【レビュー】ファイナルファンタジーⅥ

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仲間を求めて

ファイナルファンタジーⅥ(以下、FF6) はファイナルファンタジー(以下、FF)シリーズで最後のスーパーファミコン(以下、SFC)リリース作品であり、また最後の2Dドット主体のナンバリングタイトルだ。

筆者は物心ついた時から既に数種類のゲームハードがあり、ゲームソフトに関してもそれなりに持っていた。そのゲームソフトの中にFF6もあったのだ。
しかし、最初にプレイしたと思われる小学校の低学年の筆者には本作の魅力…どころか遊び方すら良く理解できておらず挫折していた記憶がある。
筆者が本作の魅力を理解できたのは2段階に分かれており、1回目はJRPGの遊び方を知った小学校の高学年のとき、そして更に魅力を深く知ったのは高校に入ってからだった。

今回は筆者がプレイする度に新たな魅力を認識していったFF6についてのレビューをしていこうと思う。
なお、今回のレビューで載せているスクリーンショットは特別な記載が無い限りはWiiUバーチャルコンソール版のものである。

 

ファイナルファンタジー6

ファイナルファンタジー6

  • 発売日:1994/04/02
  • メディア:Video Game
 
ファイナルファンタジーVI

ファイナルファンタジーVI

  • 発売日:1999/03/11
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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機械 x 魔法 = FF6

FF6は物語主導であり、クラシックなFFシリーズではオーソドックスな構造だ。
本作はスチームパンクな世界観を導入した初めてのFFで、後のシリーズにおいても大なり小なり精神的に引き継がれる重要な要素となっている。
つまり「魔法が存在するファンタジー世界でありながら、現実世界と近い機械文明が発展している」という「SF x ファンタジー」という構図となっているのだ。
一見すると矛盾しそうな組み合わせだが、実際には「魔法と言う存在に現実味を持たせる」ことに成功している。
我々が普段から目にしている機械と近いオブジェクトの存在がある事によって、魔法はそれとは明らかに異質な存在、あるいは超越した存在として理解しやすい。
描き方はどうあれ、このSFとファンタジーという組み合わせは以降のJRPGにおいて王道といっても差し支えの無いほどに浸透した世界設定の1つとなっている。

本作が他のFFシリーズと異なるポイントはそれ以外にも「群像劇」であると言うポイントも挙げられるだろう。
FF6では非常に多くの魅力的で個性的な仲間が登場する。
そして、そのキャラクターが仲間になる経緯や過去に何があったのかも含めて描かれているのだ。
キャラクターの多い本作であるが、パーティーメンバーに入れている人物によってイベント中のセリフなどが追加または変化する場面もあるなど容量の限られたSFC時代の作品では芸が細かいポイントも多い。

また、上図のオープニングシーンも素晴らしいポイントだろう。
通常のトップビューで描写される魔導アーマーでは無く、3体の魔導アーマーを後ろから描写した専用のドットアニメーションで始まる本作のオープニングは非常に印象的だ。
吹雪いている中を進軍するこのシーンは、これから起きる事になる激動の時代の緊迫感を見事に表現した素晴らしいオープニングシーンとなっている。

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キャラクターを掘り下げる印象的なイベント

筆者が特にお気に入りのキャラクターはセリスとカイエンだ。
セリスは本作の物語において最も変化したキャラクターであると言え、パーティー加入直後とストーリーの後半では口調も含めて徐々にそして大きく変化している。
カイエンのストーリーでは家族との絆と思い出が強く表現されており、魔列車や夢世界と言ったイベントは非常に切ない。
物語終盤のセッツァーの飛空艇入手のイベントも見逃せないイベントだろう。
同時に流れる感動的な音楽も相まって非常に印象的であり、FF6を象徴するようなシーンであると言えるだろう。

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ファンタジーを利用した現代風刺

ここからはネタバレを含む記載をするため、クラシックな作品とは言えネタバレが気になる人は次の項(システム)まで読み飛ばして貰った方が良いだろう。

本作は失われた魔法と言う存在を中心にストーリーが展開していく事となるが、その中に含まれるテーマの1つは「行き過ぎた技術革新への懸念」では無いかと思える。
敵として現れる狂人ケフカはその象徴では無いだろうか。
魔法を行使できるようになった代わりに狂人と化したケフカと言う存在はFF6発売当時の社会にあった戦争(当時のタイミングであれば湾岸戦争)や環境問題など「高度に機械化された社会」に対しての「不安(ネガティブ)」な側面を反映した「技術におけるネガティブな側面の化身」では無いだろうか。

対して、生まれながらに魔法が行使できるティナはネガティブな側面を理解しつつも「高度/新規の技術と一緒に歩んでいく存在」であり「希望(新たな可能性)」の象徴だ。現代においては「デジタルネイティブ」などに代表される存在と捉えても良いだろう。

そして、物語の進行と共に内面が大きく変化するセリスは「人は変わっていける」ことを象徴した存在であるように読み解ける。
本作で描いているのは「ネガティブに感じる世界であっても、希望を見出す」ことであり、その答えをファンタジーと言う疑似世界を用いて表現したかったのではないかと感じるのだ。

このような「ファンタジー世界を介して現実世界の問題(アポリア)にアプローチしようとする手法」は今では廃れてしまったものの、かつてのスクウェアでは多くみられた物語表現手法と言えるだろう。 

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3章構成と捉える事が出来るストーリー

本作のストーリーは群像劇だが、その中でも大まかに「ティナ編」「ロック編」「セリス編」の3段階の章に分ける事ができると考えている(これには様々な意見があるとは思う)。

まず序章である第一章は「ティナ編」だ。
筆者がティナ編と定義しているのは物語の開始からティナの暴走するポイントまでだ。
そのポイントまでは失われたハズの魔法を扱うティナを中心として物語が展開する。

次にロック編だ。
暴走したティナを探すところから魔大陸攻略までで、魔法を使えない普通の人々が「魔法」という存在と向き合う事になるパートとなっている。

最後となるのはセリス編は世界崩壊後だ。
前述しているがセリスはFF6と言う作品において最も変化があったキャラクターであると言っても良いだろう。
仲間になって間もない頃は男勝りな口調で厳しい言葉をぶつける事も多いのだが、中盤にてロックとの交流によって徐々に変化が表れる。

群像劇でもある本作の物語は各章の軸となる人物を中心にして展開されていくような構成となっているのだ。

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最も印象的なオペラ

FF6において最も手が込んだイベントと言えば「オペラ劇場」だろう。
初見プレイにおいて本イベントは進行のために何が要求されるのかがわかりにくく、戸惑う作りである事はやや問題に感じるが筆者が指摘したいポイントはそこでは無い。
オペラが始まると劇場から離れた部屋へと行った際にBGM音量が抑えられるなど、インタラクティブミュージックと言えるような環境音楽への強いこだわりを垣間見せる。
また、崩壊後におけるシド死亡時イベントではオペラのイベントと対比させるような演出となっている所も見逃せないポイントだ。

 

システム

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バトルはFFのクラシックスタイルだ

FF6のバトルシステムはActive Time Battle(通称:ATB)と言われるもので、キャラクター(味方と敵)には1人1つのゲージが存在しており、そのゲージが最大までチャージされるとキャラクターが行動できるものだ。
これは単純なターン制バトルとは微妙に異なり、ゲージがチャージされれば行動できるため、チャージ速度さえあれば「敵が1回攻撃する間に、2回連続で行動できる」ケースも十分にある”非同期型ターン制バトル”とも言えるものになっている。
過去のFFシリーズを嗜んでいる人からすれば”お馴染み”のシステムだろう。

とは言えバトル自体はハッキリ言って大味感は否めない。
タイムアタックや縛りプレイでもしない限りは強力な武器あるいは強力な魔法を何も考えずに使っていくのが基本となり、「攻略方法を考えなくては突破できない」など工夫が必要となる事はまず存在しない。
キャラクターのレベルや装備にさえ注意すれば苦戦する事はほとんど無いだろう。
本作(と言うよりもクラシックなFFナンバリングシリーズの全体が)「バトル自体の楽しさ」よりも「レベルや装備などで強くなった事を実感する」と言う「プレイ時間と比例して成長する」ことを重視しているデザインであるように思える。
もっと単純に言ってしまえば「レベルを上げて(装備を整えて)殴る」だけで良いのだ。
このようなデザインは非常にシンプルであり、また一定の楽しさが含まれているのだが、何百・何千と戦闘が繰り返されると「戦闘が予定調和となり飽きやすい」と言う問題が発生してしまう。
言うなれば「ガム」のようなもので「最初こそオイシイ」ものの「噛めば噛むほどに味が無くなる」のだ。
そのため「バトルシステムが命」と感じているユーザーからすれば中盤か終盤頃には退屈になり、敵とのエンカウントにうんざりしてしまう事だろう。

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キャラクターには固有のコマンドが用意されている

FF6は多くの仲間が登場する作品だが、その個性は戦闘においても発揮される。
例えば"自称"冒険家のロックは「盗む」コマンドで敵からアイテムを頂戴する事ができ、ギャンブラーのセッツァーなら戦闘中に「スロット」を合わせてユニークな攻撃が行える。
このように各キャラクターにはそれぞれ固有のコマンドが用意されており、特殊な効果を発動する事ができるのだ。

またユニークなポイントとして、ロックの場合には専用の盗むコマンドを利用したイベントが用意されているのは面白いポイントだろう。
このようなキャラクターのコマンドを利用したイベントが随所にあれば、更に良かったようにも思えるが仕方ないだろう。

 

キャラクタービルド

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自分好みのキャラクタービルドも可能だ

FF6では物語の中盤頃に「魔石」と呼ばれるものが手に入る。
これを入手する事で全てのキャラクターに魔法を習得させる事ができるようになるのだが、この魔石の使い道はそれだけでは無い。
レベルアップ時に「ちから」や「すばやさ」といった基礎能力を向上させるものが存在するのだ。
これを利用して各キャラクターを自分好みのステータスにする事ができる。
本作はステータスなど特に気にせずとも装備さえ整っていれば問題なくクリアする事が可能であるため、あくまでも必須ではない「やり込み」と言うレベルの要素だ。

キャラクター性を活かしたような個性的なステータスを目指したり事はもちろんだが、「すばやさ」を重点的に鍛え上げ単純に強力なキャラクターを生み出すような育成もする事が可能だ。
ちなみに上図は筆者が出来る限りキャラクターの個性が出るように頑張ったデータとなっている。
基礎能力値を上げる魔石は物語の終盤にたくさん手に入るため、キャラクタービルドもしっかりと頑張りたい場合には序盤では極力レベルを上げずに進行して、魔石が充実した時点で一気にレベリングをすると良いだろう。
また、HPとMPのカンストに失敗する可能性も考慮してセーブデータを複数作っておく事も推奨する。
なお、上図のデータは後述する「ファイナルファンタジーⅥ アドバンス」のものだ。

 

ファイナルファンタジーⅥ アドバンス

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ファイナルファンタジーⅥ アドバンス

FF6にはゲームボーイアドバンスで発売(WiiUバーチャルコンソールでも配信)されたファイナルファンタジーⅥ アドバンスと言うタイトルも存在している。
こちらでは元々のFF6に存在したバグの修正や新規ダンジョン、新規装備、新規召喚獣の他、モンスター図鑑とミュージックプレイヤーの機能が追加されている。

ファイナルファンタジーVI アドバンス

ファイナルファンタジーVI アドバンス

  • 発売日:2006/11/30
  • メディア:Video Game
 

 

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モンスター図鑑とミュージックプレイヤー

リメイク版に関してはグラフィック自体には問題は感じないものの、BGMはハードスペックの関係からその域には達しておらず、制約の中でなんとか原作を再現しようと試みた事は伝わるのだがチープになっていると言わざるを得ないのは残念だ。
とは言え、サウンド面はチープになっているもののミュージックプレイヤーの機能が追加されているのは嬉しいポイントだ。
モンスター図鑑にしても敵のグラフィックやステータスがいつでも参照できるなどファンには嬉しい追加要素となっている。
なお、うっかり物語を進行してしまうとモンスター図鑑が全て埋め尽くせなくなるケースもあるためコンプリート癖のあるプレイヤーは注意されたい。

決して悪いリメイクでは無いため、新規要素を目当てにプレイしてみるのも良いだろう。
筆者としてはファイナルファンタジーⅥ アドバンスの解像度と音楽だけを差し替えたバージョンを是非とも発売して欲しいと願うばかりだ。

 

グラフィック

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美しいドット表現

FF6のグラフィックはSFCの末期の作品であるだけに非常に美しい史上でも最高レベルのドット表現だ。
バトル画面で映し出されるフィールドの美しさは想像力を掻き立てられるような壮大な仕上がりになっている。
生命力溢れる自然と崩壊した大地、中世では無い近代調の街並みなど美麗なドットによるフィールドの表現はどれも必見だ。

更にチョコボや飛空艇では疑似的な3Dのようにフィールドを見せる表現が行われたり、トロッコに乗るシーンでの一人称視点のような臨場感のある演出などSFC作品として踏み出した演出も多い。

 

サウンド

筆者がわざわざ言うまでも無い事ではあるが、FF6のBGMは歴史に残る伝説的なBGMのオンパレードだ。

クラシック音楽のような「予兆」

爽やかで寂しい草原に吹く風のような「ティナのテーマ」

ヒーロー感の強い「ロックのテーマ」

作中のオペラ楽曲のアレンジでもあり、物語の進行と共に優しさを知っていくセリスと言うキャラクター性をそのまま表現したような「セリスのテーマ」

孤高で気高く、そしてまた切なさのある和風曲「カイエンのテーマ」

明るく開けた世界を感じさせる「セッツァーのテーマ」

狂気と言う言葉が相応しい「魔導士ケフカ

街で遊ぶ子供達の姿が目に浮かぶような暖かな「街角の子供達」

ビデオゲームにおける戦闘曲の傑作「決戦」

エドガー・マッシュのテーマのアレンジであり、そのイベントと共に非常に感動的な「運命のコイン」

非常に印象に残る作中オペラ「序曲」「アリア」「婚礼のワルツ~決闘」「大団円」

機械の工場的な音によるリズムが特徴的な「魔導研究所」

風のノイズが崩壊後の絶望的な世界観を見事に表現した「死界」

初めて流れるイベントを含め、歴史に名を残す伝説的な「仲間を求めて」

最後を飾るに相応しい「妖星乱舞」「蘇る緑」

ここでは厳選した上記の曲を記載したが、筆者としては全ての曲を羅列したいぐらいの気持ちだ。

 

総評

ファイナルファンタジーⅥは後世のJRPGにも多大な影響を及ぼしたSFCを代表するRPGの傑作だ。

スチームパンクと魔法が織りなすメッセージ性のあるストーリーは美しいドット表現によって描かれる大自然と機械によって更に引き立てられている。
記憶に残るメロディの強い傑作が揃う音楽もゲームと寄り添っており、様々なシーンを盛り上げる演出として成功している。
特に本作が築いた「機械と魔法」という世界観はJRPGの代表的な世界観の1つにまで至っており言うまでもなく伝説的なゲームであると言えるだろう。

ただし、シリーズにおいて本作に限った話では無いがバトルはやや単調である事は否めない。中盤あるいは終盤にもなると代わり映えのしないバトルが面倒くさいと感じる事も多いだろう。

 

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