カリブの海賊達よ。帆を上げろ。
Assassin's Creed Black Flag Resynced(以下、ACBF)はAssassin's Creedシリーズ初となるフルリメイク作品だ。 オリジナルは2013年に発売されたAssassin's Creed Ⅳ Black Flagであり、シリーズにおいてナンバリングが冠された最後の作品でもある。 オリジナル版が開発・リリースされた時期にはディズニー映画のパイレーツ・オブ・カリビアンシリーズ(2003年~)が長く人気を得た時期であり、海賊というモチーフに対しての注目度があった時代でもあったといって良いだろう。
本作はシリーズでも屈指の人気を誇る作品である事はもちろんだが、シリーズで現代パートと言われる時間軸において活躍していたデズモンド・マイルズの話が前作で完結した状態になっており、過去作をリブートするにあたっては非常に区切りの良い作品でもある。 筆者にとっても思い入れのあるタイトルであり、シリーズで最も好きな作品でもあったため今回のリメイクは非常に嬉しい情報だった。しかし、メインキャストが変更となった事は非常に悲しい点である。
ストーリー
カリブの海賊達の栄枯盛衰
舞台となるのは1700年代のカリブ海。海賊の時代が終焉を迎えようとしている過渡期である。 主人公となるエドワード・ケンウェイは恋人との関係を認めてもらうために一攫千金を狙って小さな海賊業を行う短絡的で粗暴な面のある男だ。 ある時、何かを企てている帆船を襲撃し、そのメンバーの一人がアサシン教団と言われる組織に所属するアサシンであった。そのアサシンは海軍を巻き込んだ何らかの大きな仕事があったことがわかる書状を所持しており、エドワードは殺害したアサシンになりすましてハバナへと向かい大金を得ることを期待して活動を始める。
歴史上の人物が多く登場するシリーズだが、本作においては黒髭サッチやジャック・ラカム、ベンジャミン・ホーニゴールド、バーソロミュー・ロバーツといった名立たるカリブの海賊達が登場する。彼らは同業者でありながらライバルでもあり、無益な争いこそ行わないが根本的には自身の信念に基づいて行動しているため同盟未満の関係に過ぎず、リスペクトこそあれど密な信頼関係では成り立っていない。 そのため、イギリスからの恩赦の噂によって徐々に亀裂が生じていく事になる。
この物語導入を聴いただけでも主人公を含めた海賊達がいかに利己的な人物であるかが理解できると思うが、本作ではそんなエドワードが同業者である多くの海賊達の盛衰を目の当たりにし、そしてアサシン教団と関わっていく事で徐々に成長していく物語になっている。 物語ではシリーズ共通となる自由を重んじるアサシン教団と秩序を重んじるテンプル騎士団の対立が描かれるが、本作においては両者の功罪の形が描かれているのも特徴的だろう。
今回のリメイク版ではオリジナル版でストーリー進行と共に度々挿入された現代パートが完全オミットされている。 辛うじてストーリーの冒頭にアニムスによる遺伝子の記憶の追体験である旨を伝えるナレーションが差し挟まるが、この設定がゲーム開始以降に登場する事は全くない。 これは近年のシリーズが現代パートを縮小する傾向にあり、前作にあたるAssassin's Creed Shadowsも本作同様に全く登場しない方針になっていた。 しかし、その影響で現代パートとアニムスによる追体験である事による相互の物語的な繋がりまでもが喪失している。 そのため、特にバーソロミュー・ロバーツの関連事項がオミットされたものになってしまっており、それを見越した物語の変更も行われていないため初見プレイヤーにとっては設定が消化しきれていない感を感じてしまう可能性がある。
物語進行が自由に
リメイク版では物語進行は融通が利くように変化してモダンな作りに作り替えられている。 例えば、盗み聞きしないといけない場面では相手を殴り倒しても進行できるようになったのだ。 そのため、攻略の自由が高まりオープンワールドというシームレスな空間らしい体験が可能になっている。
新しい仲間達と新しい物語
リメイク版となる本作では新しいサイドストーリー的な物語が追加されている。 サイドストーリーは登場したキャラクターにフォーカスしているが、新しく仲間となったネームドNPCの船員にも用意されている。
システム
遊びやすいシンプルなステルスアクション
ACBFの戦闘は攻撃とパリィ、回避を駆使して戦う旧来のシリーズを大きく踏襲した比較的シンプルなものとなっている。難易度もそれほど高くはないため、集団戦でもなければ大きく苦戦するようなケースは少ないだろう。 オリジナル版ではタイミング良くパリィや回避といったボタンを押すだけの単調な戦闘になりやすかった戦闘だが、テイクダウンの取り方にいくつかのルートが設けられているため立ち回りにプレイヤーの工夫の余地が増えている。とはいえ奥深い戦術がある訳ではなく、あくまでもオリジナル版よりもできることが僅かに増えただけと考えておいた方が良く、戦闘の楽しさに大きな比重を寄せて期待するのは間違いだ。
Assassin's Creedシリーズでは敵との直接的な戦闘よりも、どちらかといえばステルスによる暗殺の方がプレイしていて楽しめるだろう。 ステルスアクションも非常にシンプルで、敵を遠方からマーキングし、茂みに隠れて暗殺したり、高所から暗殺したりとわかりやすい操作だ。 近年のシリーズに多かったRPG的な要素がないため、格上の相手にステルスキルができないようなケースもないので位置や巡回ルートを確認してサクサクと敵を処理していく楽しさが味わえる。 また、本作ではストーリー進行で入手できる吹き矢によって敵を眠らせたり、混乱させて同士討ちさせたりと言った手玉に取っていくような遊びも楽しめるハズだ。
その他の変更されたアクションとしてはNPCにスリができなくなっている。 オリジナル版の頃にはまだ当時のオープンワールドの盟主でもあったGrand Theft Autoシリーズの影響が強かったのかクライムアクションとしての要素が強く、罪のないNPCに対してスリを行うことが可能だった。 しかし、仮にもアサシン教団に所属する(ことになる)主人公がそういった悪意ある悪事を行えないように本作では変更されているようである。
プレイしていて操作面で少し気になった点としては実行コマンドがHUDとして表示されているにも拘わらず実際には実行されないケースが少なくなかった点だ。 例えば、戦闘中に銃撃を敵兵を盾にすることで防ぐことが可能なのだが、画面上で「敵を盾にする」と入力するボタンと共に表示され、それを何度押してもコマンドが実行されないかったことがそこそこの頻度であった。 自分と敵の位置関係などの何らかの内部処理的都合があったのかも知れないが、画面に表示されているにもかかわらず実行されないのは違和感が強い。
装備によるカスタマイズも少しだけ可能
本作では装備関連がオリジナル版よりも強化されている。 オリジナル版の時にも装備によって性能が多少異なったがRPG的な側面としては非常に簡素なものに留まっていた。 しかし、本作ではもう少しRPG的な部分が増えており、武器やアクセサリーによる性能的な差異はもちろんながら特殊な性能が向上するようになっている。装備品の種類自体も増えている事から見た目のこだわり的な側面としても機能するようになっている。
拠点を強化していく事も
強化できるのは自分だけでなく拠点も強化する事が可能だ。 ストーリーをある程度進行していくと自分の拠点を得ることができ、そこを開発して店などを作ることができる。街並みの配置などをこだわったりはできないものの、自分の秘密基地が充実していく楽しさが得られるハズだ。
海戦
フロンティア開拓的なワクワク感のある海洋は本作の醍醐味だ
ACBFで最も体験するべきものは帆船を用いたカリブの海洋探索になるだろう。 海では帆船同士の海戦、砦を攻略するといったダイナミックな戦闘も雰囲気が抜群だ。 フィールドの大半、そして移動の大半を海洋が占める事からシリーズらしいパルクールといった要素も用意されてはいるもののゲーム体験としての比重は相対的に低くなっており、それでいて船を用いた探索はフロンティア的なワクワクしたロマンが感じられるものになっている。 そのためシリーズでもオープンワールドとしての冒険の楽しさが体験できるものになっているといって良いだろう。
オリジナル版との変化した部分としては全体がフルシームレスになっている。 オリジナル版においてはナッソーやハバナといった大きな街へと入る場合にはロードが入ったが、本作では全てシームレスに変わっているためモダンな作りへと作り直しをしてくれている。
船を強化していくのもモチベーション
自身が操舵できる帆船はアップグレードもできる。 耐久性を向上させたり、砲門を強化したりといった要素があるため船に対しての愛着も沸かせてくれる。
本作ではオリジナル版よりも攻撃手段の増加に加えて、それに伴う強化要素も増加している。
グラフィック
鮮やかで美しいカリブの海
熱帯のカリブ海の映像は非常に美しく、海や木々といった大自然の魅力が詰まっている。 しかし、自身の砲撃による硝煙で前方が見えなかったり、夜や暗所が暗すぎて閉所や屋内などで道すらよくわからなくなったり、雨が降ると視認性が悪かったり、草むらで上を向いたときに草が透過されないため上方向が確認できなかったりとプレイしていて気になる部分も少なくない。
フォトモードで良いショットを
近年のシリーズでは標準実装されているフォトモードももちろんある。 美しいカリブ海はどこでも絵になるため撮影していく事も楽しいハズだ。
オリジナル版
上記の画像はオリジナル版のものである。当時のゲーム業界では彩度を落としたビジュアルスタイルが流行していたこともあり全体的にくすんだような色使いになっているが、それでもディティール自体は良くできていた。 また、「システム」の項でも記載した通りだがオリジナル版ではフルシームレスなオープンワールドではなく大きな街などに上陸する場合にはロードがあった。
サウンド
船乗り達の歌は本作の体験を記憶に残してくれる
メインテーマの一節も挿入される戦闘曲「The High Seas」はシリーズでも屈指の曲だ。海賊らしい曲調であることはもちろん、緊迫感と高揚感が混ざり合っており曲がかかった瞬間にテンションを上げてくれる。 また、船乗り達の歌であるシーシャンティーも外すことはできない。これらは元々は船員達の一体感を高める労働歌であることからノリの良い思わず口ずさみたくなるようなメロディーであるものが多いため、海洋移動が多いことも相まって本作の音楽面においてかなりの印象に残るだろう。 シーシャンティーはフィールドを探索する事で種類が増え、ゲーム内辞典から歌詞も確認できるが残念ながら和訳されているので歌の意味はわかるもののゲーム中で聴く歌が実際にどういう歌詞なのかがわからないのは勿体ない。 筆者の特にお気に入りのシーシャンティーを紹介したい。
明るく力強さのある「キューバを目指して(Running Down to Cuba)」「ランディ・ダンディ・オー(Randy Dandy Oh)」
少し寂しさのある「降りろよ、ジョニー(Leave Her Johnny)」
声優の交代によりキャラクターの印象は間違いなく変わった
オリジナル版から声優が変更されており、中でも影響が強いのは主人公エドワードが津田健次郎氏から変更された点になるだろう。 津田健次郎氏が演じるエドワードは間違いなくカリスマ性のある海賊として映ったと思うが、新録版の花輪英司氏ではより粗野でお世辞にも大物感は感じない正に海賊らしいボイスである。両者でキャラクターに感じる印象も変わる部分はあるため、リメイク版をプレイした後に改めてオリジナル版をプレイしてみても良いかも知れない。
またリリース初期バージョンでは開発におけるミスから一部にオリジナル版の津田健次郎氏のボイスが使用されたままとなっているミスが発覚 した。恐らくの憶測ではあるが、これは新録ボイスに差し換える前の段階ではオリジナル版ボイスを仮データとして仮置きしたものの、データの差し替え漏れを起こしてしまったのだと考えられる。これが事実だったとした場合、こういったヒューマンエラーが発生しうることは実装段階から容易に予期できるため、それを見越した管理体制・管理状態を検討しておくべきであったように感じられる。 特に本件はオリジナル版のボイスの二次利用にもあたるため権利的にも非常に問題がある。
総評
Assassin's Creed Black Flag Resyncedは美しいカリブ海を冒険するワクワク感がたまらないオープンワールドの傑作だ。
帆船を用いて広大な海洋を探索し、数々の敵船と海戦を行う体験はダイナミックだ。 また、航行中に聴くことができるシーシャンティーは思わず一緒に口ずさんでしまうような印象的なものが揃っており、これもまた本作を記憶に残してくれる要素となるだろう。
リメイク版では操作感や視認性の部分で気になるものはあるものの、オリジナル版から比べてもRPG的な要素が増えたりと楽しめる厚みも増している。
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