【レビュー】Grand Theft Auto Ⅲ

偉大なるレガシーゲーム

Grand Theft Auto Ⅲ(以下、GTA3)は世界において良い面でも悪い面でもゲーム業界を問わずに多大な影響与えた作品である。

トップビュー視点でのゲームプレイだった前作までと打って変わって、フル3D・シームレス・オブジェクト密度を兼ね備えた作品へと進化した。
とは言え、クライムアクションという作品が大きく目立った結果としてビデオゲーム全体が社会問題としても取り上げられるきっかけともなってしまった。

本作は色々な方向で歴史を築いたGTA3をレビューしたい。
なお、今回はリマスター版でのレビューとなる。

 

 

ストーリー

淡々とした裏社会シム

主人公であるクロードは集団犯罪を行うも仲間に裏切られて警察に逮捕されてしまう。
その後、刑務所へと護送されてる最中にギャング組織の手引きによって脱走に成功する。
その際に一緒に脱走したマフィアグループから仕事を斡旋されるようになり、それらの仕事がきっかけとなっていき徐々に大きな裏の犯罪集団と関係を持つ事になる。
なお、本編においてはクロードという名前は明かされておらず、いわゆる無個性型の主人公として描いている。そのため、名前の初出は後作のGTA:SAである。

作中には様々なマフィア組織が登場するが、それらはステレオタイプな描かれ方をしている傾向が強く、物語としても裏社会ものにありそうな人間ドラマの部分も薄い。
そのため、ストーリーとしては古めのB級マフィア/ヤクザ映画にありそうなシチュエーションの部分だけを寄せ集めたようなイメージを持つと良いだろう。

このストーリーの舞台となるのは”リバティーシティー”と言われる架空の都市で、モチーフはニューヨーク周辺となっている。
これはマップの外観・全体像を見てもなんとなく感じ取れるだろう。
前述の話でお察しの通りかと思うが、このリバティーシティーには多くのマフィアやギャングが縄張りを持っており非常に治安が悪い。
この辺りの主人公の設定や土地柄の設定はクライムアクションが前提となっているのが理由として大きいと思われる。

ストーリーでは会話などが演技も含めてかなりアッサリとしており、終始「○○で××が△△しやがった。ケジメをつける必要がある。ヤツらを始末するんだ。」程度だ。
良く言えばテンポが良いが、悪く言うとドラマとしてはチープに感じられてしまうだろう。

選択肢こそ多いが、攻略はシーケンシャル

ストーリーのミッションはプレイヤーが行える選択肢の割にシーケンシャルなプレイを強要されてしまう。
車で逃亡する相手の車を事前に壊そうものなら「○○に気付かれた!」などの微妙な理由で失敗になってしまう。
ゲームにおける「自由度」という曖昧な概念を広げた本作ではあるが、ストーリーの進行方法自体はレガシーな構造のままとなっているのだ。
せっかくシームレスな空間があるのであれば「気が付かれない時の攻略方法」「気が付かれた時の攻略方法」などマルチなアプローチが出来るようにしておくべきだっただろう。
本作では攻略法・進行方法は思ったよりも固定的なので困惑したり、理不尽にすら感じる事もあるかも知れない。
なお、これは後のGTAシリーズでも同様の問題が継続している。

 

システム

画期的だったオープンワールド型クライムアクション

GTA3はオープンワールドという概念とクライムアクションを世界に浸透させた歴史的なタイトルだ。

オープンワールドは広いフィールドをシームレスに表現した概念であり、当時としてはロードによる切り替えを挟まずに驚くほどの広さを表現しながら、オブジェクトの密度も両立させるという部分に衝撃を受けたプレイヤーも多いハズである。
とは言え、近年のものと比べると流石にフィールドはそこまで広くないので、今から始めて遊ぶというプレイヤーからするとその驚きは伝わりにくい部分だろう。
なお、オープンワールドというのは後付けされた名前であり、この当時には特にこの概念に名前は付いていなかった。
このシームレスなフィールドには随所にコレクションアイテムが隠されていたりと探索要素もあるため、能動的に街中を歩き回る理由も設定されている。
このコレクションアイテムは、集めると自宅前に武器などが配置されるようになり、無料で武器を入手できるので可能な限りは取得しておくのが好ましい。

クライムアクションは車を盗んだり、街中を歩くNPCにすら暴力を行えるアクションで、こちらも当然だが全てシームレスに行える。
このクライムアクションという題材も当時のプレイヤーには衝撃が大きかったポイントだ。
この時代の特に日本では敵ではないNPCとのインタラクションと言えば会話をするのが関の山であり、攻撃できる事はおろか、ランダムな大人数を動的に描画するということ自体もプレイヤーの発想として身近なものではなかったのだ。
その結果として当時はこのクライムアクションが日本市場においてはかなりの議論を呼ぶことになり、CEROが現在のレーティング区分に至る大きなきっかけとなったのも本作が主要因である。

このような「オープンワールド」や「クライムアクション」という珍しい要素を持った本作が登場した事によって、プレイヤー層では「自由度」と言われる不定形で曖昧なデザインをゲーム側に強く求める傾向が強くなった記憶がある。
そのため、一時期はシーケンシャルでリニアなゲームプレイを要求するタイトルの評価が必要以上に凋落した時代ともなってまったのだ。
この辺りはまだゲーム業界全体に本当の意味での多様性が育まれていなかった事の証左でもあるだろう。
なお、実際には「ストーリー」の項で前述した通りGTA3もシーケンシャルな部分は強い訳だが「当時としては」という枕詞を付けて頂ければと思う。

チュートリアルとして機能するメインミッション

ストーリーのメインミッションはチュートリアルにもなっており、新しく解禁された要素を活かした内容になる。
武器の使い方、車の操作の仕方はもちろんだが、その他にも例えば新しい操作感がある銃器や車種を使うためのメインミッションが用意されているのだ。

ミッションはその多くが難易度が高く、ワンミスが命取りになったりする事が多い。
また、「○○(地名)にある特定の車種を取ってこい」という指示があるが、いわゆるミニマップしか存在しない上に、そのミニマップには地名が書いてないため非常に困る。
リマスター版では全体のマップが確認が出来るようにはなったが、やはり地名まで記載されておらず頼りにならない。
また、マップ内にはフィールド上の様々なランドマーク的なものも記載がないので「あそこに行きたいが、どこだったか覚えていない」という時にも活用できない。

多数の車両とそれに付随する要素

車には多数の種類が用意されている。
車内ではラジオが聴けるほか、車の中でもタクシーや救急車などの特定の車種ではミニゲームが遊べるなど芸が細かい。

車はクレイジースタントと呼ばれるアクションがあり、ジャンプ台から回転しながら長い距離を飛んだりするなど”芸術点”に応じたリワードが手に入る。
ミッションや探索要素以外にも広いフィールドを遊び場に出来るデザインが成されているのも良いポイントだ。

車両はダメージが蓄積したり、横転すると廃車になってしまうため、基本的には使い捨てのものと認識するのが良い。

ただし、お気に入りの車などは自宅のガレージに保管する事が可能となっており、コレクションしておきたいような車があった場合には利用しよう。
ガレージに入れる事でダメージも回復するので愛車は大切にしやすいだろう。

犯罪を(ある程度)行うと手配される

ゲーム内で犯罪を行うと状況によって手配度が上がり、警察に追われるようになり、警察から逃げ切るか、捕まるとリセットされる。
捕まったり、体力が0になったりしてしまうと装備品などが全て没収されてしまうので注意が必要だ。

シビアで大味すぎる部分が多い

当時の水準から考えればプレイヤーの自由に行動できる事が多いのだが、ではそれが面白い体験に繋がっているのかというとそこは微妙なところだ。

メインミッションや戦闘、ミニゲーム、その他の指名手配などのシステム面において駆け引きがあるという訳ではないため全体的に面白さは大味で、最初の一口は美味しいと感じるかも知れないが、その美味しさは決して長続きするものではない。
また、ダッシュはボタン連打が必要だったり、根本的に泳げなかったり、射撃のエイムもわかりにくく、お世辞にも操作性や攻略の調整が上手くいっているとは言い難い。
真剣にプレイするには辛い部分が多く感じられるが、公式のチートコードを駆使したり、バグ・グリッチを含めたちょっと変な挙動に楽しさを見出す側面が強いのである。
そのため、純粋にゲームデザインによる意図されたシナジーのような部分で素晴らしいと言えるポイントは少ないのが実態である。

 

グラフィック

ディティールは粗いが高い密度を誇る

ディティールこそ粗いが実際にありそうな世界を表現したのは素晴らしい。
特に当時としてはそのような方向性のフル3Dゲームと言うのも珍しく、その上で信じられない程のオブジェクト密度を誇っていたのだ。
しかし、現代で初めて本作に触るプレイヤーにはその衝撃を感じ取るには難しいものがあるかも知れない。あくまでも当時の文脈から言って素晴らしいという部分になってしまうのだ。

キャラクターモーションもディティールは良くないが、大まかなシチュエーションのモーションはしっかりと用意している。
車に乗車する際に発進を急ぐとドアを閉めずに発進するが、少しニュートラルな時間を設けるとちゃんとドアを閉めるモーションが挟み込まれる。
路上で車の前に立てば主人公はお行儀の悪いポーズを取ったりもする。
血痕の上を歩いたり、車が通ると血の跡が伸びるなどの細かい部分も表現されている。

イースターエッグ的な要素も

細かい部分になるが、イースターエッグ的な要素もあるので見つけてみるのも良いだろう。

 

サウンド

GTA3では現在のオープンワールドゲームで主流となっている環境BGM主体の構成が既に構築されている。
車内ではゲーム内ラジオを聴く事が可能で、その点も印象的だ。
当時としては現実世界のシチュエーションをこのように落とし込んだゲームも珍しいため衝撃もなおさらである。
かくいう筆者もGTAシリーズの影響で興味を持った洋楽は数知れない。
最初こそよくわからないかも知れないが、プレイを継続していくという単純接触効果によってゲーム内ラジオで公開されている楽曲の中にお気に入りを見出し、自分の新たな好みのジャンルも開拓できるかも知れない。

なお、筆者のお気に入りのゲーム内ラジオはクラシック音楽の流れる「Double Clef FM」だ。

 

総評

Grand Theft Auto Ⅲは様々な意味で時代のターニングポイントを生み出した偉作だ。

真面目にメインミッションをプレイするのは辛いものがあるが、自分好みの車でスタントアクションを行ったり、ミニゲームが用意されていたり、隠しアイテムを見つける探索を行ったりと能動的に遊べる要素が取り入れられている。

何よりも当時としては画期的であったフル3Dでのシームレスな体験とクライムアクションのインパクトは凄まじい。
しかし、現代でそのインパクトを本作から感じ取ることが困難であるのは寂しい所で、結果として今から初めてプレイするというプレイヤーには「色々と辛いゲーム」という印象にしかならないのかも知れない。

 

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