【レビュー】テイルズ オブ ヴェスペリア

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正義を貫き通す

テイルズ オブ ヴェスペリア(以下、TOV)はテイルズ オブシリーズの本編作品としては10作品目となる記念すべき作品だ。
筆者のテイルズ歴はと言うと「デスティニー」「デスティニー2」「ハーツ」「レディアントマイソロジー」辺りをプレイしたが、全体の歴史からすれば少しかじった程度だ。その点はご了承願いたい。

筆者はTOVはタイトル自体は当然ながら知っていたものの、プレイする機会が無く今まで過ごしてきていた。
しかし、テイルズ オブシリーズの中でもファンからの支持が特に厚い作品の1つであるとは知っていたためプレイしたい作品でもあった。
そんな中で、このたびリマスター版が発売されたため購入してプレイしたのだ。

 

テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER -Switch

テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER -Switch

  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: Video Game
 
【PS4】テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER

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  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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キャラクターを重視した老若男女楽しめるストーリー

なんといってもテイルズ オブシリーズの作品におけるストーリーの特徴は「キャラクター重視」であると言う事だろう。
緻密で重厚な世界観…哲学的で考察のしがいのある設定…そういう要素からゲームのストーリーを作り、そこにマッチするキャラクターを生み出していく手法もあるだろう。
しかし、テイルズ オブシリーズはその作りとは恐らく逆だ。あくまで筆者の見立てだが。
まず魅力的で特徴的なキャラクター達とその関係性を作り、そしてそこに世界観を乗せているように感じる。
TOVにおいては特に主人公であるユーリを中心に、それと対比するようなキャラクターとしてフレンやディークと言った人物が登場するようになっているのだ。

TOVのストーリーで特徴的なのはキャッチフレーズにもある通り「正義の在り方」がテーマとなっている点だろう。
以下、少々ネタバレを含むため注意願いたい。
主人公であるユーリは「裁けぬ悪に”正義を行使”する」キャラクターだ。
いわば「必殺仕事人」のような存在と言っても良いだろう。
一方で親友であるフレンは対照的で「悪を裁ける世界を作ろうとしている」キャラクターだ。
ヒロインであるエステリーゼもストーリーの中心人物であるのだが、本作のストーリーにおいて最重要と言えるのはユーリとフレンの互いの正義が在り方の違いだろう。
この2人の正義(主張)はどちらも正しく、どちらが悪いとは言えないのだ。
本作の表現(セリフやリアクションなど)はアニメ的ではあるのだが、その物語自体の完成度はしっかりとしており大人から子供まで観る事ができる丁寧な作りと言えるだろう。

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徹底しきれていないコンセプト

しかし、ストーリーにおいて気になる点が無い訳では無い。
物語の序盤~中盤辺りではパーティーメンバーにはそれぞれ自身の目的が設定されているのだが、「結果的に行き着く先が同じだった」と言う展開が少し連続しすぎているように思えた。
例えば、キャラクターAは○○と言う目的があり旅をしており、キャラクターBは××と言う別の目的で旅をしているが、各キャラクターがそれぞれ目指している土地あるいは人物が実は共通の土地/人物だった…と言うのが多いのだ。
確かに”呉越同舟”と言う言葉はあるが、余りにも重なり過ぎている感が否めない。

またネタバレとなるため詳細には伏せるが、終盤の展開に関してもご都合感がありやや勿体なく感じる。
本作の物語のメインテーマは「正義の在り方」であり、裁けぬ悪を裁くユーリと悪を裁ける世の中にしたいフレンの葛藤と対立が主軸となるべきハズだ。
ところが、終盤になり黒幕の正体が明かされる事によって「共通の敵が出てくる」ことになってしまい、その"主軸"がブレて棚上げされてしまっている。
最高の肉に、素晴らしい焼き加減、それを美しい皿の上に乗せた上で、最後にサラダドレッシングをかけてしまったかのようだ。
キャラクターを重視する本作においてはこれで収まりが良いのだろうが、正義の在り方に対する本作なりの「答え」ないし「けじめ」を示して欲しかった肝心の部分であるだけに勿体ない。

2008年の作品であるため強く言うつもりは無いが、3Dモデルが余り良くない点も気になる所だ。
声優の演技は素晴らしいのだが、「演技とキャラクターとのギャップ」が発生してしまっているのは観ていて気になるポイントだ。キャラクターのフェイシャルモーションやリアクション用モーションが喜怒哀楽+αのパターンだけで構成されており、迫真の演技とマッチしきれていないケースがありギャップが生まれてしまっている。
人気のある作品であるだけに今後のリメイクなどに期待したい所だ。

ユーザーが物語を進行させる上での問題点も少なからず存在する。
TOVでは次に進むべき場所がフィールド上やマップ上に記載が無く、話を忘れてしまうとどうすればいいかわからなくなってしまう。
一応「あらすじ」はシステムから参照する事は出来るのだが、次にどこへ向かうべきなのかの記載は無い事も多く、ストーリーを忘れてしまった場合には致命的な結果になりかねない。
また、ストーリー内のダンジョンではちょっとした謎解きのようなものが用意されているのだが、こちらもややわかりにくいものが多い。
進行が詰まったり、謎解き自体が難しい訳では無いのだが、どこで何をして欲しいのかが伝わりにくくわかりにくい。

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アニメが挿入されるが尺は短い

シリーズではお馴染みとも言えるが、本作では要所において「アニメ」が挿入される。
しかし、要所で入るアニメも尺が短くやや勿体ない。
このようなカットシーンではコントローラーから手を放して没入して観ていられる時間がもっと長いと嬉しい所だ。

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シリーズの醍醐味とも言えるスキット

こちらもシリーズでお馴染みとなっている「スキット」も健在だ。
スキットは紙芝居的な形式でパーティーメンバーが様々な会話を繰り広げる。
様々なタイミングや条件で発生し、「キャラクター間の関係性の補完」や「関係性の進展の表現」に大きく役立っているシステムだ。
会話は全てボイスが付いており、セリフ送りも自動で行ってくれるためテンポが良い。
内容はキャラクター愛が溢れるものが揃っており、これ無くしてテイルズ無しとも言えるだろう。

 

システム

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爽快なバトルシステム

TOVのバトルシステムは「エヴォルドフレックスレンジ・リニアモーションバトルシステム(EFR-LMBS)」と大仰な名称がついているようなのだが、簡潔に言ってしまえば鉄拳やソウルキャリバーのような2.5Dライクな戦闘を想像するのが良いだろう。
基本的には過去のテイルズ オブシリーズのような2D格闘ゲームと似た前進と後退の概念で戦闘が行われるが、専用のボタン入力をする事で3D的に戦場を走る事が可能だ。
3D的に戦場を走り回れば敵の背後から攻撃したり、敵から囲まれないような立ち回りをしたりできるようになる。

とは言え、その操作性は余りスムーズにはいかない。
まず3次元的なフィールドにおいてアナログスティックの操作とキャラクターの移動が連動しないのは違和感が強い。
例えば、自操作キャラクターを奥に移動させたければスティックは上に倒すのが一般的だろう。しかし、本作ではそのまま上を入力するとジャンプが発生してしまう。
また、敵に近付きたい場合には敵がいる方向にスティックを倒すのが心理だろう。
しかし、ここでもやはりそうはいかない。スティックを左右に倒す事が前進(近付く)/後退(遠ざかる)になっているのだ。
つまり敵が奥にいたとしても、スティックを左右に倒さなければ近付いたり、遠ざかったりが行えないのだ。
3D空間を自由に動けるフリーランもあるのだが、こちらは位置取りを変更するもので攻撃には向かない仕様だ。
テイルズ オブシリーズでは格闘ゲームを彷彿とさせるコンボ技などがバトルにおける花形となっているが、3D空間と2D格闘ゲームの操作系を無理に融合させた感が否めず、直感的に違和感の強い・クセの強い操作になっている点は気になるポイントになってしまっている。

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コンボ系の格闘ゲームのような爽快感

しかし、TOVでのバトルが魅力的でない訳では無い。
バトルでは有効なスキルが非常に多くあり、ある程度のスキルが充実して来ると面白いようにコンボが決まったり、キャラクターの個性が強くなっていき楽しめるようになってくる。

筆者のお気に入りはジュディスだ。
彼女はいわゆるエリアルコンボが得意なキャラクターだ。上図を観て頂ければ彼女の魅力が少しわかるかも知れない。
操作難度はやや高いのだが、敵を空中に浮かせ続けるようなコンボができる。
筆者としては使用していて最も楽しいキャラクターだ。
なお、上図は本ブログの画像サイズ制限に引っ掛からないようにコンパクトにまとめており、やろうと思えばもっと豪快なコンボなども可能だ。

ストーリーをある程度進めていけばオーバーリミッツやフェイタルストライクと言った要素も解禁されていく。
オーバーリミッツはほぼ全ての攻撃や技が繋がるようになる強力なモードで、敵に攻撃をしたり、攻撃をされたりする事で溜まっていくゲージを消費する事で移行できる。
フェイタルストライクは敵に設定されているHPとは別の耐久値を0にすると発動可能になるものだ。ザコ的ならば一撃必殺、ボスには大ダメージを与える事ができるものとなっている。

敵に豪快なコンボを決めながら戦っていくのは楽しいものの、満足にコンボを決められるようになるにはストーリーの進行およびスキル習得が必須であり、それらがある程度揃うまでは楽しさが半分以下になってしまうのは欠点であるとも言えるだろう。
本作のバトルにおける楽しさがコンボやオーバーリミッツ、フェイタルストライクに大きく依存しすぎているため、それらが行えない物語の序盤では面白さが伝わりにくい。
その上、初見のプレイであれば「このバトルがこれから楽しくなる時が来るのか」も当然ながらわからないため、幸先として不安に感じるポイントが何度もあった。
本来ならば序盤には序盤の、終盤には終盤の醍醐味や楽しさが用意されるべきであり、戦闘における楽しさがスロースターターであるのは余りにも勿体なくマイナスだ。

本作では、わかりやすい操作性から手数の多い攻撃を繰り出すユーリや難度はあるが空中戦を得意とするジュディス、魔法による範囲攻撃で一網打尽に出来るリタなど、キャラクター毎のコンセプトや操作感が全く異なる。
この個性は非常に良く出来ており操作キャラクターを変更するだけで全く違う楽しみが待っているのは大きなプラスのポイントと言えるだろう。
しかし、これらは敵によっては相性が悪い場合が度々出てくるのは問題だ。
例えば前述のジュディスであれば「(敵の重量が重い場合に)空中戦に持ち込めない」と言ったケースが登場する。
特にボスの多くが浮かせる事ができない重量級の巨体であるため、全く本領を発揮できないケースも多い。
バトル自体は良く出来ているだけに、全てのキャラクターが全てのバトルでコンセプト通りに動けるように調整して欲しかった所だ。

調整して欲しいと言う観点から言えばバイトジョーを筆頭に根本的にまともに攻撃をさせて貰えないようなボスなどが存在している事も気になる所だ。
「強い敵」であれば理解できるのだが、「攻撃が当たらない・当てにくい敵」と言うのはコンボ重視な戦闘と言うコンセプトから考えても少し控えめにして頂きたい。

マイナスとまでは言わないが、攻撃時にヒットストップがあればコンボの楽しさはより増しただろう。
ヒットストップはプレイヤーに対して「(有効な)攻撃を行った感」がよりハッキリと感じられ爽快感が増す。
それに加えて、コンボを重視する本作であればヒットストップが導入される事で自分と敵の状態の把握がしやすくなりコンボのやりやすさも向上するハズだ。
ただし、本作は味方も敵も複数で戦闘を行う乱闘状態であるため、ヒットストップ中に攻撃を貰ってしまい途切れるなどの弊害も生んでしまうだろう。
ここには別のアプローチが必要となってしまうが、ヒットストップは是非とも導入して欲しかった要素だ。

 

グラフィック

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トゥーンシェーディングのグラフィック

TOVのグラフィックはスタイライズドされ、トゥーンシェーダーを利用したものとなっている。

2008年の作品であるとは言え、(スタイライズドである事を加味しても)同年代のものと比べるとキャラクターの造形やフィールドはやや物足りない印象を受ける。
キャラクターは各アニメーションに専用のものが用意されているとはいえ、表情などは喜怒哀楽などのパターンで構成されておりチープさが強い。

声優の演技のおかけで気にならないレベルになっているものの、現代でも観れるとは言い難く、「当時の水準だから許された」と言うべきだろう。
フィールドの構成や構造にしてもファンタジー世界である事を活かしたような想像力に富んだ地形などは余り多くない。

前述の「ストーリー」の項でも記載済みだが、本作ではアニメーションが挿入されるポイントがいくつか存在している。
しかし、尺が短いのは勿体ないと言える。
ものによっては「もはや不要だったのでは」とすら思える短時間のアニメーションの場合すらある。

サウンド

TOVにおいてダングレストや終盤の通常戦闘のBGMは迫力があり必聴と言えるものだが、全体的にはそこまで印象に残るような曲は少ない。
本作において特筆すべきなのは曲と言うよりも、やはり演技だろう。
昨今(2010年代)は抑揚の少ないナチュラルな演技がトレンドではあるが、(2008年の作品と言うのもあるためか)本作では全般的に抑揚の強いアニメ的な演技が多く採用されている。
とは言え、どのセリフも非常に活き活きとしており、キャラクターの個性や魅力を十分に感じさせてくれる。

また、戦闘終了時にはキャラクター同士での掛け合いがあり、物語の進行に応じて内容に変化が生まれるなど強いこだわりが感じられる。

(個人的には大本眞基子さんや小野大輔さん、稲田徹さんと言った著名な演者が脇役を何キャラも兼ねている事が色々な意味で面白く感じたりもしたが。)

 

総評

テイルズ オブ ヴェスペリアは大人から子供まで楽しめるストーリー、やりがいのあるバトルシステムを両立させる事が出来た一作だ。
ややダークな設定をした主人公ユーリを筆頭にキャラクターも魅力的で、イベントやスキットで見せる声優の演技も印象的だ。

しかし、終盤にコンセプトがブレてしまうストーリーは勿体ない。
物足りない3Dモデル、面白くなるまでが遅いバトルシステムなどもやや足を引っ張ていると言えるポイントだろう。

 

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