【レビュー】Assassin's Creed Origins

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その面白さはオリジンだろうか

2017年はビデオゲームの歴史上において特筆するべき年であった。

各メーカーのアイコンとなるようなタイトルが発売され、またその品質はどれも高かった。
それはAssassin's Creed Origins(以下、アサクリオリジンズ)においても同様だ。
筆者はアサシンクリードシリーズであればAssassin's Creed 4 Black Flagが最も好きだった。今作はそれに匹敵する…超えたと表現しても決して否定しない。それくらいの面白さを誇る一作となっていた。

しかし、面白いと感じるのと同時に「これはアサシンクリードだから可能な面白さなのだろうか」という疑問もあった。

 

アサシン クリード オリジンズ PS4版

 

 

ストーリー

アサシンクリードシリーズは特定の歴史上の出来事をテーマにストーリーが構成されている。
今作、アサクリオリジンズであれば「古代エジプト」が舞台だ。年代的には紀元前50年前後くらいの出来事である。

クレオパトラプトレマイオスカエサルと言った有名な実在した人物も登場する。
サブクエストにおいては古代エジプトの文化を知る事ができるものも用意されており、この辺りは手が込んでいると感じられた。

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クレオパトラカエサルが登場する

また、エジプトの象徴ともいえるピラミッドではなんと開発時点では存在が確認されていなかった内部空間が既に実装済みであったという事態まで起きている。この辺りは開発陣の判断力と調査力の凄さが垣間見えた瞬間であると言えるだろう。

実際にプレイヤーが体験する事になるストーリーの話をしていこう。
本作のストーリーは”復讐劇”となっている。ストーリーは全体的に良くまとまっている印象を受けたし、ストーリーテリングは抜群とは言わないが特に問題がある感じでは無い。日本語版はローカライズも良く、演者の演技も良かった。

また、アサクリシリーズでは恒例となっていた”悪名高き”現代パートが、今作では非常に少なくなっているのは好印象だろうか。
今作の現代パートでは同じUBISOFTが開発・販売しているウォッチドッグスのエイデンらしき人物もほんの少しだけ情報がある(アサクリシリーズとウォッチドッグスシリーズは同一世界の設定)など別作品を知っているとニヤリとするポイントもあった。

しかし、ストーリーに問題…というほどのものではないが少し何とも言い難い気持ちになったシーンはあった。

まずはストーリーの導入(プレイヤーへの動機付け)だ。導入は一般的に”マイナス”から始まる。つまり、「何かを奪われること」と同義だ。本作もその一般的な構図の例外ではない。
主人公バエクは自身の子供であるケムが殺されてしまうのだ。
これがバエクが”復讐”を行う動機であり、またプレイヤーがゲーム内において”明らかな犯罪”を行使する事への理由付け(または免罪符)となっている。この設定自体に不満があるわけではないが、年齢を重ねれば重ねるほど家族などへの不幸に対して抵抗感・拒否反応が強くなってしまう(The Last of Usの冒頭にしても導入手法は全く同様だし、かなり心にダメージがある)。

他にもある。それはカエサルの”あの有名なシーン”だ。
筆者は歴史が大好物であるが、例え歴史好きでなかったとしてもカエサルの”名言”は聞いたことがあるだろうし、そもそも学校でも習うと思う。
だが、いざ実際にゲームプレイにおいてそれらしいシーン突入すると「(あれ…?これ”あのセリフ”を言うのでは…?)」と心の中で先にストーリーのオチが読めてしまうのだ。いや、この場合”次に何を言うかまで読めてしまうのだ”。まるでジョセフ・ジョースターが如く…。
そして実際にカエサルからそのセリフが発せられると…まぁなんとも微妙な心境になった。それは例えるならベテラン芸人の鉄板ネタや伝統芸能でも見ているかのような気分だ。
余りにも有名なものをストーリーとして組み込むのは慎重になった方が良いのかも知れない。

 

システム

アサシンクリードシリーズは毎年発売されるのが恒例となっていた。このオリジンズまでは。

これまでのアサシンクリードシリーズはマンネリ化が進み、そのゲームプレイはレガシーなものとなっていた。そんな中で約2年間のブランクを開けて登場した本作(開発期間が2年間という意味ではない)はアサシンクリードシリーズをモダナイズさせる事を1つの目標として制作されたようだ。
その目標は間違いなく達成されたであろう。

だが、筆者はアサクリオリジンズをプレイしていて疑問があったのだ。
「これはアサシンクリードというコンテンツが成し得た面白さなのだろうか」と。

アサクリオリジンズはエルダースクロールズ(以下、TES)シリーズやウィッチャーシリーズから大きな影響を受けているとされる。それはゲームを少しプレイすれば感じる事でもある。TESなどに代表されるオープンワールドを採用したRPGの要素がふんだんに実装されているからだ。
レベルアップやパークの概念があるし、敵を倒せば敵から武器が手に入る。
こういったゲームプレイは確かに面白い。だが、それは先人達の後追いをしている印象しか筆者にはなかったのだ。
アサシンクリードシリーズで最も面白いと言っても過言ではない本作が、アサシンクリード固有の面白さを提供できていないのは痛烈な皮肉にも思えた。

少々キツい表現をしてしまったが、本作が面白い事には間違いはない。
もしも、購入していないのであれば決して後悔する事のない一作であろう。特に歴史に興味があればより楽しめるだろう。

そして、本作はモダナイズに成功したからこそ次回作にも大きな期待も持っている。

 

潜入 / バトル

主人公バエクを操作して敵エリアに侵入する際には「見つからないように敵を排除していく」ことがプレイヤーの基本的な行動となるだろう。

今作はレベルの概念があるため、高レベルの敵が駐屯しているエリアに侵入するのはリスクが高い。ようは見つかったら…囲まれたら勝てないのだ(高レベルともなるとワンパンないし2撃でお陀仏もあり得る)。ここがまず過去作と大きく違うプレイフィールだ。
過去作であれば、アサシンブレードを筆頭に様々な武器を駆使して見つかる前から敵を一撃で排除できたし、例え見つかってもバトルに関しては”容易なパリィゲー”でありボタンさえ間違えずに押せれば負けることはほぼ無かった。だが今作の場合、敵が自分よりも高いレベルなら一撃で葬り去る手段が全くないのだ。例えば、アサシンブレード(本作では”ヒドゥンブレード”だが、知名度を考慮してここではアサシンブレードと呼称する)を使用しても敵は死なないのである。
そうなると必然的に勝てるレベル帯のところへと進行/侵入していく事になる。…と言った具合のレベルデザインが本作ではなされている。少々長く書いたが、これもオープンワールドRPGにおいては一般的な手法だろう。また、このレベルデザインや難易度は設定から変更可能であるため難しいと感じた場合には変更するのも良いだろう。

では次が本題となるが、「同等レベルのエリアに侵入する際のシーケンスはどうなるのか」だ。同等レベルの敵であればアサシンブレードおよび弓矢により敵を一撃で葬り去る事が可能だ。だが、敵に見つかってしまい囲まれるような状況にでもなると突破するのは難しいだろう。同格の相手で戦えるのはせいぜい1~2人で、それ以上の敵がまだエリアにいるのであればほとぼりが冷めるまで身を潜めていた方が良い。
以上の事からプレイヤーは物陰に隠れながら排除可能な敵をどんどん潰していくのが安全な攻略となるだろう。筆者は基本的にそのように進めていった。
「隠れながら敵を排除するオープンワールド」となるとMGSVを彷彿させるかも知れないが、MGSVと比べてしまうと敵AIの索敵は基本的にガバガバだ(過去作をプレイしているならばそれらと同等と思っても良い)。逆に言えば単純であるが故に把握しやすいというゲームらしい側面もあるだろう。
ステルスアクションの面白さを知る導入としても良い作品なのかも知れない。

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遠距離武器と言うのはゲームバランスにおいて非常に立ち位置が難しい

…と、ここまでで大きな疑問がある。
それはゲームプレイ上の単純な話で「アサシンブレードよりも弓矢の方が圧倒的に有能」である点だ。当然である。アサシンブレードは見つかるリスクを負いながら敵を排除する武器であるにも関わらず、弓矢は敵の索敵外から敵の排除が可能なローリスクハイリターンの武器なのだ。
もしもこれが銃器であれば"遠距離武器だが音でバレる"という要素になっただろうが、弓矢では完全にアサシンブレードの上位互換なのだ。
本作はアサシン教団の起源を知る物語である。そしてアサシンを象徴する暗器となっていったアサシンブレード。だがプレイしている限りでは(宗教的・思想的な設定を除けば)アサシンブレードではなく、バエクの弓術の方がアサシン教団に受け継がれるべき存在なのでは無いかと思えて仕方ない。
アサクリオリジンズのゲームプレイにおいては伝説的なアサシンブレードをもっと強力な存在としても良かったのでは無いかと筆者は思う。それは例えば前述した高レベル帯だ。弓矢ですらまともなダメージが与えられない高レベル帯であってもアサシンブレードであれば一撃で屠る事ができる…「見つかる危険を冒して、高レベル帯すら排除できるリターンを得る」という極端なリスクとリターンがあっても良かったのでは無いかと思うのだ。それが出来るのであれば(ゲーム内の設定とは言え)アサシンブレードが後世に残っていった事に対して説得力がある。

 

グラフィック

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近年増えているフォトモードは非常にありがたい

アサクリオリジンズのグラフィックスは基本的に美麗だ。
”システム”の項においては「ゲームプレイに独自性が無い」と表現したが、古代エジプトを舞台としたフォトリアルなグラフィックに関しては間違いなく”オリジン”だ。
また、2018/02/20の無料アップデートにより「Discovery Tour(ディスカバリーツアー)」という戦闘のない、古代エジプトのガイド付きモードが登場するのも興味深い点だ。
これによってよりじっくりと古代エジプトの建造物も見る事が出来るだろう。

街並みや遠方に移る地形、光の散乱や反射表現などどれも美しい。
リアルな汚さを感じさせる川など水関連の表現も好印象だ。
筆者はゲームでスクリーンショットを撮ることが好き(動画を撮るよりもスクショの方が好き)なためフォトモードが実装されているのは非常にありがたい事だ。

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炎のエフェクトは美しいが、燃えている松明自体の炎は何故か明らかに粗い

しかし、グラフィック面で気になる点もいくつかある。
まずは”炎”だ。上図を観て頂ければわかりやすいが粗いのだ。
筆者の環境は通常のPS4であるためPS4 Proのエンハンスドならこの辺りも改善されているのかも知れないが、少なくともフォトリアルなゲームにおいてはこういった粗さは悪目立ちしてしまう印象を受けた。

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今にも殺人でも犯しそうなヤバい目つきをしている

他にもある。NPC達の”視線”だ。こちらも上図を参照して欲しい。
これは筆者がフォトモードで撮影を行った限りでは”偶然”ではない。高確率でNPC達の視線が下図のような”殺人鬼の眼”をしているのだ。スクショ勢である筆者としては、この事態は困ったものでNPCを至近距離で撮影する事は封印したほどだ。

 

サウンド

ゲーム内BGMに関してはエジプトを彷彿とさせるような旋律であった事は確かであるし、近年はかなり増えている操作や状況に応じて変化する音楽が採用されているのだが、これが正直言って余り印象が無い。
この傾向はアサクリオリジンズに限った話では無い。
オープンワールドを採用したゲームでは「自然さ」を求める傾向があり、BGMもそれに引きずられる形となり印象に残りにくくなっているように感じる。

 

総評

アサシンクリードオリジンズは、マンネリ化と古臭さに浸食されたアサシンクリードと言うタイトルをモダンな形にまで昇華させた。本作はシリーズにとって偉大な立ち位置の作品だろう。

ゲームとしても非常にバランス良く仕上がっており、数多くの名作が群雄割拠した2017年においても決して埋もれる事なく光を放っていた。
間違いなく購入を勧める事ができる一作だ。

だが、プレイフィールに関してはまだモダナイズにとどまっておりアサシンクリード固有の色を出すには至っていない。それは次回以降に期待したいところだ。
しばらくはオリジンズ関連の開発に注力していくようだが、UBISOFTには今後も発売ペースよりもクオリティを重視した開発を是非とも行っていただきたい。

 

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