かつて、あなたも歩んだ物語
ブルーアーカイブ(以下、ブルアカ)は韓国のゲームメーカーNEXON Gamesが開発し、日本に本社を持つ中国系パブリッシャーYostarが運営するスマートフォン向けゲームだ。 ブルアカはキャラクター人気が非常に高い作品であり、2020年代では二次創作を中心に非常に活発なファンコミュニティーが構築されている。 また、使用されているBGMも定評がありどこかで聴いたことがあるという人も少なくないだろう。むしろ、広く使われ過ぎており元ネタが本作だと認知していない人もいるハズだ。
筆者もブルアカ自体は知っていたし、ゲームコミュニティー内でも話題にあがる事があり、興味はあったもののプレイできない状態でいた。 そんな中でいくらかの配信者がプレイしている姿を観て流石に触ろうと思ったのがきっかけである。
bluearchive.jp
ストーリー
全てが虚しくとも、最善を尽くさない理由にはならない
学園都市キヴォトスに連邦捜査部シャーレという組織に所属する先生として赴任したのがプレイヤーだ。 キヴォトスは基本的に複数の学校とそこに所属する生徒達の自治によって成り立っている連合都市となっている。 物語の大枠をイメージしやすいように非常に大雑把に記載すると、キヴォトスでは様々な混乱によって生じた生徒間での内紛状態があり、それをプレイヤーである先生が解決する…というものとなっている。 服装や背景のビジュアルはほぼ完全に日本の学校・学生となっているが、学園都市キヴォトス内に点在する学校や部活・委員会という比喩を用いて世界の縮図を再現しつつ、そこで繰り広げられる葛藤や苦悩はティーン世代らしいものを表現している。 つまり、国や組織内の対立という側面を描きつつも、それを学校や部活に置き換えることで世界観の親しみやすさと理解のしやすさの土台にし、しかしあくまでもストーリーの中心はキャラクター自体を軸とするジュブナイルを描いてプレイヤーが共感しやすいストーリーラインとしての満足感が高まるようにバランスを整えているのだ。
このキヴォトスで描かれるストーリーにおける設定は神話や宗教的モチーフを数多く用い、そして物語で描くテーマには近現代哲学をベースにしており、各学園はモチーフとなった神話が伝わる国や地域の歴史も僅かに内包した作りにしている。 例えば、プレイヤーが最初に担当する事になるアビドス一帯はかつては非常に栄えた街だったものの、現在では砂漠化が進み人々が離れていきアビドス高等学校は廃校寸前だ。 これはそのままエジプトの歴史でもあり、アビドス という名称自体もエジプト古王国時代の神話および要地である。 エジプトもかつては砂漠ではなく木々も生い茂るサバンナ地帯であり、しかし時代と共に砂漠化して紀元後にはもはやピラミッドやヒエログリフについて知る者が激減してしまった。 より深い楽しみ方としてこういった側面でも物語を読み解いていく事が可能になっているのも本作の魅力になるが、大前提としてこれらの事前知識がなければ楽しめないという事は全くないので安心して大丈夫だ。
これらで構築される物語としての満足感は非常に高いものになっている。 その理由は物語としての「山と谷」という基本構造を忠実に採用してカタルシスを生み出せるように構成している事が大きな要因だ。 何気ない日常をしっかりと描き、その上で谷へと突き落とすような展開に転がり、最後に問題解決に向けた山場へと持っていくという手法(三幕構成)は基本に忠実であるが故の満足感が高い構成なのである。 また、物語展開が飛躍しているような事はなく、しっかりとキャラクターの描写や心の移ろいを描いているため、物語が一段落した時のカタルシスとしての満足感が非常に高いものになっている。 ただし、各章の物語構成はどれもこの三幕構成的パターンである事が多いため、満足感は変わらず感じつつも進行の定型化も感じることになるだろう。
物語の演出にしてもテキストだけに留まらず、戦闘を用いて表現することも少なくないが、それに加えてキャラクターチュートリアル的な意味合いも含まれている。 メインストーリーやイベントストーリーで発生する戦闘は多くの場面でパーティーメンバーが固定されている。 そのため、キャラクターの個性や使い方と言った部分がある程度は把握できるような作りになっているのだ。 キャラクターが多いだけに、どのキャラクターが、どういった面で優れているのかを試遊させてくれる機能をストーリーにもしっかりと用意している。
生徒達を好きになるのはもちろんだが、それ以上に先生を好きになる
物語を進めていくと生徒達よりも先生に惚れていってしまうのも本作の大きな魅力である。 先生は一応はプレイヤーの分身であるが、ストーリー上ではしっかりと自身の信念を持って生徒達に接する大人でもある。 そのため、必ずしもプレイヤーの代弁者という役回りではなく、生徒達の先生として、子供達を支える大人として行動する事が少なくない。 そのため、プレイヤーとしては先生よりも人間関係に悩む生徒達への共感の方が強くなるハズであり、その悩みに寄り添ってくれる先生に魅力を感じるようになっていくのだ。
キャラクター別のストーリーも用意されている
何よりもキャラクターが重視されている本作ではキャラクター毎のストーリーもしっかりと用意されている。 キャラクター作りには一貫して「ギャップ」が意識されており、第一印象と実際の人となりに差異があるようにデザインされている事が非常に多い。
システム
操作自体は難しくないが奥深さもあるリアルタイムストラテジー
ブルアカの戦闘はRTS的な内容になっている。 RTSとなると戦場を包括的に管理していく事が必要になる事から奥深さはあるものの、管理する対象・要素が刻一刻と変化するため比較的高いプレイヤースキルが求められがちで敷居が高くなりやすいジャンルでもある。 しかし、本作では管理する要素を絞る事によってRTS的な楽しさをある程度は維持しながらも、そのハードルを下げる事に成功している。 では、プレイヤーは何を管理するのかだが、それはスキル回しただ1つである。 上の画像を参照して貰うとキャラクターが移動などをしているのが確認できると思うが、移動や通常攻撃は全て自動で行われる。 対して、右下の顔アイコンがスキルであり、これをいつ、どのタイミングで、どの位置に使うかをプレイヤーが制御する。 例えば、攻撃力をバフしてくれるスキルを発動した後に、強力な攻撃のアタッカースキルを発動するようにスキルを回せば効率的に敵に大ダメージを与えられるし、敵の強力な攻撃やデバフを対処するために防御や回復のスキルを使用するなど、変化する状況を見極めながらスキルを使うことになるのだ。 スキルを発動させること自体は難しくないのだが、それを発動させる順序やタイミングを考慮して運用するのはプレイヤースキルが必要になるという「操作自体は難しくないが、実際にやるのはちょっと難しい」というバランスにしているのは見事である。 なお戦闘はオートにすることも可能だが、オートでは一定の順序でスキルを発動するだけであるため難易度の低いコンテンツ専用だと思った方が良いだろう。
こういったメカニクス・シーケンスで戦う事になる戦闘の編成メンバーは戦闘員4名とサポート要員2名での合計6人となるが、コンテンツによっては更に大規模な編成が可能なものも存在する。 編成するメンバーには大雑把に書けばアタッカー、サポーター、タンクといった役割が設けられており、これらをある程度はバランス良く編成するのが基本になる。 例えば、アタッカーは火力は高いが体力に難があるケースが多い。それをカバーするためにタンクを編成して敵からの攻撃を受け止める。そしてアタッカーの火力やタンクの耐久性を高めるためにサポーターを編成するようなイメージをするとわかりやすいだろう。 しかし、注意点として特定コンテンツによっては効果的なキャラクターがいないと攻略が難しいケースも少なくない。 ゲームを始めたての場合にはクリアが難しいため戦力が整うのを待つ必要がある事は知っておいた方が良いだろう。 コンテンツ攻略が手荷物検査やドレスコードのようになってしまうのは確かに不快に感じられる部分はあるものの、逆に言えば各種コンテンツは実装されている様々な特徴の生徒を使い分けるように意図して作られている良い側面もある。 そのため、一見すると普段は使う場面に乏しいスキル効果を持ったキャラクターが輝ける舞台を用意してくれているのは良いデザインとも言える両側面あるものとなっている。
ギミック理解必須の戦闘における導線がかなり弱い
本作のゲームプレイ部分において気になるのはエンドコンテンツ周りの比較的高難度のコンテンツに対しての説明不足と導線不足に尽きるだろう。
エンドコンテンツに該当するような戦闘では攻略のためにギミックを理解してスキル回しなどをするケースが大半になってくる。 しかし、どのようなギミックなのかがゲーム内の情報だけでは全くわからないのは問題だ。 では、ボスと一度戦えば対策方法が理解できるような初見殺し系なのかというとそういう事でもない。 戦ってもギミックがわかりにくいのである。 例えば、説明が不足していてもゲーム画面を観れば攻略に必要なスキルや手順がある程度把握が可能に作られていればまだ良いのだが、視線誘導などを含む導線が非常に弱く、何が理由で攻略が上手くいかないのかが把握できない。 ある程度のパターンはあるものの、何も下調べもせずに挑むと意味がよくわからないギミックが発動して、いつの間にか敗北しているといった不親切さが目立ってしまうのは難点だ。 攻略に関しての情報がユーザーコミュニティーに丸投げされてしまっているのは問題だろう。
ハウジング
ハウジング要素のカフェ
本作にはカフェというハウジング要素も存在する。 家具を自由に配置する事が可能で、配置した家具のスコアに応じて収入を得ることが出来る。 収入では各種行動に使う事ができるいわゆるスタミナが回復するので、こだわりがない人でもある程度はハウジングをした方がゲームプレイへの音家になるだろう。
配置する家具は特定のキャラクターとの関連性も設けられている。 特定の家具と特定のキャラクターの組み合わせで専用のアニメーションが用意されているのだ。
グラフィック
スチルなどは美しくADVとして楽しみやすい
戦闘やハウジングでは3DモデリングされたSDキャラが採用されるが、SDながらもキャラクターの個性をしっかりと表現した待機モーションや攻撃モーションなどの各種専用アニメーションが作られているのは魅力的だ。
また、ストーリーではいわゆるスチルの他、キャラクター個別のストーリーを読むことでアンロックされるメモリアルロビーではLive2Dが使用されている。 このLive2Dはある程度のインタラクション要素もあり、例えば頭を撫でるとリアクションをしてくれたり、周囲をスワイプすると目で追ったりしてくれる。 その他にもキャラクター次第で専用のインタラクションが設けられているケースもあるなどこだわりが感じられる1枚になっている。
サウンド
全体的に日本の往年のADV的なテイストを彷彿とさせるBGMが多いように感じられる。 ストーリー中ではボイスの使用は限定的である事から、ストーリーを彩る要因としてBGMの比重が強くなるのだが、それに相応しい何度か聴いただけで記憶に残るような魅力的な楽曲が多数使用されている。 筆者の気に入っている楽曲を一部だけ紹介させて欲しい。
メインテーマ的に使われ、作中での使われ方も感動的な「Constant Moderato」
もはやブルアカを知らずとも聴いたことのある「Unwelcome School」
可愛らしい電子音が印象的な「After The Beep」
ノリ良いテンポ感が頭から離れない「HIGH5LANDER」
不気味で威圧的な「Interface (Hard Arrange)」
圧迫感のあるオルガンがイントロから流れる「Gregorius I Symphony」
慈悲を求める歌「Kyrie Eleison」
初期に聴くBGMのアレンジでもあり、静と動による緊迫感を出した「RE Aoharu」
総評
ブルーアーカイブ -Blue Archive-は誰もが共感しやすいジュブナイルと、簡単ながら手応えもある戦闘によって構成されている名作だ。
ストーリーでは政治や宗教や神話や哲学といったモチーフをフレームワークにしながら、難解な内容にならないように各種要素を学園と部活に置換する事でユーザーがイメージしやすくしている。 そしてキャラクターに大きくフォーカスしながら、基本に忠実な三幕構成で仕上げている事で物語として王道な満足感が得られるハズだ。
戦闘では敷居が高くなりやすいRTS形式を採用しながらも、プレイヤー操作をスキル回しだけに絞る事で、操作自体は簡単だが攻略はちょっと難しいという良いバランスに仕上がっている。 ただし、エンドコンテンツ関連の戦闘ではゲーム内の情報だけではギミック理解が難しいのは問題だ。
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