【レビュー】SDガンダム バトルアライアンス

共同戦線

SDガンダム バトルアライアンスは最近のガンダムシリーズのゲームとしては少ないARPGタイプの作品である。
筆者はこういった方向性の作品が出て欲しいと頭の片隅で思っていただけに、本作の登場は嬉しいところだったのだ。

 

SDガンダム バトルアライアンス -Switch

SDガンダム バトルアライアンス -Switch

  • 発売日:2022/8/25
  • メディア:Video Game
【PS4】SDガンダム バトルアライアンス

【PS4】SDガンダム バトルアライアンス

  • 発売日:2022/8/25
  • メディア:Video Game
【PS5】SDガンダム バトルアライアンス

【PS5】SDガンダム バトルアライアンス

  • 発売日:2022/8/25
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

ガンダムシリーズがクロスオーバー

UC0079に特務部隊ギャザーロードの小隊長としての任務中に異質な現象が発生し、それに巻き込まれてしまうのが主人公であるアバターである。
ブレイク現象と言われるその現象は、あるべき出来事が別の出来事に置き換わってしまうようなものであり、巻き込まれた主人公はその現象をあるべき姿へと戻す事になっていく。

ストーリーは各ガンダム史をシミュレーションした仮想空間のようなイメージの世界観であり、そのデータがチグハグになってしまった結果として各作品がクロスオーバーするような現象となっている。
ガンダムシリーズの各種場面を切り取ってクロスオーバーさせており、ガンダムシリーズ初心者にストーリーの全貌がわかるようなものではないものの、追体験するだけではない面白さはある。
とは言え、特定のシーンで登場するキャラクター・機体が別作品のものに置換されて暴れ回るといった形式のためガッツリとしたクロスオーバーという訳ではなく、ストーリーとしてのクロスオーバーとしては局所的なものだと思っていた方が良い。

各作品の設定を知る事が可能な要素も

また、本作または各作品群の設定に関しては別途知る事ができる「説明ADV」というものも用意されている。
ここには本作固有の設定部分の説明の他にもシリーズの各作品に登場する固有名詞などの設定を知る事が可能である。
より詳細に設定部分を知りたい場合には参照すると良いだろう。

 

システム

SDガンダムだが硬派な仕上がりのARPG

本作はガンダムシリーズの様々なSD化した機体を操作する事ができるARPGだ。
主役級以外の量産機などもそれなりにプレイアブルとして登場するが、敵としてのみ登場する機体も多いためその点は注意が必要だ。
特に宇宙世紀以外の量産機はほとんど非プレイアブルである。

機体はミッションをクリアしていく事で収集できる設計図が貯まるとアンロックされるような形となる。
そのため、1回のクリアでは設計図が完成せず、何度か同じクエストを再挑戦する事が多いだろう。
とは言え、後述する機体のカスタマイズしていくのはコストが高く、ひとまずサクッとクリアを目指すといった場合には強化する機体は絞り込まなくてはならないという状況になるだろう。
また、敵が固いためEasyでプレイする事も視野に入れても良いかも知れない。
なお、ボス級の敵の耐久性に関してナーフが行われたようだ。筆者がプレイした時点よりはいくらか快適になっているのではないだろうか。

ゲームプレイにおける攻撃方法自体は非常にシンプルで、各種ボタンに割り当てられた近接攻撃や射撃攻撃のほか、必殺技に相当するスペシャルアタック(SPA)が駆使する。
近接攻撃はエリアルコンボなどもあり、そこに射撃なども併用してコンボ数を稼いでいくのが理想的だ。
コンボが増えるとSPAの発動のためのチャージ時間が減少するため結果的に火力が増えていくためだ。
攻撃方法はそれほど多くなく、またゲームスピード自体も遅めであるためゲーム初心者も理解はしやすいが、ガンダムシリーズのファンとしての「機体らしさ」という意味では少し味気なく感じる部分もあるだろう。

立ち回りとして可能なものはジャスト回避やジャストガードがある。
ゲームのバランスとしてはこの辺りの操作は前提となっており、左右にダッシュしている程度では避けられない攻撃が多い。
SDガンダムと言うポップな見た目で、更に全体的なゲームスピードは遅めではあるが、アクション要素全体のバランスとしてはかなり硬派な作りとなっている印象だ。
とは言え、敵の攻撃モーションは発生や判定のタイミングがわかりにくく、ジャスト回避/ガードを駆使するには場数が必要となってしまうだろう。
この辺りは攻撃判定発生時に光るなどもう少しアクションをわかりやすくするお膳立てをして、回避やガードが行いやすいように調整して良かったように思う部分となるだろう。

機体のカスタマイズ

ARPGとなる本作では機体の強化が可能だ。
強化方法はステータスを向上させる強化と、ステータスや機能を拡張するパーツ装備の2種類ある。

強化はゲーム内マネーを使用して特定のステータスを向上させることが出来る。
前述している通りなのだが、この強化はコストが非常に高くなるため、複数の機体を強化していこうとするとなかなか大変なものがある。
また、ステータスは特化させて強化するのは効率が良くない。
例えば格闘を強化していくと格闘性能の強化に必要なコストがガンガン上昇していく。
そのためバランス良く強化するようにデザインされている。
この辺りの強化回りもプレイヤーや機体の個性が出せるようにしたり、もう少し強化コストを抑えて多くの機体を触りやすいようにデザインした方が良かったように思う。
なお、アップデートによりゲーム内マネーが多めに排出されるように調整が行われているため、筆者がプレイした時点よりは多くの機体に手を出しやすくなっているだろう。

機体には拡張パーツを装備可能だ。
拡張パーツは様々な効果があり、ステータス強化とはまた別の強化が可能だ。
この拡張パーツはミッションにて入手可能だが、入手したパーツがどのような効果になるかはランダムになっておりエンドコンテンツ的な側面がある要素でもある。

頼りない僚機

ミッション出撃の際に僚機を2機設定可能で、設定した僚機によってバフが発生する。
この僚機は本作のマルチプレイ要素でもあるのだが、それをCPU操作に行って貰う事も可能である。
しかし、このCPU操作の僚機は頼りない。
攻撃頻度も少なく、立ち回りも直線的で被弾も多いのだ。
SPAをプレイヤーの任意のタイミングで発動させる事は出来るが、全体としては本当にオマケ程度の戦力でしかないのは残念だ。

また、登場機体数はそれなりに多いのだが、出撃できるのは僚機を含めても3機であり、分母から考えると少ないのは非常に勿体ない。
一度にもう少し多く機体が活躍できるようになっているとより良かったように感じられる。

 

グラフィック

新作と言う贔屓目で観れば悪くないグラフィック

新作と言う観点から見れば悪くないグラフィックだが、ディティールの部分は少し粗い。
特にフィールドのオブジェクトやテクスチャーはリッチなものとは感じにくいだろう。また、フィールド上の一部のオブジェクトは破壊可能だが、リワードもなく、破壊アニメーションも特にないため壊す事への爽快感がある訳ではない。

幸いにもガンダム自体のモデリングはSDながら良く出来ているため、シリーズファンとしては納得できるレベルにはなっているだろう。

 

サウンド

各種原作のBGMがアレンジ版も含めて収録されているのが特徴的だ。
アレンジ版ではテクノ調のアップテンポな楽曲になっており、決して悪くはないアレンジBGMとなっている。

少しだけ前述しているが、本作では各ガンダム作品のキャラクターを僚機として設定可能だ。
この僚機も組み合わせによって専用ボイスが用意されている。
クロスオーバー作品ならではの掛け合いには嬉しさがあるだろう。

 

総評

SDガンダム バトルアライアンスは初心者にも取っつきやすそうなSDという見た目とゲームスピードの遅さがありながら、実際には硬派な操作が要求されるARPGという作風になっており、どこをターゲットにした作品なのかがわかりにくくなってしまっている。

プレイアブル機体も量的に悪くはないが、強化コストが高いため色々な機体に手を出しにくく、活かし切れていない印象も勿体ない。

近年では意外と少ないガンダムのアクション要素のあるゲームであるだけに将来性には期待したい作品だろう。