【レビュー】星のカービィ

まるくてカワイイ食いしん坊

星のカービィは1992年にゲームボーイ向けにハル研究所が開発、任天堂が販売した作品だ。
本作のディレクターは桜井政博氏で、本作が初のディレクション作品となっている事も広く知られている。
桜井氏はゲーム開発において最も影響力のある人物と言っても過言ではなく、その最初の船出が本作なのだ。
最初に手掛けた時点から「自分が好きなゲームではなく、クライアントとエンドユーザーに求められているゲームを作る」というゲーム業界全体を見据えた上でのゲームデザインを徹底しており、そういった開発哲学や体系化された理論に加えて言語化能力も高い事から業界を問わずに敬意の眼差しを向けられる事が多い人物でもある。

本作は当初「はるかぜポポポ」という名称が内部で使われており、それが「ティンクル・ポポ」という名前でゲーム雑誌などのメディアに公開され、後のカービィとなるキャラクターも「ポポポ」という名前で紹介されていた。
その名残りは現在でもデデデ大王、プププランド、ロロロ&ラララ(元ネタは1985年発売のエッガーランド)などの命名法則からも確認できるだろう。
しかし、色々あって任天堂パブリッシングとなる事をきっかけに海外展開も考慮してか宮本茂氏からの提案から「星のカービィ」と名称変更された経緯がある(その他、カートリッジROM容量が2倍になり追加要素を増やすなどの変更もあった)

今回はNintendo Switch Onlineで配信されているものを利用してレビューを行う。

 

星のカービィ

星のカービィ

  • 発売日:1992/4/27
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

細かいことは気にしない

カービィが住むプププランドにて王を自称するデデデ大王が国中の食べ物と秘宝きらきらぼしを奪ってしまう。
それらを取り戻すためにカービィがデデデ大王の居城に向かうというのが本作のストーリーである。

大まかなストーリー自体はあるものの、全体的には理屈を理論立てて考えるようなものではない。
あくまでもゲームプレイが中心に考えられており、冒険のシチュエーションがコロコロと変化するように作られている。

 

システム

「吸って、吐く」という生理的に理解できるシンプルな機能性

本作では「敵を吸い込んで、それを吐いて敵を倒す」という非常にシンプルな仕組みを用いた2Dプラットフォーマーであり、特に当時のゲーム初心者を見据えた作品であることでも知られている。
吸ったものを吐き出すことが攻撃手段となる操作感は生理的にも理解しやすい手続きである事はゲームに馴染みのない初心者にとってもプレイしやすい恩恵のあるものと言えるだろう。
また、当時としては比較的珍しい体力制であるうえ、空中を浮遊する能力があるなど、全体的にリスクを抑えながら進行する手段を有しているというのが特徴である。
なお、後にカービィシリーズの代名詞となる敵の攻撃手段を奪える「コピー能力」は次作「夢の泉の物語」からの登場で、本作はよりプリミティブな遊びであることは留意されたい。

ゲーム初心者がクリアしやすいのはカービィ自身の性能だけに留まらない。
本作の敵の挙動は接地判定が設けられていない事が語られており、そのことからフィールド上での敵の動作が固定となっているのだ。
つまり、ランダム性がほとんどないため敵の配置と挙動さえ覚えられれば対策は簡単であり、ゲームに不慣れなプレイヤーであってもある程度のリプレイを重ねればクリアしやすいものになっている。

全体的にゲームスピードも遅くクリアまでも短いが、ゲームをクリアした人向けには難易度を上昇させたエクストラモードが用意されている。
エクストラモードでは敵配置・敵の挙動などが大幅に強化されており、本編よりも慎重に進めなければ序盤からやられてしまうくらいには難易度が上がっている。
ゲームに慣れたプレイヤーが達成感を感じてもらうための要素も用意されている。

シリーズの初代となる本作には後作では余り見られなくなったものも登場する点は逆に新鮮かもしれない。
例えば、カレーを食べれば空気砲が打ち放題になり、イモを食べると空中機動が高くなる。
後作ではコピー能力が採用される事から現在では見られないような専用の攻撃手段が存在する。

 

グラフィック

ファンシーでどこか不思議な世界観が特徴的

本作は当初512kbit(現代で標準的なbyte換算では64kbyte)ROMを想定して制作されていた事から、キャラクターなどのチップを節約しながら量を出す工夫が随所にあり、これはディレクターである桜井政博氏本人からも幾度か語られている
これ自体は当時の容量が少なかったゲームではある種、当たり前の工夫の1つであり各社の各開発者が様々な工夫で少ない容量の中でやり繰りをしていたのである。

前述の通り敵の接地判定処理を行っていない事から敵の挙動は固定であるが、その恩恵として動作の軽快さが向上しているとのことである。
確かにキャラクターそれぞれで設置しているかのコリジョン処理を挟むのと、予め指定された通りに動くだけであるのとでは処理の重さは異なるだろう。
とは言え、オブジェクトが多くなるとスプライトオーバーや処理落ちも発生するため、レベルデザイン的な粗さもやや感じられる。
また、ゲームボーイと言うグレースケールベースでの濃淡で表現されているため仕方がない側面もあるが、フィールドが接地可能な判定の地形なのか否かがパッと見でわかりにくいケースがある点も少し気になるところだろう。

 

サウンド

現代のカービィシリーズにも続くポップで明るい楽曲が印象的であり、また現在でもアレンジを変えて使われるようなBGMも少なくない。
作中のBGM使用方法もこだわりが感じられ、ステージBGMのイントロの終わりとゲームの開始がマッチするように配慮されている。

サウンドテストも用意されており、劇中の楽曲を確認できる点もありがたい。
ただし、楽曲名は表示されないため曲名まで知りたい場合には別途調べる必要がある。
筆者の好きな楽曲も一部紹介させて欲しい。

今やカービィの代名詞的な楽曲の1つ「GREEN GREENS」

明るいエンディング曲「あしたはあしたのかぜがふく(エンディング)」

現在のカービィ作品においてもアレンジされて使用される事も多い曲が多く聴き馴染みがあるのではないだろうか。

 

総評

星のカービィは素人から玄人まで遊ぶことを可能にすることを目指し、ビデオゲームを大衆コンテンツに引き上げる流れを作った作品の1つである。

「吸って、吐く」という生理的に理解しやすい仕組みをゲームメカニクスの中核にしたうえで、全体的にリスクを低減させながらリワードが得られるようにしており、当時のアーケード文化と容量不足から来る高難度化に対しての明確なアンチテーゼをテーマとした事には革新性があったといって良いだろう。

とはいえ、後のシリーズから考えればゲームメカニクスがプリミティブなもので構成されているため、現代ゲーマーの視点からすれば物足りなさがあるのは仕方がないだろう。

 

外部記事

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