
Ghost of Yōtei(以下、GoY)はSIE傘下のデベロッパーであるサッカーパンチプロダクションが手掛ける日本を舞台とした作品である。
前作にあたるGhost of Tsushimaは世界的にも大きな反響があった事も記憶にある人も多いだろうが、それが「Ghost ofシリーズ」として続編が作られたのである。
【PS5】Ghost of Yōtei( ゴースト・オブ・ヨウテイ ) 【CEROレーティング「Z」】
- 発売日:2025/10/2
- メディア:Video Game
ストーリー

1603年、主人公である篤は蝦夷(現 北海道)へと舞い戻った。
蝦夷に潜む家族を殺した羊蹄六人衆に復讐するため。
と言うのが、本作のストーリーの簡潔な説明となる。
この設定がプレイヤーに説得力ある動機足り得ることはもちろんだが、この手のクライム要素のあるフォトリアルなゲームとしては復讐劇という題材はその免罪符として非常に採用例の多いシチュエーションと言えるだろう。
ストーリーは西部劇にも近い時代劇として質良くできており、これが最大の魅力であるとも言えるだろう。
主人公である篤は復讐を果たすために蝦夷の各地に赴くことになるのだが、そこでは篤と縁の深い人物がバディとして出会う事になる。
バディはそれぞれキャラクターの個性・役割が異なっており、ドラマ自体の味付けが変わる事はもちろん、登場するバディの立場の関係上から篤という人物を多角的に掘り下げるシチュエーションが設けられているのだ。
そのうえ、終盤に近付けばバティとなった人物が再登場するためベタながら嬉しい展開にもなっている。
また、サブストーリーでも復讐を遂げたい篤と対比されるようなNPCが用意されている事が少なくない。
このような構造である事から篤という主人公を軸とした物語としての魅力がメインでもサブでも感じられる作りになっているのが非常に良いポイントである。
本作は非常にストーリードリブンな構造であり、かつプレイヤーの選択によって内容に変化が起きるようなナラティブな作りはほとんど存在しない。
ストーリーを重んじすぎている余りにストーリーが展開する前にゲームプレイが介入できないような作りにもなっており、例えば道中に襲われている人を助けようとして遠くから弓で敵を射抜いてもストーリーが展開される前の段階では敵にダメージを与えられないようになっているという少しやり過ぎ感もある。
とはいえ、ゲームプレイの中でもストーリーテリングする事は意識されている。
作中ではいくらかのシチュエーションでQTEライクな要素が登場するが、ストーリー上で篤が不慣れなうちには難易度が高く設定され、経験を積むことで簡単になるといった表現も挿入されているのも良い点だろう。
本作のストーリー進行していく上で気になるとすれば進行の説明や方法だ。
ストーリー進行では「○○(場所やアイテム)を見つけろ」と指定されることがある。
しかし、例えば「酒を見つけろ」という指示があった際に「酒を見つければ良い」というのはわかるが「酒はどこにあるのか」はわからないといった具体性に欠けた指示になっているのは気になるところである。
また、イベント進行や会話、インタラクトがピンポイントに特定の場所でしか行えないのは不便である。
これは例えば、会話をしようと思ったらNPCの周囲に行けばいいのではなく、しっかりと正面に立たないと話しかけられないのだ。この例にしても何らかのリアリティーやロールプレイに即した体験に根差したものであれば理解もできるが、後ろから話しかけるのは日常にもあるシチュエーションであり「正面に立たないと会話できない」のはそのどちらでもない。

本シリーズは日本を舞台としているが史実性の高い内容ではない。
本作では蝦夷において松前藩が影響力を持つ直前の時期でもある事から作中でも松前藩は登場するものの、あくまでも精神的な日本らしさを重要視している時代劇のようなエンタメとしての日本を描いているのが特徴的だ。
近世にあたる1600年初頭頃の蝦夷は日本政府(江戸幕府)にとっては辺境であり、日本と交易のある異民族領地の色合いが濃く、辛うじて松前藩によってアイヌ民族との独占的な交易が開始され始めた時期である。
蝦夷地が完全な日本政府統治下となったと言えるのも近代(1800年代)に入ってからであり、そのため歴史的・文化的なディティールが解明されていない事も少なくない土地柄だ。
そんな土地を舞台としているため逆に言えばフィクションが入り込む余地が多いのは創作物としてメリットだったのだろう。


本作では時代的にも地理的にも必然性があるがアイヌに関しても登場する。
サイドコンテンツではあるもののアイヌの風習やアイヌ語も取り入れられている。
近年では「ゴールデンカムイ」にてアイヌ文化に注目が集まる事もあったが、本作でもそういった文化を垣間見るきっかけともなるだろう。


ストーリー中やサイドコンテンツでは狼や狐や鳥、風を用いたプレイヤーの誘導が行われる。
これは前作においても類似のものが用いられており、システマチックな機能を世界観に沿うような表現でマイルドにしたことが非常に高評価を得たものが本作にも踏襲されている形である。
また、それ以外でも各地で墨絵による風景画を描いたり、温泉に入ったりするなどの全体的に自然を感じられるシチュエーションが設けられており、それによって日本っぽさを演出している。

また、ネタバレとなるため詳細に書くことはできないが、とあるサブクエストではファンサービスも用意されている。
このサブクエストは是非ともプレイておいた方が良いだろう。
システム

戦闘のメカニクスは前作とほとんど同様で、基本的にはゲーム初級者向けだ。
中心になるのは攻撃と弾きで、敵を攻撃しながら、敵からの攻撃に対しては弾いて対処する形となる。
敵の攻撃に対してプレイヤー側が何かしらの対処が必要となるような能動的な要素はゲームの難易度を上げてしまうが、ゲームの初心者であってもある程度は問題ないようなバランスが意識されている。
ただし、敵が使用している武器に応じて有利な武器種が設定されているのだが、その種類がやや多いのはゲーム初級者には難しいと感じてしまう事は考えられる。
敵に応じて使う武器を切り替えた方が好ましく、逆に有利ではない武器で立ち回るのはそこそこの効率の悪さになってしまうため、「使わなくても良い」とは言い難いバランスでもあるのだ。
ある程度のゲーム慣れしている人ならばまだ許容範囲かも知れないが、余り最近のゲームをプレイしてきていない人には少し大変な部分かも知れない。

本作は広いフィールドが複数用意されたエリア区切りで構成されている。
このフィールドは広大である事から「オープンワールド」と言う表現も可能かも知れないが、エリア区切りであるという点も含めていくらかの制限によって見える場所に全て行けるような作りではないためこの辺りは人によって受け止め方は異なるだろう。
このフィールド上ではサブクエストを含めていくらかの探索要素が設けられており、「ストーリー」の項で前述しているが動物等の誘導によって探索ポイントがどこなのかがわかるようにも作られている。

ここで言う話は前作も同様であるのだが、メインコンテンツでもサブコンテンツでも、戦闘でも探索でも、ゲーム全体を通してリニアな作りであり、現代の大型タイトルとして考えると遊びの面はプリミティブ気味だ。
例えば、どんなストーリーであろうが結局最後は戦闘で解決する事になるし、戦闘自体もゲーム開始直後からメカニクスが特に大きく拡張されることもなく最後に至る。
探索であれば指定された一本道のルートを踏破していってゴール地点にあるアイテムなどを入手するという作りである。
つまり、プレイヤーの個性が如実に反映される要素が少なく遊びの幅が狭いものなのである。
これはゲームに慣れているユーザーからすればやや飽きやすくあるため欠点であるともいえるが、ゲームにそこまで慣れていないユーザーからすればできることが限られる事がシンプルさにも繋がり遊びやすさになっている。
言い換えれば近年のゲームを余り触れていないユーザーにとっては、「パリィを用いた戦闘」「オープンワールドっぽいフィールド」「高い品質の映像」など現代水準っぽい内容をつまみ食いできる作品だとも言えるだろうが、ゲーム慣れしている人にとってはゲーム内容自体の新鮮味は薄めであり、その奥深さも浅めにはなってしまっている。


非常にシンプルなものではあるものの細々としたミニゲームも少しだけ存在する。
前作にも存在していたものもあるが、本作で新たに追加された要素もある。
これ自体が面白いようなものだとは言い難いが、プレイする事でステータス強化になるものもあり、1つ辺りのプレイ時間は非常に短いので見つけたらチャレンジすると良いだろう。
グラフィック






GoYのビジュアルスタイルはリアリティという意味では非常に大袈裟であるが、日本らしさを表現する色鮮やかで映画的な絵作りになっている。
これは前作と同様の設計思想だが、前作以上に非常に色彩が豊かなフィールドが印象的だ。
これも前作同様となるが全体的にもUI/HUDを極力表示させない作りであり、これは現代のAAAとも言われるようなゲームには多く採用される設計思想であるが、鮮やかな映画的な世界の雰囲気を壊さないような配慮が徹底されている。
見た目の部分において気になるのはカメラの挙動は少し気になるところがあった。
リアリティのためなのだろうが走行中にカメラが揺れるように演出されるのだが、移動中に常にカメラが揺れるのが演出過剰で画面がうるさく感じられてしまう事がままあったのだ。
サウンド
GoYのBGMではメインテーマとして使われている「篤の歌」「狼の歌」は非常に印象的だ。
この楽曲は作中でも篤の三味線で引くことが可能となる。
また、全体的に声優の演技も光っており、特に主人公である篤を演じているファイルーズあいさんは近年は近しいキャラクターを担当する事が少なくないが、素っ気なさの中にある優しさが感じれる素晴らしい演技である。
演技の面は全くもって素晴らしいのだが、その登場キャラクターは少しごちゃごちゃしている印象が拭えない。
その土地柄、東北弁やアイヌ語などが登場するのはわかるが、関西弁を始めとして様々な訛りの人物が登場するのだ。
背景設定までよくわからないにも関わらず、なぜこうも日本の縮図かのように各地の訛りが蝦夷という辺境にいるのかが驚いてしまうところである。
本作は史実性というよりも映画的物語性を重視しているとはいえ、もう少し統一感があっても良かったように思う。
総評
Ghost of Yōteiは映画的ゲームを求めている人にとって最高の一本となる作品だ。
復讐劇となるストーリーは各地でのメインとサブの両方で主人公である篤との対比を感じさせるような内容が用意されており読み進めていて満足感がある物語は何よりも魅力的である。
しかし、ゲームプレイは現代の遊びの水準から考えればプリミティブで、どこに行って何をやっても拡張性の乏しい戦闘か移動で構成されている事から、ゲームに慣れ親しんだ人ほど早々に単調さを感じやすい可能性が高い。
ストーリーの魅力でゲームプレイを牽引するストーリードリブンな作りであるが、その魔力が作用するか否かが好みに直結しやすいタイトルとも言えるだろう。
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