【レビュー】OCTOPATH TRAVELER

 

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ルネサンスJRPG

OCTOPATH TRAVELERNintendo Switch プレゼンテーション 2017(※動画はNintendo UK)にて初めて公開された独特のビジュアルを採用したJRPGだ。
筆者はリアルタイムでNintendo Switch プレゼンテーションを視聴していたのだが、その中でも特に興味を持った作品の中の1つであった事は間違いない。
”HD-2D”と表現した2Dと3Dポリゴンを組み合わせたその映像は懐かしさと新しさを両立した私が求めていた作品のように感じたのだ。
そこから開発チームの基盤が同様であるためかブレイブリーシリーズのように体験版からユーザーフィードバックを行ったりと精力的にユーザーとのコミュニケーションを行っていたことも印象深い。
今回は2018年を象徴するタイトルと言っても過言ではないOCTOPATH TRAVELERをレビューする。

 

オクトパストラベラー - Switch

オクトパストラベラー - Switch

  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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1話完結の短編集のようなストーリー

本作のストーリーは生まれも育ちも全く異なる8人の人物達によって展開されていく。
ストーリーは各キャラクター毎の章形式となっており、例えば主人公であるオフィーリアやプリムロゼでそれぞれ1章が存在する訳だ。
各章のストーリーは1話完結の短編集を読んでいるような内容で、導入⇒聴き込み⇒ダンジョン⇒ボス⇒完結と言った流れで構成されている。
良くも悪くもではあるが、各章は30分~1時間もあればアッサリと終ってしまうため、読みやすくはありつつも、少し物足りなさも感じるかも知れない。

内容は8人のキャラクター毎に特色が全く異なるのは魅力的だ。
ワクワクするような冒険が待っているように感じられる物語の導入となっているものもあれば、非常に重たい話になっているものもある。
1作でバラエティーに富んだ物語を体験できるのは良いポイントだと言えるだろう。

しかし、各章のストーリーはゲーム的な都合によって全て1つの街で完結するようになっているため、内容によっては展開が少々強引で説得力と言う意味で違和感が生じているケースがある点は少々気になるポイントだ。

また、この主軸とも言える「8人の仲間」という部分が活かし切れていないのは少し残念とも思えるポイントだ。
本作が想定しているであろうゲームデザインは「8人揃えてストーリー全体を進行させる」ことなのだが、極端に言えば最初に選んだ主人公以外の7人は仲間にしなくても進行可能だ。
そのような都合からか、ストーリーは全て1人だけのストーリーとして展開してしまい、例え全員を仲間にしてもストーリーは各個人の物語として展開していってしまう。
その結果として、仲間がいるかどうかなどお構いなしに起承転結の起が8回、承が8回…といった具合に、物語の同じ部分を味だけを変えて提供する形になってしまっているのは勿体ない。
仲間がいる事で物語自体に変化が起きるような構造になっていればより嬉しかったし、特定のキャラクターのストーリーの進行中に他の仲間キャラクターが口出し1つしてこないのも寂しいものがある。

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痒い所に手が届ききらないパーティーチャット

仲間同士の接点が無い事を補うようにパーティーチャットが存在しているのだが、こちらも痒い所には手が届かない。
パーティーチャットでは各章のストーリーの途中や特定のメンバーで会話が繰り広げられるのだが、こちらは会話の内容によっては後付け感が強いものもちらほらある。
中には「このキャラクターはこの行為を容認するんだろうか?」と疑問に思える事もあり違和感を覚えるケースも存在する。

仲間が全く関係してこないストーリー、後付け感の強いパーティーチャット、これらを見せられるだけでは到底「仲間達が1つの共同体として旅をしている」と言う雰囲気が味わいにくいのは設定上から言って残念と言わざるを得ないポイントだ。
そのため、本作に出自も年齢もバラバラのメンバーが一緒に協力・共闘するような旅の物語を期待すると肩透かしを喰らうハメになるだろう。

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矛盾したストーリーテリング

これらのストーリーテリングは矛盾を内包している。
それは、前述した想定されているであろうデザインだ。
想定されている難易度(ゲームプレイ)としては全員を仲間にすることを推奨しているが、ストーリーは他キャラクターが全く関わらない各個人のものしか描かれない。
例えば、仲間が増えていくのではなく「一方その頃…」のような形で別のキャラクターにフォーカスしてストーリーを進行させるようにしているのであれば、本作のような各個人だけで完結するようなストーリー構成には頷ける。
もしくは仲間にすることを特に推奨していないデザインとなっていても悪くはないだろう。
しかし、本作は一方でパーティーチャットを用意しているのである。
ストーリー上には仲間の関係性は全く描かない一方で、パーティーチャットはパーティー間の関係性を表現しようとしている。
後付け感があるパーティーチャットを採用するくらいであればストーリー上でもキッチリと仲間同士の関係性を描くべきだったと思うのだ。

本作は各個人のストーリーにしたかったのか、仲間のストーリーにしたかったのかが不明瞭なままになってしまっている。
もう少し悪い言い方をしてしまうと「どちらにも良い顔をしようとして中途半端になってしまった」のだ。
これは8人という人数が物語を密接に絡ませて描くには少し多すぎた部分もあるのかも知れない。
同じ事を繰り返し書いて恐縮だが、本作に仲間達との旅の物語を期待するのは間違いだ。

 

黒呪帝ガルデラ

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物語は1つの方向に収束する

ここでは少々ネタバレ的な内容になってしまう。ご了承願いたい。

各キャラクターのストーリーは世界設定が前提に立っている所があり、その上に主人公達以外も含む各キャラクターのストーリーが乗っかっている。
その世界設定と表現したものの中心に存在しているのが黒呪帝ガルデラだ。
既プレイの方には少々大雑把な表現でやきもきするかも知れないが、ストーリーを進めていると8人の主人公達に共通するような存在が出てくる。
それがこの黒呪帝ガルデラなのだ。立ち位置的にはクリア後の裏ボスだと言うのがわかりやすいだろう。

しかし、この存在によって本編のストーリーに影を落としているのは少々勿体ない。
ガルデラを中心として世界設定と言う土台(歴史・説得力)を強固に作ろうとした事は好感は持てるものの、各章のストーリーでは逆にその世界設定の辻褄を合わせるため(あるいはそこに目を向けさせるため)に、展開が強引であったり、逆に引っ張りが弱く感じるところもあるなど、上手に使いこなせていない部分が多少なりともある(言い方を変えれば4コママンガの4コマ目だけを先に8パターン作っている)ように感じる。
やはりここでも8人と言う人数は多すぎたのでは無いかと思わざるを得ない。

 

システム

この項ではシステムに関して記載していこう。

バトル

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BreakとBoostの駆け引きは単純だが面白い

本作のバトルシステムはJRPGに多い「ターンベース」のバトルが採用されている。

本作のバトルのユニークなポイントは何といっても「BreakとBoost」だろう。
敵には弱点が設定されており、弱点属性を指定回数分当てるとBreak状態となる。
Break状態となった敵への与ダメージは上昇し、また次のターンが終了するまで行動不能となる。Breakは敵にのみ設定されており、味方キャラクターには無い。
Boostはブーストポイント(BP)を消費して強力な攻撃を叩き込むものだ。
通常攻撃にBPを使用すると攻撃回数が増え、技に使用すると威力や成功率、持続ターン数が上昇する。
これらを駆使してバトルを有利に進める事となる。

文章ではイマイチわからないかも知れないが、このシステムのバトルはJRPGに少しでも触れた事のある人であればすぐにでも理解できるだろう。
理解しやすく、なおかつ強力な攻撃・魔法を放つだけと言ったボタン連打するだけのバトルにならないのは評価できるポイントだ。
また、レベル上げを余り行っていないキャラクターであってもダメージソースにはならずともBreakの役には立つ事は多いため腐りきる事は無いシステムとなっているのも良いポイントだ。

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BreakやBoostのバランスはいびつだ。

しかし、バトルシステムにおいても至らない点は多い。

1点目に挙げるのは「Boostの使用用途」だ。
Boostは前述の通り、威力や攻撃回数を増加させるのだが、これの用途がシステムとイマイチ噛み合っていないように感じる。
Boostの本来の使い方は「Breakさせるために使用するか、Break状態の敵に大ダメージを与えるために使用するか」と言う「駆け引き」だったのでは無いかと思うのだが、実際には後者で使用される事が大半であり、Boostを使用する上での駆け引きが全くと言って良いほどに無い。
これは物理攻撃はBoostによる回数の増加が可能だが、属性攻撃はBoostによる回数増加は無い(威力が上がるだけになっている)ことが大きな要因だ。
こうなってしまうと属性攻撃メインのキャラクターはBreakしてから大ダメージを与えるためにBPを溜めるという選択肢しかない。
更に、「千本槍」や「どしゃぶり矢」と言ったBPを使用しないで容易に連続攻撃ができる手段が存在してしまう点もこのバランスを大きく崩してしまっている。
BPの消費による攻撃は一律で攻撃回数(Hit数)が変動するようにし、BP消費無しに連続攻撃をする手段は廃止するべきだったように思う。

2点目は「敵の硬さ」だ。
本作の敵は全てBreak前提の難易度となっており、例えワンランク下の敵であっても倒すのに時間がかかるのは難点だ。筆者は多くのJRPGにおいて「(単調な)バトルが面倒になる」ことによって通常戦闘を逃げるようになる事が多いのだが、このように格下相手であっても時間がかかるのはそれに拍車をかけてしまう。
ここには、BPの初期値をレベル差に応じて可変にする事でも少しは緩和できたのでは無いだろうか。

3点目は「敵の弱点」だ。
前述の通り本作では敵に弱点が設定されており、その弱点属性で攻撃する事でBreak状態になる。しかし、初見の敵の場合には弱点属性は伏せられているのだ。
これによってバトルにおいて「敵の弱点を調べる」と言う冗長な作業が発生してしまうのはマイナスだ。
「敵の弱点がわからない事が面白さ(緊張感)に繋がっている」と言う意見もあるかと思う。その意見は非常に理解できるのだが、それが通用するのは「本当に初見の敵」だけなのだ。
既知の敵であればGUI上で弱点が開示されているし、一度全滅してからの再戦であってもGUI上で表示されていないだけで開示されているのと同義である。
そのため、初見の時とそれ以降で敵に対しての緊張感が一気に無くなってしまうのだ。
であるならば、最初から弱点属性を開示している前提でゲームバランスを考えて構成した方が多くの戦闘でバランスを保つ事ができたはずだ。

 

フィールドコマンド

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住人とインタラクションが行えるフィールドコマンド

フィールドコマンドは本作が持つ個性的な要素の1つだ。
各キャラクターには住人に対して固有のインタラクションを行う事ができる。
例えば商人トレサであれば住人が所持しているアイテムを購入する事が出来るし、神官オフィーリアであれば住人を導いて一時的に仲間とすることが出来るなどだ。
フィールドコマンドは世界観としての冒険には説得力は欠けるものの、ゲームプレイとしての冒険を強力にサポートしてくれる。
単純に強力な武器・防具を序盤で購入・盗むのは良い気分であるし、リワードはイマイチかも知れないがオルベリクで全ての住人に決闘を仕掛ける事ができるものユニークだ。
また、本当に数多くの村人に設定を用意しており、その人物がどのような人物なのかを表現している。のどかな村の老婆が実は昔は悪逆非道の限りをつくした極悪人だった…なんて事もあるのだ。
これらもやはりストーリー同様に世界設定を重視し「そこに存在している」ことを感じさせてくれる演出だ。
これらの膨大なテキスト量を揃える事が大変だったであろう事は想像に難くない。

とは言え、後半になると形骸化してくるコマンドが出てくるのは少し寂しい所だ。
後半になれば資金が潤沢になりテリオンが「盗む」と言う意味はほとんど無くなるし、レベルも高くなっているならばサイラスが「探る」のもアーフェンが「聞き出す」のも違いが無くなってしまう。
何度も言うようだが、8人と言うのは多すぎだったのではないだろうか。

 

グラフィック

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『HD-2D』と表現したスタイルは息を吞む美しさがある

本作において最も注目するべきは”HD-2D”と表現したそのビジュアル面であると思う。
過度とも思える光源処理は2Dドットの世界を神秘的に魅せ、フィールドでは遠方がぼやけた被写界深度表現が行われ世界に厚みを持たせている。
2Dドット調の絵の中に揺らめくリアルな水は非常に親和性があり、全く違和感無く表現されている。
是非とも幻想的で神秘的なフィールドをその眼で体験して欲しい所だ。

このような2Dドット調のグラフィックスタイルは既に一度確立された様式であるため、多くの人々に特定の共通した印象を与える事に非常に適している。
例えば、オリジナル作品と派生作品・二次創作作品の関係性を考えていただければわかりやすいだろう。
前者は世に出た際には世界観やキャラクターなど誰も知らないため、それを知ってもらうための時間が必要になる。
しかし、後者は原作を知っていれば世界観もキャラクターも説明が不要になるのだ。
本作においても同様にどのようなゲームを目指しているのかが説明しなくても2Dドットベースのグラフィックスタイルだけで伝わるのでは無いかと思う。

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ボス戦のドットグラフィックも美しい

ボス戦で現れるドットも非常に美しく描かれている。
特に人型のボスでは通常シーンでは自キャラと同程度のサイズであるが、戦闘になると何倍も大きく表現される。
このような表現は言わば心象の描写だ。実際の大きさ(身長)は関係なく、キャラクター(主人公)が相手に対して感じている威圧感や恐怖感から何倍にも大きく見えている…それを絵によって表現しているのだ。これはドット絵だからこそできる表現では無いだろうか。

 

サウンド

本作のサウンドも非常に素晴らしい。
BGMは全体的にメロディが強く、耳に残る覚えやすいフレーズだ。

メリハリがあり壮大な「OCTOPATH TRAVELER -メインテーマ-」

可愛らしく郷愁的な「商人トレサのテーマ」

雄大な「剣士オルベリクのテーマ」

孤独な旅を思わせる「踊子プリムロゼのテーマ」

日本や中国的な雰囲気を思わせる「クリフランド地方」

神聖で安らぎを覚える「聖火の都フレイムグレース」

戦い緊張感が伝わる「緊迫」

通常戦闘とは思えない疾走感がカッコいい「バトル1」

暗いながらも本人の強い意志が感じられる「決意」

追い立てられるようなイントロから始まる「ボスバトル1」

優しい曲調で泣けそうな「優しさに包まれて」

激しいイントロとあえて穏やかなメロディが強大な敵を感じさせる「ボスバトル2」

本作の中でも非常に暗い「奪われた街、失った光」

感情のこもった戦闘の雰囲気を感じさせる「旅路の果てに立ちはだかる者」

その演出と共にFF6のラスボスを彷彿とさせる最も迫力のある「魔女と呼ばれる者」「魔神の血を継ぐ者」

本編聴き馴染みのある曲がメドレー&アレンジされる「エンディングテーマ」

その他、2Dドットながらキャラクターにはボイスが実装されている。
親和性自体は悪くなく、特に戦闘中のボイスは迫力がありとても良く感じるほどだ。
強いて上げればやはり戦闘中に少しだけでも仲間同士の掛け合いがあれば嬉しい所だ。
例えば、Break発生時に「よくやった!」「ナイス!」などを攻撃者以外のメンバーが喋ってくれるだけでパーティーの雰囲気やキャラクター性が伝わるのだ。何気ない要素ではあるのだが、これによって感じる雰囲気は何倍も違う事だろう。

また、洞窟内のボイスにはリバーブがかかっていたり、ボス戦突入時の戦闘BGMのシームレスな導入などの表現も地味ながらこだわっているのが伝わるだろう。

 

総評

OCTOPATH TRAVELERはHD-2Dと言う独特のグラフィックスタイルとロマンシング サ・ガなどクラシックJRPGの潮流、そして最新のゲームデザインを取り入れた野心的なJRPGルネサンス的作品だ。

本作においてはストーリーやバトルにおいて明らかな粗があるのも事実だが、本作を評価する上では些細な問題だろう。
映像表現は幻想的で美しく、また音楽はどれも印象的で心に残る名曲ばかりである

これまでもJRPGを近代的に昇華させた作品、革新性を持たせた作品、精神性を受け継いだ作品などなどあるが、本作はJRPGルネサンスと評するに相応しい作品に仕上がっている。
JRPGファンであるならば本作はプレイしておくべき作品だろう。

 

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