【レビュー】MAGLAM LOAD

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魔王、コンカツす

MAGLAM LOADはサモンナイトシリーズを手掛けた経験のあるメーカーであるフェリステラが開発した新規タイトルだ。
そのような事情から筆者は応援の意味も込めて本作を購入した形となる。

では、MAGLAM LOADのレビューをしていこう。

 

MAGLAM LORD/マグラムロード – Switch

MAGLAM LORD/マグラムロード – Switch

  • 発売日:2021/03/18
  • メディア:Video Game
 
【PS4】MAGLAM LORD / マグラムロード

【PS4】MAGLAM LORD / マグラムロード

  • 発売日:2021/03/18
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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魔王も勇者も絶滅危惧種

まずはストーリーを大まかに説明しておこう。
神々と魔族との争いがなくなり、故あって封印された「魔剣(マグラム)を生み出す魔王」はかつての魔力を失い、更には人間が築き上げたという「政府」によって絶滅危惧種に指定されてしまう。
全盛期のパワーを取り戻すため様々なキャラクター達と協力関係となるコンカツをする事になるのだが、その魔王こそが主人公となるキルリザークだ。
ストーリーは上図のような一般的なADVの紙芝居形式で展開されていき、魔王や勇者がなぜ人間が治める政府の手によって絶滅危惧種となって存在しているのか、なぜ復活のための魔力が乏しい世界なのかなどのストーリーの謎がメインストーリー(メインクエスト)で明かされていく。
本作のストーリーには大掛かりな伏線や緻密な歴史が用意されている訳では無いのだが、魔王を倒す役目を持っていた勇者など様々なキャラクター達と出会い、各キャラクター達が自身の個性を活かして協力しながら物語が進んでいき、メインストーリーを読み解いていけばキャラクターの関係性は良く考えられている事がわかるだろう。
本作は濃厚なストーリーを楽しめるというよりも、キャラクターの会話を楽しむような側面が強いものになっていると認識しておくのが正しいと思った方が良い。

ストーリーの質は悪いという程のものではないのだが、序盤のペーシングは上手くいっていないように感じられる。
序盤にはストーリーで世界設定を多く説明してしまうため、ゲームプレイ部分が触れない時間が多くなってしまうのだ。
ゲームプレイ部分が用意されている以上、ゲームプレイ部分を触ってみたい気持ちが強い序盤には展開の遅さが噛み合っていない。
ストーリー進行がADV形式であるため、どうしてもテキスト頼りの進行になってしまうのも影響として大きいのかも知れない。
そのような意味で本作はADVを主体としたかったのか、ゲームプレイ部分を主体としたかったのかは曖昧になってしまっている。

本作はボイス付きのセリフが大半であり、そのような構造の場合において筆者としては地味に嬉しいポイントとして会話の自動送りが実装されている点は見逃せない。
ただし、自動送り設定は継続されないため、次の会話のたびに自動送りを再設定をする必要がある点は少々残念だ。

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各キャラクターには好感度が設定されている

ストーリーの会話中にはキャラクターの好感度を上げる選択肢などが用意されている。
キャラクターの好感度は一定のラインに達すると、そのキャラクターとのデートをすることが出来る。
デートはキャラクターにフォーカスを当てたサブストーリーのようなものだと言えば想像しやすいだろう。
その内容はキャラクター性を掘り下げるというような内容ではなく、シチュエーションを楽しむようなものになっており、前述した”キャラクター同士の会話を楽しむ”という路線と同様だ。
なお、キャラクターの好感度に応じてエンディングに変化が発生する形式となっているので、お気に入りのキャラクターがいれば重点的に好感度を上げていくと良いだろう。

 

システム

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チープさはあるが軽快なARPG

本作のゲームプレイは3Dマップのシンボルエンカウント形式で、戦闘ではサイドビュータイプのアクションRPGとなっている。
昔のテイルズオブシリーズに近いものを想像すると理解しやすい人が増えるかも知れない。
操作としてはボタン入力で攻撃していくシンプルなもので、その操作感はかなり軽快だ。駆け引きのバランスなどが奥深いものではないが、1戦闘辺りのテンポが良くサクサクと進められるのは良いポイントと言えるだろう。
敵には剣、槍、斧の3種の魔剣(マグラム)といわれる武器のどれかが弱点として設定されており、戦闘中にシームレスに武器をコロコロと切り替えて戦うのが基本となる。弱点属性の武器でないとダメージがかなりカットされてしまうため、相手の弱点に合わせて切り替えるのがセオリーだ。
武器に関しては倒した敵の素材を使って生成していく事が出来る。
生成に必要な素材のドロップ自体はそこまで厳しいものでは無いため、ある程度の敵を倒していれば生成可能になっている事だろう。

詳細なゲーム中のストーリー的設定は省略するが戦闘中は仲間キャラクターを操作するのが基本形となり、戦闘中にダメージを与えるなどする事で「GD」というゲージを溜めると魔王自身を操作して戦う強化モードのような状態となる。
基本的にはボス戦で使う事でスムーズに攻略できるが、この強化モードは少々強すぎる所があり、ただでさえ駆け引きのデザインが甘い本作の戦闘を更に大味にしてしまっているため好みがわかれる事は予想される。

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昇華しきれていないポイントの数々

ゲームプレイ部分に関してもストーリーと同様に悪いという程のものではないのだが、プレイしていて気になるポイントは多々あると感じてしまうだろう。
そのポイントについて以下に列挙していく。

まず、本作には複雑なシステムはないのだが、チュートリアルがテキストで済まされてしまうのは少々不親切だ。
その上、チュートリアル一覧からはまだ行う事ができないような行動も閲覧できてしまい困惑してしまう可能性がある。
もう少し丁寧な対応になっていると好感が持てたハズだ。

プレイアブルとなる仲間キャラクターは何名か存在するのだが、得意な武器や属性が異なるだけでモーションなどは共通であるのは残念だ。
使用感はほとんど…というか全くと言っても良い程には同じであるため、使い分けるような事はなく、個性を感じにくいのは寂しい仕様と感じざるを得ない。
プレイアブルなキャラクターを登場させているからには、それに相応しいプレイ体験が伴っていないと逆にチープな印象を与えてしまう。

ヒットストップが意図とは逆のプレイフィールになっている点も勿体ないポイントだ。
本作の敵は自分が攻撃する場面、敵が攻撃する場面と疑似的なターン制となるようにしっかりとデザインされているようには見受けられる。
しかし、怯まない敵の場合にはヒットストップ中に敵が行動し始めてしまい、疑似的なターン制のようにデザインされたゲームテンポが崩れてしまっているのだ。
せっかくヒットストップで攻撃の手応えや爽快感を与えようとしているにも関わらず、そのヒットストップのせいでダメージを受けてしまい、結果としてネガティブな印象の方が強くなってしまうという本末転倒になっているのだ。
本作はプレイヤーの攻撃時の後隙が小さく連続で攻撃しやすく作られている。その連続攻撃を中断させ、簡単には倒されないようにするためにこのような構造にした可能性はあるのだが、対処療法的でありポジティブな影響を与えられているとは言い難い。
プレイヤーの攻撃の後隙もしっかりと作り、その上で疑似的なターン制が成立するようなヒットストップ時間を設ける事で爽快感とゲームとしての駆け引きが両立できたのではないかと思える。

サブクエストも問題がある。
大半のサブクエストにはストーリーが付随していないうえに、特定の敵を倒したりアイテムを入手するだけという同じ事の繰り返しであるためどうしても飽きが来てしまうのだ。
その上、サブクエストをクリアしていく事でメインクエストの推奨レベル相当の水準になるため、「サブクエストはあくまでもやり込み要素としてデザインされている」とは少し考え難い。
メインクエストに関してもストーリーがあるだけでゲームプレイ部分はサブクエストと同様の構造であるため、メインクエストのモチベーションにも水を差してしまう。
水増しのようなサブクエストのプレイを推奨してしまっては、自らゲーム体験の寿命を早めてしまうような選択になっている。

ラスボスのデザインにもフラストレーションは溜まるかも知れない。
本作のラスボスは無駄に多い体力設定、攻撃を当てにくい、同じことの繰り返しという三重苦で、中々のストレスがある事を覚悟する必要がある。
また、それまでに登場したボスとはシーケンスが全く異なり、ギミック的な要素がいきなり登場する事もストレスに拍車をかける。
段階的にラスボスの攻略デザインに近いボスが登場していればまた異なった印象だったかも知れないのだが、本作ではラスボスになって突如として面倒な仕様の戦闘が登場するため困惑してしまう事だろう。
最後は手強いボスを用意したかったのかも知れないが完全にやり方を誤っている印象だ。
なお、ラスボスの体力設定に関してはアップデートにて下方修正されている。

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少しだけだが探索要素もあるフィールド

3Dマップでは前述の通り敵シンボルが徘徊しているほか、素材などが落ちていたりと少しだけ探索要素がある。
セーフエリアと言う休息ポイントも用意されており、そこで回復なども行えるため、レベリングをしたい時などには重宝する事だろう。

ただし、本作の3Dマップは固定の俯瞰視点であるため、画面手前の索敵がしにくいのが少しストレスに感じるかも知れない。

 

グラフィック

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ADVらしい要素

ADVパートでは立ち絵やイラストがメインとなっている。
ゲームパートでは3Dモデルになるが、かなり簡素であり高品質なものだとは言えないが、そもそも本作をAAAタイトルなどと比較するのもお門違いだろう。

少ないがスチルもあり、ギャラリーでは見返す事が出来るほか、キャラクターのイラストも確認できる。
ただし、スチルは本当に少ないためADV要素をメインに考えている場合には肩透かしを喰らってしまう可能性は頭に残しておこう。

 

サウンド

楽曲はそこまで多い訳では無いのだが、ギャラリーで作中の楽曲をいつでも聴けるのはありがたい仕様だ。
特に筆者が気に入った楽曲は「狂奔ノ宴」で、思わず"進撃の巨人"が始まったかと思ってしまった。

 

総評

MAGLAM LOADはADVとARPGの両方を楽しめる一作だが、裏を返せば二兎を追ってしまった感は否めない。
全体的な駆け引きの調整不足や設計、ペーシングのミスマッチが見受けられ勿体ないポイントが多いのだ。
もちろん、二兎を追わずして二兎を得る事は出来ない訳なのだが、それが可能なだけの開発リソースがあったようには感じられない。

決して悪くはない作品ではあるがADV面でもARPG面でも物足りなさを感じてしまう。
本作のフィードバックによって次に繋がる事に期待したい。

 

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