【レビュー】プリンセスピーチ Showtime!

ゲーム入門の幕開け

プリンセスピーチ Showtime!(以下、PPS)はDSにて販売されたスーパープリンセスピーチ以来となるピーチ姫主役のタイトルだ。
マリオシリーズでは新作や映画作品の展開もありキャラクター性に関するモダンなアップデートが徐々に行われてきてはいたものの、ピーチ姫に関してはメイン格のキャラクターの割にはそこまで掘り下げされていない立場であった。
それが今回は主役として登場するという事でどのような表現が行われるのかが1つの楽しみであった。
また、本作は雰囲気からしてもプレティーン辺りまでの「ゲームにこれから慣れ親しんでいく人々」をメインターゲットにしているように感じられるため、その層に向けてどのようなゲームの構造になっているのかにも注目していた。

今回はPPSのレビューを行いたい。

 

プリンセスピーチ Showtime! -Switch

プリンセスピーチ Showtime! -Switch

  • 発売日:2024/3/22
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

ゲームプレイにフォーカスさせやすい演出を扱える舞台劇を採用している

キラメキ劇場へと公演を見に来たキノコ王国のピーチ姫と側近のキノピオ達だったが、グレープ劇団という組織によって劇場が乗っ取られてしまう。
劇場で出会ったステラというキャラクターと一緒に劇場を取り戻すために奮闘するのが大まかなストーリーとなっている。

「舞台劇」をテーマにしているため、舞台劇のように演出されながら進行していくが、
これはゲームプレイとのシナジーを考慮した舞台装置だ。
舞台劇と言うシチュエーションによってスポットライトや小道具を違和感なく活用しやすく、それによってプレイヤーに注目させるべき内容をフォーカスさせるディレクションが作りやすい構造になっているのである。
特に本作が強く想定したターゲット層であるゲーム初心者にとっては情報を絞って提供する事で混乱を防ぎやすくなり非常に親切なセッティングとなる。
ストーリー中心ではなく、ゲームプレイを中心に考える任天堂であるからこその発想で「舞台劇」というシチュエーションが構築されたのではないかと考えられる。

ストーリーの演出として印象的なのは可愛くも積極的に行動するピーチだ。
従来からもテニスやゴルフなどアクティブな面は出ていたがストーリーの付随するものではなかった。
本作ではよりピーチが能動的に行動している姿が感じられるものになっている。
まだ、舞台劇を活用して様々な姿へと変化するピーチも魅力的だ。
フェイシャルなどもしっかりと作られており非常に可愛らしい。
変身アニメーションはさながら魔法少女アニメのような雰囲気でもあり、ターゲット層からしてもマッチしているものに仕上がっていると言っても良いだろう。

ストーリーという側面だけには留まらないが、気になる問題点も指摘しておきたい。
それはリプレイ性に関する部分だ。
各種ステージでは舞台劇のような話が展開されるのだが、その話が全くスキップできずユーザーがペーシングを握れないのである。
これは「ボタン連打によって内容を全く把握しないままに進まないように」という配慮かも知れないが、コンプリート要素目的で何度も挑戦したり、ゲームプレイ部分を繰り返し楽しんだりする事を考慮するならスキップができて良かったように思える。
初回はスキップ不可だが、次回以降にはスキップ可能になると言った施策が欲しい所だ。
「内容を把握できないまま進まないように」という配慮の可能性を指摘はしたが、これに関しても配慮は行き届いていないように思える。
何故なら本作はセリフの読み上げがなく、テキストを読む必要があるためだ。
本作がターゲットにしているユーザーを考慮すると「漢字が読めない」どころか「ひらがながパッと読めない」という可能性も考慮されるべきである。
マリオシリーズではキャラクターが日本語をボイスとして喋る事は稀な事であり二の足を踏んだのかも知れないがターゲット層に対してマッチする方法をもっと大胆に採用しても良かったのではないだろうか。

 

システム

色々なゲームの楽しさの基礎が詰め込まれている

PPSは舞台劇の配役として様々なピーチに変身してそれぞれモチーフになっているゲームを楽しめるテーマパークのようなゲーム内容となっている。
基本的にはゲーム初級者向けであり、活用するボタンの数が少なくなるようにデザインして敷居を下げるように作られている。

しかし、子供騙しのようなゲームにはなっていない。
ステージによって中心となるゲームプレイが異なり、ピーチが剣士や忍者、パティシエ、探偵などに変身して、変身したものに応じた操作や攻略になる。
例えば、バトルアクションが中心となるようなステージでは猶予フレームは広いがジャスト回避などの仕組みが導入されており、成功すればスロー演出が行われてアクションのフィードバックとして手応えがしっかりとあるような作りにしている。
それ以外でも簡易なステルスアクションによるメリハリあるゲームプレイ、ちょっとしたパズルを解くようなゲームプレイ、ワイヤーアクションのゲームプレイになるなど、様々なゲームの楽しさとなる土台がしっかりと用意されている。
そのため、本作をゲームの楽しさを知るきっかけ、そして自分の好きなゲームプレイを知るきっかけともなり得るだろう。

ゲームプレイのパートにおいて気になる事があるとすれば操作説明がないままに唐突に操作パートに移行してしまう事だろう。
新しいシチュエーションになったかと思うといきなり放り出されて強制横スクロールアクションが始まるなど、初心では困惑どころかパニックになってしまいかねない。
いきなり知らないアクションパートが始まっても構わないが、それに見合ったチュートリアルに相当する導入をもっとしっかり作った方が良いだろう。

 

グラフィック

様々なシチュエーションを成立させる舞台劇というシチュエーション

PPSは舞台劇となっているため様々なオブジェクトがそれを思わせる作りである。
天井から紐で吊られているように表現されていたり、板で表現したハリボテであったりするのだ。
これにより暴力性を抑えながらも敵を倒すという演出が両立できるのも良く考えられていると言って良いだろう。
メインターゲットにしているであろう年齢層から考えればご両親がゲームを買い与える事が想定され、そのゲーム内容も安心しやすい演出を採用しているという事だ。
また、「ストーリー」の項でも記載しているが変身シーンは魔法少女的な雰囲気を彷彿とさせるワクワク感もあるだろう。
色々なものに変身できるピーチにはモダンな価値観が投影されている。

キャラクターアニメーションも非常に丁寧に作り込まれている。
ピーチがカーブを走った際には重心移動が感じられるような体の傾きも表現されていたり、階段の手すりを滑るなど細かなアクションが散りばめられている。
操作ボタンを押すだけの簡単なアクションが基本ではあるが、連続攻撃中に振り向き攻撃で通常とは異なる振り向き専用の技に派生したり、変身したものに応じて走行やジャンプのモーションや性能が変わるなど見た目でも手応えがしっかりと感じられるように作られている。

 

サウンド

BGMは変身した役にマッチしたものがしっかりと用意されている。
特に軽快な「アサシン・ディスコ」や西部劇を感じさせる「荒野の大勝負」、怪盗らしいジャズ「さらばだ!華麗なる脱出」など印象的だ。
これらのBGMは作中でもいつでも聴くことが可能なサントラ機能も用意されている。

 

総評

プリンセスピーチ Showtime!はゲーム初心者に様々なゲーム体験とゲームの面白さのキモが内包されたビデオゲームの入門書の1本だ。
プレティーン辺りまでのゲーム初心者の事情にマッチするための機能として舞台劇と言うシチュエーションを意図的に採用しているのは素晴らしい。

リプレイの機能性に問題を抱えているものの、様々な種類のゲームプレイが内包されており、なおかつ面白さのキモとなる部分が作られているため自分がどういったゲームをプレイしたいのかを知るための入門編ともなるだろう。

 

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