【レビュー】SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズ

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交差しない光

SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズ(以下、クロスレイズ)は名前の通りだがGジェネレーション(以下、Gジェネ)シリーズの作品だ。
筆者のGジェネシリーズ遍歴は「Gジェネレーション アドバンス」「ワールド」をプレイしている程度であり、それほど熱心なファンという訳では無い。
しかし、Gジェネシリーズはオリンピックのように数年間に一度くらいの周期で無性にプレイしたくなるタイトルの1つなのだ。
今回はそんなサイクルにぶち当たり購入に至ったクロスレイズをレビューしてみたい。

 

SDガンダム ジージェネレーション クロスレイズ -Switch
 
【PS4】SDガンダム ジージェネレーション クロスレイズ
 

 

ストーリー

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作品を追体験するストーリー

クロスレイズはガンダムにおけるいわゆる「宇宙世紀を舞台にしていない作品群」を1つにまとめたタイトルだ。
本作のストーリーは各作品を追体験するようになっており、作品の様々なシーンをストーリーとして、そしてシミュレーションゲームとして再現している。
アニメを観て、そして作品が好きになったファンであれば嬉しい要素ではあるだろう。

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交差(クロス)していない問題

では、本作が複数の異なる世界観を内包する事に成功しているかと言うと「否!断じて否!」と言う他ない。

各作品は「追体験」するに留まっており、作品間を跨いだようなストーリーや演出は皆無だ。
登場作品を宇宙世紀以外のガンダムに絞っているにも関わらず、追体験のみで終わってしまうのは作品をクロスオーバーさせている意味を欠いている。

また、追体験形式のストーリーではあるが本作だけで本編のストーリーの面白さが伝わるレベルに到達しているかと言われると、それも「否」と言わざるを得ない。
描写が飛び飛びであるため物語の間の空白が空白のままなのだ。
アニメを既に観ている人であれば脳内で出来事を補完できるが、このタイトルから作品を知ろうと思うと良さは伝わりにくいと言えるだろう。

 

システム

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ガンダムシリーズが様々に登場する

クロスレイズでは宇宙世紀以外の作品群から様々な機体が登場する。
主役級の機体が登場するのはもちろんだが、脇役であったり敵が乗る量産機なども数多くの種類が参戦している。
戦闘アニメーションにしても原作のシーンを再現したものが数多く用意されており、こちらもファンならば嬉しい要素だろう。

ユニットには複数の武装が設定されており、また武装毎に射程距離が設定されている。
攻撃や反撃は射程内に入っている武装のみを使用する事が出来る。
逆に言えば射程外の武装しか無い場合には攻撃はもちろん、反撃が行えないため、一方的に叩く/叩かれる事があるのは当たり前の事だが注意が必要だ。

本作では複数ユニットに対してダメージを与えられる行動はいわゆる「マップ兵器」を除けば「戦艦連携」「遊撃連携」に限られている。
この連携攻撃は最大9ユニットまでをターゲットにする事が可能だが、ターゲット数を増やすと威力が下がってしまう性質があるため、強力ではあるがどのように活用するか考える必要がある。

戦闘アニメーションは原作アニメのワンシーンを再現しているが、そうであるが故に戦闘アニメーションが非常に長く冗長で、戦闘のテンポを著しく落としてしまっていた。
戦闘アニメーションはカットできるが、それは本作の醍醐味の部分が損なわれる選択でもある。
そのため、リリース当初は「観る」or「全カット」するかの二択しか用意されておらず配慮不足と言わざるを得ない状態だったのだが、アップデート(v1.50)にて戦闘アニメーションの早送りが追加されている。

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とにかく雑なバランス

登場機体や機体のディティール、モーションは原作再現にこだわっているが、それ以外の部分は総じて雑だ。

まず、チュートリアルがテキストのみで完結してしまうのは雑な説明と言わざるを得ない。
複雑なシステムは設計されていないとは言え、これでは初心者にとっては困惑してしまうように思える。
特にユニットやキャラクターの強化方法など、どこから何を強化できるのかがわかりにくいため、もう少し丁寧なチュートリアルを差し込むか、理解しやすいGUI設計にして欲しい所だ。

各ステージに登場する敵ユニットの配置(レベルデザイン)が雑な事も気になる。
シチュエーションが原作を再現するだけに終始しておりレベルデザインと呼べるような配置などは皆無でゲームとしては問題がある事も多い。
初期ユニットでは明らかに難しいステージもあれば、初期ユニットであるにも関わらず高難度化させても簡単にクリアできてしまうものもあるなど、およそ「(楽しめるための)デザインがされている」とは感じられない。
全てのシチュエーションでは難しいかも知れないが、工夫次第で勝利が得られる絶妙な歯応えのデザインを目指して欲しい所だ。

敵AIの行動パターンも雑だ。
射程外から一方的に攻撃してくるような事も無ければ、弱ったユニットを総攻撃してくるような事もない。
筆者がプレイした限りでは敵ユニットがしっかりと思考して行動しているようには思えなかったのが素直な感想だ。
このような不可解な挙動をされてしまうと、プレイヤー側も計算立ててユニットを配置する事ができず雑なプレイをせざるを得ない。

戦闘においてはダメージ計算もわかりにくい煩雑さがある。
ダメージは「武装自体の火力」「機体の攻撃力」「相手機体の防御力」が影響するようなのだが、どのような計算を行って実際のダメージ値になっているのかが直感的には非常にわかりにくい。
また、上図を参照して頂ければ理解できると思うが戦闘後の結果も画面上に表示されないため、実際に戦闘を行わなければダメージ値が把握できない。
そのため、「この機体は3回は攻撃を耐えられるな」と言ったような戦術が立てにくいのだ。だいたいのケースは「おおよそ3回は耐えられそうかな?」と言った曖昧な判断にならざるを得ず、かなり大雑把な采配しかできない。

本シリーズ全般に言える事かも知れないが、機体が没個性化している戦闘バランスは最も雑さを感じる所だろう。
本作ではワンオフ機でも量産機でも同じ土俵に立てるようにしているが、特別なシステムを何も用いずに同じ土俵に立たせてしまっているためワンオフ機でも量産機でも似たような性能の機体になってしまっている(この没個性が前述のレベルデザインの雑さにも繋がっているほか、没個性を考慮したレベルデザインも行われていない)。
アニメの劇中では非常に高い性能を有していたにも関わらず、ゲームでは量産機とどっこいどっこいの泥仕合をしているようでは違和感が強い。
本作にはレベルが用意されているため、レベルが上がれば原作のように敵機を蹂躙できるようにはなる訳だが、それも結局は同様の事をすれば量産機であっても行えてしまう芸当だ。
例えば、出撃コストを設定するなど性能に応じて出撃可能な枠を絞るようなシステムを組み込み、その上で性能差は明確に分けるなど、機体に役割を持たせて同じ土俵に立たせて欲しかったと言える。

また、雑なのは機体だけでなく武装に関しても同様だ。
牽制に使用されるようなビーム兵器と、大砲のような重火器の主砲との威力・消費エネルギー量の差が小さすぎるのだ。
例えば、威力3000で消費エネルギーは10の兵装と、威力3200で消費エネルギーは12の兵装となっており、本作のような設計(戦闘システムやマップ、レベルデザインなど)においてこの程度の差では使い分けるようなシチュエーションが生まれる事の方が稀だ。
威力3000で消費エネルギーが10の低火力高効率の兵装と、威力が6000で消費エネルギーが25の高火力低効率の兵装などを用意すると言った素人でも思い付くような単純明快な区別すら無いレベルでは武装の違いによってシミュレーションゲームの楽しさを生み出す事は難しい。

本作では(Gジェネシリーズ全般と言っても良いのかも知れないが)、「ビジュアル(表面)的な原作再現をすること」に終始しており、それを超えた「ゲームとしても楽しいもの」に昇華しているとは言い難い。

 

グラフィック

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まずまずのグラフィックディティー

クロスレイズにおけるグラフィック水準はそこそこと言った所だろう。
悪い訳では無いが、ディティール部分の美しさに欠けている。
機体の3Dモデルなどはまずまず良いのだが、背景のグラフィックはややチープな印象なのだ。
もちろん機体がそれなりに良く出来ていれば十分な及第点なのだが、もう少し上のレベルを狙っていけるようには感じる所だ。

システムの項でも少し述べているが、戦闘アニメーションでは原作のワンシーンを再現したものを使用しておりファンには嬉しい演出だ。
もちろん、ストーリーでも少しではあるが3Dモデルによるカットシーンが用意されている。

 

サウンド

クロスレイズにはサウンドエディションと言うバージョンが用意されており、サウンドエディションでは各作品を象徴するようなオープニング曲やエンディング曲が原曲で用意されている。
戦闘中に自分の好きなBGMを設定して流すことが出来る点も嬉しいポイントだろう。
ただし、オープニング曲やエンディング曲に関しては冒頭から流されるため、冒頭部分がサビから始まるような構成となっていない曲の場合には、戦闘アニメーション中にサビが流れない事になるためやや盛り上がり方に欠けてしまう印象を受けるかも知れない。

その他のBGMに関しては原作のBGMを再現したものを収録しているが、その品質自体は高くないため少々チープな印象を受けてしまうだろう。

 

総評

SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズは原作再現に終始しただけの作品だ。

ストーリー、登場機体、戦闘アニメーション、BGMなど各要素のどこを切り取っても「原作再現」で止まっている。
原作アニメとゲームが、そして原作アニメ同士がクロス(交差)する事なくパラレル(平行)に動いてしまっているのだ。

 

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