【レビュー】星のカービィ ディスカバリー

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可愛さの暴力

星のカービィ ディスカバリーはシリーズとして初となる本格的な3Dプラットフォーマーだ。
カービィといえばホバリングや吸い込み、コピー能力などが特徴で、何よりも老若男女向けであるというシリーズだ。
これらは2Dプラットフォーマーだからこそ成立させやすい部分も少なからずあり、3Dプラットフォーマーとしてどのように成立させるのか気になる所となっていた。

 

星のカービィ ディスカバリー -Switch

星のカービィ ディスカバリー -Switch

  • 発売日:2022/3/25
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

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謎の廃墟でのカービィの冒険

本作では冒頭にカービィワームホールのようなものに飲み込まれポストアポカリプスのような廃墟の世界に辿り着くところからスタートする。
カービィよりも先に飲み込まれ、廃墟の世界で暮らしていたワドルディたちはビースト軍団に捉えられてしまっており、彼らの村も破壊されてしまっていた。
ワドルディたちを助けるのが今回のカービィの冒険だ。

物語を進めていけばわかる事にはなるのだが、本作は正しくはポストアポカリプス世界ではないようだ。
しかし、そこに住んでいた住民は今やいない。
当時の住民たちがどのような文化で、どのように暮らしていたのかが明確に語られるような事はないが、環境ストーリーテリングとして感じ取れる部分があるように作られているのは面白い部分だろう。

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世界設定も記載されている収集要素

ステージではカプセルトイのようなコレクションアイテム「ガチャルポン」が入手できる。
カプセルトイにはテキストも用意されているものがある。
テキストには世界の設定部分が記載されている場合もあり、気になる人は確認しておくとより楽しめる。

 

システム

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快適な操作感ながら手応えもしっかりとある

星のカービィ ディスカバリーの3Dアクションは非常に手触りが良い。
走る、ジャンプ、ホバリング、コピー能力による攻撃など、どれもが軽快でレスポンスが良い。
更に攻撃時にはヒットストップ演出もあるなど爽快な手応えも感じさせてくれる。
そのため、動かしているだけで楽しいものになっている。

カービィの代名詞とも言えるコピー能力は種類こそ多いという訳ではないが、どれもそれぞれの特徴がある能力が選出されているため個性の異なる立ち回りが楽しめるようにしっかりと差別化された選出だ。
また、シリーズ同様に駆け引きのバランスをあえて整えず、プレイヤーの操作による爽快感を重視し、3Dゲーム慣れしていない初心者プレイヤーへの配慮としてカメラ側視点ベースのヒット判定を行っているなど、老若男女が楽しめるように工夫されている。
例えば、操作に必要なボタン数は少なめで、操作自体も簡単になるように構成しているのだ。
しかしながら、そこにはプレイヤーの工夫の余地があり、コピーした能力はジャンプ中の攻撃やガード時の攻撃など様々な小技が用意されている。
他にも回避の行動が行えるのだがジャスト回避もあり、タイミングよく回避できるとスロー演出が入り反撃が行えたりもする。

ゲーム慣れしていないプレイヤーは単純な攻撃を行うだけでも良いし、ゲームに慣れているプレイヤーは様々なテクニックで立ち回る事ができるようになっているという懐の深いデザインになっているのだ。

コピー能力は強化できる

本作のコピー能力で特徴的なのはRPGのような強化要素がある点だ。
強化するためにはステージに隠されているアイテム「せっけい図」を手に入れる必要がある。
強化を行うと攻撃力など利便性が向上する事はもちろん、見た目や特殊な効果、特殊な技が使えるようになったりする場合もあり、コピー能力が強化されるたびに色々と試したくなってしまうだろう。
そして、そういった楽しむがあるためにステージで”せっけい図”を入手できる事に嬉しさがある。

しかし、コピー能力の分母の少なさはプレイを続けていくうえでは少し勿体なさがある。
コピー能力は全体から見ればそこそこの序盤で種類自体は出揃ってしまうため、目新しいコピー能力に出会うというワクワクさに欠けるのだ。
序盤・中盤・終盤とそれぞれに初めて発見できるコピー能力を用意してくれていると更に楽しさが増した事だろう。

ステージ構成もやりがいが豊富だ

ステージ構成も良く出来ている。
ステージにはステージ毎にミッションというタスクが設定されており、これをクリアする事でワドルディを助けることが出来る。
タスクの一部は最初は隠されており、何がタスクになっているか不明な状態となっている。
タスクをクリアしたタイミングで開示されるが、ステージクリア時にも達成できなかったタスクが開示されるようになっているため、何度かプレイすれば全タスクを消化する事がしやすくなっている。
最初から開示されていないタスクを用意する事によってプレイヤーにステージ内の探索を促しており、その上でタスクとは関係のない隠し要素も隠している事で探索する事の楽しさを感じやすい構造としているのだ。

その他にも様々な初心者向けの配慮や詰み防止の配慮が見て取れる。
カメラワークやレベルデザインによる配慮はもちろん、やられてしまっても残機制ではないため復帰は行いやすかったり、万が一にも地形にハマっても安全な位置に自動で戻される。
初心者や3Dになったフィールドをあちこち探索したいプレイヤーに対しての配慮がされている。

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ミニゲームももちろん実装

カービィシリーズではもはやお馴染みとなったミニゲームももちろん存在する。
プレイ可能なのはレース、釣り、アルバイト、パズルなどだ。
やること自体は理解しやすくサクサクと進められるが、それでもしっかりと歯応えのあるものとなっている。

 

グラフィック

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兎にも角にも可愛さが爆発している

本作は廃墟となっている土地ながら色彩が豊かで、可愛らしいキャラクター造形も非常に魅力的だ。
ただし、遠景のオブジェクトは露骨にフレームレートが落とされているため、少し気になるかも知れない。

フィールドやキャラクターの造形も魅力満点だが、その魅力を更に増強させているのがキャラクター達の多彩なリアクションだ。
例えば、カービィはジャンプは行うたびに右足と左足が交互に出るようになっており、連続ジャンプを行った時に自然にみえるように工夫されている。
その他にも、高い所から落ちたり、十字キーでアピールしたり、アピールをワドルディが返してくれたりと、とにかく細かい様々なリアクションが用意されているのだ。
非常に手が込んでいるのはもちろんだが、そのリアクションを観ているだけで心を和ませてくれる。
この余りの可愛さの暴風にスクリーンショットが捗ることだろう。

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”シアター”という形でカットシーンを再度観る事が可能

ゲーム内のカットシーンはいつでも見る事が可能だ。
「シアター」という施設で観る事ができるため、選択画面や観かたもそれらしいものになっている。

 

サウンド

歴代カービィのイメージをそのままに鳥肌が立つような優しく爽やかでテンポの良い素晴らしい楽曲揃いだ。
楽曲はメインのフレーズが多用され、単純接触効果による記憶にも残りやすい構造になっているのも好印象だ。

メインテーマともいえる希望で満ちあふれた子供頃のような冒険を感じる「新世界をかけぬけて」は「はじまりの地」において鳥の声のような形での環境音として中にも取り入れられているなどの楽曲面も様々な活用のされ方をしている。

更にステージ選択画面ではエリアが変化すると楽曲のアレンジが変化するが、それに関してもシームレスに変化する。
技術的に目新しいものではないとは言え、このようなインタラクティブミュージック的な活用方法も感動的だ。

SEに関してもスーパーデラックスのものが踏襲されており、手応えと爽快感のあるものになっている。

 

総評

星のカービィ ディスカバリーは可愛さを大爆発させつつも、3Dプラットフォームアクションとしても高い次元で成立させた傑作だ。

様々な方向でのディティールの作り込みが圧倒的で、エフェクト、フォント、カラー、質感、アニメーション、演出、音楽、ロード演出など表現できるもの全てで可愛いカービィの世界を表現している。
その上で、素人にも玄人にも手応えを感じさせるアクションは触っているだけで楽しいカービィをも実現しているのは見事と言う他ない。

 

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