【レビュー】モンスターハンター ストーリーズ2 ~破滅の翼~

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その翼は、世界を変える。

モンスターハンター ストーリーズ2(以下、モンハンストーリーズ2)はモンスターハンターシリーズの世界を舞台としたRPG作品である。
前作である初代は3DSにて発売されており、筆者も前作はプレイしたハズなのだが、ストーリー面に関してはほとんど完全に記憶から消えている。
ジャンケン要素のある戦闘システムがイマイチしっくり来なかった記憶だけある。

そのため、今回はほとんど初見と言っても差し支えはない状態でのレビューとなる。

 

モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜 - Switch
 

 

ストーリー

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少年向けの3Dアニメのような物語

まずはストーリーの概要をざっくりと説明しよう。
主人公はモンスターと共生し、モンスターと絆を結んで騎乗する能力を持つ”ライダー”という文化が根付いているマハナという村に生まれ育ち住んでいる。
その村には「破滅の翼」を持つという凶兆のリオレウスが世界に災いを呼ぶという伝説がある。
ある時、不気味な赤い光の発生と共にリオレウスが一斉にいなくなるという事件が起こる。それが伝説にある凶兆ではないかと騒がれ、その原因を突き止めようとするのが本作の導入だ。

主人公はプレイヤーのアバターではあり、リアクションはするが喋る事がない無個性なタイプに分類される。
また、マハナ村の中で伝説的に語られるレドという人物の孫にあたり、有名な血筋という設定となっているのだが、これはJRPGに多いフォーマットに追従したような形なのだろう。本作はこのレドの意志を受け継ぐ物語でもある。

メインのストーリーはボイスがついており、自動送りなども実装されているなど親切設計となっている。
スタイライズド調で描かれるキャラクター達は表情も豊かで、演出も含めて3Dアニメを観るように楽しめるが、物語の内容自体はやや少年/少女(ローティーン)向けの側面が強いように感じられる。
その年代をターゲット層とした事に由来するのかオーバーリアクションな演出もあるにはあるが、非常に低頻度であるため大人が観てもそこまで気になる事はないであろう。
なお、ストーリー中で観たカットシーンに関しては後で見返す事が可能となっている。

本作はナンバリングの通り2作目となる作品であるが、ストーリーを楽しむうえで前作を知っている必要は必ずしもない。安心してプレイして可能だ。
しかし、初代である前作のモンハンストーリーズに登場した人物も本作で再登場するため、その人物の過去の出来事を知りたい場合には前作をプレイする必要があるだろう。

ストーリー面の仕様で気になるのはフィールド探索中に発生する会話などのテキストだ。
フィールド移動中にはテキストでの会話が発生する事があるのだが、移動中であるためテキストを読むには適さない状況なのだ。
逆に読むために移動を止めてしまっているようでは、移動中に見せる意味がなく本末転倒である。このようなケースは是非ともボイスでの会話を採用して欲しかった所だ。
また、Aボタンで会話を送る形になっている事も問題がある。
フィールドに落ちている素材を採取するのもAボタンであるためだ。
素材を取ろうと思ってAボタンを押すと、そのタイミングで始まった会話をうっかり送ってしまうという事が度々あった。
会話の形式、ボタン割り当てなど、この辺りの仕様は是非ともプレイスタイルに見合ったものをデザインして欲しかった。

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モンスターハンター”を自己批評したような視点

本家モンスターハンターでは英雄的な扱いを受けるハンター達が、本作では余り良い存在として描かれないのは印象的だ。
何故なら、モンスターを危険生物(害獣)として駆除して回っているハンターに対して、モンスターの特性を理解して共生しているライダーという存在が主人公となっている所が理由として大きい。
ハンターの描かれ方に関して言えば、人類史で例えるならば大航海時代における植民地化を推し進めた時代、あるいは環境破壊や公害などが起きた時代のマインドのように、ある種の”野蛮性”を持って描かれる。
つまり、別の視点からハンターという存在を解釈する事により、今までのモンスターハンタープレイヤーが行ってきた行為(=狩猟)自体が本当に正しい行いだったのかという自戒として受け止める事ができる構造になっているのだ。
そのため、本作はモンスターハンターというシリーズ自体を自己批評した内容ともいえ、新たな視点をモンハン世界にもたらし多様性を生み出す事に成功していると言えるだろう。

とは言え、本作に哲学的な題材や緻密な世界設定(時代考証)、考察しがいのある謎などと言った観点で過度な期待をするのは少々間違っている。
自己批評的な側面こそあるものの、大枠はやはり少年/少女向けの色が濃いのだ。

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RPGとしての潔さ

モンスターハンターとはご存知の通り様々なモンスターが登場する。
そのため、そのモンスター達と出会うきっかけを作る必要があるのはストーリーとして逃げる事の出来ない問題である。
では、それを本作はどのようにして実現しているのか。
「おつかい」である。
本作はモンスターと遭遇して戦うというシチュエーションの全てといっても過言はないくらいには「おつかい」に頼り切っている節があるのだ。
ストーリーは章形式で進んでいくのだが、ストーリーがしっかりと進むのが章の始めと終わりの繋ぎ目の部分くらいであり、新たな章に進む度に「ん…?この流れは…?」と思うと「おつかいクエスト」が発生する。
それはストーリーの概要にて説明した「凶兆」という設定が「凶兆のせいで暴れまわってるモンスターを大人しくさせてくれ」といったような「おつかいをさせるための布石(免罪符)」でしかないようにすら感じられてしまうほどだ。
サブ要素で”おつかい”をさせられるのは「まぁしょうがないか」と思う部分もあるが、JRPGのメインストーリーに手を変え品を変えワンパターンな”おつかい”を差し込むのは一周回ってもはや潔さすらある。
そのため、ストーリーがプレイヤーの興味を引き続けるような牽引力は弱くなっていると思った方が良いだろう。

 

システム

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アイコニックなモンスター達を仲間にできる

モンスターハンター ストーリーズ系列はポケットモンスターフォロワーの作品と捉えるのがわかりやすいだろう。
大雑把にプレイシーケンスのサイクルを記載すると、ランダム生成されたダンジョン(モンスターの巣)の最奥などからタマゴを回収し、孵化させて仲間にし、強くしていくような流れとなる。
仲間に出来るモンスターの能力はランダムで決まる部分もあり、より強いモンスターを仲間にすると言うエンドコンテンツ的な側面も持ち合わせている。
登場するモンスターは多岐にわたり、シリーズの数多くのモンスターが登場するのは嬉しいポイントだろう。

バトルはシンボルエンカウント式のターン制バトルとなっており、仲間のオトモモンスター(オトモン)と一緒に戦闘を行うのが特徴的だ。
主人公はモンスターハンターでお馴染みの武器を装備して戦う。
装備枠は3つあり、戦闘中に武器を変更する事が可能だ。
状況によって有効な武器が異なるモンスターもいるので使い分けるのが理想的だが、後述する三竦みの方が重要であるため、使い分けは必須と言う程ではない。
なお、武器はモンハンシリーズに登場した全種類がある訳ではなく、片手剣、大剣、弓、ランス、ハンマー、狩猟笛の全6種類となっている。
武器毎にそれぞれ特性が異なっているので、スタイルに合わせて持っていく武器を決めると良いだろう。
オトモンは基本的に自動で行動を選択する形となり、オトモンには三竦みのどの行動をしやすいかという傾向が設定されているため、どのオトモンをどのモンスター相手にぶつけるのかを考えるのも大切だ。

バトルで最も重要なのはパワー、スピード、テクニックという3種類の属性がそれぞれ三竦みの関係性となっている点だ。
相手の行動に対して有利な行動を選択できると大ダメージを与えつつ、スキルなどに使用する絆ゲージも大きく溜められるなどメリットが大きい。
また、敵モンスターはどの属性の攻撃をするのかという傾向が決まっているが、”怒り”などの状態変化によって三竦みの使用傾向が変化するので、1つの行動を一辺倒に行うだけでは解決ないように、それでいて知識さえあれば対処もしやすいようにデザインされている。

オトモンも三竦みの行動を行うが、上述の通りオトモンは自動で行動が決定される。
三竦みのどの行動をするかは傾向が決まっているため、敵モンスターに対して有利な行動をするモンスターを場に出すのが重要であり定石だ。
そして、ライダーとオトモンの両方で敵の弱点属性で攻撃できると「ダブルアクション」という状態になる。
この行動になると相手に大ダメージを与えられる上に、相手の行動を1回分消去する事が出来てしまうのだ。
上手く立ち回れば戦闘を一方的に展開できるが、それはゲームデザインとしても心得たもので、ボス敵やそれに準ずるような敵に関しては1ターンに複数回行動を行う。
そのため、そのような強敵相手の戦闘はほとんどダブルアクション前提の難易度だ。
要はジャンケンであるため難しいシステムでは無いが、使いこなせないと相応の苦戦は必至だろう。
このように三竦みが重要である関係上、自分が好きなモンスターだけを使い倒して攻略するのはハードルが高いが、「伝承の儀」という要素によって他のモンスターからスキルを継承させる事によってモンスターが本来得意とする属性以外のスキルを習得する事が可能になっている。
そして、戦闘中に絆ゲージを消費すればオトモンに対して任意のスキル発動を指示出しする事が可能であるため、それらを駆使すれば1体のモンスターでも多くのモンスターを仮想敵とする事も可能である。

三竦み有利な攻撃をした時に多く貰える絆ゲージが最大まで溜まると戦闘中にオトモンに搭乗する「ライドオン」が可能になる。
ライドオンするとHPやデバフが回復したりするほか、強力な必殺技「絆技」も使用可能になる。
戦闘における大まかな流れとしては、
1.相手の弱点属性攻撃でダブルアクションを狙いつつ絆ゲージを溜め、敵の攻撃を凌ぐ
2.ライドオンでHPなどを回復して体制を立て直す
3.絆技で大ダメージ
4.「1.」に戻る
と言った感じと捉えて良いだろう。
弱点属性攻撃で攻撃しつつ、なんとか敵の攻撃を凌いで、絆ゲージが溜まったらライドオンして形勢を立て直すといったようなイメージだ。

なお、ユーザーフレンドリーな要素として戦闘はいつでもスピードアップを行う事が可能になっている。
戦闘を倍速で行いサクサクと進められる。
そして、かなりの格下を相手にする場合には「一掃攻撃」という使用可能になり実行すると一瞬で戦闘を終了させる時短要素もある。
戦闘で入手できる素材もしっかりと貰えるので、気軽に使って良いだろう。

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困ったポイント

ここでは雑多に本作のゲームプレイ部分にて困ったポイントを書いておきたい。

「モンスターは怒り状態の時に三竦み傾向が変化する」と上述したが、現在がモンスターがどの状態なのかが視覚的にわかりにくいケースが散見されるのは困る。
特にわかりにくいのは凶兆の影響によって狂暴化した個体で、最初から赤みがかった発光をしているために怒り状態なのか否かが視覚的にわかりにくい場合がある。
怒り始めた際には「怒り始めた」と言った説明があるのだが、怒りが解除された時には何も説明がないため、うっかりミスが度々あった。
「モンスターの特徴を良く観察しろ」という開発者側のメッセージなのかも知れないが、状態を明確に示して欲しい。

全体の難易度を三竦みに頼ってしまった影響も見受けられる。
こちらも上述の通り、三竦みにおいて有利な属性で攻撃すれば敵の行動を潰せるなど非常に優位に進められるし、それを前提として基本的にはデザインされている。
しかし、敵が三竦みの属性を持たないスキル攻撃が中心になってしまうと、とたんにプレイヤー側の工夫・対処のしようがなくなってしまう。
有利属性がぶつけられれば行動を潰せるが、有利不利の無い属性も存在するのだ。
そうなると、単純な消耗戦となり、本来のゲームデザイン(駆け引き)から逸脱したものとなってしまい、それがフラストレーションに繋がってしまっている。
特に格上相手では行動を潰せないうえに、強力な攻撃をまともに受けるしかできず、ほとんど何もできない状態になってしまう。
三竦みを軸に持ってきているのであれば、初志貫徹そのようなデザインを貫いて欲しかった所だ。

次に気になるのは環境への適用を表現した要素だ。
本作はモンハンシリーズらしく地域によって寒冷などがあり、その場合には専用装備やホットミストを使用しないと攻撃が行えないなどのデメリットが発生する。
これはホットドリンクやクーラードリンクといった今はなきアイテムを彷彿とさせるものなのだが、その仕様がなんとも面倒だ。
まず、ホットミストなどを使用していない状態でフィールドに出ても警告などが何も無いため忘れやすく、戦闘になってから思い出す事がほとんどだ。
戦闘で使用する事になると、アイテムの使用で1ターン浪費してしまうため溜息にならざるを得ない。
また、戦闘前に事前に使用するにしてもメニューを開いてアイテムを選択して使用しなくてはならないなど使い勝手も悪い。
寒冷などの状態になっている事をもう少しわかりやすく表現したり、適用のためのアイテムをワンボタンで使えるようにしたりともう少しなんとかならなかったのだろうか。

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モンスターの力を借りたフィールド探索

フィールドは近年の水準で比較すればそこまで広くはなく、エリア毎に区切られた構成になっている。
前述しているモンスターの巣に関してもフィールド上にランダムに生成される。
フィールドでは本家同様に素材を入手する事が可能で、それらを使ってアイテムや武器防具を整える事となる。
素材の中には本編では見なくなったようなアイテムもあり、古参のプレイヤーには懐かしさがある事だろう。

フィールドには特定のオトモンでのみ踏破できるギミック「ライドアクション」が用意されている。
特定のアクションが要求される場面ではその場での切り替えが可能だ。
しかし、それ以外の場所で連れ歩くオトモンを自由に切り替える事はできず、メニューからイチイチ設定しなおさなくてはいけないのは不便だ。

 

グラフィック

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スタイライズされた色彩豊かな世界

スタイライズドなトゥーン調の映像は色彩が豊かで美しい。
フィールドは昼や夜の概念もあり、時間帯によって雰囲気も変わる。
訪れる村や街によって特色や文化も異なるし、大自然も地域によって特徴が異なり観ていて飽きない。

主人公が装備する事になる衣装はモンハン本編をベースとしているが、スタイライズドされているため印象が異なり新鮮味がある。
頭装備はキャラクターの顔や表情を隠してしまうため非表示にしたい人も多いだろう。
もちろん、本作ではそのような設定も可能になっている。
常時表示/非表示の切り替えはもちろん、カットシーンのみ非表示にすると言った設定も可能だ。

戦闘のモーションは本家であるモンスターハンターでも印象的だったものが数多くあるため、ファンならばニヤリと出来るだろう。
また、戦闘シーンでのカメラワークはRPGだからこそできるダイナミックで迫力がある演出となっている。
更にクリティカル時には豪快なヒットストップ演出が入りアクションゲームのような爽快さもある。
なお、オトモンの必殺技にあたる絆技のモーションは前作のものを踏襲しているケースが多いようだ。

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マイハウスは懐かしさがあるが勿体なさもある

自室である「マイハウス」はモンスターハンター初期の頃のようなこじんまりとした雰囲気があり懐かしさを覚えたのは筆者だけではないハズだ。
しかし、冒険をして様々な村にいくが、自室のレイアウトなどは全て共通なのは少々味気ない。
訪れた村に応じて自室の雰囲気もその地域の文化に沿ったものにガラッと変わっていると非常に嬉しかった。

 

サウンド

シーンを盛り上げてくれるメインテーマ「風の絆」は特に印象的だ。
戦闘BGMはモンハンシリーズお馴染みの楽曲がアレンジされて使用されているものがありファンには嬉しい事だろう。

JRPGとしては珍しくフィールドBGMはない。
これはモンハン本編シリーズのように環境音のみとなっている構成だ。
しかし、レール型のRPGとしては少々寂しいように感じる仕様とも言え、作風にマッチしているかというと議論の余地がある演出だろう。

 

総評

モンスターハンター ストーリーズ2はJRPGのフォーマットを取りながら、モンスターハンター世界に新しい視点を取り入れた作品だ。

歴々と行っていたモンスターハンターにおける狩猟と言う行為に対して自己批評的な観点が取り入れられたストーリーはシリーズ経験者ならば思う所はあるだろう。
システム面もアイコニックなシリーズのモンスター達を仲間に出来るなどの魅力がある。
しかし、JRPGフォーマットに囚われ過ぎたのか、ストーリーの進行を清々しさすら感じる程に”おつかい”に頼り過ぎて「次の展開が気になる」といったようなモチベーションに繋がらないのは残念だ。

 

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