
Metal Gear Solid Δ : Snake Eater(以下、MGSΔ)はMetal Gear Solid 3のリメイクに近いリマスター作品だ。
そもそもMetal Gear Solid 3は名作ひしめくシリーズの中でも屈指の傑作と評される事も多い作品であり、それがなんと現代水準の映像水準でリマスターされるという事になったのが本作である。
しかし、ここまでの経緯も何とも複雑であり、シリーズの生みの親である小島秀夫氏とコナミとの間ではお家騒動(同時期にはコナミから多数のクリエイターが退職していた)とも言えるような事態となった事で内外でも様々な事が起きた経緯がある。
特に当時のコナミからはそれ以外でも多くのクリエイターが立て続けに退職しているなど、ファンとしては決して気分の良い状況ではなかったのは確かである。
そうはいってもMetal Gear Solid(以下、MGS)というシリーズが生みの親不在となったという理由でこのままゲーム史の過去の遺産になってしまうには非常に惜しいのも事実である。
それから10年程の時を経て、シリーズの大きなリブートとして打ち出されたのが本作だといって良いだろう。
METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER
- 発売日:2025/8/28
- メディア:Video Game
ストーリー

冷戦の時代、主人公ジャックは亡命した研究者ソコロフをソ連から救出するべく、ネイキッド・スネークというコードネームで潜入する。
しかし、そこでは恩師であり特別な想いと関係を持つザ・ボスが祖国を裏切り敵対している事を知ってしまう。
更に新型の核運用兵器シャゴホッドが開発されている事も判明するが、その矢先にソ連のタカ派軍部ヴォルギン大佐によってソ連の研究所が核攻撃により破壊される。
核攻撃のアメリカの関与が疑われる事になり、アメリカ側の身の潔白を証明する必要に迫られスネーク達はザ・ボスの抹殺を命令される。
世界的核戦争の幕開けを阻止するためにも恩師ザ・ボスの抹殺命令を全うすべく潜入することになる。
本作ではエスピオナージものとして内にも外にも緊迫感のあるシチュエーションで物語が進行する。
まず主人公スネークのグループ自体も存続に関しての危機的な立場に陥っている事に加えて、俯瞰した視点では冷戦下において核兵器が使用されたことに起因する核戦争の様相を避けられない三度目の大戦勃発の危機的状況である。
アメリカにしてもソ連にしてもスネーク達の組織にしても各勢力の利権に関しては相違はあるものの、あらゆる状況が非常に切羽詰まった事態である点では一致しており政治的な理解が薄かったとしても目的・目標が焦点化しやすいため物語的な理解はしやすい作りになっている。
また、小島作品に多く含まれるメッセージ性も共通性を持ちながら描かれている。
ストーリーとしては何を信じて自分の意志で行動するのか、そして争いによる分断ではなく世界を繋げる事を説いているが、これは普遍的なテーマでもある事から比較的多くの人が理解しやすい根源的なテーマでもある。
そのため全体としては読み進めていくうえでの即物的な物語としての満足感がありつつも、読後感あるいは教訓としてのメッセージ性が両立されている見事なバランスで作り上げられているのである。
映画的演出でも知られるシリーズであるが、本作でもカットシーンでの魅せ方は見事である。
3Dモデルなどが一新された本作であるがカットシーンにおけるカメラワーク等の演出面は概ね全て原作そのままの作りであり、今の時代に観ても見応えのある演出は魅力を失っていない。
また、ユニークな試みとしてはカットシーン中の一部シーンにおいて任意に一人称視点に切り替えることを可能にしている点である。
自分の意志と操作によって視点を切り替える事を可能にしているのはインタラクディブなメディアであるからこそ可能な表現だ。


MGSシリーズでは無線での豊富な会話を聴くことも1つの醍醐味となっているが、本作でももちろん健在である。
この無線会話は利用することで攻略のヒントを提示してくれるという機能性はもちろんあるが、物語としての側面においても全体のバランスを整える作用をもたらしている。
無線会話は物語進行だけではなく様々なシチュエーション毎に会話が用意されている。
例えば、何かをしたり、何かを入手できた場合に無線で報告すると専用の会話が聴けるようになっているのだ。
その内容も雑学的なものもあれば、コミカルなものもあり、本作の主人公であるスネークの様々な側面が理解できるようなものになっている。
メインストーリーとしては非常にシリアスな物語が展開されるが、無線ではコミカルな内容である事で全体としてメリハリが効いたものにまとまっている。
シークレットシアター

クリア後には映画のNGカット集のような位置付けのシークレットシアターがアンロックされる。
こちらも非常に有名で人気のある内容であるため知っている人も少なくないだろう。
内容としては本編にて起きた出来事が「もしもこうだったら」のような少しぶっ飛んだものに差し変わっている事が多く、観ていても「そうはならんやろ」と思わずツッコミを入れたくなってしまうようなテイストだ。
これはこれで別のものとして面白く観れるであろうものであるうえ、MGSΔにおいては新規のシークレットシアターも用意されているため、1つの楽しみとしておくと良いだろう。
ただし、新録のシークレットシアター以外は当時のものがそのまま収録される形となっている。
なお、この映像をアンロックするにはゲームクリアだけではなく、本編内で兵士から入手できるフィルムも必要となるため、やり込み要素の1つとして入手していくと良いだろう。
システム

MGSシリーズは敵から見つからないことに主眼を置いたゲームプレイで人気となったステルスアクションの代表的な作品であるが、本作では更に「サバイバル」という要素がゲームとして1つの軸になっている。
スネークには体力とは別にスタミナのゲージが用意されており、このゲージは時間経過と共に減少してしまう。
スタミナが減少すると体力の自然回復力が落ちるほか、銃を構えた際の照準もブレやすくなり戦闘でも悪影響を及ぼしやすいため可能な限りスタミナは高い状態をキープしておくべきである。
ではそのスタミナをどのように回復するのかというと、何らかの食べ物を食べる必要がある。
食事をすることが不可欠なのだが、肝心の食材はフィールドの各地にいる動物やキノコを入手して食べる必要がある作りなのある。
そのため、フィールド上の小さなネズミなども狩った方が良く、結果としてフィールドを良く観察する事にもなり3Dゲームである事が活かされた作りになっている。
また、食材を確保した状態でセーブして実時間がある程度経過すると食材が傷んでしまうという要素も存在している。
これはサバイバルのリアリティでもあるが、当時のPS2ではハード内に時計が標準的に内蔵されたハードでもあったため、そのハード特性を活かしたギミックでもある。
このような要素はそれ自体を目的としたゲームならばまだしも、そうでない場合にはゲームプレイに制約・制限を設けることになるため窮屈な体験に繋がりやすいが、本作ではその辺りもバランスも丁寧に取られており「食事をする必要はあるが、食材を取ること自体に苦戦する」という事はないので足枷のようには感じないハズである。
サバイバルの雰囲気も感じさせつつもストレスになり過ぎないようなバランスに着地させているのは見事である。
シリーズ通しての軸であるステルスアクションはイメージとしては概ね同様で、視界や物音によって敵に見つからないようにしつつ、敵を排除したり、通り抜けることで目的地を目指すことになる。
敵に見つかると増援を呼ばれてしまい、かなり困難な状況になるため可能な限り見つからない事が好ましいバランスである。
そのデザインの中にサバイバルというテーマが沿うように迷彩服やフェイスペイントによるカモフラージュが重要な位置を占めるようになっている。
例えば、緑の迷彩柄であれば森林地帯にて敵の目を欺きやすくなり、グレーの迷彩服ならば建物の敷地内などで効果を発揮しやすいなど、環境に応じた服装の変更がゲームを有利に進めるにあたって非常に大切になっている。
サバイバルという言葉は自然との戦いを想起しやすいものだが、本作では人との戦いをもサバイバルの中に含んでいるのだ。
これらのメカニクスを駆使したゲーム進行はステージクリア型に近く、フィールドを先へ先へと進んでいく事で攻略できるような作りが基本となっている。
一部のパターンで一旦エリアを戻る必要性があるケースもあるが、全体としては一本道的にエリアを突き進めば良いようにデザインされているため攻略において迷ってしまう事態を極力低減させているのが特徴的である。
モダナイズされた本作MGSΔでは従来の操作方法に加えて、新たにニュースタイルというよりモダンなTPS的な操作で遊べるモードも追加されている。
従来ではMGSシリーズを踏襲したトップビューライクな視点が基本だったが、本作ではTPS視点で遊ぶことが出来るようになっている。
もちろん、従来形式で遊ぶことも可能である。
ただし、操作方法がモダンなTPSライクに近くなったとはいえ、移動の小回りの利かなさや発生の遅いローリングなどの操作感、そしてトップビューを前提としたレベルデザインは当時のままのため完全なモダンなゲームとは言い難く、あくまでも「モダンライクなゲームプレイ」に留まっている。
また、この手のゲームでは現代で標準化されているマーキングも存在しないので、現代感覚でプレイすると敵の位置の把握には苦労しやすいかも知れない。

ゲームを進める中で敵から攻撃されるなどしてダメージを受けることは少なくない。
その際に大きなダメージを受けたりすると骨折や火傷などの状態になる事がある。
また、サバイバルとして何かしらの特定の食材を食べた際にも食中毒になる事もある。
こういった場合にはメニュー画面からケガの治療を行うというユニークな仕組みが存在する。
症状に応じた治療をメニュー画面を通して行う必要がある。
これはゲリラの戦場のリアリティーを感じさせてくれる要素である一方で、決して難易度の高いものではないとは言えどプレイを続けていく中で新鮮味が失せていくと少し煩わしい要素ではある。

フィールドでは探索要素として各地に武器が落ちている事があるため、可能な限り色々な場所を探索することでゲームを有利に進めやすくなるように作られている。
また、フィールド上には動物やキノコといった食材になる要素が存在している事を前述しているが、それを更に遊びにしているやり込みの探索要素も用意されている。
フィールド上にはカエルやアヒルのフィギュアのようなものが隠されており、それに対して攻撃を当てることで発見した扱いになる。
なかなか難しい場所に隠されている事も少なくないが、見つけるためのサポートとなる装備もあるのでやり込みたいという人は見つけ出すと良いだろう。

本作ではとあるステージにおいて偉大な狙撃手ジ・エンドとの戦闘が待ち構えている。
筆者は基本的にはゲーム全体の構造をレビューとして書いていき、各ボス戦等はネタバレにも繋がるため記載しない事が多いが、この戦いに関しては体験として書かざるを得ないだろう。
この戦いでは隠れて狙撃してくるジ・エンドを見つけ出して倒す必要があるのだが、対象となるフィールドは3つのエリアにわかれているため、彼がどこに隠れているのかは簡単にはわからない。
相手から撃たれればその射線からジ・エンドの位置は逆算できるが、それ以外にもスコープが太陽光で反射するエフェクト等の細かなヒントによって位置を割り出す事も可能だが、そもそも彼がどのエリアに潜んでいるのかもわからないため接敵するのも非常に大変な相手である。
例え見つけて攻撃が行えても、すぐに別の場所に逃げて隠れてしまい再び振り出しに戻る事になる。
そのため、じっくりと腰を据えた持久戦が要求され、初見であれば30~60分程度を要してもおかしくない戦いなのだ。
しかし、確かに時間はかかるがこの戦いは難易度的に高いものにならないような配慮も徹底されている。
ジ・エンドは麻酔銃を使用してくるため、銃撃されても基本的にはスネークのスタミナが削られるだけに留まる。
そしてこのスタミナはフィールド上の動物等を狩れば即時に回復が可能であるため、実際には余り脅威ではない。
それ以外でも弾薬は比較的近場で簡単に入手できる場所が定められているなど、持久戦というゴリ押しではクリアできない状況のみにプレイヤーの負荷がかかるようにしており、それ以外の部分でプレイヤーがフラストレーションに繋がる事が少なくなるようにデザインされているのだ。
このように時間をかけて一人の相手と対峙して戦い続けるという緊張感あるボスデザインは非常に稀有である。
確かにPvE形式のゲーム、別のゲームを例に出して恐縮だが例えばモンスターハンター等も一体の相手と比較的長く戦うが、本作はそちらと比較してもそもそも接敵が難しかったりとアクション性は余り求められる事はなくゲームプレイの中で静的な時間が多いのは独特である。
初代MGSにおいてもスナイパー・ウルフ戦において狙撃を主体とした対狙撃手との戦闘体験を試みたが、その境地がこのジ・エンド戦なのである。
現代においても本作でしか味わう事ができない戦いだといって良いだろう。
GUY SAVEGE Δ

このモードはゲーム本編内のとある場面で条件を満たせば遊べる要素だが、ゲームクリア後にはタイトルのメニュー画面から遊べるようにもなる。
オリジナル版のものから完全にリメイクされており、リメイクをプラチナゲームズが担当したという。
オリジナル版では本編の技術をそのまま流用してアクションゲーム的なエッセンスを強くいれて作られていたが、MGSΔ版ではジャスト回避でスロー演出が入ったりとアクションゲームとしてのキモとなる部分が取り入れられている。
そうはいってもあくまでも遊びのオマケモードに過ぎないため、これをプレイすることで何かが貰える訳でもなく、出てくる敵を倒すことで操作キャラクターが強くなるような事もないので、楽しさが長続きするようなものではないので過度な期待はしない方が良いだろう。
なお、ほとんど内容は一新されているもののプレイヤーキャラクターの一部モーションや敵には原作の面影があるように作られている。
グラフィック






MGSΔは同世代のビデオゲームと比較しても非常にハイエンドな映像レベルだ。
これは現代のゲームと比べると注力するべきポイントが絞られていた事から、映像を磨き込みやすかった事も影響として考えられる。
カットシーンでのカメラワーク、基本的演出、キャラクターの演技は原作同様であるうえ、フィールドの構造自体も原作そのままとなっているため、ある意味で非常に不思議な作品にもなっているがそれを違和感に感じさせない説得力があるのは原作自体のポテンシャルだと言って良いだろう。
本作で新たに加えられた表現としては「傷の描写」だ。
スネークは戦闘による攻撃によって傷が発生し、クリアまでその傷跡が残る。
裂傷や火傷の痕がスネークの体の様々な場所に刻まれるのだが、それはプレイヤーのゲームプレイの記憶がスネークの体にも残るという事でもある。

本作ではフォトモードも実装されている。
非常にハイエンドなグラフィックスであるためスクリーンショットを撮る際に助かるが、原作がトップビューに近い画角が基本となっていた事で遠方などの風景をこだわる必然性が低かった状況に加えて、密林地帯でのサバイバルが基本となる関係上、写真を撮りたくなるようなランドマーク等にはどうしても欠けるところがある。
そのため、思わずスクリーンショットを撮ってしまうのはカットシーンなどにはなりがちだろう。
サウンド
BGMは基本的には環境音が中心となっており、それはサバイバルである事を強調するため動物や鳥の声、草木の擦れる音、そして敵兵の出す音を主体にゲームを構成している。
本作の楽曲の中で印象的なものを挙げるとすればメインテーマでもある「Snake Eater」は印象的だ。
物語内容と一致するような歌詞は見事で、MGSΔにおいては新録されている。
この楽曲は作中でもとあるシーンで挿入歌として使用されるが、オリジナル版においてはゲームプレイと楽曲が一致するようにデザインされていたものの、本作では僅かにスネークの動作速度が変化した事からその辺りが少し噛み合わなくなってしまっているようである。

原作であるMetal Gear Solid 3においても各種会話は非常に印象深く、演者達が集まって収録した事もあり会話のテンポ感や温度感などが実に見事に成り立っているが、本作ではそれらボイスがほとんどそのまま使用されている。
また、本作では動作環境などのハードウェア的なものに起因する当時と今で異なる部分に関してボイスが新録されているが、それ以外の部分でも新録の無線会話も用意している。
総評
Metal Gear Solid Δ : Snake Eaterは傑作を大きく損ねる事なく傑作のままに現代に再誕させる事に成功している。
操作感やレベルデザインも当時のままであるため確かに現代感覚でプレイすると一部は気になる挙動はあるものの、「そういうゲーム」と受け取れるのであれば体験自体に大きく影を落とすほどではないだろう。
原作準拠となるステルスアクションとサバイバルも丁寧にバランスを取っている事でストレスになり過ぎず手応えを生み出している。
そして何よりもストーリーはシリアスさとコミカルさが両立され物語としての満足感を高めつつ、小島作品にも共通するようなメッセージ性も内包されており、非常に巧みなバランスで成立している。
もちろん、ゲーム内容にも手を加えるような野心的なリメイクとして制作する事も選択肢にはあったであろうが、そうなれば原作の良さをも殺しかねない非常に難しい舵取りになっただろう。
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