【レビュー】グランディア

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忘れられない冒険になる

グランディアセガサターンにて発売されたRPGで、後年にPSに移植されるなどしている。
筆者とグランディアは少し距離が遠い所におり、セガ派の友人がプレイしている所を見せて貰った印象くらいしかなかったのが正直な所だ。
そのため、ほとんど初見でのレビューと言って良いだろう。

なお、今回はリマスターされたグランディアHDコレクション版でのレビューとなる。

 

グランディア

グランディア

  • 発売日:1999/06/24
  • メディア:Video Game
 
グランディア

グランディア

  • 発売日:1997/12/18
  • メディア:Video Game
 

グランディア HDコレクション ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

ストーリー

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当時のアニメの影響が色濃いジュブナイル

グランディアのストーリー演出やセリフ回しに関しては「天空の城ラピュタ」や「未来少年コナン」など1980~1990年前後のアニメテイストが色濃いジュブナイルもののストーリーが特徴的だ。
物語構成にしても伏線がしっかりと用意されており、展開を匂わせるような発言もあるため、プレイのモチベーションに昇華できるように工夫されている事も評価できる。
メインストーリーの一部のシーンには当時としてはまだ目新しいものだったボイスが付いている事も特徴的で、ボイス付きのセリフに関してはテキストが自動送りされ、特に切羽詰まったシーンでは食い気味にセリフが発生するなどしっかりとシーンに合った会話テンポになるように演出されている点も完成度が高い。
また、多くはないが3Dモデルとアニメを併用したカットシーンが存在する点も特筆すべき表現方法と言えるだろう。

主人公であるジャスティンはパールという港町で暮らす少年で、等身大の子供らしい遊びをしながら過ごしていた。
元々冒険心の強いジャスティンは許可を得て近郊にある遺跡の見学に行くのだが、未開のルートから太古に存在していたといわれるエンジュール文明の古代都市アレントにいるという女性リエーテのメッセージを受け取る。
冒険心に火が付いたジャスティンはエンジュール文明の謎を解き明かすために旅立つ決意をする事になる…というのが冒頭の導入だ。
このように本作は一般的に多い何かを失って始まるようなものにはなっておらず、純粋な探求心によってスタートする。
自分の足で旅立ちを迎えるため、旅立ちの際の「今までの日常との決別」をしっかりと演出しているのはジュブナイルとしての物語をしっかりと描いていると言えるだろう。
中盤に突入する頃には全く知られていない未知の土地を冒険する事になっていきフロンティアを開拓していくようなワクワクを感じさせ、終盤にはエンジュール文明と関連した壮大な展開となっていき、切ないシーンや熱いシーンがプレイヤーを引っ張っていく。
未熟なジャスティンという少年の主人公は時に挫折しそうになる事もあるが、ひたすらに自分の信念によって成長していく姿は魅力的だ。
また、様々なキャラクターが仲間となり前へと突き進むジャスティン達を助けてくれるが、この仲間達もまた伝統などに縛られずに己の信念によって行動しているキャラクターが多い。
この「周囲の人間や伝統と言った環境に影響されずに自分の意志によって行動を行う」という人物像は本作のエンジュール文明の都市アレントの名前の元となった可能性がある近現代哲学者ハンナ・アレントの思想があると見ても良いかも知れない。

上述の通り、本作には未解明のエンジュール文明「光翼人」に関連した遺跡が多数登場する。
これらの遺跡はエジプトのピラミッドやマヤのマチュピチュイースター島のモアイなどの雰囲気をベースとしたデザインになっており、現実世界との地続きさをどこか演出している節がある。
そのため、「神話や伝承の物語が実際に起きた出来事である」とより身近なものとしてプレイヤーが受け止めやすくなっており冒険心を掻き立ててくれる作りになっている。

なお、本作にはクリア後用の特典ディスク「デジタルミュージアム」というものが存在するようなのだが、HDリマスター版ではこちらは何故か未収録となっているようだ。

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充実したテキストは特筆すべきポイントだ

メインのストーリー以外にも特筆すべきポイントとして「NPCとの会話」がある。
街の人々との会話もしっかりと作られており、誰かと話しかければ必ずと言って良い程にジャスティンなどのパーティーメンバーがそれに対して受け答えをするようになっているのだ。
そのため、本当の意味で「会話」になっているのは非常に好感が持てる演出だ。
また、会話パターンも豊富で、複数回会話が変化したり、進行状況によって変化するなどボリューム満点だ。

旅を演出してくれる食事や野営シーンも素晴らしい。
ストーリー中では宿屋で食事を行ったり、テントを張って野営したりするのだが、それが冒険感や共同体感を高めてくれる。
また、これらのシーンでは仲間キャラクターとの会話が用意されており、食事中に会話をすると言う何とも生活感のある演出も好印象だ。

本作をプレイするにあたって注意するべき点として、少なくはあるが進行がわかりにくい部分が存在する点だろう。
画面上に表示されているコンパスによってイベントの位置を調べたり、出口を調べたりすることはできるが、どこに行けば良いのか、どうすれば進行できるのか、どこを調べれば良いのかといった進行の手順が明確になっていない部分が散見され、痒い所に手が届かない。
当時のゲームには多かったものではあるが、プレイしていて戸惑う部分は少なからずある事は覚悟しなくてはならない。

また、選択肢の先頭がデフォルトでフォーカスされているため、会話送りをした際にボタン連打によって誤って違う選択をしてしまう危険がある事も頭の片隅に置いた方が良いだろう。

 

システム

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バランス良く設計されたバトルデザイン

グランディアの戦闘は仲間とタイミングを考慮して連携する事が大切だ。
端的に表現するとATBライクな形式で仲間キャラクター毎の待機時間が経過したタイミングで行動の指示をするような形式のシステムを採用している。
指示を出してから実際に行動が発動するまでにはタイムラグが用意されており、この「指示⇒発動」までの発動準備期間が本作のキモとなるように構成されているのが特徴となっている。
まず、プレイヤーは味方キャラクターに指示が行えるタイミングが来た時点で「何をするべきか」を考える必要がある。連続攻撃で畳み掛けるようにするか、敵に狙われているキャラクターは防御行動をするかなど、指示出し可能な順番が来た時の戦場の状況から考えて戦う必要があるのだ。
そして発動準備期間は最も注意しなくてはならない。
詳細には異なったりするが簡潔に説明すると味方も敵も「指示⇒発動」に遷移するまでの期間に攻撃を受けてしまうとカウンター判定になったり、最悪の場合には行動がキャンセルされてしまうなどのデメリットが発生するのだ。
そのため、「指示」が可能になった段階で、「発動」するまでにどれくらい時間がかかりそうかを考慮しながら適切な行動を選択をする必要がある。
火力は高いが発動までが長い行動をするべきなのか、火力はそこそこだが発動までが早い行動をするべきなのか、そもそも攻撃などせずに防御した方が安全なのか、敵の状況をみて判断する必要があるため、単純に強い技にカーソルをあててボタンを押すだけのゲームにならない。
敵の状況や行動タイミングをしっかりと確認することで、上手くいけば敵をほとんど無力化して立ち回るといった事も可能になっている。特に仲間が複数人いる状態で敵が1体のような状況ではタコ殴りだ。
ただし、レベルデザインもそれを考慮しているためボス敵などが単体で出現する事はほとんどなく、あったとしても1対1になるようなシチュエーションであるなど難易度がバラつく事は余り無い丁度良いものにもなっている。

キャラクターの育成方法もしっかりとデザインされている。
各キャラクターには装備可能な武器種が設定されていたり、各属性の魔法を覚えさせることが可能になっている。
この各武器種や各属性魔法の熟練度を上げていく事で、それに応じた能力値が上昇したり、必殺技を習得する仕組みになっている。
レベルアップと言う要素の他にも戦えば戦うほどにキャラクターが成長する要素を用意している訳だが、スキルレベルが低いものは熟練度が成長しやすいなど平坦に成長させやすい工夫もされており遊びやすい。
なお、魔法はレベル1~3のランクが設定されており、MPもランク毎に設定されているというTRPG的なシステムで現在では独特なシステムになっている。
そのため、レベル1の魔法を何回使用しても、レベル3の魔法の使用回数が減る訳ではなく、敵や状況に応じた使い分けを選択肢に入れやすくなっている。

敵の強さの上昇度合いやショップのバランスも非常に整っている印象だ。
敵は適切なステップを踏んで段階的に強化されていき、理不尽にいきなり強敵が現れるような事はほとんどなく、レベリングをやり込むなどしないのであれば終始丁度良い危機感を持った戦闘が楽しめる。
ショップの装備品の価格設定も良く、次の街に到着する頃の資金の溜まり具合で装備を整えるとちょうど財布が空になるような金額設定になっているのだ。
ゲームプレイがしっかりとデザインされている証左と言えるだろう。

全体的にバランス良く整えられている本作であるが惜しい部分もある。
本作は戦闘中のコンボ(通常攻撃)によってスキル発動に使用するSPが回復する。その着眼点は素晴らしいのだが、消費量と回復量の天秤のバランスは余り良くない。
時間がかかるボス戦でもない限りは通常攻撃で満足にSPを回復できるとは言い難く、マイナスな要素とは言わないが恩恵を感じる事はほとんど無いと言っても良い。
また、通常攻撃でSPが溜まるが魔法で消費するMPを回復する手立てがアイテム以外に用意されていない。
例えば、通常攻撃でSPが溜まり、スキルでレベル1魔法のMPが、レベル1魔法でレベル2魔法のMPが溜まるような階層的な構造だと更にエレガントだったのではないだろうか。

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当時としては珍しい3Dダンジョン

グランディアでのダンジョン探索は3D黎明期である事もあり、3Dモデルのフィールドである事を活かそうとした要素になっているのが特徴となっている。
マップをグルグルと回したり、3Dモデルのオブジェクトを移動させたりしてフィールドを探索させるようになっている。
また、古めのゲームらしくノーヒントに宝箱が隠されているなど、能動的な探索の楽しさがあり、それが本作のメインテーマである「冒険」を増長させている。

古い時代の作品であるが、ユーザーフレンドリーである点は見逃せないポイントだ。
「ストーリー」の項でも記載しているが、画面上にはコンパスが表示され、少々クセはあるがそれを駆使する事によって次に行くべき場所であったり、出口の方向を”ある程度”ではあるが知る事が出来るようになっている。
更にダンジョン探索においてはセーブポイントで全回復が行えるなど、現代では標準とも言える親切さを当時の時点で備えている点は素晴らしい。

しかし、3Dダンジョンは難点が存在しない訳では無い。
それは(コンパスがあったとしても)迷子になりやすいという点だ。
中盤頃ともなるとダンジョンは入り組んでおり、ランドマークとなるようなものもないため周囲は似たような景色で埋め尽くされてしまう。
それに加えて、本作の売りでもある3Dフィールドをグルグルと見渡せてしまう事が仇となって自分がどの道から来たのか把握しにくくなり迷子となってしまうのだ。
コンパスがある事によって幸いにも絶望的な感情になる事がないのが救いだが、自分がどこにいるのか、ここは来たことがない場所なのかがわかりにくいのはフラストレーションに繋がってしまう。

なお、本作は各ダンジョンは物語の進行と共に再侵入が不可になっていく。
そのため、取り残しなど気になる場合にはしっかりと探索を終えておく必要がある点は進行の際の注意点だ。

 

グラフィック

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3Dと2Dを併用したアートスタイル

本作の映像面の特徴は3Dマップに2Dキャラクターを乗せている点だろう。
当時はハードスペックの兼ね合いから主流の表現手法の1つだったものだ。
本作と同様の手法を用いた代表的な作品にはゼノギアステイルズオブシリーズなどが挙げられるが、これらに関しては本作に影響を受けたというよりは環境に依存した収斂進化と言った方が正しいのだろう。

フィールドによる世界観表現も見事で、未開の地では風貌が全く違う地形、植物、敵が出現する。
また、マップ上にある3Dオブジェクトの小物に少しだけインタラクトできたりもする。

 

サウンド

アニメに大きく影響を受けているように見受けられる本作だが、BGMに関しても1980~1990年頃のアニメ的な雰囲気がふんだんに採用されている。

要所で流れる壮大で爽やかなメインテーマ「グランディアのテーマ」

不意打ちになった際の緊迫感ある戦闘曲「戦闘2」

賑やかさと騒がしさがせめぎ合う「ガンボの祭」

妖しく神秘的な古き時代を感じさせる「地下遺跡」

歌劇的な雰囲気を思わせる壮絶な「迫り来る危機」

本作のボイスなどに関しては当時に主流のアニメ的な抑揚が強めの演技となっている。
「ストーリー」の項でも前述している通り、ボイスの使い方なども総じて非常に凝っている。
キャラクターは戦闘中にも技名を叫ぶほか、後半(Disc2)になると戦闘中のセリフに変化があるなどの細かい部分のこだわりも素晴らしい。

 

総評

グランディアは全体がバランス良くデザインされているだけでなく、当時のアニメを強くリスペクトした「アニメをゲームにする」といった強い意気込みが感じられる名作だ。

子供の冒険心を題材としたジュブナイルもののストーリーや豊富な会話テキスト、巧みに設計されたバトルシステム、ユーザーフレンドリーを欠いていないダンジョン探索など特筆すべき点は多い。
3D黎明期の作品ではあるのだが、現代でも十分に楽しむ事が可能な高い完成度を誇るRPGタイトルだ。

 

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