【レビュー】Lost Ember

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駆けろ

Lost EmberはドイツのインディーメーカーであるMooneye Studiosが開発した狼を代表として様々な動物になってフィールドを走り回れるゲームだ。
狼(動物)となってフィールドを走り回れる作品と言えば大神やゼルダの伝説 トワイライトプリンセスが大好きだった筆者には嬉しい要素だった。
そんな要素に惹かれてプレイしようと思った作品なのだ。

今回はLost Emberについて紹介したい。

 

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ストーリー

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人の足跡を辿る物語

Lost Emberのストーリーの主軸は人間の親子の物語だ。
ストーリーでは人間たちの機微を中心として構築されているが、その描き方は言葉を解さない動物たちを介している点は面白い。
プレイヤーが操作する事になるのはオオカミだ。
オオカミは偶然に、いや運命的に出会う事になった人間の魂と共にかつて存在した人間の足跡を頼りに各地を巡り、人間がいた時代に何が起きたのかという謎を紐解いていく。

本作の世界観では人間が死後にヴァルハラのような世界である「光の都」に行く事になるのだが、それに至る事が出来なかった者が光の都を目指して旅をする事になる。
ストーリーではなぜ光の都に行く事が出来なかったのかを人間の魂が語り掛ける形で知っていく。
ストーリーは一本道でフィールド上にあるポイントを巡る事で進行するオーソドックスな構成だ。

人間の魂が進行をナビゲーションしてくれる立ち位置ではあるのだが、魂が進行方向を教えてくれたり、喋りかけると何をすれば良いのか教えてくれるという事はほとんどない。
難易度が高いという事はないのだが、ナビゲーションはそこまで親切ではないため、次にどこに進めば進行するのか少々わかりにくいと思う事はあるかも知れない。

ストーリー進行の一部にはQTE的な操作を要求される場面があり、失敗すると直前のチェックポイントまでやり直しとなってしまう。
猶予時間は非常に長く、入力するボタンも簡単であるため、非常に易しいQTEではあるが少々面倒な仕様だと思う場合もあるだろう。

本作には一応は上述のようなストーリーらしい部分があるにはあるのだが、ストーリーがメインディッシュとなるようには作られていない点は知っておくべきだろう。
様々な動物となってフィールドを駆けまわる雰囲気を味わう体験こそが中心であり、ストーリーはあくまでもオマケの側面が強い。

 

システム

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大自然を駆ける

Lost Emberは様々な動物を操作して大自然のフィールドを駆けまわる事が出来る。
メインの操作はオオカミであるが、オオカミには「魂替え」という能力が備わっており、これを使用する事で様々な動物に移り変わる事ができる。
魂替えが可能な動物は陸棲のものや鳥、魚まで可能で、様々なシチュエーションでの体験できる。
陸海空とプレイシーンがシームレスに移り変わるが、その操作性は非常にシンプルにデザインされているため、どの動物に変わってもストレスなくプレイできるのは良く出来ている操作性だ。

各種動物は食事や休息するといった操作をする事ができる。
これらの操作は実行して何かリワードがあるという訳では無いが、動物が生きる世界観に厚みをもたらしている。
非常に可愛らしいアクションも多いので、やってみると和む事だろう。

本作はストーリードリブンな一本道なゲームではあるが、フィールドは適度な広さを有しており、動物で走り回ったり、鳥で飛び回るのには十分だ。
フィールド上には宝物やキノコなどの収集要素が隠されており、美しいフィールドを隅々まで探索するだけでも楽しめる。
しかし、探索は楽しいのだが勢いに任せてあちこちを走り回っていると地形にハマってしまう事がままあり、そうなってしまうとチェックポイントから再開しなくてはならない事があるのは気になる所だ。

本作は「様々な動物を体験できる」という雰囲気を楽しむ事に主眼を置いた作品だ。
そのため、ゲームらしい”駆け引き”を楽しむようなものではない点は注意が必要だ。

 

グラフィック

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美しい大自然のフィールド

キャラクター造形はスタイライズされたモデリングを行っているが、大自然のフィールドはフォトリアルとスタイライズの中間的な映像表現になっている。
フィールドは草木が生い茂る大地から、砂漠のような地形まで様々に用意されており、そのフィールドを様々な動物になって駆け回ることが出来るのは爽快だ。
人間がかつて暮らしていた都市(遺跡)はマチュ・ピチュのような山岳都市を彷彿とさせる構造になっておりエキゾチックな雰囲気を感じさせる。
GUIやHUDは最小限に構成されており、どこを見ても美しく映える。

動物たちのモーションもとても良く出来ている。
動物はスティックを急転換するとブレーキするような動作になるなど細部まで作られている。
リアクションも良く、強風が吹いている場所では風の向きに合わせて体を傾け風を受けないようにしているなど芸が細かい。

なお注意点も記載したい。
筆者は今回、Nintendo Switch版を購入してプレイしたのだが、最適化がやや不足している印象を受けた。
ゲームが一瞬ハングしたようにフレーム落ちが発生する事があるのは勿体ない。

 

サウンド

全体的なBGMは安らぎのある落ち着いたものが多い印象的だ。
特に最終盤にはBGMにシームレスにボーカルが入るように演出されるインタラクティブな作りも印象的だ。

 

総評

Lost Emberは大自然を動物になって走り回る爽快さの体験にフォーカスした作品だ。

オオカミとなって草原を駆け、魚となって水中を泳ぎ、鳥となって荒野を飛ぶ。
様々な動物となってフィールドを探索する内容はコンセプトに忠実でシンプルにまとめ上げられ、操作性もわかりやすくストレスなくプレイする事ができる。
また、動物たちが活き活きと走り回れる大自然のフィールドも魅力的と言えるだろう。

ストーリーも用意されてはいるが、ほとんどオマケ的な側面が強い。
ゲームプレイ部分においても、駆け引きが存在する訳では無い。
そのため、ゲームらしい要素も少し用意されてはいるのだが、それを目当てに購入するのはミスマッチだろう。
あくまでも様々な動物となる雰囲気を体験できる作品である事は忘れてはいけない。

 

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