【レビュー】リバース:1999

I know the moon, and this is an alien city.

リバース:1999は中国のメーカーBLUEPOCHにより開発されたタイトルである。
本作は事前の宣伝にも非常に力を入れており、またPVなどからもわかるようにビジュアルスタイルおよび音楽が非常にオシャレだ。
他作品の名前を出して恐縮だが、筆者はこれを見てDeath Strandingのような雰囲気も感じたことを記憶している。

 

re1999.bluepoch.com

 

ストーリー

歴史的事件を題材にしたローファンタジー

リバース:1999では「神秘学家(アルカニスト)」と言われる不思議な能力「神秘術(アルカナム)」を使用できる存在をストーリーを動かしていくローファンタジーとなっている。
1999年に「ストーム」と言われる時間を逆行させ、1つの時代を消してしまうという現象が発生し、その現象の謎を解き明かすのが物語の中心となっている。
ストームは逆行後の時代でも再び発生が確認されており、それは何かしらの歴史的イベントをきっかけとしているようである。
ストームという現象を知るためにもその時間と場所を特定して調査を行う必要があるのだ。

主人公である少女ヴェルティは神秘学家の子供達を保護・収監して”教育”を施している聖パブロフ財団に所属するエージェントのような存在だ。
彼女は「マヌス・ヴェンデッタ」という不穏組織と対峙したり、あるいは聖パブロフ財団とも因縁深いようである。
物語は主人公がある程度の情報を知っている状態から始まるが、それに対してのプレイヤーに配慮した説明的なセリフはなく、ヴェルティが知っている事とプレイヤーが知っている事のギャップが大きいため物語を理解する上で最初は面を喰らう可能性が高いだろう。
つまり、物語を読み進めていく事で「こういう事なのか…?」と考察を深めながら読み解いていくものになっているのだ。

また、アメリカを発端に起きた「大恐慌(1930年頃)」をはじめ、歴史にあるイベントやオブジェクトなどのモチーフによって構成されている。
タイトルにもある「1999」にしても"ノストラダムスの大予言"が根幹にあると考えてもいいのかも知れない。
期間限定のイベントストーリーでも「リメカップ窃盗事件(1966年)」など少しマイナーな実在の事件も取り扱っており、事実にオリジナルの脚色を加えて描いているのが特徴的だ。
歴史に興味があるプレイヤーは何をモチーフ元としているのか考察したり、実際にどういう事があったのかを調べたりする事でより楽しく観る事ができるハズである。

 

システム

カードゲーム的要素を取り入れた戦闘

本作にある戦闘システムは比較的採用される事の多いカードゲーム的な要素によって成り立っている。
編成したキャラクターに応じたカードがターン開始時に配られ、配られたカードを使用する事で効果を発動させるようなイメージで問題ない。

少し特徴的な部分があるとすると「同じレベルのカードが隣接すると1つのカードに融合されカードのレベルが上がり効果が強化される」という部分だ。
強化されたカードは威力や回復量、バフ/デバフ量などが上昇するほか、モノによっては特殊な効果が追加されるようなものも存在する。
カード位置は任意に移動させて能動的にカードを隣接させることも可能なので、状況に応じて手札のカードの位置を気にながらカードを使用していく事も大切だ。
なお、カードが配られた時点で既に隣接している場合にはその場で融合されるため行動消費をせずに強化が行われる。

カードによる攻撃または移動は行動回数を消費して実行される。
状況などによって異なるケースもあるのだが、基本は3回カードを選択できるだけの行動回数が用意されている。
前述しているカードの位置移動も行動回数を消費してしまうので、攻撃に回すべきなのか手札の状況を変更するべきなのかを考慮して行動すると良いだろう。

本作では上記のような形式によって戦闘が行われるのだが、クリア済みの戦闘に関しては自動周回が可能になる。
戦闘では決められた素材が収集でき、素材を用いてキャラクターの強化が行える仕組みである。
これ自体はそう珍しいものではないが、本作の自動周回は「再現戦闘」を採用している。
つまり、自動の戦闘では今までで最も効率の良かった戦闘状況が再現される形になるのだ。
そのため、同じ戦闘でも更に短時間でクリアしなおす事ができれば自動周回もスピーディになるためプレイヤーが工夫するべき場所が残されつつ、恩恵にも繋がるものになっている。

土地を作ってリワードを得る

ヘックス型のパネルを使って土地を増やしていくようなサブコンテンツも用意されている。

こちらは土地を作っていくことによってゲーム内で使用する通貨や素材が自動で時間と共に生産されるようなイメージを持つとわかりやすいかも知れない。

パネルの配置に仕方によって生産効率が変わるようなやり込み要素はないようであるため、自分好みに配置して島を広げていくのが良いだろう。
また、島の中には所有しているキャラクターも配置可能だ。

 

グラフィック

レトロで美しい空気感を思わせる世界観は魅力的だ

リッチなイラストとLive2Dベースのキャラクターによって構成されている。
特に落ち着いたレトロでノスタルジーのある空気感を思わせる美麗なイラストの数々は魅力に溢れている。
イラスト自体の美しさはもちろんだが、彩度とコントラストを強めに表現しながらも全体をくすんだような色調でやや明度を落として表現する事で幻想的でダークな雰囲気が作り上げられているのだ。
これらの美しい美術は本作が誇る素晴らしいポイントの1つになっていると言って良いだろう。

また、時代を遡っていくという物語でもあるため、過去の時代を彩ったものも登場する点も興味深い部分になっている。

 

サウンド

サウンド面に関してもPVでも流れた「Symbiosis」などを筆頭に作風とマッチした落ち着いた雰囲気のどこかレトロな雰囲気を持ったBGMが多い。
特にキャラクター強化の画面などはお気に入りだ。
SEでも紙が擦れるようなものなどを採用していたりと、こちらでもレトロな空気感を出している。

ボイス関連の制御も細かく行われており、ボイスを途中で切った場合でもブツ切りにはせずに切り替えをクロスフェード的に行うようにしていたり、ダイアログ表示中に裏で喋っているような状況では声がくぐもったような遠くになるように演出されたりする。
また、難解なセリフ内容が多い本作だが、見事な演技によって支えられている部分も大きい。

 

総評

リバース:1999は大小様々な歴史的事件を題材としたファンタジーであり、プレイヤーの知的好奇心を印象的な美術の数々で満たしてくれる作品でもある。

目を引く見事なビジュアルスタイルと音楽センスは描いている世界観にマッチしており、懐古的とも言えるほどにかつての時代を美しく演出している。
また、戦闘ではカードを使用した戦略性とある程度の制御が可能なランダム性によってゲームプレイとしての面白さも提供している。

ただし、ストーリーでは確信をつくようなテキストが意図的に排除されているため、明快な内容にはなっていない。
そのような考察や考証を好むのかによっても印象が変わるタイトルだと言えるだろう。

 

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