レビュー一覧

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アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ

アイドルマスター ポップリンクス

Assassin's Creed Origins

Assassin's Creed Valhalla

ASTRAL CHAIN

ABZÛ

嘘つき姫と盲目王子

ウマ娘 プリティーダービー

Echocalypse -緋紅の神約-

SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズ

SDガンダム バトルアライアンス

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大神

オクトパストラベラー

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幻影異聞録♯FE

原神

こちら、母なる星より

Ghost of Tsushima

 

三國志13

三國志14

実況パワフルメジャーリーグ2009

真・三国無双8

じんるいのみなさまへ

スターオーシャン ブルースフィア

Starlink : Battle for Atlas

聖剣伝説2

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聖剣伝説3 Trials of Mana

聖剣伝説 Echoes of Mana

聖剣伝説 Legend of Mana

SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE

ゼノブレイド

ゼノブレイド2

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ゼノブレイドクロス

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス

ゼルダの伝説 Breath of the Wild

ゼルダ無双 厄災の黙示録

戦場のヴァルキュリア4

ZOIDS VS.Ⅲ

ZOIDS 邪神復活!~ジェノブレイカー編~

 

大貝獣物語

Dark Souls

Dark Souls Ⅲ

テイルズ オブ アライズ

テイルズ オブ ヴェスペリア

Death Stranding

DAEMON X MACHINA

Dorfromantik

TRIANGLE STRATEGY

ドラゴンクエスト モンスターズ テリーのワンダーランド

 

 

Harvestella

鋼の錬金術師 Mobile

百英雄伝 Rising

ファイアーエムブレム エンゲージ

ファイアーエムブレム ヒーローズ

ファイアーエムブレム 封印の剣

ファイアーエムブレム 風花雪月

ファイアーエムブレム無双 風花雪月

ファイナルファンタジーⅥ

ファイナルファンタジー クリスタルクロニクル

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントムストライカーズ

ポケットモンスター スカーレット/バイオレット

ポケットモンスター ソード/シールド

ポケモン レジェンズ アルセウス

星のカービィ スターアライズ

星のカービィ ディスカバリー

ホワイトライオン伝説 ピラミッドの彼方に

 

MAGLAM LOAD

マリオテニス ACE

Metal Gear Solid V : The Phantom Pain

モンスターハンター ストーリーズ2 ~破滅の翼~

モンスターハンター ライズ

 

妖怪ウォッチ4 ぼくらは同じ空を見上げている

よるのないくに2

 

ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~

ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~

ラストストーリー

ルーンファクトリー5

Red Dead Redemption 2

Lost Ember

 

わるい王様とりっぱな勇者

【レビュー】Echocalypse -緋紅の神約-

ケモノ娘の神殺しRPG

Echocalypseは(以下、エコカリ)は中国のYOOZOO GAMESが提供するスマートフォン向けアプリゲームである。

筆者が本作に興味を持ったのはRPGを中心としたゲームプレイに定評のあるVTuberニュイ・ソシエールさんが紹介しているのを拝見して、動物モチーフの作品との事でプレイしてみようと思ったのだ。

 

www.ekokari.jp

 

ストーリー

ダークな雰囲気のポストアポカリプス

EchocalypseはLive2Dのような動きのあるイラストベースでの紙芝居形式のストーリーとなっている。
これはスマートフォン向けの作品には採用される事の多い表現手法だ。

神話や伝承などのモンスターをモチーフとした「進化体」と呼ばれる獣人達と共に、封印されてしまったプレイヤーである主人公の妹を救うのがメインとなっている。
物理法則を無視して物体を融合させてしまうエコークリスタルという存在が重要となっており、かつて起きた厄災の後にエコークリスタルが空気中にばら撒かれている事がわかる。
細菌が空気中の塵と結合するなど人体への破壊的な影響が出ていたが、エコークリスタルを利用して人間と動物の融合を行う事で耐性を得た「進化体」の誕生に成功する。
また、その融合状態を解除できる”偉大な遺物”というものが存在するという。
現在の世界を救うためには、その偉大な遺物が必要になるという。
世界観はポストアポカリプス的な雰囲気であり、内容としては専門用語が多めで、全体的にシリアスな空気感となっている。
対して定期開催されるイベントで展開されるストーリーに関してはやや明るめの日常的な雰囲気の話が多いのが特徴的だろう。

本作のストーリー面において問題点を挙げるとするならばローカライズだ。
そう多くはないものの所々で日本語の用法で誤りがあったり、改行や句読点などが若干不自然なケースがある場合がある。
意図を察せない程に崩れている事はないものの、パッと見た時に少し気になる事はあるかも知れない。

インタラクションを伴うストーリー進行も

サブストーリーではちょっとしたインタラクションで進行させるような要素もある。
中にはキャラクターに簡素なインタラクションを行うようなものも存在するが、本当に簡素であるため余り凝ったものは想像しない方が良いだろう。

 

システム

事前準備が最も大切である

エコカリは基本的にオート戦闘で楽しむ事が前提のデザインだ。
プレイヤーが介入できる要素はいくらかあるが、戦力を増強させてオート戦闘で最大効率となるように事前準備を行うのが主である。

パーティー構成は最大6人で、キャラクター1人1人の特性はもちろん、前衛と後衛の配置も存在する。
攻撃を行う順番は配置場所によって固定で決定されるため、どこに誰を配置するのかで有用性に変化が生まれる。
例えば、最初の方に攻撃順が回ってくる場所に回復役を配置してしまうと、回復するダメージがそもそもないといった事にもなりかねない。
せっかくの攻撃や回復が無駄うちにならないように工夫した配置が良いだろう。
また、キャラクター固有のスキルによるバフも前衛に効果があったり、後衛に効果があったりと決まっているので、そういった部分も考慮する必要がある。

キャラクターとは別に「古物」というスキルだけを発動するアイテム(アーティファクト)のようなものも存在する。
こちらも古物によって効果が異なるが、オート戦闘させた際には発動順番が固定となるので適切なタイミングで効果が発動しやすくなるように、こちらも配置順番を工夫するのが望ましい。

本作は全体としてオート戦闘を前提として割り切って作られており、戦闘自体ではなく事前準備とサクサクと向上していくパラメータを楽しむように構成されている。
エストの最後には味方と敵のそれぞれのユニットのダメージ量や被ダメージ量などを確認する事が可能で、パーティー構成の最適化の参考にできる部分があるかも知れない。

全ての要素が育成に繋がる構成

エコカリにおける一番の醍醐味はみるみる上昇していく数値のパラメーターという育成面だろう。

キャラクターにはこの手のタイトルに多いいわゆる”凸”の他にもレベルや武装、バッジ、キャラクターの組み合わせなど多くの強化要素が提示されている。
そしてそれぞれに強化項目も複数提示されているため、1人のキャラクターを強化する要素が樹形図のようになっているのだ。

しかし、キャラクター強化のハードルが高いのかというと決してそうではない。
例えば、キャラクターのレベルに関しては他キャラクターと置き換えが可能となっている。
具体的に書くと「このキャラクターを使いたけど、レベリングや強化素材が足りていない」というよくある問題が本作においては事態が発生しない。
メンバーを入れ替えれば育成状態がまるっと入れ替えたキャラクターと置き換えられるため、パーティーの出撃メンバーの変更が行いやすくユーザーフレンドリーである。

上図の右下をご覧いただけると本作にハウジング要素があることが確認できるかと思う。
そう。本作ではハウジングを行ってもキャラクターを強化できる。
とにかく全ての要素がキャラクターの強化へと還元されるようにデザインされており「関連性の薄い趣味的にやるサブコンテンツ」という立ち位置のものがほとんどないのだ。

本作において残念に思えるのは低レア排出キャラクターの働き口がほとんどない点だろう。
現状の全てのコンテンツにおいて高レアキャラクターの方が戦力や効率が良いため、余程戦力が整っていない最序盤でもない限りは低レアキャラクターを起用する意味がない。
それどころか高レアキャラクターであっても戦力が整うと余り日の目を見ない有様だ。
そんな状況下ではプレイヤーが低レアに推しキャラクターがいた場合などは目も当てられないのは火を見るよりも明らかである。
多くのキャラクターを投入する必要のあるコンテンツが一部あるが、この点に関してはもう少し様々なキャラクターに日の光を当てられるシステムの追加に期待したい所だ。

 

グラフィック

簡潔ながら要所を抑えたビジュアル

本作が売りとしているのは恐らく可愛らしい女の子達だと思って良いだろう。
各キャラクターの立ち絵となるLive2D形式のイラストは非常に良く動き品質の良さが伺える。
デザインは全体的にセンシティブな要素が多かったりするので、この辺りでマッチ・ミスマッチがハッキリと分かれそうだ。

一部のキャラクターはスキル発動時に短めのアニメが挿入されるが、本当に一部のキャラクターであり、基本的にはSDキャラクターによる演出アニメーションが挿入される。
フィールドマップなどで活用される背景イラストはフォトリアルなテイストでまとめ上げられており本作のやや暗めの物語のテイストにマッチする方向性にしていると言えるだろう。

しっかりと作ってはいるものの、基本的には立ち絵やSDキャラクターだけで構成されており簡素ではあるものの開発におけるコストパフォーマンスのバランスを取ったデザインにしている。

 

サウンド

BGMはストーリーのやや暗めのテイストと同様に少し大人びた落ち着いたBGMが印象的である。
緊迫感のある戦闘BGMもカッコよく筆者好みである。

 

総評

Echocalypse -緋紅の神約-はオート戦闘がしっかりと前提になったデザインとなっており、育成などの事前準備に重きを置いた作品になっている。

ハイパーカジュアルにも近く、少ない時間でもサクサクと育成に必要な要素に手を出せるため隙間時間に楽しむには悪くない。
ビジュアルにおいては可愛らしい美少女キャラクターがメインとなるため、そういった要素に抵抗がないのであれば気軽にプレイしても良いではないだろうか。

【レビュー】オクトパストラベラーⅡ

光は、消えゆく。やがて、夜迫る。

オクトパストラベラーⅡ(以下、オクトラ2)は「HD-2D」というフォーマットを世に打ち出して成功を収めたオクトパストラベラーのシリーズ2作目のタイトルだ。

前作以降、HD-2Dは非常に多くの展開を見せておりスクウェア・エニックス作品の過去作品のリメイクに採用されるケースも少なくない程までに世間に定着している表現手法になっている。
そんなHD-2Dの本家本元であるオクトパストラベラーの2作目が登場するとなれば、それは買わずにはいられない。

今回はオクトパストラベラー2のレビューをしたい。

 

オクトパストラベラーⅡ -Switch

オクトパストラベラーⅡ -Switch

  • 発売日:2023/2/24
  • メディア:Video Game
オクトパストラベラーⅡ -PS5

オクトパストラベラーⅡ -PS5

  • 発売日:2023/2/24
  • メディア:Video Game
オクトパストラベラーⅡ -PS4

オクトパストラベラーⅡ -PS4

  • 発売日:2023/2/24
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

ストーリーテリングは幅が広がったが、ストーリー自体の満足感が低め

オクトラ2では前作と同様に8人の主人公からなる群像劇のような物語が展開される。
例えば、主人公の1人ヒカリは王国がクーデターにより簒奪され、国を取り戻すために行動する剣士であり王子だ。
また、学者のオズワルドは家族殺しの冤罪を着せられ、復讐に燃えるというカタルシスある物語になっている。
神官で異端審問官を務めるテメノスは教団内で起きた怪しい事件を解決するために奔走する。まるで杉下右京のような空気感を彷彿とさせる人物である。
このように各キャラクターそれぞれの目的があり、それが章形式で進行するようなものとなっている。

本作は2作目と言う事で前作を知っている必要があるかについても記載しておこう。
簡潔に書けば前作との物語的な直接の繋がりはない。
ただし、文化や世界観は同一であるようで、前作にも登場した単語や名前が登場するので前作プレイヤーは見知った名前に「おお!」と思えるハズだ。
とは言え、やはり前作を知っていなければ理解できない内容は含まれていないので本作からプレイしても全く問題ないと言って良いだろう。

本作のストーリー面で大幅に強化されたと言えるのはストーリーテリングだ。
システムとして各キャラクターに用意されているフィールドコマンドをストーリーでしっかりと演出に組み込むようにしたり、同じ章で複数地点に目標が発生したり、中にはメインストーリーであっても会話だけで完結するようなケースもあったりするため描き方の方法が増えている。
また詳しくは後述するが、メイン以外のストーリーも強化されたり、仲間との関係性の描き方も強化されたりもしている。
ストーリーの描き方の幅を広げており、そして時としてストーリー進行にしっかりとプレイヤーの操作を組み込んでいるのが好印象だ。

では、物語自体そして物語全体としてはどうなのかというとハッキリ言って玉石混交である。
本作は各キャラクター毎の章形式で物語が進行していく事になるのだが、キャラクターによっては「引きが弱い」ことが少なくない。
特にその傾向が顕著なのがアグネアで、彼女の物語は1章毎に物語が完結してしまっており、次の展開が気になる”引き”の部分が取ってつけたようなものになってしまっており非常に弱い。
物語のストーリーテリングの多様性という意味では成功しているのかも知れないが、物語の続きがあるのに「次がどうなるのか興味が持ちにくい」のは物語全体としては成功しているとは言い難い。

また、ラスボスとの関係に関してもキャラクター毎に格差がある。
前作含む簡単なネタバレになってしまい恐縮だが、前作では大雑把に言えば「実は各キャラクターには共通の黒幕が存在した」という展開になっていた。
本作においても大まかには同様なのだが、ここで問題なのはラスボスとはほとんど接点のないキャラクターがいくらかいる点である。
前述のアグネアもそうだが、商人パルテティオに関しても皆無ではないが非常に薄い。
それに対してヒカリ、オズワルド、テメノス、キャスティ、オーシュットなどはラスボスと関連性のある物語が展開される。
前作ではラスボスは隠しボス扱いに近かったのだが、本作ではラスボスを物語としてしっかりと組み込んでいるため関連性に格差のあるキャラクターがいるのはお世辞にも良いとは言えない。

”本作ではラスボスを物語として組み込んでいる”と書いたのだが、これによる問題が前作よりも顕著に出てしまっている事も気になる所だ。
各キャラクターのストーリーが完了するとラスボスのストーリーが解禁される。
つまりは前述の通りでラスボスを物語として組み込んでいるのだ。
しかし、ラスボスを描く事を前提としたために各キャラクターのストーリーが満足感の薄いものになってしまっている。
ラスボスのストーリーで物語全体の陰謀の種明かしを描いているため、その途上である各キャラクターのストーリーでは物語がしっかりと解決した感が薄く「まだ物語が続くんでしょ」というのが透けて見えてしまうのだ。
前作においても類似した問題点があったが、本作においてはその問題点がより顕著に表出してしまったように見受けられる。

そのような構成にした影響からなのか、各キャラクターの個別ストーリー最終章においては類似の展開やオチが弱いケースが散見される。
まず、最終章ではそのキャラクターの物語上で縁のあるキャラクター達が一堂に会するケースが大半になってしまっている。
確かにそのような展開は熱い。それは間違いないのだが、その展開を5回も6回も用意されても困るのである。
そして、キャラクター別ストーリーのトリを飾る大ボスにしても言動に小物感が急に出てしまったり、やや説得力を欠く形で改心したりと、展開が古典的過ぎるケースも勿体ない。
それまで広げてきた風呂敷をどのように畳むのかという部分を期待していると意外なほどに予想を超えて来ないどころか、下回る可能性すらあると言って良いだろう。

仲間との関係性を描く事が強化されている

オクトラ2では特定の仲間との組み合わせで発生する専用のクロスストーリーが追加されている。
前作においては「仲間と一緒に旅をしているのか」それとも「仲間がいる体ではあるが、実際には単独の旅なのか」が非常に曖昧であった。
本作では全体的に前作よりも「仲間と旅をしている」という事をより強く演出している。
クロスストーリーでは特定のキャラクターのペアで進行する物語で、キャラクターの関係性が非常に良くわかる内容になっている。
特に筆者のお気に入りはテメノスとソローネのペアだ。こういうペアのマンガやアニメもありそうに思える程に息があっておりバディーものとして面白い。

そして、前作にもあったパーティーチャットも存在する。
こちらではストーリーの進行状況などに応じて、特定のキャラクターをパーティーに入れているときに発生する会話になっている。
こちらではパーティー全体の関係性がわかるものになっている。

色々とわかりにくいサブクエスト達

本作においてもサブクエストがあり、こちらではNPCの物語が展開される。
基本的にはキャラクター固有のフィールドコマンドを駆使する事で解決させる事が多いのが特徴的だ。

このサブクエストで少し困るのがNPCからサブクエストを受注済みなのかがマップ上からわかりにくい点だろう。
既に受注済みならマップ上のアイコンを暗転させるなどしてわかりやすくしてくれるとありがたかった。

また、サブクエストでは基本的にどこで何をすればいいのかが明示されるようなケースの方が少なく、モダンな「マップに解決先がアイコン表示される」といった要素もない非常にレガシーな作りであるため自力で解決させていくのは根気が必要だと思って良いだろう。

 

システム

ここではゲームプレイに関わるシステム面に関して記載する。

 

バトル

楽しさが強化された部分もあるが、問題点は据え置き

オクトラ2の戦闘システムは大まかな部分では前作と同様だ。
基本的に毎ターン1つ貰えるBP(ブーストポイント)を消費して、敵の弱点を付いてブレイクさせるか、もしくはブレイク状態の敵に畳み掛けて攻撃するのかが重要となる。

本作で新しく追加された要素として「底力」が登場している。
底力は敵をブレイクさせたり、ダメージを受ける事でチャージされる専用のゲージによって発動可能となる大技だ。
底力の性能・性質はキャラクター毎に異なるため、キャラクターとジョブの組み合わせを考える楽しさがある。
例えば、底力によって効果を全体化に変化させるキャラクターに、強力な回復やバフ効果を持つジョブを組み合わせる事によって一瞬にして状況を立て直したりする事も可能になるのだ。
これによりキャラクタービルドをする際の方向性決めが明確になり、キャラクタービルドのしやすさ・楽しさが増している。

BPの使用用途も前作と比較すると多様性が増しているのも好印象である。
前作においてはBPを消費したとしても攻撃回数が増えるのは通常攻撃のみであり、逆にジョブアビリティと呼ばれるスキル系の攻撃方法の中にはBP消費無しに連続攻撃が行えてしまい、敵の弱点属性自体に大幅な格差が生じてしまっていた。
しかし、本作においてはBP消費によって威力が上がるスキルと攻撃回数が増えるスキルに役割がハッキリと分離されるようになったのだ。
そのため、ここぞいう場面では相手をブレイクさせるためにBPを使用する事も選択肢に入るバランスに整った。
その他にも、上述の底力によって全ての攻撃方法で敵のブレイクポイントを削れるようになるキャラクターもいるなど、役割自体もキャラクター毎に分かれるようになったと言っても良いだろう。
ブーストとブレイクと言う本作における根本的なシステムが「死にシステム化」しないような工夫が見受けらえるのは喜ばしい。

その他の問題点は据え置き

前作から強化された要素も改善されえた要素もあるが、上述した内容以外の問題点は前作から据え置きである。

もっとも困るのが敵の固さである。
オクトパストラベラーシリーズではブレイク前提の戦闘バランスとなっているため、敵が比較的固めに設定されている。
これは十分にわかるバランスである。柔らかい敵を用意してしまってはBPを消費して相手をブレイクさせる間もなく倒してしまうためシステムが死んでしまう。
しかし、リワードにも期待できないような格下のザコ敵であっても(余程のレベル差でない限りは)時間がかかるのは問題だ。
例えば、ある程度のレベル差がある場合にはそのエリアのエンカウント率が大きく下がったり、エンカウント率は据え置きでも初期BPに補正が入ったりするだけでも煩わしさが違うだろう。
強敵との戦いであれば確かに楽しさはあるのだが、頻繁に出現する得るもののないザコ敵の煩わしさによって戦闘の飽きを加速させてしまっている。

また、本シリーズのシステムが「敵の弱点を付く」という点に集約されており、戦闘開始時に基本的には弱点がマスクされているバランスで作られているのもやや微妙である。
マスクされていたとしても、それが機能するのは「本当に初見のとき」だけであるためだ。
敵の弱点は固定であるため単純な2回目でなくとも、全滅した後の再戦でも弱点がマスクされていないのと同義となってしまう。
戦闘全体において一度戦った相手とは二度と戦わないようなデザインであればこのような一回性にしても問題ないと思うが、特にザコ敵など何度も出会う事になるケースもあるようでは面白さに一回性の部分が生まれてしまうのは避けられない。
そうなってしまうと弱点が全てわかりきっているザコ敵に対しては前回と同じような行動を繰り返すハメになるため、こちらでもゲームプレイにおける飽きを加速させてしまう。

以上の事から非常に極端な意見である事は承知であるが、ボス敵だけで構成しても良いのではないかとすら思えてしまう事すらあった。
現状のザコ敵デザインでは「時間がかかる」「前回と同じ行動を繰り返すだけでいい」「イマイチのリワード」と良い部分が余りにも少ない。
次作があるのであればもう少しこの部分に配慮を加えて欲しい所だ。

 

フィールドコマンド

1人辺りで2種類になったフィールドコマンド

前作でも登場したフィールドコマンドは1人のキャラクター辺りに昼と夜で異なる2種類のコマンドを扱えるようになった。
キャラクターの昼の顔と夜の顔、そしてある種のTPOに合わせた行動をしているとも受け取れるため、これだけである種のストーリーテリングとして機能している。
昼と夜もいつでも切り替えが可能だが、NPCも昼と夜で同じいる場所にいるとは限らないので適宜やりたい事が可能なキャラクターのフィールドコマンドと時間帯が一致するものを選ぶ必要がある。

とは言え、ストーリー中にはフィールドコマンドの使用が必要な場面で、昼夜を切り替える必要があるのは演出としては少しイマイチだ。
ストーリー進行でフィールドコマンドを挿むのはストーリーテリングとして良いものなのだが、緊迫した状況で時間帯を昼から夜に変更してしまうのは流石に違和感が強い。
ストーリー進行における特にシリアスなシーンでのフィールドコマンドは適切な状態になるように昼夜を固定にして進行させてしまっても良かったのではないだろうか。

 

グラフィック

頭身が上がり全体がリッチにはなったが2Dドット感が薄れている

前述しているがオクトラ2においては昼と夜が導入されており、より世界を描くように変化している。
また、キャラクターの頭身が少し上がっており、それに伴って家などのオブジェクトのサイズ感やディティールが上昇している。

地味に嬉しいポイントとしては武器のグラフィックが固有になったため、武器を変更した際の楽しみが増えている。

全体的に映像をリッチにしようとしている本作であるが、リッチにした事による弊害も感じられる。
フィールドにおける街並みなどのディティールが上がり過ぎていたり、カメラワークを強化し過ぎており、当初あったような「ルネサンスJRPG」の雰囲気…つまりは「ドット絵感」がやや減退してしまっている。
欲張りで理不尽な指摘である部分もあるが、もう少しノスタルジーを大事にしてデチューンしても良いような気がしている。

 

サウンド

BGMに関してではメインテーマのメロディーは続投しており、タイトル画面を開いた時の「オクトパストラベラーだ!」という思いを馳せる事ができるのは嬉しい。
また、相変わらずボス戦に入る際のシームレスで盛り上がるイントロは素晴らしく、「ストーリー」の項では展開が弱めとは記載したのだがBGMが盛り上がるため冷静に考えればそれほど盛り上がる内容ではないハズなのに何となく凄い熱いシーンなんじゃないかと誤認させてくれるのだ。
特に「決戦2」などはイントロから盛り上がるため最高だ。
なお、楽曲全体でいえばやはり前作を意識したBGMも多いと言って良いだろう。

オクトラ2になっての特色となるとやはり少し前述している「昼と夜」の概念の導入である。
フィールドや街のBGMは昼夜が導入されたことに伴い、昼用と夜用のアレンジ違いの楽曲が流れるようになった。
しっかりとモダンな作りにしている部分だと言えるだろう。

強化されたのは楽曲よりもボイス関連の方がより明確に伝わる部分かも知れない。
まず、BPを消費してブーストを最大化した際には敵に応じて専用のセリフが発生する事がある。
これは主にキャラクター別ストーリーのボス戦にて発生するので是非とも1回は確認しておきたい要素だ。
また、ブレイクや回復などの味方の行動に応じたセリフの掛け合いも追加されている。
これは筆者が前作のレビューの際にも「あって欲しい」と望んだ機能であったため非常に嬉しい。
ストーリー面でもパーティー間の関係性を描いているが、戦闘中ボイスでもパーティー感の演出を強化している。

 

総評

オクトパストラベラーⅡは強化された部分はありつつも、問題点も同時に発生しているケースが多くなっている作品だ。

ストーリーテリングは強化されたものの、ストーリー自体が弱くなりがちである。
バトルではビルドや戦闘自体の面白さに加えて演出なども強化されているものの、前作と同様の欠点は残り続けたままである。
映像面においても全体のリッチさやディティールは増したものの、ノスタルジーはやや感じにくくなってしまった。

 

外部記事

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【レビュー】鋼の錬金術師 Mobile

全は一、一は全

鋼の錬金術師 Mobile(以下、ハガモバ)は不朽の名作であり一時代を席巻したマンガである鋼の錬金術師スマートフォン向けゲームである。

鋼の錬金術師は筆者の世代は正にドンピシャであり、その物語や世界設定に非常に惹かれていた。
アニメの爆発的な人気はもちろん、それに影響されて当時にはいくつかのゲームタイトルも発売された過去もある。
今回は非常に久しぶりの新作ゲームが登場した形で、興味があったためプレイしたのが経緯である。

 

www.jp.square-enix.com

 

ストーリー

原作に忠実なストーリー

ハガモバは原作を忠実に再現したストーリーがほぼフルボイスで楽しめるという豪華な仕様となっている。
会話送りをオートに設定すればほとんどアニメを観ている感覚で楽しむ事が可能だ。

サイドストーリーではエドやアル以外のキャラクターが主体の物語が展開される。
また、原作では描かれなかった時系列でのキャラクターの出来事がオリジナルの物語として補完されている。

ゲームプレイ部分は後述するが本作はSRPGとなっている。
メインストーリーのSRPGのマップ上でもユニットを利用したストーリーとしての演出があったりと全体的にリッチに作られているのが特徴的だ。
そしてしっかりとゲームとしてのバランス(レベルデザイン)も考慮されており、好感の持てる作りをしていると言えるだろう。

オリジナルのストーリーも

定期的に開催されるイベントなどでは完全にオリジナルのストーリーも提供されている。
原作ではあり得なかったifシナリオ的なものとして楽しめる。

外部コラボのイベントも用意されたが、そちらに関してはクロスオーバー的なものにはなっておらず、あくまでも外部のキャラクターが出張してきた程度となっておりやや期待からは外れているかも知れない。
この辺りの扱いには今後にもう少し期待したい。

 

システム

オーソドックスかつ適度な難易度が維持されるSRPG

ハガモバはSRPG形式のタイトルとなっている。
ユニットにはアタッカー・ヒーラー・タンクなどのロールの概念があり、そして各ロールには竦みが設定されている。
本作は基本的にCPUを相手にする事になるのだが、CPUが自ユニットを狙ってくる際にもこの竦みなどが大きく関係しており法則性がわかりやすくなっている。
そのため、マップ攻略の際にどのユニットをどこに配置するかを考えやすくなっているのが特徴的だ。

また、各ユニットにしても各種個性が付いてしっかりと差別化がされており、同じアタッカーであっても移動力に長所を持つキャラクターもいれば、戦闘すればするほどに火力の上がるキャラクターも存在する。
前述の竦み要素もあるため自軍のユニットのバランス構成も考えてパーティーを組むのが良いだろう。
とは言え、この辺りはリリース直後時点であるが故の部分もあると思うため、サービスが継続されていった際にも各ユニットの個性が保たれるのかまではわからない。

ユニットには通常攻撃とスキル、必殺技のような行動が選択できる。
通常攻撃はそのままであるため説明は割愛するが、スキルに関しては威力や範囲などの面で強力である一方でクールタイムが設定されている。
一度使うと数ターンの期間は再使用が行えないため無駄に使ってしまうといざという時に使用できないのである程度はマネージメントしておく必要がある。

そしてユニットが攻撃したり、敵ユニットを撃破したりするとゲージが溜まり必殺技が発動可能になる。
こちらはスキルよりも更に威力や範囲の面で強力だが、発動可能になるまでの手間があるのですぐにでも倒せそうなザコ敵に使うのは勿体ない事も多いだろう。
ロールと言う属性も付与されているが、ユニットの個性をより顕著に感じさせるのがスキルや必殺技となっているのでユニット編成の参考になるハズだ。

本作のゲームとしての特徴としては「マップ攻略」に重きが置かれているという点である。
ユニットのレベル上限とマップ攻略状況は「=」の関係になっている。
つまり、常に適正難易度でマップ攻略に挑むようにデザインされているのだ。
もちろん、レベル以外にもキャラクター強化の要素はあるため、そちらを頑張ればある程度は有利に進めやすいが、それでも赤子の手をひねるかのような体験にはならないようになっている。
ある程度の歯応えがあり、SRPGとしての面白さをしっかりと体験したいユーザーにはオススメしたいデザインだ。

キャラクターはガチャで入手する

自ユニットに編成できるキャラクターはガチャで入手が可能だ。
これはスマートフォン向けタイトルとしてはオーソドックスである。
ガチャは電話をかけて呼び出すような演出というユニークなものになっているのは印象的だ。
もちろん、これはスキップも可能なので大量に引く際に煩わしさになる事はない。

ガチャに関してはいわゆる「天井」などのオーソドックスな救済措置も用意されているが、何よりも最高レアリティのユニット自体がガチャ以外にも確実に入手できる手段がいくつか提供されている。
そのため、絶対に欲しいキャラクターであるという場合を除けば無理して引く必要はないバランスに感じられるのでプレイを楽しむ上での障害になる事は少ないだろう。

 

グラフィック

原作テイストを良く再現した3Dモデルは魅力だ

クオリティの高い3Dモデルも比較的良く出来ており評価できるポイントとなっている。
ストーリーの演出や戦闘アニメーションも軽快で、なおかつ原作イメージをしっかりと再現している点も評価が高い。

 

サウンド

メインストーリーはフルボイスだが、それ以外のコンテンツでボイスはない。
ボイスに関しては残念ながらアニメ版の声優が既に逝去しているケースもあるため、本作では演者が変更されている。

 

総評

鋼の錬金術師 Mobileは名作マンガ・アニメのゲーム化という枠に収まらず、リッチな原作再現をしたストーリーと遊び応えのあるSRPGを実現している。

ストーリーやキャラクターは原作・アニメのファンも満足のいく品質に到達しており、ゲームながら「鋼の錬金術師の物語を新しいアニメとして体験する」ことに成功している。
ゲームプレイ部分にしても難易度が高すぎず/低すぎずの体験になるように作られており、純粋なSRPGとしても「SRPGの楽しさ」を体験可能なものに仕上がっている点も素晴らしい。

 

外部記事

Movie | 鋼の錬金術師 MOBILE | SQUARE ENIX

【レビュー】ドラゴンクエスト モンスターズ テリーのワンダーランド

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目指せモンスターマスター

ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド(以下、DQM)は筆者が初めてまともにプレイしたドラゴンクエストシリーズの作品である。
それ以前にもドラゴンクエストシリーズはプレイした事はあったのだが、キャラクターや一人称視点ライクな戦闘画面などにどうにも馴染めなかった。
これは聖剣伝説ファイナルファンタジーといったスクウェアRPGを嗜んでいた筆者には、楽しいと感じるツボが微妙に違うような印象を受けていたのが原因ではないかと考えている。
しかし、そんな筆者でも楽しいと感じる事ができたドラゴンクエストシリーズがあったのだ。
それがDQMである。

なお、今回は原作であるGB版でのプレイとなる。
リメイク版とは異なる点がある事はご了承願いたい。

 

Nintendo Switch|ダウンロード購入|ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランドRETRO

 

ストーリー

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子供心をくすぐる導入

まず知っておいて欲しい事はDQMはストーリーを目当てにプレイするべきものではないという点だ。
ストーリーらしい設定や会話は存在するが、内容はあくまでもゲームプレイがメインとなる。
ストーリーは味付け程度のアッサリとしたものである事が前提と思って良いだろう。

DQMのストーリーはアッサリ味になっているが、その導入は見事だ。
寝付けない真夜中に突如現れたマルタの国の”ワルぼう”という魔物(モンスター)に姉ミレーユが連れ去られる。
主人公であるテリーは同様にして現れたタイジュの国の”わたぼう”という魔物に連れられて、姉ミレーユを探すために魔物使いであるモンスターマスターを目指すというのが本作の導入になっている。
姉が連れ去られるというマイナスから始まる(何かを失う)というオーソドックスな導入を行っているのだが、何よりも「夜更かしをしていたらタンスから魔物が表れて異世界に行く」という子供心をくすぐる設定になっているのは素晴らしい。
本作はゲームボーイと言う比較的若年層向けのハードにて発売された作品になるのだが、そのターゲット層を見事に撃ち抜く素晴らしい導入だ。

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ドラクエらしいコミカルな部分

DQM内で喋る事ができるタイジュの国のNPC達のセリフは物語の進行とともに定期的に変化するなどGB作品としては芸が細かい。
また、随所にドラクエらしさのあるコミカルな会話も散りばめられている。

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シリーズを踏襲した要素

ドラゴンクエストシリーズのファンに対してのファンサービスも面白い。
ダンジョンにおける最終地点ではドラゴンクエストシリーズの特定シーンを思わせるものが使用されている事も多く、ファンにとってはニヤリとできる興味深い内容になっているハズだ。
また、本作の主人公であるテリーは元々はドラゴンクエスト6にて登場しているキャラクターであるため、それを踏襲したイベントが用意されている場所もあり面白い。

 

システム

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モンスターを仲間に

DQMのシステムの主軸はモンスターを仲間にしていくというものだ。
モンスターを仲間にするドラゴンクエストと言えば、ドラゴンクエストⅤ(1992年)で既に一部が実現されているシステムである。
しかし、モンスターを仲間として収集するだけでなく、それを友達と対戦や交換などを行えるという作品はポケットモンスター(1996年)以降のGB作品に少なからず見られる傾向があり、本作もその潮流のフォロワーの1つであると言えるだろう。

戦闘自体は古来からのドラクエ形式のシンプルなターン制が採用されている。
パーティーメンバーは3体のモンスターを連れて歩く形となっており、主人公は基本的にモンスターに指示を出すのみになっている。
従来のドラクエ形式の戦闘であるため強力な攻撃手段に頼るだけになりがちで、戦闘を繰り返すうちに飽きが来てしまうのが少々早い。
言わば噛めば噛むほど味が無くなるガムのようなものであり、奥深さがある訳では無いのだ。
そのため、本作は戦闘そのものに楽しさを見出すと言うよりも、自身のモンスターの「育成」と「育成の成果」を確認する事が戦闘におけるモチベーションであるといった方が正しいだろう。

敵が出現する事になるダンジョンはランダム生成されたものとなっており、ダンジョンの最下層を目指すのが目標となる。
ダンジョン内では敵がランダムエンカウントで出現するが、最下層にいるボスを倒すためにはある程度の戦力を温存しておく事も考えなくてはならない。
このダンジョンは基本的にランダム性のある「突発的なイベント」を楽しむように作られている節がある。
例えば、下層に降りた際にはランダムでHP/MPを全回復できる教会に到達する事もあれば、戦う事でアイテムを貰える闘技場に到達する事もある。
また、ダンジョン内で特定の行動後に下層に降りれば、他国のモンスターマスターがダンジョン内を徘徊するケースもある。
ダンジョン攻略自体は敵と戦いながら下層を目指すというシンプルなものだが、これらの要素によって単純な消耗戦という作業になり過ぎないように工夫されている。

ダンジョンに出現するモンスターには肉を与える事で戦闘後に仲間になる可能性がある。これによってプレイヤーはモンスターを増やしていく事が大切だ。
なお、最初期のダンジョンでは肉を与えずともある程度は仲間になってくれるように配慮された設計になっている。
パーティーメンバーに入りきらないモンスターは牧場に預ける事になるのだが、この牧場のモンスター保有可能上限が少なく簡単に満杯になってしまうのは少々残念だ。

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モンスターを掛け合わせていく

本作で最も特筆すべきユニークなシステムはモンスターを配合して強くしていく要素だ。
配合とはダンジョンなどで仲間になった♂と♀のモンスターを掛け合わせ、その子供を作るというシステムだ。
配合に使用した親モンスターはいなくなってしまうため、その点に関しては注意が必要だ。

配合によって生まれたモンスターは親モンスターの強さに応じて初期ステータスや覚える技などが非常に強くなるため、ダンジョン内で仲間にしたモンスターなどは配合によってどんどん強く、どんどん別の新しいモンスターにしていく事になるのが本作のメインのプレイサイクルだ。
例え同じモンスターであっても、自分が手間暇かけて育てれば驚異的なモンスターへと変貌させることが出来るようになっている。
配合によって未知のモンスターや強力なモンスターを生み出したり、自分が好きなモンスターを強くするなど、配合の仕方次第でプレイヤー毎に違う体験ができるナラティブとなるのは本作が単純なポケットモンスターフォロワーから脱したポイントだ。

しかし、本作の配合にも問題点がある。
配合を繰り返していく事で全てのモンスターがステータスカンスト状態になってしまうため、モンスター毎の個性が失われてしまうのだ(正確には呪文・状態異常耐性に関してはほぼモンスター固有の状態であるが)。
明らかに弱そうなスライムと見た目にも強そうなバトルレックスなどが同じ土俵にいるのは不自然極まりない。
全てのモンスターを何の制約も無しに同じ土俵に立たせてしまっているために、結局はモンスターの特徴を殺す結果になってしまっているのは印象的なモンスターが数多く登場するだけに勿体ない。
特に筆者はキャラクター毎の個性がしっかりと担保されている事を重視している所があり、この仕様は残念に感じる所だ。

本作では配合時に強制的にセーブが行われてしまう事もやや不親切に思える。
うっかりミスをして想定と異なる組み合わせの配合をしてしまうと取り返しがつかないのだ。
もちろん細心の注意を払っていればミスする事はないのだが、不用意にボタンを連打などすると発生しかねない事象である。
そもそも配合にはランダム要素が絡む事もないためセーブを行う必要性・必然性も余り感じられない。この仕様自体に疑問が残る所だ。

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シリーズファンが驚く登場モンスターも

DQMには登場モンスターにもファンサービス的な要素がある。
クリア後に行けるダンジョンには歴代のラスボス級のモンスターが登場するほか、配合によってもそれらのモンスターを仲間にすることが出来るのだ。
シリーズファンにとっては「まさかアイツが…!!」と驚くような非常に嬉しいお祭りのような内容だ。

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各要素へのハブとなるタイジュの国

主人公の拠点となるタイジュの国の構成はとても良く出来ている。
タイジュの国はショップや配合施設、各ダンジョンへのハブとしての機能が集約されている。
しかし、それらの要素へのアクセスは段階を踏みながら徐々に解禁される形となっているため、初心者が困惑しにくいようにしっかりと導線を作れている。
また、タイジュの国は縦の階層構造となっており、各施設に行き来がしやすく、配置も覚えやすいような配慮もされている。

 

グラフィック

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良く出来たモンスタードット

GB作品ではあるがモンスターのドット自体は良く出来ており、ドラゴンクエストシリーズの印象的なモンスターも多数登場し、またそれらを仲間にする事ができるのは嬉しい要素だろう。
また、DQMオリジナルとなるモンスターも登場している。

 

サウンド

DQMの楽曲はドラゴンクエストの各作品のBGMも様々に使用されている豪華仕様だ。
もちろん、本作固有のBGMも印象的で、どこか哀愁のある冒険を演出するドラゴンクエストらしいダンジョンBGM「果てしなき旅」は単純接触効果も相俟って間違いなく記憶に残るだろう。

 

総評

ドラゴンクエスト モンスターズ テリーのワンダーランドポケットモンスターフォロワーでありながら、配合と言う独自の方法論によって単純なフォロワーから脱する事に成功した作品だ。

ドラゴンクエストシリーズの印象的なモンスター、シーン、BGMが収録されているなどファンサービスも満載だ。
戦闘に奥深さこそないが、育成主体の本作にとっては間違ってはいない選択だ。
しかし、育成を主体にし過ぎているために、モンスターの個性までも殺してしまっているのは素材を活かし切れておらず勿体ない。

 

外部記事

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇|ニンテンドー3DS|任天堂

【レビュー】ファイアーエムブレム エンゲージ

未来を繋ぐ、指輪と竜の物語

ファイアーエムブレム エンゲージ(以下、FEエンゲージ)は登場から33年となるファイアーエムブレム(以下、FE)シリーズの14作品目(リメイクなど除く)の作品だ。

前作に当たるFE風花雪月でシリーズにとって更に大きな躍進を遂げただけに、最新作でどうなるのかが非常に気になるポイントであったことは言うまでもない。
発売前のリーク画像やPVを観た段階で主人公のキャラクターデザインが赤と青のツートンカラーになっており、これがFEシリーズの自軍と敵軍のカラーがモチーフとなっているような気がしており、味方と敵がテーマなのではと筆者は予想していた。

今回はFEエンゲージのレビューを記載したい。

 

 

ストーリー

面白くなるまでが全く面白くない

邪竜ソンブルによって引き起こされた戦争にて神竜ルミエルの子とされる主人公リュールは紋章士の力を借りて邪竜を封じたという…。
そこから千年後がゲームプレイが開始する時点となるが、戦いの後に傷つき長い眠りについていたとされており、その影響からか主人公は記憶喪失の状態であった。
そんな中で邪竜ソンブルの復活し、リュール達は邪竜信仰の軍勢との争いに巻き込まれていく事となる。

FEエンゲージのストーリーは基本的に非常にポップでコミカルな作りになっている。
おおよそ戦争ものらしい人間ドラマや政治劇は排除されており、そこに大きな期待をしていた場合にはかなりの肩透かしを喰らうであろう事は最初にうちに記載しておきたい。

本作において特徴的な点を2つ挙げよう。
まずは歴代FEシリーズのキャラクターを召喚・顕現させるという点だ。
マルス、シグルド、ロイ、アイクといった過去作の主人公達が「指輪に宿った紋章士」という形で登場する事になる。
つまり、シリーズのファンサービス的な側面が強めなのだ。
そして、2点目は近年のFEとしては珍しく主人公がよく喋る事である。
近年では主人公はアバターに近く、無個性気味な喋らないタイプのキャラクター像で描かれる事が多かった。
しかし、本作においては主人公リュールは非常によく喋る。しっかりと自我を持ったキャラクターとして描いているのだ。

では、ここからもう少し本作のストーリー面に関して掘り下げたい。
根本的に気になってしまうのは、本作のストーリーは中身のない会話がかなり長期間展開される事だ。
政治劇に乏しいと前述しているが、キャラクターにしろ、シチュエーションにしろ、全般的にかなり記号的な傾向が強いため、ゲーム内の世界でしっかりと生活をして生きているキャラクターであるとコールドリーディング的に感じにくいものになってしまっている。
これはお世辞にもポジティブな要素だとは言い難いのだが、何故そうなっているのかについても考えたい。
例えば、記号的に思えるキャラクターであったとしても、後にギャップを魅せる事によって印象が変わり最初の印象を覆す事は技術的には無理ではない。
これは想像に難くないハズである。
しかし、本作ではこういった状況を生み出せていない。
これは「紋章士の扱い」が影響を及ぼしてしまっているのではないかと思える部分もあるのだ。
紋章士とは歴代主人公達である。
そんな彼らは基本的に全員対等に扱っているし、普通に考えてそうせざるを得ないだろう。
しかし、それによって物語自体が冗長にならざるを得ない状況が作り上げられているように感じられるのだ。
各作品の主人公である紋章士と出会うシーンをしっかりと用意しようとした結果、出会いだけの部分を13回見せられるだけになってしまう。
つまり、物語を進めても進めても起承転結における「起」が延々と続いてしまう状況が本作を終盤になるまで中身が全くない物語としてしまっている主因だと考えている。

これに対してのアプローチはいくつか考えられたハズである。
1つ目は最も単純だが、序盤の段階で全ての紋章士との出会いを終えてしまい、物語全体をしっかりと描ける、悪い言い方をすれば連続したドラマを描かざるを得ない環境を自ら整えることである。
特にリュールとルミエルの関係性は過去の回想という形で定期的に魅せておくべき内容であるように感じられるし、後半の展開を鑑みれば敵側の事情・関係性ももう少し具体的に描くべきであったように感じられる。
このような事をしていないためにリュールとルミエルの関係性も、敵側の事情も取ってつけたようなものになってしまっているのが実態である。
2つ目はゲームプレイとも関連したデザインとなってしまうが、「紋章士を誰から仲間にするかをプレイヤーが自由に決められる」ようにする事である。
こうする事で例え毎回のように「起」のシーンを描いても、プレイヤーが選択するという工程を挟んでいるために、シーケンシャルな出会いよりは印象は軽減されるのではないだろうか。

もちろん、物語は終盤になると大きく踏み込む展開が用意されており、最大の盛り上がりポイントがある。
この盛り上がりは特筆するべき展開になっているのだが、逆に言えばそのシーンになる終盤までは物語的な面白さはほとんどないと言っても良い。
そのため、物語全体として「最初の展開」と「最後のオチ」しか考えてないのではと思われても仕方がない部分はあるだろう。

少し困惑する会話シーン

FEエンゲージでは戦闘前や戦闘後などにカットシーンや会話シーンが多く挿入されており、それ1つ1つの品質は比較的高い。
しかし、会話内容と映像のシチュエーションが若干ミスマッチしているような気がしてならない。
これは会話を行っているお互いの物理的な距離感が曖昧なままに会話が進行するためなのだが、これが「普通に会話ができる距離」だと考えても、「実際にはそこそこ遠い距離での会話」だと考えても、どちらで捉えてもそれぞれ違和感があるシチュエーションだったりするのだ。
もしかすると当初は過去のFEシリーズのような半ば紙芝居形式の会話を想定しており、3Dモデルによるカットシーンを想定していなかったのではとも思えてしまう。
そう考えればなんとなくではあるが距離感の違和感に理由の面で納得する所はあるのだが、不思議な事に3Dモデルの演技は時間をかけて作られたであろうクオリティが感じられるのだ。
実に不自然な状況である。

ボリュームは多いが掘り下げはやや甘い支援会話

FEエンゲージでは「支援会話」と「絆会話」の2種類が存在する。
支援会話は過去作と同様にキャラクター同士の会話となり、絆会話はキャラクターと紋章士の会話となっている。
どちらも親密度によって次の会話が観れるようになる。
また、キャラクター達の情報が載る手帖・図鑑は支援会話などの状況によって追記が増えていくので、定期的に覗いてみると良いだろう。

とは言え、メインストーリー同様にキャラクターやそれと関連した文化や歴史といったバックボーンが掘り下げられる事はほとんどないので、設定厨のような楽しみを期待している人は肩透かしとなるハズだ。

 

システム

アグレッシブなプレイを誘発する優れたデザイン

FEエンゲージはシリーズと同様のSRPGとなっている。
キャラクターであるユニットを将棋の駒のように動かして行動を行い、ユニットを全て動かすなどした時点で相手のターンに移行するというオーソドックスなものである。

本作で特徴的なシステムの1つが「エンゲージ」だ。
エンゲージは「ストーリー」の項でも触れたが紋章士と言われるFEの過去シリーズの主役キャラクターが宿る指輪を装備したユニットが発動させる事が可能な強化状態のようなものだ。
このエンゲージ状態は発動後の数ターン継続するが、切れてしまうと特定の行動によってゲージをチャージしなければ再使用が行えない。
また、最大の大技に関しては1マップで1回しか使用できないため、局面を変えるレベルで強力な行動が可能になる一方で、使いどころは考える必要があるものになっている。

エンゲージする紋章士にはスキルが設定されており、そのスキルはキャラクターに装備させる事が可能だ。
覚えたスキルは他の紋章士に変更した場合であっても使用可能であるため、スキルの組み合わせによるキャラクターのビルドを組み上げられる。
キャラクター自体にも1つの固有スキルが設定されているため、それを活かしたビルドを考えるのが望ましい。
スキル構成の例を出すが、HP低下分を必殺(クリティカル)発生率に加算する「怒り」とHPが低下しているときに攻撃可能であれば必ず先制を取る「待ち伏せ」、ある程度のHPがあれば大ダメージを受けてもHPを1残す「踏ん張り」を組み合わせて、高い火力で敵を先手で倒すような構成も可能だ。
どのようにすればキャラクターが高い性能を発揮できるかを考えるのも楽しいハズである。

本作では三竦みが復活しているが、この三竦みのシステムが本作のゲームプレイをアグレッシブなものにしている。
過去シリーズと同様の剣→斧→槍→剣…といった三竦みが設定されているのだが、本作において特徴的なのは「相性が良い武器で戦えれば相手をブレイク状態にできる」という点である。
ブレイク状態となると、基本的にその状態になった戦闘と次回の戦闘1回分で反撃不可の状態に陥ってしまう。
例えば、相手が斧であった場合に剣で攻撃して命中すると、相手がブレイクになり本来行えるハズの反撃が出来なくなる。
そして、戦闘終了後もブレイク状態が継続し、次戦も反撃ができないためノーリスクでの攻撃が行えるのだ。
そのため、敵がブレイク状態になれば攻撃のチャンスとなるし、自軍のユニットがブレイク状態になればタコ殴りにされかねない非常に危険な状況になるのだ。
これによってゲーム体験にどのような変化が起きるかというと、この手の作品に多い「敵を釣り出して撃破する」という「待ち戦術にリスクを付ける」ことが実現できているのだ。
無闇な待ち戦術を行ってはブレイクされて一方的に殴られてしまう可能性が出てしまう。
逆説的にブレイクを狙って積極的に攻めに行く事によって、敵を比較的安全に処理できる機会も増えるのだ。
受動的一辺倒なゲームプレイになりがちなSRPGだが、このブレイクのシステムによってアグレッシブなプレイが成立しやすくしているのは素晴らしいポイントだ。

本作のゲームプレイにおいて気になるのは攻撃の命中に関してだ。
これは筆者の気のせいの可能性もあるため、ここに記載するのは非常に悩んだが攻撃の命中率が全く当てにならないように感じられた。
10~30%の命中率でも普通に、それも連続して被弾するケースがプレイしている最中に終始あり、表示されている確率が全く当てにならなかったのだ。
本作では前作FE風花雪月のように巻き戻し機能が搭載されているため命中是非に関してはその場で決まるのではなく、固定のテーブルにて事前に設定されているのではと考えている。
このテーブル生成に何か問題があるのではないかと思わざるを得ない程には信用できない命中精度だったのだ。

余り活かされない要素も

紋章士の指輪は「精製」を行う事で、その紋章士の作品のキャラクターの指輪を呼び出すことが出来る。
精製にて作った指輪では最高レアリティになれば一部のキャラクターが特殊な効果が付与されているが、基本的には基礎ステータスが微増するだけである。
他にも僅かな恩恵はいくつかあるのだが、根本的に紋章士の指輪で十分なのは勿体ない。
紋章士はDLCを除いたとしても10人以上用意されており、攻略する事になるマップに関してもそれを超えるような人数を投入する必要があるマップがない。
そのため、出撃メンバーはエンゲージ状態になれない精製した指輪を付けるよりも、紋章士の指輪を付ける方が圧倒的に有用である。
もちろん、紋章士の指輪が揃っていない序盤の頃は精製した指輪を装備しても良いかも知れないが、物語の進行と共に忘れ去られてしまうシステムになってしまっているのは勿体ないと言わざるを得ない。

また、ユニットであるキャラクターが多いが活躍の場が少ない点もそろそろモダナイズしても良いかも知れない。
古来のFEシリーズにおいてキャラクターが多かったのは育成の制限がある上でキャラクターロストがあり得たため、自軍が目減りする事に対しての対策であっただろう。
しかし、近年の作品では難易度設定次第にはなるが、無制限に育成が可能な環境があったりとロストする事がそう多い機会であるとは言えない。
そもそもロストしたままプレイを続行するプレイヤーもマジョリティ―とは言い難いのではないだろうか。
しかも、戦場に出撃させないメンバーに関してはレベルを上げる手段に乏しく、2軍行きとなってしまったメンバーはどちらにせよ後半では使いようがない。
そんな中で以前と同じようなキャラクター数を登場させては使いきれないのは自明の理である。
使いきれない程の人数にパワーを注ぐのは開発効率としても余り良いとは言えないだろう。
例えば、よくある要素だが部隊派遣といったような形で2軍状態のメンバーを派遣して経験値と資金と素材を確保できるようにして、活躍させ続けられる場所のお膳立てはできるハズである。
少なくともこれによって後半で主力級がキャラクターロストをしてしまっても、後継者が全くいないという状況は避けられる可能性は高まるのではないだろうか。

キャラクターとの交流と余り盛り上がらないアクティビティー

ソラネルという拠点ではキャラクターとの交流やいくつかのミニゲームが遊べるほか、オンラインプレイのアクセスも集約されている。

料理は基礎ステータスにバフをかける事が可能であり、更にキャラクターとの交流が行える。支援値を上昇させる手段の1つだ。
その他にも、基礎ステータスに僅かな恩恵のある運動などのアクティビティが用意されている。
しかし、アクティビティーの多くが作りが簡素過ぎるため何度もプレイしようという内容にはなっておらず、賑やかし程度の存在感になっているのは勿体ない。
この要素がネガティブな評価となる事はないが、少なくともポジティブな要素とも言い難い状態だ。

 

グラフィック

高品質な3Dモデルが素晴らしい

FEエンゲージにおいて最もわかりやすい特筆すべきポイントは高品質な3Dモデルだ。
3Dモデル自体の品質は観て貰えれば一目でわかるだろうが、それ以外でもフェイシャルを含めたアニメーションが大幅に強化されている。
品質の高くなった3Dモデルによるストーリー中のカットシーンなども絵になるため、演出面の印象としても良くなっている。

戦闘終了後には戦場となったマップを散策できる。
散策中には仲間のキャラクターと簡単な会話ができたり、動物達を保護したりする事が可能だ。
戦場を別の視点から観る事が出来るのは悪くない。
ただし、散策時のフィールドがどこまでが散策可能な範囲かが視覚的にわかりにくいのはやや困るポイントだ。

 

サウンド

本作においても戦闘BGMの戦場と戦闘でシームレスに変化する仕組みは健在で非常に素晴らしい。
特に過去シリーズのアレンジ楽曲が戦場と戦闘でシームレスに変化するのはシリーズ経験者なら聴いていて感動するポイントとなっている。

戦闘や支援会話・絆会話などキャラクターのボイス関連も非常に豊富に用意されているが、「ストーリー」の項で述べた通り掘り下げるような核心を突くような会話は非常に少ない事は心に留めておいた方が良いだろう。

 

総評

ファイアーエムブレム エンゲージはキャラクターの3Dモデルの綺麗さとアグレッシブに動かす意味のあるSRPGに楽しさを覚え、中身のないストーリーに残念さを覚える作品だ。

紋章士と言う過去シリーズの主役達に大きくフィーチャーし過ぎた結果として、ドラマ的な部分はほとんど感じられず表面的で冗長なシーンばかりが間延びしてしまっている。
終盤には特筆するべきクライマックスが用意されているが、それ以外の部分にはほとんど物語としての旨味は感じられないだろう。

SRPGとしてはブレイクと言うシステムにより、能動的に動く意味を出している点は特筆するべき要素になっている。
キャラクタービルド面も楽しめる要素があり、ゲームプレイ部分には確実な楽しさがある。

そして、魅力的な3Dモデルとアニメーションは本作の最もわかりやすいハイライトとなるだろう。

 

外部記事

開発者に訊きました : ファイアーエムブレム エンゲージ|任天堂

キャラクターデザイン Pikazo氏のツイート - Twitter

【レビュー】ポケットモンスター スカーレット/バイオレット

キミだけの宝探し

ポケットモンスター スカーレット/バイオレット(以下、ポケモンSV)はポケットモンスター ソード/シールド(以下、ポケモン剣盾)以来のポケットモンスター本編の新作である。
本作の登場は驚きであった。
なにせ2022年の初頭には新たな試みをしたポケモン レジェンズ アルセウスが発売されており、同年に新作が出るというのだ。
共にオープンワールド型のタイトルとなっているだけに余計に驚きがある。
筆者としてはポケモン レジェンズ アルセウスのフィードバックを受けた上で新作ポケモンが登場するのだと思っていたのだ。
今回はポケモンSVのレビューを行いたいと思う。

なお、今回はタイトル画像の通りポケットモンスター スカーレットバージョンでのプレイとなる。内容として体験に関わる部分に大きな違いはないとは思うが、念のため注意願いたい。

 

 

ストーリー

ポケモン史上最高の物語

ポケモンSVのプレイヤーのアバターである主人公はパルデア地方に引っ越してきたばかりの学生だ。
新しい学校に通う際にパッケージに描かれているポケモン(コライドンまたはミライドン)と出会い、それから一緒に行動を共にする事になる。

学校では課外授業として「宝探し」を行う事になるが、これがメインストーリーと大きく関係した本作のテーマともなっている。
パルデアの大地の各地を冒険し、自分だけの宝物を見つけるものだ。
ここでいう宝物とは具体的なフィジカルなものに限らず、体験を含めた経験による実際の学びを得ることを目的としたものである。
そして本作ではそれを実現するための3つのルートがプレイヤーに提供されている。
それが「チャンピオンロード」「レジェンドルート」「スターダストストリート」である。
元も子もない事を言ってしまえばオープンワールドを採用した作品と言う事で目標は自分で決め、自由な順序で好きなペースで進めて良いというゲーム側のデザインをストーリーとして落とし込み提示しているのである。

ストーリー面において本作の特異な点はパッケージに描かれる伝説ポケモンが最序盤から登場し一緒に冒険する事だ。
バトルで使えるようになるにはエンディングまで到達する必要はあるが、それでもずっと一緒に冒険する事になるので今までの伝説ポケモン枠とは異なる距離感の近い相棒的な存在として描かれている。
また、メインストーリー中で魅せるカッコいい姿や動物らしい可愛い姿もあるため、そういった方向性からでも距離感の近さが強調されている。

また、余談程度はあるが最後のシーンではポケモン初代から引用されているスタンド・バイ・ミーを彷彿とさせるシーンもあり全体を通してみても非常に綺麗なまとまり方をしている点も見事だ。

素晴らしい生徒達、お手本のような大人達

本作は学校を舞台としているのだが、その題材に適した見事なストーリーが用意されている。
そのストーリー内容は一歩踏み込んだものにもなっており、とても重たい題材ではあるのだが、前に進もうとする生徒達と人間性として見習うべき大人達の存在によって暗くなりすぎないものに昇華されている。

ポケモンシリーズにおいてはアバターである主人公ではなく、主要なサブキャラクターの成長を描く事で物語を描いている事が多いが、それ自体は本作でも同様である。
しかし、各キャラクターの過去や心情が簡潔ながら無駄なく丁寧に描かれているため、歴代シリーズとは一線を画すような密度のストーリーが展開されている。
ストーリーの密度が高まっている大きな要因としては、本作では3つのメインストーリールートがあると前述しているが、各ルートそれぞれに関連するキャラクターが設定されているため、ストーリーを進行させようと思うと必ずそのキャラクターに関する物語が挿入される事が大きいだろう。
つまりは単純にストーリーを描く回数が増えた事が影響の1つだと言える。

そして、何よりもその内容は非常に印象的である。
学校を舞台としているという事でいじめ問題を取り上げているほか、家族との関係性についても取り上げている。
普遍的な問題をポケモンと言うコンテンツで扱っているが、特に理想的な大人達を描いてくれているおかげで心にとても暖かいものを残してくるものになっている。
これは今を苦しんでいる子供達にも、今でも苦しんでいる大人達にも必ず響くものがあるハズだ。

描かれる大人達は学校の先生達が主である。
学校の先生達は主人公の通うパルデアの学校の授業やサブシナリオライクなもので人となりがしっかりと描かれる。
どの先生もとてもフラットで、何かを強要するような事をしない生徒達を尊重する人達ばかりである。
そして、サブシナリオではその先生達の悩みなどを聴く事も出来たりするなど、キャラクターの掘り下げとしても良く描かれている。多くの先生達を好きなってしまうのではないだろうか。

その他、ジムリーダーなどの描かれ方も強化され人となりがよりわかるようになっている。
終戦ではイベント用のバトル演出も展開されるなど、とにかくストーリーが大きく強化されている。

 

システム

大きな変化がある訳ではないのに、ついついプレイを続けてしまう

ポケモンSVは初となるオープンワールド型のポケモン本編作品だ。
序盤からどこにでも行く事は可能であるが、RPGでもあるためレベル帯として推奨・非推奨のエリアが暗に設定されている。
これはオープンワールド型のRPGとしては決して珍しくはないデザインである。
ポケモンレジェンズと比較した場合にはバトルシステムの関係上、明らかな格上相手にはなすすべがないため、レベル差の影響はより顕著だと言えるだろう。
また、「ストーリー」の項でも触れたが、ポケモンSVでは3つの異なるルートでストーリーが展開される。
それぞれ攻略を進めていくと違う恩恵が得られるが、どれも探索を強化してくれるものになっている事が多いため、基本的にはそれぞれのルートを進めていく方が良いだろう。

ポケモン レジェンズ アルセウスを踏襲しているような機能も多数存在する。
背後から野生ポケモンモンスターボールを当ててポケモンバトルに持ち込めば不意打ちが可能になり一手有利に始められる。
レベルで覚える技はいつでもどこでも思い出せるようにもなっている。
他にもポケモンと一緒に歩ける要素も最初から実装されており、ポケモンに指示を出してアイテムを取って来てもらう事も可能だ。
そして本作では更に「レッツゴー」という機能で野生のポケモンとオート戦闘を行ってくれるようになっている。
タイプ相性さえ考慮されていればサクッとポケモンを倒して経験値を入手できる。

レッツゴーを行って入手できるのは経験値だけではない。
「素材」も入手できるのだ。この素材が本作のオープンワールドとしてのポケモンを成立させるための要素の1つとなっている。
入手した素材はお馴染みの「わざマシン」の作成に使用される。
本作のわざマシンは消費アイテムへと戻っているのだが、野生ポケモンから入手できる素材によって作成する事になるため、広いフィールド上で数多くのポケモンと遭遇して戦う意味合いを失わせにくくする工夫として機能させている。
それでいて、レッツゴーと言うシステムによって時間をかけ過ぎずに素材を集めやすくしているといったバランスにしている。

ポケモンSVではオープンワールド化した事に伴いフィールド上のエンカウント関連の扱いもいくつか変更されている。
まず、ポケモントレーナーとの戦闘は話しかける事でのみ戦う方式となった。
これは平面だけでなく、立体的な移動も行う本作においては現実的な選択だろう。
立体的に移動できてしまうと歴代のような「目と目が合っての戦闘」がそもそも機能するケースが稀だ。であれば不要とするのは理解しやすい。
続いて、ポケモンが完全なシンボルエンカウントへと変更された。
前作においてはシンボルエンカウントもあったが、ランダムエンカウント的な部分も残されていたが、本作では完全にシンボルエンカウントへとシフトしている。
中には非常に小さなポケモンもおり、移動中にうっかり接触して戦闘が始まってしまう事も少なくない。
一見すると煩わしさがあるのだが、過去シリーズにあった「草むらの中から飛び出してきた」というのはこういうイメージなのかと納得する部分もあるハズだ。

他にもオープンワールドの探索要素としてマップの各所にアイテムが落ちており、ちょっとした寄り道をついついしたくなってしまう。
そんな寄り道をしていると新しいポケモンを見つけて…とプレイを延々と続けてしまう作りとなっており、オープンワールドのフォーマットをしっかりとポケモンという作品として落とし込めている。
斬新なデザインではないものの、プレイヤーがプレイをし続けてしまう導線はしっかりと用意しているのは良いポイントだ。
そして、本作では「ユニオンサークル」という機能をオンにする事でオンラインで一緒に冒険する事が可能になっている。
友達などと一緒に楽しみやすい要素も強化されている。

本作のフィールド探索面において最も困るポイントも記載しておきたい。
それはポケモンとのエンカウントに関してで、本作はエンカウント後に無敵時間のようなものがない。
その結果として野生ポケモンが密集している状況で戦闘終了すると、逃げる間もなく次のポケモンと戦うハメになってしまうのだ。
下手をすると何度も戦わないと移動すらできないという事態も決して珍しいものではない。この辺りには流石に何かしらの対策をして欲しかった所だ。

恐ろしいまでに戦略と育成の幅を広げるテラスタイプ

ポケモンSVの戦闘において特徴的なのは「テラスタル」という新要素だ。
ラスタルポケモンに個別に設定されたタイプ(テラスタイプ)で、発動するとそのタイプへと変更される。
そしてテラスタイプと一致した技はより強力な威力を発揮するようになっている。
そのため、今まではタイプ相性に穴があるポケモンが新たな光を得ていたり、ポケモン自体の特性を考慮したテラスタイプにするなど工夫の余地が非常に大きなものとなっている。

このテラスタイプは戦略と育成を一段上のレベルへと押し上げている。
非常に簡潔な例えだが、通常は炎タイプのポケモンだが、テラスタル状態になった場合には戦闘の途中からは草タイプのポケモンにする事ができるという事である。
これによって炎タイプのポケモン対策として水タイプのポケモンを出してきたとしても、実はそれはドローイングされており実際には草タイプへとテラスタルしてソーラービームなどで返り討ちにするといった事態が往々にしてあり得るのだ。
つまり、プレイヤーはその一手すらも読んでおく必要があり、安直に有利ポケモンを出すだけではどうしようもない可能性もあるのである。

そして、技の威力が上がる「タイプ一致」に関しては攻撃的な判定で、ポケモンの元々のタイプ+テラスタイプ(テラスタイプが元々のタイプと一致する場合にはタイプ一致威力が更に増加)となる。
そのため、炎タイプのポケモンを他のタイプにテラスタルしても炎タイプの技はタイプ一致判定のままなのだ。
ラスタルした事によって技範囲が狭くなるという事もないという非常に攻撃的でアグレッシブな戦闘になりやすくしている。
更にテラスタイプはポケモン毎に固定という訳ではなく、やや労力は必要だがタイプを後天的に変更させる事も可能であるため、対戦環境における対策の対策などを行う事も可能なハズだ。

非常に攻撃的なテラスタルという仕組みであるが、そうホイホイと使えるものでもないバランスにもしている。
それは1回の戦闘において一度だけ、1匹のポケモンにしか使用できないためだ。
ラスタル状態になったポケモンは交代後もテラスタル状態のままとなる。
話を戻すが、戦闘中に1匹だけがテラスタル状態にできるため、安易にテラスタル状態としてしまうと相手も対策できる一手をまだ持っている可能性があるのだ。
相手は対策が難しいだろうと判断した上でテラスタルする必要があるため、テラスタルのタイミングの読み合いなども白熱する事だろう。

この辺りの考え方に関してもメインストーリーの「チャンピオンロード」でのジム戦において「組み合わせの妙」のようなものをチュートリアルしているため、プレイしていく事でその奥深さに気が付く事も可能なハズだ。
そのため、本作においても「クリアまでがチュートリアル」という歴代のポケモンの構成を踏襲していると言っても良いだろう。

本作の新たなる挑戦であるポケモンとテラスタルの組み合わせによる戦略の幅の広がり方は過去に類を見ないレベルの奥深さを提供している。
しかし、一点気がかりな事を言うのであれば、これは非常に玄人向けになってしまっており、初心者が対戦でもしようものならハメ殺しされまくるという嫌な光景も目に浮かぶ。
奥深い一方で、ライト層にも楽しめるレベルの遊びなのかは気になる所だ。

ポケモンとの触れ合い

ポケモン達とのインタラクションももちろん用意されている。
フィールド上ではピクニックが可能で、サンドウィッチを作ったり、ポケモンを洗って綺麗にしたりできる。

サンドウィッチ作りは普通に行うとかなり難しく、ある種の”どうぶつタワーバトル”的な側面があるものになっている。
上手いこと積み上げても最後に挟むためのパンを乗せると理不尽にも謎の抗力によって崩れやすい。
どうやら一番最後に上に乗せるパンはサンドウィッチとして成立するための必須項目ではないらしく、オープンサンド的に作るのが質の高いサンドウィッチを安定して作るためには必要だろう。

マップ関連は困った事が多い

本作で目に見えて困るのはマップだ。
まず問題になるのは高低差がわからない事だ。
行きたい場所にピン止めをしてマーキングしたとしても実際には高低差が激しくて序盤では行く事は厳しい事も珍しくない。
等高線なり、色の濃淡なりで高さの表現をしっかりと高度差が視認できるようにして欲しい所だ。

また、移動中に表示されるミニマップも痒い所に手が届かない。
キャラクター操作と連動してしまい、北固定にする事ができないため使いにくいと感じる人も多いだろう。
この辺りは設定でのON/OFFができると嬉しい所だ。

 

グラフィック

ディティールには粗が残るが、キャラクター達は非常に良く描かれている

ポケモンSVではキャラクターやポケモンの3Dモデルがよく描かれており、テクスチャーも質感がよりわかるようになった。
キャラクターのデザインはノンバイナリーさが強めになっているが、それによってデザイン的な魅力が減っているかというと決してそんな事もなく現代の政治的な部分との折衷案として良いバランス感覚のデザインだと言えるだろう。
メニュー画面などUI関連も全体がシームレスになりモダンになっている点も良いポイントだ。

しかし、フィールド上のテクスチャーはそこまで綺麗という訳ではない。
また、ほんの少し遠方に描画されているオブジェクト(人やポケモンなど)に対して露骨にFPSを落として負荷軽減を行っている点は流石に少し気になる。
かなり遠方のオブジェクトであれば露骨に落としてもそもそもの情報量が少ないため気にならないだろうが、本の数メートル先のオブジェクトに対してもFPSをかなり落としているため簡単に目に付いてしまうのは品質面としては少し気になる所だ。

キャラクターアニメーションも魅力を強めている

キャラクターやポケモンの3Dモデルは素晴らしいが、アニメーション関連も優れている。
特にキャラクターのフェイシャルモーションは良く出来ていると言って良いだろう。上図を見てもその細かな表情変化が伝わるだろう。
その他、ポケモン剣盾にもあったような階段などの斜面での上り下りで専用のモーション、天候によっての専用のリアクションがある。

ポケモンももちろん様々なリアクションが用意されているほか、野生では群れで活動していたり、ポケモンの相性によっても行動が変化したりもするようだ。
広いフィールドでより活き活きと生活するようになっており、細かなリアクションが増えているためより生物感が強いものとなっている。

少し寂しいポイントとしてはアバターの服装で、過去作のように服装の自由は少ない。
学校の制服として夏服や冬服などの衣替えは可能なのだが、制服以外の服には色を含めて変更できない。
自由に着せ替えができるのは帽子や靴などであるため、制服の色を自由にできない事も相俟ってマッチする色の相性なども制限されてしまっているのは悲しい。

集めたくなってしまう魅力を強めたポケモン図鑑

ポケモンSVにおいてポケモンを集めたくなるモチベーションに一役買っているのがポケモン図鑑である。
本作のポケモン図鑑は1つ1つが本や電子書籍のように演出されてオシャレなのだ。
ポケモン自体も非常に印象的に写っている表紙だけでも魅力的だ。
そのような本が一覧としてズラッと視認できる形で並ぶため収集欲をかきたてるものになっているのは素晴らしい。

ポケモン図鑑が収集した結果(達成感)だけでなく、次のモチベーションへとなるようにデザインされているのは見事だ。

 

サウンド

ポケモンSVではオープンワールドになった事でインタラトによって変化するBGMが所々に存在するようになっている。

そして印象的なのはジムリーダー戦BGMで、会話から戦闘までがシームレスに開始されるのはもちろん、前作に当たるポケモン剣盾を踏襲した演出の楽曲になっており盛り上がるものに仕上がっている。

終戦のBGMも素晴らしく、明るい曲調だがその演出も相俟って感動的な楽曲へとなっている。

 

総評

ポケットモンスター スカーレット/バイオレットはシリーズの新たなる1ページを飾る名作である。

普遍的な題材の物語はポケモンを通して1歩踏み込んで描いており、子供にも大人にも刺さるものに仕上がっているのは素晴らしく、ストーリーを描くポケモンとしては歴代でも最高のものに仕上がっている。
ポケモンバトルにおいてもテラスタルという新要素によって駆け引きの幅が増大されており、特に対戦環境においては非常に奥深い戦略が考えられる領域へと達している。

ただし、オープンワールド化した事によりボリュームも増しているため、両バージョンをプレイしようと思う場合にはそれなりに大変であろう事は知った方が良い。

 

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【レビュー】ABZÛ

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母なる海

ABZÛはGiant Squidが開発した海中探索ゲームだ。
開発のGiant Squidは「風ノ旅ビト」で知られるthatgamecampanyから独立したメンバーによって設立された経緯がある。
ゲームタイトルである「AB」は”水”を、「ZÛ」は”知識”を意味しているという。
筆者は連休があったためサクッとプレイ可能な本作に手を出してみた。

今回はABZÛについて書いてみたい。

 

abzugame.com

 

ストーリー

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テキストやボイスのない想像をするストーリー

ABZÛは様々な海洋生物を観たり、触れたりする事のできる作品だ。
本作には明確に何かを語り掛けてくるようなストーリーがある訳では無いが、人類の文明のような名残りがあったりと想像を膨らませられるような世界観が構築されている。
作中にはシステム以外でのテキストは全くなく、当然ボイスも無い。全てを映像でのみ表現しているのが特徴だと言えるだろう。
進行はステージ制のようになっているが、難解な謎解きや精密な動作を要求されるアクションがある訳でもないため、スムーズに進める事が出来るだろう。
また、本作は2~3時間でエンディングまで到達できるようなボリューム感になっている。
そのため、ゲームらしい体験(遊び)を求めている人にはミスマッチであり、海中と言う世界を体験したい、雰囲気や空気感を楽しみたいという人にこそオススメだ。

ABZÛのストーリーは何かを明確に語るようなものではないが死んだようなエリアを生命豊かに変化させるような演出もあり、”環境問題”あるいは”人と自然の調和”のようなテーマがあるのかも知れない。
とは言え、何か奥深い、考察のしがいがあるようなものを期待するのは間違いだ。
本作はあくまでも世界を体験する事に主眼を置いている作品なのだ。

 

システム

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海中を優雅に泳ぐ癒しのゲーム

広く美しい海中を泳いで、ゆったりと深呼吸できるようなヒーリングゲームだ。
海中には様々な生物がおり、色々と探す事で見つかる生物もいるので、じっくりと環境を探索して観察するのが良いだろう。
プレイヤーキャラクターが泳ぐと近くの魚群が近寄ってきてくれるなどのちょっとしたインタラクティブな要素も可愛らしい。

操作方法自体はそれほど難しい訳では無く、スティックと数個のボタンだけであるため、海中という環境を体験したいという動機で始めるライトなプレイヤーでも取っつきやすさはあるだろう。
ただし、海中という3次元的な空間を移動するという独特な操作が要求されるため、操作感に慣れる必要はあるハズだ。

「ストーリー」の項でも書いた通り、本作は「遊び」に主眼を置いている作品ではない。
しかし、全く無い訳ではなく、特定のオブジェクトに対してインタラクトする事で泳ぎ回る海洋生物の種類が増えるたり、コレクション用のアイテムが隠されていたりといった探索要素も存在はする。
その他、パズル…とは言えないかも知れないが、ギミックのあるフィールドデザインがされている場所もある。
とは言え、これらのどれも本作の世界の雰囲気を楽しみたいというプレイヤーに対して水を差さない程度であり、ゲームデザインとして整っている良いバランス感覚を持って制作されているのが伝わる事だろう。

 

グラフィック

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滑らかで色鮮やかな世界

美しい海中は彩度の高さとそれを際立たせるためのコントラストやあえて地味なシーンを差し込むなどして美しさを高める工夫が成されている。
登場する海洋生物は多種多様で、中には今では見る事の出来ない絶命してしまっている生物もいる。

プレイヤーキャラクターや海洋生物のアニメーションもとても滑らかな良い出来栄えだ。

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魚群の表現は圧倒的だ

海中の表現は美しく見事だが、中でも目を引くのは魚群だ。
この魚群はハリボテではなく、しっかりと1匹1匹をオブジェクトとして描画しているようで、プレイヤーキャラクターが通過すると避けるように動く。
これほどの群れの魚群を作り上げているのは圧巻だ。

 

サウンド

BGMも落ち着いた神秘的な印象を覚えるヒーリングミュージックが主体となっており、心を落ち着けてくれるだろう。
海中のSEも非常に良く、魚群のノイズ感などは素晴らしい。

「ストーリー」の項でも書いたが、ナレーションなどのボイスが挿入される事もないため、BGMと環境音だけで構築されている。
そのため、海の中の世界にだけ集中する事ができるハズだ。

 

総評

ABZÛは大海の癒しと体験を与える作品だ。

色鮮やかで美しい海の中と滑らかに動く海洋生物たち、世界観にマッチしたBGMやSEも素晴らしい。
ビデオゲーム=遊び」という古典的な側面ではなく、ビデオゲームの価値観が真に多様化した2010年代後半だからこそ生まれ、成立した作品だと言えるだろう。
全体は一貫した哲学で制作されているが、水中と言う3次元的なフィールドであるため、ビデオゲームの初心者は操作面で少し戸惑う部分はあるかも知れない。

 

外部記事

海中探索アドベンチャー、『Abzu』の世界 - Unreal Engine

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