
フィールドはいくらか存在しており、キャラクターが回復する際に利用する野営地もフィールドによって変化する。

映像演出面でもTRPG的文脈は見受けられる。
それはカメラ操作で、カメラがキャラクターに寄っている時には普通のゲームのような感覚で遊べるが、カメラが引いた時にはトップビューになる。
これは「システム」の項にて少しだけ記載した「マップの上にキャラクターユニットである人形を配置して遊ぶ」というTRPG体験の側面を強調しているのだ。

映像面で気になる点としてはキャラクターのポリゴンが正常に表示されない事がままある。
これは筆者のプレイ時点の話であるためアップデートにより修正されているかも知れないが、たまにキャラクターがおかしな見た目になる事もあるかも知れない。

 

サウンド

タイトル画面で流れるメインテーマはいくつか聞くタイミングがあるため印象に残りやすい曲になる事だろう。
しかし、全体としてはBGMがあるシーンは少なく環境音が主体である。

また、物量が余りにも多いためボイスまでのローカライズは行われていないものの、英語である事で映像の雰囲気にマッチしているとは言えるだろう。
しかし、「ストーリー」の項でも指摘した通り、移動中に発生する会話はキャラクターが画面内にいなければテキストが表示されないため、一部のボイスに関してはBGMやSEと同格に等しい事は併記する。

 

総評

Baldur’s Gate 3は全てのCRPGの原典であるTRPG体験を現代のビデオゲームに落とし込み、RPGの原体験をモダンな環境で味わう事のできる作品である。

探索や戦闘などしっかりと歯応えがあり、何よりもプレイヤーの行動と選択が世界に反映されていくナラティブな体験のレベルは世代最高峰の質と量だと言っても良いだろう。

全体的に痒い所に手が届かない側面も感じられ、この辺りに関しては膨大な物量への対策として取捨選択を行った部分もあるのだろう。
また、TRPGの文脈を理解しないままにプレイすると痛い目を見る可能性も大いに考えられる作りであり、TRPGあるいは最低限でもその潮流をベースとする傾向が多い海外産CRPGを嗜んでおく事で比較的ソフトランディングに受け付ける事ができるだろう。

 

外部記事

PS5版「バルダーズ・ゲート3」インプレッション&インタビュー。気になるコントローラ操作や日本語ローカライズはどうなった? 

[GDC 2024]「バルダーズ・ゲート3」のプロモーションでTikTokを運用。わずか1年あまりで27万フォロワーを獲得した秘訣とは

[GDC 2024]4人でスタートした「Baldur's Gate 3」のシネマチック・アニメーション制作。大事なのは,チームの人間的な側面を見失わないこと

[GDC 2024]数々のデーモンと戦いながら名作への階段を上り詰めた「Baldur’s Gate 3」は,拡張パックもDLCも続編もナシ

『バルダーズ・ゲート3』開発者ミニインタビュー。いまもっとも熱いRPGのスタッフが、日本人プレイヤーに注目してほしいポイントなどを語る - AUTOMATON

ゲームシナリオの解剖学from各務都心:第59回『バルダーズ・ゲート3』ロールプレイのための動機付け、CRPGの始祖が放つ変幻自在のクエスト群

『バルダーズ・ゲート3』開発者インタビュー。世界で絶賛されるRPGに秘められたこだわりとは - 電撃オンライン

【レビュー】ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅

魔族の“カリスマ”よ、真の王を目指せ。

ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅(以下、DQM3)はドラゴンクエスト モンスターズシリーズのナンバリングとしては非常に久しぶりのタイトルである。
というよりも今になってナンバリングが登場する事に驚いたくらいだ。

 

 

ストーリー

ドラクエⅣを母体としながらも終始説得力に欠ける物語

DQM3の主人公は魔族の王と人間との子供であるピサロだ。
ピサロと言えばドラゴンクエストⅣで登場した敵の親玉のような存在であるが、本作ではその物語のパラレルワールド的な立ち位置となっている。
ピサロは人間界でひっそりと暮らしていたが迫害のために居場所を追われ魔界へと逃げてきたが、逃亡中に病が悪化した母を治療して貰うべく父である魔王に謁見するも願いを叶えて貰えず逆にピサロは呪いをかけられてしまい、そして母もそのまま亡くなってしまう。
魔王たる父に復讐を行い、自分が魔族の王となるために力を蓄える冒険が本作の導入だ。

全体的にやや子供向けのテイストが強いのか、それとも原作の設定を活かすためなのか強引な物語進行になってしまっており説得力がない事が多い。
例えば、原作においても存在するロザリーヒルの村にある塔は最初は存在しないのだが、あるタイミングで「数日後」というメッセージ後に一瞬で建造される。
たった数日で建造できるようなものではなく、資材や労力はどうしたのか。
ロザリーヒルは非常に規模の小さな村でありモンスターを手懐けられる人はいるものの奇妙である。一夜城も裸足で逃げ出すような事象が起きている。
その他にもキャラクターの心理描写的にもやや説得力に欠け、原作要素を盛り込んでゲームを進行するための役割準拠的な側面としか感じられなかったりなど、細かいディティールの部分において疑問符が付くような描写が散見される。

また、ヒロイン的立ち位置であるロザリーも家庭的で献身的で受動的な女性という現代の価値観とは少しズレているキャラクター性になっている。
筆者の場合は「ゲーム内の世界や時代に則った世界観・視点で楽しみたい」という志向性が強いため、この設定に関しても「本作の世界はそういう価値観の世界なのだ」と思えるが、(出典自体が古いとはいえ)悲しいことに現代ではそれを許容しないような風潮も見受けられる。
この辺りはもう少し慎重にビデオゲームの現在地にマッチするギリギリのバランスは狙ってよかったように思う。

モンスター図鑑のテキストもしっかりとある

本作はモンスターを仲間にして戦うのが基本となるが最初に仲間になるモンスターは質問によって貰えるモンスターが異なる。
選びなおしも可能で、パターンも少ないものの少しだけ嬉しい要素だ。
贅沢を言えばもっとパターンを増やしてワクワク感を出して欲しい限りである。

仲間になったモンスターは図鑑に登録され、モンスターの説明文も用意されている。

 

システム

シンボルエンカウントの広めのフィールド

DQM3はフィールドにモンスターが徘徊しており、接触する事で戦闘が始まるシンボルエンカウント方式だ。
フィールドはそこそこの広さがあり四季の概念も存在している。
例えば、冬には水辺が凍り歩けるようになるなど、季節によっていける場所に変化が発生する。
この四季はフィールド探索中の時間経過で流れていき、まるで昼夜のように変化していく。
フィールドで徘徊しているモンスターの中にはモンスター同士でコミュニケーションをとっているように見えるケースもあり生活感が表現されているのも良いポイントだ。

本作にて気になるのはシンボルエンカウントでモンスターに見つかってエンカウントしたにも関わらず、こちらが不意を突いた事になっているケースがある事だ。
プレイと実態が一致しないため違和感を覚えてしまう要素になってしまっている。

フィールド内にはダンジョンが存在する。
ダンジョンは物語進行と共に必然的に行く事になる場所であり、内部ではちょっとした謎解きのようなものが要求される。
しかし、用意されている謎解きに関してもレガシーな側面が強く、ゲームプレイとしての側面に偏重しており「何故このような構造になっているのか」という生活や文化を彷彿とさせるような物語や設定における舞台装置としての説得力に欠けた存在である。
また、物語進行シーケンスにしても「フィールドに赴く→困ってる人に会う→ダンジョンでボスを倒す」の繰り返しとなり、フィールドの見た目が変わるだけでやってる内容がほとんど変わらず、こちらもレガシーでチープな印象となってしまっている。
ゲームとしては普通にプレイはできるものの、20年前と同じようなコンテンツ内容になってしまっているのは複雑な気持ちだ。

お馴染みのクラシックな戦闘

戦闘は従来のドラゴンクエスト同様のターン制バトルだ。

仲間モンスターは最大8匹で、戦闘には最大で4匹が参加できる。
モンスターにはサイズが設定されており、大きなモンスターの場合には2匹分の枠を使ってしまうが、その代わりに複数回行動が可能であったりと強力だ。
戦闘自体にはそれほどの面白味はなく、基本的にはリソースの削り合いとなる。
攻撃役と回復役をしっかりと整えておけば基本的に問題ない。

モンスターには色々と設定が可能だ。
例えば、覚えた呪文は多く使う、そこそこ使う、使わないといった頻度を指定する事もできる。
しっかりと使って欲しいバフやデバフ、回復の呪文などがある場合には設定しておくと良いだろう。
また、ステータス上昇や耐性強化などのアクセサリーを装備させたりする事も可能だ。
これらはモンスターの特性に応じて設定をすると良いだろう。

戦闘はモンスターを仲間にする機会でもある。
戦闘中に肉を与える事で倒した後に起き上がり仲間になりたそうにこちらを見ている事もあるが、「スカウト」という方法で戦闘中に直接モンスターを仲間にする事も可能だ。
スカウトに関しては肉を与えたり、仲間のモンスターが強力であれば確率が上昇するが、失敗するとモンスターが怒って攻撃力が上昇してしまうデメリットもある。
何にしてもモンスターを多く仲間にしていくのがパーティーを強化していくうえで大切なので積極的に活用するのが好ましい。

戦闘において気になるのはリザルト画面のテンポの悪さだ。
戦闘終了時には経験値などの精算が行われるが、それらがどうにもレスポンスが悪くゲームプレイを途切れさせてしまっている。
リザルト画面のような機能はプレイ時間がかかる必要性が薄いものであり、そこがサクッと完了しないのは体験に悪影響となってしまう。

お馴染みのメインコンテンツである配合

モンスターズシリーズのメインコンテンツとも言える「配合」ももちろん登場する。
配合では二匹のモンスターを掛け合わせて新しいモンスターが生まれるという仕組みである。
生まれたモンスターは親となったモンスターのステータスを一部受け継ぐので、強くしてから配合した方が強力なモンスターになりやすい。

また、モンスターにはスキルが設定されているのだが、スキルは配合によって引継ぎを行う事が可能だ。
スキルはレベルアップで貰えるポイントを割り振ってステータスの追加強化のパッシブスキル、呪文などのアクティブスキルを覚える事が可能な仕組みである。
スキル取得は割り当てたポイント数によって順番にアンロックされていく方式で、特定の能力や呪文を優先的に獲得するようなものではない。
配合ではこのスキルが割り当てたポイントが半分の状態で引継ぎが可能になる。
有用なスキルは最後の方に獲得できることが多いので、必然的に要求ポイントが多めになる。
そのため、配合をして引き継いでいかなければそのような有用スキルを獲得するのは厳しいバランスになっている。

本シリーズのメインでもある「配合」だが、DQM3ではその導入と誘導が弱すぎるのは問題がある。
物語の序盤では配合ができないのだが、これは徐々にシステムを解禁してプレイヤーがステップアップしやすい環境を作る目的なのは理解できる。
特にドラゴンクエストシリーズはその成り立ちからしてプレイヤーの自由に対して制限を設けて遊びやすさを重視した事が支持された側面もあるからだ。
しかし、実際に配合が可能になったタイミングではボイスもない会話テキストで「配合できるようにしたぞ」程度の簡単なセリフでのみの通知なのはメインコンテンツとして考えると余りにも導線が弱い。
最低限、配合するチュートリアルをしっかりと設けて大切な要素であることの協調が必要だろう。

 

グラフィック

ディティールには欠けるところがある

DQM3は自然を感じさせる環境もあれば、ファンシーな環境も存在するのはユニークだ。
しかし、全体的に近くで見るに耐えうるほどのディティールは有しておらず、現代の最低限の水準といった所だろう。

モンスターズシリーズではモンスターが多く登場する事が醍醐味の1つとなる。
しかし、モンスターは色違いによる区別も多く、完全新規のモンスターは少ない。
この手のゲームでは有限の開発リソースの中で物量をカバーする必要がある訳だが、色違いという工夫によって何とかしているのは肩透かしに感じる可能性は十分にある。
とはいえ、ドラゴンクエスト モンスターズという作品群が「本家ドラゴンクエストのモンスターが仲間になる嬉しさ」という側面もあるため、本来ならばあり得ないようなモンスターを仲間にできる特別感や楽しさはあるだろう。

 

サウンド

元ネタとなるドラクエⅣやドラゴンクエストモンスターズの曲が採用されていることが多い。

メインストーリーにはキャラクターのボイスが付いているが、あくまでもオマケ程度だと思って良いだろう。

 

総評

ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅はストーリーからシステムに至るまで20年前で時間が止まってしまっている作品だ。

ストーリーにしても、ゲームプレイ部分にしても普通に遊ぶことは十分に可能ではあるもののレガシーな側面が強い。
メインコンテンツと言える配合にしても導線も弱ければ、モンスターのバリエーションやビルドの幅も物足りなさが感じられる。
ある程度の楽しさは体験可能ではあるが、今の時代にわざわざプレイするべき体験には乏しいものがある。

 

外部記事

「 #ドラゴンクエストモンスターズ 」の歴史【 #スクエニの創りかた 】【#DQM3】 - YouTube

本日(12/1)発売『ドラゴンクエストモンスターズ3』インタビュー。"より遊びやすく、よりモンスターズらしく"を追求した最新作を横田プロデューサーに直撃 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

堀井雄二さん×藤澤仁さん×横田賢人さんが語る! 『DQⅣ』の世界観で描く『ドラゴンクエストモンスターズ3』誕生秘話 – Nintendo DREAM WEB

【レビュー】リバース:1999

I know the moon, and this is an alien city.

リバース:1999は中国のメーカーBLUEPOCHにより開発されたタイトルである。
本作は事前の宣伝にも非常に力を入れており、またPVなどからもわかるようにビジュアルスタイルおよび音楽が非常にオシャレだ。
他作品の名前を出して恐縮だが、筆者はこれを見てDeath Strandingのような雰囲気も感じたことを記憶している。

 

re1999.bluepoch.com

 

ストーリー

歴史的事件を題材にしたローファンタジー

リバース:1999では「神秘学家(アルカニスト)」と言われる不思議な能力「神秘術(アルカナム)」を使用できる存在をストーリーを動かしていくローファンタジーとなっている。
1999年に「ストーム」と言われる時間を逆行させ、1つの時代を消してしまうという現象が発生し、その現象の謎を解き明かすのが物語の中心となっている。
ストームは逆行後の時代でも再び発生が確認されており、それは何かしらの歴史的イベントをきっかけとしているようである。
ストームという現象を知るためにもその時間と場所を特定して調査を行う必要があるのだ。

主人公である少女ヴェルティは神秘学家の子供達を保護・収監して”教育”を施している聖パブロフ財団に所属するエージェントのような存在だ。
彼女は「マヌス・ヴェンデッタ」という不穏組織と対峙したり、あるいは聖パブロフ財団とも因縁深いようである。
物語は主人公がある程度の情報を知っている状態から始まるが、それに対してのプレイヤーに配慮した説明的なセリフはなく、ヴェルティが知っている事とプレイヤーが知っている事のギャップが大きいため物語を理解する上で最初は面を喰らう可能性が高いだろう。
つまり、物語を読み進めていく事で「こういう事なのか…?」と考察を深めながら読み解いていくものになっているのだ。

また、アメリカを発端に起きた「大恐慌(1930年頃)」をはじめ、歴史にあるイベントやオブジェクトなどのモチーフによって構成されている。
タイトルにもある「1999」にしても"ノストラダムスの大予言"が根幹にあると考えてもいいのかも知れない。
期間限定のイベントストーリーでも「リメカップ窃盗事件(1966年)」など少しマイナーな実在の事件も取り扱っており、事実にオリジナルの脚色を加えて描いているのが特徴的だ。
歴史に興味があるプレイヤーは何をモチーフ元としているのか考察したり、実際にどういう事があったのかを調べたりする事でより楽しく観る事ができるハズである。

 

システム

カードゲーム的要素を取り入れた戦闘

本作にある戦闘システムは比較的採用される事の多いカードゲーム的な要素によって成り立っている。
編成したキャラクターに応じたカードがターン開始時に配られ、配られたカードを使用する事で効果を発動させるようなイメージで問題ない。

少し特徴的な部分があるとすると「同じレベルのカードが隣接すると1つのカードに融合されカードのレベルが上がり効果が強化される」という部分だ。
強化されたカードは威力や回復量、バフ/デバフ量などが上昇するほか、モノによっては特殊な効果が追加されるようなものも存在する。
カード位置は任意に移動させて能動的にカードを隣接させることも可能なので、状況に応じて手札のカードの位置を気にながらカードを使用していく事も大切だ。
なお、カードが配られた時点で既に隣接している場合にはその場で融合されるため行動消費をせずに強化が行われる。

カードによる攻撃または移動は行動回数を消費して実行される。
状況などによって異なるケースもあるのだが、基本は3回カードを選択できるだけの行動回数が用意されている。
前述しているカードの位置移動も行動回数を消費してしまうので、攻撃に回すべきなのか手札の状況を変更するべきなのかを考慮して行動すると良いだろう。

本作では上記のような形式によって戦闘が行われるのだが、クリア済みの戦闘に関しては自動周回が可能になる。
戦闘では決められた素材が収集でき、素材を用いてキャラクターの強化が行える仕組みである。
これ自体はそう珍しいものではないが、本作の自動周回は「再現戦闘」を採用している。
つまり、自動の戦闘では今までで最も効率の良かった戦闘状況が再現される形になるのだ。
そのため、同じ戦闘でも更に短時間でクリアしなおす事ができれば自動周回もスピーディになるためプレイヤーが工夫するべき場所が残されつつ、恩恵にも繋がるものになっている。

土地を作ってリワードを得る

ヘックス型のパネルを使って土地を増やしていくようなサブコンテンツも用意されている。

こちらは土地を作っていくことによってゲーム内で使用する通貨や素材が自動で時間と共に生産されるようなイメージを持つとわかりやすいかも知れない。

パネルの配置に仕方によって生産効率が変わるようなやり込み要素はないようであるため、自分好みに配置して島を広げていくのが良いだろう。
また、島の中には所有しているキャラクターも配置可能だ。

 

グラフィック

レトロで美しい空気感を思わせる世界観は魅力的だ

リッチなイラストとLive2Dベースのキャラクターによって構成されている。
特に落ち着いたレトロでノスタルジーのある空気感を思わせる美麗なイラストの数々は魅力に溢れている。
イラスト自体の美しさはもちろんだが、彩度とコントラストを強めに表現しながらも全体をくすんだような色調でやや明度を落として表現する事で幻想的でダークな雰囲気が作り上げられているのだ。
これらの美しい美術は本作が誇る素晴らしいポイントの1つになっていると言って良いだろう。

また、時代を遡っていくという物語でもあるため、過去の時代を彩ったものも登場する点も興味深い部分になっている。

 

サウンド

サウンド面に関してもPVでも流れた「Symbiosis」などを筆頭に作風とマッチした落ち着いた雰囲気のどこかレトロな雰囲気を持ったBGMが多い。
特にキャラクター強化の画面などはお気に入りだ。
SEでも紙が擦れるようなものなどを採用していたりと、こちらでもレトロな空気感を出している。

ボイス関連の制御も細かく行われており、ボイスを途中で切った場合でもブツ切りにはせずに切り替えをクロスフェード的に行うようにしていたり、ダイアログ表示中に裏で喋っているような状況では声がくぐもったような遠くになるように演出されたりする。
また、難解なセリフ内容が多い本作だが、見事な演技によって支えられている部分も大きい。

 

総評

リバース:1999は大小様々な歴史的事件を題材としたファンタジーであり、プレイヤーの知的好奇心を印象的な美術の数々で満たしてくれる作品でもある。

目を引く見事なビジュアルスタイルと音楽センスは描いている世界観にマッチしており、懐古的とも言えるほどにかつての時代を美しく演出している。
また、戦闘ではカードを使用した戦略性とある程度の制御が可能なランダム性によってゲームプレイとしての面白さも提供している。

ただし、ストーリーでは確信をつくようなテキストが意図的に排除されているため、明快な内容にはなっていない。
そのような考察や考証を好むのかによっても印象が変わるタイトルだと言えるだろう。

 

外部記事

『リバース:1999』配信記念アニメPV - YouTube

[CJ2023]「リバース:1999」は“キャラクターがその世界で生きている”ことに注力して物語を描く。開発元のBLUEPOCHにこだわりを聞いた

2023.10.20|【開発者インタビュー】『リバース:1999』はゲームというよりも一つの映像作品!?レトロでオシャレな世界観を生み出すためにこだわり抜いた開発秘話に迫る|ゲームエイト

【ジョン・タイター】ムー編集長と『リバース:1999』の怪しいキャラをオカルト視点で分析してみた【クトゥルフ神話/ゲームさんぽ】 - YouTube