【レビュー】百英雄伝 Rising

絆を感じろ

百英雄伝 Risingは幻想水滸伝スタッフによる作品であり、「百英雄伝」の前日譚にあたるような立ち位置の作品である。
JRPGが最も隆盛していた時代に登場した幻想水滸伝の名前は当然ながら知っていたものの、筆者は恥ずかしながらプレイした事がない。

そんな状態の筆者がなぜこのタイトルを買おうと思ったかといえば、幻想水滸伝をプレイしていなかったというコンプレックスもあるが、それよりもやはり購入して貢献したいという気持ちがあったが故である。

 

 

ストーリー

古き良きが詰め込まれた物語

本作は「百英雄伝」に先行してリリースされた前日譚にあたる物語が展開される。

スカベンジャーを生業としている少女CJが宝があると聞きつけて遺跡に向かう所からスタートする。
そして、遺跡の宝を追っていくうちに数多くの奇妙な出来事や策謀があることを知っていく事になる。
この世界では人間以外にも様々な種族が生きており、リザードマンや鳥人間のようなキャラクターも当たり前のように登場する世界観となっている。

物語の展開やセリフ回しや会話テンポや演出はPS時代のRPGのノスタルジーを感じさせるのが特徴的である。
例えば、主人公であるCJは竹を割ったような非常に真っ直ぐな性格で、仲間になるガルーにしてもクールながら仲間想いな一面が感じられる。
セリフの雰囲気にしても少年マンガのような非常に真っ直ぐなものになっており、奇をてらったようなものがない。
これらは今では見なくなってしまった空気感があり、かつてのJRPGが好きなファンを嬉しい気持ちにさせてくれるものだろう。

大量のサブクエス

本作にはサブクエストが豊富に用意されている。
量は多いのだが、しっかりと質も担保されており、長いものではないが1つ1つに住民の物語が設定されている。
このようなサブクエストを完了させていく事でリワードはもちろんだが、最初はよそ者であったCJが町の人々と関係を築いていく姿も確認できるようになっているのだ。

ただし、NPC達はサブクエストのタイミングでしか話しかける事ができない。
常に話しかける事はできないため、その点に関して少し寂しく感じるユーザーもいるかも知れない。

 

システム

軽快で爽快なARPG

百英雄伝 Risingはメトロイドヴァニア型のアクションRPGである。
フィールドは特定のアイテムがないと先に進めないようになっていたり、素材が手に入る。
戦闘では攻撃とジャンプが基本となり、キャラクター毎に異なる攻撃モーションと専用アクションがある。

本作の戦闘を爽快させるのは「リンクアタック」だ。
攻撃ヒット時に仲間キャラクターに切り替えるとハイタッチのようなSE、スロー演出と共に強力な連続攻撃が行える。
実際にリンクアタックを行っているのが上図である。
構造自体はシンプルながら、プレイヤー有利な連続攻撃が、専用の演出と一緒にテンポ良く繰り出され、高揚感を与えてくれるのだ。

探索を楽しませる様々な要素

メインストーリーでは遺跡の探索の他にも町の復興を1つの目標としており、町に活気が出て来ることで徐々に施設にアクセスできるようになっている。
そうする事で物語全体をミニマルに収めながらも、徐々に機能を解禁させていくチュートリアル的側面を与える役割として成立するようにデザインしているのだ。

施設にアクセスできるようになると、装備品をアップグレードしたり、ステータスを永続的にアップすることが出来る料理を作って貰う事が出来る。
そこで必要になるのが素材である。

素材はフィールドでは敵を倒すのはもちろんだが、フィールド内のオブジェクトを破壊する事で入手できる。
入手できる素材は確率でグレードの高いものが手に入り、高品質なものを入手しやすくするようなアクセサリーなども存在する。
これらの素材は道中でポンポン手に入るため、進行テンポの良さを感じさせてくれるものになっている。
なお、素材入手のうち魚に関しては釣りのミニゲームも用意されており遊び心が感じられる。

勿体ない要素

本作は戦闘や探索などなどは基本的に良く出来ているのだが、痒い所に手が届いていない部分は勿体ない。

戦闘を爽快にさせてくれるリンクアタックであるが、それが行えない序盤の戦闘が単調な戦闘になってしまうのは勿体ない。
二人目の操作キャラクターが仲間になってから解禁されるが、それまでの期間に戦闘の楽しさを感じるのはやや難しいのだ。
もう少しリンクアタックが行えるようになるタイミングを早めても良かったように感じられる。

敵にはそれぞれに弱点属性が設定されている。
しかし、余程手軽に属性を切り替えられるシステムでない限りは、この手のゲームでは活かせない要素だ。
わざわざメニューを開いて、弱点属性になる装備に変更して…という行為をアクションゲームに求めるのは難しい。
その上、弱点属性でなくともダメージはそこそこ入るため、意識すること自体がほとんどない状態になってしまっている。
操作キャラクターである魔法使い的ポジションのイーシャに関しては装備した属性に応じて攻撃方法自体に変化があるが、その他の操作キャラクターに関しても類似の変化があれば属性に対しての意識は少し違うものになったかも知れない。

メトロイドヴァニア型の作品である本作では各操作キャラクターが、メインストーリー進行や装備品アップグレードによってキャラクター毎に特性の異なるアクションが増えていく。
それによって踏破できる地形が増えたり、敵への攻撃手段が拡張されるのだが、どのキャラクターがどういった特徴を持ち、どういった行動が行えるようになっているのかが一括で確認することが出来ないのは少し不便だ。
特に時間が経ち過ぎて操作方法を忘れてしまった状況になるとわかりにくい。
一応、表示されるチュートリアルを再確認することはできるのだが、キャラクターの特性などが1つ1つ説明されるものである。
その時点で行えるキャラクターの操作に関して包括的に説明する機能があると親切だったのではないかと思う。

 

グラフィック

シンプルながら美しさのあるビジュアル

百英雄伝 Risingではキャラクターは2Dの関節制御ベースとなっており、背景などは彩度が豊かな美しいビジュアルになっている。
モダンな美しさの中にクラシックな雰囲気のキャラクターを入れる事によって作品の志向性を表現しているのではないかと感じられる。

主人公であるCJはお宝の噂を聞いてやってきたよそ者だが、しばらくすれば自宅を与えられる。
これ自体は嬉しいのだが、室内に入れないのは少し寂しいところだ。
というよりも、本作では1軒として室内に入ることはできない。
せめて自宅の中だけでも見られるようにして生活感をより感じられると嬉しかった。

細かい配慮もされている

ビジュアル面では細かな配慮も見受けられる。
キャラクターがオブジェクトに隠れてもシルエットが映るようになっているのだ。
操作に支障が出にくいようにしっかりと作られている。

 

サウンド

本作で最も印象に残るのは拠点となる町ニューネヴァーのBGMではないだろうか。
ニューネヴァーは発展度と共にBGMに変化があるため、そこも聴きどころになるだろう。

 

総評

百英雄伝 Risingは「遺跡の宝を発掘するかの如く」古き良きテイストを残している作品だ。

クラシックな少年マンガの雰囲気を持ったストーリーやキャラクターは非常に魅力的で、メトロイドヴァニアARPGの部分も良く作られている。
エンドコンテンツが充実している訳ではないが、それでも楽しく遊ぶには十分過ぎる一作になっている。

 

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