【レビュー】ルーンファクトリー5

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新たな舞台で、新たな冒険

ルーンファクトリーといえば牧場物語から派生した作品であり、牧場物語と比較するとアニメから強く影響を受けた作品になっている。
内容としても農業、畜産などの牧場物語にあった要素のほかに戦闘も含まれていたりと、かなり欲張りなデザインも特徴的だ。

筆者は初期タイトルから興味はあったものの、実際に購入したのはWiiにて発売されたルーンファクトリー オーシャンズからである。
本作ルーンファクトリー5も完全3Dのタイトルであるため、その形式もオーシャンズぶりとなる。

今回はルーンファクトリー5のレビューをしていきたい。

 

ルーンファクトリー5 -Switch

ルーンファクトリー5 -Switch

  • 発売日: 2021/05/20
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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キャラクターに大きく比重を置いている

本作はファンタジー世界で農業や戦闘を行いつつ、住民たちと仲良くなっていくのが主軸だ。
物語全体としては事件こそ発生するものの陰鬱だったりする事はなく、見た目の通りの明るく和やかな雰囲気である。物語の後半になり事件の全容が見えてくると深刻さは出てくるが、それでも暗すぎないようなバランスだ。
重厚で緻密な設定を楽しむようなものではないため、ユーザーがそういった物語の伏線や説得力を重要視している場合にはミスマッチだろう。

恒例行事なのだが主人公は記憶喪失の状態から始まる。
記憶喪失であるため行く当てもない。とりあえずリグバースという町のSeedという自警団のような組織に所属して、町での困りごとを解決しながら生活する事になるのが導入となっている。

ストーリーはストーリー自体と言うよりもキャラクターを重視しているのが本シリーズの特徴である。
本作の場合には各キャラクターに「恋愛シナリオ」と呼ばれるキャラクター自身やキャラクター同士の関係性を掘り下げるようなストーリーが用意されている。
そして、各キャラクターに好感度が設定されており、好感度が高まれば恋人となったり、結婚をしたりする事も可能だ。
登場人物の全員が恋人候補ではないため注意は必要だが、シリーズとしてこの要素が好きな人も多い事だろう。キャラクターと仲良くなったり、キャラクター同士の関係性を楽しむのがルーンファクトリーの醍醐味だ。
なお、同性婚などは行えないが、クリア後要素の性別変更を行うと恋人候補を変えることなく主人公の見た目の性別を変える事は可能だ。
ただし、これはあくまでも見た目および声が変更されるだけであり、銭湯にいくと普通に元々の性別の湯に入ってしまうなどの問題点がある事は注意が必要だろう。
なお、本仕様は海外展開を見据えてかアップデートにより同性婚が可能となるようだ。

これは個人的な好みの部分でもあるが、筆者は将来的にはストーリーの演出における統一性を求めたい。
本作のストーリーは上図のようにイラストの立ち絵が主体となっており、3Dモデルはあくまでも雰囲気を伝えるにとどまる使い方をしている。
せっかく3Dモデルを使った方向性にシフトしていくのであれば、 3Dモデルがストーリー演出の全てを担うようになれば更にリッチな作品へとなっていくだろう。

 

システム

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とてつもなく欲張りなゲームプレイ

本作は…というかルーンファクトリーシリーズはARPGだ。
シリーズとして一貫しているのはアクションとしては軽快でやや大味だが、RPGとしてはやり込み要素が非常に多い事が挙げられる。
やり込み要素は戦闘以外にも農業や酪農、釣り、鍛冶、料理など幅広いプレイが可能なとてつもなく欲張りな作品である事が最大の特徴である。
要素は多いが1つ1つはそれほど複雑な工程がある訳ではなく、チュートリアルもあるので安心してプレイできるだろう。

戦闘はシームレスで、フィールド上のモンスターに対してボタン入力で剣や槍などの武器を振って戦うシンプルなものになっている。
疑似的なターン制となるように前隙/後隙があり、ある程度は遊びやすく作られている節はあるものの、ダメージや判定を始めとした全体的なバランスは前述の通り大味だ。
一見すればもう少し調整して欲しくはある部分かも知れないが、これは”あえて”そうしているのではないかと推察している。
本作は様々な事が可能な欲張りな作品であり、ターゲット層も男女問わずに手に取って貰えるものを想定しているだろう。
そのため、プレイスキルによらずにプレイできるように難しい駆け引きは意図的に排除しているのではと考えられるからだ。
なお、難易度の変更も可能になっており、難易度によって駆け引きのバランスが変わる訳では無いが敵の強さが変化する。自分に合った難易度を選択すると良いだろう。

ARPGとしてのアクション部分は駆け引きが大味である代わりに、装備を整えたりレベリングを行ったりと言ったRPG的な成長要素の方にはかなりの比重が置かれている。
そのため、レベリングなどのステータス向上を疎かにして進行していると、敵の攻撃が連続ヒットして一瞬でお陀仏する事も多い。
しっかりとレベリングや装備を鍛え上げて地力を向上する事が大切になっている。
ステータス上昇は一般的なレベルを上げる方法のほか、様々なスキルのレベルを上げる事でも上昇する。
かなり幅広いスキルが用意されており、歩くだけでも上がるスキルカテゴリーがあったりするのは面白い。
多様なスキルカテゴリーがあるため、何かしらの行動をするだけでみるみるうちにスキルが上昇していき、スキルレベルが上昇する事でステータスも上がり、そうこうしているうちにレベルも上がって更にステータスが上がるという成長テンポの良さは爽快感がある。

なお、ステータスは一般的なRPGで目にする項目が多いが、ルーンファクトリーシリーズ特有なものとして「RP」というものがある。
RPは様々な行動をする場合に必要なもので概念的にはMPに近いものだ。
攻撃をするにも、採掘をするにも、料理をするにも、何をするにもRPを消費する事になる。RPが足りない状態で行動すると、代わりにHPをガリガリ消費してしまうため、マネジメントする必要のある重要な要素だ。
RPは料理を食べたり、入浴したりと回復手段がいくつか用意されているので、枯渇した場合にはそれらを活用する事になるだろう。

まとめとなるが、本作のゲームプレイ部分の面白さは「テンポの良さ」に尽きるだろう。
戦闘や農作業、調理など様々な要素はあるが、それらの作業自体は単純な手続きによって実現している。そのため、進行テンポが良くサクサクと進められる。
そして、作業を行うと面白いようにステータスが上昇していく爽快な成長テンポも心地良い。
この全体的なテンポの良さが止め時を忘れさせてくれる魅力を秘めている。

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豊富な第一次産業第二次産業

第一次産業的な採掘や農業、畜産があり、第二次産業的な武器防具や農具の生産、料理など、牧場物語の系譜らしい戦闘以外の様々な要素も盛り込まれている。

まずは第一次産業的な要素の農業や畜産について書いておこう。
農業ではゲーム内で畑が用意されており、その畑を耕して、種を植えて、水を与える事で作物を育てるのが基本となっている。
畑はゲームの進行と共に増えていくような形となっているのだが、そうはいってもプレイヤーは1人だけであり多くの畑まで手が回らないかも知れない。
そんな時に役に立つのが畜産として飼育できるモンスター達だ。
モンスター達はアイテムをあげる事で仲間にする事が可能で、仲間になったモンスターからはミルクや羊毛などの第一次産業品を定期的に入手できるほか、仲良くなる事で農作業の手伝いをお願いする事が可能になり作業効率が上がるのだ。
また、モンスターとは一緒に冒険をする事も可能で、背中に乗って素早く移動できるようになったり、一緒に戦ってくれたりと心強いお供にもなってくれる。

第一次産業によって手に入れたアイテムは武器や防具、料理などの第二次産業品の生産に役立つ。
武器や防具に関しては生産した後に素材を加える事で強化を行う事も可能となっている。
強化に使用した素材によっては武器/防具に強力な効果が付与されるが、強力な素材は相応のスキルレベルが無ければ扱えない。しかし、そういった素材で強化をしていく事でチートかと疑うような性能を持った武器/防具も生み出せるエンドコンテンツ的な側面がある要素と言って良いだろう。
ただし残念なのは、これらの素材がドロップする場所あるいはモンスターの記載が無い点だろう。
「使いたいけど、どこから素材を調達すれば良いのかわからない」という事が多いのはプレイしていて不便に感じる所だ。これからプレイするという方はネットの力を頼りに素材を集めるのが推奨される。

また、この第二次産業は全体的に「作りたい対象と、それに必要な素材を選択するだけ」であり、やや味気ない体験になってしまっているのは勿体ない。
例えば、料理であれば鍋をかき回す、フライパンでひっくり返すなど、料理をするミニゲームのようなものが差し込まれれば格段にお腹が空く体験になったことだろう。
武器/防具生産にしてもハンマーで叩くようなミニゲームを同様に用意して欲しかった。
もちろん、実装のための工数が増えるだけでなく、生産におけるプレイする作業が増えるためリワードの質も調整が必要になるだろうが、選択してボタンを押すだけではない体験をゲームプレイとして落とし込んで欲しかった所だ。

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広いフィールド

ゲーム内では様々な作業を行っていく事になるが、朝、昼、夜など時間の概念もある。
余りにも遅くに寝るとデメリットが発生してしまうため、熱中し過ぎには注意が必要だ。時計がテッペンを超える前にはベッドに入った方が良いだろう。
本作は3Dのフィールドを探索する事になるためか、時間の流れがシリーズの中では比較的遅く設計されており、時間に追われるような忙しすぎるプレイにはならないハズだ。

3Dのフィールドはリグバースの町がハブとなるような形で四方にエリアが存在し、それらのエリアにはシームレスにアクセスできる。
そのため全体の総面積としては中々の広さがあるフィールドになっており、冒険や探索している雰囲気を感じるには十分だ。
フィールド内にはダンジョンがあるが、ダンジョン内に入る際にはロードが挟まる。
ファストトラベルももちろん可能で、フィールドはそれなりに広いので歩いていく必要が無いならばファストトラベルすると良いだろう。

ハブとして機能する拠点となるリグバースの町では特定のポイントを消費する事で”料理大会”などのイベントを開催する事も可能だ。
どの日付で何のイベントを開催できるかは固定になっているが、ポイントがあればイベントを開催できる。
イベントのリワードも重宝するので積極的に開催していくと攻略に役立つ。

フィールドに点在するダンジョンは階層構造になっており、最下層にボスがいるような構成となっている。
ダンジョン内には謎解きとまでは言わないが、スイッチを入れると扉が開くようなギミックによって先に進めるようになっているものが多い。
しかし、スイッチを入れてもどこの扉が連動して開いたのかがわかりにくいは不親切に感じるポイントだろう。
なお、クリア後にはやり込み用の高難度のダンジョンもあるので、装備が整っていれば挑戦すると良いだろう。

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気になるポイント

ここでは雑多に本作をプレイしていて気になってしまうポイントを書いておこう。

まず、第一次産業的な伐採や採掘をしていて気になるポイントが出て来る。
切り株や岩を砕いたりする事は非常に多いのだが、その近くに何かしらのインタラクト可能なオブジェクトがあると、そちらにフォーカスしてしまう事が度々あるのだ。
結果として壊したいオブジェクトが上手く壊せない状態になりがちで、地味にフラストレーションがある操作感となってしまっている。
それぞれのインタラクションに応じてボタンを別々に割り当てる、斧や鍬といった伐採/採掘を行うためのアイテムを装備中はフォーカス優先度が発生するなどの何かしらの工夫が欲しかった所だ。

次に気になるのはロックオンの仕様だ。
本作のロックオンは敵だけでなく、味方も対象となる仕様となっている。これは味方に回復アイテムを投げつける時などに利用する事を想定したのだと思うが、この仕様の影響で最も利用したいシチュエーションで使いにくい。
本作のロックオンの仕様は距離が近いものを優先してロックオンするような節があり、正面に見えている敵などのオブジェクトをロックオンしようとしたら、真後ろにいる味方をロックオンしてしまうなどの挙動となるのだ。
これではとてもロックオンなど使おうという気持ちにはなれない。
結局、筆者は誤動作が怖くてロックオン機能を戦闘で使おうという気持ちには終始なれなかった。

マイナスという程のものではないが「Seedサークル」というシステムは余り活かし切れていない要素のように思える。
Seedサークルは敵モンスターを一時的に身動きを止めたり、一時的に仲間に出来たりするほか、指名手配されているモンスターを捕獲する時にも使用する。
しかし、身動きを止めたり仲間にするのは必ず成功するわけではないし、そもそも仲間にするつもりならモンスターにアイテムを渡して恒常的な仲間にした方がよっぽど良い。
結局は指名手配されたモンスターを捕獲する時くらいにしか使用せず腐りがちなのは勿体ない。

そして最後に最も気になるポイントを書こう。
それは、たびたびエラー落ちする事だ。
頻発するという訳では無いのだが、感覚として「困るな…」と感じるくらいには発生する。
本作にはオートセーブもあるにはあるが、セーブ間隔が余り細かくないため、エラー落ちした際の再起動ポイントが最後にプレイしていたゲーム内の日付の朝から…なんて事も当たり前だ。
エラー落ちはいけない事だが、ソフトウェアにバグはつきものだ。
可能な限り品質を高めつつ、予期せぬことが起きた場合のセーフティーネットもしっかりと設定した方が良かっただろう。
なお、アップデートが行われているため最新バージョンではいくらかマシになっているハズだ。

 

グラフィック

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少し物足りなさのある映像ディティー

3Dモデルは性能では劣るNintendo Switchとは言え、素晴らしいとまでは言わないがキャラクターの造形は可愛らしくそれなりに良いものになっている。
対して、フィールド(建造物含む)のモデリングやテクスチャやデカールには物足りなさを感じてしまう事だろう。

ロケーションは草原、森林地帯や砂漠地帯、寒冷地、熱帯などバリエーションがあり、雨などの天候の変化もあったりする。
しかし、天井があるハズの空間でも雨が降っていたりと細かい部分には粗さが見受けられる。

リリース当初は場面によってフレームレートが安定しない場合もあったが、アップデートにより動的な可変解像度に対応した。
可変解像度はNintendo Switch向けタイトルにおいて珍しいものではないが、本作の場合には設定にてユーザーが任意にON/OFFすることができるようになっている。
動的解像度をユーザーに委任させるケースはレアだ。

 

サウンド

BGMに関しては少し物足りなさを感じる。
特に耳に残るような印象的なフレーズは余り感じられないかも知れない。
しかし、単純接触効果によって記憶に残ると言う事は十分にあるだろう。

SE関連では一部の靴を装備すると足音が変化する場合もある点は面白い。

本作には声優のボイスコメントも参照する事が可能だ。
登場キャラクター全員分のコメントが寄せられており、声優ファンには非常に嬉しい要素だろう。

 

総評

ルーンファクトリー5はルーンファクトリーシリーズお馴染みの農業、畜産、工業、戦闘、恋愛など、1つ1つは荒々しい部分はありつつも広く浅い欲張りな作りが特徴的だ。
それでいてそれらを久しぶりの全面3Dで制作しきっているのは気合が感じられる。

荒々しさや粗さも気になるが、やり込むには十分な物量があるのは魅力的だ。
ただし、アップデートによって修正があるとは言え、たびたび発生するエラー落ちとそれによってそれまでの作業が吹き飛ばされてしまったのは困ったものだ。

 

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