【レビュー】嘘つき姫と盲目王子

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異国の小さな恋の絵本

嘘つき姫と盲目王子は日本一ソフトウェアが2018年01月18日に自社タイトル発表する放送(録画放送)にて初公開したタイトルだ。
筆者は放送されたその映像の絵と設定に魅了され、購入を決意した。
そんな一目惚れな作品のレビューをしよう。

 

嘘つき姫と盲目王子 Nintendo Switch版

 

 

ストーリー

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絵本的なストーリーとストーリーテリングは何よりも魅力的だ

嘘つき姫と盲目王子のストーリーは実に絵本的だ。

狼の女の子が姫と偽り、自分が誤って傷付けてしまった王子を治療するために森の魔女を訪ねていく…。
ストーリーは絵本を読み聞かせするような「語られる」形式であり、これもまた雰囲気に非常にマッチしていると言える。

少ないながらアクションパートにおいてもストーリーテリングがあり、王子に対してお願いできるインタラクションが徐々に増えていくのだ。
これが「狼と王子の関係の変化」を表現する事にも繋がっている。
また、アクションのチュートリアルも物語の進行に合わせた形であり、比較的自然に感じられるようになっている。

王子が「全ての事象に対して無防備」という要素も設定上からも説得力があり、また無防備でか弱いがために「守りたい」と言う気持ちが湧く。
それゆえにアクションパートで王子を死なせてしまった際の罪悪感はより一層強くなるのだ。

本作のストーリーは決して哲学的な側面や深みのあるストーリー、あるいはアポリアが描かれると言う訳では無いのだが、小さい頃に読んだ・読んでもらった絵本の話が思い出され、非常に懐かしく、また暖かな気持ちになる内容になっているのは大きなプラスだ。

 

システム

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可愛らしいキャラクターのリアクションだけでも価値がある

本作ではノベル的なパートとアクションパートの2つが中心になる。
前者は基本的に語り部によって語られるストーリーを聴きながらストーリーを楽しむものとなっており、後者では2D横スクロールのちょっとした謎解きをして先へと進む形になっている。
ノベルパートはさておき、ここではアクションパートをメインに話をしよう。

アクションパートでは狼と王子が先(森の魔女の館)へと進むため、設置された謎解きをクリアしつつステージを踏破していく形となる。
姫状態の狼と王子が手を繋いで歩いているその姿はとても微笑ましく、これを観るだけでも価値があるのでは無いだろうか。
ステージ内の謎解きの難易度はそこまで高くないものの、謎解きにおけるレベルデザインやバランスは良くできており、急激に難易度が変わるような事は無く、ステージ毎にステップアップするようになっている。本作のアートスタイルや設定からゲームに不慣れなユーザーがプレイすることも想定されるが、全く問題ないように感じる。
また、例え失敗してやられてしまってもリトライまでの時間は短く、ゲームプレイとしてストレスになる事は無いだろう。
しかし、王子がモンスターなどにより死んでしまった際の狼のリアクションは非常に切なく悲しい。

どうしてもクリアできないようであれば「ステージスキップ」と言うストーリーのみを楽しむためのコマンドが設定されている。
しかし、個人的にはゲームである(ゲームをプレイする事それ自体もストーリー表現である)のだから、このようなコマンドは本当の最終手段であり、できるだけ別の方法で代替すべきではないかと思うのだ。
それ(アクションパートが必須ではないこと)による弊害か、アクションパートは基本的に謎解きをしつつゴールを目指すだけになっており、およそストーリーテリングと呼べるような表現が少ない(全く無い訳ではない。前述のストーリーの項を参照。)。
プレイヤーが詰まっていると判断された場合には旅を助けてくれるNPCが現れたり、もしくはヒントが何か提示されるなど…やりようはあると思うのだ。
そうする事でアクションパートであるゲームプレイ自体においてもストーリーを表現する事が可能になり、ユーザーにとって更に深みのある関係性を表現できただろう。

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高所からの落下でもキノコの上なら安心…?

アクションパートでは考慮不足では無いかと思えるポイントが少ないながら存在した。
狼が姫の姿をしている時と一緒に連れている王子は高い所から落ちると死んでしまうのだが、キノコの上に落ちる分には死なない。
しかし、空中でもある程度は左右への制御が行える狼とは異なり、NPCである王子は慣性のままに落下してしまう。
そのため、下に落下死を防ぐためのキノコがあるにも関わらず、歩きながら落ちる事により発生する横方向への慣性によって落下地点からズレて王子が死んでしまう…と言う事が数回あった(カメラを動かさないと、どこにキノコがあるのか全く見えないポイントもある)。
「慎重に降りろ」と言う開発側の意図した設計である可能性もあるのだが、だとすれば少々性格の悪いキノコの配置だと言わざるを得ない。
もう少し安全に降りられるようにして欲しかった所だ。

また、一部ではあるが特定のポイントではカメラワークが不安定になるなどもある。
ゲームプレイに対して致命的なレベルではないものの少々気になる所だ。

 

グラフィック

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唯一無二のアートは圧倒的な魅力を誇る

嘘つき姫と盲目王子のアートはこれで本当の絵本を作って欲しいと思えるほどに非常に魅力的だ。
不安そうな王子は姫(狼)に手を繋いで貰うと安心したように笑顔になり、姫もまた嬉しそうな表情をする。
王子に花を手渡すモーションも実に可愛らしい。

キャラクターだけでなく、背景なども絵本的で魅力がある。

 

サウンド

筆者に音楽の知識が無い故に稚拙な表現となってしまうが、本作のBGMはその設定やグラフィックとマッチした「悲しみ」「切なさ」と言ったメロディが多く、オルゴールのようなどこかノスタルジックな暖かみのある雰囲気も感じさせる。
しかしながら、ゲームプレイがそこまで長くないために記憶に残るまでには至らないのは少々勿体ないポイントであるかも知れない。

総評

嘘つき姫と盲目王子は非常に魅力的な作品だ。

世界設定、アート、そしてストーリーとその語りには特筆すべき点がある。
レベルデザインも悪くなく、適度な達成感を持ちながらも難解過ぎない謎解きは初心者ユーザーにとっては重要だ。

ゲームプレイ自体は5時間もあればクリアできてしまうため、物足りなさを感じるユーザーもいるかも知れない。
しかし筆者としては、水増しのための無駄なサブクエストの追加や冗長なアクションパートを採用せずに、コンセプトに忠実に簡潔にまとめあげ、1つの作品として綺麗に仕上がっており好感が持てる。

童心に帰って、この遊べる絵本を手に取ってはいかがだろうか。

 

外部記事

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