【レビュー】リアセカイ

ファンタジー×現実の2重活動

リアセカイはルーンファクトリーシリーズの制作陣が関わるハクスラ型のゲームである。
ルーンファクトリーシリーズをいくつかプレイしていた筆者にとっては応援の意味もあり購入した経緯である。

今回はリアセカイについて記載していく。

 

リアセカイ -Switch

リアセカイ -Switch

  • 発売日:2023/10/12
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

2つの世界を行き来する

ある時、主人公はほとんど記憶のない状態で町の郊外で目覚めることになる。
そこはファンタジーの世界であり、身寄りがないためそのまま郊外に住まわせてもらう事となる。
そして色々と町の問題を解決していると、今度は現代のような世界の学校の教室で目が覚める。
主人公はどうして2つの世界を行き来しているのかが理解できず状況がイマイチ把握できないものの、所持していた鏡は真実を知ると言われる「真鏡物語」と言われる伝説に描かれたものと類似していた。
それらの謎を解き明かすのが物語だ。

上記の通り、本作は現実世界と異世界を行き来するのが特徴だ。
本作に限らず創作物においても「不思議の国のアリス」もそうかも知れないが「犬夜叉」「今日からマ王」など昔から世界を跨いで活動するような作品は少なくない。
そのようなワクワクするような世界設定を持っているのだ。

物語を進行させるにはキャラクター達の問題を解決する事が必要となる。
解決するにはダンジョンの達成条件クリアをする事で、町人達と仲良くなると新しいダンジョンに行く事ができるようになり進行可能となるような形だ。
最初は非常に冷たい対応をされるところから始まるため、仲が深まっていくと対応の違いが顕著に感じるのは少し面白い部分かも知れない。
キャラクターのセリフは比較的多めに設定されており、何度か話しかると違う会話をしてくれるようだ。

進行に難あり

物語は異世界を記憶のない状態で始まるが、プレイヤーが理解できるための説明が色々とないうえ、モノローグで「皆に挨拶した」と記載しているのにゲームプレイが始まると再び挨拶回りが発生するなど食い違いが散見され物語進行がやや困惑する。

これは最初から全ての住人と会話できるにも関わらず、初めましてくらいのノリで会話されるためであり、このような構造にするのであれば会話差分をしっかりと用意するか、会話が可能な住人を事前に絞っておくなどして欲しい。

素材が全く活かされていない

本作において最も問題なのは根本的に素材が活かされていない事だろう。
本作はファンタジー世界と現実世界を行き来するのだが、現実世界に関しては探索するようなパートがないのだ。
現実世界ではちょっとした会話が行われたと思ったら次の瞬間にはファンタジー世界に戻っており存在感が非常に薄い。
そのため、現実世界と異世界のギャップなどを体験として感じにくいのである。
せっかく2つの世界を用意した意味を欠いており、もはやゲームデザインとしての意図すらよくわからないレベルなのだ。
現実と異世界の行き来という要素自体はワクワクさせてくれる設定だが、そのワクワクするインプレッションとは裏腹に全くそれが活かされていないのである。

また、異世界で話しかける住人にしても生活感がないのが悲しい所だ。
町の住人は昼も夜も特に移動などもする事がなく、「人型の看板」ようになってしまっているのだ。
これは機能として必要最低限のレベルであり、演出としては空虚なものである。
これではゲームをプレイしているプレイヤーは孤独感を覚えてしまうのではないだろうか。
最低限の演出としてルーチンで左右に移動するくらいの動きくらいはあって欲しいものだ。

 

システム

ゲームプレイはハクスラとしての側面が強い

リアセカイのゲームプレイはハクスラだ。
というよりも純粋にそれだけで構成されているといって良いだろう。
一般に想像されるような経験値とレベルといったRPG的概念はなく、ダンジョンもローグライク系のようなランダム生成ではない。
そのため、「敵を倒して、より強い武器を入手して、更に強い敵に挑む」というサイクルだけで構成されている。
戦闘で敵を倒す際にはボタンを押して攻撃や回避を行うものとなっている。
攻撃手段にはいつでも使える通常攻撃のほかに強力なスキルや魔法なども存在し、こちらは再発動までのクールタイムがあるため乱発はできないようになっている。
全体的にはミニマルな構成だが基礎はできていると言って良いだろう。

少し特殊な部分としては「入手できる装備品の品質は現在装備している装備品準拠となる」という点だ。
前述の通りキャラクターにはキャラクター自身に経験値が入りレベルが上がるような概念がないのだが、武器や防具にレベルが設定されている。
その装備した武器・防具のレベルによってキャラクターレベルが設定され、その数値によってダンジョン内でドロップする装備品の品質が向上するような形式となっている。
そのため、ダンジョン内で入手可能な装備の品質を上げたいのであれば、新しい高難度のダンジョンに挑むといったような形式ではないのである。

ダンジョン内で入手できる武器・防具には効果がランダムで付与されている。
この効果をアンロックするにはお金が必要となるのだが、お金は装備品を解体する事が主な収入源となる。
そのため、武器を強くするために不要になった武器を解体していくと言う無駄の少ないサイクルを採用している。
また、基本的に装備品の性能はどんどんアップグレードされていくため、非常にインスタントな側面が強い存在である。
例え効果に優れる装備品であっても、すぐさまより性能に優れる装備品にである仕組みなのだ。
上述の通りRPG的な側面が薄く全ての装備品が使うのは一回こっきりになる事が基本であるため、愛着を持って使い倒すような事は厳しいデザインである事は知っておいた方が良いだろう。

数値的上昇による楽しさに偏りすぎている

ではリアセカイのゲームプレイ部分についてのもう少し核心に迫った部分について記載したいが、本作は「装備が強くなり、より強い装備が手に入る」という「数値が上昇する事で得られる楽しさ」に偏りすぎている。

回復が潤沢で倒されることがほとんどないため駆け引きに乏しいうえ、敵がアイテムをドロップする確率が非常に低いため敵を倒す旨味がかなり欠けてしまっている。
そのため、装備品をアップグレードしようと思うとダンジョン内の宝箱を開けるのが最も確実かつ効率的で、「戦闘」という要素が存在するだけのものになってしまっている。
更にダンジョンはランダム生成ではなく構造・配置が完全固定であるため、その傾向が助長されるような仕組みになってしまっているのだ。

「数値が増える楽しさ」というのは確かに存在するものだが、それだけではいずれ「予測可能な楽しさ」にも至ってしまう。
「これ以上続けても数字が増えるだけだしな…」という「やってる事が変わらないこと」にプレイヤーが気が付いてしまうと、その時点で見切りをつけられて(飽きられて)しまうものなのだ。
幸いにして本作はクリアまでの時間は長くないため、賞味期限が切れる前に食べきる事ができるように作られているのは良いポイントだともいえるだろう。

 

グラフィック

モンスターも可愛らしい

人も魔物も可愛らしいキャラクターになっているが、全体的には非常に簡素な作りである。
「ストーリー」の項で述べた通りなのだが、特に町の作りは極端な言い方をしてしまえばハリボテであり、必要最低限の機能性だけで構成されているものである。
そのため生き生きとした空気感は映像表現からはほとんど感じる事は難しいだろう。

 

サウンド

音楽面も物足りなさが強い印象である。
特に本作のようなゲームの場合にはボイス量などが満足度に直結する事も多いが、ボイスの使い方は非常に限定的である。
サブ的要素はもちろん、メインストーリーでも会話の一部にボイスが付いているだけであり、もっとキャラクターの魅力に寄り添った作風を期待していると肩透かしになってしまう事が予想される。

 

総評

リアセカイは必要最低限の機能性だけで作られたハクスラである。
むしろ、それ以外の要素が思い当たらないくらいには全体はハリボテだ。

ストーリーで用意した素材は全く活かされることはなく、キャラクター達もストーリーが弱いうえにボイスも限定的なものに留まっている。

ハクスラにおいて併用されることの多いRPG要素やローグライク要素もないため、ただただ全く同じ構造のダンジョンに潜り続けては装備品をとっかえひっかえしていくだけである。
それ自体は面白くはありオススメもできはするものの、決して長続きするような内容にはなっていない。
幸いにしてクリアまでは短く、飽きる前には終えられるので短い時間でパパっとだけ遊びたいのであればプレイしてみても良いだろう。

 

外部記事

BLOG|リアセカイ 公式サイト