星のカービィ スターアライズは星のカービィシリーズの正当作品としては初めてとなるHDグラフィックのカービィだ。
発表当初には「星のカービィ スーパーデラックス」のヘルパー要素や「星のカービィ64」のミックスを彷彿とさせる要素などがあったため、歴代のカービィをこれでもかと言わんばかりに詰め込んだ集大成的な作品になるのでは無いかと期待感が大きかった。
星のカービィと言えば偉大な生みの親である桜井政博さんが、当時のハード的な制約から高難易度化の道を歩んでいたゲーム市場において「初心者でも楽しめるアクションゲーム」を意図して制作されたタイトルだ。
今では桜井さんがディレクションする事こそ無くなったものの、老若男女が遊べるゲームとしての地位は確実に築いたのでは無いだろうか。
では、本作は果たしてどのような作品となったのだろう。
ストーリー
本作のシナリオとしては恒例の(?)宇宙からの侵略者がやってきてプププランドを始めとしたカービィ達の星が危機に陥る所から始まる。
良くも悪くも、「あるようでない」ストーリーだ。
とは言え、ストーリーに登場するキャラクターやステージ、システムは過去作をオマージュしたものが多く採用されているのはシリーズファンはニヤリとできるだろう。
システム
本作…と言うかカービィシリーズ自体が初心者向けの色合いが強いためチュートリアルなどはしっかりと入っている。
しかし、プレイするステージには習得させたボタン操作を意識したようなレベルデザインや敵挙動がある事は皆無であり、後半ステージであっても難易度が高くなるという事がほとんど無い。
「初心者向け」という大義名分を免罪符にコピー能力やヘルパーなどでゴリ押しすれば何とかなってしまう平坦な構成は少々物足りない。
初心者向けとは言えども、初心者が初心者なりに自然とプレイできたと感じさせる工夫は欲しい所だ。
本作では4人で協力して進む事になるのだが、これが何とも画面内をカオスにする。
基本的にどのコピー能力・ヘルパーも強力で、また派手であるため、それが4人もいると流石に自分がどこにいるのか、何をしてるのかがわかりにくいのだ。
では、人数を減らせば…と思われるかも知れないが、ステージには複数名を連れていないと発動しないギミック(その多くは4人必要とされる)が存在するため必然的に複数名を連れざるを得ないのだ(その都度ヘルパーを作ったり消したりすれば良いのだが流石にそれは面倒くさい)。
複数名を連れていく事を強制するのではなく、1人でも攻略できるようにデザインするべきでは無いかと思う。
しかし、友達などとカウチプレイで楽しむ際にはこれくらいカオスであっても(むしろカオスである方が?)盛り上がることだろう。そういう意味では、常に複数名がいる事を要求されるステージ構成などを見るに、全体的に緩くはあるが友達と一緒にプレイする事を想定した作りなのかも知れない。
ステージ内には必ず1つ存在するレインボーピースというものが存在する。
こちらはやり込み要素的な立ち位置だとは思うのだが、集めるとカービィに縁のある人物たちが描いたカービィのイラストが解放される仕組みだ。
とは言え、これらを集める難易度も非常に低いのはやはりバランスに欠ける。
基本的には取得するために必要なコピー能力は近場に用意されているし、「取得しよう」という意志さえあれば簡単に手に入ってしまう。
筆者がプレイする限り、見逃してしまう・取り損ねてしまう可能性を感じたのはせいぜい1つか2つだ(結局取り逃す事は無かった)。
フレンズ能力
本作ではコピー能力とフレンズヘルパーの能力を特定のパターンで組み合わると発生する「フレンズ能力」と言われるものが発生する。
こちらは64版のカービィにて登場したミックスと類似点はあるが、全てのコピー能力の掛け算ではなく、特定の組み合わせで可能なものであるため注意だ(とは言えかなりの量が組み合わせは可能だ)。
フレンズ能力は大まかに2パターンだ。
1つは上図のようなコピー能力の威力強化・性質変化をするもの。
もう1つはコピー能力でフレンズを投げ飛ばす・吹き飛ばすといったタイプのものだ。
操作感などが大きく変わるようなスパイスにはならないが、どれも威力やエフェクトはかなり強化されるため積極的に使うと良いだろう。
フレンズアクション
フレンズアクションは複数名のフレンズヘルパーと協力して発動するアクションだ。
このフレンズアクションを発動させると疑似強制横スクロールアクションになったり、横スクロールシューターとなったりとするのだが、これが非常に楽しい。
正直、このフレンズアクションだけを使うステージが1つ2つ欲しいと思ったほどだ。
特にラスボス戦にてプレイする事になる3Dシューター要素は難易度こそ高くないが、プレイしていて非常に楽しかった(これだけであと数パターン別のものが欲しいくらいだ)。
また、このラスボス戦では過去作をプレイしている人であればピンとくる要素があるのもテンションを盛り上げてくれるだろう。
ミニゲーム
カービィでは恒例であるミニゲームは今作にも存在する。
どれもそう難しい内容ではないが、友達とワイワイ言いながらプレイするには申し分ないだろう。
上記の他にも「格闘王への道」のような「Theアルティメットチョイス」と言われるボスラッシュ的なモードであったり、ヘルパーが主役の「星の○○○○ スターフレンズでGO!」と言ったモードもある。
これらはストーリーと比べれば難易度は高いが、(コンセプト上当然だが)デザインされた難易度とは言えない。
なお、この2つはストーリーをクリアした後に解禁される要素となっている。
グラフィック
グラフィックスがHD化された本作。
記号化された中で表現されたカービィの特徴とも言える可愛らしさは健在だ。
カービィの柔らかそうな質感のアニメーションや緊張感の薄いリアクションなどは可愛らしい。
フィールドも良くできており、過去作の雰囲気を思わせるステージが高いグラフィックによりリファインされているのは懐かしさと新鮮さの両方を感じさせられた。
筆者が特に好きだったのはステージ選択のフィールドだ。
ステージは地域(プププランド)⇒星(ポップスター)⇒宇宙と言った具合にどんどん広い世界からステージを選択していく。
そのため、ポップスターのステージ選択フィールドでは前回のステージであるプププランドを観る事ができるし、宇宙のステージ選択フィールドからはポップスターを観る事が出来る…と言った具合に世界の広がりと繋がりが視覚的に良くわかる。
そのため宇宙にまで出てしまえば「おぉ…こんなところまで来てしまった」と言う気持ちがとても強くなる。
特に宇宙のステージ選択フィールドではワープスターに乗り、ステージが設定された惑星へと向かうことになるのだが、この移動をしているだけでも冒険をしている気持ちになり楽しかった。
サウンド
スターアライズのサウンドはカービィの名に恥じない名曲だ。
また、過去作から引っ張ってきた曲を使用しているステージもあり非常に嬉しい。改めて名曲ばかりだと感じさせる。
条件はやや厳しいが「サウンドルーム」からゲーム内BGMを聴けるのも嬉しいポイントだ。しかしながら、曲名らしいものが表示されない(ナンバリングのみ)であるため、本記事でもそうなのだが人に説明する際には少々困ったものだ。
本作で使用される楽曲はただ曲として素晴らしいと言うだけでは無い。
ステージでは水中に潜った際にこもったようなサウンドとなるインタラクティブな音楽表現手法となっている点もメロディは残しつつも変化を与えており、とても良いアクセントとなっている。
総評
星のカービィ スターアライズはアクションゲームを初めてプレイするにはうってつけのタイトルだ。
可愛らしいキャラクター、素晴らしい音楽は記憶に残るに違いない。
しかし、中級者以上であったり本作のシステムに慣れた頃合いであれば平坦な難易度のステージ構成は少々物足りなさや、繰り返し感を覚えるかも知れない。
シリーズ経験者ならばステージ・音楽・敵などで過去作へのオマージュが多数存在している事は嬉しいポイントに繋がるだろう。
また、アップデートにより特殊なフレンズヘルパー「ドリームフレンズ」がアップデートにより追加される事も期待したいポイントだ。
筆者はとりあえず第一弾として追加されたリック・カイン・クー、マルク、グーイをプレイしたが、どれも過去の登場作品を思わせるアクションが豊富で良かった。
特にマルクは代名詞とも言える”ブラックホール”をSEもほぼそのままに扱えるのは、それだけでも価値がある。
外部参照
幅広い年齢層に愛されるカービィならではのデザイン。『星のカービィ』シリーズで培われてきたUIの重要性【CEDEC 2020】 - ファミ通.com
『カービィ』のUIで大事なのは「可愛らしさ」ではなく「あたたかさ」。『星のカービィ』シリーズを支えるUIデザインの伝統と挑戦の実例【CEDEC2020レポート】
「星のカービィ」UIデザインの伝統は「かわいらしさ」ではなく「あたたかさ」だった――カービィから学ぶ“ゲームとプレイヤーを繋ぐ作り”