
真・三國無双 ORIGINS(以下、三國無双オリジンズ)はシリーズとして久しぶりの登場である。
前作にあたる真・三國無双8はオープンワールドの三國無双に挑戦こそしたものの、当時の水準からしても非常にレベルの低い内容に着地してしまった経緯がある。
こうなってしまったのはシリーズは重ねる事にプレイアブルキャラクターが増え続け、開発リソースのバランスが保てない事も要因の1つと考えられる。
対して、三國無双オリジンズではその名の通り原点回帰を謳っており、メインのプレイアブルキャラクターを架空の主人公の1人に絞るなど大胆な施策を行いシリーズの本来あるべき在り方を見直している。
これは戦国無双5でも近しい施策で作品の在り方を見直しており、登場人物がいくらでも増えていったシリーズに一石を投じるものであった。
今回はシリーズ存亡の再起をかけた本作のレビューを行う。
ストーリー

物語は後漢末期。
長期政権による弊害か腐敗した統治に追い打ちをかけるように飢饉・疫病により政府への不満が高まっていた。
主人公は記憶喪失ながら動乱を治めて太平の世を築くことだけを使命として覚えており、三國志の英雄達と出会いながらその目的を果たすために行動していく事になる。
本作では物語が進むと曹操、孫堅、劉備のいずれか勢力に参加して、勢力別の物語を体験できるようになっていくのが特徴で非常にドラマチックに三國志を描いている。
キャラクター性は今までのような誇張された性格・言動は抑えられ、脚色はされているものの地に足の着いた大河ドラマとしての三国志のドラマが表現されている。
物語のベースは三国志演義ではあるものの、本作は各勢力を対等に扱うためにそこから更に大きく脚色を加えている。
真・三國無双シリーズ自体が三国志演義から脚色を加えているのは確かだが、本作では更にプレイヤーに対しての説得力と動機付けを行うための物語になるように変化が加えられているものとなっている。
そのため、多くの登場人物を魅力的に描く目的から史実・演義とも少しだけ異なる歴史の流れになっている部分も存在する。
結果的にそれによって各人物・各勢力の魅力を伝える事に成功していると言って間違いない。
例えば、歴代の三國無双シリーズにおいて張角や董卓、袁紹といった人物達はパブリックイメージを更に誇張した事でどこか滑稽に描写された人物像であったが、いずれも大人物として描かれており敵対勢力ながら行動理念やカリスマ性を感じさせる史実に近い人物像になっているのだ。
どこを見渡しても魅力的な長によって率いられた勢力ばかりであり、そこに三國志の、ひいては群雄割拠のロマンを感じずにはいられないだろう。
また、本作では正史とも演義とも異なるifルートも用意されている。
このifルートへと至るにはゲーム的な難易度が高く設定されており、歴史の流れを変化させる事の難しさも表現しているのだろう。
とは言え、歴史の流れを変化させたとしても未知のストーリーや戦闘が発生するような事はなく、あくまでもエンディングに変化があるものとして調整と処理がされている。
更に嬉しいのはエンディング後にはプレイヤーの功績が事績として史書のような形で書かれる。
プレイ内容に応じて記載の変化がある伝記であるため最後の総括として嬉しい要素になっている。

「システム」の項でも記載するが本作はワールドマップ方式で進行する事になる。
ワールドマップは当時の中華を舞台としており、洛陽や長安、長沙など各地に都市が配置されている。
その都市の近くを通ると民間人の噂話のようなものを聴くことができるのだが、その中にはオヤジギャグのようなものがいくつも用意されており、内容としては「鄴が仰々しい」「小沛が勝敗」だのと苦笑いするしかないギャグを大量に聴かされることになる。
1つや2つならちょっとしたスパイス程度として悪くないが、余りにも多すぎて正直言ってうんざりするくらいには用意されている。
システム

攻撃手段は簡単に書いてしまうと弱攻撃と強攻撃を基本的に組み合わせて使用する事になるのが基本である。
そして、攻撃を当てる事で溜まるゲージを使って「武芸」と言われる強力なスキルを発動したり、無双乱舞による完全無敵状態での大技を放ったりする。
特に強化された無双乱舞では上図のように一撃で1000人をも消し飛ばす威力と範囲を誇り、密集した敵が一瞬で大きく吹き飛びながら一掃される様は正に爽快である。
それ以外でも戦場ではタスクも発生する。
制限時間内に敵将を倒す事が要求されたり、制限時間内に味方の将を守る事を要求されたりする。
それらの、特に後者側のタスクを完了させる事が出来ると大技が発動して上図と同じように敵軍勢を壊滅させるような大規模攻撃が発生する。
このように何らかの活躍を達成すると簡潔ながらプレイヤーを称賛してくれる演出が入るなど全体的に緩急をつける事が意図的に意識されているのが見事である。
無双シリーズは一定の面白さは確かにあるものの「草刈り」などとも揶揄されるように同じボタンを押し続ける時間が多くゲーム内容が平坦で淡白になりがちであったが、「密集した敵を一気に排除する」「戦いの中でしっかりと達成感のある演出でプレイヤーを称賛する」など緩急あるいは緊張と解放のメリハリをしっかりと持たせてアクションゲームとしての爽快感を持たせる事に成功している。

戦場では何も雑兵たちとの戦いばかりではなく、敵将との戦いも存在する。
敵将には体力とは別の「外功」というゲージがあり、これを削る事で相手をスタン状態にできるうえに大ダメージを与える攻撃を発生させる事が出来るようになっている。
この外功を削る上では防御行動も非常に重要になっており、敵の攻撃に合わせてガードをするジャストガードができれば相手の態勢を崩して削りやすくなる。
また、回避をする事で武芸発動に必要なゲージが多めに回収もできたりと、ずっと攻撃ボタンをポチポチと押すだけではない内容にまとまっているのだ。
しかし、防御や回避などの「相手の行動に対してプレイヤーが対応を求められる」という要素はプレイヤーに適切な判断と操作を求めるという事でもありゲームの難易度を上げてしまう可能性が高くなるものでもある。
本作ではその難易度上昇を緩和する施策も見て取れるのだ。
それは各種攻撃モーションはガード・回避・ジャンプでいつでもキャンセルが可能になっているのである。
そのため、基本的にはずっと敵将に対して攻撃をしつつ、相手の攻撃モーションが確認出来たらガードや回避をする事を意識していればそう対処は難しいものではないように作られている(「アクションゲームが苦手な人でも」とまでは言い難いが)。
これが攻撃モーション発生中にはキャンセルが行えないとなると相手の攻撃を誘発してから攻撃をする必要があり疑似的なターン制の戦闘となる。
これはこれでも良いのだが、プレイヤーのプレイスキルや練度が低いと自分の攻撃ターンを作れないようなケースも発生してしまい少しだけ高度なアクションが求められることになってしまう。
また、疑似ターン制アクションとなるような設計の場合では最も致命的になる点として、無闇に攻撃をする事にリスクを伴う関係から相手の出方を伺う「お見合い」になる時間が発生する事にも繋がり「無双アクション」というコンセプトからすると非常に冗長な時間が長時間に及ぶことになってしまう懸念も考えられる。
しっかりとゲームのコンセプトを理解した上での選択されたデザインだと言えるだろう。

本作では武器種がいくつか用意されている。
剣はシンプルな操作かつ攻撃発生が早めで扱いやすく、槍はリーチも発生もあるが強攻撃はチャージ方式での範囲攻撃であるため畳み掛けには若干不向きなど武器毎に固有の特性が設定されている。
筆者のお気に入りは「朴刀」で、大刀であるため攻撃モーションがやや遅いが敵将にも有効な扱いやすい武芸が揃っているうえに、何よりもチャージ攻撃となる強攻撃は剣圧を飛ばして破格の射程範囲に攻撃できるため非常に爽快だ。
他武器でも同レベルの広範囲射程の技自体は存在こそするが、それらは武芸技であるためノーコストで放つことが可能なことが大きな利点となっている。
対して「矛」は若干使いにくいかも知れない。
こちらは強攻撃がチャージ方式となっており、そのチャージ中に敵から攻撃を受けると大ダメージを与えられるというカウンターのような仕組みなのだが、完全スーパーアーマーではないため敵将戦では何も考えずに使えるようなものにはなっておらず、強みを活かせる場面が限られてしまう印象である。
これらの武器は戦闘が始まってからでも変更が可能なため気軽に使い分けられる。
また、プレイヤーのレベルは武器の熟練度とイコールであり、熟練度が低いものは熟練度が上げやすく補正されるなど使い分ける事を推奨している作りでもある。
かつての三國無双シリーズにおいては武器が違っても操作する内容に違いがないため、キャラクターなり武器なりを変えても味変になる事がなく、言うなればライスにカレーをかけた状態で提供されるか、ライスとカレーが分かれた状態で提供されるか程度の違いしかなかった。
そういったゲームプレイになっていた事が「草刈り」に拍車をかけている側面が強かったが、本作では武器を変える事で少しだけ味が変化するようになったのは良い変化だ。
なお、これらの武器は敵将がドロップする事になり、ドロップした武器にはランダムでパッシブ効果が付与されている。
そのためシリーズと同様にハクスラ的な側面もあるので、やり込みとなるエンドコンテンツとしてはこの辺りになるだろう。

戦闘では「随行武将」という枠で三國志の人物と一緒に戦場で戦える。
近くで戦ってくれる仲間NPCのような立ち位置で、一定の条件が揃えば自身で操作が可能になる。
随行武将を自身で操作できる際には非常に強力な攻撃が特徴的だが、使用できるのは時間制限があるため、ある種の強化状態だと言えるだろう。
随行武将の人数は多く用意されておらず、基本的に1つの勢力につき3名が選出される形となる。
この辺りにはもっと色々な人物を連れていきたいという感想を持つ人も少なくないだろう。

プレイヤーには随行武将の他に自身の私兵も存在する。
この兵士には指示を出して弓や騎馬などによる攻撃を支持する事が可能だ。
攻撃手法の指示によっては特効効果があり、例えば弓による掃射は高台から打つようにする事で大ダメージを与えられるなど位置取りを駆使した攻略にも役立つ。
これは敵将にも非常に有効に作用するので、直接戦う前に余裕があれば積極的に狙うべき要素だ。

本作において非常に特徴的なのはワールドマップ方式である事だ。
ストーリー進行する戦場がワールドマップ上に表示される。
そのため、中国あるいは三國志に余り詳しくない人であっても「どこでどのような戦いがあったのか」が理解しやすいものとして機能している。
このワールドマップでは無限にポップする賊も存在する。
レベルが足りないなどの何らかの理由で寄り道がしたいときに利用できるもので、ポップした戦闘は比較的短時間で終わるものになっている。

ストーリー進行は完全なステージ制へと回帰している。
上述した通り、ワールドマップからストーリー進行の戦場にアクセスして出陣する事で物語が進行していく形だ。
そのため各ステージは予めスクリプトされたものとなっており、あくまでも後漢末の三國志を追体験するものに近いシリーズ旧来のシーケンスだ。
グラフィック







主にプレイするのは戦場だけであるため後漢末における生活感あるディティールが描写されているというレベルではないが、それでもキャラクターの造形に関しては地に足がついたものになっている。
かつてはキャラクターイメージを基にして誇張に誇張した造形だったが、三國志の物語性を強調した本作ではビジュアル面でも威厳ある人物として描いているのは良い点だろう。

「システム」の項でも少し説明しているがステージ内で発生したタスクが完了した際など、軍勢が一気に敵陣に攻め上る演出が発生する。
ゲームプレイとしても敵の士気が下がるなどの恩恵があるのだが、それ以上に仲間達と一緒に同じ目的に向かって戦っている迫力がプレイヤーの気分を盛り上げてくれる。
このように敵も味方も兵士の描画量が過去最大であり、それもまた迫力が感じられる素晴らしい要素だ。
サウンド
相変わらずのエレキギター音楽だが、物語やゲームプレイの雰囲気の邪魔にならず逆に戦場での威圧感が出るような楽曲になっているのが好印象だ。
キャラクターの演技もその物語に沿うような落ち着いた雰囲気になっており、シリーズ続投の声優も少なくないが同じキャラクターを演じているにも関わらず物語としての描かれ方が違うだけでこうも演技も変化するのかと技術的な側面でも感服してしまうだろう。
総評
真・三國無双 ORIGINSは物語でも戦場でもシリーズ最高の三國志体験を実現し、シリーズを新しい舞台に引き上げた名作だ。
多くの登場人物が尊敬するべき魅力ある偉人として描かれており、仕えるべき主が1人しか選べないこと、更には選べる選択肢が3つしかない事を惜しんでしまう。
本作で描かれているのは正に「英傑同士の戦い」であり、それに納得するだけの説得力を持って物語とキャラクター性が構築されている。
戦闘ではメインコンセプトこそ同じだが、全体がメリハリが効くようにゲームプレイのデザインが調整しなおされている。
集団戦の時には密集した敵を一掃する、敵将と対峙した際には攻撃しながらジャストガードや回避を挟んで崩し大ダメージを与えるなどなど緩急や緊張と解放のコントラストが生み出すカタルシスがしっかりとゲームプレイのスパイスとして機能してアクションゲームとしての楽しさに繋がっている。
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