【レビュー】ZOIDS ~白銀の獣機神ライガーゼロ~

白銀の獣機神

ZOIDS ~白銀の獣機神ライガーゼロ~はアニメ「ゾイド新世紀スラッシュゼロ」と同時期にGB向けに発売されたRPGタイトルだ。

ゾイドの初代アニメから大ファンになっていた筆者は新作ゲームが発売されるとの事で期待しながら発売を待っていた記憶がある。

 

ZOIDS 白銀の獣機神ライガーゼロ

ZOIDS 白銀の獣機神ライガーゼロ

  • 発売日:2001/6/15
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

地下空洞説的な設定の物語

ガイロス帝国軍の下っ端の暴走的な行動に巻き込まれ、その結果としてライオン型の野良ゾイドが大破してしまう。
それを見かねたブルージェム博士は手元にあった解析中の「ライガーゼロ」という古代の設計図をベースにゾイドを修復する。
修復直後に再び帝国軍に見つかってしまい襲撃・鹵獲をされそうになってしまうが、そこに現れたのが正義感の強いアルスターと言う主人公の少年だ。
帝国軍に抵抗する形で戦闘を行うと、脆かった地面が崩落してしまう。
地下深くへと堕ちてしまったアルスターだが、なんと地下では地上と同じような環境が存在しており街までもがあるという。
地下世界では各地で野良ゾイドが暴れているという状況で、それを不審に思う地下世界の住民はライガーゼロが伝説の獣機神であると言う。
アルスターは地上へと戻る目標の手掛かりを探しながら、地下世界の危機を救う事になる…というのが物語の大筋だ。

本作で印象的なのは「地下空洞説」的な部分があるストーリーで、ある種のファンタジー的ロマンがある設定である点だろう。
具体的になぜ地下でこれほどの環境が成立しているのかは不明な点は多いが、物語の味付けとして、そして主人公であるアルスター(プレイヤー)が行動をする理由としての動機付けで機能している。

本作はストーリードリブンであり、物語の進行と共にゲームプレイ自体も進行するJRPGらしい構造となっている。
しかし、この構造において本作ではやや困った点が存在する。
それは指示的な説明がないケースがちらほらとあり、ストーリーがどうすれば次に進むのかが非常にわかりにくい事が多いのだ。
具体的な例としては「別のルートを通れるのだが、特定の場所から移動しないと物語が進行しない」といったケースがちらほらあるため、なぜ物語が進展しないのかがプレイヤーが把握できない事が多い。
これに関しては既プレイである筆者からしても今から遊んでみようと思っている方に対してアドバイスのようなものも出来ないレベルのため、もしも詰まってしまった場合には潔く攻略サイトなり攻略動画なりを確認するほかないだろう。

 

システム

シビアながらハクスラ的な側面の強いデザイン

本作の戦闘システムはターンベースのRPGとなっている。
特徴的なのは装備している武器に対して攻撃を行えるという点だ。
武器を破壊する事で敵の行動を制限できるほか、倒した際には壊した武器を入手できる。ストーリーの進行と共に行けるようになる新フィールドではより強力な武器が入手できるようになるので、新しい武装は優先的に確保すると良いだろう。
そして、全ての武装を破壊した状態で野生ゾイドを倒せば、そのゾイドを仲間にする事も可能である。
そのため、ハクスラ的な側面のある作品と言っても良いだろう。
なお、武器の破壊は自分のゾイドに対しても発生するため、逆に戦力ダウンさせられる事もあるが、戦闘後には復活するのでその点は安心して大丈夫だ。

戦闘は最大で3体のゾイドを編成して活用できるが、直接戦闘できるのは1体だけである。
戦闘中はHPの他にも武装の使用に消費するAPというものも存在し、基本的に燃費が悪いためAPをどのようにマネージメントするかは大切だ。
APはターンの開始時に一定量回復するため、何もできない場合には防御をして回復行動するのも悪くはないが、リザーブゾイドと入れ替える事でもAPは回復する。
更にリザーブ状態のゾイドに関してはAPだけでなくHPも一定量回復していくため、状況に応じてリザーブと入れ替えながら戦うのが基本戦術となると考えた方が良いだろう。
そのため、部隊として編成する3体のゾイドに関しては全て最前線で戦えるだけの水準にしておく事が望ましいバランスとなっている。

ゾイドには格闘、ビーム、実弾の3種類の攻撃と防御のステータスが個別に設定されており、それが個性になっている。
また、得意/苦手な地形などもあるので、それらを加味して自部隊の編成を行うのが好ましい。
例えば、先鋒ゾイドによって敵の武装を全て破壊して格闘攻撃しか行えない状態にして、格闘攻撃に高い耐性を持つ後続ゾイドによって持久戦をするのは手堅い戦術になるだろう。

本作は強い敵を仲間にする、強い敵が持っている武器を奪う事で自部隊の戦力を増強させていくというハクスラ的な側面があると上述しているが、その部分についてもう少し詳細に記載したい。
まず、本作をポケモンフォロワー的な側面から見た場合でも、よりハクスラ的な側面が強くなっている。
なぜハクスラ的な側面が強くなってしまうのかと言うと、それは「レベル帯の設定」による所が大きい。
新しいフィールドに到達すれば敵ゾイドのレベルがそこそこ跳ね上がり、それなりのレベリングをしていなければ、それまで活用していたゾイド達は通用しなくなってしまうのだ。
であれば最初から強い現地のゾイドを鹵獲して起用した方が効率的であり、結果的にハクスラ的なプレイスタイルとなっていくというのがその理由である。

戦闘自体もシビアで、体感ではあるが全体の戦闘回数のおおよそ70~80%は逃げる事になる。というよりも逃げざるを得ないのではないかと思う。
自分と敵は全く同じ土俵で戦っているため、同じようなレベル帯であれば被ダメージ量は共に同等だ。
加えて、ワンパンで倒せるようなケースは余程のレベル差がない限りはあり得ないため、ランダムエンカウントで登場するザコ敵と戦えば戦うほどに自部隊のリソースが削られ続ける。
ここにAP消費の燃費の悪さと命中率の悪さが拍車をかけている形だ。
攻撃の際のAPは後半になればなるほどに燃費が悪くなる上に、攻撃自体もそれなりに外れてしまう。
つまり、マネージメントの観点からダンジョン攻略などに際して持続的な戦力維持を考慮すると大半を逃げて、APに余裕が出来ればたまーに戦うというスタイルに落ち着くのではないかと思うのだ。
このような戦闘バランスでは安定したレベリングもややハードルが高いため、このような面で見ても戦力を現地調達するようなハクスラ的なゲームプレイをするのがデザインとして推奨されているという事なのだろう。
とは言え、やはり結局はエンカウントさせているにも関わらず「逃げ推奨」なバランスは余り賢いデザインであるとは言えないのも事実である。
また、クリア後までは部隊編成から外せないため使い倒す必要があるライガーゼロに関しては性能的に特別に強く設定されているという事もないためパッケージにも名を冠した主人公機であるにも関わらず戦闘ではお荷物になりがちなのは困るかも知れない。

なお、クリア後には新しいゾイド武装が入手可能になるので、そちらも楽しみにプレイすると良いだろう。

シビアな要因

本作におけるシビアに感じる部分についてももう少し詳細に記載したい。

まず、前述しているが攻撃がそこそこの頻度で外れるのはフラストレーションが溜まりやすい。
本作では”将を射んと欲すれば先ず馬を射よ”のような戦略で、強敵に対しては武装破壊を先んじて行うケースも少なくない。
つまり、必要以上にターン数を要する戦い方をする必要があるのだが、そんな中でも容赦なく攻撃が外れてしまうのだ。
敵からの被ダメージが低いのであれば数ターンが無駄になってもまだ許せたかも知れないが、本作の戦闘バランスの場合では一度の攻撃でHPが半分削れる事も珍しいものではない。これではターン一回分の比重が余りにも重たく、攻撃が外れた際の辛さがかなり響いてしまう。

そのような比重の戦闘はランダムエンカウントで行われるのだがエンカウント率もやや高い。
そのうえ、ダンジョンは序盤からガッツリと入り組んだ構成になっている。
ちょっとした謎解きのような要素もあるのだが、それについてもあえて長く歩かせる事を意図した配置が垣間見えるため敵とのエンカウントも自然と増えてしまう。
ラストダンジョンに至っては道のりがやや長いうえ、景色も変わり映えがなく単調になってしまうのも勿体ない。
「戦闘の大半は逃げる事になる」とは前述しているが、これらの要因も影響していると言えるだろう。

 

グラフィック

ゾイドのドット絵が素晴らしい

本作のビジュアル面において特徴的なのはコクピット視点での戦闘画面になっている点だろう。
敵機ゾイドがこちらを補足しているようなデザインで描かれている事が多く、絵自体も動きのあるポージングになっている事も多いため戦闘中らしいものになっている。

攻撃エフェクトでは専用のカットインなどが差し込まれたりもするが、ややテンポが悪くなるため気になる場合には省略するように設定すると少しマシになるだろう。

フィールド上でのアルスターなどのキャラチップ、マップチップなどはGB作品としては平均的なレベルなもので、そこまでディティールのあるものではない。

オリジナルの機体も登場する

本作の主食部分ともいえる登場ゾイドに関してだが、オリジナルの機体も登場し、中には没案となったゾイドデザインが踏襲されたものもあるのは面白い。
カラーバリエーションも4パターン用意されており、お気に入りのものを選択可能だ。
とは言え、本作は基本的には戦闘はコックピット視点であるため、余りお目見えする機会がないのは残念だ。

 

サウンド

GB作品特有の電子音ベースの楽曲であるが、主旋律と副旋律の兼ね合いがイマイチわからないような楽曲もある。
楽曲数自体は多くないため、単純接触効果によって記憶には残るかも知れない。

 

総評

ZOIDS ~白銀の獣機神ライガーゼロ~はハクスラ的な側面の強いRPGタイトルである。

要となるゾイドや武器をとっかえひっかえで入手して攻略していく事になるため、結果としては比較的多くのゾイドを捕獲する形になるハズだ。
この手の作品においては登場機体こそ多いが、最終的に仲間にした機体はそれほどでもない事はままあるものの、本作ではしっかりと新しい機体を鹵獲する意味があるようにデザインされていると言っても良いだろう。
登場ゾイドに関してもマニアックなものもちらほらとあるためゾイドファンにも嬉しいポイントはある。

しかし、戦闘バランスの問題からエンカウントの大半を逃げて回ることになるため、せっかくの戦闘が勿体ない事になっているのは悲しいポイントだ。