【レビュー】Dark Souls Ⅲ

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火は陰り。王たちに玉座なし。

Dark Souls Ⅲ(以下、ダークソウル3)は「死にゲー」の総本山フロムソフトウェアが開発したダークソウルシリーズ最後の作品だ。

筆者にとってはPS4自体もBloodborneも同様に「ソウルシリーズをプレイしたいがために購入した」と言っても過言ではなく、非常に待ち遠しかった一作だった。
また、本作がダークソウルシリーズの最後となる予定である事が公表されており、寂しい気持ちになっていた事も確かであった。

今回はダークソウル3のレビューをしていこう。

 

DARK SOULS III 特典無し [PlayStation4] - PS4

DARK SOULS III 特典無し [PlayStation4] - PS4

  • 発売日:2016/03/24
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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シリーズファンが喜ぶ集大成

本作のストーリーは過去作のシリーズと同様にストーリーを理解しなくても、サクサクと進める事ができる。
もしも、本作の退廃的な世界観に興味を持っているのならアイテムなどのテキストから見られる無数の点を繋ぐようにストーリーの背景を想像して楽しむことが出来る構造になっている。
ゲームプレイを邪魔する事の無いストーリーの描き方は評価されるべきポイントと言えるだろう。

本作は過去作と同様にストーリーの語り方は「プレイヤーが察すること」が主体となっている。
時にはNPCのセリフ内容から、時にはアイテムに記載されているフレーバーテキストから、時には敵の出現位置や行動などから察するのだ。
何故このセリフを言うのか、何故このアイテムにこの人物の名が登場するのか、何故ここでこの敵が出て来るのかなどなど、様々な要素に"点"が残されており、それらの点をユーザーが想像しながら線を結ぶように構築されている。
2Dドット全盛だった頃のJRPGのようなプレイヤーに委ねる部分が多いストーリーテリングは印象的だろう。

ダークソウル3特有の大きな特徴としては歴代のダークソウルシリーズのキャラクターやアイテム、あるいはそれを彷彿とさせる存在が登場する点だろう。
シリーズファンが喜ぶ要素がふんだんに散りばめられた集大成のようなストーリーはゲームを進めていく事で感慨深い気持ちになる事は間違いないだろう。
特にゲームの中盤頃に訪れる事になる「とある場所」は初代ダークソウルをプレイしていたプレイヤーにとっては鳥肌ものの感動があるハズだ。

このような書き方をすると初心者プレイヤーは付いていけるのかと心配になるかも知れないが、その点に関しても全く問題ないと断言できる。
前述の通り、ダークソウルシリーズではストーリーの理解度の大小が体験に大きな影響を及ぼすものではないため、シナリオを全く理解しない状態であっても十分に楽しいゲームプレイ体験する事は十分に可能だ。

 

システム

本項ではシステム関連について記載する。

 

フィールド

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探索しがいのあるフィールド

ダークソウル3においてもダークソウルシリーズ特有の探索しがいのある魅力的なフィールド設計は健在だ。
じっくりと探索して見つける事が出来た宝箱を開ける瞬間のワクワク感はダークソウルシリーズにおいて最もワクワクする時間の1つだろう。
本作では過去シリーズと比較すると見えない壁に遮られた隠し部屋などは少なくなり、しっかりと探索していればある程度は網羅可能になっている印象を受ける。
とは言え、探索のやり応えが減ったという事はないので安心して大丈夫だ。

篝火と言うチェックポイントの設定も変わらずだ。
篝火とはボスを除いた全ての敵がリスポーンする代わりにHPなどが全回復して休憩できるチェックポイントのようなもので、ダークソウルシリーズでは篝火から次の篝火を目指すまでを1つのゲームプレイサイクルとしている。
本作の篝火は最初からファストトラベルを行うことが可能で、一本道のように進行していくゲームプレイでありながらも、火継ぎの祭祀場というレベルアップやショップといった機能を有した場所を疑似的なハブのように利用する事もできる構造となっている。

初見殺しのようなフィールド設計もある程度は健在だ。
とは言え、全体的には陰湿すぎるような敵配置や状態異常攻撃は控えめになっている印象で、比較的素直な構造になっている。
詳しくは後述するが、本作ではアクション面が強化されているため、そのバランスを鑑みた結果としてフィールドでの陰湿なレベルデザインは抑えたのではないかと思える。
つまり「数々の初見殺しによって死にゲーにする」のではなく、「純粋に強い敵を用意して死にゲーにする」ようにシフトしているのだ。
この路線のシフトは後作である「SEKIRO」がより顕著に反映されているといえるだろう。

本作ではフィールド探索を助ける要素が追加されている点は興味深い。
フィールド上の敵を倒すと確率でHPを回復するためのアイテムであるエスト瓶の使用回数が復活する事があるのだ。
ダークソウルシリーズでは上述した篝火から次の篝火へと進むようなA地点からB地点に行くという行為はHPの消耗戦と等しかったが、この要素によって次の篝火までの希望の道筋が見えたように錯覚させてくれる事もある。
この要素は本当の意味での希望の光ではなく、「行けるかも知れない」という期待感を煽ってくれているのだ。
本要素は微々たるものではあるものであり、ゲームが劇的に変化するような内容では無いのだが、フィールド攻略に一役買っている要素の一部だとは言えるだろう。

 

バトル

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スピード感の上がった到達点となる戦闘

ダークソウル3の戦闘は本作よりも先に発売されたBloodborneのノウハウが活かされたのか、全体的にスピード感が増したアクションに変化を遂げた事が特徴だ。
自分も敵もより自然でキビキビとしたモーションとなり非常に見栄えがカッコ良くなっている。
その代わり、全体的にキビキビと動くようになった影響で予備動作となる前隙が短くなり攻撃や回避、パリィなどの難易度は若干上がっている印象で、ダークソウルシリーズの中では最もアクション部分の難易度は高いだろう。
特にパリィからの致命の一撃はソウルシリーズの代名詞とも言える要素であり、爽快感や敵に対しての征服感が満たされるためガンガン成功させたい所ではあるが、見極めが難しくなったため過去作程は行動としてホイホイとは採用しにくい。
例えば上図は敵の攻撃をパリィしている所だが、過去作においては予備動作をしっかりと見極めれば初撃をパリィする事も容易かったが、本作では「初撃を盾で受け、二撃目をパリィする」といった手段の方が比較的パリィをしやすいように感じる。
また、過去作のダークソウルでは敵をロックオンした際の回避方向が前後左右の4方向だけだったが、本作では斜め方向にも回避が行えるため、細部のアクションが快適なプレイフィールとなっている。

本作は上述の通り歴代の中でもスピーディーな戦闘になっているため難易度も上がっているし、そもそもとしてダークソウルシリーズと言えば難易度が高い「死にゲー」と言う印象が先行しがちだろう。
しかし、実際にはレベルアップによってステータスをアップさせられたり、武器が強化できたりといったRPG要素のおかげで懐が深い設計である点は相変わらずだ。
過去作と同様に時間さえかければ多くのプレイヤーがクリアまで到達する事が可能だと思って良いだろう。

本作の戦闘においては攻撃、ガード、キックの三竦みの重要度が増している。
この三竦みは格闘ゲームにおける攻撃、ガード、投げの関係に等しいものだ。
ダークソウルではHPとスタミナを管理していく戦闘システムとなっている。
攻撃は想像の通り「相手のHPを削る」という役割を持った行動だ。
ガードは相手の攻撃を防ぐ役割を持っている。
そしてキックは相手のガードを崩す役割を持っている。
連続攻撃を仕掛けてくる相手には盾でガードを固めつつ後隙を攻め立て、盾を構えるガードが堅い敵にはキックなどで切り崩し、キックでガードを崩そうとしてくる相手には攻撃で出ばなをくじくのだ。
この三竦みが全ての敵で成立するとは限らないが、基本的には…特に人型の敵に対してはこの関係性がベースとなっていると考えて良いだろう。

本作の問題点を挙げるとするならば思い付くものはただ1つで、それはロード時間だ。
サクッと死にやすいという本作のゲームプレイの性質を考えると、死んでから復活するまでのロードがやや長いのはストレスに感じてしまう事は多いだろう。
これは誤解をしないで頂きたい部分でもあるのだが、本作はロード時間自体が特別に長い訳では無い。むしろロード時間は一般的なレベルだ。
しかし、トライ&エラーを繰り返す事が主体の本作においては「普通のロード時間」では残念ながらストレスに繋がってしまう。
もう少しロード時間が早く出来れば本作に死角は無かった事だろう。

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初心者に洗礼を与えるチュートリアル

本作のチュートリアル部分も興味深い構造だ。
ゲームプレイがスタートすると必要最低限の操作方法だけを提示され、そこから少し進めば早くも最初のボス「灰の審判者 グンダ」が登場する。
このチュートリアルのボスである灰の審判者を攻略しない限りプレイヤーはレベルアップをする事も、武器を整える事も許されない。
しかし、この灰の審判者グンダはチュートリアルとは思えない初心者を谷に突き落とすようなボスなのだ。
HPが半分ほど削れると当たり前のように第二形態になり攻撃パターンが変化するなど、攻撃やガード、回避と言ったダークソウルの基礎の操作がしっかりと身に付いていなければ攻略する事は出来ない。
かなり荒療治な手法ではあるが、この灰の審判者グンダを倒せている頃には一通りの操作は自然と出来るようになっているハズだ。
むしろ、灰の審判者グンダさえ倒せれば、本作をクリアするのに必要なスキルと知識は整った状態になっていると言えるだろう。

ストーリーテリングの手法も同様だが、この辺りのデザインも古来のゲームデザイン的でありルネサンスの一面があると言えるだろう。

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第二形態が当たり前となったボス達

前述の灰の審判者グンダも然り、ダークソウル3のボス戦では「第二形態」が存在する事が当たり前になっている点は特徴的だ。
HPが半分になったり、HPを削り切ると復活したりして第二形態へと移行する。
第二形態では攻撃パターンが増えたり、攻撃方法が変化するため立ち回りの仕方をより多く覚える必要がある。

ボス戦も前述の通りスピード感が上がっており、初見では隙が見出せず手も足も出ないような場合もあるが、何度も戦ううちに相手の攻撃が見切れるようになっていくのは自身のプレイヤースキルの向上をハッキリと感じられる本作の醍醐味の1つとなっている。
もちろん、攻略が厳しいと感じるのであれば自身のレベルを上げる事で幾分かは楽に戦えるようになるので、自身の技術と天秤にするのが良いだろう。

 

Ashes of Ariandel

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ダークソウルシリーズの限界点

ダークソウル3DLC第一弾として登場したのが「Ashes of Ariandel」である。

このDLCでは新たなボスはもちろんのこと、本編には無かったような一癖のある武器が多く用意されているのも特徴的だ。
フィールド構造も探索しがいのある仕掛けが用意されており、プレイヤーの好奇心を掻き立ててくれるハズである。

少々ネタバレとなってしまうため気になる人は読み飛ばして欲しいのだが、このDLC第一弾での最大の驚きはソウルシリーズとして初となるボスの第三形態の実装だ。
これまでのボスは全て第二形態までであり、「やった。倒した。」と思ったのも束の間、まさかの第三形態となってプレイヤーの前に立ちはだかる時の絶望感は衝撃的だ。
第三形態のボスと言うのは純粋な強敵となるが、とは言えこのようなゴリ押しの難易度上げという方向性に関してはシリーズとしての限界も感じさせる。
もしも続編が制作されたとして、その続編において第四形態が登場したとしても、純粋に敵が強化されていくという要素には目新しさも無くなってしまい、逆にどんどん単純な強さだけがインフレしていくという環境はプレイヤーの間口を狭める結果にしかならないからだ。
そのような意味として本作をシリーズのラストとするのも頷ける。
まさに「ソウルシリーズの限界を出し切った」と言えるだろう。

 

The Ringed City

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ダークソウルシリーズの集大成

ダークソウル3DLC第二段として登場したのは「The Ringed City」だ。

このDLC第二段はシリーズファンにとって嬉しい要素が満載になっている集大成のような追加要素となっている。
初代ダークソウルやダークソウル2で登場したステージの成れの果てを感じさせるものが多く、感慨深い思いが湧く事だろう。
シリーズファンでなくとも更なる装備の追加や探索しがいのあるフィールドの追加といった面で楽しめる内容は多く用意されているが、シリーズファンであればより深く楽しむ事が出来るようになっており必ずプレイして欲しい要素だといえる。

 

グラフィック

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儚く美しい退廃的な中世ファンタジー

ダークソウル3でも退廃的な中世ヨーロッパの雰囲気は健在だ。
全体的なグラフィックも過去のダークソウルシリーズから大きく進化しており、絶望的でありつつも美しい世界観を見事に表現している。

 

サウンド

死闘を演出するボス戦BGMは健在だ。
特に二段階変化が当たり前となった本作ではBGMの変化も聴きどころだ。

その他、室内ではSEの残響など質が変化するような細かいポイントもしっかりと作られている。

 

総評

ダークソウル3はダークソウルシリーズの完成形であり、限界点であり、集大成でもある作品だ。

難易度の高さこそあるものの、ステータスや武器の強化が可能であるため幅広いプレイヤーが自分のペースで進めていく事ができる懐の深さは魅力的だ。
また、探索しがいのある妖しさ満点の退廃的で美しいフィールド構造も素晴らしい。

シリーズファンであれば必ずプレイして欲しい作品に仕上がっているのはもちろんだが、シリーズ初心者が「シリーズの美味しい部分だけを堪能したい」と言うのであれば本作だけをプレイする事もオススメできる内容にもなっている。

 

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