【レビュー】スターオーシャン セカンドストーリー R

愛と勇気のRPG、再び。

スターオーシャン セカンドストーリー R(以下、SO2R)は初代Play Station向けに販売されたスターオーシャン セカンドストーリーのリメイクだ。
オリジナル版はテイルズ オブシリーズを手掛けたウルフ・チームが立ち上げたトライエース開発のRPGとして登場している。
そのような意味でもスターオーシャンシリーズは類似の志向性も有しており、ある意味で兄弟作品とも言えるだろう。
そもそも、スターオーシャン セカンドストーリーはシリーズでも屈指の人気作でアニメ化もされた上に外伝ブルースフィアも発売されている。
更にはPSP向けに追加要素を加えた移植が行われた事もある。
本作はそれらを統合し、改めて大幅なリメイクを行った作品となっている。

今回はSO2Rのレビューを行っていきたい。

 

STAR OCEAN THE SECOND STORY R -Switch

STAR OCEAN THE SECOND STORY R -Switch

  • 発売日:2023/11/2
  • メディア:Video Game
STAR OCEAN THE SECOND STORY R -PS5

STAR OCEAN THE SECOND STORY R -PS5

  • 発売日:2023/11/2
  • メディア:Video Game
STAR OCEAN THE SECOND STORY R -PS4

STAR OCEAN THE SECOND STORY R -PS4

  • 発売日:2023/11/2
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

JRPGの王道ファンタジーSFだ

スターオーシャンシリーズの設定全体としては宇宙を航行できるようになった時代の地球文化圏であるためスペースオペラ的な要素はあるが、物語のメインとして描写される部分はJRPGの王道の1つでもあるファンタジー x SFの構図である。
もちろんスペースオペラ的な要素も度々顔を覗かせるのだが、頻度としては少ないためやはりファンタジーSFとして受け取る方が良いだろう。

SO2Rの主人公は偉大な功績のあるロニキスを父に持つ地球出身の青年クロードと、未開惑星の住民として生活している少女レナの二人を選択するダブル主人公形式になっている。
選択した主人公によって一部のストーリーにおいて視点が異なるが、大枠となるストーリーが全く異なる展開になるような事はない。
また、仲間キャラクターも登場するが選択した主人公によって仲間にできるキャラクターにも一部違いがある。

クロードは偉大な父の存在が重圧になっておりやや自信のなさが垣間見える青年だ。
惑星ミロキニアの調査中に謎の装置を発見、クロードはその装置によって未開の惑星エクスペルへと飛ばされてしまう。
未開の地へと飛ばされた直後に偶然にも遭遇した少女レナを助けるために光線銃フェイズガンを使用してしまうが、そのことがきっかけとなり近隣の住民から伝説の光の剣を持った救国の勇者であると祀り上げられてしまう。
エクスペルでは隕石ソーサリーグローブの落下以降に魔物や災害が増加しており、それを解決するのが伝説の勇者であるという。
地球へと帰還する方法、そして不穏なソーサリーグローブの調査を行うのが本作の大まかな道筋となる。

物語の大筋はかつてはメジャーであったボーイミーツガールである。
クロードとレナが出合い、時にすれ違いもあったりしながら互いを信頼していき、そして成長していく物語が展開されていく。
クラシックな物語展開には今にはない良さが内包されている事も事実だ。
また、自己肯定感の低いクロードが未開の地へと飛ばされるというのは、ある意味で異世界転生物という現代(2020年代)でメジャーなシチュエーションを構築しているとも言え、過去に縛られる必要のなくなった環境でクロードが成長するきっかけを掴む状況を得たとも捉えられるだろう。

本作は二作目となるタイトルであり、前作の知識がどれくらい必要なのか気になる人もいるだろう。
確かにロニキスなど前作の登場人物も存在するのだが、物語に深く関わる事はないうえ、物語の舞台も違うので全く知らなくても問題ない。
安心して楽しめるだろう。

豊富な仲間キャラクター

本作では多くの仲間キャラクターが登場する。
仲間にできるキャラクターは、仲間にできる上限数を超えて存在しており「誰を仲間にするか」という部分においてプレイヤーの個性が反映される。
なお、仲間の加入状況による会話差分もしっかりあるのは嬉しいディティールである。

ストーリーにおいては特定の仲間キャラクターがいなければ行く必要のないようなダンジョンもチラホラとあり、そういったダンジョンが仲間キャラクターと紐づいたサブクエストのように構成されている。
そのため、誰を仲間にしたかによっても物語の進行に僅かに影響がある作りになっている。

なお、この仲間キャラクター達には親密度も設定されている。
この親密度はエンディグに影響を及ぼし、そのパターンも多く設定されている。

キャラクターの個性と関係性を映し出すプライベートアクション

プライベートアクション(PA)と言われるキャラクター同士の会話も存在する。
これはシリーズの醍醐味の1つと言っても過言ではない要素だ。
キャラクターについての掘り下げである事はもちろん、選択肢が用意されている事もある。
内容に関しても進捗によって会話差分があるなど作り込みがされている。
選択した会話によっては前述した親密度が増減するが、PAが唯一の親密度を上げる手段ではないので真剣になり過ぎず選択して良いだろう。
このPAはファストトラベルのメニューから未読のものがあるか否かが確認可能なので回収しやすい作りになっており親切だ。

PAは物語進行と共に参照できるものが増えていくうえ、そのボリュームもしっかりとあるため満足感も高いものになっている。
そのおかげで仲間キャラクターの存在感が保たれている側面も強い。
メインストーリーにおいては徐々にクロードとレナが中心となって喋る事が大半になっていき仲間はほとんど喋らない。あったとしても一言セリフがある程度だ。
そのため、PAを全く観ないで進行させてしまうと仲間の存在感は薄いと感じてしまうだろうし、PAをしっかりと回収していれば仲間の存在感を補う事に貢献してくれる。
PAは本作の醍醐味の1つでもあり、そもそも観ないようなプレイをするのであればプレイヤーのミスマッチだと言っても良いだろう。

 

システム

ここではゲームプレイ部分と関連するシステム面についての記載を行う。

 

フィールド

モダンな品質に作り直したフィールド

2Dベースのキャラクターが3Dのフィールドを移動するような形式となっているのが特徴的だ。
この手法自体はPS時代には主流だったものだが、それを現代技術で大胆に取り組んでいる。

フィールド構成も現代ではやや珍しく各街やダンジョンへのハブとなるワールドマップを経由する形式である。
このワールドマップ形式は当時のJRPGでは冒険する世界の広さを表現するための手段として採用されていたが、オープンワールドという表現の台頭によって徐々に衰退している技法だ。
ワールドマップ形式は本当に広い世界を表現できないが故の代替手段だったが、現代の水準で作成した事で疑似的ながらしっかりと世界の広さを感じられるものであると改めて思わせてくれるルネサンス的な側面もある。

本作ではその他の機能面でも非常にモダンになっており、ファストトラベルも実装されて移動が便利になった。
以前に赴いた土地に行きたいと思った時にパパっとそれが実現できるのは快適だ。
しかし、ファストトラベルが存在する事でメインストーリーの進行で移動手段が強化されても恩恵が少なく感じられてしまうのは少々勿体ない。
移動手段が強化されたところで「新天地に行くのが便利」なだけで普段はファストトラベルに頼る事になってしまうため、存在意義の多くが失われてしまっているのだ。

 

バトル

新要素も加わった戦闘

リメイク版である本作では戦闘においても様々な追加や変更が行われている。
まずは戦闘の方式がシンボルエンカウント方式になっている点だ。
ダンジョン内の敵はダンジョンから一度出るなどをしない限りはリポップしないので、探索が行いやすいバランスになっている。

SO2Rの戦闘システムは3Dフィールド上でキャラクターを操作して攻撃を行うARPGとなっている。
移動や攻撃による立ち回りがあるため一見するとアクション要素もありそうだが、攻撃ボタンを押すと敵の近くに自動追従で近寄って攻撃を振ってくれる仕組みになっている。
これは親切である一方で、逆を言えば”攻撃を置く”ようなアクションは行えない事を意味するため見た目ほどのアクション要素がない作りになっている。
極端な事を言えばザコ敵などは何も考えずにボタンをポチポチと押していれば大体のケースで何とかなるレベルだ。

戦闘自体にも変更が入っている。いくつかわかりやすい部分を紹介しておこう。
敵には「シールド値」というものが新たに設定されており、それを攻撃によって削る事ができる。
シールド値が全て削れると「ブレイク」という状態になり、敵は一定時間の行動不能状態に陥る。
ブレイク状態では攻撃が全てクリティカルになるなど大ダメージを与えやすい。

敵の攻撃に合わせてタイミングよく回避が行えると「ジャストカウンター」という効果が発生するようになった。
ジャストカウンターが成功するとMPが大きく回復するなどの恩恵があるものの、失敗した際には一定時間の行動不能になるなどデメリットもあるので注意が必要な要素となっている。

全滅した場合にはパーティーの編成や装備、難易度を変更して再挑戦が可能になっている。
それ自体は嬉しい調整なのだが、それを行わない場合にはタイトル画面に戻されてしまうのは面倒な仕様になっている。
せめてロードするデータを選択できるなどの配慮まで行って欲しい所だ。

新要素の必要性はかなり薄い

ではこれらの新要素が上手く機能しているかという点だが、これに関して言えるのは「悪さはしていないが、存在している意義は薄い」という事だ。

特に「シールド値とブレイク」という新要素が上手く組み込まれているのかというと素直に頷くことは難しい。
実際のゲームプレイではブレイク前もブレイク中も攻撃を叩き込むだけであり、ブレイクという要素がある事によって立ち回りの変化やメリハリは生まれていないのだ。
つまりは「ブレイクというシステムがあってもなくても、やる事は別に変化していない」のである。

筆者の浅知恵で恐縮だが、ブレイクと言った要素を組み込むのであれば「敵が大技を放つためのチャージが開始される」といった、言い換えればいわゆる"DPSチェック"のような仕組みを導入して「制限時間内にブレイクをする事を要求する」といったデザインを採用する事も可能だったハズだ。
これに関しては斬新な発想でもなんでもなく、世間を見回しても普通にあるようなデザインである。

こういったデザインにしなかった理由として考えらるのは「原作感の欠如」や「一般性の低下」だが、それが理由ならばブレイクという要素も別に不要だったハズだ。
これではモダンな要素を”とりあえず”くっつけて、表面的な「現代風」の雰囲気を醸し出すためだけのフレーバーとして採用されただけと思われても仕方がない。
せっかく新しい取り組みを導入するのであれば、しっかりと意味のあるものとしておくべきだ。

リザーブや他シリーズ作品のキャラクターが活躍できる

バトルメンバー以外を戦闘に召喚して攻撃や回復ができる「アサルトアクション」というシステムも用意されている。
アサルトアクションは時間と共に蓄積されるゲージが溜まる事で控えにいるパーティーキャラクターを呼び出して必殺技などを行ってくれるというアシスト行動的なものだ。
このアサルトアクションを行うキャラクターの中には本作とは異なるSOシリーズのキャラクターも含まれており、ファンサービス的な側面もあるシステムである。
なお、その他のSOシリーズのキャラクターを呼び出せるようにするには専用アイテムを入手する必要があり、一部はやり込み要素の側面が強いものになっている。

 

キャラクター強化

パーク形式のキャラクター強化

SO2Rのキャラクター強化はポイントを消費してスキルのレベルを上げていくパーク形式になっている。これはオリジナルの頃と同等だ。

スキルには様々なものが用意されており、上げるスキルに応じて連動して上昇する能力値があったりするため、どのキャラクターのどのスキルを上昇させるべきなのかは優先度を考慮した方が良いだろう。
また、このスキルを特定の組み合わせを獲得すれば後述する「アイテムクリエイション」もアンロックされる。
上昇する能力値はハッキリ言ってオマケ程度のものであり、メインとしてはこのアイテムクリエイションを活用するための踏み台だと思って良いだろう。

 

アイテムクリエイション / 特技

非常に便利な必須機能

SOシリーズにおける特徴的なシステムは「アイテムクリエイション(IC)」と「特技」だ。
これが本作の一番の醍醐味だと言っても間違いではないだろう。

ICはアイテムなどの素材を使用して効果の高い回復アイテムや強力な武器を作成する事ができるシステムである。
対して特技はフィールド探索などを便利にしてくれるシステムだ。

特に装備作成を行うICは店売り品よりも圧倒的に強くしていく事が可能であり、前述の通りスキルによるステータス上昇は僅かであるため、ステータスに関しては武器・防具の恩恵が大部分を占める。
そのため、ほとんど必須級の要素と言っても過言ではないものである。

その他、歩いているだけでアイテムが入手できるようになったり、格下の相手をフィールド上でエンカウント戦闘せずに潰せたり、装備品に追加効果を付与出来たりと様々な事が行える。
状況によっては物語進捗に不釣り合いなほどに強力なアイテムなどが入手できることもあるので良い意味でズルができた気分になれる非常に良いシステムだ。

 

グラフィック

2Dと3Dの非常に大胆なミックス

フォトリアルなディティールのフィールドと2Dドットのキャラクターというユニークなビジュアルスタイルを採用している。
元来のスターオーシャン セカンドストーリーでは当時としては数多く採用されていた3Dフィールド(ワールドマップは3D、フィールドマップはプリレンダ3D)と2Dドットのキャラクターを採用していたが、それを更に尖らせたような映像表現だと言えるだろう。
余りにも大胆な表現であるが、実際にプレイしてみれば問題なく受け入れる事が出来る事に驚きもある程だ。

2Dのキャラクターも12方向ベースであるため移動の際のリッチさが感じられ、待機モーションも用意されているのは嬉しいポイントだ。

ファンに嬉しい要素としてはオープニング映像がしっかりとオリジナル版をリマスターしたものになっているという点だろう。

 

サウンド

リメイク版である本作では本作のオリジナルアレンジ版とPSPの移植版のBGMを選択する事が可能になっているのは嬉しいポイントである。

また、リメイク版ではオリジナル版とPSPの移植版のボイスを選択する事ができる。
特にオリジナル版は当時には行えなかったフルボイス化を改めて実現しているのはリメイク版の大きな魅力の1つだろう。
なお、ボイスはキャラクター個別にオリジナル版と移植版を選択可能である。

 

総評

スターオーシャン セカンドストーリー Rは大胆なビジュアルスタイルで名作を現代に再誕させている。

ストーリーを進めるうえでも、ゲームプレイの上でもモダンでユーザーフレンドリーな要素が多く追加されており現代で非常に遊びやすい。
また、ディティールある3Dフィールドに2Dドットキャラクターを乗せるという表現は奇抜なものでありながらも作品としてしっかりと成立している点は発見があるだろう。
そして、ボイスに関してもオリジナル版のキャストでのフルボイス化を果たしているのは旧来ファンにも嬉しいものになっている。

 

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