【レビュー】SDガンダム Gジェネレーション エターナル

自分だけの最強部隊で戦場へ出撃せよ

SDガンダム Gジェネレーション エターナルはSDガンダム Gジェネレーションシリーズのスマホアプリだ。

2025年時点のガンダムシリーズはそもそも良い波が来ていた。
水星の魔女(2022~2023年)によってSNSでも物語の伏線描写に関してホットな話題になるなどガンダムシリーズが新規ファンの獲得に成功し、待望の映画SEED Freedom(2024年)では爆発的な人気と話題の獲得、更にはGQuuuuuuX(2025年)によっていわゆる宇宙世紀も別角度から焦点が当たるなどガンダムシリーズにとっては新旧の多方面からの追い風の中でリリースされたのが本作である。

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ストーリー

ガンダムシリーズ初心者にもオススメできる

本作は近年のGジェネレーションシリーズと同様に原作の追体験をベースとした物語が用意されている。
各作品毎のステージ単位で構成されており、ステージには原作ストーリーを放送時系列通りに進行・攻略していく形式である。
ステージでは背後関係を含めてナレーション付きで説明されるため、原作を知らないプレイヤーにもある程度の状況把握ができるため初心者にとってもどういう物語なのかが把握しやすい作りになっている。
過去シリーズでは描写が飛び飛びで原作アニメを履修済みでないとディティールがよくわからない事が危惧されるような作りであったが、本作では大まかな流れが理解できるようになっているのはガンダムシリーズの入り口としても悪くない。
しかし、その代償として説明的過ぎる余りに尺が長くなってしまっているのは一長一短だ。

本作において特筆すべき点を挙げるとすれば原作のカットが大量にそのまま使用されている点である。
有名なカットだけに留まらず、そこに行き着くまでのシーンなどに関しても全て原作カットを用いている。

新規アニメ付きの新規シナリオも用意されている

新作アニメーション付きで完全新作となるガンダムSEED系列の時系列的中継する「ガンダムSEED Recollection」も公開されてた。
これはガンダムSEEDガンダムSEED Destinyの間の出来事を描いた作品となっている。

アニメーション自体のボリュームもかなり充実しており、アニメ1本分ほどの時間のカットが用意されているのは見応えがある。

外伝作品はイベントとして登場

期間限定のイベントではOVAなどで展開された外伝作品(いわゆるMSVなど)のストーリーをメインストーリーと同じ形式で遊ぶことができる。
こちらもメインストーリーと同様にアニメのカットが存在する場合には、そのままそのカットが使用されているなど版権もののゲームとしては非常に贅沢な作りになっている。

ライブラリもしっかりと完備

ライブラリも用意されており、手に入れた機体やパイロットに関してのゲーム内ストーリーを追うだけではわからない情報が記載されている点もファンにとって嬉しい要素となるだろう。

 

システム

モダンなレベルになってプレイしやすくなった

ガンダムシリーズ作品毎のステージ制となっている。
ステージをクリアした報酬で強化に必要となる素材などが手に入り、ステージを最高ランクでクリアできると周回をスキップして報酬を獲得できるようになるというスマホ系のゲームに多い仕組みが採用されている。

戦闘はGジェネレーションシリーズらしいターン制のSRPG形式であり、グリッド状に区切られたマス目をユニットを動かして敵ユニットを攻撃して倒していくオーソドックスなスタイルである。
ユニットは機体とパイロットの組み合わせで構成されており、それぞれの特徴を考慮して組み合わせるのがベターな選択肢だ。
例えば、射撃兵装に長所のある機体に対して、白兵戦闘が得意なパイロットを登場させるのがミスマッチであるようなイメージである。
ユニットとして大枠での個性となるのは攻撃・支援・防御の3つの属性だ。
攻撃型のユニットは名前の通り攻撃力が高い傾向がある。
支援型のユニットは攻撃範囲内であれば仲間が攻撃をする際に一緒に攻撃が行える。
防御型のユニットは味方のユニットが敵ユニットから攻撃される際にかばってダメージを肩代わりできる。
こういった特徴があるため、部隊編成においてもそれなりにバランス良く編成するのが大切だ。
火力の高い攻撃ユニットだけで構成したとしても一撃では倒しきれない事があり、一撃で倒しきれないと敵機からの反撃によってダメージを受けてジリ貧にもなり、攻略が上手くいかないケースが出てくる。
そんな場合には支援ユニットによる火力支援でダメージの底上げができると安全に敵機を撃墜しやすいため攻略もしやすくなるハズである。

こういったユニットを複数編成して構成されるのが部隊だ。
部隊編成は「シリーズ部隊」と「フリー部隊」の2つの枠が設けられている。
シリーズ部隊は選択した攻略対象のステージの作品あるいは「専用機」などの何らかの特徴となるタグに合致する機体・パイロットのみが編成可能という制限があるものの、ステータスにプラス補正が入り普段よりも強くなる。
フリー部隊はその名前の通りで、シリーズ作品に関係なく自由に編成・出撃させる事が可能になっている枠組みだ。

本作では遊びやすさの改善も行われている。
信じられない事に前作にも当たるクロスレイズ時点では未実装だったのだが、本作では「攻撃時のダメージ結果予測」が表示されるため、それを基として行動を選択しやすくなっている。
倒しきれない場合には支援ユニットを添えてあげるなどの工夫を考慮しやすいなど、もはやこの手のゲームとしては存在して当たり前であるため褒められたものではないが遊びやすさも意識されている。

ただし、過去シリーズと同様にAIの行動はお世辞にも賢いとは言い難い。
例えば、攻撃範囲外から行動しようともしないし、HPが削れている相手を優先したりもしない。
何を基準に、誰を狙おうとしているのかが判断できないため、ステージ攻略の際にユニットをどのように動かすべきかが厳密に決めにくい。
この辺りはルールとしてもう少し明確にデザインして欲しい所だ。

シリーズの中ではモダンな要素を取り入れたり、簡潔な仕組みにしたりする事で敷居の低い遊びやすさを実現しているが、本作においては将来性が不安なところでもある。
部隊の強さがユニット自体の強さに依存しており、ユニットの強さは機体・パイロットの強さとイコールである。
そして機体やパイロットを強化する手段は純粋にレベルを上げたり、武装のレベルを上げたりするだけでプレイヤー側の工夫が行える余地がほとんどない。
そのため、今後実装されていくユニットの差別化を図ろうと思うと、かなり早期の段階でのインフレ環境になる事態も予想される作りになってしまっている。
モダンなものとしては、ランダムに性能が決定される装備品で機体やパイロットの長所を伸ばすようなエンドコンテンツも込みの仕組みなどが考えられるだろうし、周囲nマスの味方ユニットの射撃ダメージをx%上昇させる…などのようなユニット同士の編成・配置によってシナジーを生み出せるようにする事で部隊編成で工夫できる余地を出すなど、何かしらのインフレを抑制可能なデザインが必要であるように感じてしまう所である。

また、大量に存在する機体を活かしきれない点は勿体ない。
リリース時点で500機にもおよぶバリエーションが用意されているが、出撃できるのは10機であり10%にも満たない。
一応はシリーズ部隊という枠組みによって制限を設けたりして色々な機体が活用できるように配慮はされているが、それでも分母からすると少ないものである。
最前線で利用しない機体であっても活躍できる仕組みは何かしら検討して欲しい所である。
例えば、ユニットには僚機を設定できるようにして、設定した僚機によって特異なパッシブ効果が発生するなどがあればプレイヤー側での工夫の余地を生み出しつつ、機体の多さを活かす手段にも成り得ただろう。

 

開発

ある程度の機体は開発して入手できる

開発では主にステージで鹵獲した機体を開発経路図に沿って機体に変化させる事ができる。
一部の敵ユニットはステージ攻略の際に確率で鹵獲する事もでき、鹵獲した機体を開発してより上位の機体にしていく事でステージ攻略をしやすくしてくれる。
開発経路図は必ずしもガンダムの設定に準拠したものではないが、ゲームらしく徐々に機体が強くなるようになっているほか、誰でもある程度は有名な機体を入手できる仕組みになっている。
部隊編成において強力なユニットが不足しているプレイ開始初期の時点では非常に助かる要素になっているが、逆に言えばユニットが充実してくるとコンプリートを目指すためのやり込み要素の域を出ない要素になっている。

 

グラフィック

原作カットを数多く挿入しているのは驚異的だ

「ストーリー」の項でも記載したが、原作のカットをそのまま多数使用しているのはかなりの魅力だといって良いだろう。
宇宙世紀作品からそれ以外の作品に至るまで大量の原作カットを用いているのはファンにとっても、これからファンになる人にとっても嬉しい要素である。

シリーズ恒例で戦闘アニメーションも原作準拠だが機能性も高まった

本作ではシリーズ同様に攻撃のアニメーションで原作再現を盛り込んでいる。
過去シリーズでは戦闘アニメーションで原作再現のシーンを詰め込んで表現しようとする余りにアニメーション自体が長くなりすぎていたが、大技以外の武装に関しては敵機へのダメージアニメーションがカットされるなど本作では比較的短く終わるように調整されており遊びやすさの面も配慮されたバランスに着地できている。

 

サウンド

BGMに関しては原作のものが使用されない事は少し残念だ。
全く存在しない訳ではないが使用に関しては限定的なものとなっており、原作ストーリー上の重要で印象的な場面で原作BGMが使用されないのは勿体ない。
各楽曲に関しては権利がバラバラであるため一元的な利用が難しいため、有料課金による追加が予定していることがアナウンスされ、2025年9月30日に配信が開始された。
ただし、これはこれで現代のゲーム環境においては懸念もあり、動画配信において使用された原作BGMの影響で配信にネガティブな影響が出る可能性もあり、そうなると配信を控える事にも繋がってしまう。
動画配信はゲームを知って貰う機会の1つとして現代では避けては通れないファクターでもあるため、配信ユーザーに関しては注意が必要となるだろう。

ボイス関連として特筆する点は各作品のストーリーで挿入されるナレーションだ。
ナレーターは作品によってそれぞれ変わるなどシリーズ毎にマッチした演出も意識されている点は版権ものゲームとして嬉しいポイントだ。

 

総評

SDガンダム Gジェネレーション エターナルはガンダムファンにも、ガンダム初心者にも、シリーズ経験者にも、シリーズ未経験者にもオススメしやすい作品だ。

原作カットをこれでもかと使用して追体験するストーリーは、感動までは至らないかも知れないが何故こんなことになったのかが理解できるように丁寧に描かれており、原作アニメの流れが把握できるようになっている。
また、ゲームプレイ部分においても原作再現は残しつつも、遊びやすさも担保されており現代レベルのSRPGとして成立している。

懸念点としては将来性であり、プレイヤーが工夫できる余地が少ない事から、今後実装されるであろう機体を差別化していこうとした場合に純粋なインフレと言う手段しか選択肢として乏しい点だ。
今後どのように運営を舵取りしていく事が注目ポイントとなるだろう。

 

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