【レビュー】戦場のヴァルキュリア4

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戦場に影を落とすフレンドリーファイア

戦場のヴァルキュリアシリーズはBLiTZ(Battle of Live Tactical Zone systems)と呼称するシミュレーションRPGとシューターをミックスしたような固有のシステムによってゲームプレイを実現させたゲームだ。
本作はナンバリングとしては久しぶりとなる戦場のヴァルキュリア4をレビューしていきたいと思う。

なお、筆者は過去シリーズはプレイしていない(正確には僅かにプレイした事はあり、アニメに関しても視聴している)。
過去作の知識などが余り無い事にはご容赦願いたい。

 

戦場のヴァルキュリア4 新価格版 - Switch

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  • 発売日:2020/10/22
  • メディア:Video Game
 
戦場のヴァルキュリア4 - Switch

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  • 発売日:2018/09/27
  • メディア:Video Game
 
戦場のヴァルキュリア4 新価格版 - PS4

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  • 発売日:2020/10/22
  • メディア:Video Game
 
戦場のヴァルキュリア4 - PS4

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  • 発売日:2018/03/21
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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日本のアニメを彷彿とさせるストーリー

本作のストーリーはシリアス路線の日本アニメのようだ。
戦場や環境など主人公達が立たされている状況は常に過酷であり夢も希望も無い。
しかし、デフォルメされたキャラクターによって物語全体が暗くなりすぎる事が無いような構成だ。
フォトリアルなキャラクターを使用したゲームでは間違いなく違和感になる演出であるが、本作ではそのデザインからわかる通り日本のアニメを彷彿とさせシリアスなアニメを観ているような気分にさせてくれる。
設定自体は陰鬱で過酷であるが、アニメ的な表現によって受け入れやすさの敷居を下げる事に成功していると言えるだろう。

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敵が魅力的である事は何よりも良い事だ

ストーリーは全体的に良く、特に筆者が良いと感じたのは魅力的な敵キャラクターだ。
ゲーム中では凶悪なほどに強く、しかしそれでいて敬意を感じさせてくれる魅力的な敵は本作において非常に良い役割を持っている。

また、本作は過去作と同様の第二次ヨーロッパ大戦を別視点から描いており、シリーズファンならばニヤリとできるポイントもある事だろう。
過去作をプレイしているならばアニメを視聴したレベルの知識しかない筆者よりも更に楽しみがあると言う事であり羨ましい限りだ。

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どうにもテンポの悪いストーリーの見せ方

しかし、ストーリーにも欠点が無い訳では無い。
まず最初の問題点は物語の導入だ。
主人公をはじめとした主要なキャラクターの性格や過去が徐々に明かされる形式であるため唐突な導入となっている。
キャラクターや戦局が動き出していく4章辺りまでは興味をそそられる展開が少なくシナリオに興味を持てるまでに若干の時間を要する。

また、テンポの悪いストーリーテリングも気になるポイントだ。
本作のストーリーは上図のような紙芝居形式の演出が大半だ。
セリフはフルボイスであり、次のセリフを観るためにはボタンの入力を必要とする。
筆者は常々思う事だが、フルボイスのゲームには是非ともオート送りが欲しい。
理由は簡単だ。
声優が感情を込めて喋るテンポとユーザー(筆者)が表示されているセリフのテキスト読み進めるテンポが全く違い、後者の方が圧倒的に速い。
こうなると何を喋るのかわかっているのに喋り終わるのを待ってボタンを押さなければならず、どうにもテンポ感が削がれストーリーに集中しきれない。
物語に没入・集中したいハズであるのに、喋り終わる事に集中してしまうと言う本末転倒な演出では無いだろうか。ストーリーをじっくりと観たい時には極論コントローラーから手を放して、アニメや映画を観るように味わいたい筆者としては、このような仕様は好みではない。
本作に限った話では無いが、フルボイスであればテキストのオート送り機能を是非とも実装していただきたい。

また、話を小刻みに見せられるのもゲームプレイ全体のテンポを落としている。
本作はゲーム内のノートに貼り付けられた写真をユーザーが選択する事でストーリーを閲覧していく形式だ。これ自体は歴史を思い起こさせる・紐解くような演出でありストーリーテリングとして機能していると感じる。
しかし、その構成はテンポが良くない。
話⇒ゲームプレイ⇒話ならわかりやすいが、本作(恐らく過去作も)では話⇒話⇒話⇒ゲームプレイ⇒話⇒話⇒…となるような構成となっている。
時には数秒のテキストのためにだけに用意された話もあり、その度にユーザーに写真を選択する事を強いる。
筆者としては次のゲームプレイまでの全てのストーリーを閲覧させ、その後に再閲覧可能な形として分割された写真が選択可能となるようにしている方がスッキリする。

最後に気になるポイントは主要キャラクター以外の役割だ。
本作には多くのキャラクターが登場するが主要キャラクター以外の個性を把握するには「隊員断章」と呼ばれるメインストーリーとは異なる章を出現させてプレイする必要がある。
つまり、メインストーリーではほとんど関与が無いため、場合によっては個性をほとんど知らないままにゲームのエンディングまで到達してしまう事だろう。
キャラクターの中には他の作品をモチーフにしたと思われるキャラクターも登場しているなど個性が強いのだが、隊員断章を閲覧しなければ色物キャラクターが多いだけと言う印象にもなりかねない。
また、多くのキャラクターが登場するが出撃対象にしていない仲間が活かされるシステムになっていないのは勿体ない。これだけ多くのキャラクターが登場するのであれば出撃隊員に設定されていない仲間も活躍が可能なシステムが欲しい所だ。

 

システム

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シミュレーションRPGとシューターを組み合わせたBLiTZ

最初に記載しておくが、上の画像は本ブログにアップロード可能なサイズが10MBまでであるために通常よりも低解像度となっている。ご容赦願いたい。

シリーズの代名詞とも言えるシステム「BLiTZ」はシミュレーションRPGとシューターの要素を組み合わせた非常にユニークなシステムであり面白い。
BLiTZは過去作で既に完成形とも言えるシステムであり、本作では大きく変化したポイントが余り無いのは一長一短とも言えるかも知れないが、ユニークで面白い事には変わりない。

BLiTZのシステムを大まかに説明すると、シミュレーションRPGのように自軍攻撃ターンと敵軍攻撃ターンが交互に繰り返されるターンベースだ。
自軍のターンの場合にはポイント(CP:コマンドポイント)を消費する事でユニットを操作する事が可能になる。
操作しているユニットは1回だけ攻撃などの行動が可能だ。敵を射程内まで捉えて攻撃するのが基本だろう。
敵軍のターンの場合には敵軍が攻めてくる事になるが、自軍のユニットは視認した状態の敵兵士が射程範囲内に入ると自動で迎撃を行ってくれる。
迎撃は当然ながら敵軍も行ってくるため進軍には注意が必要だ。
視認した・された状態での攻撃は回避する・される可能性がある。
そのため、攻撃を確実に当てるためには死角から不意打ちを狙う必要がある。
特に敵エース級の兵士は回避能力が高く、まともに当てるためには不意打ちである必要があり煩わしく感じられる事もあるだろう(爆弾系などは回避されるとダメージ減少となる)。

今作で追加された新兵種である「擲弾兵」は敵でも味方でも驚異だ。
擲弾兵による攻撃は曲射砲であるため、障害物を越えて砲撃が飛んでくる。
そのため、攻撃時だけでなく防衛時の迎撃においてもかなりの脅威となる。
威力も高く、範囲攻撃でもあるため敵として配置されている場合には優先して排除するのが良いだろう。

現状のシステムでも面白いが今後に向けた要望があるとすれば、地形や科学を利用した攻略などが導入されても面白いのかも知れない。
例えば、「高所落下させた敵や味方は高さに応じてダメージが入る」「草地を燃やす事で広範囲に影響を及ぼせる(ただし、草地は無くなり隠れられなくなる)」などなど。
もっと直感性のあるシステムを導入する事も可能では無いだろうか。

本作において気になるポイントがあるとすればオブジェクトの判定の曖昧さだ。
例えば、射撃戦においてありがちな壁際での攻防(カバーアクション)などでは遮蔽物の当たり判定が曖昧でわかりにくい。一見すると当てられそうだが、実際には壁にヒットするなど理不尽に感じるケースもある。
また、戦車や装甲車などの車両で走行中も壁際などで妙なポイントで引っかかるような感じがありフラストレーションに繋がる事もある。

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戦闘中に発動する個性

戦場では条件が揃うと確率で「ポテンシャル」と呼ばれるスキルを発動する。

ポテンシャルはプラスの効果のものとマイナスの効果の両方が存在しており、それによってキャラクターの個性を表現している。
また、前述している隊員断章をクリアする事で対象のユニットのマイナスポテンシャルがプラスのポテンシャルに変化したりもする。

 

マップ

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存在意義が疑われるブリーフィング

本作のブリーフィングは存在意義が疑われる作りだ。

何はともあれ上図を観て欲しい。
もはや出オチだがユーザーはこれだけの情報でユニット配置しなくてはならない。
一応、簡単な注意点を口頭で説明してくれるのだが、基本的に大まかな作戦の流れしか説明されない。

この仕様はハッキリ言って問題だらけだ。
ユニットはそれぞれ近距離が得意な突撃兵、遠距離が得意な狙撃兵や擲弾兵などをユーザーが選択して配置する事になるのだが、上図のように何も情報が無いため誰が(どの兵科が)どれくらいの人数を必要そうであるのかわかりようが無い。
そのため、全ての戦闘で過不足なくバランスの取れたユニット配置をとりあえず行うようにするしかないのだ。
この手のゲームにおいて初見殺しのような敵配置やイベントはつきものだが、文字通り開始直後から初見殺しを喰らうのはプレイの効率を落とすし、何よりもブリーフィングの意味を成していない。
この仕様ならばもはや出撃メンバーをユーザーに選択させる必要が無く、固定メンバーが予め設定されていればそれで良いのでは無いかとすら思える。

もちろん、前述の通りこの手のゲームには初見殺しなどはつきものであるため、ブリーフィングの段階で全てのユニットが表示されている必要は無い。
せめて、開始地点から視認可能な敵だけでも事前に開示して欲しい所だ。

また、バトルに遷移する際の演出も冗長であり面倒に感じる。
特に同じステージを複数回プレイしようとする場合に気になるポイントなのだが、1回のスキップではバトルが開始されない事も多いのだ。
キャラクターなどの会話などから実際にバトルに発展するまでに、スキップボタンを何回か実行する必要があるのは不親切と言える。
このような場合、スキップボタンを押す理由は「会話イベントが不要」だからであり、そのユーザー心理を考慮したシーケンスを検討・実装して欲しい所だ。

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距離も高低差も不明なマップは致命的だ

同様に戦闘中に参照可能なマップも機能性が欠けている。

こちらも上図を観て欲しい。
このマップからは地形の情報(詳細な高低差や距離感など)が全くわからない。
そのため、攻撃しようとしても選択した兵科では実は射程が足りない、高低差があり実は攻撃できないなどが発生するのだ。
ターンに使用可能なCPの数は限られているため「何もできなかったけどまぁ良いか」とはなりにくい。

BLiTZのようなタイプのゲームであるならば戦術・戦略上、マップは非常に大事な要素だと思うのだ。
本来の指揮官(ユーザー)ならばマップの情報から「この味方からこの敵までの距離は○○であるから、まず君はコイツを狙撃してくれ」など指示を出す材料になるハズだろう。
しかし本作のマップ情報では指揮官(ユーザー)は「射程内かわからんけど、とりあえずお前動いて、撃てたら撃て」と言う戦略も何も無い場当たり的な指示をするしかない。
これではとても有能な指揮を行ったとは感じにくく、むしろ絵に描いたような無能上司タイプの指揮官だ。
「なぜこの兵士を選択する必要があるのか」「なぜこの兵士をその場所に移動・配置するのか」などを考えながらプレイできるものにして欲しい限りだ。

 

訓練開発

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劣悪なアクセス性の訓練開発

本作では「訓練開発」と言われるシステムによって部隊の強化が行える。

兵科のレベルを上げる「訓練場」や兵器開発・改良が行える「研究開発所」、ORDERを習得できる「サロン」といったものが用意されている。
しかし、これらのシステムへのアクセスのテンポの悪さは気になる所が多い。
選択したり訓練・開発を行うたびにキャラクターの簡単なセリフがモーダルダイアログ形式で差し込まれ、実際に行いたい訓練や開発がサクサクと出来ないのはストレスに思える。
ユーザーは訓練・開発が行いたいのであり、キャラクターのボイスを聴きに来ている訳では無い。
これらのセリフでキャラクターの個性を出そうとするのであれば、シナリオ面だけでしっかりと表現する事に徹して欲しかったし、そもそもとしてモーダルダイアログ形式によってキャラクターのカットとボイスを再生している事に問題がある。
SEのようにキャラクターのボイスを使用すれば操作が邪魔されないため快適に感じたと思うのだ。

 

グラフィック

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水彩画のような「CANVAS

映像は「CANVAS」と呼称している水彩画のようなタッチの鮮やかでありながら淡いタッチのグラフィックが特徴的だ。
とは言え、(当たり前だが)基本的に戦場しかマップが無いために「景色が綺麗」などは余り感じる事が無いのは勿体なく思えるし、キャラクターモデリングや戦場の風景などは近くで見るには若干苦しいディテールに感じる。
また、キャラクターは多いのだが、主要キャラクター以外のモーションは汎用となってしまっている。濃いキャラクター達がいるにも関わらず個性を出せていないのは勿体ない。

 

サウンド

音楽に関しては緊迫したものが多い印象があるが、総じて記憶に残るようなメロディは少ないように感じる。
しかしながら、本作では特定の条件を満たす事で劇中のBGMをいつでも聞く事が出来るようになるのは嬉しい要素だ。

 

総評

戦場のヴァルキュリア4のストーリーはバランス良くできており、シリーズお馴染みのBLiTZというシステムを利用した戦闘もユニークで非常に面白い。
しかし、ブリーフィングやマップ、訓練開発などの頻繁にアクセスするシステム周りが足を引っ張っており、面白さに対して小刻みにフレンドリーファイアをかましている感は否めない。

総合的には面白い事には変わりは無く、じっくりと楽しめる一作だ。
今後のシリーズ作にも期待できる仕上がりになっている。

 

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