【レビュー】大神

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太陽は昇る

筆者が大神という作品に出合ったのはPS2時代だ。
当時から狼という動物が好きだった筆者は、狼が主役のゲームに手を出さないハズが無かった。
今では名実共に史上に残る名作となっている。

それから約10年経った今、筆者も久しぶりにプレイをしたので今回は「大神 絶景版」のレビューをしていこう。

 

大神 絶景版 - Switch

大神 絶景版 - Switch

  • 発売日:2018/08/09
  • メディア:Video Game
 
大神 絶景版 - PS4

大神 絶景版 - PS4

  • 発売日:2017/12/21
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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日本神話や伝承をベースにしたストーリー

大神のストーリーは日本の神話や伝承をベースにしたストーリーとなっている。
そのため、日本人であれば聴いたことのある登場人物もとても多く、親しみやすい事だろう。
とは言え、使用されているのはあくまでもベースのみであり、実際の神話や伝承とは描かれ方は異なる点に注意だ。

ストーリーの大筋は妖怪達によって災いや呪いの蔓延する世界を主人公である大神アマテラスと相棒イッスンのコンビが浄化し、人間を含む動植物に幸福をもたらす事だ。
アマテラスとイッスンは様々な冒険をして多くの人と関わり、多くの生命を救っていく事になる。
本作ではストーリーが主体となりプレイヤーをグイグイ引っ張っていくストーリードリブンなタイプのゲームとなっている。
そのため、プレイ重視で文章を読まずに進めてしまうタイプのユーザーは注意した方が良いかも知れない。

ややネタバレになってしまうが、物語の終盤になるとSF的な要素も出てくる。
しかし、この展開はプレイヤー目線としてはやや唐突・突飛な話に思える。
物語の後半でタカマガハラと言われる土地の存在が語られ、アマテラスは最後にタカマガハラへと向かう。タカマガハラはアマテラスの故郷とも言える土地ではあるのだが、プレイヤーからすれば未開の土地でしかない。
操作するアマテラスの知識≒プレイヤーの知識であるため、プレイヤーが理解・納得しないままにアマテラスがタカマガハラへと向かう行為はプレイヤーとアマテラスを引き剥がすような行為に他ならないように感じるのだ。
もっと端的に表現すれば”打ち切りENDのようなモヤモヤ感”である。
本来は本作の本編に続く"タカマガハラ編"なども存在したと言われるが、その影響である可能性は否めない。

とは言え、ストーリーは全体的には非常に素晴らしい。
特にラスボス戦の演出は傑作と言えるだろう。
ストーリー上で多くの者たちと関わって来たからこそ感じる事ができる感動がそこにある。
また、太陽をモチーフとした存在同士の戦いになっているのも見事な対比として機能している。

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メタ表現も交えたチュートリアル

本作では操作や機能に関してメタ表現を交えて説明される。
これらの説明は単純な説明によってプレイヤーを白けさせる事を防ごうとしている節があり、可能な限りチュートリアルの説明も面白くしようとしており丁寧で好印象だ。

 

システム

本項ではシステムに関して記載する。

初めに大まかな欠点を記載しておこう。
まずはカメラワーク関連だ。
大神のカメラワークは全体的に鈍く、向きを変える際に少々時間がかかりアクションが行いにくいケースがある。ここは若干のストレスに感じる事もあるだろう。
また、エリアが切り替わった際にカメラ位置が記録されない事による問題も気になるポイントだ。
例えば、下方向に入力した状態(アマテラスが手前に来る形)でエリアを出たとしよう。しかし、次のエリアに遷移した際に下方向にトリガーを入れっぱなしにしていると、元のエリアに戻ってしまうのだ。
この状況の問題点がわかるように記載すると、
ユーザーはアマテラスがカメラに正面を向いた状態でエリア遷移しているが、エリア遷移後はカメラはアマテラスの後方に戻っているのだ。
これはカメラの表示位置がエリア切り替えによってリセットされてしまうために発生する問題でもあるし、それを見越した調整をしていないために発生している問題でもある。
このカメラ位置がリセットされてしまうのはもっと単純な問題として見やすいポジションに移動をさせてもリセットされてしまう事を意味しており不親切だ。

大きな欠点では無いながら、大神アマテラスの走行スピードの遅さも気になるポイントだ。
アマテラスは最大3段階のダッシュ速度の変化があるが、最大速度であってもエフェクトにより速く見えるものの実際のスピードはそれほど向上しておらず行きたい場所まで走るのに結構な時間を必要としてしまう事も多い。
ファストトラベルのような機能も存在しているが、使用するにはファストトラベルをするための特定のポイントに赴く必要もあり不便だ。

これらのカメラワークやダッシュ速度、ファストトラベルの仕様はいずれも10年以上前の過去の作品であるが故のものとも言え、傑作と言えども時代を感じさせる要素だ。

 

筆しらべ

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インタラクションが世界に影響を与える

大神と言う作品において最も特筆すべきシステムは「筆しらべ」だ。
筆しらべはユーザーが特定の図を画面内に描くことによって発動するギミックだ。墨瓢箪(MPのようなもの)がある限りはいつでもどこでも使用する事が可能だ。
発動するものは太陽を出現させたり、枯れ木に花を咲かせたり、炎や雷を出現させるものまである。
これらを駆使して敵やダンジョンを攻略していく事になる。

敵やダンジョンなどで活用する事はもちろん嬉しいのだが、筆者が特に嬉しく感じるのは村人などに対してもこれらのインタラクションが”ある程度”有効である点だ。
村人に対して筆しらべを活用すれば、その超常現象に驚くリアクションを見せる。炎や雷を当てる事さえでき、炎で燃やせば黒焦げに、雷が当たれば痺れるようなリアクションになる(死んだりする事は無い)。

一見何気ない要素なのだが、ユーザーの操作に応じてリアクションが変化するというインタラクションはユーザーが「ゲーム内の世界に影響を与えている(介入している)」ことを強く印象付けてくれる。
もしもこれが炎や雷を出しても何もリアクションが無い、反応が全て共通のリアクションとなっていれば「ユーザーが世界に与える影響」は非常に薄く感じてしまった事だろう。

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敵が筆しらべを使う事もある

驚くポイントとしては、本作の筆しらべは(極一部ではあるが)敵も仕掛けてくるという点だ(上図の赤線は敵が使用してくる筆しらべ)。
それまでユーザーのみが使う事ができると思い込んでいた「筆しらべ」と言うシステムを敵側が使用してくる。
これはゲーム側からユーザーに対してインタラクションを行おうとしているようにも感じられるものとなり、バトルのバリエーションとしてだけで無く、ユーザーの予想超えるようなストーリーテリング的な演出としても非常に面白いものとなっている。

 

バトル

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軽快なバトル

大神のバトルシステムはアクション要素が強い。
武器を駆使した攻撃や前述の筆しらべを使用するスピーディーな戦闘だ。
操作の手応えは非常に良く、爽快で軽快なアクションは現代でも全く問題無く楽しめる。

大神アマテラスは神器である鏡・勾玉・剣を駆使して戦う事となる。
これらの神器はそれぞれ特徴が全く異なり、また表と裏にそれぞれセットする事となり、表でセットするか裏でセットするかでも性質が変化する。
戦闘中であっても変更できるため、敵との相性を考えて臨機応変に戦うのも良いし、自分好みの設定でプレイする事も可能だ。

バトルシーケンスはシンボルエンカウントとなっており、バトルフィールドはエンカウントしたエリアを範囲で区切るようになっている。
この辺りも10年以上前の作品であるが故の少々古いものに感じるだろう。

 

ミニゲーム

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気分転換に最適なミニゲーム

「釣り」や「モグラ叩き」と言ったミニゲームもある。

奥深いものでは無いのだが、わかりやすく1プレイが比較的短い(リワードを貰えるまでの所要時間が短い)ため熱中しやすく気分転換にも非常に良い。
釣りに関しては収集要素もあるためコンプリートを目指すのもオススメだ。

 

グラフィック

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輝きを失う事のないアート

大神のアートスタイルは唯一無二だ。
水墨画のようなタッチにより表現されるその世界観は非常に美しく、時を経てもなお、その世界の美麗さは輝きを全く失っていない傑作だ。

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”大神降ろし”は必見だ

大神では邪悪な妖気によって汚された大地を”大神降ろし” によって浄化するシーンが存在する。
このシーンはグラフィックと音楽も相まって必見のシーンだ。
ネガティブな暗い気持ちや存在が、ポジティブなものへと瞬く間に変わり生命や大地の喜びを感じさせるその姿は非常に感動的だ。
このシーンを見るだけで感動で泣けてくるような気持ちになるが、そう感じるのは決して筆者だけでは無いのではないだろうか。

 

サウンド

大神はサウンド面も非常に素晴らしい名曲揃いだ。
日本的な音を残しつつ、バトルでは激しいテンポも取り入れている。

ポジティブで感動的な「大神降ろし」

激しいチャンバラのようなボス戦曲「ウシワカ演舞~ウシワカと遊ぶ」「赤カブト退治」「妖魔王キュウビ退治」

カッコよさと頼もしさを感じさせる「真スサノオ

爽やかで壮大な「両島原」

最終章の厳しい戦いを思わせる「極北の國」

最終決戦の傑作「「Reset」~「ありがとう」バージョン~」「太陽は昇る」

どれも史上に残る傑作と言える楽曲だ。

 

総評

大神はPS2で発売された作品であり、確かに時代を感じる古い手法は見て取れるのだが、それでも全く輝きが失われていない傑作だ。

日本人ならば耳馴染みのある存在が多く登場し、プレイヤーを強く引っ張っていくストーリーや感動的な美しい水墨画のようなアートスタイルは記憶に残り続ける事だろう。
もちろん、日本風な楽曲達も印象的だ。
総合的に考えても素晴らしい完成度となっている。
人生において必ずプレイしておきたい作品だ。

 

外部記事

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