【レビュー】Dark Souls

 

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アドバンスドJRPG

ダークソウルは前作に当たるデモンズソウルと共に「ソウルライク」などと呼ばれるサブジャンルを確立したゲームの始祖とも言えるタイトルだ。

筆者が始めてプレイしたのは発売されてからしばらく経ってからであった。
当時はプレイ動画などでもかなり話題になっており、筆者が偶然見たときにその中世ファンタジーのような世界観やその世界の探索に魅力を感じてプレイしようと思ったのだ。

そんな中で今回は新たに発売されたダークソウル リマスターをプレイしたのでレビューをしていこうと思う。

 

DARK SOULS REMASTERED (特典なし) - PS4

DARK SOULS REMASTERED (特典なし) - PS4

  • 発売日: 2018/05/24
  • メディア: Video Game
 
DARK SOULS REMASTERED - Switch

DARK SOULS REMASTERED - Switch

  • 発売日: 2018/10/18
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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想像を掻き立てるストーリー

本作にストーリーと呼べるような要素はほとんど無いと言っても過言では無い。
本作の主人公は「不死」と呼ばれる存在と成り果てた者だ。
これは「不死(死なない)」と言う設定が「何度も死ぬ」ことになるゲームプレイに対して説得力を持たせる事に成功しているのは特徴的だ。
また、全てのボスを倒した限りでは「あー…世界観がなんとなく…」くらいしか把握できない事だろう。
このような淡泊な表現(ストーリーテリング)は短所に見えるが、これは同時に本作の大きな長所ともなっている。

本作のストーリーはどちらかと言えば「察する」ことが多い。
時にはNPCのセリフから、またある時にはアイテムに書かれているテキストから、更にまたある時にはNPCあるいは敵の動きから読み解ける。
本作には点を数多く散りばめており、その点と点を繋ぐ線をユーザーに委ねているのだ。
このような表現方法はかつての日本のRPGをどこか彷彿とさせる。
まだ容量が少なかった時代には容量不足や表現不足を補う手法として類似の表現(点を散りばめるような表現・省略の表現)が採用される・採用せざるを得なかった事が多かったように思う。
容量が増えた昨今の作品では丁寧にストーリーを説明してくれる事が多い訳だが、本作のストーリーに関してはユーザーが興味を持たない限りは一切歩み寄ってくる事は無い。
ゲームプレイ重視でストーリーに興味を持たないユーザーもいる事だろう。
そのようなユーザーにとってもプレイの妨げをしない作りとなっていると言えるし、興味を持ったユーザーは多くの考察を重ねる事だろう。

なお、ダークソウルの前作とも言えるデモンズソウルは設定こそ似ている箇所が多いものの作品としての繋がりは無く、ストーリーを理解する上での事前知識としてはほとんど不要だ。

 

システム

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絶品のアクションRPG要素とフィールド探索

ダークソウル(ソウルシリーズ全般)のゲームプレイの魅力は何と言ってもアクションRPG要素と探索要素だ。

キャラクターに好きな装備をさせたり、好きな能力値に育て上げたりするのは自分が強くなっている事が明確に数値で実感できるため非常に楽しい。

また、中世ファンタジーをベースとしたフィールド・ダンジョンは探索のしがいがあり「マジかよ…!!」と思えるような所にヒントも何もなく宝箱や隠し通路があったりする(オンラインプレイの場合には他ユーザーがヒントを書き残してくれている事もある)。
それらを偶然にも発見できた時の喜びは何ものにも代え難い。
ノーヒントの探索要素や宝箱を開ける時のワクワク感が詰め込まれている点も昔のJRPGを思い起こさせるようなポイントだ。
これらの要素は(当然だが)何も知らない初回プレイ時の場合に特に楽しめる要素であり、既プレイヤーは記憶を消して再プレイしたいとも思える要素になっている。

本作のフィールド設計は”初見殺し”である事が多いのも特徴的だ。
それこそが本作の「死にゲー」たる主な所以だろう。
ソウルシリーズは後作になるとバランスが変わってくるのだが、本作のレベルデザインでは「敵が強くて死ぬ」というよりも「初見殺しのような敵配置で殺される」ような事が大半になっているのだ。
数々の初見殺しトラップを経験していくうちに、自然と石橋を叩いて渡るような慎重さをもって踏破するクセが付いていく事だろう。
この辺りの設計は古めのビデオゲームに多いためルネサンス的な側面はもちろんだが、当時の時代としては「人生オワタの大冒険」に代表されるルネサンス的な部分を誇張表現した初見殺しゲーの系譜とも言えるだろう。

しかしながら、本作ではゲームプレイにおける冗長な部分をプレイさせられる期間が長いと言う点は明らかな欠点だ。
本作では最終局面が開始されるようなタイミングで「スキップトラベル」のような機能が解禁される。
そのため、それまでの間は「鍛冶屋に行こう」「アイテムを購入しよう」などと思った際には自分の足でそこまで行かなくてはならない。
もちろん、その部分がゲームプレイとして成立しているのであれば文句は無いのだが、基本的に過去に通った道に存在している敵はプレイヤーの経験値やキャラクターの能力値が向上しているため、ハッキリ言って相手にならない程のザコ敵と化している。
それらを相手にせずに全て無視して目的地だけを目指しても良い訳なのだが、そのようなプレイになるのであれば「そもそもプレイヤー自身の足でその場所まで赴かせる」と言う行為自体が無駄と言う事に他ならない。
このような冗長なプレイを強いられているのは本作のゲーム進行のテンポを大きく落としてしまっている要因になっている。
なお、このような冗長な部分はシリーズの後作において改善されている。

 

バトル 

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ソウルシリーズを象徴する"致命の一撃"

ソウルシリーズのバトルシステム自体はアクション要素が強い。

敵の隙を伺い剣や槍で攻撃を行い、タイミングよく敵の攻撃を回避する。
武器や防具にも様々なユニークなものが存在しており、武器ならば巨大な特大剣から禍々しい鎌、重厚なメイスなどがあり、防具ならば王道な中世騎士や忍者衣装もある。
また、魔法や呪術などのファンタジー要素の強い攻撃方法もある。
これらを駆使して自分好みの武器や魔法などでダンジョンやボスを攻略できるのは非常に楽しい要素だ。
単純に使いやすさで選ぶも良し、見た目にこだわって選ぶも良しだ。

ソウルシリーズにおいて最も象徴的なアクションがある。
それが「パリィからの致命の一撃」だ。
実際にパリィと致命の一撃を行っているのが上図となっている。
敵の攻撃をタイミングよくパリィする事で”印象的な効果音”が発生し、そのまま攻撃ボタンを入力する事で致命の一撃に派生する。
パリィと致命の一撃は多くの人型の敵に対して有効であり、時にはボス戦でも可能だ。
致命の一撃が決まれば大ダメージを与えられるほか、その印象的な効果音も相まって非常に爽快だ。ドヤ顔を決めたくなる事だろう。
敵の攻撃をパリィする行動は一見すると難易度が高いように思えるかも知れないが、本作のパリィはソウルシリーズの中でも比較的簡単な部類だ。
理由としては単純で敵のモーションがハッキリしているケースが多いためだ。
本作ダークソウルにおいては移動する時には移動、攻撃する時には攻撃とメリハリがしっかりしており、また攻撃における前隙と呼ばれる予備動作も長めだ。
ボタン連打のようなプレイでなく、しっかりと敵を見ているならばパリィも十分に狙える事だろう。
ダークソウルをプレイするのであればパリィをたくさん決めて、ドヤ顔もたくさん決めていくのが爽快だ。

しかし、本作においては操作系において若干のフラストレーションがたまるポイントが存在する。
1つ目は入力した操作がキューイングされる点だ。
盾でパリィを失敗した際を例にするのがわかりやすい。
敵の攻撃が来る際にパリィを行おうとした際にタイミングが遅れ、普通に盾で攻撃を受けてしまったとしよう(パリィのボタンは入力済み)。
そうなると攻撃を受け切った後に入力済みとなっているパリィの動作が実行されてしまうのだ。
こうなると失敗の二段重ねのような気持になりストレスが溜まりやすい。
2つ目は回避方向の融通の利かなさだ。
ロックオン時には回避方向が基本的に4方向(前後左右)しかないのだ。斜め方向などへの回避は行えないために痒い所に手が届いていない操作感はモヤモヤする事もあるかも知れない。

 

キャラクタービルド

ソウルシリーズは近年では「死にゲー」「難しい」などのイメージが先行して「難しすぎて楽しめないのでは無いか…」と不安に感じている未プレイユーザーも多いのでは無いかと思う。
だが、ソウルシリーズにおいてはRPG的なキャラクターの成長要素によってかなり強くなる事が可能だ。
そのため、時間をかけてキャラクターを強くすればエンディングまで到達する事は決して難しいものでは無いのだ。

HPや攻撃力を強化するのはもちろんだが、武器や防具も強化できる。
プレイヤースキルの向上だけでなく、キャラクタービルドによって強くできるため多くのユーザーが安心してプレイできるのでは無いかと思う。

また、周回する(エンディングを迎える)事で敵が強くなるため、ハードコアなプレイヤーは凶悪に強くなった敵とも戦う事ができる作りだ。

 

Artorias of the Abyss

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深淵歩きアルトリウス

Artorias of the AbyssはダークソウルにおけるDLCで追加された要素だ。
リマスター版においては最初から同梱されている。

アルトリウスとはゲーム本編において”深淵歩き”と言う二つ名と共にテキストでのみ登場した存在だが、そのアルトリウスの最後を知る事ができる。
そもそも本編においてもアルトリウスは演出面において優遇されている所があり、アルトリウス関連の装飾品や大狼シフとの戦闘中における凝った演出など印象に残りやすい。
そんなアルトリウス関連のイベントが追加されている訳だ。

ゲームプレイ部分としてはおおよそ2ダンジョン分ほどのボリュームがあり、新たな武器や防具、魔法が取得可能だ。
アルトリウスに関する装備も追加されるため、(後作の”ファランの不死隊”のように)アルトリウスの意思を継ぎたいような筆者のようなユーザーには必須の内容だ。 

 

グラフィック

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硬派な中世ファンタジー

本作はアップでも観れるほどに優れたグラフィック…とまでは言えないものの、硬派な中世ファンタジーを再現した世界観は圧巻だ。
また、退廃的な要素も多く儚げであり美しい。 

 

サウンド

本作においては基本的にボス戦でのみBGMが差し込まれ、フィールドBGMなどはほとんどない。
とは言え、強力なボスや印象に残るボスも多い事から、それらのボスと一緒にBGMも耳に残る。

中盤最大難所で嫌な記憶が蘇る人もいるであろう勇壮な「Ornstein & Smough」

印象的なイントロから始まる「Dark Sun Gwyndolin」

記憶に残る演出もあり悲しげな「Great Grey Wolf Sif」

伝説的な騎士アルトリウス「Knight Artorias」

これらは本作のBGMの中でも特に筆者のお気に入りだ。

 

総評

ダークソウルは強いやり応えを提供しながらもユーザー自身が難易度を調整できるようにしてある非常に懐の深いゲームだ。
初心者から熟練者まで幅広いプレイヤーが自分なりの楽しみを得る事ができる作品となっている。

また、まるで淡泊ながら考察しがいのあるストーリーやヒントの無いフィールド探索など、端々からかつてのJRPGの系譜を感じるのだ。
かつてのJRPGをもしも現代の技術で自然な形のビデオゲームにしたとき、それはダークソウルのようなスタイルのゲームになったのではと思えてならない。

しかし、微妙にストレスがある操作感や非常に冗長な拠点間移動などはプレイしていて気になるポイントにはなるだろう。

 

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