【レビュー】Fallout 4

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人は過ちを繰り返す

Fallout 4はBethesdaが提供するオープンワールド型シューターRPGだ。
FalloutシリーズといえばThe Elder Scrollsシリーズと同様に、後発するオープンワールドRPGに多大な影響を与えたシリーズ作品である。

今回はFallout 4についてレビューを書いてみたい。

 

Fallout 4 【CEROレーティング「Z」】 - PS4

Fallout 4 【CEROレーティング「Z」】 - PS4

  • 発売日:2015/12/17
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

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ポストアポカリプス世界で生きる人々の生活

Falloutシリーズは世界規模の核戦争へと突入し、ポストアポカリプスとなった架空の時代のアメリカが舞台だ。
本作ではマサチューセッツ州のボストン周辺での出来事が描かれる形となっている。
世界観として印象的な要素としては登場する機械類が全体的に丸みを帯びたデザインをしておりレトロフューチャーの雰囲気が強い事だ。
ポストアポカリプスやレトロフューチャーの世界を堪能したいのであれば、その期待にも応えてくれるだろう。

主人公であるアバターはパートナーと生まれたばかりの子供がいる人物だ。
核戦争により家族と共にシェルター(Vault)へと退避して放射能汚染が収まるまで生活する……ハズだったのだが、人体実験に巻き込まれ冷凍睡眠させられる事となってしまう。
そしていくらか年月が経ったのち、冷凍睡眠で朦朧とする中でシェルター内に侵入してきた者によってパートナーが殺害され、子供は誘拐されるところを目撃してしまう。
そこから更にいくらかの時が経ってシェルターから脱出すると、核戦争やバイオハザードによって荒廃した外の世界を目の当たりにする。
そこは主人公が生きていた時代から200年もの時が経っていたのだ。
荒廃した世界で唯一の家族である連れ去られた我が子を探し出す旅をするのが本作のメインストーリーとなる。
この手の海外産RPGに多いTRPG的文脈から来るアバター型のゲームにおけるデザインとして奇妙なのは家族構成などがハッキリしているなど、珍しく完全に無個性な主人公ではないという点だ。
自分自身を完全に投影するような構造となっていないのは本作を形作る全体のゲーム哲学としてややチグハグな印象を持つプレイヤーもいるかも知れない。

本作のポストアポカリプス世界にはエンディングに関わる大きな勢力が4つ、それ以外の小さなものも含めればそれ以上の勢力が存在し、それぞれが互いに思想が異なり、場合によっては対立している。
それに伴いメインストーリーはいくつかのルートへの分岐があり、プレイヤーの選択する分岐先によって敵対勢力に変化が生じる構成となっている。
ストーリーには映画のようなドラマチックな演出がある訳では無いが、どちらかというとポストアポカリプス世界に生きる人々の生活とその延長線上にある物語を描いており、シム的な意味合いでのロールプレイという言葉がピッタリと合うような作りだ。
死体の持ち物やオブジェクトの配置などでプレイヤーにそこにあったドラマを想像させる環境ストーリーテリングも随所に用意されており、これらによっても本作の世界観をプレイヤーに植え付けるように作り込まれている。

サブ要素も暴力的なまでに豊富で、サブクエストやアイテム入手はもちろん、世界観を補完するような書物や記録などのゲーム内テキストも膨大に存在する。
サブクエストやアイテムは道中を歩いていると気になるような町や建物に設定されている事が多く、目に付いた対象についつい寄り道をしてしまう構造だ。
ゲーム内テキストも豊富であり、またいわゆる環境ストーリーテリングによって何があったか想像させるような仕組みもあるため能動的に世界を知る楽しさがあるのも魅力的な部分だと言えるだろう。
また、これらに関しては興味がある人が参照すれば良いものになっているため、ゲームプレイの必須要件になっておらずゲームプレイ重視のプレイヤーにとっても邪魔とならない。
寄り道することがとにかく楽しく、その結果としてメインストーリーの話の内容を忘れてしまう可能性があるのは欠点とするには余りあるポジティブな要素が多く含まれている。

これらのメインやサブのコンテンツはプレイヤーのプレイ次第でも変化を及ぼせる幅がある。
プレイヤーの能力値などのビルド次第で相手を説得しやすくなったり、あるいは敵対している相手をなだめる事も出来たりするのだ。
もちろん、ポストアポカリプスらしい脳筋プレイに偏重しても良いだろう。
しかし、説得にしても必ず成功するとは限らない運が絡む要素であるため、場合によっては失敗して意図しない結果でストーリーが進むこともある。
これらはTRPG的な文脈のナラティブな体験を実現する要素であり、セーブ&ロードによって成功するまで粘る事も可能ではあるが、失敗してしまう事もゲーム体験であり失敗したが故に発生する展開を楽しむ事も理解した方がより本作全体のゲーム構造を楽しみやすいだろう。
そして、こういった積み重ねによってプレイヤーの個性がゲームのストーリーにも反映されていく事になるのだ。

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個性的なNPC

シム的な側面が強い事もあり、NPCには基本的には昼間に行動して、夜には自身の寝床で就寝するような生活リズムのようなものがしっかりと設定されている。
その上、多くのNPCは戦闘に巻き込まれると死んでしまうため、それがプレイヤー毎に異なる体験を生み出す事にも寄与している。

NPCの中には仲間になって連れ歩けるようなキャラクターも存在する。
連れているNPCによってもメインクエストやサブクエストでの会話差分があったり、物語の進行状況に応じたセリフがあったりと非常に芸が細かい。こちらもまたプレイヤー毎に異なる体験を生み出す要素だ。
仲間になるキャラクターの中には恋人のような親密な関係になる事ができるキャラクターも設定されているため、意中のキャラクターがいるならば積極的に親密さを上げると良いだろう。
これらのNPCも一人一人にしっかりとした個性や信念が設定されているため好感を持って接したくなるキャラクターが出てくるだろう。

 

システム

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止め時を失うRPGシューター

Falloutシリーズはオープンワールド型のRPGシューターだ。
基本的には銃器を使って敵を排除していくようなゲームプレイとなっており、FPSとTPSをいつでも自由に切り替える事も可能だ。
シューターであるためプレイヤースキルもゲームプレイに反映されるものの、RPGでもある事からプレイヤースキルだけではどうしようもない事もある。
そのため、しっかりとレベルを上げたり、装備を整えたりする事が大切だ。

プレイヤーの装備に関しては店売りも存在するが、敵からのドロップ品を拝借するのが基本となる。
そして、敵からドロップした装備はランダム性があり、特にランダムポップするような強力な敵からは時として非常に強力な装備がドロップするケースもある。
このようなハックアンドスラッシュかつエンドコンテンツ的な要素もあるため、ついつい寄り道をして敵を倒しに行ってしまう魅力があるのだ。
敵を倒してドロップした装備が高性能な特殊効果付きだった時は嬉しいし、その効果もまるでチートかのような性能のものもあったりするためゲームプレイにもしっかりと影響をもたらしてくれる。

プレイヤーの個性が反映されるのは装備だけではなく「パーク」も重要な位置を占めている。
パークではプレイヤーの能力値や特殊能力を得る形となっており、純粋に能力値を上昇するようなものから、特定の武器の性能を引き出すようなもの、NPCを説得しやすくするもの、盗みを成功しやすくするものなど、自身が行いたいゲームプレイに応じた能力を引き出すようなものが揃っている。
そのため、初回プレイ時には王道に戦っていくようなビルド、二周目プレイ時にはステルスや窃盗などのローグプレイ中心のビルドなど、味変をしながら何度も楽しむことが可能だろう。

本シリーズで特徴的で印象的なのは「V.A.T.S」と言われる敵を狙い撃ちするモードだ。
発動すると時間の流れがゆっくりになり、スタミナを消費する事で敵の部位を選択して狙い撃つことが出来る。
シューターとしてのアクションが苦手な人でも積極的に活用する事で有利に立ち回れるため、FPSやTPSに苦手意識があるなら上述しているパークもこのV.A.T.Sを意識したパーク構成にするとプレイしやすいかも知れない。
このV.A.T.Sは戦闘時のメリットの他にも、戦闘前の索敵にも利用可能だ。
オブジェクトが多かったり、暗所だったりと視認性が悪い場合には直感的な索敵に穴が出てしまう事があるが、この機能を利用する事でどの辺りに敵がいるのかも把握しやすくなる。

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資材を投入して拠点を作り上げる

プレイヤーは自勢力用の拠点を開発するサンドボックス的な要素も存在する。
拠点には小屋や家具や防衛装置などを作成して自由に配置できるほか、施設も作る事が可能だ。
施設にNPCを配置すれば拠点内にショップなどを常設できる。

拠点には満足度と言う概念も存在する。
配置したNPCも拠点自体の安全性やインフラ設備などが不足していると低下してしまう。
満足度が低下する事によるデメリットもあるうえ、そもそも拠点が襲撃されるようなケースも少なくない。
困らないように可能な限り設備を整えておくのが望ましい。

これらの施設や設備を作成するには素材が必要となる。
Fallout4においては食器や電子機器といった入手可能な様々なオブジェクトが存在する。
それらのオブジェクトは拠点内に配置するインテリアとしても機能するが、解体する事で素材として確保できる。
素材入手に必要なオブジェクトは道中や建物内にあるため、拠点拡充して自分好みの町を作りたいという欲望によってこれまたついつい寄り道をする理由を生み出す事に大きく寄与している。

ただし、困った事にバグと思われるが、拠点のリソース面が実際と異なる表示となる事があるようだ。
既に修正が行われている可能性もあるが、筆者が経験したのは基本的には表示のバグのみでありゲームの根幹に関わるようなものではなかったが、拠点の状態を確認した時に「ん?」と不安になって拠点に戻らざるを得ないような気持ちになってしまうのは少々困る。

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ユニーク(?)なミニゲーム

本作にはいくつかのミニゲームと言えるような要素も存在する。
例えば、作中に登場する端末ではどこかで見た事があるようなミニゲームが遊べたりするのだ。
こういった部分まで作っている事が、本作の作り込みを感じるポイントになるのではないだろうか。

 

グラフィック

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荒廃し廃墟となった都市には魅力がある

核戦争によって荒廃したボストン周辺が舞台となっている。
ポストアポカリプスらしい荒廃した大地と廃墟となったフィールドは魅力がある。
また、大小様々なオブジェクトは掴んだり、配置したりとインタラクト可能で、特に拠点開発の際にはそれらを配置する事で生活感のある雰囲気を演出できるのも嬉しい。

物理エンジンによるキャラクターやオブジェクトなどの挙動に関してはやや雑な部分が散見されるがそれはそれで面白くはある。
少なくともそれによって悪さが表面化する事はないため、ちょっとおかしな挙動も笑って許せることだろう。

 

サウンド

本作においてはBGMが特に存在感を示すようなことはない。
音関連で言うのであれば、作中で流れるラジオが最も耳にする事があるのではないだろうか。

ボイス関連はしっかりと日本語向けにローカライズされており、メイン人物の中には有名な声優を起用しているケースもある。
ただし、モブキャラに関しては収録方法によるものなのか、汎用セリフに関してセリフとテキストが一致していないケースが散見される。
特に多いのは例えば女性のセリフが音声は普通に女性語となっているが、テキスト上では男性語となっているようなケースだ。
これによって何か問題が生じる事はないが、少しだけ気になる事はあるかも知れない。

 

総評

Fallout 4はありとあらゆる方向からプレイヤーを中毒に陥らせる大変危険なゲームだ。

少し歩いていれば敵を発見して、倒せば武器が入手できる。時にはチートのような性能の武器に出合うかも知れない。
そして道中のついでに拠点の強化に必要なオブジェクトも拝借し、そうこうしている間にサブクエストを見つけてしまう。
サブクエストを進めようと思うとまた敵を発見して…といった無限ループがプレイヤーを襲い続けるのだ。
また、ストーリーは制作哲学としてミスマッチしたメインのシチュエーションを採用してしまったことは少々気になるところだが、様々なサブストーリーが豊富に用意されているだけでなく、補完するようなテキスト類も非常に多い。

寝る間を惜しんでプレイを続けてしまう危険性が伴うため、その点だけは注意しておきたい。

 

外部記事

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