【レビュー】ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅

魔族の“カリスマ”よ、真の王を目指せ。

ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅(以下、DQM3)はドラゴンクエスト モンスターズシリーズのナンバリングとしては非常に久しぶりのタイトルである。
というよりも今になってナンバリングが登場する事に驚いたくらいだ。

 

 

ストーリー

ドラクエⅣを母体としながらも終始説得力に欠ける物語

DQM3の主人公は魔族の王と人間との子供であるピサロだ。
ピサロと言えばドラゴンクエストⅣで登場した敵の親玉のような存在であるが、本作ではその物語のパラレルワールド的な立ち位置となっている。
ピサロは人間界でひっそりと暮らしていたが迫害のために居場所を追われ魔界へと逃げてきたが、逃亡中に病が悪化した母を治療して貰うべく父である魔王に謁見するも願いを叶えて貰えず逆にピサロは呪いをかけられてしまい、そして母もそのまま亡くなってしまう。
魔王たる父に復讐を行い、自分が魔族の王となるために力を蓄える冒険が本作の導入だ。

全体的にやや子供向けのテイストが強いのか、それとも原作の設定を活かすためなのか強引な物語進行になってしまっており説得力がない事が多い。
例えば、原作においても存在するロザリーヒルの村にある塔は最初は存在しないのだが、あるタイミングで「数日後」というメッセージ後に一瞬で建造される。
たった数日で建造できるようなものではなく、資材や労力はどうしたのか。
ロザリーヒルは非常に規模の小さな村でありモンスターを手懐けられる人はいるものの奇妙である。一夜城も裸足で逃げ出すような事象が起きている。
その他にもキャラクターの心理描写的にもやや説得力に欠け、原作要素を盛り込んでゲームを進行するための役割準拠的な側面としか感じられなかったりなど、細かいディティールの部分において疑問符が付くような描写が散見される。

また、ヒロイン的立ち位置であるロザリーも家庭的で献身的で受動的な女性という現代の価値観とは少しズレているキャラクター性になっている。
筆者の場合は「ゲーム内の世界や時代に則った世界観・視点で楽しみたい」という志向性が強いため、この設定に関しても「本作の世界はそういう価値観の世界なのだ」と思えるが、(出典自体が古いとはいえ)悲しいことに現代ではそれを許容しないような風潮も見受けられる。
この辺りはもう少し慎重にビデオゲームの現在地にマッチするギリギリのバランスは狙ってよかったように思う。

モンスター図鑑のテキストもしっかりとある

本作はモンスターを仲間にして戦うのが基本となるが最初に仲間になるモンスターは質問によって貰えるモンスターが異なる。
選びなおしも可能で、パターンも少ないものの少しだけ嬉しい要素だ。
贅沢を言えばもっとパターンを増やしてワクワク感を出して欲しい限りである。

仲間になったモンスターは図鑑に登録され、モンスターの説明文も用意されている。

 

システム

シンボルエンカウントの広めのフィールド

DQM3はフィールドにモンスターが徘徊しており、接触する事で戦闘が始まるシンボルエンカウント方式だ。
フィールドはそこそこの広さがあり四季の概念も存在している。
例えば、冬には水辺が凍り歩けるようになるなど、季節によっていける場所に変化が発生する。
この四季はフィールド探索中の時間経過で流れていき、まるで昼夜のように変化していく。
フィールドで徘徊しているモンスターの中にはモンスター同士でコミュニケーションをとっているように見えるケースもあり生活感が表現されているのも良いポイントだ。

本作にて気になるのはシンボルエンカウントでモンスターに見つかってエンカウントしたにも関わらず、こちらが不意を突いた事になっているケースがある事だ。
プレイと実態が一致しないため違和感を覚えてしまう要素になってしまっている。

フィールド内にはダンジョンが存在する。
ダンジョンは物語進行と共に必然的に行く事になる場所であり、内部ではちょっとした謎解きのようなものが要求される。
しかし、用意されている謎解きに関してもレガシーな側面が強く、ゲームプレイとしての側面に偏重しており「何故このような構造になっているのか」という生活や文化を彷彿とさせるような物語や設定における舞台装置としての説得力に欠けた存在である。
また、物語進行シーケンスにしても「フィールドに赴く→困ってる人に会う→ダンジョンでボスを倒す」の繰り返しとなり、フィールドの見た目が変わるだけでやってる内容がほとんど変わらず、こちらもレガシーでチープな印象となってしまっている。
ゲームとしては普通にプレイはできるものの、20年前と同じようなコンテンツ内容になってしまっているのは複雑な気持ちだ。

お馴染みのクラシックな戦闘

戦闘は従来のドラゴンクエスト同様のターン制バトルだ。

仲間モンスターは最大8匹で、戦闘には最大で4匹が参加できる。
モンスターにはサイズが設定されており、大きなモンスターの場合には2匹分の枠を使ってしまうが、その代わりに複数回行動が可能であったりと強力だ。
戦闘自体にはそれほどの面白味はなく、基本的にはリソースの削り合いとなる。
攻撃役と回復役をしっかりと整えておけば基本的に問題ない。

モンスターには色々と設定が可能だ。
例えば、覚えた呪文は多く使う、そこそこ使う、使わないといった頻度を指定する事もできる。
しっかりと使って欲しいバフやデバフ、回復の呪文などがある場合には設定しておくと良いだろう。
また、ステータス上昇や耐性強化などのアクセサリーを装備させたりする事も可能だ。
これらはモンスターの特性に応じて設定をすると良いだろう。

戦闘はモンスターを仲間にする機会でもある。
戦闘中に肉を与える事で倒した後に起き上がり仲間になりたそうにこちらを見ている事もあるが、「スカウト」という方法で戦闘中に直接モンスターを仲間にする事も可能だ。
スカウトに関しては肉を与えたり、仲間のモンスターが強力であれば確率が上昇するが、失敗するとモンスターが怒って攻撃力が上昇してしまうデメリットもある。
何にしてもモンスターを多く仲間にしていくのがパーティーを強化していくうえで大切なので積極的に活用するのが好ましい。

戦闘において気になるのはリザルト画面のテンポの悪さだ。
戦闘終了時には経験値などの精算が行われるが、それらがどうにもレスポンスが悪くゲームプレイを途切れさせてしまっている。
リザルト画面のような機能はプレイ時間がかかる必要性が薄いものであり、そこがサクッと完了しないのは体験に悪影響となってしまう。

お馴染みのメインコンテンツである配合

モンスターズシリーズのメインコンテンツとも言える「配合」ももちろん登場する。
配合では二匹のモンスターを掛け合わせて新しいモンスターが生まれるという仕組みである。
生まれたモンスターは親となったモンスターのステータスを一部受け継ぐので、強くしてから配合した方が強力なモンスターになりやすい。

また、モンスターにはスキルが設定されているのだが、スキルは配合によって引継ぎを行う事が可能だ。
スキルはレベルアップで貰えるポイントを割り振ってステータスの追加強化のパッシブスキル、呪文などのアクティブスキルを覚える事が可能な仕組みである。
スキル取得は割り当てたポイント数によって順番にアンロックされていく方式で、特定の能力や呪文を優先的に獲得するようなものではない。
配合ではこのスキルが割り当てたポイントが半分の状態で引継ぎが可能になる。
有用なスキルは最後の方に獲得できることが多いので、必然的に要求ポイントが多めになる。
そのため、配合をして引き継いでいかなければそのような有用スキルを獲得するのは厳しいバランスになっている。

本シリーズのメインでもある「配合」だが、DQM3ではその導入と誘導が弱すぎるのは問題がある。
物語の序盤では配合ができないのだが、これは徐々にシステムを解禁してプレイヤーがステップアップしやすい環境を作る目的なのは理解できる。
特にドラゴンクエストシリーズはその成り立ちからしてプレイヤーの自由に対して制限を設けて遊びやすさを重視した事が支持された側面もあるからだ。
しかし、実際に配合が可能になったタイミングではボイスもない会話テキストで「配合できるようにしたぞ」程度の簡単なセリフでのみの通知なのはメインコンテンツとして考えると余りにも導線が弱い。
最低限、配合するチュートリアルをしっかりと設けて大切な要素であることの協調が必要だろう。

 

グラフィック

ディティールには欠けるところがある

DQM3は自然を感じさせる環境もあれば、ファンシーな環境も存在するのはユニークだ。
しかし、全体的に近くで見るに耐えうるほどのディティールは有しておらず、現代の最低限の水準といった所だろう。

モンスターズシリーズではモンスターが多く登場する事が醍醐味の1つとなる。
しかし、モンスターは色違いによる区別も多く、完全新規のモンスターは少ない。
この手のゲームでは有限の開発リソースの中で物量をカバーする必要がある訳だが、色違いという工夫によって何とかしているのは肩透かしに感じる可能性は十分にある。
とはいえ、ドラゴンクエスト モンスターズという作品群が「本家ドラゴンクエストのモンスターが仲間になる嬉しさ」という側面もあるため、本来ならばあり得ないようなモンスターを仲間にできる特別感や楽しさはあるだろう。

 

サウンド

元ネタとなるドラクエⅣやドラゴンクエストモンスターズの曲が採用されていることが多い。

メインストーリーにはキャラクターのボイスが付いているが、あくまでもオマケ程度だと思って良いだろう。

 

総評

ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅はストーリーからシステムに至るまで20年前で時間が止まってしまっている作品だ。

ストーリーにしても、ゲームプレイ部分にしても普通に遊ぶことは十分に可能ではあるもののレガシーな側面が強い。
メインコンテンツと言える配合にしても導線も弱ければ、モンスターのバリエーションやビルドの幅も物足りなさが感じられる。
ある程度の楽しさは体験可能ではあるが、今の時代にわざわざプレイするべき体験には乏しいものがある。

 

外部記事

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