【レビュー】聖剣伝説 Echoes of Mana

交わることのなかった伝説

聖剣伝説 Echoes of Mana(以下、聖剣EoM)は聖剣伝説シリーズのキャラクターが一堂に会するスマートフォン向けタイトルである。
スマートフォン向けのソーシャルゲームの王道なマネタイズはガチャとなるため、このような方向性のタイトルになるは珍しくないものである。

 

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ストーリー

聖剣伝説シリーズの簡易的な追体験

聖剣EoMはソーシャルゲームには多いが聖剣伝説のオールスター的な作品となっている。
滅びゆく世界をマナの記憶を辿り阻止し、そのために聖剣を探しだすのが大まかな物語としての大目標だ。
そして、聖剣を探し出す上で様々な聖剣伝説シリーズの世界を旅する事になり、各作品のキャラクター達と交流する事になっている。
メインストーリーに関しては歴代作品の特定の場面を彷彿とさせるシチュエーションを再現したものとなっている。

とは言え、聖剣伝説初心者が本作をプレイする事で原作の魅力を知る事ができるかと問われると難しい所は多い。
あくまでも本作で知る事が可能なのは断片的なシチュエーションだけであり、ストーリー全体の流れなどをしっかりと把握できるものにはなっていない。
原作の詳細な部分を知るためにはその原作を履修した方が良いだろうが、本作のみを楽しむ上では問題はないハズだ。

未収録となったシナリオも

時限開催されるイベントシナリオでは本編ゲーム内では事情により未収録となったものが再現されて採用されるケースが登場した。
特に聖剣伝説 Legend of Manaの「セイレーン編」は設定資料集に収録予定だった展開が断片的に記載されている程度であり、物語のオチに関してはどのようになるのかは全く記載されていなかった。
本作のセイレーン編がどれだけ当時の想定通りの物語展開なのかは筆者にはわからないが、1つの結末として聖剣伝説 Legend of Manaの世界観にマッチするものであったように感じられ嬉しかった。

 

システム

聖剣伝説らしい3人パーティーARPG

聖剣EoMは最大3人でパーティーを組んで戦うARPGだ。
戦闘はベルトスクロール的なデザインで、シリーズとしては聖剣伝説LoMに近い形式である。
戦闘を行うクエストを選択し、エリアで区切られた戦闘フィールドでキャラクターを操作する事になる。
そして、エリア内の敵を倒す事で次のエリアに進む事ができ、全てのエリアの敵を倒す事でクエストクリアとなるような流れとなっている。

戦闘はサクサクと進行し、敵に近寄って攻撃アイコンをタップする事で攻撃を行う。
キャラクターには属性と武器が設定されており、同じキャラクターでも武器や属性が異なることもある。
敵の弱点属性のキャラクターで攻撃が出来れば効率良く倒す事が可能だ。

スキルを使用するとMPを消費して、強力な攻撃やバフやデバフ、回復を行える。
このスキル発動はCPU操作時のある程度の傾向を設定する事が可能で、補助系スキルを持つキャラクターに多く補助スキルを使用して欲しい場合などに行動の優先度を指定できる。
また、このスキルは必殺技を行うためのゲージも大きく溜める事が可能となっているので、可能な限り使用していくのが良い。
しかし、消費するMPの回復手段は限られるため、無闇に乱発すると肝心な所で使えない事もある。ある程度はマネージメントした方が良いだろう。

必殺技は基本的に敵に大ダメージを与える方法となっている。
通常攻撃やスキル発動によってゲージが溜まり、そのゲージを消費する事で発動させる事が可能となる。
そして、必殺技を使用する事で非常に強力な大技「特大精霊魔法」のゲージを溜める事が出来るのも特徴だ。

特大精霊魔法は最も強力な攻撃方法だ。
キャラクターの必殺技を発動するとゲージがチャージされ、必殺技3回分でフルチャージとなる。
このゲージにはレベルが設定されており、キャラクターに装備したメモリージェム(後述)のランクによって最大15レベル(5レベル x 3)まで強化される。
このように本作では通常攻撃orスキル→必殺技→特大精霊魔法と依存関係の構造で、階層が深くなる程に威力の強い攻撃が繰り出せるようになっている。

依存関係で攻撃の立ち回りが成り立つようにデザインされているのは良いポイントではあるのだが、各種攻撃方法のメリハリが効いておらず達成感に欠けてしまうのは勿体ないバランス配分となっている。
確かに通常攻撃やスキルよりも必殺技は強い。特大精霊魔法は更に強い。
しかし、その強さの配分は線形関数的であり、爆発的な火力を与えた感が薄いのだ。
これは適正難易度の戦闘中には特大精霊魔法を数回は叩き込む必要があるデザインとなっているためだと思われるが、これでは通常攻撃と特大精霊魔法が同じ事をしているだけの印象になってしまいメリハリがない。
特大精霊魔法は試合を左右するような火力を持ち、それを発動できるまでにどうやってゲージを溜めるかという立ち回りの駆け引き(=立ち回りを評価するシステム)を用意した方が戦闘における楽しさがあったのではないだろうか。

本作のゲームプレイではフルオートにも対応している。
が、フルオート対応のゲーム体験としてはやや中途半端な立場である。
本作のフルオートは本当に自動化されているだけであり、コンテンツの消費速度を加速させているだけなのだ。
例えば、CPU操作においては「HPが○○以下になった場合にXXを行う」「敵が○○の時にはXXを行う」といった行動条件を詳細に設定できるようにしておき、フルオートにした時の最適化の工夫をプレイヤーが行えるようにするなどが考えられるだろう。
フルオート前提の体験にするならば、それに応じた楽しめるポイントを用意するべきであり、本作の場合にはただフルオートになっているだけのは勿体ない。

そして本作の最大の問題点を挙げるとするならばロード時間だ。
本作は特別に処理が重くなりそうな要素は見当たらないのだが、何をやるにしてもやたらとロード時間が長くプレイを阻害してしまうのは問題である。
特に隙間時間などの短時間にパパッっとプレイする事も多いであろうスマートフォン向けゲームにおいては致命的ともいえる短所である。
ちょっとした画面遷移でも数秒はロードが挟まるため継続意欲を損ねている。
何としてもロード時間の短縮は行って頂きたい所だ。

防具はエンドコンテンツ的な部分も

キャラクターにはいくつかの装備を設定させる事が可能で、ガチャで引く事ができるメモリージェムとクエストにてドロップする防具がある。

モリージェムには戦闘時に発動する特殊な効果が設定されており、キャラクターとシナジーのある効果であればより恩恵が得られるだろう。
モリージェムにはランクが設定されており、ガチャ排出では最高ランクが4となっている。
しかし、同じメモリージェムを重ねる事でランクを1つ上昇させる事が可能なため、最高ランクは5となる。
このランクが前述している特大精霊魔法に影響があるため、可能な限り高ランクなメモリージェムであれば更に戦力となる事だろう。

防具は特定のクエストのドロップ品であるが、防具は強化して性能を上昇させる事が可能だ。
そして、強化する事でステータス強化のサブオプションが増えていくのだが、このステータス強化対象がランダムで設定されるため、ベストな装備を付けようと思うと試行回数が必要となる。
そのため、大掛かりなものではないがエンドコンテンツ的な側面があるものとなっている。

ガチャではキャラクターやメモリージェムを入手

ガチャは本作のマネタイズ部分の要素となっている。
キャラクターやメモリージェムを引く事で戦力を拡充するような形となる。

同じキャラクターやメモリージェムを引いた場合には重ねて性能を向上させる事が可能だ。
特にキャラクターに関しては重ねた際にレベル上限も解放されるため排出確率の低い高レアのキャラクターを狙うよりは、低めのレア度のキャラクターを重ねてレベルを最大限まで高めた方が最初のうちは重宝するかも知れない。

 

グラフィック

綺麗なイラストと良く動くキャラクターは良い出来栄え

キャラクターイラストはLive2D的に動作する。
そして戦闘用のキャラクターは関節ベースでのアニメーションになっているのだが、かなりリッチに動くのが印象的だ。
各キャラクターはそれぞれの原作を踏襲してブラッシュアップしたモーションでの攻撃を行ったりするのもシリーズファンとしては嬉しい要素だ。

 

サウンド

聖剣伝説シリーズの印象的な楽曲が収録されているほか、本作固有のメインテーマも聖剣伝説らしさのある楽曲になっている。

SEもしっかりと聖剣伝説シリーズのものである点もファンには嬉しいポイントだ。

キャラクターボイスも付いており、シリーズでは初めてボイスが設定されたキャラクターも多い。
筆者は特に気にならなかったが、この辺りは流石に人それぞれの感性によるため解釈違いに思うケースもあるかも知れない。

 

総評

聖剣伝説 Echoes of Manaはスマートフォン向けARPGとしては凡庸で、差別化できるに至っていないのが生き抜く上では厳しく感じられるタイトルである。

聖剣伝説ファンであれば嬉しい要素は確実にあるのだが、本作をきっかけにシリーズの良さを知るのはハードルが少々高く感じられる。
ゲームデザイン自体は決して悪い作品ではないが、ロードの長さが継続的なプレイをする気持ちを妨げてしまうのは致命的と言わざるを得ない。

とは言え、一定のゲームプレイにおける面白さと、しっかりと動くキャラクターは魅力的であるため、オススメポイントを挙げるのであればそこになるだろう。

 

外部記事

『聖剣伝説 ECHOES of MANA』アニメーションPV - YouTube

『聖剣伝説 ECHOES of MANA』公式生放送#1 - YouTube

『聖剣伝説 ECHOES of MANA』公式生放送#2 - YouTube

『聖剣伝説 ECHOES of MANA』公式生放送#3 - YouTube

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