【レビュー】よるのないくに2

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月の欠けた紺碧の夜

最初に書いておこう。筆者は前作「よるのないくに」をプレイしていない。
本作「よるのないくに2」がシリーズ初めてだ。
そのため、前作をプレイしていればこそのシーンに対してのリアクションは行えなかった。ご了承願いたい。

よるのないくに2は群雄が割拠した2017年に発売されたゲームだ。
本来であれば筆者はこの手のタイプのゲームをプレイすることは無いのだが、群雄の勢いが余りにも凄かったためAAAや大作では無いゲームがしたいと思っていたのだ。
そんな時にちょうど筆者の購入スケジュールの隙間に「よるのないくに2」が発売される事を知り、購入に至ったわけだ。
そんな経緯でプレイをした「よるのないくに2」のレビューを書いていこうと思う。

 

よるのないくに2 ~新月の花嫁~ 通常版 PS4版

 

よるのないくに2 ~新月の花嫁~ 通常版 Nintendo Switch版

 

 

ストーリー

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百合要素が主軸ではあるがシナリオは悪くない

本作のストーリーにはいわゆる”百合”のような要素が強い。
世界設定を大まかに説明すると「明けない夜の中、人々は魔物と化した世界」だ。
人々が平穏に過ごせる範囲が少なくなっており、それを維持するための「刻の花嫁」と呼ばれる生贄が必要とされる。主人公はその生贄に選ばれてしまった親友を助けようとするのだが…。

全体的なストーリーを通してみれば悪くない印象ではあるのだが、不満点も存在する。
1点目はノーマルエンドとトゥルーエンドの差分だ。
ネタバレであるため詳細には書かないが、トゥルーエンドにて明かされる内容を考えるとノーマルエンドが成立しないのでは無いかと思えるのだ。
2点目はストーリーの描き方だ。
カットシーンにおけるカメラワークやエフェクトなど演出面で”魅せる工夫”が無く、全体的に淡泊な仕上がりになっているのは少々勿体ない。

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百合の描き方にも少々不満が残る

主軸となっている百合の要素にも少々の不満が残る仕様がある。

主要となるキャラクターは8人ほど存在するのだが、本作はある程度の周回プレイを想定しているのか、性格的およびゲームシステム的な個性を1週目のプレイだけで全員分把握する事が機会的・構造的に少々難しい。
「百合」のような要素を取り入れているにも関わらず、各キャラクター性を理解できる工程が用意されていないのはグラブを持ちながら素手でキャッチボールをするようなものだ。

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前作プレイヤーには嬉しい要素もある

なお、本作には前作の主人公であるアーナスも登場している。前作プレイヤーには嬉しい要素ではないだろうか。

 

システム

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ストーリーと噛み合った制限を多用したシステム

本作のゲームプレイシーケンスをざっくりと説明すると、「ブリーフィング⇒出撃(フィールドに出ての探索とバトルアクション)」の繰り返しとなる。
しかし、ただ単純にコレを繰り返す訳ではない。ストーリー設定上の理由(月が欠けていき新月になってはいけない理由がある)から出撃可能回数に制限があるのだ。そして出撃回数が上限に達してしまうと事でゲームオーバーとなってしまう。
つまり、出撃した際にはできるだけ効率良くフィールドを攻略していく必要がある。
ところが、出撃にもおいても制限が存在する。出撃による探索は時限性なのだ。
限られた時間の中でフィールドを探索し、敵と戦い、行動可能な範囲を徐々に増やしていく事になる。
時間制限については最初は驚くほどに短いのだが、主人公をレベルアップさせる事によって増加する。
まとめると出撃時にはフィールドを効率良く探索しつつ、敵も効率良く倒していき、出撃可能回数到達までにボスを倒す必要がある。

とは言うものの全体的な難易度はそこまでシビアに設定されている事は無いため、クリアするだけならば問題なく設定されている。
しかし、ストーリーの項で前述したように本作では主人公と一緒に出撃できるキャラクターがそれなりに存在しているのだが、彼女達の個性を知るには出撃回数制限がされているシステムは相反した要素となる。
彼女達の性格的個性を知ったり、親密になったり、バトルシステムにおいての特性を知るには出撃をしないといけない訳だが、無駄な出撃をしてしまうとストーリーの攻略のハードルが上がってしまう。
また、出撃させないままでいるとレベルが低いままとなるため、余計に一緒に出撃させにくい悪循環となってしまうのだ。
百合的な要素(キャラクター間の関係性の表現)を含んでいるのであれば、ストーリー上で仲間になったキャラクターと必ず出撃する事になるチャプターを用意するなど、もう少しキャラクターの性格的・システム的個性を「強制的に」ユーザーに教えるような機会を設けた方が良かったように思う。

しかしながら、ストーリーとシステムが噛み合っている点は良いことだろう。
また、好き嫌いはあるかも知れないが単純なフィールド探索ではなく様々な回数制限や時間制限によってユーザーが感じる焦燥感も本作のストーリーテリングとして非常に有用なものではないだろうか。
とは言え、アップデートにより2週目以降は本システムの恩恵は無くなってしまうのだが。

とは言え、フィールド探索やバトルにおいて敵も味方もAIが貧弱であり融通が利かない事が多い事はストレスに感じる。
特にリリィである味方のNPCと従魔と言うサポートNPCはプレイヤーキャラクターであるコリジョン(当たり判定)があるのだが、キャラクター同士が衝突してもNPCが動いてくれない、または押し出せない事が考慮不足による設計上のバグを生み出している。
特定のフィールドに存在する狭い路地のようなところにキャラクターが入ってしまうと退路をNPCが封じてしまって出られなくなってしまうのだ。
退路を封鎖しているNPCをどかそうと追突しても微動だにしないため、筆者はやむなくゲームをリセットせざるを得なかった。

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バトルシステムは”大らか”な作りだ

フィールドの探索時に発生するバトルはわかりやすい表現をするならば「無双シリーズ」のものに近い。徘徊しているようなモンスターを簡単なボタン操作の組み合わせでバッサバッサと斬り倒していく。

仲間のNPCとバディ(作中ではリリィと呼称)を組んで出撃をするのだが、バトル中にはキャラクター毎に異なる特定の行動を行うと「ダブルチェイス」と呼ばれる強力な協力技を使用できる。
発動させるための条件はキャラクター毎に異なる訳だが、特にリリィの攻撃に合わせてプレイヤーが攻撃を行う事で発動するタイプのダブルチェイスは良くできているように感じた。
なぜなら、リリィが攻撃を行った際の声を聴いて、それに合わせてプレイヤーが攻撃する事でかなりタイミングを合わせやすいからだ。
他のタイプ条件では発動難度が高いリリィも存在するため、正直これが意図した設計であるかは微妙なラインに感じるのだが、共闘感を良く演出できている。

更に戦っているとゲージが溜まっていき、そのゲージを消費する事で発動する「リリィバースト」という強力な技も存在する。
こちらは狙わずとも普通に戦っていれば発動可能である。

バトルシステムは悪くないのだが、「当たり判定が1回で十分なのでは」と感じるような攻撃が多段ヒットし、敵でも味方でもガリガリ削れる事も多く感じられ、全体的に大らかな設計が多いのは少々気になるポイントだろう。

 

グラフィック

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グラフィックは少々物足りなさがある

グラフィックにおいては(本作の特色から言って当然ではあるのだが)キャラクターの造形に一番力を入れていると思われる。
しかし、それでもスタイライズド(デフォルメ)な表現を採用した同世代のキャラクターモデリング水準と比較してしまうと少々物足りないのは事実だ。

探索する事になるフィールドは更に簡素で「絶景」と言えるようなロケーションは少なく、テクスチャーに関してもお世辞にも綺麗だとは言い難い。
そのため、基本的にはストーリーやキャラクターの物語を楽しむのがメインと考えた方が良いだろう。

 

サウンド

本作の楽曲は良いと感じさせるメロディが多いのは良い点だろう。
メロディはPS2時代のような若干の古さを感じる気はしなくもないが、筆者はそれも含めて評価したい。

しっとりとした暗く悲しい曲や落ち着きのある安らぎを感じるような曲が多いが、バトルシーンでは非常にカッコいい(それこそ無双シリーズのような)曲も存在する。

総評

よるのないくに2はストーリーとシステムなどが噛み合いながらも、明らかに考慮不足な点や簡素すぎるグラフィックが目立ち、足を引っ張る結果となった勿体ない作品だ。
開発リソースにおいて苦労したようではあるが、満月になるにはまだまだ足りない点の多い欠けた月のような作品となってしまっている。