【レビュー】ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~

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ひと夏の成長

筆者はライザのアトリエがアトリエシリーズに触れる初めて作品となる。
アトリエシリーズは非常に根強い人気のある作品である事は知っていたのだが、どういう訳か縁が無かった。
今回のライザのアトリエに関しては向上したグラフィック面はもちろん、システム面でも歴代とは一線を画す新機軸となっているとの事であったので「手を出すなら今か!」と思った次第だ。

今回はアトリエシリーズ初体験となるライザのアトリエをレビューしてみたい。

 

 

ストーリー

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因果関係がしっかりとしたストーリー

主人公のライザリン・シュタウト(ライザ)はクーケン島で暮らすラーゼンボーデンという村の女の子だ。
村は保守的な考え方が根付いており頭が固い人が多く、そんな島暮らしから抜け出した非日常に憧れている。

カットシーンにおけるカメラワークなどでの魅せるための演出はやや単調ではあるが、因果関係が綺麗に描かれたストーリーは良く出来ている。
遺跡の名残りが見受けられるクーケン島、保守的な考えの島民たち、ストーリーを進めていくとライザたちの前に登場する奇妙なモンスターや異質なモンスター。
これらにはしっかりと理由が用意されており、またイベントの要素は全て1本の線で因果関係が成立するように美しくできている。
ストーリーのオチの部分はやや都合が良いのだが、それでもやはり辻褄が合うようにはなっており綺麗に収まっている。

本作では登場する様々なキャラクターが一人前になるために頑張ろうとしているが、その描き方もシステムと噛み合っており見事だ。
ゲームシステムにはパーティーエストというミッション(お題)があり、キャラクターが自身に課題を課す事によって自身を強くする(スキルなどを覚える)というシステムは「(キャラクター自身が)成長しようとしている」というストーリー上の設定を上手に拾えているシステムになっている。
もちろん、これは既存のタイトルにもあるような要素の名称をそれっぽく変えただけとは言えるのだが、名称を変えるだけで世界観の表現に大きく寄与できるようにしているのは素晴らしい発想だ。
また、主人公達はもちろんだが、その他の主要キャラクターもストーリー上で大きく成長する点は観ていて嬉しくなる事だろう。

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島民たちが描かれるサブクエス

メインのストーリー以外にも「依頼クエスト」というサブクエストも用意されている。
サブクエストではライザと島民たちとのやり取りが展開され、ライザと島民達との関係性や生活感がわかったりする要素にもなっている。
サブクエストで話す事になる島民にはしっかりと個性がついている点も良いポイントだろう。

また、街中の特定のポイントを歩いているとメインキャラクターや島民との会話イベントが発生する事もある。
ここでもキャラクターの関係性などが垣間見えるが、このイベントに関してはフラグ管理がされていないのかシナリオ進行と矛盾するような内容がたまに発生してしまう事もあり少々勿体ない完成度だ。

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不親切な要素

ストーリー自体は良く出来ているのだが、不親切に感じてしまう要素もある。

メインストーリーを進行させる際には当然ながら指定された特定のポイントに赴く必要があるが、会話上で次の目的地が明示されない事も多いため次にどこに行けばいいのかわからない。次に行く場所は「あらすじ」を参照すれば記載されているため問題は無いのだが、毎回のように「あらすじ」を開かなくてはならないのは少々気になる所だ。
もちろんストーリーの会話上で露骨に「○○に行こう」と言われるよりは自然な会話だけで済まされるためストーリー表現としては良いのだが、どう進行すれば良いのかわからないのはゲームとしてプラスと言い切る事はできない。

ストーリー中の会話は全てボイスがついているが、セリフのオート送りが無い点も少々不親切だ。
ストーリーやキャラクター同士の会話に集中したいタイミングであるだけに、セリフをユーザーに送らせる仕様しか提供していないのは勿体ない。

大した問題では無いのだが、カットシーン中で採取可能アイテム(素材)が明滅するのはやや惜しい。
カットシーンでは明滅しないようにして影を薄くした方が無難だったように思える。

 

システム

ライザのアトリエのシステムについて記載していく。

 

錬金術

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スキルツリー形式の錬金術

本作の錬金術はスキルツリーやパークのような要領でアイテムを生成する。

錬金術によってアイテムを生成するには素材が指定された必要となり、素材を使用してスキルツリーのような枠を埋めていくと高品質・高性能なアイテムが作りやすい形となっている。
また、素材には特殊なスキルのようなものが付与されており、スキルのついた素材でアイテムを生成するとスキルを最大で3つ継承させる事が可能だ。
作成するアイテムや装備するキャラクターに応じて、どのスキルを付けるべきか考慮しながら強力なアイテムを作成する錬金術はつい時間を忘れてプレイしてしまう要素になっている。
筆者も「そろそろストーリーを進めようかな」なんて思っていたにも関わらず、気が付くと錬金術の素材集めとアイテム生成ばかりやっていた。

アイテムを大量生産だけしたいが毎回生成のためのアイテムセットをするのが面倒だったり、そもそも生成が難しいと感じるユーザーがいるかも知れない。
そのような場合にはイチイチ手作業で作るのは億劫になる事は間違いない。
そんな時にはアイテム生成を自動でもやってくれる機能が用意されている親切設計だ。

その他にも、確保したは良いが質の低い素材が大量に余ってしまい困るような時に活用できる「ジェム還元」というシステムがある。
ジェム還元は素材や生成物をジェムと言うポイントに還元できる要素だ。
これによって入手したジェムは生成アイテムを再強化できる「リビルド」と言う要素に使用したり、生成アイテムを複製する際に使用できる。
例え素材をつい取り過ぎてしまったという場合でもしっかりと使い道が残されているのはしっかりと考えられた設計になっている。

また、フィールド上で素材集めをする際にも取得できる素材はしっかりと視認しやすいように調整されているほか、取得できる素材は取得の際に使用する道具によって変化するようになっているため狙った素材が獲りやすくなっている。

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錬金術で気になるポイント

素材や錬金術にて気になるポイントも挙げておくべきだろう。

まず、大きな問題では無いのだがアイテムソートが毎回リセットされるのが少々めんどうに感じる所だろう。

次に素材をどこで入手できるのかがわかりにくいのは問題がある。
大雑把な場所は記載してあるが、具体的にどこで入手したのかまではわからないため、その入手場所を忘れてしまった場合には少々困った事になりやすい。
必要な素材がどこで入手できるものなのか参照できないのは不便そのものだ。

そして、素材に付与されているスキルは多種多様なものが用意されているが、生成するアイテムによっては存在意義の無いスキルになっており、冗長な物量になってしまっている。
例えば「回復量アップ」のようなスキルは回復アイテムでしか意味を成さないため、武器を生成する事に使われやすい素材では価値が0になってしまう。
「スキルが多種多様」と言えば聞こえは良いかも知れないが、どちらかと言うとこのような構成になっているが故にスキル種類が無駄に多くなってしまっている印象を受けるのだ。
「回復アイテム生成時には回復量上昇、武器生成時には威力上昇」のような生成先によって効果が最適化されるエレガントな構成が望ましかったように思える。

 

バトル

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アクション性もある非同期ターン制バトル

本作の戦闘システムは非常に楽しい構造をしている。
詳細な説明をする前に、先にプレイヤーが利用する事になる主要な「AP」「スキル」「クイックアクション」「オーダー」「アイテム」「フェイタルドライブ」といった要素について大まかに説明していきたい。

本作のバトルシステムは非同期ターン制と言えるようなものになっている。
これでは伝わりにくいと思うので、最もわかりやすく例えるならば昔のファイナルファンタジーATBのようなものを想像するのが良いだろう。
各キャラクターや敵には行動するまでの時間が設定されており、その時間が経過すると攻撃などの行動が行えるようになっている。
行動を行う際にも常に時間は流れており、モタモタしているとどんどん敵が行動してしまう。
そのため、基本的には自身のターンになった場合にはなるべく早く行動を決断する、あるいはタイミングを見計らうためにあえて時間を消費するなどRPGながらアクション性もあるものとなっている。

戦闘中にプレイヤーが操作する事になるのはバトルメンバー3人の中の1人で、戦闘中にいつでも他のキャラクターに切り替えができる。
そのため、キャラクターにロールを割り振り、ダメージを受けたら回復スキルや回復アイテムを持たせたキャラクターに操作を切り替えるといったプレイも可能だ。

戦闘ではAP(アクションポイント)というポイントが重要となる。
APは通常攻撃をする事で蓄積されていき、APを消費する事で「スキル」や「クイックアクション」というシステムを使えるようになる。
また、APにはタクティクスレベルと言われるものが連動しており、APを最大値まで溜めた場合にはタクティクスレベルを1つ上昇させる事ができる。
タクティクスレベルは最大で5まであり、1つ上昇する毎に蓄積可能なAPの最大値が上昇していく。そのため、タクティクスレベルが上がればスキルやクイックアクションを多く発動できるようにもなる。
つまり、APをスキルやクイックアクションに使用して短期的な戦術に頼るのか、APをタクティクスレベル上昇に使用して長期的な戦略を整えるのか取捨選択して戦闘するのが基本となるのだ。
なお、このAPやタクティクスレベルは戦闘中のみのポイントとなっており、次の戦闘に繰り越される事はない。

「スキル」は前述の通りAPを消費して使用する事ができる技のようなものだ。
スキルには攻撃や回復と言った効果があり、状況に応じて使用する事になるものだ。
繰り返しになってしまうがスキルはAPを消費するため、何も考えずにバンバン放つ事は出来ない。

「クイックアクション」はAPを消費して時間経過を待たずに行動が可能なシステムだ。
時間経過を待たずにいきなり行動が可能であるため、攻撃や回復など幅広く使用できる。
APを消費する行動の中でも最も重要とも言える行動だが、それは次に説明するオーダーがあるためだ。

戦闘に仲間との共闘感を演出してくれる要素が「オーダー」だ。
オーダーには「アクションオーダー」や「ノーマルオーダー」「エクストラオーダー」と言った種類が存在している。
オーダーとは、戦闘中に味方キャラクターから行動を要望され、その要望に沿った行動を行うと要望を出したキャラクターが追加で敵に強力な攻撃を行ってくれるというものだ。
味方はそれぞれオーダーを出すが、複数のオーダーを1つの行動で解決できれば連鎖的に追加攻撃が発生する。
アクションオーダーは戦闘中に一定の時間が経過すると発生する要望で、ノーマルオーダーは味方がピンチの時に発生する要望だ。
そして、エクストラオーダーは敵が大技を発動させようとしている時に前述のクイックアクションを行うと発生するオーダーとなっている。これによって敵の大技の発動を潰しやすくなるため、戦闘ではエクストラオーダーを発動させられるだけのAPを蓄えておく意識をする事が基本だ。

錬金術で作成した戦闘用アイテムはCC(コアチャージ)と呼ばれる数値を消費して使用する事ができる。
アイテムは一見すると消費物のようだが、本作では着脱可能なスキルのようなものと認識した方が良いだろう。
錬金術で作成する戦闘用アイテムは敵にダメージを与えるものから、味方にバフを与えるもの、敵にデバフを与えるものなどが存在している。
このCCは拠点に帰るか、アイテムを封印(能動的に使用不可状態する行動)をしなければ回復しないため、どのタイミングでアイテムを使用するかはよく考える必要がある。

そして最後に紹介するのが「フェイタルドライブ」という大技となる。
これはAPを溜める事で上げることが出来るタクティクスレベルを最大値まで蓄積させた場合に発動可能になる要素となる。
フェイタルドライブは奥義とも言えるような非常に強力な行動である代償として、発動するとタクティクスレベルが初期値に戻ってしまうリスクが存在する。
これはスキルやクイックアクションがまとも発動できない状態に他ならないため、フェイタルドライブで敵を倒し切れない事態になれば途端にピンチとも言えるのだ。
なお、このフェイタルドライブの技の内容は発動させたキャラクター毎に異なる。

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鮮やかに彩るバトルシステムの各要素の関係性

登場する各要素の大まかな説明をしたので、次に本作のバトルシステムの構造を整理して解説していきたい。
ここでは上図の図を参照してもらうと各要素の関係性がわかりやすいかも知れない。

前述の通り、戦闘ではAPが重要となる。
その理由は「スキル」や「クイックアクション」、「フェイタルドライブ」など特徴的な行動の多くがAPに依存しているためだ。上の図からも多くの矢印(行動)がAPに依存していることがわかるだろう。
そして、肝心のAPは通常攻撃に依存した要素となっている。
このような構造になっていれば、一番地味な通常攻撃という要素がゲームを進めても廃れにくい構造になってくるうえ、プレイヤーが行動すれば行動するほど良いフィードバックが返ってくるアグレッシブな構造にもなっておりエレガントと言えるだろう。
また、単調な戦闘システムにありがちな「強い技を使用するだけ」にならない構造にも貢献している良い関係性だ。

戦闘ではAPを管理して戦うようになっている点も見事と言える。
それを如実に感じるのは敵のHPが半分ほどになり大技を使用してくるタイミングだ。
敵の大技を受けてしまうと、当然ながら味方には甚大な被害が出てしまう。
そこで、APを消費するクイックアクションからエクストラオーダーを発動させて、強力な攻撃を受ける前に対処するのだ。
しかし、敵のHPが半分になろうかと言うタイミングでAPが全く溜まっていない状態であればピンチになる事は明白だ。
戦闘中は「いつAPを溜めるか」「いつAPを使うか」というマネージメント要素によって成り立っており、APの蓄積具合が戦闘におけるバロメーターにもなっている。

各要素がゲームを進行しても腐りにくく、行動すればするほど強くなっていき、敵の大技発動を意識してAPをマネージメントをする。
これらを半リアルタイムな戦闘システムで行う事により少しばかりのアクション性が求められつつも、実際にやること自体はシンプルになっている実に見事なバランス感覚で生み出された構造だ。

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更なる飛躍のために

戦闘システム自体は非常に楽しいが、まだ改善できるポイントがあるように見受けられる。

まず、メインストーリーで戦う敵の体力設定がどれも低く、最も楽しくなりそうな手前で倒してしまう事が多いのは勿体なく感じる所だ。
操作キャラクターを切り替えできるシステムにしても、奥義であるフェイタルドライブにしても、その要素が必要となる強敵が少ないのが実情だ。
筆者の体感になってしまうが、錬金術による武器の強化は意図的に控える事で与ダメージ量を抑えた方がシステムを活用して戦う事ができるように感じる。
クリア後には高難度化できるためシステムを活かした戦闘が行えるかも知れないが、1週目で出来ないようでは少々遅いと言わざるを得ない。
ボスや大型モンスターなどは単純にHPを多くするだけでなく、ストック制にして簡単に倒れない工夫をしても良かったのではと思える。

APとCCの扱いの差も惜しい所だろう。
APは次の戦闘には繰り越されないにも関わらず、CCは繰り越されてしまうというのはミスマッチと言わざるを得ない。
特にCCという要素によってタイトルとしても冠している「錬金術」で作成したアイテムを気軽に使えない状態になってしまうため、メインシステムとのミスマッチになってしまっている印象を受ける。
その上、「戦闘を楽しむ」という観点から考えた場合にも、次の戦闘を頭に入れておかなければならないという足枷が出来てしまうのは各戦闘で全力で戦いにくい。
「現在にだけ集中する事が没頭の秘訣」である事はフロー理論やマインドフルネスと言ったものからも承知の通りだろう。現在への集中を乱すこのようなマネージメントは必要性が感じられない。
錬金術の成果を発揮しにくくさせ、現在の事にも集中させにくくしているという二重のミスマッチは勿体ないポイントだ。
戦闘終了毎にCCを全回復させて気兼ねなく全力で戦えるようにお膳立てするべきだったのではないだろうか。

アクションオーダーがプレイヤーの制御下にない点も非常に勿体ないポイントだ。
オーダー全般は戦闘において重要であると同時に、仲間との共闘感を演出してくれる非常に良いシステムだ。
しかし、アクションオーダーに関してはタイミングや内容がプレイヤーの制御下に無い(タイミングは時間経過、内容はランダムに発生する)仕組みになっているのは勿体ないと言わざるを得ない。
例えば、プレイヤーや仲間の特定の行動に呼応してオーダーが発生するなど、任意のオーダーを狙って発生させる事ができるとオーダーと言う要素がプレイヤーの制御下になるため、より具体的な戦術・戦略を組み立てられるようになったハズだ。
また、オーダーを「装備形式」の付け替え可能なものにできれば更に良かっただろう。
「HPが〇%以下になると、××を要求する」「△属性で攻撃すると、□□を要求する」など条件と要求を自由に変更できるイメージだ。
こうする事で戦術だけでなく、より戦略的な敵の攻略を目指す事ができただろう。

フェイタルドライブの立ち位置も変更して良かったかも知れない。
最も強力な技である「フェイタルドライブ」は、APの蓄積で上昇するタクティクスレベルを最大値にする事で発動できる。つまりはAPに依存したシステムだ。
しかし、本作のバトルシステムには最も階層が深い依存関係をしている要素が戦闘要素の関係性を1つ前の図から確認できると思う。「オーダー」のことだ。
最も破壊力のあるフェイタルドライブはAPに依存するのではなく、オーダーに依存した要素であった方が更にエレガントなシステムだったように思える。
通常攻撃に依存したAP、APに依存したスキルとクイックアクション、スキルとクイックアクションに依存したオーダー、そしてオーダーに依存したフェイタルドライブと言う直列的な図式になっていれば見た目としても非常にエレガントであるし、何よりもオーダーと言う強力な行動の後にフェイタルドライブという超強力な行動が発動できるのは実に爽快になるのではないかと想像できる。

パーティー全体を活躍させる事も検討して欲しい点だ。
本作では各種オーダーによってキャラクターが追撃を行ってくれるが、戦闘に参加していないメンバーに関してもオーダーと追撃を行ってくれれば更にパーティーの雰囲気が盛り上がったように思える。

それ以外の少し気になる点も書いておきたい。

チュートリアルは少々不親切さが気になる所だ。
戦闘などはテキストだけでシステムを説明される事が多く理解しにくいように思える。
特にRPGと言われるゲームの場合、戦闘が直感的ではないため文章だけで説明されても初見プレイではわからないのだ(本ブログの説明もそうである事は否めない)。
戦闘のチュートリアルを意識したシステムを上手く使う必要がある敵を用意するなどの設計をして欲しかった所だ。

敵のバリエーションが乏しいのも寂しい所だろう。
本作の敵は種類自体は少なく、色違いの亜種のようなモンスターで差別化をしている傾向があり、ややチープさを覚える。

不具合なのかは不明だが、戦闘中に操作キャラクターを変更した直後にクイックアクションを行いエクストラオーダーを発動させようとすると何故か失敗するのはよくわからない。
なんとなくだが、キャラクターを切り替えた直後にエクストラオーダーを発動させると、その後にアクションオーダーが発生してしまい、前タスクが消去されているように見える。実際の原因はどうあれ、これはしっかりとエクストラオーダーが発動できるようにして欲しい。

ここで長々と、そして色々と書いてしまったが、誤解をしないで頂きたいのは、これらの大半はどれも更なる飛躍のための「要望」であり、決して本作のバトルが楽しくないという事では無いのだ。
いや、むしろかなり完成度の高いバトルシステムとなっているため、本作において大きなプラスのポイントとなっている。
本作のバトルシステムは体験してみる価値があると断言できる構造だ。

 

グラフィック

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夏を感じさせるロケーション

本作のロケーションは全体的にライティングが強く、夏の明るさや暑さを感じさせてくれるものに仕上がっている。
また、昼や夜に変化する事はもちろん天候も変化するのも良いスパイスだ。

アップデートでフォトモードが追加された点も嬉しいポイントだ。
フォトモードではキャラクターを自由な場所に配置出来たりと自由度があるため、通常では撮る事ができないユニークな1ショットを撮る事が可能になっている。
しかし、フォトモードでのカメラ操作はややクセがあるように感じ、特にカメラの前後移動がやりにくいように感じられた。
もう少し素直な操作性になってくれると嬉しい所だ。

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良い品質のキャラクターモデリング

モンスターを含めた全体的なキャラクターのデザインは良く出来ており、また可愛らしさが特徴的だ。
敵ですらもキュートである事が多いため「これは倒して良いのか?」とすら思うものになっている。
もちろん人間のキャラクターも可愛らしく、特に主人公のライザやメインキャラクターのクラウディアといった造形の完成度は高く、キャラクターを重視している本作に相応しいものになっている。

アニメーションにしてもゲームとしてのテンポは守りつつ、出来も良く仕上がっている。
カットシーンにおいてキャラクターの走行アニメーションと実際の移動速度がシンクロしていない点が気になるくらいだろう。

 

サウンド

本作の音楽は牧歌的だったり、ポップだったりと明るい雰囲気のBGMが主体となっている。
各フィールドの曲は昼と夜で曲のアレンジが変更されたものが使用されている。
筆者が気に入っている曲についても少しだけ記載したい。

日常を象徴する「水彩色に跳ねる日々」

日常からの冒険を象徴する「青草香る空の下」

牧歌的な夏を感じさせるバグパイプを思わせる音色のイントロが印象的な戦闘曲「穀雨、麦の風」

牧歌的で暖かな雰囲気のある「故郷の島」「静寂の島」

ピアノとヴァイオリンが印象的な「Emerald Climbing」

子守歌のような穏やかさのある「夜風と星のうた」

この他のエンディング曲に関してもしっとりとした良い曲となっている。

キャラクターのボイスも比較的充実しており、待機モーションや素材採取時にボイスが流れる。
また、クリア後にはBGMが聴けるモードが解禁されたり、キャストによるコメンタリーが解放される。
BGMをじっくりと聴いたりする事も出来るうえ、コメンタリーに関しては声優ファンには嬉しい要素となっているハズだ。

 

総評

ライザのアトリエは非常に優れた作品だ。

キャラクターに焦点を当てつつも全体の因果関係が綺麗にまとまったストーリーは良く出来ており、作風にあった音楽も悪くはない。
メインとも言える錬金術もついつい長時間プレイしてしまう良い意味での時間泥棒だ。
そしてなにより、バトルシステムが非常に楽しめる完成度の高い構造をしていたのは、筆者としては予想を大きく裏切ったポイントだった。

筆者はシリーズ初心者であるため大きな事は言えないが、本作はシリーズの中でも屈指の完成度を誇る作品になっているのではないだろうか。

 

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