【レビュー】LOST EPIC

それは神殺しの騎士たちの物語

LOST EPIC(以下、LE)はインディーシーンで採用例の多いソウルライク x メトロイドヴァニアタイプのARPGだ。
筆者がLEを購入したのはほぼ偶然のようなもので、発売日頃にショップを除いた際にラインナップされていたために購入したという浅い経緯である。

なお、筆者がプレイしたのはパッケージ版が発売されるよりも以前のVersion1.02時点のものであるため何かしら修正や調整が行われている可能性がある点は留意されたい。

 

LOST EPIC -Switch 【初回封入特典】ステッカー 封入

LOST EPIC -Switch 【初回封入特典】ステッカー 封入

  • 発売日:2024/8/8
  • メディア:Video Game
LOST EPIC -PS5 【初回封入特典】ステッカー 封入

LOST EPIC -PS5 【初回封入特典】ステッカー 封入

  • 発売日:2024/8/8
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

物語もダークソウルから大きな影響を受けている

LEの物語の大筋は以下の通りだ。
かつて大戦争ののち、古き神がいなくなり新しき神々によって統治された。
新しき神々に寵愛を受けた神民という存在は栄華を享受していたが、一方でそうではない殲民達は死の淵に立っていた。
その滅びに抗うべく新しき神々を打ち倒す「騎士」という存在が生まれたという。
騎士であるプレイヤーは神域へと赴き、神々を打ち倒すというのが大筋のストーリーとなる。

見た目こそポップな雰囲気はあるが、ストーリーはソウルシリーズからの影響の強いダークファンタジーなものになっている。
サブクエストも用意されており、サブクエストにもちょっとしたストーリーが付随しているが、こちらもやや暗めの内容になっている事が多い。
物語的なテキストはソウルシリーズ同様に最低限度程度になっており、最終盤になると世界の成り立ちに関する会話がガッツリと出てくるが、それ以外は非常に簡素なテキストだけに留めて設定を”匂わせ”する程度に統一している。

物語面で気になる点があるとすればソウルシリーズからの影響が強すぎる事だろう。
セリフの言い回しも、情報の匂わせ方も余りにもソウルシリーズ過ぎるのだ。
絵柄にはポップな雰囲気もあるだけに、もう少しそれを活かしたオリジナリティーがあっても良かったように感じられる。

 

システム

ちょっとしたアバター作成が可能だ

LEでは簡易的なアバターキャラクターの選択が行える。
また、実際にゲームプレイが開始されれば、装備武器の見た目がしっかりと反映されるのはもちろん、見た目にアクセントを付けるアクセサリーも用意されている。
これによって仮面を付けられたりと自分好みの見た目に寄せられるだろう。

爽快さもある軽快なアクションは魅力だ

LEのゲームプレイはメトロイドヴァニアや2Dソウルライクの系譜の作風であるというとイメージしやすいだろう。
横スクロールアクションが基本となっており、スタミナ消費する事で攻撃や回避などが行えるものとなっている。
また、敵にはゲージが設定されており、攻撃する事で溜まっていく。
このゲージが最大まで溜まると大ダメージを与える事が可能になるような仕組みもあるため積極的に攻撃をしていく事を推奨しているのは良い導線だ。

攻撃方法は通常攻撃とシンギと言われるスキルがある。
シンギは最大で5つ設定可能で、一度使用すると再発動までクールタイムが必要となるが、非常に強力なシンギを習得・活用できれば攻略を大きく手助けしてくれるためゲームプレイへの影響力は高いものである。
また、このシンギの一部には敵の大技に対してカウンターのように与える事で大ダメージ与えつつゲージも大きく蓄積できるものがあるほか、回復やバフが行えるものもあり、設定するシンギは色々な役割を持てるようにしておくと良いだろう。

この戦闘の仕組みは全体的に非常に軽快かつ爽快感のあるものに仕上がっている。
しかし、シンギ関連で困った点がいくつかある事も注意しておきたい。
まず大きなものとしてはシンギのクールタイム完了が視覚的にも、あるいはSEによる音でも演出されないのでわかりにくい点だ。
確かにシンギ使用後にはアイコンに再使用を表すゲージが溜まっていくような表現は行われている。
しかし、「完全にクールタイムが終わっているのか、まだ僅かにリキャストが完了していないのか」という微妙な状況が非常にわかりにくい表現になっているのである。
「よし!ここでシンギを出そう!」と思ったはいいものの、実はまだクールタイムが完了していなかったという事が少なくないのである。
ここは光るなり、音が出るなり、もう少し主張があって良かったのではないだろうか。
次にシンギを立て続けに使用する場合に向きを変更しにいくいというのが痒い所に手が届かない時がある。
フィールドでは敵に囲まれるケースも少なくなく、そんな時には前方にシンギを繰り出した後に、後方に別のシンギを…という事がしたくなるのだが、立て続けに発動させる場合には同一方向にしか出せないか、あるいは猶予フレームが短いためか出しにくいようなのだ。
これはもう少し取り回しが良くなるような調整が欲しい所である。

キャラクタービルドが難易度を大きく左右する

LEではキャラクター強化はいくつかの方法で可能だ。

まず、武器・防具の作成と強化である。
敵がドロップした素材を用いて武器を生産したりアップグレードさせることができる。
素材には能力が付与されている場合があり、そのような素材を使って作成すると武器には麻痺などの追加効果が付与できる。
この追加効果はボス敵にも有効に作用であるのは嬉しい調整だ。
そのため積極的に付与させるのが吉だろう。

また、作成した武器には前述したスキルに相当するシンギが設定されている。
設定されているシンギはその武器を装備して一定量使用する事で獲得でき、同一の武器種であれば別の武器に持ち替えても使用できるようになる。
そして、シンギは特定の2種類を融合させて奥義に変化されることができるようになる。

レベルアップ時にはスキルポイントが与えられる。
このスキルポイントを割り振る事でキャラクターの基礎能力値が上昇する。
恩恵のある能力値は使う武器種によっても異なってくるので、どの能力値を上げていくかはある程度は絞っておいた方が良いだろう。

ダンジョンは配色にやや難あり

メトロイドヴァニア的なダンジョン構造で、ギミックなどを攻略する事で踏破したり、ショートカットが開通したりする。
そして、一定のチェックポイントまで到達できればファストトラベルの場所として活用できるようにもなる。
また、終盤になると新しい能力によってフィールドを再探索するような仕組みも設けてあり、限られたリソースでボリュームを出せる工夫も感じられる良い作りである。

ギミックの難易度は理不尽なものはないがダンジョンは配色がやや甘いのは気にになるポイントだ。
例えば、上図を参考にして頂けると少しわかるかも知れないが「上に乗れる判定のある地形なのか」がパッと見た限りで若干わかりにくい。
「ここは上には乗れないただの背景です」と言われても納得してしまうような際どい色使いなのだ。
この辺りはもっと明確にコントラストを付けるなど行ける場所と行けない場所を区切ったデザインが欲しい。

ミニゲームの王様である釣りもある

ダンジョン内の水辺の要所では釣りのミニゲームを遊ぶことも可能だ。
釣りあげた魚はそのサイズがオンライン上でランキングされる。
非常にささやかなミニゲームではあるがまったりと気分転換はできるだろう。

 

グラフィック

鮮やかなビジュアル

LEのビジュアルスタイルは非常に色彩が鮮やかだ。
ダークファンタジーな世界観ではあるものの、多彩な色合いによって世界が表現されている。
ただし、終盤に差し掛かるととあるシステムによって今までに見えなかった世界を知覚して世界を再攻略していくようなフェーズになるのだが、色合いがほとんどなくなってしまう事になりせっかくの鮮やかさがなくなってしまうのは勿体ない。

キャラクターは関節ベースでキビキビと軽快に動作する。
装備している武器も見た目がしっかりと反映されるほか、キャラクターに衣装アイテムを装備させてより個性を付ける事も出来る。
現代で「コレはあって欲しい」という要素はしっかりと用意されている。

 

サウンド

道中に長く聞くことになる「In to The Sanctum」「God Slaying Knights」「Sacred Corridor Ⅰ~Ⅲ」などは特に印象的だ。
収録楽曲はダークファンタジー感のテイストがあるものが多く、荘厳で威圧感のあるものが揃っている。

セリフ自体が根本的にそう多くはないがボイスがしっかりと用意されているほか、環境に応じたエフェクトが音声に乗るなどの細かな配慮もされている。

 

総評

LOST EPICはソウルライク&メトロイドヴァニアの基本形を堅実にゲームにした作品だ。

軽快なアクションと武器や技によって異なる立ち回りを楽しめるうえに、メトロイドヴァニアらしい探索要素もしっかりとあるためゲームプレイ部分の満足感はしっかりと築き上げられている。

ただし、ソウルライクのような仕組みは見受けられるが普通に遊ぶ分には高難易度という程ではないため、そこの達成感を一番に求めている場合には少しミスマッチかも知れない。
また、ポップな見た目や色彩だが、ストーリーはソウルシリーズの影響が強すぎるように感じられ本作固有の個性が薄いのは勿体ない。

 

外部記事

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