【レビュー】ポケットモンスター スカーレット/バイオレット

キミだけの宝探し

ポケットモンスター スカーレット/バイオレット(以下、ポケモンSV)はポケットモンスター ソード/シールド(以下、ポケモン剣盾)以来のポケットモンスター本編の新作である。
本作の登場は驚きであった。
なにせ2022年の初頭には新たな試みをしたポケモン レジェンズ アルセウスが発売されており、同年に新作が出るというのだ。
共にオープンワールド型のタイトルとなっているだけに余計に驚きがある。
筆者としてはポケモン レジェンズ アルセウスのフィードバックを受けた上で新作ポケモンが登場するのだと思っていたのだ。
今回はポケモンSVのレビューを行いたいと思う。

なお、今回はタイトル画像の通りポケットモンスター スカーレットバージョンでのプレイとなる。内容として体験に関わる部分に大きな違いはないとは思うが、念のため注意願いたい。

 

 

ストーリー

ポケモン史上最高の物語

ポケモンSVのプレイヤーのアバターである主人公はパルデア地方に引っ越してきたばかりの学生だ。
新しい学校に通う際にパッケージに描かれているポケモン(コライドンまたはミライドン)と出会い、それから一緒に行動を共にする事になる。

学校では課外授業として「宝探し」を行う事になるが、これがメインストーリーと大きく関係した本作のテーマともなっている。
パルデアの大地の各地を冒険し、自分だけの宝物を見つけるものだ。
ここでいう宝物とは具体的なフィジカルなものに限らず、体験を含めた経験による実際の学びを得ることを目的としたものである。
そして本作ではそれを実現するための3つのルートがプレイヤーに提供されている。
それが「チャンピオンロード」「レジェンドルート」「スターダストストリート」である。
元も子もない事を言ってしまえばオープンワールドを採用した作品と言う事で目標は自分で決め、自由な順序で好きなペースで進めて良いというゲーム側のデザインをストーリーとして落とし込み提示しているのである。

ストーリー面において本作の特異な点はパッケージに描かれる伝説ポケモンが最序盤から登場し一緒に冒険する事だ。
バトルで使えるようになるにはエンディングまで到達する必要はあるが、それでもずっと一緒に冒険する事になるので今までの伝説ポケモン枠とは異なる距離感の近い相棒的な存在として描かれている。
また、メインストーリー中で魅せるカッコいい姿や動物らしい可愛い姿もあるため、そういった方向性からでも距離感の近さが強調されている。

また、余談程度はあるが最後のシーンではポケモン初代から引用されているスタンド・バイ・ミーを彷彿とさせるシーンもあり全体を通してみても非常に綺麗なまとまり方をしている点も見事だ。

素晴らしい生徒達、お手本のような大人達

本作は学校を舞台としているのだが、その題材に適した見事なストーリーが用意されている。
そのストーリー内容は一歩踏み込んだものにもなっており、とても重たい題材ではあるのだが、前に進もうとする生徒達と人間性として見習うべき大人達の存在によって暗くなりすぎないものに昇華されている。

ポケモンシリーズにおいてはアバターである主人公ではなく、主要なサブキャラクターの成長を描く事で物語を描いている事が多いが、それ自体は本作でも同様である。
しかし、各キャラクターの過去や心情が簡潔ながら無駄なく丁寧に描かれているため、歴代シリーズとは一線を画すような密度のストーリーが展開されている。
ストーリーの密度が高まっている大きな要因としては、本作では3つのメインストーリールートがあると前述しているが、各ルートそれぞれに関連するキャラクターが設定されているため、ストーリーを進行させようと思うと必ずそのキャラクターに関する物語が挿入される事が大きいだろう。
つまりは単純にストーリーを描く回数が増えた事が影響の1つだと言える。

そして、何よりもその内容は非常に印象的である。
学校を舞台としているという事でいじめ問題を取り上げているほか、家族との関係性についても取り上げている。
普遍的な問題をポケモンと言うコンテンツで扱っているが、特に理想的な大人達を描いてくれているおかげで心にとても暖かいものを残してくるものになっている。
これは今を苦しんでいる子供達にも、今でも苦しんでいる大人達にも必ず響くものがあるハズだ。

描かれる大人達は学校の先生達が主である。
学校の先生達は主人公の通うパルデアの学校の授業やサブシナリオライクなもので人となりがしっかりと描かれる。
どの先生もとてもフラットで、何かを強要するような事をしない生徒達を尊重する人達ばかりである。
そして、サブシナリオではその先生達の悩みなどを聴く事も出来たりするなど、キャラクターの掘り下げとしても良く描かれている。多くの先生達を好きなってしまうのではないだろうか。

その他、ジムリーダーなどの描かれ方も強化され人となりがよりわかるようになっている。
終戦ではイベント用のバトル演出も展開されるなど、とにかくストーリーが大きく強化されている。

 

システム

大きな変化がある訳ではないのに、ついついプレイを続けてしまう

ポケモンSVは初となるオープンワールド型のポケモン本編作品だ。
序盤からどこにでも行く事は可能であるが、RPGでもあるためレベル帯として推奨・非推奨のエリアが暗に設定されている。
これはオープンワールド型のRPGとしては決して珍しくはないデザインである。
ポケモンレジェンズと比較した場合にはバトルシステムの関係上、明らかな格上相手にはなすすべがないため、レベル差の影響はより顕著だと言えるだろう。
また、「ストーリー」の項でも触れたが、ポケモンSVでは3つの異なるルートでストーリーが展開される。
それぞれ攻略を進めていくと違う恩恵が得られるが、どれも探索を強化してくれるものになっている事が多いため、基本的にはそれぞれのルートを進めていく方が良いだろう。

ポケモン レジェンズ アルセウスを踏襲しているような機能も多数存在する。
背後から野生ポケモンモンスターボールを当ててポケモンバトルに持ち込めば不意打ちが可能になり一手有利に始められる。
レベルで覚える技はいつでもどこでも思い出せるようにもなっている。
他にもポケモンと一緒に歩ける要素も最初から実装されており、ポケモンに指示を出してアイテムを取って来てもらう事も可能だ。
そして本作では更に「レッツゴー」という機能で野生のポケモンとオート戦闘を行ってくれるようになっている。
タイプ相性さえ考慮されていればサクッとポケモンを倒して経験値を入手できる。

レッツゴーを行って入手できるのは経験値だけではない。
「素材」も入手できるのだ。この素材が本作のオープンワールドとしてのポケモンを成立させるための要素の1つとなっている。
入手した素材はお馴染みの「わざマシン」の作成に使用される。
本作のわざマシンは消費アイテムへと戻っているのだが、野生ポケモンから入手できる素材によって作成する事になるため、広いフィールド上で数多くのポケモンと遭遇して戦う意味合いを失わせにくくする工夫として機能させている。
それでいて、レッツゴーと言うシステムによって時間をかけ過ぎずに素材を集めやすくしているといったバランスにしている。

ポケモンSVではオープンワールド化した事に伴いフィールド上のエンカウント関連の扱いもいくつか変更されている。
まず、ポケモントレーナーとの戦闘は話しかける事でのみ戦う方式となった。
これは平面だけでなく、立体的な移動も行う本作においては現実的な選択だろう。
立体的に移動できてしまうと歴代のような「目と目が合っての戦闘」がそもそも機能するケースが稀だ。であれば不要とするのは理解しやすい。
続いて、ポケモンが完全なシンボルエンカウントへと変更された。
前作においてはシンボルエンカウントもあったが、ランダムエンカウント的な部分も残されていたが、本作では完全にシンボルエンカウントへとシフトしている。
中には非常に小さなポケモンもおり、移動中にうっかり接触して戦闘が始まってしまう事も少なくない。
一見すると煩わしさがあるのだが、過去シリーズにあった「草むらの中から飛び出してきた」というのはこういうイメージなのかと納得する部分もあるハズだ。

他にもオープンワールドの探索要素としてマップの各所にアイテムが落ちており、ちょっとした寄り道をついついしたくなってしまう。
そんな寄り道をしていると新しいポケモンを見つけて…とプレイを延々と続けてしまう作りとなっており、オープンワールドのフォーマットをしっかりとポケモンという作品として落とし込めている。
斬新なデザインではないものの、プレイヤーがプレイをし続けてしまう導線はしっかりと用意しているのは良いポイントだ。
そして、本作では「ユニオンサークル」という機能をオンにする事でオンラインで一緒に冒険する事が可能になっている。
友達などと一緒に楽しみやすい要素も強化されている。

本作のフィールド探索面において最も困るポイントも記載しておきたい。
それはポケモンとのエンカウントに関してで、本作はエンカウント後に無敵時間のようなものがない。
その結果として野生ポケモンが密集している状況で戦闘終了すると、逃げる間もなく次のポケモンと戦うハメになってしまうのだ。
下手をすると何度も戦わないと移動すらできないという事態も決して珍しいものではない。この辺りには流石に何かしらの対策をして欲しかった所だ。

恐ろしいまでに戦略と育成の幅を広げるテラスタイプ

ポケモンSVの戦闘において特徴的なのは「テラスタル」という新要素だ。
ラスタルポケモンに個別に設定されたタイプ(テラスタイプ)で、発動するとそのタイプへと変更される。
そしてテラスタイプと一致した技はより強力な威力を発揮するようになっている。
そのため、今まではタイプ相性に穴があるポケモンが新たな光を得ていたり、ポケモン自体の特性を考慮したテラスタイプにするなど工夫の余地が非常に大きなものとなっている。

このテラスタイプは戦略と育成を一段上のレベルへと押し上げている。
非常に簡潔な例えだが、通常は炎タイプのポケモンだが、テラスタル状態になった場合には戦闘の途中からは草タイプのポケモンにする事ができるという事である。
これによって炎タイプのポケモン対策として水タイプのポケモンを出してきたとしても、実はそれはドローイングされており実際には草タイプへとテラスタルしてソーラービームなどで返り討ちにするといった事態が往々にしてあり得るのだ。
つまり、プレイヤーはその一手すらも読んでおく必要があり、安直に有利ポケモンを出すだけではどうしようもない可能性もあるのである。

そして、技の威力が上がる「タイプ一致」に関しては攻撃的な判定で、ポケモンの元々のタイプ+テラスタイプ(テラスタイプが元々のタイプと一致する場合にはタイプ一致威力が更に増加)となる。
そのため、炎タイプのポケモンを他のタイプにテラスタルしても炎タイプの技はタイプ一致判定のままなのだ。
ラスタルした事によって技範囲が狭くなるという事もないという非常に攻撃的でアグレッシブな戦闘になりやすくしている。
更にテラスタイプはポケモン毎に固定という訳ではなく、やや労力は必要だがタイプを後天的に変更させる事も可能であるため、対戦環境における対策の対策などを行う事も可能なハズだ。

非常に攻撃的なテラスタルという仕組みであるが、そうホイホイと使えるものでもないバランスにもしている。
それは1回の戦闘において一度だけ、1匹のポケモンにしか使用できないためだ。
ラスタル状態になったポケモンは交代後もテラスタル状態のままとなる。
話を戻すが、戦闘中に1匹だけがテラスタル状態にできるため、安易にテラスタル状態としてしまうと相手も対策できる一手をまだ持っている可能性があるのだ。
相手は対策が難しいだろうと判断した上でテラスタルする必要があるため、テラスタルのタイミングの読み合いなども白熱する事だろう。

この辺りの考え方に関してもメインストーリーの「チャンピオンロード」でのジム戦において「組み合わせの妙」のようなものをチュートリアルしているため、プレイしていく事でその奥深さに気が付く事も可能なハズだ。
そのため、本作においても「クリアまでがチュートリアル」という歴代のポケモンの構成を踏襲していると言っても良いだろう。

本作の新たなる挑戦であるポケモンとテラスタルの組み合わせによる戦略の幅の広がり方は過去に類を見ないレベルの奥深さを提供している。
しかし、一点気がかりな事を言うのであれば、これは非常に玄人向けになってしまっており、初心者が対戦でもしようものならハメ殺しされまくるという嫌な光景も目に浮かぶ。
奥深い一方で、ライト層にも楽しめるレベルの遊びなのかは気になる所だ。

ポケモンとの触れ合い

ポケモン達とのインタラクションももちろん用意されている。
フィールド上ではピクニックが可能で、サンドウィッチを作ったり、ポケモンを洗って綺麗にしたりできる。

サンドウィッチ作りは普通に行うとかなり難しく、ある種の”どうぶつタワーバトル”的な側面があるものになっている。
上手いこと積み上げても最後に挟むためのパンを乗せると理不尽にも謎の抗力によって崩れやすい。
どうやら一番最後に上に乗せるパンはサンドウィッチとして成立するための必須項目ではないらしく、オープンサンド的に作るのが質の高いサンドウィッチを安定して作るためには必要だろう。

マップ関連は困った事が多い

本作で目に見えて困るのはマップだ。
まず問題になるのは高低差がわからない事だ。
行きたい場所にピン止めをしてマーキングしたとしても実際には高低差が激しくて序盤では行く事は厳しい事も珍しくない。
等高線なり、色の濃淡なりで高さの表現をしっかりと高度差が視認できるようにして欲しい所だ。

また、移動中に表示されるミニマップも痒い所に手が届かない。
キャラクター操作と連動してしまい、北固定にする事ができないため使いにくいと感じる人も多いだろう。
この辺りは設定でのON/OFFができると嬉しい所だ。
なお、このミニマップの北固定に関してはアップデートにより設定が追加された。

 

ゼロの秘宝

ゼロの秘宝

「ゼロの秘宝」はポケットモンスター スカーレット/バイオレットのDLCである。
DLCは前編「碧の仮面」と後編「藍の円盤」の二部構成になっている。

 

ストーリー

思春期の姉弟を描く

DLCゼロの秘宝は前編と後編に分かれた物語が展開されている。
前編・後編とあるように物語は地続きの内容となっている。

前編ではヒスイ地方とも呼ばれたシンオウ地方あるいはその近郊にあると思われるキタカミの里という田園風景の広がる田舎町を舞台とした林間学校へと向かう事になる
キタカミの里ではスグリとゼイユという姉弟と出会い、里に伝わる伝承についての冒険をする事になる。
ストーリー自体は短いものながら気弱なスグリの葛藤を描いている。

気の強い女の子ゼイユは少々自分勝手で強引なところもあり、たまに手も出てしまうようだが内心では弟スグリの事を大切には想っているようだ。
スグリは気の弱い少年で里でも学校でも友人は余りいないようで押しの強い姉ゼイユに気圧されて自己主張がしにくい事も多いようだ。
この姉弟の関係性は現代の現実世界でもそう珍しいものではないだろう。
全く当てはまるという事はないにしても、近しい兄弟・姉妹・兄妹・姉弟の関係の家庭環境も多いのではないだろうか。

このストーリーで描いている「地に足の着いた姉弟関係」はもちろん印象的なものであるが、もう1つ特徴的なものとしてプレイヤーが「侵略者」であり「略奪者」であるという事だ。
詳細には記述しないがプレイヤーはゼイユとスグリの前にポッと出で現れた外部の存在である。
しかし、そんな外の人間が彼らには持っていないモノを全て持っており、更には欲しかったモノすら全て手に入れていってしまう。
特に内向的なスグリにとっては喉から手が出るほどに欲しかったものですらプレイヤーが奪っていってしまうのだ。
この思春期に通る事も少なくないような状況をプレイヤー側が作り出しており、それによって物語的な捻じれを生み出してプレイヤーに心理的な葛藤を感じさせるものになっている。

挫折と克服

後編ではイッシュ地方の洋上と海中にあるブルーベリー学園の交換留学生として向かう事になる。
ブルーベリー学園はゼイユとスグリの通っている学校でもあり、前編の続きの物語が展開される。

こちらも詳細には語らないが前編と引き続きゼイユとスグリが中心人物だと言って差し支えない。
ブルーベリー学園はポケモンの対戦に力を入れており強者が集う場所になっている。
そのブルーベリー学園ではとある人物がチャンピオンになっているのだが、そのチャンピオンがかなり苛烈であり生徒の空気も余り楽しい生活ではなくなりつつあるようだ。
その暴政を止めるべくプレイヤーはブルーベリー学園の四天王に挑み、チャンピオンを倒す事をお願いされる。

後編の物語では前編で挫折をしたスグリの本当の克服の物語となっている。
思春期の時代には様々な要因から挫折を味わうような事は避けては通れない道だろう。
その挫折の経験からアドラー心理学で言ういわゆる劣等コンプレックスや優越コンプレックスのような状態になってしまう事も少なくない。
本作ではその状態からの克服を描いて、その先にある宝物を見つけていく事になる。
大人や子供に限らず、似た状況にある人、似た状況になったことがある人の心に響くものがあるハズだ。

本編のキャラクターに対しての物語追加も

なお、DLCの物語とは別に本編で活躍したネモやペパー、ボタンの更なる掘り下げとなるエピローグ的な物語もアップデートにより追加されている。
本編の魅力的なキャラクター達と再び交流できる嬉しい要素になっている。
内容は物語のみとなっており、ポケモンバトルやポケモンの捕獲が必要にならないものになっている。

 

システム

本編よりもガチ

前編ではキタカミの里、後編ではブルーベリー学園内の人口エリアを探索する事が可能になり、本編では登場しなかったポケモン達に出合う事ができるのが1つの特徴だ。

そして、何よりも本編よりNPCはよりガチな編成で攻めてくるようになっており歯応えがあるポケモンバトルが体験できるようになっている。
パーティー構成はもちろん、持たせているアイテム等もしっかりとポケモン自身の個性を補完するようなものが装備され、しっかりと弱点を対策しているのだ。
本編と同じような気持ちで挑むと痛い目を見る事だろう。

特に後編では本編ではほとんど利用機会のないダブルバトルが中心となっている点も特徴で、これもまたバトルの難易度向上に一役買っている。
シングルバトルの場合には相手のポケモンを倒した際に相手が次のポケモンを出してくるが、その際に「ポケモンを入れ替えるか」を聴いてくれる設定にできる。
これにより常に自分が有利なポケモンを場に出して戦う事が可能だった。
しかし、ダブルバトルではこのルール設定が適用されない。
そのため、PvPの時のような対等な状況での対戦になりやすいのだ。
ただし、道具の類は利用可能であるので完全に勝つことができないような事はないだろう。

ポケモンシリーズではNPCとのポケモンバトルがチュートリアルの域を出ない事が多く、ポケモンバトル自体の奥深さを体感しないままに終わってしまう事も少なくない。
本作のDLCでは相手ポケモン自体もガチの構成である上に、ルール自体もプレイヤー有利なものがなく公平に近くなったことで、ポケモンバトルの奥深さの一端を感じられる内容になっている。

登場ポケモン以外にも追加要素がある

追加されたのは登場ポケモンやガチめなバトルだけではない。

本編では固定だったボールの投げ方を変更可能になっている。
また、ブルーベリー学園の部室の内装を変更したりパルデアの人達を呼んだりして交流する事も可能になっている。
服や髪型、エモートなども追加があるのでその辺りも嬉しいだろう。

ただし、ボールの投げ方と部室の内装に関しては専用のポイントを消費して変更する事になるのだが、実際に変えないとどういうフォームなのか、どういう内装なのかがわからないのは不便に感じるだろう。

 

グラフィック

ディティールには粗が残るが、キャラクター達は非常に良く描かれている

ポケモンSVではキャラクターやポケモンの3Dモデルがよく描かれており、テクスチャーも質感がよりわかるようになった。
キャラクターのデザインはノンバイナリーさが強めになっているが、それによってデザイン的な魅力が減っているかというと決してそんな事もなく現代の政治的な部分との折衷案として良いバランス感覚のデザインだと言えるだろう。
メニュー画面などUI関連も全体がシームレスになりモダンになっている点も良いポイントだ。

しかし、フィールド上のテクスチャーはそこまで綺麗という訳ではない。
また、ほんの少し遠方に描画されているオブジェクト(人やポケモンなど)に対して露骨にFPSを落として負荷軽減を行っている点は流石に少し気になる。
かなり遠方のオブジェクトであれば露骨に落としてもそもそもの情報量が少ないため気にならないだろうが、本の数メートル先のオブジェクトに対してもFPSをかなり落としているため簡単に目に付いてしまうのは品質面としては少し気になる所だ。

キャラクターアニメーションも魅力を強めている

キャラクターやポケモンの3Dモデルは素晴らしいが、アニメーション関連も優れている。
特にキャラクターのフェイシャルモーションは良く出来ていると言って良いだろう。上図を見てもその細かな表情変化が伝わるだろう。
その他、ポケモン剣盾にもあったような階段などの斜面での上り下りで専用のモーション、天候によっての専用のリアクションがある。

ポケモンももちろん様々なリアクションが用意されているほか、野生では群れで活動していたり、ポケモンの相性によっても行動が変化したりもするようだ。
広いフィールドでより活き活きと生活するようになっており、細かなリアクションが増えているためより生物感が強いものとなっている。

少し寂しいポイントとしてはアバターの服装で、過去作のように服装の自由は少ない。
学校の制服として夏服や冬服などの衣替えは可能なのだが、制服以外の服には色を含めて変更できない。
自由に着せ替えができるのは帽子や靴などであるため、制服の色を自由にできない事も相俟ってマッチする色の相性なども制限されてしまっているのは悲しい。

集めたくなってしまう魅力を強めたポケモン図鑑

ポケモンSVにおいてポケモンを集めたくなるモチベーションに一役買っているのがポケモン図鑑である。
本作のポケモン図鑑は1つ1つが本や電子書籍のように演出されてオシャレなのだ。
ポケモン自体も非常に印象的に写っている表紙だけでも魅力的だ。
そのような本が一覧としてズラッと視認できる形で並ぶため収集欲をかきたてるものになっているのは素晴らしい。

ポケモン図鑑が収集した結果(達成感)だけでなく、次のモチベーションへとなるようにデザインされているのは見事だ。

 

サウンド

ポケモンSVではオープンワールドになった事でインタラトによって変化するBGMが所々に存在するようになっている。

そして印象的なのはジムリーダー戦BGMで、会話から戦闘までがシームレスに開始されるのはもちろん、前作に当たるポケモン剣盾を踏襲した演出の楽曲になっており盛り上がるものに仕上がっている。

終戦のBGMも素晴らしく、明るい曲調だがその演出も相俟って感動的な楽曲へとなっている。

 

総評

ポケットモンスター スカーレット/バイオレットはシリーズの新たなる1ページを飾る名作である。

普遍的な題材の物語はDLCも含めてポケモンを通して1歩踏み込んだ内容を描いており、子供にも大人にも刺さるものに仕上がっているのは素晴らしく、ストーリーを描くポケモンとしては歴代でも最高のものに仕上がっている。
ポケモンバトルにおいてもテラスタルという新要素によって駆け引きの幅が増大されており、特に対戦環境においては非常に奥深い戦略が考えられる領域へと達している。

ただし、オープンワールド化した事によりボリュームも増しているため、両バージョンをプレイしようと思う場合にはそれなりに大変であろう事は知った方が良い。

 

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