【レビュー】Death Stranding 2 : On The Beach

死は別れではない

Death Stranding 2 : On The Beach(以下、DS2)はコジマプロダクション開発のDeath Strandingの続編である。
前作は現代で最も影響力があると言っても過言ではないゲームクリエイター小島秀夫氏が新たに立ち上げたスタジオである事に加えて、著名な俳優を多数起用した事でも大きな話題になった作品であった。
その内容はストーリーでもゲームプレイでも前衛的な部分があり、魅力や光るものはありつつも万人が楽しめる内容とは言い難いというのが実態だっただろう。

そういった観点を踏まえて筆者は小島秀夫氏の作品が今後どの方向性に向かうのかが気になっていた。
万人にはわかり難い職人的方向へと先鋭化していくのか、それとももっと大衆がついてこれる配慮をしていくのかという問題である。
これはどちらが良い悪いという問題ではないが、商業的・将来的な側面から言えば後者の方が望ましいのは明白だろう。
どのようなバランスでこのDS2が作られていくのかが気になっていたのである。

 

 

ストーリー

自分と誰かの生と死

本作はデスストランディングという死の世界が現実世界を侵食するような現象が発生した世界を舞台としている。
そのうえ、BTと言われる幽霊のような存在が各地を徘徊している事に加えて、時雨という雨が降るようになり触れたものの時間を加速させる現象も起きている事から、人々が離散して暮らすようになったポストアポカリプス世界になってしまったというイメージを持つと良いだろう。

前作の事件の後、主人公であるサムと赤子ルーは行方をくらまして逃亡生活を送っていた。
サムが活躍した結果、北米ではカイラルネットワークが構築されて一定の安定を得た事からサムが行っていたような人力での配送はなくなり機械化・自動化が進み、かつて一緒に活動した仲間達も散り散りになってしまった。
そこで人力の配達が現在でも必要とされる北米の外の国々に赴くことになる。
その中でルーは記録上、既に廃棄・死亡しているハズである存在である事が明かされる。
それと並行して謎の組織によってルーを失う事になり、サムは絶望しながらも新しい旅路を迎え、ルーに残された謎、そして謎の組織について追っていく事になる。

全体を通してプレイヤーが理解しやすい物語の主軸として一貫して描いているのは前作と同様に「死」である。
特に本作では遺された者がその苦痛と悲しみ、そして絶望に立ち向かう物語として構築しており、そして終活の物語も含んでいる。
非常に身近な題材でありながら、それを実感する体験を伴わない限り余り考えるタイミングがない題材でもある。
そのため、「死を見送る自分」と「死を迎える自分」という2つのいつか来る未来の自分を重ねて観ることができるものになっている。
そのうえ、物語の終着点で今までの旅路の意味を改めて振り返るような内容に帰結しているのは物語として綺麗な構成だと言えるだろう。

またもう少し俯瞰した観点としては、デジタル文明や政治的二極化に伴った現代社会をメタファーとしている。
現代においては生活のほとんど全てをインターネット上で完結可能となった結果、人々が直接的な繋がりを持たず(必要とせず)孤立あるいはクラスターを作って生活する事による人類の緩やかな衰退を描いているが、その世界を肉体によって直接の繋がりをもたらしていくと言ったテーマが垣間見える。
このメッセージ性に関しては小島秀夫氏がメタルギアソリッド2の頃から語っている内容とも共通項があると見て良いだろう。
そして、本作ではそこから更にアメリカの技術によって各国を繋いで渡る事になる、それに対しての疑念も少なからずあるように描かれている。
これはかつての植民地支配の再来とも表裏一体であるためだ。
その他にも人身売買、銃社会、危険物/違法品の密輸、災害、そしてAIによる支配をも部分的あるいは間接的に描いている。

ここまで書くと物語全体がシリアスでエンタメ性が薄いものに感じそうだが、否定は少ししにくいものの決して重苦しい展開や空気感が延々と続いていくようなものにはなっていない。
そもそもストーリーだけ切り取ってみても、前作と比較して物語の主軸となる部分が理解やすい内容になっているのは良いバランスになった部分だと言えるだろう。
前作では序盤の物語展開に説教臭さを覚えたユーザーも少なくないのではと思うし、メッセージ性のあるテーマを抽象的な世界設定を用いて展開しようとする余りに物語の本筋自体も前衛的になってしまった事から「理解できる」という以前に「理解したい」という段階に行けなかったユーザーも少なくなかったであろう事も否めない。
だが、DS2の物語はそういった不満につながりやすい部分のバランスが見直されているのだ。物語本筋の展開自体もプレイヤーにとって焦点化しやすい問題を提示して進行の動機しているため物語として理解しやすく満足感を得やすい面白さを作れている。
そういう作りにしつつも現代の社会課題や普遍的な人間の心理をメタファーとしても描いており、しっかりと玄人向けな部分が散りばめられており物語としてのバランスが整った印象がある。

また、セルフオマージュも前作よりも露骨に仕込んでおりファンがニヤっとできる要素も多い。
何よりも最終章だけはかなりハチャメチャで喜劇的な作りになっているのはプレイしていてもはや驚くプレイヤーもいるだろう。

用語集もあり、細かな設定がわからない、忘れてしまった場合でも親切に

DS2では物語が理解しやすくなっていると前述したが、それはストーリーで登場する用語を確認できるようになった事を挙げても良いだろう。
特に本シリーズはSFというよりも、もはやハイファンタジーかと思うほどに独自の設定および用語で世界が成り立っており、そういったものに苦手な人にとってはそれらが進行を妨げる要素になりかねない。
本質的な解決となるかに関しては疑問があるが、用語集があることで何とか話についていけるようなレベルにはなれる可能性はあるだろう。
また、人によっては何らかの理由によりゲームプレイ再開までのスパンが長くなってしまった事で劇中で登場する用語の意味を忘れてしまう事も容易にあり得る話だろう。
そういった場合にも用語集を確認することでおさらいが可能である。

この用語集では内容によってはストーリー上だけではわからない設定部分も確認できるため、世界を深く知りたい人にとっても重要な情報ソースとなるだろう。

前作をおさらい可能

DS2は続編にあたるため前作の知識がどの程度必要となるのかが気になる人もいるだろう。
本作ではありがたい事に前作のおさらいが用意されている。
これは未プレイのユーザーはもちろん、プレイしたものの忘れてしまったユーザーにとってありがたい。

特に前作は物語として万人が咀嚼して理解できるようなものであったとは言い難かった。
そのため、おさらいとしてテキストで物語を説明していることでより明示的に起きていた出来事が何だったのかが理解しやすく世界観をある程度は把握しやすくなったといって良いだろう。

拠点ではドールマンと会話が可能

一緒に旅をする事になるドールマンには会話が数多く用意されている。
会話内容は物語の進行と共に増えていくのだが、内容はスタックされていくため後から確認する事も可能だ。
ここで見事な配慮もされており、参照するのが進行からずいぶん経ってしまってからの会話の場合には「思い出したんだが」という形で会話を切り出して可能な限り自然な流れで過去の出来事の話題を切り出すようにしている点だ。

 

システム

移動自体を遊びにしつつ、ゲームらしい遊びかなり増えている

DS2は前作DSと同様にフィールドを歩くいて移動すること自体を遊びにした作品である。
基本的なゲームとしては荷物をA地点からB地点へと運ぶ”おつかい”だが、地形には悪路も多く移動するだけで主人公が転倒して配達物を損傷させてしまう恐れがある。
そのため、目の前の移動で転ばないように常に注意を払う必要があり、それがマインドフルネス的なリラックス効果による没頭が得られる事に繋がっている。
バランスの面を前作と比較すればゲームとしての駆け引きが僅かに強まっているが、それでもメインコンセプトたる移動が困難にならないように調整されている。

では、配達が成功するとどうなるかというと、配達先の施設との親密度を上げていく事ができる。
前作と同様に親密度が上昇することで移動や戦闘にて利用できるアイテムがアンロックされる方式になっている。
特に本作では前作と比較してもアンロックされるアイテムの数とバリエーションが豊かで攻略の手段を増やすようなガジェットを入手できるケースも少なくない。
そのため、遊びの幅を増やしてゲームとして楽しみたい場合には積極的に配達を行う事が好ましい。

前作と同様という観点ではオンラインの思想も概ね同様である。
広く薄いオンラインでの繋がりとして、配達の道中では他プレイヤーの残置物が痕跡として残っている。
例えば、誰かが使用した梯子や休憩場所がそのまま利用可能なのだ。
また逆も然りであり、自分が踏破するために使用した梯子などが他プレイヤーに利用される事もある。
利用されると設置したプレイヤーに対して通知されるため、自分の行為が誰かに貢献したことを知ることができる。
そのため、ゲームを通して可能な限り他のプレイヤーも利用しやすい場所に配置したくなる事だろう。知らない他人に対して自然と親切を促すような作りとなっているのである。
ただし、この残置物の共有には前作と同様の制限が設けられており、簡潔な書き方をすれば一度踏破済みのエリアにのみ表示されるようになっている。
この辺りの仕様にはもう少し柔軟性があっても良かったように感じている。
現在の仕様では未知のエリアでは全てのオブジェクトが共有されないが、未知のエリアでも共有されるものとされないものがあって良いのではないだろうか。
例えば、移動を強力にサポートして攻略を簡単にし過ぎてしまう梯子や施設のようなオブジェクトは未知エリアでは共有されず、プレイヤーに注意を促すようなアドバイスの類となる看板系のオブジェクトは未知エリアでも共有されても良いように思うのだ。
筆者の意見が正しいと言うつもりはないが、本作の仕組みはまだまだ途上であるように感じられ、更なる進化がまだ残されているように感じる所である。

前作においては基本的に配達に伴う移動がゲームプレイの中心であったため地味なところが否めなかったが、本作ではよりゲームらしい戦闘要素が増強され大衆が遊びやすいバランスとなっている。
戦闘では様々な特性のある武器が用意されており、単純な銃火器類はもちろん、デコイのように使えるガジェットに加えて、ウルトラマンカプセル怪獣にようにゴースト的なBTを仲間として召喚して戦わせるようなものまであるなど遊びとしてのバリエーションを充実させる意図が感じられる。

とはいえ、ゲーム内容は基本的に最後まで変わらず配達と少量の戦闘で構成されている。
そのためゲームプレイが単調な繰り返しに感じにくいように物語が進んでいけば長距離の配送であったり、特定荷物を背負った状態で施設に侵入する必要を設けたりとフレームワークはそのままにシチュエーションに手を加える事で味変されるように構成されている。
気になる事があるとすればボリュームが増したことからゲームの進行と共に配達の所要距離も配達量も多くなっていく傾向が強い事の弊害である。
徒歩では完遂するのは無理ではないが面倒な事が多くなった印象であり、利便性の高いインフラに頼るケースが増えざるを得ない。
そのため、移動が便利になってしまい苦労する事が少なくなってしまう事から移動自体が作業になりやすく、移動に対しての楽しさを実感しにくくなりやすい環境になってしまっている印象である。

マップの重要性は相変わらずで、装備のカスタマイズ性が向上している

配達を行う前にはマップから経路を選択して踏破しやすいルートを選んでおくとスムーズであるため前作と同様にマップは非常に大切だ。
マップは3Dマップであることから高低差などを詳細に確認可能であるため実践的に頼りになる機能性を有している。

また、主人公の装備に関してはカスタマイズ性が向上しておりゲームらしい楽しさが増強されている。
より戦闘で優位を立てるカスタマイズが行えたり、配達時の重量を低減してくれるようなカスタマイズに調整する事も出来る。
そのため、自身のプレイスタイルに合わせたゲームプレイを反映させやすくなったと言えるだろう。

フィールド上ではリアルタイムに自然災害が起きる

本作で特徴的な要素としては大自然のフィールドが動的に変化をすることがある点だろう。
フィールド上では雨や砂嵐が発生する。
例えばその際に砂嵐などは遠方から迫ってくるのが視認できるほか、雨が降れば河川が氾濫して濁流が押し寄せる様が確認できる。
それ以外にも地震によって落石が発生するなど自然の驚異がより感じられる作りが印象的である。
もちろん移動においても影響があり、砂嵐では敵から視認されにくくなり、河川氾濫では水位も水の勢いも酷くなることから踏破が困難になる。
こういった動的なフィールドの状況変化がゲームプレイにも影響を及ぼすように作られているのはこれからのスタンダードともなり得る仕組みだろう。

 

グラフィック

圧倒的に美しく描画された人物と風景

本作において驚くのはその余りにも美しい雄大な自然の描写である。
前作同様に注力するべきポイントが絞られるような世界設定である事も影響しているのか、フォトリアルゲームとしてのディティールは同世代において頭一つ抜けているといっても決して過言ではない品質である。

唯一、フィールドのグラフィックス関連で気になるところとしては夜空の星々の描かれ方だ。
他の豊かなディティールのものと比較するとハリボテのようで違和感が強い。
描画されている星々には瞬きがないため、まるで黒っぽい画用紙に白の絵の具で飛沫を飛ばしたかのようで生きた星々である雰囲気がないのである。

こだわりが感じられるのはフィールドだけではなく、キャラクターのモデルに対しても同様である。
こちらも注力するべき対象となる3Dモデルの分母自体が限られているシチュエーションであった事から品質を高めやすかったことが考えられる。
品質面の具体的な部分としては3Dモデルやフェイシャルはもちろん、フィールドで配達活動を継続的に続けていることで主人公自体が汚れていったり、あるいは日焼け跡が残ったりするようになっているという細やかな作りで感じられるだろう。
また、前作と比較しても見た目に反映する服装のカスタマイズもいくらか可能になっている。

映像面で気になるところとしては演出スキップが一括で行われないケースがチラホラとある点である。
例えば、先ほど示した日焼けに関してはシャワーを浴びることで解消されるのだが、シャワーを浴びる際にはカットシーンのようなものが挿入される。
その際、「シャワールームに行く」「シャワーを浴びる」という映像が差し挟まれるのだが、スキップしようとすると「シャワールームに行く」のと「シャワーを浴びる」という2つの演出をスキップ操作する必要があり、スキップ操作を2回行う必要が出てくる。
この場合、プレイヤーが演出のスキップ操作をしたい大半のケースはゲームプレイに早く戻りたいからであって「シャワールームに行くのは見たくないが、シャワーシーンを見たいから」ではない。
大きなストレスになる要素ではないものの、この辺りはもう少しその機能が使われる理由を考えて実装しても良かったように感じるところだ。

 

サウンド

前作でも印象的であったインタラクティブミュージック的な使い方が継続されているほか、タイアップした楽曲が前作にも増して更に多く使用されている。
特に名曲「Raindrops Keep Fallin' on My Head」に関してはメインテーマにも近いレベルで使用されている。
また、オリジナル楽曲としては「Story of Rainy」が特に印象に残るのではないだろうか。

ボイスも豊富であり、尚且つ使い方も厚みが感じられる。
主人公サムと同行することになるドールマンは道中で色々と喋ってくれるが、喋っている最中に川に入るなどすると「ゴボゴボゴボ…」と水の中にいるときのボイスに変化するという細かな作りだ。
また、休憩基地としても活用される艦内で目覚めると他のクルーが部屋の外で喋っているのが聴こえたりするなどの日常を感じるような音声面での演出も用意されておりコチラも細かい。

 

総評

Death Stranding 2 : On The Beachは前作を大きく踏襲しながら、より大衆向けのゲームらしい要素もふんだんに盛り込み遊びやすさが整っている。

前作のストーリーは抽象的でお世辞にも万人が満足できるようなものとは言い難い内容だったが、本作では表層のストーリー自体はわかりやすいストーリー構成になっているため深く理解できずともある程度は満足できる内容に落ち着いている。
また、深層には社会風刺的な部分も感じさせるメッセージで構成されているためコアファンも納得のいく水準があるのではないだろうか。

ゲームらしい構成になった事から先鋭的な個性がマイルド傾向になり、それを寂しく思う事もあるだろうがより多くの人々に受け入れて貰ううえでは良い折衷案といって良いだろう。

 

外部記事

PlayStation® Presents『DEATH STRANDING 2』Special Stage!! - YouTube

PlayStation® Presents DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH Special Panel at SXSW | 3.09.2025 - YouTube

前例なき挑戦とこだわりがつまった、兎田ぺこら『デススト2』出演の裏側――コジマプロダクション・カバー担当者対談 | COVERedge

『デス・ストランディング2』小島秀夫監督インタビュー。コロナ禍での苦労、感じた苦悩などあらゆる要素が本作に影響。「国道の復興人気は予想外」で追加した新要素も | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

「DEATH STRANDING 2」の“創造”の現場で見たこと,聞いたこと――小島監督&開発メンバーのインタビューとスタジオツアーレポート

[インタビュー]小島秀夫監督が語る,「DEATH STRANDING 2」の“つながり”に込めたもの。出演俳優陣の魅力や裏話も満載

小島秀夫監督ロングインタビュー 新オフィスを構え第2フェーズに突入したコジマプロダクションが問う"繋がり"の意味とは

小島秀夫監督インタビュー!孤立が深まる状況下で“つながりを問い直す”続編『DEATH STRANDING 2』はどのように構築されていったのか

『DEATH STRANDING 2』小島秀夫監督&制作チームインタビュー:『デススト2』開発秘話が語られる

“人生を物作りに捧げる”小島秀夫監督最新作『デススト2』グループインタビューレポ:コロナ禍を経て進化・深化した繋がりと孤独の新たな旅路 | ガジェット通信 GetNews

【帰ってきた!!】歩荷と背負う『DEATH STRANDING 2』 part1|ゲームさんぽ - YouTube

かわいいやん【01】精神科医が座礁する デス・ストランディング2 - YouTube

小島秀夫氏1万字インタビュー 『デススト2』で伝えたかったこと:日経クロストレンド