【レビュー】三國志13

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濃密なる三國志ライフ

筆者は三國志シリーズのプレイ経験は8からであるため、それほど長くは無い付き合いだと思う。
しかし、それでも筆者の好みはわかるようになった。
三國志シリーズではいわゆる君主プレイと全武将プレイの2パターンあるが、筆者は全武将プレイである方が趣向に合っていたのだ。
しかし、全武将プレイは10を最後に登場する事はなく、筆者としては若干の消化不良感を覚えながらシリーズをプレイしていた。
今回は久しぶりに登場した全武将プレイである三國志13をレビューする。

なお、本レビューは「三國志13 with パワーアップキット」のレビューとなる。

 

Switch 三國志13 with パワーアップキット

 

三國志13 with パワーアップキット PS4版

 

 

 

ストーリー

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ベースとなる時代を選んで進めるが気にする必要は無い

三國志シリーズは基本的に三国志演義をベースとしている。
シナリオは各時代から開始する事が可能で、例えば「黄巾の乱」であったり「赤壁の戦い直前」などの時代から好みの武将(正確には武官や文官)を選択して三国志演義の世界を追体験するような形となる。
三國志シリーズは三国志演義に沿ってプレイするのも良いし、自分好みのプレイをしても良い。

本作は全武将プレイだ。
全武将プレイとは三国志演義(三國志13)に登場する全ての人物でゲームをプレイできるという事だ。

また、登録武将といわれるプレイヤーが作成する事ができるオリジナルの武将でプレイする事も可能だ。

 

システム

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チュートリアルなども存在する

本作では「英傑伝」と言うシステムが用意されており、そこで本編の操作方法を学ぶことが可能だ。
三國志シリーズは総じて最初のとっつきにくさが強烈であるため、不安がある場合にはここを少しだけでもプレイしてから本編に行くと良いだろう。

 

本編

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様々な三國志ライフを堪能できる

三國志13は全武将プレイで様々な武官・文官(便宜上、一律で武将と記載する)あるいはオリジナルの人物になって三國志世界を楽しむ事が可能だ。
そのため、軍団全体を率いる君主でプレイしたり、軍団の中にいる一人の武官あるいは文官としてプレイしたり、あるいは何もしないニートのような在野の雄としてもプレイできる。
そう。本作のゲームプレイでは何をしても良い。そして、何もしなくても良いのだ。
これは全武将プレイの大きな特徴だろう。
筆者は「気ままな在野になってどの勢力が伸びるのか静観する」なんてプレイも良くやるのだが、疑似神視点のようなプレイが出来るのは個人的に非常に嬉しい。

そんな中にあって三國志13のパワーアップキットにて新たに登場した概念「威名」はロールプレイを更に強化している。
君主や将軍として中華統一というエンディングだけではなく、例え在野であっても商人などで特定条件をクリアすればエンディングを見る事が可能になっているのだ。
これによって非常に幅広いロールプレイを実現している。

では、前述の商人プレイを例に説明しよう。
商人は単純に物品・兵糧売買の差額によって儲けを得る事が基本的なプレイとなるが、商人として名声を得ていくと懇意の勢力に対して兵糧や兵士を出資できるようになる。
そして、その見返りとして多くの資金を貰ったり、勢力に対して要望(「特定の勢力を潰してくれ」など)を出したりする裏世界を牛耳るようなプレイが可能になるのだ。
なお、商人では一定の金額まで資金を貯める事ができればエンディングを迎える事も出来る(エンディングを延期して、そのままプレイする事も可能だ)。
そのため、例えどの勢力にも仕官していない在野の士であってもエンディングに到達する事ができるのだ。
その他にも将軍や侠客と言った威名(ロール)が存在しており、それぞれ様々な特有のコマンドが用意されておりプレイの幅を強化しているのは全武将プレイとの相性が非常に良いと感じた。
また、制約はあるもののこれらのロールはいつでも変更が可能であり、状況に応じて自分に有利な威名を名乗る事も良いだろう。

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初見プレイヤーには不安しか与えないGUI

とは言うものの三國志13…いや、三國志シリーズにはわかりやすい大きな問題を抱えたままだ。
それはそのコマンドの多さだ。これはもう上の画像を観て頂ければそれだけで伝わるだろう。
シリーズ未プレイのユーザーがこのような画面を目の当たりにした際に、その情報量の多さに尻込みをしてしまう絵が容易に想像できる。
この辺りのとっつきやすいGUIデザインは是非とも検討して頂きたい限りだ。
また、本作のコンソール版は恐らくPC版ベースに微調整を行っている程度であると思われ、操作性においてやや最適化が不足している。
コンソール版でも操作しやすいデザインも併せて検討願いたい所だ。

もしも初めて三國志シリーズをプレイし、それをこの三國時13にすると言う人は一番最初は選択肢(やるべきこと・やれること)の多い君主は選択せずに、操作感や雰囲気を掴むために気ままにまったりとプレイできる武官や文官を、パワーアップキット版であれば在野の商人としてプレイすることをオススメする。
また、通常版・パワーアップキット版共に最初にプレイするのであれば能力の高い人物を選択するのが良いだろう。

また君主として中華統一を目指した場合には、この手のゲームにありがちな序盤~中盤までは面白いものの、そこを脱してしまうと大勢が決してしまうため「もはや勝負にならない」状態になりダレてしまう(飽きてしまう)事が多い。
歴史シムであるため、下手な要素を付け加えるのは雰囲気を壊してしまうが、大勢が決したからこそ楽しめるようになる要素を追加するなど何か工夫を考えて欲しい所だ。

 

戦闘

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RTS的な戦闘システムは戦術性・戦略性もあり面白い

三國志13の戦闘システムは三國志12を改良したリアルタイムに動作する形となっている。

リアルタイムに変化する戦場で有利になるように立ち回る事で例え相手の兵数を下回っていても勝利する事が可能だ。

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戦法により味方にバフ、敵にデバフを仕掛けよう

戦闘において重要な要素の1つは「戦法」だ。

戦法は戦闘中に溜まっていくゲージを消費する事で味方にバフをかけたり、敵にデバフをかける事も可能だ。もちろん敵に大ダメージを与えるものも多く存在する。

また、戦場で親密度の高い武将がいる場合には効果量や効果時間上昇などの追加効果が発生する事もあり、普段からの交友関係も大事だ。

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ジャイアントキリングを狙うならば挟撃は欠かせない

自軍よりも強大な敵を相手にする場合に欠かせないのは「挟撃」だ。

上の画像では若干わかりにくいかと思うが、挟撃は敵軍勢を複数の方向から同時に攻撃する事で発生する。
挟撃が発生した部隊は士気が下がるため攻撃力も防御力も落ちる。
更に士気が落ち切った部隊は混乱状態に陥り反撃不可の状態にまでなる。
ここまで来てしまえば相手の部隊を壊滅させるのは容易いだろう。
この挟撃は2部隊だけで発生させる事が可能であるため、強力な敵部隊を上手く誘引して各個撃破狙うのも良い戦術となるだろう。

しかし、この挟撃は当然ながら自軍に発生するケースも考えられる。
自軍が挟撃されないように立ち回るのはもちろんだが、挟撃されてしまった場合には士気が無くならないように戦法などでカバーする必要もあるだろう。

リアルタイムに変化し、自分の軍勢の動かし方によって獲得した勝利には達成感があり面白い。

 

エディット

パワーアップキット版のみではあるが、エディット機能が搭載されている。
エディット機能では既存武将の設定値変更やアイテムの設定値変更、戦闘で使用する戦法エディット、そしてイベント編集などが存在する。
ここからはエディット機能に関する内容を記載していこう。

このエディット機能において残念だと言える部分があるとすれば、任意の勢力に任意の武将を配下にした状態でゲームを開始できるような機能が未だに実装されていない点だろう。
ゲームプレイをユニークな設定で開始したいユーザーは筆者だけでは無いハズだ。

 

史実武将編集

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自分好みの能力値に編集できる

三國志シリーズのパワーアップキット版ではもはやお馴染みであるが、史実武将の能力値に関して編集が可能だ。
シミュレーションゲームである三國志は基本的に三国志演義をベースに査定が行われている所があり、これに納得のいかないユーザーは史実に近い能力設定にする事も可能だ。もちろん自分好みに設定するのも面白いだろう。

また、オリジナルの武将を作成する「登録武将」ももちろん存在する。
こちらではゲーム内で登場しない武将を再現したり、自分好みの武将を作成したり好きに作成させる事が可能だ。
なお、登録武将に関してはパワーアップキットで無くても搭載されている機能だ。

 

史実名品編集

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ゲーム内で登場するアイテムの追加や編集も可能だ

パワーアップキット版では名品編集ではゲーム中に登場する名品(アイテム)に関して編集する事が可能だ。
能力値の上昇量や武将の特技への補正なども編集できるため、自分の考える値に変化してみても良いだろう。

また、登録武将と同様に名品に関してもオリジナルの名品を設定する事も可能だ。

 

史実戦法編集

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戦闘で活躍する戦法の追加・編集も可能だ

パワーアップキット版では戦場で使用する事になる戦法に関しても編集する事が可能だ。

ただし戦法の編集の効果に関して自由に設定する事はできず、あくまでもベースとなっている戦法の効果量を上下させる事が可能な形となっている。
例えば上図の戦法であれば「防御力アップの能力を追加・変更」は行えないが、「機動力の上昇量を+90に変更」は可能だ。

こちらに関してもオリジナルの戦法が登録可能となっているが、編集時と同様にベースを設定して変更する形式であるため自由な戦法作りは行えない。
痒い所に手が届いていないため、再現武将の再現戦法を作りたい…なんて時には丁度いいベースとなる戦法が無く困る事もあるかも知れない。

 

イベント編集

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ゲーム内で発生するイベントを自作可能だ

三國志13のパワーアップキット版で最もインパクトがある追加要素がこの「イベント編集」だろう。

自分で指定した条件の時に、自分で作成したイベントを発生させられるものとなっている。
ゲーム内で登場しない三國志関連のイベントを自分で再現して作成したり、全く関係ないハチャメチャなイベントを作ったりすることも可能だ。
なお、イベントにはサイズ制限があり余りにも長大なイベントを作成する事はできない。

イベント編集は非常にロマン溢れる内容になっており、面白い可能性を大いに秘めているものの、1つのイベントを作成するだけでもそこそこの時間が必要であるため、その事を念頭に置いてじっくりと取り掛かると良いだろう。
また、何でもかんでも自由なイベント作成できる…とまではいかない点も注意または工夫が必要だ。

 

その他の編集
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ゲーム中にも編集は可能だ

ゲームプレイ中であっても編集可能だ。
ゲームプレイ中に武将の能力値を弄ったり、名品の持ち主を変更したりもできる。

一部はゲームプレイ中にのみ編集可能な要素もある。
都市編集では都市の発展状況など、勢力編集では同盟などの状況に関して編集が可能だ。
また、都市を繋ぐ関所のような「集落」と呼ばれるものがあり、そこの設定を変更する事もできる。

 

グラフィック

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各武将のイラストは迫力満点だ

三國志シリーズではお馴染みではあるが、各武将のイラストは迫力満点だ。
また、今作では全員では無いものの内政時と戦闘時でイラストが変化したり、年齢によっても変化したりする武将も存在する。

また、武将名鑑ではシリーズ過去作の顔グラフィックも確認する事ができるようになっている。

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都市とフィールドがシームレスに切り替わるのは嬉しい

ゲームプレイ中には都市を移す内政用の画面と中華の広範囲を見渡すための画面が用意されているが、それらは全てシームレスに表示される。
グラフィック自体はそこまで精細とは言えないものの、都市で内政をやりつつ、外部で行われている戦闘の状況を確認すると言った機能性が良い。
何よりも都市と都市が地続きであると実感できるため見せ方としては非常に良いポイントだ。 

 

サウンド

BGM変更機能からゲーム内BGMが視聴可能だ。
BGM変更機能ではシチュエーション別に流れるBGMを変更する事が可能となっている。
本作のBGMは三國志11の”破竹”ほどインパクトの強い曲は無いが、BGMは盛り上がるもの・落ち着くものなど良いものが揃っている。

壮大な野望を感じさせる「曹操のテーマ」

安らぎのある「孫権のテーマ」

雄大な「皇帝のテーマ」

勢いのある戦闘を感じる「戦闘(優勢)」

頼もしさを感じる「勇壮」

この辺りが筆者のお気に入りだ。

 

総評

三國志13は筆者待望の全武将でプレイ可能な三國志シムだ。

リアルタイムに変化する戦場は面白く、例え在野であっても面白い形で世界に介入できる。
正に全武将プレイは三國志の世界を自由に体験できるのだ。

しかし、そのコマンドの多さによって圧迫感のあるGUIは初心者にとっては致命的なほどの苦痛に感じる事だろう。
メーカーにはここに何かしらの対処を行って欲しい所だ。

ユーザーはGUIの複雑さを理由に毛嫌いするのではなく、自分が出来る事を徐々に増やす事でその面白さに気が付くハズだ。

 

外部記事

“自分のこだわりを投影できる武将プレイ”を目指した。「三國志13 with パワーアップキット」利川哲章プロデューサーへのインタビュー - 4Gamer.net

「三國志13 with パワーアップキット」では,拡張版の枠を越え,プレイスタイルまで変えたい。利川哲章プロデューサーへのインタビュー - 4Gamer.net

【レビュー】よるのないくに2

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月の欠けた紺碧の夜

最初に書いておこう。筆者は前作「よるのないくに」をプレイしていない。
本作「よるのないくに2」がシリーズ初めてだ。
そのため、前作をプレイしていればこそのシーンに対してのリアクションは行えなかった。ご了承願いたい。

よるのないくに2は群雄が割拠した2017年に発売されたゲームだ。
本来であれば筆者はこの手のタイプのゲームをプレイすることは無いのだが、群雄の勢いが余りにも凄かったためAAAや大作では無いゲームがしたいと思っていたのだ。
そんな時にちょうど筆者の購入スケジュールの隙間に「よるのないくに2」が発売される事を知り、購入に至ったわけだ。
そんな経緯でプレイをした「よるのないくに2」のレビューを書いていこうと思う。

 

よるのないくに2 ~新月の花嫁~ 通常版 PS4版

 

よるのないくに2 ~新月の花嫁~ 通常版 Nintendo Switch版

 

 

ストーリー

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百合要素が主軸ではあるがシナリオは悪くない

本作のストーリーにはいわゆる”百合”のような要素が強い。
世界設定を大まかに説明すると「明けない夜の中、人々は魔物と化した世界」だ。
人々が平穏に過ごせる範囲が少なくなっており、それを維持するための「刻の花嫁」と呼ばれる生贄が必要とされる。主人公はその生贄に選ばれてしまった親友を助けようとするのだが…。

全体的なストーリーを通してみれば悪くない印象ではあるのだが、不満点も存在する。
1点目はノーマルエンドとトゥルーエンドの差分だ。
ネタバレであるため詳細には書かないが、トゥルーエンドにて明かされる内容を考えるとノーマルエンドが成立しないのでは無いかと思えるのだ。
2点目はストーリーの描き方だ。
カットシーンにおけるカメラワークやエフェクトなど演出面で”魅せる工夫”が無く、全体的に淡泊な仕上がりになっているのは少々勿体ない。

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百合の描き方にも少々不満が残る

主軸となっている百合の要素にも少々の不満が残る仕様がある。

主要となるキャラクターは8人ほど存在するのだが、本作はある程度の周回プレイを想定しているのか、性格的およびゲームシステム的な個性を1週目のプレイだけで全員分把握する事が機会的・構造的に少々難しい。
「百合」のような要素を取り入れているにも関わらず、各キャラクター性を理解できる工程が用意されていないのはグラブを持ちながら素手でキャッチボールをするようなものだ。

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前作プレイヤーには嬉しい要素もある

なお、本作には前作の主人公であるアーナスも登場している。前作プレイヤーには嬉しい要素ではないだろうか。

 

システム

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ストーリーと噛み合った制限を多用したシステム

本作のゲームプレイシーケンスをざっくりと説明すると、「ブリーフィング⇒出撃(フィールドに出ての探索とバトルアクション)」の繰り返しとなる。
しかし、ただ単純にコレを繰り返す訳ではない。ストーリー設定上の理由(月が欠けていき新月になってはいけない理由がある)から出撃可能回数に制限があるのだ。そして出撃回数が上限に達してしまうと事でゲームオーバーとなってしまう。
つまり、出撃した際にはできるだけ効率良くフィールドを攻略していく必要がある。
ところが、出撃にもおいても制限が存在する。出撃による探索は時限性なのだ。
限られた時間の中でフィールドを探索し、敵と戦い、行動可能な範囲を徐々に増やしていく事になる。
時間制限については最初は驚くほどに短いのだが、主人公をレベルアップさせる事によって増加する。
まとめると出撃時にはフィールドを効率良く探索しつつ、敵も効率良く倒していき、出撃可能回数到達までにボスを倒す必要がある。

とは言うものの全体的な難易度はそこまでシビアに設定されている事は無いため、クリアするだけならば問題なく設定されている。
しかし、ストーリーの項で前述したように本作では主人公と一緒に出撃できるキャラクターがそれなりに存在しているのだが、彼女達の個性を知るには出撃回数制限がされているシステムは相反した要素となる。
彼女達の性格的個性を知ったり、親密になったり、バトルシステムにおいての特性を知るには出撃をしないといけない訳だが、無駄な出撃をしてしまうとストーリーの攻略のハードルが上がってしまう。
また、出撃させないままでいるとレベルが低いままとなるため、余計に一緒に出撃させにくい悪循環となってしまうのだ。
百合的な要素(キャラクター間の関係性の表現)を含んでいるのであれば、ストーリー上で仲間になったキャラクターと必ず出撃する事になるチャプターを用意するなど、もう少しキャラクターの性格的・システム的個性を「強制的に」ユーザーに教えるような機会を設けた方が良かったように思う。

しかしながら、ストーリーとシステムが噛み合っている点は良いことだろう。
また、好き嫌いはあるかも知れないが単純なフィールド探索ではなく様々な回数制限や時間制限によってユーザーが感じる焦燥感も本作のストーリーテリングとして非常に有用なものではないだろうか。
とは言え、アップデートにより2週目以降は本システムの恩恵は無くなってしまうのだが。

とは言え、フィールド探索やバトルにおいて敵も味方もAIが貧弱であり融通が利かない事が多い事はストレスに感じる。
特にリリィである味方のNPCと従魔と言うサポートNPCはプレイヤーキャラクターであるコリジョン(当たり判定)があるのだが、キャラクター同士が衝突してもNPCが動いてくれない、または押し出せない事が考慮不足による設計上のバグを生み出している。
特定のフィールドに存在する狭い路地のようなところにキャラクターが入ってしまうと退路をNPCが封じてしまって出られなくなってしまうのだ。
退路を封鎖しているNPCをどかそうと追突しても微動だにしないため、筆者はやむなくゲームをリセットせざるを得なかった。

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バトルシステムは”大らか”な作りだ

フィールドの探索時に発生するバトルはわかりやすい表現をするならば「無双シリーズ」のものに近い。徘徊しているようなモンスターを簡単なボタン操作の組み合わせでバッサバッサと斬り倒していく。

仲間のNPCとバディ(作中ではリリィと呼称)を組んで出撃をするのだが、バトル中にはキャラクター毎に異なる特定の行動を行うと「ダブルチェイス」と呼ばれる強力な協力技を使用できる。
発動させるための条件はキャラクター毎に異なる訳だが、特にリリィの攻撃に合わせてプレイヤーが攻撃を行う事で発動するタイプのダブルチェイスは良くできているように感じた。
なぜなら、リリィが攻撃を行った際の声を聴いて、それに合わせてプレイヤーが攻撃する事でかなりタイミングを合わせやすいからだ。
他のタイプ条件では発動難度が高いリリィも存在するため、正直これが意図した設計であるかは微妙なラインに感じるのだが、共闘感を良く演出できている。

更に戦っているとゲージが溜まっていき、そのゲージを消費する事で発動する「リリィバースト」という強力な技も存在する。
こちらは狙わずとも普通に戦っていれば発動可能である。

バトルシステムは悪くないのだが、「当たり判定が1回で十分なのでは」と感じるような攻撃が多段ヒットし、敵でも味方でもガリガリ削れる事も多く感じられ、全体的に大らかな設計が多いのは少々気になるポイントだろう。

 

グラフィック

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グラフィックは少々物足りなさがある

グラフィックにおいては(本作の特色から言って当然ではあるのだが)キャラクターの造形に一番力を入れていると思われる。
しかし、それでもスタイライズド(デフォルメ)な表現を採用した同世代のキャラクターモデリング水準と比較してしまうと少々物足りないのは事実だ。

探索する事になるフィールドは更に簡素で「絶景」と言えるようなロケーションは少なく、テクスチャーに関してもお世辞にも綺麗だとは言い難い。
そのため、基本的にはストーリーやキャラクターの物語を楽しむのがメインと考えた方が良いだろう。

 

サウンド

本作の楽曲は良いと感じさせるメロディが多いのは良い点だろう。
メロディはPS2時代のような若干の古さを感じる気はしなくもないが、筆者はそれも含めて評価したい。

しっとりとした暗く悲しい曲や落ち着きのある安らぎを感じるような曲が多いが、バトルシーンでは非常にカッコいい(それこそ無双シリーズのような)曲も存在する。

総評

よるのないくに2はストーリーとシステムなどが噛み合いながらも、明らかに考慮不足な点や簡素すぎるグラフィックが目立ち、足を引っ張る結果となった勿体ない作品だ。
開発リソースにおいて苦労したようではあるが、満月になるにはまだまだ足りない点の多い欠けた月のような作品となってしまっている。

【レビュー】Dark Souls

 

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アドバンスドJRPG

ダークソウルは前作に当たるデモンズソウルと共に「ソウルライク」などと呼ばれるサブジャンルを確立したゲームの始祖とも言えるタイトルだ。

筆者が始めてプレイしたのは発売されてからしばらく経ってからであった。
当時はプレイ動画などでもかなり話題になっており、筆者が偶然見たときにその中世ファンタジーのような世界観やその世界の探索に魅力を感じてプレイしようと思ったのだ。

そんな中で今回は新たに発売されたダークソウル リマスターをプレイしたのでレビューをしていこうと思う。

 

DARK SOULS REMASTERED PS4版

 

DARK SOULS REMASTERED Nintendo Switch版

 

 

ストーリー

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想像を掻き立てるストーリー

本作にストーリーと呼べるような要素はほとんど無いと言っても過言では無い。
本作の主人公は「不死」と呼ばれる存在と成り果てた者だ。
これは「不死(死なない)」と言う設定が「何度も死ぬ」ことになるゲームプレイに対して説得力を持たせる事に成功しているのは特徴的だ。
また、全てのボスを倒した限りでは「あー…世界観がなんとなく…」くらいしか把握できない事だろう。
このような淡泊な表現(ストーリーテリング)は短所に見えるが、これは同時に本作の大きな長所ともなっている。

本作のストーリーはどちらかと言えば「察する」ことが多い。
時にはNPCのセリフから、またある時にはアイテムに書かれているテキストから、更にまたある時にはNPCあるいは敵の動きから読み解ける。
本作には点を数多く散りばめており、その点と点を繋ぐ線をユーザーに委ねているのだ。
このような表現方法はかつての日本のRPGをどこか彷彿とさせる。
まだ容量が少なかった時代には容量不足や表現不足を補う手法として類似の表現(点を散りばめるような表現・省略の表現)が採用される・採用せざるを得なかった事が多かったように思う。
容量が増えた昨今の作品では丁寧にストーリーを説明してくれる事が多い訳だが、本作のストーリーに関してはユーザーが興味を持たない限りは一切歩み寄ってくる事は無い。
ゲームプレイ重視でストーリーに興味を持たないユーザーもいる事だろう。
そのようなユーザーにとってもプレイの妨げをしない作りとなっていると言えるし、興味を持ったユーザーは多くの考察を重ねる事だろう。

なお、ダークソウルの前作とも言えるデモンズソウルは設定こそ似ている箇所が多いものの作品としての繋がりは無く、ストーリーを理解する上での事前知識としてはほとんど不要だ。

 

システム

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絶品のアクションRPG要素とフィールド探索

ダークソウル(ソウルシリーズ全般)のゲームプレイの魅力は何と言ってもアクションRPG要素と探索要素だ。

キャラクターに好きな装備をさせたり、好きな能力値に育て上げたりするのは自分が強くなっている事が明確に数値で実感できるため非常に楽しい。

また、中世ファンタジーをベースとしたフィールド・ダンジョンは探索のしがいがあり「マジかよ…!!」と思えるような所にヒントも何もなく宝箱や隠し通路があったりする(オンラインプレイの場合には他ユーザーがヒントを書き残してくれている事もある)。
それらを偶然にも発見できた時の喜びは何ものにも代え難い。
ノーヒントの探索要素や宝箱を開ける時のワクワク感が詰め込まれている点も昔のJRPGを思い起こさせるようなポイントだ。
これらの要素は(当然だが)何も知らない初回プレイ時の場合に特に楽しめる要素であり、既プレイヤーは記憶を消して再プレイしたいとも思える要素になっている。

しかしながら、本作ではゲームプレイにおける冗長な部分をプレイさせられる期間が長いと言う点は明らかな欠点だ。
本作では最終局面が開始されるようなタイミングで「スキップトラベル」のような機能が解禁される。
そのため、それまでの間は「鍛冶屋に行こう」「アイテムを購入しよう」などと思った際には自分の足でそこまで行かなくてはならない。
もちろん、その部分がゲームプレイとして成立しているのであれば文句は無いのだが、基本的に過去に通った道に存在している敵はプレイヤーの経験値やキャラクターの能力値が向上しているため、ハッキリ言って相手にならない程のザコ敵と化している。
それらを相手にせずに全て無視して目的地だけを目指しても良い訳なのだが、そのようなプレイになるのであれば「そもそもプレイヤー自身の足でその場所まで赴かせる」と言う行為自体が無駄と言う事に他ならない。
このような冗長なプレイを強いられているのは本作のゲーム進行のテンポを大きく落としてしまっている要因になっている。
なお、このような冗長な部分はシリーズの後作において改善されている。

 

バトル 

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ソウルシリーズを象徴する"致命の一撃"

ソウルシリーズのバトルシステム自体はアクション要素が強い。

敵の隙を伺い剣や槍で攻撃を行い、タイミングよく敵の攻撃を回避する。
武器や防具にも様々なユニークなものが存在しており、武器ならば巨大な特大剣から禍々しい鎌、重厚なメイスなどがあり、防具ならば王道な中世騎士や忍者衣装もある。
また、魔法や呪術などのファンタジー要素の強い攻撃方法もある。
これらを駆使して自分好みの武器や魔法などでダンジョンやボスを攻略できるのは非常に楽しい要素だ。
単純に使いやすさで選ぶも良し、見た目にこだわって選ぶも良しだ。

ソウルシリーズにおいて最も象徴的なアクションがある。
それが「パリィからの致命の一撃」だ。
実際にパリィと致命の一撃を行っているのが上図となっている。
敵の攻撃をタイミングよくパリィする事で”印象的な効果音”が発生し、そのまま攻撃ボタンを入力する事で致命の一撃に派生する。
パリィと致命の一撃は多くの人型の敵に対して有効であり、時にはボス戦でも可能だ。
致命の一撃が決まれば大ダメージを与えられるほか、その印象的な効果音も相まって非常に爽快だ。ドヤ顔を決めたくなる事だろう。
敵の攻撃をパリィする行動は一見すると難易度が高いように思えるかも知れないが、本作のパリィはソウルシリーズの中でも比較的簡単な部類だ。
理由としては単純で敵のモーションがハッキリしているケースが多いためだ。
本作ダークソウルにおいては移動する時には移動、攻撃する時には攻撃とメリハリがしっかりしており、また攻撃における前隙と呼ばれる予備動作も長めだ。
ボタン連打のようなプレイでなく、しっかりと敵を見ているならばパリィも十分に狙える事だろう。
ダークソウルをプレイするのであればパリィをたくさん決めて、ドヤ顔もたくさん決めていくのが爽快だ。

しかし、本作においては操作系において若干のフラストレーションがたまるポイントが存在する。
1つ目は入力した操作がキューイングされる点だ。
盾でパリィを失敗した際を例にするのがわかりやすい。
敵の攻撃が来る際にパリィを行おうとした際にタイミングが遅れ、普通に盾で攻撃を受けてしまったとしよう(パリィのボタンは入力済み)。
そうなると攻撃を受け切った後に入力済みとなっているパリィの動作が実行されてしまうのだ。
こうなると失敗の二段重ねのような気持になりストレスが溜まりやすい。
2つ目は回避方向の融通の利かなさだ。
回避方向は基本的に4方向(前後左右)しかないのだ。斜め方向などへの回避は行えないために痒い所に手が届いていない操作感はモヤモヤする事もあるかも知れない。

 

キャラクタービルド

ソウルシリーズは近年では「死にゲー」「難しい」などのイメージが先行して「難しすぎて楽しめないのでは無いか…」と不安に感じている未プレイユーザーも多いのでは無いかと思う。
だが、ソウルシリーズにおいてはRPG的なキャラクターの成長要素によってかなり強くなる事が可能だ。
そのため、時間をかけてキャラクターを強くすればエンディングまで到達する事は決して難しいものでは無いのだ。

HPや攻撃力を強化するのはもちろんだが、武器や防具も強化できる。
プレイヤースキルの向上だけでなく、キャラクタービルドによって強くできるため多くのユーザーが安心してプレイできるのでは無いかと思う。

また、周回する(エンディングを迎える)事で敵が強くなるため、ハードコアなプレイヤーは凶悪に強くなった敵とも戦う事ができる作りだ。

 

Artorias of the Abyss

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深淵歩きアルトリウス

Artorias of the AbyssはダークソウルにおけるDLCで追加された要素だ。
リマスター版においては最初から同梱されている。

アルトリウスとはゲーム本編において”深淵歩き”と言う二つ名と共にテキストでのみ登場した存在だが、そのアルトリウスの最後を知る事ができる。
そもそも本編においてもアルトリウスは演出面において優遇されている所があり、アルトリウス関連の装飾品や大狼シフとの戦闘中における凝った演出など印象に残りやすい。
そんなアルトリウス関連のイベントが追加されている訳だ。

ゲームプレイ部分としてはおおよそ2ダンジョン分ほどのボリュームがあり、新たな武器や防具、魔法が取得可能だ。
アルトリウスに関する装備も追加されるため、(後作の”ファランの不死隊”のように)アルトリウスの意思を継ぎたいような筆者のようなユーザーには必須の内容だ。 

 

グラフィック

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硬派な中世ファンタジー

本作はアップでも観れるほどに優れたグラフィック…とまでは言えないものの、硬派な中世ファンタジーを再現した世界観は圧巻だ。
また、退廃的な要素も多く儚げであり美しい。 

 

サウンド

本作においては基本的にボス戦でのみBGMが差し込まれ、フィールドBGMなどはほとんどない。
とは言え、強力なボスや印象に残るボスも多い事から、それらのボスと一緒にBGMも耳に残る。

中盤最大難所で嫌な記憶が蘇る人もいるであろう勇壮な「Ornstein & Smough」

印象的なイントロから始まる「Dark Sun Gwyndolin」

記憶に残る演出もあり悲しげな「Great Grey Wolf Sif」

伝説的な騎士アルトリウス「Knight Artorias」

これらは本作のBGMの中でも特に筆者のお気に入りだ。

 

総評

ダークソウルはやり応えはありながらもユーザー自身がレベルデザインを調整できるようにしてある非常に懐の深いゲームだ。
初心者から熟練者まで幅広いプレイヤーが自分なりの楽しみを得る事ができる作品となっている。

また、まるで淡泊ながら考察しがいのあるストーリーやヒントの無いフィールド探索など、端々からかつてのJRPGの潮流を感じるのだ。
かつてのJRPGをもしも現代の技術で自然な形のビデオゲームにしたとき、それはダークソウルのようなスタイルのゲームになったのではと思わない事も無い。

しかし、微妙にストレスがある操作感や非常に冗長な拠点間移動などはプレイしていて気になるポイントにはなるだろう。

 

外部記事

だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方 - 4Gamer.net

ゲーム制作未経験から世界的ヒット作「ダークソウル」を生んだ宮崎英高氏にインタビュー - GIGAZINE

【レビュー】戦場のヴァルキュリア4

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戦場に影を落とすフレンドリーファイア

戦場のヴァルキュリアシリーズはBLiTZ(Battle of Live Tactical Zone systems)と呼称するシミュレーションRPGとシューターをミックスしたような固有のシステムによってゲームプレイを実現させたゲームだ。

本作はその戦場のヴァルキュリアシリーズの最新作であり、ナンバリングとしては久しぶりとなる戦場のヴァルキュリア4をレビューしていきたいと思う。

なお、筆者は過去シリーズはプレイしていない(正確には僅かにプレイした事はあり、アニメに関しても視聴している)。
過去作の知識などが余り無い事にはご容赦願いたい。

 

戦場のヴァルキュリア4 Nintendo Switch版

 

戦場のヴァルキュリア4 通常版

 

 

 

ストーリー

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日本のアニメを彷彿とさせるストーリー

本作のストーリーはシリアス路線の日本アニメのようだ。
戦場や環境など主人公達が立たされている状況は常に過酷であり夢も希望も無い。
しかし、デフォルメされたキャラクターによって物語全体が暗くなりすぎる事が無いような構成だ。
フォトリアルなキャラクターを使用したゲームでは間違いなく違和感になる演出であるが、本作ではそのデザインからわかる通り日本のアニメを彷彿とさせシリアスなアニメを観ているような気分にさせてくれる。
設定自体は陰鬱で過酷であるが、アニメ的な表現によって受け入れやすさの敷居を下げる事に成功していると言えるだろう。

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敵が魅力的である事は何よりも良い事だ

ストーリーは全体的に良く、特に筆者が良いと感じたのは魅力的な敵キャラクターだ。
ゲーム中では凶悪なほどに強く、しかしそれでいて敬意を感じさせてくれる魅力的な敵は本作において非常に良い役割を持っている。

また、本作は過去作と同様の第二次ヨーロッパ大戦を別視点から描いており、シリーズファンならばニヤリとできるポイントもある事だろう。
過去作をプレイしているならばアニメを視聴したレベルの知識しかない筆者よりも更に楽しみがあると言う事であり羨ましい限りだ。

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どうにもテンポの悪いストーリーの見せ方

しかし、ストーリーにも欠点が無い訳では無い。
まず最初の問題点は物語の導入だ。
主人公をはじめとした主要なキャラクターの性格や過去が徐々に明かされる形式であるため唐突な導入となっている。
キャラクターや戦局が動き出していく4章辺りまでは興味をそそられる展開が少なくシナリオに興味を持てるまでに若干の時間を要する。

また、テンポの悪いストーリーテリングも気になるポイントだ。
本作のストーリーは上図のような紙芝居形式の演出が大半だ。
セリフはフルボイスであり、次のセリフを観るためにはボタンの入力を必要とする。
筆者は常々思う事だが、フルボイスのゲームには是非ともオート送りが欲しい。
理由は簡単だ。
声優さんが感情を込めて喋るテンポとユーザー(筆者)が表示されているセリフのテキスト読み進めるテンポが全く違い、後者の方が圧倒的に速い。
こうなると何を喋るのかわかっているのに喋り終わるのを待ってボタンを押さなければならず、どうにもテンポ感が削がれストーリーに集中しきれない。
物語に没入・集中したいハズであるのに、喋り終わる事に集中してしまうと言う本末転倒な演出では無いだろうか。ストーリーをじっくりと観たい時には極論コントローラーから手を放して、アニメや映画を観るように味わいたい筆者としては、このような仕様は好みではない。
本作に限った話では無いが、フルボイスであればテキストのオート送り機能を是非とも実装していただきたい。

また、話を小刻みに見せられるのもゲームプレイ全体のテンポを落としている。
本作はゲーム内のノートに貼り付けられた写真をユーザーが選択する事でストーリーを閲覧していく形式だ。これ自体は歴史を思い起こさせる・紐解くような演出でありストーリーテリングとして機能していると感じる。
しかし、その構成はテンポが良くない。
話⇒ゲームプレイ⇒話ならわかりやすいが、本作(恐らく過去作も)では話⇒話⇒話⇒ゲームプレイ⇒話⇒話⇒…となるような構成となっている。
時には数秒のテキストのためにだけに用意された話もあり、その度にユーザーに写真を選択する事を強いる。
筆者としては次のゲームプレイまで全てのストーリーを閲覧させ、その後に選択可能なストーリーとしての写真として分割される方が好みだ。

最後に気になるポイントは主要キャラクター以外の役割だ。
本作には多くのキャラクターが登場するが主要キャラクター以外の個性を把握するには「隊員断章」と呼ばれるメインストーリーとは異なる章を出現させてプレイする必要がある。
つまり、メインストーリーではほとんど関与が無いため、場合によっては個性をほとんど知らないままにゲームのエンディングまで到達してしまう事だろう。
キャラクターの中には他の作品をモチーフにしたと思われるキャラクターも登場しているなど個性が強いのだが、隊員断章を閲覧しなければ色物キャラクターが多いだけと言う印象にもなりかねない。
また、多くのキャラクターが登場するが出撃対象にしていない仲間が活かされるシステムになっていないのは勿体ない。これだけ多くのキャラクターが登場するのであれば出撃隊員に設定されていない仲間も活躍が可能なシステムが欲しい所だ。

 

システム

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シミュレーションRPGとシューターを組み合わせたBLiTZ

最初に記載しておくが、上の画像は本ブログにアップロード可能なサイズが10MBまでであるために通常よりも低解像度となっている。ご容赦願いたい。

シリーズの代名詞とも言えるシステム「BLiTZ」はシミュレーションRPGとシューターの要素を組み合わせた非常にユニークなシステムであり面白い。
BLiTZは過去作で既に完成形とも言えるシステムであり、本作では大きく変化したポイントが余り無いのは一長一短とも言えるかも知れないが、ユニークで面白い事には変わりない。

BLiTZのシステムを大まかに説明すると、シミュレーションRPGのように自軍攻撃ターンと敵軍攻撃ターンが交互に繰り返されるターンベースだ。
自軍のターンの場合にはポイント(CP:コマンドポイント)を消費する事でユニットを操作する事が可能になる。
操作しているユニットは1回だけ攻撃などの行動が可能だ。敵を射程内まで捉えて攻撃するのが基本だろう。
敵軍のターンの場合には敵軍が攻めてくる事になるが、自軍のユニットは敵兵士を視認した状態で射程範囲内に入ると自動で迎撃を行ってくれる。
迎撃は当然ながら敵軍も行ってくるため進軍には注意が必要だ。
視認した・された状態での攻撃は回避する・される可能性がある。
そのため、攻撃を確実に当てるためには死角から不意打ちを狙う必要がある。
特に敵エース級の兵士は回避能力が高く、まともに当てるためには不意打ちである必要があり煩わしく感じられる事もあるだろう(爆弾系などは回避されるとダメージ減少となる)。

今作で追加された新兵種である「擲弾兵」は敵でも味方でも驚異だ。
擲弾兵による攻撃は曲射砲であるため、障害物を越えて砲撃が飛んでくる。
そのため、攻撃時だけでなく防衛時の迎撃においてもかなりの脅威となる。
威力も高く、範囲攻撃でもあるため敵として配置されている場合には優先して排除するのが良いだろう。

現状のシステムでも面白いが今後に向けた要望があるとすれば、地形や科学を利用した攻略などが導入されても面白いのかも知れない。
例えば、「高所落下させた敵や味方は高さに応じてダメージが入る」「草地を燃やす事で広範囲に影響を及ぼせる(ただし、草地は無くなり隠れられなくなる)」などなど。
もっと直感性のあるシステムを導入する事も可能では無いだろうか。

本作において気になるポイントがあるとすればオブジェクトの判定の曖昧さだ。
例えば、射撃戦においてありがちな壁際での攻防などでは遮蔽物の当たり判定が曖昧でわかりにくい。一見すると当てられそうだが、実際には壁にヒットするなど理不尽に感じるケースもある。
また、戦車や装甲車などの車両で走行中も壁際などで妙なポイントで引っかかるような感じがありフラストレーションに繋がる事もある。

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戦闘中に発動する個性

戦場では条件が揃うと確率で「ポテンシャル」と呼ばれるスキルを発動する。

ポテンシャルはプラスの効果のものとマイナスの効果の両方が存在しており、それによってキャラクターの個性を表現している。
また、前述している隊員断章をクリアする事で対象のユニットのマイナスポテンシャルがプラスのポテンシャルに変化したりもする。

 

マップ

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存在意義が疑われるブリーフィング

本作のブリーフィングは存在意義が疑われる作りだ。

何はともあれ上図を観て欲しい。
もはや出オチだがユーザーはこれだけの情報でユニット配置しなくてはならない。
一応、簡単な注意点を口頭で説明してくれるのだが、基本的に大まかな作戦の流れしか説明されない。

この仕様はハッキリ言って問題だらけだ。
ユニットはそれぞれ近距離が得意な突撃兵、遠距離が得意な狙撃兵や擲弾兵などをユーザーが選択して配置する事になるのだが、上図のように何も情報が無いため誰が(どの兵科が)どれくらいの人数を必要そうであるのかわかりようが無い。
そのため、全ての戦闘で過不足なくバランスの取れたユニット配置をとりあえず行うようにするしかないのだ。
この手のゲームにおいて初見殺しのような敵配置やイベントはつきものだが、文字通り開始直後から初見殺しを喰らうのはプレイの効率を落とすし、何よりもブリーフィングの意味を成していない。
この仕様ならばもはや出撃メンバーをユーザーに選択させる必要が無く、固定メンバーが予め設定されていればそれで良いのでは無いかとすら思える。

もちろん、前述の通りこの手のゲームには初見殺しなどはつきものであるため、ブリーフィングの段階で全てのユニットが表示されている必要は無い。
せめて、開始地点から視認可能な敵だけでも事前に開示して欲しい所だ。

また、バトルに遷移する際の演出も冗長であり面倒に感じる。
特に同じステージを複数回プレイしようとする場合に気になるポイントなのだが、1回のスキップではバトルが開始されない事も多い。
キャラクターなどの会話などから実際にバトルに発展するまでに、スキップボタンを難解か実行する必要があるのは不親切だ。

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距離も高低差も不明なマップは致命的だ

同様に戦闘中に参照可能なマップも機能性が欠けている。

こちらも上図を観て欲しい。
このマップからは地形の情報(詳細な高低差や距離感など)が全くわからない。
そのため、攻撃しようとしても選択した兵科では実は射程が足りない、高低差があり実は攻撃できないなどが発生するのだ。
ターンに使用可能なCPの数は限られているため「何もできなかったけどまぁ良いか」とはなりにくい。

BLiTZのようなタイプのゲームであるならば戦術・戦略上、マップは非常に大事な要素だと思うのだ。
本来の指揮官(ユーザー)ならばマップの情報から「この味方からこの敵までの距離は○○であるから、まず君はコイツを狙撃してくれ」など指示を出す材料になるハズだろう。
しかし本作のマップ情報では指揮官(ユーザー)は「射程内かわからんけど、とりあえずお前動いて、撃てたら撃て」と言う戦略も何も無い場当たり的な指示をするしかない。
これではとても有能な指揮を行ったとは感じにくく、むしろ絵に描いたような無能上司タイプの指揮官だ。
「なぜこの兵士を選択する必要があるのか」「なぜこの兵士をその場所に移動・配置するのか」などを考えながらプレイできるものにして欲しい限りだ。

 

訓練開発

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劣悪なアクセス性の訓練開発

本作では「訓練開発」と言われるシステムによって部隊の強化が行える。

兵科のレベルを上げる「訓練場」や兵器開発・改良が行える「研究開発所」、ORDERを習得できる「サロン」といったものが用意されている。
しかし、これらのシステムへのアクセスのテンポの悪さは気になる所が多い。
選択したり訓練・開発を行うたびにキャラクターの簡単なセリフがモーダルダイアログ形式で差し込まれ、実際に行いたい訓練や開発がサクサクと出来ないのはストレスに思える。
ユーザーは訓練・開発が行いたいのであり、キャラクターのボイスを聴きに来ている訳では無い。
これらのセリフでキャラクターの個性を出そうとするのであれば、シナリオ面だけでしっかりと表現する事に徹して欲しかったし、そもそもとしてモーダルダイアログ形式によってキャラクターのカットとボイスを再生している事に問題がある。
SEのようにキャラクターのボイスを使用すれば操作が邪魔されないため快適に感じたと思うのだ。

 

グラフィック

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水彩画のような「CANVAS

映像は「CANVAS」と呼称している水彩画のようなタッチの鮮やかでありながら淡いタッチのグラフィックが特徴的だ。
とは言え、(当たり前だが)基本的に戦場しかマップが無いために「景色が綺麗」などは余り感じる事が無いのは勿体なく思えるし、キャラクターモデリングや戦場の風景などは近くで見るには若干苦しいディテールに感じる。
また、キャラクターは多いのだが、主要キャラクター以外のモーションは汎用となってしまっている。濃いキャラクター達がいるにも関わらず個性を出せていないのは勿体ない。

 

サウンド

音楽に関しては緊迫したものが多い印象があるが、総じて記憶に残るようなメロディは少ないように感じる。
しかしながら、本作では特定の条件を満たす事で劇中のBGMをいつでも聞く事が出来るようになるのは嬉しい要素だ。

 

総評

戦場のヴァルキュリア4のストーリーはバランス良くできており、シリーズお馴染みのBLiTZというシステムを利用した戦闘もユニークで非常に面白い。
しかし、ブリーフィングやマップ、訓練開発などの頻繁にアクセスするシステム周りが足を引っ張っており、面白さに対して小刻みにフレンドリーファイアをかましている感は否めない。

総合的には面白い事には変わりは無く、じっくりと楽しめる一作だ。
今後のシリーズ作にも期待できる仕上がりになっている。

 

外部記事

『戦場のヴァルキュリア4』開発者インタビュー!戦場と友情、雪と色彩 - YouTube

『戦場のヴァルキュリア4』ディレクターインタビュー。気になる新要素や7年分の裏話も!? - ゲーム★マニアックス

【レビュー】Red Dead Redemption 2

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時間強盗

Red Dead Redemption 2(以降、RDR2)は2018年に発売されたタイトルの中でも最も注目を集めていた作品と言っても過言では無いだろう。
そもそもパブリッシャーのRockstar Gamesと言えば「ゲーム業界の冨樫先生」と言っても過言ではないぐらいにリリース数が少なく、しかし高品質なゲームを提供してきている。
そんなメーカーの出すゲームともなれば期待せずにはいられないだろう(と書いているもののRockstar Gamesのゲームをプレイするのは久しぶりだ)。

なお、筆者はベースとなったRed Dead Revolverおよび前作Red Dead Redemption(以降、RDR)をプレイしていないため、その辺りはざっくりとした知識しか無い事を予めご了承願いたい。

 

レッド・デッド・リデンプション2 通常版

 

 

ストーリー

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映画を観ているようなクオリティ

RDR2のストーリーはディティールが抜群だ。

映画のような高品質の映像に加えて、海外声優の演技はどれも繊細な感情が表現されている。ローカライズにおける日本語訳に関しても非常に丁寧であり、よくある「ん?」となるような翻訳は筆者が記憶にある限りは全くと言って良いほど無かった。
濃密な西部劇映画を観ている気分にさせてくれる本作のストーリーのディティールは他の追随を許さない史上最高峰のクオリティに仕上がっている。
本作はRDRの過去を描いているが前知識など全く無くても基本的には問題ないだろう。逆に前知識を入れる事で逆算からオチが読めてしまう事はあるかも知れないが。

プレイヤーは無法者が淘汰されつつある時代を生きるギャングの一員アーサー・モーガンだ。
アーサーは尊敬するダッチに従っている。ダッチギャングのメンバーが豊かに、そして自由に生きられる場所・方法を模索する。
ダッチに従っているメンバーもクレイジーと言う言葉がピッタリと合う”マイカ”や頼りになる参謀の”ホゼア”など非常に個性が強い。
特に筆者がお気に入りのキャラクターは寡黙だが豪胆さと冷静さを併せ持っている"チャールズ"や「40秒で支度しな」とでも言わんばかりのパワフルさと包容力を持った"スーザン"おばさん、物語が進むにつれてどんどん頼もしくなる"セイディ"だ。
もちろんRDRの主人公であるジョンも捨てがたく、何よりも主人公であるアーサーは非常にクールだ。
ダッチのギャングメンバーには好きになれないような人物もいるが、ストーリーを長く進めていく事でそれを含めて愛おしい家族のように感じられる事だろう。

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メアリーとの関係は繊細だった

サブシナリオも非常に充実している。
家の建設にお金を貸す事もあれば、狩猟を教える事もある。ラジコンの船でミニチュアの船を破壊するものも存在する。
とにかくバラエティー豊かで楽しめる内容が多い。

筆者が特にグッと来たサブシナリオはアーサーのかつての恋人であるメアリーとのイベントだ。
詳細には是非ともプレイして頂きたい所ではあるが、二人は今でも心の奥底で秘めた想いがあるが二人の関係は”立場”と言う分厚い透明なガラスの壁で隔てている。
非常に素敵で繊細な関係性を実に見事に表現している。

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痒い所に手が届かない字幕と過度なQTE、世界観にマッチしない日本語フォント

史上でも最高峰のストーリーと言っても過言ではない本作であるが、残念に感じるポイントが多かったのも事実だ。

まず、単純にYouTubeの自動翻訳レベルの字幕表示手法はカッコ悪く感じるだろう。
また、デフォルトでは主要キャラクター以外には「誰のセリフか」が書いておらず、設定から話者の表示が行えるが上図左のように複数の一般NPCの場合にはインクリメントされたインデックスが追記されて区別がなされるのみであるため「複数人が同時に喋るとき」には誰がどのセリフを喋っているのか把握しにくくなっている。
また、本作の一般NPCは喋っていても字幕があるケースと無いケースが混在しているため街中などでは余計にわかりにくい状況を生み出している。
ここまでディティールにこだわっているのであれば字幕の表示方法や話者の判別方法にもこだわりを見せて欲しかった所だ。

次に気になるのはQTEの頻度と種類の多さだ。
シナリオにおいてことあるごとに要求されるQTEは正直言ってめんどくさい仕様だ。
また、フラストレーションが溜まりやすい大きな要素として「ボタン連打なのかボタン長押しなのかわかりにくい」ことが挙げられる。
例えば上図の真ん中がQTEシーンなのだが、右下にボタン入力の指示が出ているのがわかるだろう。しかし、これを見せられてもボタン連打なのかボタン長押しなのか区別が出来ない。
また、シーンによっては突発的に射撃を要求されるもあり、失敗すると即死亡のような面倒な仕様でもある。
リスタートポイントは細かく設定されているため、すぐに再チャレンジできるようになっているが、筆者としてはカットシーンではカットシーンが観たいのだ。
QTEが差し込まれる事によりカットシーンでは無くQTEに集中してしまうのは本末転倒だ。

日本語フォントのミスマッチも気になる所だ。
これは上図の右を参照して欲しい。
これはショップで銃を購入する際のインターフェースだ。
カタログ形式で銃を選択できる事自体は世界観の雰囲気があり非常に良いポイントではあるのだが、日本語フォントが100歩譲っても世界観に合っていない。
これは日本語フォントでは無く、日本語自体がミスマッチしている可能性もあるが、ここまで世界観表現にこだわっているのであればローカライズ手法としても工夫が欲しかった所だ。

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融通の利かないシナリオはゲームプレイと乖離している

RDR2のストーリーは根本的に立ち位置にも問題がある。

本作のストーリーは前作RDRの過去「どのようにしてダッチ率いるギャングが崩壊していったのか」を描いている。
つまり「未来では有り得ない事は起きない」ことが確実な状況だ。
もっと簡単に書けば「前作RDRで登場した人物はシナリオ中に死ぬことは無い」し、その逆もまた然りだ。
そのため、メインシナリオではとにかく融通が利かない(そもそも正当な理由など無くてもRockstar Gamesのゲームは融通が利かない事が多い)。
「○○が死んでしまった」「△△に隠れなかった」「××から離れてしまった」など(ほとんどどうでも良いような理由)で簡単に失敗扱いにされる。
正規で無い順路でクリアする事は出来ないようになっている構成は、オープンワールドを採用している意味を喪失している。
例えば「○○が死んでしまった」ならば死んでしまったものとしてストーリーが進めば良いハズだ。
しかし、過去を描くと言う事はリニアなシナリオにならざるを得ない。
あるいはリニアなシナリオの言い訳が過去を描くと言う手法に繋がったのかも知れない。

ここまでリニアにするのであればカットシーン等で強制的にそのような状況にして欲しかったようにも思う。
例えば「△△に隠れなかった」と言うのはメインシナリオのとある銃撃戦の際に発生したものなのだが、その銃撃戦の状況的にはかなり有利に感じており筆者は隠れる必要性を全く感じなかったのだ。そのため、そのまま銃撃戦を維持していたのだが、隠れずにいると半ば強制的な死亡になってしまう。
必要性を感じないにも関わらず隠れなかっただけで死亡するシーンを作り出すくらいならば、そのシーンに突入した際にカットシーンが差し込まれアーサーが強制的に規定の場所に隠れると言った方法でも良かったと思うのだ。

主人公アーサーの立ち位置もかなり曖昧だ。
ゲームプレイとしての主人公アーサーはほとんど無個性であるため主人公≒アーサーと言っても過言ではないが、本作のリニアなシナリオの中のアーサーはとたんに自身の個性を発揮し始めてしまう(プレイヤーの知らない過去の話や人間関係など)。
そのため本作が「プレイヤーに西部劇を体験」して欲しいのか、「プレイヤーにアーサーの追体験」をして欲しいのかがイマイチ見えてこない。
もしも本作のオープンワールドとしての側面を前者である「西部劇ライフシム」のような形で捉えた場合には、極論として本作のようなリニアなメインシナリオならば(品質は高いとしても)メインシナリオ自体が不要では無いかとも思える。

 

エピローグ

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エピローグ

ここでは重大なネタバレを含む記載があるため注意願いたい。

本作のその後を描いている前作RDRでは登場しないアーサーの最後は想像しやすいだろう。エピローグではプレイヤーが操作するキャラクターがアーサーからジョンへと切り替わる。
エピローグであるジョンの物語も本編同様に非常に濃密であり、本編中では実質的に行く事が困難であった地域にも行けるようになる。
エピローグシナリオも楽しめる要素がふんだんに用意されているのは嬉しい限りだ。

このようなブログに書いたとしても”後だしジャンケン”のように思われるかも知れないが、この展開は筆者の予想通りだった。
RDR2の主人公アーサーとRDRの主人公ジョンを綺麗に繋ぐ方法がこれ以外に思い付かなかったからだ。
物語の中盤にはアーサーが不穏な咳をするようになり「あ。やっぱり死ぬのかな。」と思わせたが、確信したのは物語終盤で病気によりアーサーの顔色が青ざめていったためだ。流石にエンディング後の世界を真っ青な顔色のアーサーが練り歩くとは考えにくいだろう。

「筆者の予想通り」と記載したが正確には異なる。
筆者が予想したのは「RDR2はRDRのリメイクが内包されている」だ。
そうすることでRDR2のゲームプレイで起こした事件や生き残った人物などの状況によって、内包されたリメイクRDRのシナリオに動的な変化を与えらえる訳だ。
前述した「○○が死んでしまった」などの融通の利かないリニアな作りを脱する事も可能だろうし、むしろそうでなければRDR2のシナリオは大筋でユーザーの想像通りの道を歩むしか無い。
そこまで制作するのは非常に困難な道のりだろう。
しかし、Rockstar Gamesならばそこまでやってくれるのではと言う期待も僅かにあったし、何よりもそうしなければ予定調和とも言える「過去を描く」と言う手法のシナリオに驚きを与える事は出来ないと考えていた。 
結果としては予定調和的なシナリオでしか無かった訳なのだが。

 

システム

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劣悪な操作系

本作の操作系は近年稀にみるほどに劣悪だ。

パッド(コントローラー)のありとあらゆるボタンを押す事になるし、1つのボタンであっても長押しや連打によって使い分ける事はもちろん、複数ボタンの同時押しも必要とされる。
機能性が全く無いのだ。
そのうえ、同一のボタンに複数の機能を乗せてしまっているため誤操作も多い。
狩った動物を持ち上げようとしてジャンプをしてしまうのは平常運転で、最も酷い時には馬に乗ろうとして近くにいたオジさんを恐喝してしまう事もあった。
自分が行いたい操作とは異なる動作により発生したデメリットは言いようの無い理不尽さがあり大きなフラストレーションに繋がる。
RDR2は史上最高峰のディティールのゲームでリアリティ満点だが、この劣悪な操作系はナチュラルさの欠片も無く不自然でゲームに集中するどころではない。

また、ゲームの進行テンポが遅すぎるのも問題だ。
馬から降りた際に馬の積み荷から銃を取り出す必要があるのもテンポが悪い。
狩った際に動物を規定の向きに変えてから捌き始めるのもテンポが悪い。
焚火の前で食料やアイテムを作成するのもいちいちモーションが入るし、何よりも1回につき1つしか作成できないのもテンポが悪い。
また、地味ながらモーションの切り替わり時などにボタン入力するなど、タイミングが早すぎるとGUIでは反応しているにも関わらず実際には動作しない事もあり、これもテンポを落としている。
何をするにしてもとにかくテンポが悪く時間を使わざるを得ないのだ。
「テンポを犠牲にしてリアリティを得ている」のであれば(古臭い手法ではあるが)まだ褒める事はできるが、先ほど挙げた例に関してはどれも「リアリティを向上させている」と言うには苦しいものがある。

良くも悪くもついつい時間を忘れて没頭してしまう事を「時間泥棒」などと表現する事はあるが、本作の場合は多すぎるボタンと遅すぎるテンポによって時間を長く使う事を強要されている。
言うなれば「時間強盗」だ。

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存在感が無いファストトラベル

ファストトラベルはほとんど存在感が無い。

いつでもどこでもアクセスできる訳では無く、上図のように特定のポイントにある地図を参照するか、あるいは街にある電車を利用する事で移動を短縮できる。

実際に使用した場合にはファストトラベルの所要時間はSSD未換装の通常のPS4で1分40秒程度と近年の標準と思われる20~40秒からは大きく劣る。
読み込む必要があるデータ量が多いのは理解できるのだが、この仕様と所要時間ではハッキリ言って使う機会はほとんど無いだろう。

目的地への移動は基本的に馬を使用する事になるが、フィールド上には特別な何かがある事は稀であり、後述のランダムクエストが発生する程度だと思った方が良いだろう。
まったりと映像と雰囲気を楽しみながらプレイを楽しみたいユーザーにはたまらないが、ゲームをプレイしたいユーザーには少々退屈かも知れない。

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充実したランダムイベント

街中や道中で発生するランダム生成されたクエストは充実しており面白い。

NPCを助けてあげたり、あるいはいきなり襲撃される事もある。
助けてあげたNPCはケースによっては街まで送る事もあり、その際には雑談が行われるのだが、それらも話としてしっかりしており面白い。
また、以前に助けた事のあるNPCが店での買い物を肩代わりしてくれる事もあれば、再び同じ災難に合っている事もある。
最初に出合った土地とは距離的に遠い土地で出会うと流石に違和感を覚えるが、それでもプレイヤーを覚えてくれているのは嬉しい事だ。

多くプレイしているとパターンが掴めてくる所はあるとは言え、それでも非常に良くできており筆者としてはランダムクエストを更に充実させて欲しかったと思うばかりだ。

 

デッドアイ

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西部劇のガンマンを演出するデッドアイ

デッドアイは非常に強力なスキルだ。

デッドアイを発動させると時間の流れが遅くなり敵を狙いやすくなるだけでなく、装填されている銃弾の数だけマーカーを付ける事も可能で、マーカーを付けた状態で発砲するとほとんど100%の精度で撃ち抜くことができる。
また、デッドアイ中は耐久能力も向上するため銃撃戦では積極的に使用したいものだ。
リアリティの欠ける要素ではあるのだが、筆者としては「現実のガンマン」と言うよりも「西部劇映画のガンマン」と感じられ非常に好印象だ。

デッドアイに限った事では無いが、筆者としてはやはり純粋なアナログスティックによるエイムはどうにもやりにくく、ジャイロセンサーや加速度センサーを使用したエイムが恋しく感じた。

 

生活

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様々な生活を楽しめる

RDR2では銃撃戦以外にも様々な形での生活を楽しめる。
時には狩猟を行い、狩った肉を焼き、魚を釣り、ポーカーなどの賭け事をしたり、風呂に入ってサッパリできる。

狩猟や釣りの操作系は変わらず面倒なのだが、どれもやり応えは抜群でちょっとしたミニゲーム感覚で楽しむ事が出来るだろう。

ただし、狩猟動物のAIは総じて良いとは言えない。
狼や豹はプレイヤーを見つけたとたんに襲い掛かってくるなどリアリティが欠けている。この動作がスタイライズド(デフォルメ)な映像表現のゲームならば許容可能なのだが、フォトリアルな映像でこのような挙動をするAIは違和感しかなく、動物をバカにしているようにすら感じる。
また、内臓類も取り出していないため軽く100kg以上はあるハズの鹿や猪をちょっとした手荷物でも持つような感覚で容易く向きを変えたり持ち上げたり、まるで服でも脱がせるかのように皮を剥いだりするのは余りにもリアリティが無くゲーム的だ。

このように一部でゲーム的にしようとしたり、かと思えばテンポと操作系を犠牲にしたリアリティを求めたりと一貫性が無いのは少々勿体ないように感じる。

 

グラフィック

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圧倒的なディティー

RDR2においてグラフィックのディティールは正に圧倒的だ。

木漏れ日やフォグ表現は繊細で、遠方に映る丘や山々は非常に美しい。
オープンワールドを採用したゲームでこれほどのディティールを持ったタイトルは過去にない次元だろう。
ゲーム中では三人称視点と一人称視点の切り替えが可能だが、一人称視点であってもテクスチャの粗さや木々の葉っぱ等の品質は全く落ちていない。

しかし、時より処理不可が高いと水の飛沫や雨と言ったエフェクトが明らかに荒くなる事があったが発生頻度は低く全体の品質から考えれば些細な問題だろう。

 

サウンド

音楽に関しては近年のオープンワールドの傾向と同様であり印象に残るものは余り無いが、西部劇的なBGMが挿入されるメインシナリオの一部の銃撃戦はテンションが上がること間違い無しだ。
また、同様にメインシナリオの一部で流れるカントリーミュージックも素晴らしい。

 

ボイス

音声面で最も特筆するべきなのは演技だ。

シナリオで聴かせてくれる迫真の演技に関しても史上最高峰であると感じる。
本作のシナリオは西部劇映画のような内容でストーリーやセリフ自体が単純に良いのは間違いないが、それに加えて演者の演技が抜群であるために良さが数倍に跳ね上がっているように感じる。

また、通常のゲームプレイ時においてもボイスのこだわりを見せる。
主人公(プレイヤー)はNPCに対しての呼び掛けが可能なのだが、それに関しても「NPCの性別や年齢などによるセリフの変化」や「主人公とNPCの距離によって複数パターンのセリフ」が存在するなど芸が細かい。
NPCに関してもスペイン語や中国語を喋る事もあるなど丁寧だ。

しかし、唯一残念に感じたポイントとして移動中に使用する事が多いであろう(Rockstar Gamesお馴染みの)シネマティックモードはカメラと喋っているキャラクターとの距離によってボイス音量が変化してしまう事だ。
例えば、セリフの途中でカメラ位置が変わるとボリュームが上がったり下がったりするため、撮影失敗した映画を観ているような気分にさせられる。
最低限、セリフが終わるまではカメラ位置がキープされるなどして欲しかった所だ。

 

総評

Red Dead Redemption 2は強い光と強い影を併せ持った作品だ。

本作の映像やボイスのディティールは間違いなく他の追随を許さないレベルだが、劣悪な操作系と悪すぎるテンポも間違いなく他の追随を許していない。
”リアリティ(説得力)”をマッチョ思想のパワー勝負的なディティール表現と操作系・テンポを犠牲にして作り出す手法は余りにも古臭く愚直だ。
仕舞にはテンポが悪いにも関わらず、リアリティからかけ離れているケースもあるなど明らかに残念なポイントすらある。

「多くのゲームをプレイしたい」「時間が余り取れない」と言ったユーザーにはオススメできないが、「1つの作品をじっくりとプレイしたい」「時間だけはある」と言ったユーザーには最高の1本では無いだろうか。

 

外部記事

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【レビュー】実況パワフルメジャーリーグ2009

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一球入魂

実況パワフルメジャーリーグ2009(以下、パワメジャ2009)は当たり前だが2009年に発売された実況パワフルプロ野球(以下、パワプロ)シリーズの一作だ。
本作はNPBでは無くMLBにフォーカスしたシリーズ作品の最終作品となっている。

2009年と言えば日本野球界では歴史に名を遺すWBC2009が開催された年のゲームでもある。そのため、本作ではWBCに関する内容も収録された作品でもあるのだ。
筆者はこの頃にメジャーリーグに興味を持ち始めていたため、メジャーリーグ関連のゲームが無いものかと思っていた際に発売された需要と供給がバッチリ噛み合ったゲームであった。

今回はそんな出会いでプレイをしたパワメジャ2009をレビューしよう。

 

 

ストーリー

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サクセスのストーリーは少々物足りない

本作には…と言うよりもパワプロシリーズにはストーリーと呼べる要素が無いためサクセスに関するストーリーを中心に記載していこう。
なお、サクセスのシステム面における内容は後述の「システム」の章に記載する。

パワプロシリーズでは最も人気のあると言っても過言ではないサクセスだが、本作においてはそのストーリー面の内容は歴代でも薄めだ。
主観的な話でしかないため評価の分かれる所ではあるだろうが、全体的に盛り上がるようなイベントに欠けるうえ、各キャラクターを魅力的に印象付けるイベントも少ない。
また、恒例となっている”彼女”は本作においても存在しているが、彼女たちの魅力も非常に弱い。
そのため、サクセスだけを中心に楽しさを求める人には肩透かしを喰らうだろう。

 

システム

本項ではパワメジャ2009におけるシステム面について記載する。

と、ここで本命の要素について記載する前に本作の走攻守のパワーバランスを大まかに記載しておこう。
本作の走攻守は「王道戦術こそが輝き、それ以外は日の目を見ない」ことになっている。
では具体的に何が日の目を見ていないのかだが、それは「バント」と「盗塁」と「投手のスタミナ」だ。

バントに関しては後述の”YOMIシステム”で詳しく記載するが、ここで簡単に書いてしまうと本作では普通にバッティングするよりも難易度が高い技術になっている。
これでは容易にバントと言う選択肢をユーザーが取る事は難しいと言わざるを得ない。

次に盗塁だ。
本作は圧倒的に盗塁が難しい。走力Aで捕手の肩力がD程度であっても普通に失敗すると言って良い。(走力はA前提でも)成功率は30%かそれ以下の印象だ。
こうなると下手にランナーを動かすのは危険だ。

そして最後は投手のスタミナだ。
本作のスタミナ消費量はとてつもなく激しい。
スタミナがギリギリAになる程度では100球は投げきれない…どころか70球から80球でバテてるのが平常運転だ。
スタミナが200以上あると90球程度は頑張れるため完投・完封も射程圏内になるが、それでも繊細かつ強気な配球を求められる。

このように小技と言われる手段や若干時代遅れとも言える先発完投などは非常に難しいバランスだ。
本作はあくまでも現代野球の王道である「打って点を取る。継投で点を抑える。」と言う事がシステム側から求められてしまうため、幅広い戦術を色々と楽しみたいユーザーや日本野球の感覚に慣れ親しんでいるユーザーには痒い所に手が届かない印象を与えるだろう。
しかし、逆に言えばMLBを中心とした現代野球の考え方であるならば気になる事はほとんど無いものだろう。

 

YOMIシステム

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YOMIシステムは野球ゲームを”野球”にする

本作の最も特筆するべき要素に「YOMIシステム」がある。
これ無くしてパワメジャ2009を語る事は不可能だ。

YOMIシステムは端的に説明すれば「相手の投球位置を予測する」ものだ。
予測は相手投手の投球位置にミートカーソルが近いか否かとなる。
例えば相手投手がインローに投げようとした場合、ミートカーソルをインローに構えていれば的中、インローから遠い所に構えてしまうと外れだ。
予測の的中度は3段階でミートカーソルが赤>オレンジ>黄色の順となっている。
上のGIF画像を確認してみて欲しい。
左は投球予測に成功しており、右は失敗した時のものだ。

予想が的中した場合に発生するメリットは
「投球位置が素早く表示される」
「選手のパワーに補正がかかる」
となっている。
予想が外れた場合のデメリットは
「投球位置が表示されるのが遅い」
「ミートカーソルを動かすとミートが小さくなっていく」
となっている。
またその他にも
「打席中に同じ球種が続くと投球位置が早く表示される」
と言ったユニークな性質も持っている。
少しわかりにくいかも知れないが、これも上のGIF画像を観ると右側のYOMI失敗パターンでは投球位置を示すポイントが表示されるのが遅い事が確認できるだろう。

では実際にこれを使用するとプレイに対してどのような影響があるのか。
端的に表現してしまうと「圧倒的な投手有利」の環境が出来上がるのだ。
これは予測が外れれば投球位置を示すポインターが表示されるのが遅くなる事が影響として最も大きい。
上の画像を確認した限りでは微妙な差に感じられるかも知れないが、筆者が数多く体感してきた限りでは「ボールが消えた」と感じる事すらあるほどのインパクトだ。
これはパワプロシリーズをプレイした事のあるプレイヤーであれば投球位置を示すポインターが表示されない(表示されるまでにかなりのラグがある)状態でバッティングを行う事を想像すればその難易度の高さは伝わるだろうか。

YOMIシステムによって本作は間違いなく圧倒的な投手有利なゲームとなっている。
しかし、この要素によって本物の野球らしい体験がいくつも実現されている事は見逃してはならない点だ。

まず、パワプロシリーズでは絶好の狙い球となる事が多い4シーム(ストレート)の威力は格段に上昇している。4シームはスイングの入力受付時間とボールへのコンタクト時間が最も短い。つまり、予測が外れていると投球位置のポインターが遅延表示がされる影響により瞬時に判断を行わなくてならないのだ。
これによって例えば高めに大きく外した4シームなどが(素早く振らなければ当てられないという打者心理も相まって)空振りを誘うのに非常に有効となる。

また、逆にチェンジアップやスローカーブと言った遅い変化球も絶妙だ。
前述のとおり、4シームは受付時間などの関係から投球後は比較的素早くスイングボタンを入力する必要がある。しかし、遅い変化球は逆にボールにコンタクトできる時間の開始が遅い。
ここまでは通常のパワプロと同様だが、これがYOMIシステムと噛み合う事により「わかっているのに打てない(ゴロになる)」のだ。

筆者がプレイしたパワプロシリーズはそう多くは無いが、「4シームが脅威」「遅い球とわかっているのにタイミングが合わない」と感じた事は後にも先にも本作のみだ。
打てないことは悔しくもあるのだが、野球と言うスポーツ自体が好きな筆者からすれば、これがまさしく「野球」なのだ。

ここまでピッチングをメインに話を進めて来たがパワーバランス的には不利ながら打者に関してもデータリテラシーが実際の野球に近い点も興味深い。
ここまで語ってきたように本作のYOMIシステムは明らかに投手有利なシステムだ。
打者からすれば予測が的中しても(体感的には)通常のパワプロ相当のバッティングになるだけであり、言い方を変えれば「減点方式(予想が当たって初めて”従来通り”)」だろう。
そのため、予測が外れるほどにバッティングに対してペナルティが付与される。
とは言え、そのような環境となるとプレイヤーが選択する事になるデータリテラシーは「パワプロ」ではなく「野球」に近似してくる。
顕著な例を2点挙げよう。

1点目は「打席での心構え」だ。
YOMIシステム上では打者は基本的に”打てない”が前提に立つ。
そうなると「打てる球が来るまで無理をしない」心理が働くのだ。
自分の得意なコース、失投など何でも構わない。打てるまで待つのだ。
幸いにも野球はストライクが3回コールされない限りアウトにならないではないか…と。つまり、2ストライクと追い込まれるまでは例え明らかなストライクゾーンであっても打てないと感じるのであれば振らなくて良いのだ。

2点目は「ファール」だ。
前述の通り、YOMIシステム上では待ち球戦術が基本であると筆者は考えているのだが、これによって今までのパワプロシリーズでは考えられない程に光り輝くバッティング技術が生まれている。
それが”カット”などと表現されるような”ファール打ち”だ。
2ストライクまで追い込まれてしまうと、次のストライクを取られてしまえば当然アウトになる。
であるならば、追い込まれてからの投球では少しでもヒットになる可能性にかけてスイングする事は必然だ。とは言え、なんでもかんでもスイングするわけにもいかない。
ボール球には手を出したくは無いのだが、予測が外れた際に投球位置が見えない(見えにくい)と言うデメリットがあるため、投球されたボールがストライクゾーンに来るのかボールゾーンに来るのかの判断が非常に難しい。
そんな時に「ヒットは難しいが当てる事はできるボールをカット(ファール)」するのだ。プレイしたての段階では予測が外れた際にボールがどこに来るのかが全く分からず困惑するが、慣れてくると投球位置のポインターでは無く、投手が投げたボールそのものからインコースorアウトコース / 高めor低めがなんとなく掴めるようになる。
そこからストライクゾーンかボールゾーンかきわどい投球に対して無理矢理当てるようにして(必ずできるとは限らないものの)ファールを狙う事が可能なのだ。
文字では少々伝わりにくいかも知れないが、ギリギリのボールに対して何度もファールを打ち1打席で10球以上も粘れた時の達成感は本作でしか味わえない特殊なものだ。

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YOMIシステムの強い輝きは強い影も生み出す

しかし、大きな輝きを見せるYOMIシステムだが、調整不足により影を何点か生み出してしまっている。

まず1つ目は「バント」だ。
このYOMIシステムの特性はバントを行う際にも発揮される訳なのだが、これがバント時に自分が出したバットのせいでボールの投球位置が全く見えない。
これによってバントの成功率…いや、そもそもバントでボールに当てること自体が非常に難しくなっている。
本作のようなバランスの場合にバントと言う戦術は基本的に選択する事は無いとは言え、この難易度ではとてもじゃないがヒットを狙う方が確率が高い。

次に気になるのはやはり「予測的中時のバフ」だ。
本作では予測が的中した際に発生するバフと呼べるものは「パワーに補正」くらいであり、その他の要素は従来のパワプロ相当になるだけなのだ。
これはハッキリ言って割に合わない。
予測が的中した際には少量程度で構わないのだが、ミートにロックオンを付与して更に当たりやすくするようにして初めて予想する事に意味が出てくる。
現状のバランスでは甘い球を待ち、ヒットが難しいボールはカットしてファールする事が主体だ。これ自体は正に野球であり非常に面白い要素となっているのだが、本作のバランスでは逆にこれしか選択できないのは勿体ない。
イチかバチか山を張って本塁打を狙うにしても、高速変化球(ツーシームSFF)などでは予測が当たってもバットに当てる事はまず難しい。
予測が的中した時には打者がかなり有利になり、予測が外れた時には投手がかなり有利になると言った極端なバランスにしても良かったのでは無いかと思う。

ちなみに、これからパワメジャ2009をYOMIシステムを使用して始めたいと考えている人は最初は無理してスイングせず、打てない事を前提に考えて打てると確信したボールのみを確実にヒットにするように心掛ける事を推奨したい。
そうする事で自然と自分のヒットゾーンが徐々に広がっていく事だろう。
なおオススメはしないがYOMIシステム自体はOFFにする事は可能だ。
YOMIシステムを使用しない限り、本作の変化球は全体的にいわゆるキレが余り無く脅威とはならないため打者有利の傾向が強くなる。

 

選手エディット

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国内発売のパワプロ系列では唯一の選手エディット機能

選手エディットはゲーム内に収録されている選手のエディットをほぼ自由に行う事ができるモードだ。
エディットによりオリジナル選手を作成する事は出来ないのは少々残念だが、それでも嬉しい要素だ。
変更可能なのは上図に記載している項目となる。顔パーツの変更は行えないため注意だ。

この選手エディットはオプション的な立ち位置ではあるものの、デフォルトの選手査定が100歩…いや1万歩くらい譲歩したとしてもテキトーと言わざるを得ないため、後述のシーズンなどで選手個人・リーグ全体をまともと言える成績にするためには選手エディットが必須だ。

筆者は有名なFangraphsESPNなどを駆使して収録されている全選手の能力値をエディットした。
これらのサイトを利用したのはパワーなどの基本能力だけでは無く、特殊能力に関しても印象先行の曖昧な査定では無く、データ的に正しいと言えるものを設定したいと言う筆者の思いがあったからだ。
例えば、打撃傾向のプル率からプルヒッターを付けるべきか参考にしたり、P/PAの数値から積極打法・消極打法を設定したり、IsoDと三振率などから選球眼を付けるか参考にしたりしたのだ。
このような調べ方をしながら可能な限り一人一人を調査してエディットを行ったため、1球団分の選手をエディットするのに数時間を要した。

これは良く言えば「エディットがあったからこそ忠実にこだわれた」のだが、悪く言ってしまうと「エディットが無ければ絶望的なまでの選手査定」なのだ。

 

サクセス

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選手作成の自由度は驚異的だ

ここではストーリーではない部分のサクセスについて記載していこう。

本作のサクセスでは大きな特徴がある。
それは「リセットによるデメリットが無い」点だ。
これは恐らくだが選手エディット機能が実装されている事が影響しているものと思われる。

これに加え、もう一つの要素「ギャンブラーチケット」によって本作では「ほとんど自由な選手作成」が可能となっている。
「ギャンブラーチケット」とは取得するのに必要なポイントが1以上あればギャンブラーチケットを消費して確率でその能力が得られると言うものだ。得られるのは基礎能力でも特殊能力でもポイントを消費して得られる能力であれば何でも可能だ。
これを駆使すれば(リセマラの嵐にはなってしまうが)尋常ではない選手作成まで可能となる。

また、「継承アイテム」と言うものがあり、バットやグラブ、スパイクなどの基礎能力値に補正をかける装備品アイテムをサクセス選手に所持させないままサクセスを完了すると、次回以降のサクセス選手にそのアイテムを持ち越して購入する事が出来るようになる。
これらのアイテムは専用アイテムによってアイテム自体の効果を強化可能であるため、球速やパワーなどの能力値を簡単に大幅アップできるのだ。
更に、後述する「メジャーライフ」によってサクセスで作成した選手を更に強化する事も可能となっている。

サクセスのオススメは他の追随を許さず「グァヴァ・ストロベリーズ」だ。
ここではGMを追いかける事で定期的に貰える給料が増えていく。
そのため、体力回復をサクセス内のショップアイテム購入(コスパが最高の特製パワリンが良い)で行い効率良く練習が行える。
また、ギャンブラーチケットもショップ購入品のため特殊能力や投手なら変化球をガンガン覚えさせる事も可能だ。
更に前述の継承アイテムの購入も容易となり、基礎能力値は簡単に最大値に到達させる事が出来るのもシステムの恩恵を最大限に活かせている。

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最大限に駆使する事でこれくらいの選手がほぼ確実に作成可能だ

上図の選手はサクセスを最大限に活用したのち、メジャーライフによって追加で能力アップを行った選手だ。
この選手では変化球が全MAX値となっていないがこれは筆者の趣向によるもの故だ。筆者は「全能力MAX」というのがパワプロなどに限らず全てのゲームにおいてキャラクターの個性を潰している気がしてしまうため好んでいない。そのため、やろうと思えばここから更に変化球も全て最大値まで伸ばす事も可能である。
これらは非常に時間はかかるが、逆に言えば時間さえかければほぼ確実にこれくらいの選手が作成可能となる。

注意点として、サクセスでしか獲得できない特殊能力やメジャーライフでは上げる事ができない基礎能力などがあるため事前にサクセスで目指す能力を決めておく事が重要だ。

変化球

以下に変化球のおおよその情報を記載するので、サクセスの際には参考にして欲しい。最高球速は4シームで出せる最高球速から最小で何㎞/h遅いかと言う指標だ(つまり変化球の最大球速と思って貰って良い)。
これは投手の最大球速により若干変動するためおおよそと思って貰いたい。
なお、★は筆者のオススメの球種だ。

4シーム[最高速度 球速±0km/h]
2シーム[最高速度 球速-3km/h]★
ジャイロボール[最高速度 球速±0km/h]

スライダー[最高速度 球速-15km/h]
Hスライダー[最高速度 球速-9km/h]
カットボール[最高速度 球速-5km/h]

カーブ[最高速度 球速-26km/h]
ドロップカーブ[最高速度 球速-31km/h]
スローカーブ[最高速度 球速-45km/h]
スラーブ[最高速度 球速-18km/h]
ナックルカーブ[最高速度 球速-18km/h]★

チェンジアップ[最高速度 球速-24km/h]
サークルチェンジ[最高速度 球速-24km/h]
フォーク[最高速度 球速-19km/h]
SFF[最高速度 球速-12km/h]★
フォッシュ[最高速度 球速-18km/h]
Vスライダー[最高速度 球速-15km/h]
パーム[最高速度 球速-35km/h]
ナックル[最高速度 球速-18km/h]★

シンカー[最高速度 球速-23km/h]
Hシンカー[最高速度 球速-9km/h]
スクリュー[最高球速 球速-20km/h]

シュート[最高速度 球速-10km/h]
Hシュート[最高速度 球速-7km/h]
シンキングF[最高速度 球速-4km/h]

なお、本作においても恒例の「オリジナル変化球」があるのだが、そちらはバグなのか不明だがキレなどがほとんど無くなってしまう。
そのため、ベースとした変化球よりも基本的に弱体化されてしまうため注意が必要だ。
強いて言えば、元々キレなど無いスローカーブやパームと言った変化球との相性は良いため、実用性を考えるならばこれらを選択する事をオススメする。

 

シーズン

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パワプロのペナントに相当するシーズン

シーズンはパワプロシリーズにおいて「ペナント」に相当するモードだ。
プレイヤーはGM(ゼネラルマネージャー)となり、選手やチームと言ったマネージメントを行う。
選手采配や指導も行うため、正確にはGMと言うよりもGM兼監督兼コーチと言う立場になっているような気もするのだが、そこまで言うのは少々野暮だろう。

基本的な流れなどは歴代シリーズと変わらない。チームをトレードやFA選手獲得、ドラフトなどで強くしていき、ワールドシリーズの覇者を目指そう。
また、シーズンではリーグ拡張が可能である。新たな任意の2球団を追加して楽しむ事も可能だ。サクセスなどで作った選手で構成したオリジナル球団を投入してみるのが面白いだろう。

しかしながら、シーズンではバグの存在が少々気になるところだ。
特に問題になるのは「クラッチ逆転バグ」だ。
クラッチとは特殊能力の事でパワプロの「チャンス」に相当するものだ。
シーズンではこの性質が逆転してしまうバグが存在している。
シーズンを自動で進行させると顕著にわかるのだが、ミートが低いにも関わらず高打率を記録している打者は高確率でクラッチヒット1、2(チャンス1、2相当)を取得しており、ミートがいくら高くてもクラッチヒット4、5を取得していると低打率に落ちている。
クラッチヒットと言う特殊能力1つでここまで打撃成績に影響があること自体にも問題があると思うが、性質が逆転しているのは何ともスッキリしない。
筆者の場合にはこの性質のため、選手エディットを行った際に全選手のクラッチヒットを消すように設定を行った(そもそもクラッチヒットと言う特殊能力自体が印象である側面が強いため好きではないが)。
シーズンなどに関係なく、その他にも比較的簡単にわかるバグがちらほら散見され、何故これらが改修されなかったのかが不思議なくらいだ。

 

メジャーライフ

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パワプロのマイライフに相当するメジャーライフ

メジャーライフはパワプロシリーズにおける「マイライフ」に相当するモードだ。
プレイヤーは1人のメジャーリーガー(マイナーリーガー)となり、MLBでの活躍を目指す事となる。
メジャーライフではマイライフ同様に現役の実在選手を操作する事も可能であるが、サクセスで作成したオリジナル選手でプレイする事も可能だ。
また、メジャーライフでは特定条件をクリアした際に取得できるアイテムを使用する事でメジャーライフで鍛え上げた選手をサクセス選手のような形で取得する事もできる。
なお、メジャーライフで取得した選手は再びメジャーライフで活躍させる事ができないため注意が必要だ。

メジャーライフは前述のシーズンと同様のアーキテクチャで組まれている節があり、そのためこちらでも同様のバグが存在している。
プレイヤーが操作する分には正直言って気になる事は無いのだが、シーズン終了時のリーグ全体の選手成績が気に入らないと感じる場合には要エディットとなるだろう。

 

選手カード

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地味ではあるが選手カードと言うやり込み要素もある。

入手方法は様々に用意されているのだが、本作では上図のように選手カードによる選手の写真付きカードが収録されている(一部は写真無し)。
これによってメジャーリーガーの知識を得る事も可能な点は嬉しい所だ。

 

グラフィック

パワプロシリーズ自体、そこまで美麗なグラフィックにこだわっていないため、本作においても劇的な何かがある訳では無いが、メジャーリーグ特有の個性溢れる球場は見物だ。
また、サクセスなどで登場するオリジナル球場においても実に個性的である点も見逃せないポイントだ。

 

サウンド

パワメジャ2009の楽曲はパワプロ系列の楽曲と比較して全体的にクールでカッコいいメロディに仕上がっている。
中でもOP曲やサクセスの「モンモンモンキーズ」における試合BGMは必聴だ。

 

総評

実況パワフルメジャーリーグ2009は、YOMIシステムによる圧倒的な投手有利なゲームとなっているのだが、それによって生み出される打撃の緊張感と達成感は筆者が知る限りでは間違いなくNo.1の野球ゲームだ。
サクセスにおいても自由度が高く、収録されていないような再現選手作成なども行いやすい点も筆者としては嬉しいポイントである。

しかし、致命的では無いとは言え簡単に見つかるようなバグが多いのも事実だ。
また、バントと盗塁の難易度の高さ、異様に消費の激しい投手のスタミナ、調べもしないで査定したとしか思えないデフォルト選手能力など、100歩譲っても気になる調整になっている事も問題点と言わざるを得ない。

筆者としては最も理想に近い野球ゲームであると言えるのだが、それと同時に至らない所もハッキリと見える作品でもある。

【レビュー】大神

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太陽は昇る

筆者が大神という作品に出合ったのはPS2時代だ。
当時から狼という動物が好きだった筆者は、狼が主役のゲームに手を出さないハズが無かった。
今では名実共に史上に残る名作となっている。

それから約10年経った今、筆者も久しぶりにプレイをしたので今回は「大神 絶景版」のレビューをしていこう。

 

大神 絶景版【Nintendo Switch用ソフト】

 

大神 絶景版【PlayStation 4用ゲームソフト】

 

 

 

ストーリー

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日本神話や伝承をベースにしたストーリー

大神のストーリーは日本の神話や伝承をベースにしたストーリーとなっている。
そのため、日本人であれば聴いたことのある登場人物もとても多く、親しみやすい事だろう。
とは言え、使用されているのはあくまでもベースのみであり、実際の神話や伝承とは描かれ方は異なる点に注意だ。

ストーリーの大筋は妖怪達によって災いや呪いの蔓延する世界を主人公である大神アマテラスと相棒イッスンのコンビが浄化し、人間を含む動植物に幸福をもたらす事だ。
アマテラスとイッスンは様々な冒険をして多くの人と関わり、多くの生命を救っていく事になる。
本作ではストーリーが主体となりプレイヤーをグイグイ引っ張っていくストーリードリブンなタイプのゲームとなっている。
そのため、プレイ重視で文章を読まずに進めてしまうタイプのユーザーは注意した方が良いかも知れない。

ややネタバレになってしまうが、物語の終盤になるとSF的な要素も出てくる。
しかし、この展開はプレイヤー目線としてはやや唐突・突飛な話に思える。
物語の後半でタカマガハラと言われる土地の存在が語られ、アマテラスは最後にタカマガハラへと向かう。タカマガハラはアマテラスの故郷とも言える土地ではあるのだが、プレイヤーからすれば未開の土地でしかない。
操作するアマテラスの知識≒プレイヤーの知識であるため、プレイヤーが理解・納得しないままにアマテラスがタカマガハラへと向かう行為はプレイヤーとアマテラスを引き剥がすような行為に他ならないように感じるのだ。
もっと端的に表現すれば”打ち切りENDのようなモヤモヤ感”である。
本来は本作の本編に続く"タカマガハラ編"なども存在したと言われるが、その影響である可能性は否めない。

とは言え、ストーリーは全体的には非常に素晴らしい。
特にラスボス戦の演出は傑作と言えるだろう。
ストーリー上で多くの者たちと関わって来たからこそ感じる事ができる感動がそこにある。

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メタ表現も交えたチュートリアル

本作では操作や機能に関してメタ表現を交えて説明される。
これらの説明は単純な説明によってプレイヤーを白けさせる事を防ごうとしている節があり、可能な限りチュートリアルの説明も面白くしようとしており丁寧で好印象だ。

 

システム

本項ではシステムに関して記載する。

初めに大まかな欠点を記載しておこう。
まずはカメラワーク関連だ。
大神のカメラワークは全体的に鈍く、向きを変える際に少々時間がかかりアクションが行いにくいケースがある。ここは若干のストレスに感じる事もあるだろう。
また、エリアが切り替わった際にカメラ位置が記録されない事による問題も気になるポイントだ。
例えば、下方向に入力した状態(アマテラスが手前に来る形)でエリアを出たとしよう。しかし、次のエリアに遷移した際に下方向にトリガーを入れっぱなしにしていると、元のエリアに戻ってしまうのだ。
この状況の問題点がわかるように記載すると、
ユーザーはアマテラスがカメラに正面を向いた状態でエリア遷移しているが、エリア遷移後はカメラはアマテラスの後方に戻っているのだ。
これはカメラの表示位置がエリア切り替えによってリセットされてしまうために発生する問題でもあるし、それを見越した調整をしていないために発生している問題でもある。
このカメラ位置がリセットされてしまうのはもっと単純な問題として見やすいポジションに移動をさせてもリセットされてしまう事を意味しており不親切だ。

大きな欠点では無いながら、大神アマテラスの走行スピードの遅さも気になるポイントだ。
アマテラスは最大3段階のダッシュ速度の変化があるが、最大速度であってもエフェクトにより速く見えるものの実際のスピードはそれほど向上しておらず行きたい場所まで走るのに結構な時間を必要としてしまう事も多い。
ファストトラベルのような機能も存在しているが、使用するには使用可能なポイントに赴く必要もあり不便だ。

これらのカメラワークやダッシュ速度、ファストトラベルの仕様はいずれも10年以上前の過去の作品であるが故のものとも言え、傑作と言えども時代を感じさせる要素だ。

 

筆しらべ

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インタラクションが世界に影響を与える

大神と言う作品において最も特筆すべきシステムは「筆しらべ」だ。
筆しらべはユーザーが特定の図を画面内に描くことによって発動するギミックだ。墨瓢箪(MPのようなもの)がある限りはいつでもどこでも使用する事が可能だ。
発動するものは太陽を出現させたり、枯れ木に花を咲かせたり、炎や雷を出現させるものまである。
これらを駆使して敵やダンジョンを攻略していく事になる。

敵やダンジョンなどで活用する事はもちろん嬉しいの所なのだが、筆者が特に嬉しく感じるのは村人などに対してもこれらのインタラクションが”ある程度”有効である点だ。
村人に対して筆しらべを活用すれば、その超常現象に驚くリアクションを見せる。炎や雷を当てる事さえでき、炎で燃やせば黒焦げに、雷が当たれば痺れるようなリアクションになる(死んだりする事は無い)。

一見何気ない要素なのだが、ユーザーの操作に応じてリアクションが変化するというインタラクションはユーザーが「ゲーム内の世界に影響を与えている(介入している)」ことを強く印象付けてくれる。
もしもこれが炎や雷を出しても何もリアクションが無い、反応が全て共通のリアクションとなっていれば「ユーザーが世界に与える影響」は非常に薄く感じてしまった事だろう。

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敵が筆しらべを使う事もある

驚くポイントとしては、本作の筆しらべは(極一部ではあるが)敵も仕掛けてくるという点だ(上図の赤線は敵が使用してくる筆しらべ)。
それまでユーザーのみが使う事ができると思い込んでいた「筆しらべ」と言うシステムを敵側が使用してくる。
これはゲーム側からユーザーに対してインタラクションを行おうとしているようにも感じられるものとなり、バトルのバリエーションとしてだけで無く、ユーザーの予想超えるようなストーリーテリング的な演出としても非常に面白いものとなっている。

 

バトル

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軽快なバトル

大神のバトルシステムはアクション要素が強い。
武器を駆使した攻撃や前述の筆しらべを使用するスピーディーな戦闘だ。
操作の手応えは非常に良く、爽快で軽快なアクションは現代でも全く問題無く楽しめる。

大神アマテラスは神器である鏡・勾玉・剣を駆使して戦う事となる。
これらの神器はそれぞれ特徴が全く異なり、また表と裏にそれぞれセットする事となり、表でセットするか裏でセットするかでも性質が変化する。
戦闘中であっても変更できるため、敵との相性を考えて臨機応変に戦うのも良いし、自分好みの設定でプレイする事も可能だ。

バトルシーケンスはシンボルエンカウントとなっており、バトルフィールドはエンカウントしたエリアを範囲で区切るようになっている。
この辺りも10年以上前の作品であるが故の少々古いものに感じるだろう。

 

ミニゲーム

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気分転換に最適なミニゲーム

「釣り」や「モグラ叩き」と言ったミニゲームもある。

奥深いものでは無いのだが、わかりやすく1プレイが比較的短い(リワードを貰えるまでの所要時間が短い)ため熱中しやすく気分転換にも非常に良い。
釣りに関しては収集要素もあるためコンプリートを目指すのもオススメだ。

 

グラフィック

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輝きを失う事のないアート

大神のアートスタイルは唯一無二だ。
水墨画のようなタッチにより表現されるその世界観は非常に美しく、時を経てもなお、その世界の美麗さは輝きを全く失っていない傑作だ。

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”大神降ろし”は必見だ

大神では邪悪な妖気によって汚された大地を”大神降ろし” によって浄化するシーンが存在する。
このシーンはグラフィックと音楽も相まって必見のシーンだ。
ネガティブな暗い気持ちや存在が、ポジティブなものへと瞬く間に変わり生命や大地の喜びを感じさせるその姿は非常に感動的だ。
このシーンを見るだけで感動で泣けてくるような気持ちになるが、そう感じるのは決して筆者だけでは無いのではないだろうか。

 

サウンド

大神はサウンド面も非常に素晴らしい名曲揃いだ。
日本的な音を残しつつ、バトルでは激しいテンポも取り入れている。

ポジティブで感動的な「大神降ろし」

激しいチャンバラのようなボス戦曲「ウシワカ演舞~ウシワカと遊ぶ」「赤カブト退治」「妖魔王キュウビ退治」

カッコよさと頼もしさを感じさせる「真スサノオ

爽やかで壮大な「両島原」

最終章の厳しい戦いを思わせる「極北の國」

最終決戦の傑作「「Reset」~「ありがとう」バージョン~」「太陽は昇る」

どれも史上に残る傑作と言える楽曲だ。

 

総評

大神はPS2で発売された作品であり、確かに時代を感じる古い手法は見て取れるのだが、それでも全く輝きが失われていない傑作だ。

プレイヤーを強く引っ張っていくストーリー。
感動的な美しいグラフィック。
印象的な日本風な音楽。
総合的に考えても素晴らしい完成度となっている。
人生において必ずプレイしておきたい作品だ。

 

外部記事

CAPCOM:大神 絶景版 公式サイト インタビュー 

「大神」はアートじゃない。すごく間口の広い、質の高いアクションアドベンチャーなんです。 - ITmedia Gamez 

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