【レビュー】SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE

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成すべき事を成す

SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE(以下、隻狼)は”死にゲー”と形容されるサブジャンル「ソウルシリーズ」の総本山フロムソフトウェアの作品だ。

世界観はソウルシリーズでは西洋の中世/近世ファンタジーであったが、本作では戦国時代をベースとした和風ファンタジーへと大きく変化したのが特徴的だ。
また、RPG要素の大半が撤廃される事も事前に告知がされていたため、「時間をかければ多くの人がクリア可能」であったソウルシリーズとは異なるプレイになる事も予想された。
筆者としては「新たな武器の獲得」などのRPG要素がプレイのモチベーションでもあったため、隻狼のゲームプレイに対して期待半分不安半分であったのが正直な所だ。

また、ダークソウルをプレイしているユーザーならばピンと来た方もいるかも知れないが、「狼」「左手が機能しない」と言うキーワードからアルトリウスを彷彿させるようなファンサービス的な設定も気になるポイントであった。

今回は隻狼のレビューを行っていこうと思う。

 

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4

  • 発売日: 2019/03/22
  • メディア: Video Game
 
SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE GAME OF THE YEAR EDITION

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE GAME OF THE YEAR EDITION

  • 発売日: 2020/10/29
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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明瞭に存在するストーリー

隻狼のストーリーは日本の戦国時代における「葦名」と言う架空の国の物語だ。
とある剣聖の武力により国を興したものの、時が経ち葦名は存亡の危機にさらされる。
葦名はその危機を救うために「御子」と呼ばれる人物が持つ異形の力「不死の力」を得ようと身柄を拘束した。
主人公である「狼」は御子に仕える忍びであり、御子を助けるべく行動を開始する。

ストーリーの導入(動機付け)は比較的オーソドックスな「マイナス」から開始されるものが採用されている。
本作で言えば御子様が連れ去れる事がそれにあたり、主人公の行動は御子様の救出を動機としているのだ。
しかし、御子様の救出がプレイヤーに対しての動機付けとまではなってはいない。
何故ならプレイヤーは開始直後では御子様の事を知らないからだ。
一般的には万人が立ち位置を置き換えやすい家族や友人、恋人がその役割を担う訳だが、御子様はそのどれにも該当しない。
そのため、御子様を失った事の重大さが伝わりにくいのだ(もっと正確に表現すると「大事なのは伝わっても、それがどれくらい大事なのかがわからない」と言うこと)。
本作をストーリードリブンなゲームとして捉える(ストーリー目当てにプレイする)のは間違っていると思うが、少なくともストーリーがゲームプレイを牽引するには弱いと言える。

ストーリー全体では日本の時代劇を彷彿とさせる設定やシチュエーションが用意されているのだが、ソウルシリーズ独特のセリフ感が失われた訳では無い。
その独特な威圧感や底知れない雰囲気を持ったセリフ回しは健在で、例え登場回数が少なかったとしても各キャラクターを非常に魅力的にさせている。

本作のストーリーはダークソウルやブラッドボーンなどの”ソウルシリーズ”と形容されるようになった作品群と比べて明確な、そして明瞭に訴えてくるストーリーが存在している。
もちろん、それはあくまでも「ソウルシリーズと比較した場合」であり、0から100まで丁寧に描かれているという訳では無いのだが、それでもソウルシリーズとは全く異なるストーリーの描かれ方だ。
これは狼と言う明確な主人公が存在しているが故に実現できたことだろう。

 

システム

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殺陣のような立ち回りを再現したチャンバラバトル

隻狼のバトルシステムではチャンバラを実に見事に再現できている。
チャンバラと言って連想できるものと言えば、やはり剣劇の「剣と剣で戦いあう」ものだ。
攻撃は剣で行い、防御も剣で行う。これをゲームプレイとして落とし込めているのだ。

まず隻狼では生命力となるHPの他に「体幹」と呼ばれるゲージが存在している。
上図では敵の上にゲージがある事が見て取れるだろう。
赤いゲージは体力で、その下にある黄色またはオレンジ色に変化しているゲージが体幹ゲージだ。
この体幹ゲージはスタミナにも近い概念のゲージで、蓄積しても時間経過と共に徐々に回復していく。しかし、このゲージが最大値まで溜まると残HPの量に関係なく一撃必殺の攻撃「忍殺」が行えるようになるのだ。
上図でもゲージが最大値まで溜まった際に敵の心臓付近に真っ赤なマーカーが発生しているのがわかるだろう。
この状態で攻撃ボタンを入力すれば忍殺が行われ、上図のように敵のHPが満タンであっても一撃必殺なのだ。

この体幹ゲージは敵に攻撃をガードさせたり、敵の攻撃を弾く事で蓄積させる事が可能だ。
前者では体幹ゲージが蓄積する量が少ないため、「敵の体幹ゲージを回復させない」と言う用途がほとんどだろう。
そのため、体幹ゲージを蓄積させるのは後者の「弾き」が主役だ。
弾きはダークソウルシリーズにおける「パリィ」に相当するようなもので、敵の攻撃をタイミング良くガードする事で発生する。
このように書くと難易度が高い技術のように思えるかも知れないが、実際には弾きの受付時間は長めに設定されている。
また、本作の敵はスピードこそ速いものの初期のソウルシリーズと同様にほとんどの攻撃で前隙がしっかりと用意されているため、落ち着いて対処すれば弾くことは決して難しくは無い。

体幹ゲージを蓄積しての一撃必殺の忍殺は確かに魅力的だが、それが簡単に出来るようでは死にゲーにはならない。
この体幹ゲージは「HPの残量が多いと回復速度が速い」と言う特徴も見逃してはならないポイントだ。
HPが満タンの状態では敵の体幹ゲージは瞬く間に全回復してしまう。特にHP量が多いボスクラスでは忍殺はなかなか狙えないようになっている。
しかし、HPを30%くらい削っただけでも体幹ゲージの回復速度に雲泥の差が生まれるため体幹ゲージを蓄積させやすくなるのだ。

ここで更に注意するべきなのは、この体幹ゲージはプレイヤーにももちろん存在する点だ。
敵の攻撃を弾けずにガードだけになってしまった場合には体幹ゲージが大きく蓄積してしまうし、攻撃でダメージを受ければ体幹ゲージの回復速度が低下し、攻撃やダッシュやジャンプなどを行っている場合には体幹ゲージが回復しない。
そして、プレイヤーの体幹ゲージが最大まで蓄積してしまった場合には無防備な時間が長く発生してしまう仕様となっている。
最大蓄積時に敵とは異なり即死する事が無いのはアンフェアには感じるが、それでも自身の体幹ゲージが蓄積していってしまうのは緊張感がある。
特に体幹ゲージが蓄積してしまうのはHPが低下しているケースが大半であるため、その緊張感は倍増だ。
また、敵の体幹ゲージも放置していれば回復が始まってしまうため、自身の体幹ゲージの回復をせずに攻撃を行って敵の体幹ゲージの回復を阻止するか、それとも敵の体幹ゲージを回復されてでも自身の体幹ゲージも回復するのかというリスクとリターン(駆け引き)が生み出されている。

本作ではHPと体幹と言う2種類のゲージが存在しているが、これらは相互に影響を及ぼすパラメーターとなっているため、戦闘中の行動が無駄になりにくくなっているのは素晴らしいメカニズムと言えるだろう。
もしもこれが相互関係の無いパラメーターであった場合には「HPを削る意味」あるいは「体幹ゲージを蓄積させる意味」が非常に薄くなってしまい、もはや全く別のプレイフィールへと繋がってしまった事だろう。
また、ブラッドボーンにおいては被ダメージを攻撃で回復できる事によってアグレッシブな戦闘を実現したが、隻狼においては防御行動とも言える行動すら攻撃手段として機能するように変化している。
見た目の「チャンバラらしさ」を実現しつつもゲームプレイとして高い次元で成立していると言う”二兎追うものが二兎を得た”本システムは素晴らしいデザインだ。

しかし、基本的なバトルシステム自体の完成度は素晴らしいものの、壁際のカメラワークの劣悪さは強いフラストレーションだ。
本作では上記の通り、敵の攻撃を弾くような立ち回りが多く、必然的に敵の攻撃でノックバックが発生する事も多い。
であるにも関わらず、壁際までノックバックしてしまうとカメラワークが敵キャラクターはおろか、自キャラクターまで認識しにくい状態になってしまう。
特にボス戦は広さこそマチマチだが、閉鎖空間で比較的長時間にわたって戦う事になるため、壁際まで到達してしまう事もありがちだ。
なにより、この劣悪なカメラワークによって死んでしまった時のなんといえない理不尽さを感じずにはいられない。
この問題点はアクションゲームとしては痒い所に手が届いていないものであり、カメラワークの改善を行って欲しい所だ。
とは言っても、問題自体はピンポイントと言えるレベルであり、壁際にさえ行かなければ常に快適なプレイフィールだ。

 

義手忍具

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忍者らしさを強くする義手忍具

ここまで隻狼の話を聞いただけでは主人公が「侍」だと誤解しそうなものだが、主人公は紛れもなく忍者だ。
それを強く印象付けてくれるのが「義手忍具」である。

主人公である狼は物語の最序盤で左腕を失う。
その失った左腕の代わりになるのが義手忍具だ。
義手忍具は忍者が使用する忍具を内蔵することが出来る義手の事で、これによって手裏剣や鉤縄と言った忍者らしいアイテムを使う事が出来る。
多くの義手忍具は使用するために「形代」と言うアイテムを消費する必要があるため、いつでもどこでも何度でも使用できる訳では無い事も注意が必要だ。

義手に内蔵されている鉤縄は忍者らしい動き、そして立体的な移動が1ボタンで簡単に可能になっている。
こちらは上図の中央がそれにあたり、鉤縄での移動では形代を消費する事は無い。
鉤縄はフィールドに設定されている特定のポイントに引っ掛ける事が可能で、ポイントが灰色で表示されている場合には距離が足りていない事を示し、緑色のポイントになればボタン入力で鉤縄を引っ掛けて移動する事ができる。
これは本作において必須の移動手段であり、場所によっては飛び降りないと距離が足りないように設置されている場合もある。

鉤縄を除くこれらの義手忍具は「特定の状況で強い効果を得る」ように設定されているものも存在する。
例えば手裏剣だ。
手裏剣は飛び道具として使う訳だが、その威力自体は非常に低い。
うっとおしい動物タイプの敵ならば一撃で葬り去る事もできるが、人型の敵は始末しきれない。
また、敵がこちらに気付いている状態ならばガードによって弾き飛ばされてしまう。
そんな手裏剣だが、空中にいる相手に当てると特効が発生する。
HPへのダメージもそうだが、体幹へも大きなダメージを与えられるようになっている。
全ての忍具にこのような特効が用意されている訳では無いのだが、対峙している敵に特効が利きそうなのであれば試してみても面白いだろう。

 

スキル

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数少ない成長要素

隻狼はダークソウルやブラッドボーンと比較すると圧倒的にRPG要素が少ない。
そんな中でも唯一と言える主人公の成長要素がスキルだ。
「なんで”スキル”は横文字なんだ」「代替するカッコいい日本語名は無かったのか」と若干思わなくもないが無粋だろう。

スキルでは敵に与える体幹ゲージへのダメージが上昇するものがあったり、上図の右のような「流派技」と呼ばれる特殊攻撃が習得できたりする。
特に前述のスキルは有用なものも多いため、早めに習得しておきたい。
そして後者の流派技だが、これは少々残念だ。
実戦に耐えうる流派技も一部存在するものの、その大半がゲームスピードが速い本作のような敵には全く機能しない前隙が大きい流派技なのだ。
その上、モノによっては前述の義手忍具でも使用する事になる”形代”を消費して発動する有様で割に合わない。
スキルは敵を倒したポイントを消費する事で習得していく事になるのだが、決して安くは無いポイントを消費して使い道がほとんどない技を獲得してしまうのは悲しい所だ。
例えば「隙は大きいが、当てられれば敵の体幹ゲージ回復を一定時間停止できる」など、前隙の大きさに見合った(もしくはそれ以上の)大きなリターンがあるのであれば使用する事もあっただろう。
見た目が派手なだけで、使い道のない流派技が多いのは嘆かわしい。

ここでやはり気になるのは、RPG要素の大半が撤廃されているために冒頭に記載した発売前の印象通りの気になるポイントに繋がっている事だろう。
まず、RPG要素が無くなってしまっているためにダークソウルやブラッドボーンのように時間さえかければ多くの人がクリアできるとは言い切れない。難易度を調整するような機構も存在していないため尚更だ。
近年ではクリアする事の重要性自体は低くなっているが、だからと言ってクリアがしにくくなっている事に目を瞑る事は出来ない。
そして、RPG要素の撤廃によりキャラクタービルドや武器防具収集がプレイのモチベーションに繋がっていた筆者のようなプレイヤーには小さくは無いマイナスだ。

 

ボス

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強さとしてやや淡泊なボス達

隻狼のボスのキャラクター性は非常に魅力的だ。
特に本作ではカットシーンなどでキャラクターのセリフがしっかりと用意されているボスも多く、底知れない雰囲気を持ったセリフ回しから漂う圧倒的な強者のオーラは非常にカッコいい。
しかし、人間に近い体格をしたボスが大半を占めているため、インパクトは少々見劣りすると言わざるを得ないだろう。

見劣りするのは見た目だけでは無い。その強さに関しても同様だ。
まず、ボスのHPは2ゲージ分以上あり、1本分を削り切ると攻撃パターンが数個追加されるケースは度々あるのだが、戦闘方法が一新されるような「第二形態」が存在する事は非常に珍しくなっている。
そして、前述の”弾き”を始めガード性能全般が優秀過ぎる所があり、弾けなくともガードさえ出来ればHPへのダメージは無い事が大半だ。
ガード不能技には「危」という文字が画面上に表示され、文字通り危険な事がすぐにわかる。
ガード不能技とは異なる性質の「ガードを貫通してダメージが入る攻撃」をしてくる敵は極めて少ない。
また、主人公は無尽蔵のスタミナを持っており距離を取る事も容易くなっている。
結果として、優秀なガード性能を押し付ける事で早々にボスの攻撃パターンを覚えきってしまう事が容易で、”二段階目”もほとんど無いためHPゲージが2本分あろうともプレイヤーがやる事には変化は生まれず、問題なく…否、問題になるポイントすら無く倒せてしまう。

「筆者の場合では」と言う前提で記載するが、敵の攻撃パターンや特徴を覚えて機械的に(ほとんど"音ゲー"と同じ感覚で)処理しきってしまう事が多く、操作やボタン配置に慣れた中盤頃からはボスであっても多くて2~3回の挑戦で撃破できてしまう事が大半であった。
そのため、義手忍具を活用する(色々な事を試してみる)必要性に迫られる事が無く、ボス戦における義手忍具と言う要素に「わざわざ感」を強く感じた。
3D系ゼルダの伝説のような「特定の義手忍具を使わないと(ほとんど)太刀打ちできない」くらいのパズル的な攻略方法にするべきかは議論の余地があるが、少なくなった”第二形態”の代わりに「敵の攻撃方法の動的変化」などを導入してみても面白かったのではないかと思っている。
攻撃方法の動的変化とは、敵のHPゲージを1つ削り切った段階でのプレイヤーの行動傾向から、HPゲージの2本目からはそれに対して対策となりうる攻撃パターンが解禁される…と言ったものだ。
例えば、突き攻撃に対して左右に回避するような立ち回りをしがちなプレイヤーに対して、HPゲージ2本目からは薙ぎ払うような攻撃が解禁されたりするイメージをして貰えると伝わりやすいだろうか。
つまり、プレイヤーの行動傾向をフィードバックして敵が立ち回ってくるようにしてみてはどうか…という事だ。
これで本当に面白くなるのか(多くの人に受け入れられるか)は保証できないが、あくまで筆者の好みとしてパターンを覚えて精度良く行動をするだけのゲームよりも、状況に応じて臨機応変にアドリブ性をもって行動できるゲームの方が達成感が強いのだ。

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人権の無いボスも多い

序盤で登場したボスと類似した見た目でほとんど同様の技を使うボスが中盤頃から度々登場する点も少々気になる所だ。
本作のような動的変化の無いアクションゲームは元も子もない事を書いてしまえば「覚えゲー」だ。
敵の行動パターンを知り、その隙を理解する事で倒す事ができる。
しかしそれは違う言い方をすれば「一度理解した敵に人権は無い」に等しい。
攻撃パターンや大きな隙が生まれるタイミングを熟知している敵はもはや相手にすらならない。
フロー理論」と言うものをご存知の方もいるだろう。
フロー理論とは「没頭する事に対する再現性を研究したもの」だと思って貰っても良い。
フロー理論によれば、人が没頭する条件の一部に「不安や緊張感があること」「自分よりも僅かに高いスキルを要求されること」と言うものがあるのだ。
初めて挑むボスならば勝てるかどうかもわからないため不安だろう。
そして、ソウルシリーズや隻狼などは(僅かであるかはさておき)高い精度のスキルを要求される事も多い。
確かに、フロー理論における”没頭”の条件に合致しているように感じる。
しかし、以前に勝利した事のある相手の場合ではどうだろうか。
「勝てるとわかりきっている相手」では不安や緊張感は無く、「既に乗り越えた相手」は自分のスキルレベルよりも低いのだ。
ダークソウルやブラッドボーンにおいてはボスが使いまわされる事は非常に稀であっただけに、何故このような敵の使い方をしてしまったのかはわからないが残念と言う他ない。

 

死と回生

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噛み合いきらない生と死

隻狼は死にやすいゲームだ。
そのため、「死」と言う事象をゲームのシステムに組み込もうとしている。
考え方としてはダークソウルやブラッドボーンと同様だが、そのアウトプットは少々異なるものに変化している。

まずゲームプレイ中のタイムスケールとして最も短いサイクルである「回生」だ。
回生とはプレイヤーが戦闘中にHPが0になってもHPの最大値の半分で復活ができるシステムだ。
回生を一度使うと、リスポーン位置に戻る(死亡含む)、または忍殺などを行わないと再使用はできず、その状態でHPが0になると死亡となる。
一見ありがたい仕様のようにも感じるが、結局はHPの最大値の半分という非常に半端な状態での復活であり、「最後のあがき」と言う側面が強い要素だ。
しかし、HPゲージが2本あるボス戦において1本目のゲージを奪う前に回生した場合には、HPゲージ1本目を奪う際に忍殺を行うためボス戦中に再度回生が行えるチャンスが巡ってくるケースもある。
そのため、ボス戦で早々にやられてしまったとしても、トータルで見た場合には必ずしも不利が付きまとう事は無いようになっており、「ゲージを奪えばまた回生できる」と言う気持ち的な仕切り直しにも役立っている。

次に冥助と言うシステムだ。
冥助はプレイヤーが死亡してリスポーン位置に戻った際に確率で発生する。
通常死亡した場合には経験値とお金は所持の半分となるのだが、冥助が発動すると「経験値やお金がロストしない」のだ。
だが、ハッキリ言って本作のゲームプレイからしてこれは全く意味を成していない。
根本的に死亡回数が多い本作のようなゲームにおいて冥助が発動した頃にはロストするものが無いくらいスッカラカンである事がほとんどだ。
冥助の発生確率は10~30%なのだが、これはもはや「確率がもっと高ければ…」とかそういう次元の話では無い。
ストーリーテリングの面からも全く機能していないため、根本的に全く意味のないシステムなのだ。
このようなシステムにするくらいなら「確率でアイテムが貰える」にしてくれた方がまだ実用性があるくらいだ。

最後に死のデメリットも説明しておこう。こちらはタイムスケールとしては少しロングスパンな要素となっている。
プレイヤーが死に過ぎた場合には「竜咳」と言うものが発生する。
竜咳とは簡単に書くとプレイヤーの不死の代償として周囲の者に発病するものと説明され、これが酷くなるとNPCとのイベントなどが滞ってしまうなどのデメリットが発生する(あと一応、冥助の確率が下がる)。
確かに、プレイフィールとしては自身が不甲斐ないせいで善良なNPCに迷惑をかけてしまうのは申し訳ない気持ちにはなるうえ、最初のうちは死ぬ事へのデメリットがあると言う事実だけでもプレッシャーが生まれる。
しかし、プレイを重ねるにつれゲームシステムとしてはそこまで強烈なデメリットでは無い事がわかっていき、次第に竜咳が蔓延しても余り気にする事が無くなってしまうのは折角の設定が活かし切れておらず勿体ない。

冥助や竜咳と言う「死」へのアプローチは「死ぬ事にフィーチャーしているからにはシステム面でも何か組み込まなくては」「今までのソウルシリーズとは異なる方法にしなくては」と言う目的と手段が逆転したような考えから導入されてしまったような気がしてならない。

 

フィールドアクション

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RTAを意識したかのようなフィールド設計

隻狼では前述の通り鉤縄を使用した立体的な移動が可能になっているほか、草むらに隠れて敵から見つからないように移動する事もできる。
また、(前述”ボス”の項で少しだけ触れているが)主人公は無尽蔵のスタミナを有しており素早く走り続ける事ができる。
更に、壁キックによる追加ジャンプもできるのだ。
ん?普通の人間はそんなことできない?主人公は忍者であるためこれくらい出来て当然だろう。

これらによって道中の敵の大半を無視して進むことが可能になっている。
前述の義手忍具・鉤縄を駆使して立体的に移動してしまえば敵の追跡は簡単に撒けるし、無尽蔵のスタミナで走り抜けてしまえばこっちのものだ。
ボス戦に関しては流石に無視して進むことはできないようになっているが、逆に言えばボス戦以外は無視する事は容易い。

ソウルシリーズではRTA(リアルタイムアタック)が行われる事も多かった。
本作のフィールドではそのようなプレイも見越した様々なルートの設計が行われているように感じる。

 

グラフィック

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戦乱による荒廃と神秘的な和を感じさせるフィールド

隻狼のグラフィックは美しい。
キャラクターの造形にはフロムソフトウェア特有のクセが感じられるものの、フィールドのデザインは戦国自体の戦いによる荒廃と日本らしい神秘的な美しさが融合しており素晴らしいの一言だ。

フィールドには瓦屋根の上を走ったり、床下や天井裏など忍者あるある的なポイントも用意されている事も忘れてはならない。

 

サウンド

音楽は当然ながら和テイストだ。
ゲームプレイ中では敵との戦闘状態になった際にBGMが強く挿入される形となっている。
現代的なインタラクティブミュージックの手法の1つだが、BGMの使い方としてほどよい緩急だ。
初回特典のミニサウンドトラック分のものしか曲名がわかっていないが、筆者としては聴く事になる回数も多かった「強者」はお気に入りだ。

また、本作ではほとんどのカットシーンでセリフ付きのボイスが挿入されるのも特徴なポイントと言えるだろう。

 

総評

隻狼はチャンバラアクションと神秘的なフィールドが織りなす唯一無二の死にゲーだ。

チャンバラアクションは見た目とシステムの両面で高次元に成立しており素晴らしいの一言だが、機械的に処理するだけの単調なボスや意味を成していない「生と死」のシステムなどなど、光るポイントはありつつも詰めの甘さが残っている。

しかし、本作がやり応えのあるアクションゲームとして素晴らしい作品であることは忘れてはならないポイントだ。
RPG要素を廃したり、ストーリーを強化したり、舞台を日本にしたりと続編あるいは次回作にも十分に期待が持てる多くのチャレンジを行った事も評価したい。

 

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