【レビュー】ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…(HD-2D)

そして伝説がはじまった…

ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…(HD-2D)(以下、ドラクエ3)はドラゴンクエストシリーズのHD-2D企画の最初の1作目だ。
オリジナルはファミリーコンピュータにて1988年に発売され、社会現象にまでなった絶大な人気から数多くのリメイクや移植がされており、ドラゴンクエストシリーズと言えばの筆頭として名前が挙がるレベルのタイトルだ。

筆者はと言うと後追いではあるもののプレイはしていたのだが、当時はファイナルファンタジーの方が好みであったため人気である事は認識していたものの正直に言ってピンと来ていなかった。
初めてハマったと言えるドラクエにしてもドラゴンクエスト モンスターズ テリーのワンダーランドからでありシリーズからすると傍流だ。
配信者がプレイしている所は観る事はあるものの、筆者自身がプレイしたのは小さい頃であるため半分初見にも近い状態である事は留意してレビューは観て頂きたい。

 

ドラゴンクエストIII そして伝説へ…- Switch

ドラゴンクエストIII そして伝説へ…- Switch

  • 発売日:2024/11/14
  • メディア:Video Game
ドラゴンクエストIII そして伝説へ…- PS5

ドラゴンクエストIII そして伝説へ…- PS5

  • 発売日:2024/11/14
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

父の足跡を追う冒険

オルテガが戦いの末に亡くなったと言い、主人公はその後を継いで魔王バラモスとの戦いの冒険へと旅立つ事になるのが冒頭である。
主人公は各国を巡りバラモス討伐のために転々とするが、各国の王を筆頭とする名士から頼みごとをされながら強くなっていく。
ドラクエ3の世界地図は現実世界をモチーフとなっており、エジプトのある場所では砂漠地帯とピラミッドがあるなど世界各地の疑似的な冒険にもなっているのが印象的である。

中盤になると一気に行動可能範囲が広くなるが、広くなりすぎて進め方がわかりにくくなってしまう。
進めにくい理由としては色々な場所に行ける割には「A地点に行くために先にB地点に行く必要がある」ような実質的にリニアに近い作りになってしまっているためであり、どこへ行っても進むようになっていればまだ良かったかも知れない。
リメイク版である本作ではクエストマーカーによって次に行くべき場所がマップ上で示されはするのだが、それでも詳しい順序まではわからないためある程度は手探りにはなってしまう。

ドラクエ3の特徴としてはより原典であるTRPG的な文脈に近い作風になっている点だろう。
シリーズの多くは予め決められた主人公や仲間達と冒険をするようになっているが、本作では仲間を自身で作って一緒に旅をしていく。
また、質の高いリメイクとして有名なSFC版から導入された「性格」によってよりプレイヤーの特徴を投影しやすいものとなっている点においてもそういった側面だと言えるだろう。

リメイクである本作はドラゴンクエスト11を踏襲したシーンから始まったり、容量不足ゆえに淡白で描写不足だった会話にも追加セリフで補われたりするなど細かな部分の描写の補完が増えている。
中でも父オルテガに関しての描写が大幅な強化がされている。
外から垣間見える偉大な戦士としてではなく、不器用な父としての側面は家庭ではなく仕事中心であった父親像が描かれているのだ。
物語全体としても純粋な主人公達の冒険と言うよりも父の足跡を追うような内容となっている。
少し古風な描き方ではあるが、この不器用な男性像に対して大人になって改めてプレイして共感する人も多いのかも知れない。
更に本作は後続するドラゴンクエストⅠ&ⅡのHD-2Dに続くことが前提の作りとなっている事から、それを示唆する会話なども追加されている。

リメイクに当たり追加された機能「おもいで」という要素も記載したい。
こちらはNPCとの会話自体を任意に記録できる機能となっている。
この時期の作品はNPCとの会話から物語進行や隠し要素に関してのヒントを聴くことが攻略へと繋がる手段であったが、色々なNPCとの会話を覚えきるのは難しい。
もちろんNPCから得た情報を全てゲームのマップ上に反映させられればモダンで便利ではあるのだが、それでは本作の発売された当時の遊びの意図と変化してしまう。
この”おもいで”という機能ではあえて便利にし過ぎずに、NPCとの会話を覚えられていつでも読み返せるようにする事で一定の利便性と一定の能動的な探索を確保した仕組みになっているのは良い折衷案だろう。

Ⅲ本来の驚きが享受する事が難しい

古い作品であるため既知の方も多いかも知れないのだが、ここでは物語的なネタバレとなる内容を記載する。
日本ゲーム史の古典JPRGとしても有名であるため、どれほど現存するのかわからないが内容を知りたくないという方は次の画像の所まで読み飛ばす事をオススメする。

ドラクエ3は前半戦ではバラモス討伐を目的として行動するが、後半戦では真の黒幕ゾーマが登場する事によってプレイヤーに驚きを与えるような構成になっている。
更に後半戦の舞台はドラゴンクエストⅠ・Ⅱで登場したアレフガルドへと移り変わり、物語的な内容もドラゴンクエストⅠをなぞるような冒険になっているため、ドラゴンクエストプレイヤーを感動させたことは想像に難くない。

つまり、ドラゴンクエストⅢは「ドラゴンクエストⅠ・Ⅱという文脈がありき」の驚きだという事である。
ドラゴンクエストⅠ・Ⅱのような当初の大目標を達成する事でクリアとなる”お約束”を破った事が当時としては大胆な構成であり、更にはドラゴンクエストⅠ・Ⅱの舞台であるアレフガルドという大地に降り立ち「実は物語が繋がっていた」「どうやらⅠの過去のようだ」といった驚きと喜びの物語になっていたのだ。

しかし、本リメイクは時系列順となるⅢからリリースされているため、初見プレイヤーにはそういった文脈が適用し難い。
エンディングにて示される「そして伝説がはじまった」という文言にしても、完全初見でロト3部作を本作からプレイしている人にとっては意味不明である。
時間軸としてドラクエⅢよりも未来であるⅠ・Ⅱをプレイ済みであるから「伝説が始まった」という文言が成立するのであって、未プレイユーザーからすれば「これから伝説が始まる」という状態であるため単語選びとしては適切ではない事になってしまうのだ。
それどころか今後に発売されるⅠ&Ⅱのリメイクにしても不安である。
何故ならここで述べている通りドラクエ3自体がⅠ&Ⅱをプレイしているユーザーに驚いて貰える作りにしているため、逆説的にⅠ&Ⅱは本作よりも驚きが少ない構成という事でもあるためだ。
それ故に消化不良に感じる作りにならないか気にかかるところだが、本作の評価自体とは直接関わらないためここでは考慮するべき内容ではないだろう。

これは本当に必要だったのか

本作では性別の選択が「ルックスA/B」という形に変化した事で、ジェンダー配慮を行った点が賛否を含めた議論を呼んだことも記憶にあるかも知れない。
しかし、実際にゲームをプレイすれば冒頭の「ルックスA/B」が変化したのみであり、NPCに話しかければ「男性/女性」として扱われていたり、装備にしても男性専用・女性専用になっていたりと対応が徹底しきれていない。
この程度の変化であれば「ルックスA/B」というごく表面的な対応も本当に必要だったのかも疑わしい限りである。
なぜ内容自体には手を入れず表面的な変化だけでOKとGOが出たのか、そしてジェンダー問題の本質とはその程度の考えで良いのだろうか。
ジェンダー対応に対しての是非はともかく、その対応内容は首をかしげるばかりである。

 

システム

お馴染みのターン制コマンド選択式バトル

ドラクエ3の戦闘はランダムエンカウント型のターン制コマンド選択式バトルだ。
基本的にレベルを上げて強力な攻撃手段で戦うという現代からすれば非常にプリミティブなものであり、物語に付随した冒険のフレーバーとしての側面が強い。
つまりは戦闘単品に駆け引きと言った面白さを生み出す要素は余りないため飽きは早めに到来してしまう事になる。
ただし、容量の少ない時代でもあったためクリアまでの時間は20~30時間程度である事から飽き切ってしまう前にはゴールできるボリュームである事が幸いだと言って良いだろう。
難易度にしてもパーティー構成によっても異なるところだが、筆者がプレイした限りでは全体を通して低い印象だ。
基本的にはメンバーに命令して行動させる必要があるようなケースは数える程度であり「ガンガンいこうぜ」「いのちだいじに」といった行動傾向だけを決めるオートに近い形での戦闘で事足りる。
ただし、オート時にはアイテムの使用可否と言ったモダンな設定項目がないため、キャラクターの持ち物は注意しておいた方が良いだろう。
なお、難易度設定で最も低い難易度では倒されない状態になり、実質的に無敵になるためストーリーだけを体験したいような人向けの要素も用意されている。

戦闘においてもいくらかの変更がなされているものの、全体的にバランス調整が甘く感じられてしまうのは気になるところだ。
確かに原作は古い作品であるためバランス面において問題があるケースはあるだろう。
そこに手を入れたにも関わらずバランスが悪いのは疑問である。
特に本作のようなターン制バトルは再現性が非常に高いため、バランスの良し悪しは比較的簡単に把握できるジャンルでもある。
それが野放しになっているのはどういった開発状況なのか疑問だ。
以下にいくらかの具体例を記載する。

まず本作では敵が連続攻撃を行う事が多くなっている。
これにより単純に被ダメージなどが上がったり、行動不能系の状態異常を扱う敵の厄介さが上昇したりしているが、それ以上に「デバフ効果がすぐに効果が切れてしまう」のが調整不足感を強く感じてしまうポイントだ。
これは恐らく解除までの最短経過数がターンではなく、行動回数をベースに計算されているためではないかと思われる。
そのため、例えばルカニマホトーンなどの効果が次のターンには解除されてしまう事が少なくないのだ。
もちろん、それに見合うだけのデバフ効果量なのであればいいのだが当然ながらそのような事もなく、特にマホトーンのような呪文は必中ではなく何度かに一度だけ当てられるような呪文である。
数ターンに一度命中したのに1ターンで解除される…デバフを行った直後に解除されてしまうようでは余りにも効率が悪い。
これではとてもじゃないがデバフを使う気持ちになれないのが道理だろう。

全体を通して敵との純粋な戦闘よりも確率即死呪文を連発されるだけの方が苦戦するような運ゲー的な戦闘が最もプレイしていて不快感が強い。
対策装備にしても即死確率を低減させるだけで根本の対策とはなり難い。
これらは当時の容量が少ない中でいかに長く遊んでもらうかと言う苦しい懐事情から生まれた理不尽要素の1つと考えられるが、完全な運でしかなくプレイヤー側の過失は全くないにも関わらず即死するのは理不尽でしかない。
何よりも「完全対策不可」という事は「同じ状況が再び訪れてもどうしようもない」という事でもある。
現代でもこのバランスであるべきだったのかは疑問がある。

HD-2D版では戦闘速度を3段階から変更可能だが、根本的に戦闘時の演出の間が長くテンポが悪いため最速設定にする事でようやく現代的なレベルである。
前述の通り戦闘自体には面白い要素がないことから、戦闘自体はもっとサクッとスピーディーにできるようにして欲しい所だ。

ここで取り上げた調整不足に思えるポイントはどれもこれもが普通にプレイしていれば当たり前のように気が付くことが可能なレベルのものばかりであり、なおかつシステムの大幅な修正も必要ないパラメーター調整だけで対応可能なものがなぜ変更されないままになってしまっているのだろうか。

一緒に旅する仲間を作れる

ドラクエ3の特徴であり、楽しみの1つでもあるキャラクタークリエイトは語らずにはいられない要素だ。
このキャラクタークリエイトは道中でアンロックされるのではなく、最初の街で行う事が出来るようになっており、本作のメインコンテンツとしている事が伺える。
作成するキャラクターは名前や職業を選択する事が可能で、作成したキャラクターはパーティーメンバーとして最大3人まで編成する事ができる(主人公を含めた4人パーティー)。
HD-2D版である本作では更に仲間を作成する際に見た目をいくらかのパターンから選べるようになった。
髪の色やボイスも含めて変更が可能であり、特定の場所まで行けば名前も含めて後から変更する事でもできる。
職業毎にレベルアップで上昇しやすいステータスや習得できる特技・呪文などが異なるため、基本的にはパーティー全体のバランスを考慮して職業選択をして編成するのがベターとなる。

更に特定の場所まで行く事ができれば「転職」が行えるようになる。
転職する事で前職の特技・呪文などを覚えたまま別の職業になる事ができるうえ、ステータスを一定量だけ持ち越したままレベル1に戻るため強力なキャラクターにさせやすい要素となっている。
自分好みのステータス・特技・呪文構成のキャラクターを作り上げていくのは楽しさがあるハズだ。
ただし、勇者である主人公は転職が行えない点は注意が必要だ。

戦闘自体はお披露目会場の域を出ないものであるため余り盛り上がる瞬間は少ないが、戦闘前の要素となるキャラクタービルドなどにはプレイヤーの個性が出る楽しさがある。

縮尺を変える事で世界の広さを補うワールドマップ

古典JRPGに採用率の非常に高い街やダンジョンを結ぶワールドマップ(フィールドマップ)方式となっている。
ワールドマップ方式は特に容量の問題が厳しかった時代において世界の広さを表現するための代替案として広く採用されていた手法である。
街やダンジョンと比較するとワールドマップ上では縮尺が変化する事が特徴的だが、これは例えばそれまで滞在していた街がワールドマップ上では小さく見える事で「実際の移動距離に対して実際以上の距離感を演出するフェイク」として機能していた。
しかし、様々な技術的制約が解決したことで代替案を採用する必然性と必要性が少なくなり、正攻法で世界の広さを表現できるオープンワールドが一般化した2000年代以降には徐々に衰退していった表現手法でもある。

従来では目的地に向かうまでのワールドマップやダンジョンといった道中を踏破する必要があるためHPやMP、またそれらを回復するためのアイテムをマネージメントする必要があった。
つまり、目的地に向かう⇒枯渇したリソースを回復しに町に戻る⇒再び目的地に向かう事に挑戦する…というゲームサイクルになるようにしているのである。
この設計思想に関しても当時の容量的制約の中でボリュームを生み出す手法として採用された側面はあるだろう。
しかし、HD-2D版である本作ではレベルアップによってHPやMPが全回復するようになっている。
これによってサクサクと進めやすくなった一方で、ダンジョン攻略におけるリソース管理という要素は非常に薄くなった。
そのため、前述したような徐々に探索範囲が広がっていくゲームプレイサイクルにはなっていない。
とは言え、このデザインをそのまま採用した場合には現代人向けの感覚では冗長に感じられる要素になったハズである。
従来のデザインは宿屋のありがたさとハードな冒険感が演出されていたため、確かにそういった側面は大きく減退したがレガシー故のストレスも減退できている。

フィールドなどでアクセスできる要素は基本的には親切になっている部分は多いがそれでも不便な部分は少なくない。
特に店で大量に何かを売買しようとしても1つ1つ選択する必要があるなど、複数・一括選択に類する要素がまるでないのだ。
これがなくなってしまう事で「原作らしさ」が大きく減衰するのであれば仕方がないと納得できただろうが、これに関しては全くそのようには感じられない。

 

新要素

いくらかの新要素もある

ここではリメイクされたHD-2D版の未説明のいくらかの新要素について記載する。
オートセーブやクリア後要素なども追加されているが、こちらはそれ以上に説明する事がないためそれ以外の要素を中心とする。

まず、最も大きな変更点であろう新しい職業「魔物使い」が増えている。
非常に汎用性が高いうえに、実戦的にも強力であるため追加要素に相応しい職業だ。
特に序盤では簡易なヒーラーとして、中盤頃には単体・全体共に火力を出しやすいアタッカーやデバフ要因のサポーターとして機能するため様々なパーティーで重宝する存在としてデザインされているように感じられる。

魔物使いの登場にあたって「はぐれモンスター」というものも登場している。
はぐれモンスターはフィールド上などにシンボルで存在しているモンスターなのだが、条件が整えば話しかけて捕まえる事が出来る。
捕まえるにはモンスターの特性に応じた特技やアイテムを使用しなくては逃げられてしまうのだが、新職業である魔物使いがパーティーにいれば何もせずに捕まえる事が可能と新要素に関する利便性には大きな差がある。
このはぐれモンスターは捕まえた数に応じて魔物使いが強力な特技を習得するうえ、使用する特技自体も強力になる特典もあり、それが魔物使いが強い所以ともなっている。

更には捕まえたモンスターを利用して行う「モンスターバトルロード」というものも登場している。
コチラは簡単に記載するとモンスターだけで戦うメンバーを編成して勝ち抜き戦を行うようなものになっている。
「モンスターを連れ歩いて成長させる」などのやり込めるような仕組みが全くないため、捕まえたモンスターを出場させるだけといっても過言ではない構造である。
また、この要素が登場した関係上、モンスター闘技場が廃止となっている。
なお、廃止となっているのはそれ以外にもあり、SFC版にて追加された「すごろく場」も廃止となっている。

 

グラフィック

HD-2Dとしての魅力かは疑問だが美しく仕上がっている

HD-2Dという事もあり、ドラクエ3を2Dドットと3Dポリゴンの融合によって世界を表現しているのが特徴的だ。
街などには鳥やネズミなどの生き物おり、プレイヤーが近付くと逃げていくなど細かな描写も描かれて世界の息吹を感じられるものになっている。
街やダンジョンを繋ぐワールドマップも高低差がしっかりと表現されているため、世界のイメージがより具体的に表現されている。
また、オリジナル版と同様だがフィールドにいると昼夜が変化していき、昼夜に応じて街にいるNPCも変化する。
現代では珍しくないものだが、オリジナル版当時は昼夜を表現するゲーム自体がまだまだ稀少な存在であり、この表現により世界の実存感に寄与していた。

また、HD-2D版では完全なトップビューではなく、少し斜めからキャラクターを描写しているため奥行きが確認できるようになっている。
特に塔のような高所では奥の土地が映り込んでおり、世界の繋がりや大きさを感じやすく作られている。
しかし、斜め気味にフィールドを映している関係上、オブジェクトの後ろに何かがあるケースでは視認しにくくなるケースも少なくない。
例えば、壁の裏の通路や柱の裏に部屋の入り口があるようなケースだ。
カメラを回す事もできないためこれらの視認性の悪さはプレイしていて若干のフラストレーションに繋がりやすい。

HD-2Dという事で全体が美しいビジュアルになっているが、「HD-2Dらしさ」のようなものがあるのかは疑問である。
キャラクターは2Dドットベースだが、フィールドはバリバリの3Dポリゴンであり、2Dドット的なテクスチャーを用いた3Dポリゴンという形式ですらない。
この組み合わせであれば3D黎明期から存在しており、表現手法としてはそう珍しいものでもない。
この表現手法をHD-2Dとしても良いのであれば、ここ数年だけに絞ったとしても該当する作品がいくらでもあるのだ。
確かに現代の3Dという事でモダンな美麗さはあるが、「HD-2D」という独自の色は余り感じられないのが正直なところである。

戦闘画面も少しだけ変化がある。
戦闘の行動選択時にはキャラクターを背面から映すようになり、実際に戦闘で行動を始めると古来からの一人称視点的なビジュアルになる。
これは比較的現代的な感覚のビジュアルである一方で、古来のドラクエが根差していた「一人称=自分が主人公である=TRPGを源流としたダンジョンクローラー(ウルティマウィザードリィ)的文脈」という一貫した設計思想演出から考えると思惑がズレたところになってしまっているのは気になるところだ。

 

サウンド

本作ではオリジナル版のBGMがオーケストラサウンドとなって収録されている。
ドラクエ3のBGMは名曲も多く、プレイした事のない人でも聴いたことが事がある人も多いのではないだろうか。
筆者の好きなBGMをいくつか紹介したい。

どこか物悲しさのあるワールドマップBGM「冒険の旅」

荘厳なBGMで作中には風のSEと共に流れる「おおぞらをとぶ

激しいイントロからして鳥肌が立つほどのカッコよさのある「勇者の挑戦

なお、この手の作品に多いオリジナル版のBGMに切り替える機能はない。
欲を言えばFC版やSFC版のBGMに切り替えが可能であればより嬉しかった。

リメイクされたHD-2D版である本作ではメインストーリー関連にボイスが追加されているほか、戦闘中も掛け声などを発するようになっている。
これによってオリジナル版から体験が良くなっているかは微妙なところだが、現代人が今から初めて遊ぶのであればモダンな水準なものとして触れやすいだろう。

 

総評

ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…(HD-2D)はそもそも原作が好きであったか、あるいはJRPGの古典を履修するという意志を持ってプレイするつもりがないような現代ゲームの感覚で手に取る場合にはミスマッチとなる可能性は否定できない作品となっている。

現代向けに変化した部分も確かにあるが、全体的に調整が徹底しきれていない印象である。
原作の雰囲気を大切にするために調整しなかったのであろうと想像できるのであれば納得できるが、決してそうは感じられない部分も少ない。

決して悪い作品・品質だとは思わないが、今の時代に相応しい内容になっているのかは疑問がある。

 

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