【レビュー】ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ

f:id:Sin00Wolf:20200314115109j:plain

命知らず

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(以下、P5S)はアトラスとコーエーテクモゲームスとのコラボレーションによって生まれたタイトルだ。

発表当初は「ペルソナ無双か!?」という印象が強く、いわゆる"お祭りゲー"なのだろうと思っていた。
しかし、その印象は良い意味で裏切られる事となる…。

今回はP5Sのレビューをしていきたい。

 

 

ストーリー

f:id:Sin00Wolf:20200223102433j:plain

完全な続編としてのストーリー

まずP5Sのストーリーは外伝などでは無く「正当な続編である」という事を知って貰わなければならない。
本作はペルソナ5コーエーテクモゲームスとのコラボレーションによって生まれた作品ではあるが、その内容は完全な続編として成り立っているのだ。
そのため、ストーリーや会話はペルソナ5と同様にふんだんに用意されており、ペルソナ5とほとんど同じ形式で会話が行われ、たまに会話中に差し込まれるキャラクターの目をフォーカスした顔のカットインといった演出なども全て使用されている。
メーカー同士のコラボレーションタイトルと言うと一種のお祭りゲームのような様相を想像しがちであるが、本作は紛れもなく続編の立ち位置となっているのだ。

続編となると本作から触れる初心者は問題なくプレイできるのかも気になる所だが、その点は基本的には問題ないと言えるだろう。
本作は前作ペルソナ5から半年後という時間軸で物語が展開される。
しかし、前作の内容が本作で密接に関係する事は無いため、どのような事件が起こっていたのかを知らなくても本作の内容は問題なく楽しむ事が出来るハズだ。
とは言え、主要な人物として登場するモルガナやラヴェンツァと言った特殊な存在が何なのかという説明も無いため疑問符が残ったままにはなるかも知れない。そのため、本作から入るという人は「そういうもの」として受け入れるしか無い部分は少なからずあるだろう。

f:id:Sin00Wolf:20200304173019j:plain

対比がよく描かれたストーリー

では本作のストーリーをもう少し具体的に紐解いていきたい。
P5Sのストーリーのテーマを端的に表現しようとすれば「反逆の負の側面」になるだろう。
前作に当たるペルソナ5では主人公達は「反逆心」によって人を食い物にする「悪い大人」を成敗してきた。
しかし、本作の敵として登場する人物はどれも私利私欲のために悪行を行うような人物ではなく、主人公と同様の「反逆心」を起点にして大衆心理を操り復讐を行っている人物なのだ。
つまり、「主人公達と表裏一体の存在」あるいは「主人公達も一歩間違えばこうなっていた」といった対比になっている構図は「純粋な悪」として表現された前作ペルソナ5の敵よりも厚みある人物設定になっていると言えるだろう。

物語の進行は前作同様にストーリードリブンで物語を進行させる事でゲームが進行していく形だ。
その基本的な流れも前作を踏襲しており、フィールドワークによる調査を行った後に、パレスに相当するジェイルに侵入するステージクリア制となっている。
ステージは日本各地が舞台となっており、主人公達は各地を巡って世直しをしていくのだが、その旅では各地の観光名所や名物、名品に関する説明が「旅をしている感」を演出してくれている。

物語進行は前作同様に主人公達の特定の仲間にフィーチャーした「お当番制」になっていると言って良いだろう。
お当番であっても、お当番が過ぎても各キャラクターの存在感に大きな違いが出る事が無い点は良く出来ているストーリーだ。
しかし、各ステージの敵人物は特定の仲間キャラクター1人と対比するような構図となっているため、根本的にお当番になるステージが用意されていないキャラクターもいるのは少々勿体なく感じる所だ。
仲間全員がフィーチャーされるように1人で仲間キャラクター複数名と対比出来るような敵人物を用意できれば更に良かったのかも知れない。

大きなマイナスでは無いが、会話にオート送りが無いのは面倒に感じる。
本作は会話の大半がボイス付きで再生されるが、会話のオート送りが無いために会話を進行するためにボタンを押す必要がある。
ボイス付きの会話ではセリフとセリフの間も重要であるため、ボタンを押させるのではなくオート送りを是非とも用意して頂きたい。

前作にあったような仲間との親交イベントである「コープ」のようなシステムはないが、本作においてはそれを補うためにキャラクターと関連したサブクエストが用意されている。
サブクエストでのストーリーボリュームは余り無いため、本作での仲間キャラクターの多角的な掘り下げはやや不足している所だろう。

その他の前作と異なる点も記載したい。
前作ではプレイヤーが何かしら行動する事で一日一日が経過し、特定の日付までにステージを攻略する事が必要になっていた。
しかし、本作では物語の進行と日付が完全に同期しているため、プレイヤーが様々な行動を行っても日付が進んでしまうと言う事は無くなっている。
そのため、ゆったりと自由にプレイする事が可能となっている。

f:id:Sin00Wolf:20200321001529p:plain

シンプルなストーリー進行手法

P5Sのストーリー進行はペルソナ5と同様にフィールドワークとジェイル(ダンジョン)パートの2プラトンシーケンスが基本だ。
フィールドワークでは敵の素性を捜査し、ジェイルパートでは敵が出て来るダンジョンを攻略していくような形となる。

フィールドワークやジェイル攻略は1つの大目標に対して、中目標が3、小目標が9といったようなわかりやすい構成が基本となっている。
例えば、ジェイルのボスを倒すためには3つ存在する○○を陥落させる必要があり、○○へ向かうためには警備している3体の××を倒す必要がある…といった具合なのだ。
この基本構造はシンプルな考えの構造なのだが、それをストーリードリブン(一本道)に行わせようとしているためにプレイヤーには非常に冗長なプレイを要求している事がしばしばある。そこがフラストレーションに繋がりやすいポイントなってしまっているのは残念だ。
この理由を端的に言えば「A地点にいって、B地点に行って、C地点に行って…」ととにかく色々な場所にたらい回し状態にされるからだ。
これが「目先の小目標を潰していったら大目標までたどり着いた」という構造にしているのであれば大きく気にならなかった可能性もあるのだが、本作では「大目標に行こうとする⇒行けないので中目標を目指す⇒行けないので小目標を目指す」という行き当たりばったりな構成になっており「たらい回し感」がかなり強くなってしまっているのだ。
このような状況となると、小目標や中目標が「大目標のための障害」としてしか捉えられなくなってしまいがちで、小目標・中目標を達成する事が楽しみに繋がらずモチベーションに水を差す形になっている。
また、たらい回し状態であるが故にストーリーの進行も遅く感じられてしまい、必要以上に時間がかかっている印象を受けてしまう。

このような進行はペルソナ5も同様であったため「前作通り」と言えばそうなのだが、冗長なストーリー部分でプレイ時間が間延びしてしまうのはフラストレーションだ。

f:id:Sin00Wolf:20200328103742j:plain

あらすじの機能を持った「仲間と話す」

アジトに集合して「仲間と話す」を実行すると前作同様に物語の進行状況に合わせてセリフが変化する。
これは”あらすじ”の機能を持っているためだが、キャラクター同士の会話で進行状況を確認できるのは手間のかかった作りと言えるだろう。

f:id:Sin00Wolf:20200222130330j:plain

ショップに相当する通販

ゲーム内ショップの通販では仕入れ先の情報が表示されるなど細かい部分でもこだわりが感じられる。
ゲームシステムとしては無意味な情報だが、このような設定があるだけでも世界観に広がりを持たせることが出来る。

 

システム

f:id:Sin00Wolf:20200224134128j:plain

ペルソナ5 x アクション

P5Sのバトルシステムについて記載していく。
しかし、まずは本作のバトルシステムが独自の路線で組まれているものである事を認識して貰う事が何よりも重要であるように筆者は感じている。
本作は無双シリーズでお馴染みのコーエーテクモゲームスとのコラボレーションタイトルだ。そのため、事前情報においても「ペルソナ無双」などと評される事も多かったように思う。
だが実際には無双シリーズと同じような感覚でプレイをするべきタイトルでは無いのだ。本作は従来のペルソナでも、無双系のゲームでも無い、「ペルソナという作品をアクションゲーム化した作品」になっているのだ。

本作はアクションゲーム(正確にはアクションRPG)だが、ペルソナ5のバトルコマンドとして存在した「スキル」や「ガン」、「総攻撃」など原作を再現した攻撃手段がふんだんに盛り込まれている。
スキルはペルソナによってお馴染みのイラストのカットインと共にカッコよく発動する。発動させるにはコマンドから任意のスキルを選択して発動する事になるが、発動するスキルを選択中は時間が停止するため問題なく使用する事が可能になっている。
しかし、スキル発動に必要なSPは簡単に枯渇し、SPの回復手段も限られるため、スキルをバンバン使っていく事は難しい。
SPはHPの回復手段としても有用であるため、折角用意されているにも関わらず気軽に使用できないのは少々勿体ないように感じる所だ。

戦闘の発生方法も原作同様のシンボルエンカウントで、敵キャラクターにインタラクトする事で周囲に敵が湧き戦闘になる。
そのため、無双系のようなワラワラ感はそこまで無く、無双系アクションを期待していた場合には違和感を覚えるポイントになるだろう。
繰り返しになるが、本作はあくまでも「ペルソナがアクションゲームになった」という表現の方が正しいと言える立ち位置の作品なのだ。

ペルソナ5で登場した魅力的なキャラクター達を自分で操作して楽しめるアクションというだけでもファンならば嬉しいものがあるだろう。
各キャラクターの操作にはコンセプトが設定されており、キャラクター毎に少し異なる戦い方になるようになっている。
ただし、本作は自分の好きなキャラクターを使い続けるようなプレイスタイルを推奨している訳では無く、敵の弱点となる属性を保有したキャラクターを操作するのが基本となっている。
しかし、レベルデザインがイマイチであるのは少々不親切にも感じる所だろう。
敵の弱点をつくことで有利に戦えるようになるメカニクスを用意しているのだが、出て来る敵の弱点属性がまばらであり、誰を使って欲しいのかという意図(デザイン)を感じ取れない。
もう少し「こう遊んで下さいね」というお膳立てをしても良いのでは無いだろうか。

その他、気になる点も少しだけ記載しておきたい。
全体的なカメラワークはデフォルト設定のままでは縦横の回転の速度が遅すぎて背後の敵を対処しにくくアクションにならない。
デフォルト値が何故この速度になっているのか疑問なレベルで、コンフィグからカメラ速度を最速に変更する方が望ましい。

同じボタンに複数機能を載せている事も誤操作に繋がり少々不親切だ。
敵に総攻撃がしたいのにオブジェクトに張り付いてしまったり、奇襲がしたいのにオブジェクトに張り付いてしまったりする事がままある。
この手の誤操作は"慣れ"だけでは対処が難しいため、ボタン割り当てはもう少し検討して欲しかった所だ。

f:id:Sin00Wolf:20200321004633j:plain

システムと相性が悪いボス戦

本作にはペルソナ5と同様にボスが存在しているほか、フィールドには強力な大型の敵も登場する。
しかし、ボス戦などの強力な敵との戦闘はお世辞にも良い完成度とは言い難い。
純粋な無双系アクションでは無いとは言え、無双系アクションを母体とした本作は基本構造が「一対多」を想定しているために強力な1体の敵と緊迫感を持って戦う事に向いていないのだ。

まず、画角の広いカメラワークについて記載したい。
無双系であれば「一対多」を基本とするため、画面内に可能な限り敵を描写する必要がある。そのため、カメラ位置は操作キャラクターから距離・高さ共にやや離れた位置に設定されているのだろう。
しかし、これがボスのような1対1のような状況では、カメラ位置がキャラクターから離れているために相手と自分の距離感が正確に掴みにくく、攻撃するにしても回避するにしても戦いにくい印象を与えてしまうのだ。

次に軽快過ぎる操作性もボス戦にとっては障害となる。
画角の広いカメラでは前述の通り敵との正確な距離感は掴みにくい。そのため、無双系アクションでは攻撃アクションの1つ1つの踏み込み距離が長めに設定され、敵に攻撃が当てやすくしていると思われる。
しかし、ボスのような体力も多く、のけ反りも無い敵の場合には懐に潜りやすくなってしまう。そのことが原因で問題が発生しているのだ。
カメラをボスにロックオンした状態で懐に潜ってしまった場合、操作キャラクターと敵の位置関係の問題でカメラがグルグルと回転してしまい視認性が著しく悪くなってしまう。
また、逆にロックオンしていない場合に懐に入ってしまうと、のけ反りの無い敵に対して踏み込んで攻撃をしてしまうために、敵を通過するような形となり攻撃を当てにくくなってしまう。

見た目以上に存在するヒットボックスも同様だ。
一対多を想定し、正確な距離感を掴みにくいという状況の無双系アクションでは、自分も敵も攻撃が当てやすいように見た目以上の攻撃の当たり判定を有している。
そのため、自分の攻撃は「いつ」「どこまで」近寄れば当てられるのかという正確な距離がわかりにくく、敵の攻撃は「いつ」「どこまで」回避すれば良いのかという正確な距離がわかりにくい。
そして、そのような大雑把な立ち回りしか行えないシステムが基盤になっているにも関わらず、繊細な行動を求められてしまうボス戦は楽しさが感じにくいと言えるだろう。

一対多をベースとしている故のこれらの諸問題の影響からか、本作のボス戦は「向いていない事をやらされている感」が強い。
戦闘の方式やカメラワークをシチュエーションに応じて変化させるような工夫がないため、「餅は餅屋」という言葉がピッタリと当てはまると言わざるを得ない内容だ。

f:id:Sin00Wolf:20200224145856j:plain

合体によるペルソナの誕生ももちろん再現

P5Sではペルソナとペルソナを合成して強くする「ペルソナ合体」も登場する。
登場するペルソナの数もかなり多く「こんなに作ったのか!!」と驚くばかりだ。

ペルソナ全般の仕様は従来のペルソナシリーズと同様で、合体させる事でスキルを継承させたりする事も出来る。

全てのペルソナは戦闘中に召喚してスキルを発動させる事などが可能であるが、スキルのエフェクトは全体的に派手なため、敵が見えないなどの視認性の悪さに繋がっているのはアクションゲームとしては少々残念なポイントではある。

 

グラフィック

f:id:Sin00Wolf:20200222132116j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200222205530j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200224144329j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200229173807j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200304191902j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200308162357j:plain
旅の気分を盛り上げる各地域を再現した街並み

人物のモデリングや前作ペルソナ5でも登場した街並みは流用されているのかそのまま再現されているのは嬉しいポイントだ。
また、前作では行く事のなかった日本各地の街並みも主人公達が旅している事を強く感じさせてくれる興味深い作り込みをしている。

キャラクターモデリングに関しては前作ペルソナ5自体もそうだったが、モデリング自体が精巧と言う訳では無い。
また、ストーリー上の演技にしてもイラストのグラフィックをメインにしており、キャラクターモデルは演技の雰囲気を伝えるに留めている。
他作品で恐縮だが、キャサリン幻影異聞録#FEでは3Dモデルにガッツリと演技をさせており、なぜペルソナシリーズではこのような形式のままでいるのかは不思議な所だ。

画面に表示されるGUIの1つ1つがスタイリッシュな点も継承されている。
視認性やレスポンスを抜群にするでもなく、GUIを風景に溶け込ませている訳でもない。
世界観を演出するようなリッチでスタイリッシュなGUIで統一させている。
この印象的なGUIが健在なのは嬉しい限りだ。

f:id:Sin00Wolf:20200223220245j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200221231349j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200222162444j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200304151015j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200304183946j:plain
f:id:Sin00Wolf:20200226150602j:plain
戦闘中のカットインもバッチリ再現

スキルの発動時に挿入されるキャラクターのカットインもバッチリ再現されている。
こちらも非常にカッコよく、嬉しいポイントだ。

 

サウンド

無双シリーズらしいアレンジがなされたBGMはファンであれば必聴だろう。
それ以外に関しても世界観にマッチした非常にカッコいいジャズな音楽は印象的で思わず音楽と一緒に体動いてしまうだろう。

特にステージ攻略がだいぶ進行した際に流れる「Daredevil」は最高に気分を盛り上げてくれるだろう。

日本各地のショップでのセリフは地方の訛りも表現されていたり、洞窟のような空間ではボイスにリバーブがかかるなど、ボイス関連もしっかりと表現されている。
その他、ゲーム内ショップ画面では待機中ボイスが用意されていたりとボイス自体も充実していると言えるだろう。

 

総評

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズは純粋なペルソナ作品でも無ければ、無双系のようなアクションゲームでも無い、完全な新機軸のアクションRPGだ。
逆に言えば無双系アクションを期待してプレイすると違和感を覚えてしまうかも知れない作品であり、全く別のアクションゲームとしてプレイするべきだろう。

前作にあたるペルソナ5よりも厚みを持ったストーリーは良く出来ており、ペルソナをアクションRPGとして落とし込んだ手法も素晴らしい。
GUIや音楽の素晴らしさが健在である点も最高だ。

しかし、度々登場する強力な敵やボス敵はシステムとの相性が根本的に悪く、フォークでプリンを食べているかのような親和性の悪さを感じずにはいられない。 

 

外部記事

モルガナがコーエーテクモゲームスに潜入してみた!『ペルソナ5 スクランブル』

『ペルソナ5 スクランブル』ならではの音作りとは? 『ペルソナ5S』特別インタビュー《サウンド編》 - 電撃PlayStation

ペルソナ5 スクランブルは続編? スピンオフ?|プロデューサー兼ディレクターにインタビュー【Esquire Japan新シリーズ「ピクセルトーク」】

金田大輔さんの哲学 ―「ペルソナ5スクランブル」ディレクター兼プロデューサーに取材【Esquire Japan新シリーズ「ピクセルトーク」】

「ペルソナ5ストライカーズ」ゲーム内AIの音声にSiri担当者が出演 - ライブドアニュース