レビュー一覧

本ブログはゲームレビューを専門とするサイトである。
レビューは個人の主観による所が大きいため、レビュアーと趣味趣向が合う人でない限りは余り参考にならないものと思う点は留意されたい。
レビュー記事の更新ペースは1ヶ月に1本を予定(目標)しているが、場合により増減する事もある。あくまでも目安として欲しい。
なお、レビュー内のスクリーンショットは特別な記載がない限りは全て筆者が撮影したものである。
また、記事は誤字・脱字、ゲームのアップデートなどにより予告なく加筆・修正を行う場合がある。ご了承願いたい。

レビューの感想や意見交換などしたい場合には以下に送って頂けると非常に嬉しい。
また、一緒にレビューを書きたい(書いてみたい)という人も募集しているので、興味がある方は気軽に声をかけて欲しい。
本ブログ管理人のX(旧Twitter)
Game's WolvesのDiscordサーバー [Wolves Party]
・メール[contacts99wolves@gmail.com]

本ブログはビデオゲームのレビューのみをコンテンツとしているが、レビュー以外の話題に関してはYouTubeチャンネルにて取り扱う。
こちらは不定期の更新となってしまうためご了承頂きたい。


 

ARMORED CORE Ⅵ : FIRES OF RUBICON

アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ

アイドルマスター ポップリンクス

Assassin's Creed Origins

Assassin's Creed Valhalla

ASTRAL CHAIN

ABZÛ

嘘つき姫と盲目王子

ウマ娘 プリティーダービー

ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!

Echocalypse -緋紅の神約-

SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズ

SDガンダム バトルアライアンス

ELDEN RING

大神

オクトパストラベラー

オクトパストラベラーⅡ

 

グランディア

Grand Theft Auto Ⅲ

絢爛舞踏祭

幻影異聞録♯FE

原神

こちら、母なる星より

Ghost of Tsushima

 

三國志13

三國志14

実況パワフルメジャーリーグ2009

シャドウハーツ

シャドウハーツⅡ

真・三国無双8

じんるいのみなさまへ

スターオーシャン セカンドストーリー R

スターオーシャン ブルースフィア

Starlink : Battle for Atlas

聖剣伝説2

聖剣伝説3

聖剣伝説3 Trials of Mana

聖剣伝説 Echoes of Mana

聖剣伝説 Legend of Mana

聖剣伝説 Visions of Mana

SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE

ゼノブレイド

ゼノブレイド2

ゼノブレイド3

ゼノブレイドクロス

ゼルダの伝説 Tears of the Kingdom

ゼルダの伝説 時のオカリナ

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス

ゼルダの伝説 Breath of the Wild

ゼルダ無双 厄災の黙示録

戦場のヴァルキュリア4

ZOIDS VS.Ⅲ

ZOIDS 邪神復活!~ジェノブレイカー編~

ZOIDS ~白銀の獣機神ライガーゼロ~

 

大貝獣物語

Dark Souls

Dark Souls Ⅲ

テイルズ オブ アライズ

テイルズ オブ ヴェスペリア

Death Stranding

DAEMON X MACHINA

天穂のサクナヒメ

Dorfromantik

TRIANGLE STRATEGY

ドラゴンクエスト モンスターズ テリーのワンダーランド

ドラゴンクエスト モンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅

Dragon's Dogma

Dragon's Dogma Ⅱ

 

 

Harvestella

鋼の錬金術師 Mobile

バテン・カイトス

Baldur’s Gate 3

百英雄伝

百英雄伝 Rising

ファイアーエムブレム エンゲージ

ファイアーエムブレム ヒーローズ

ファイアーエムブレム 封印の剣

ファイアーエムブレム 風花雪月

ファイアーエムブレム無双 風花雪月

ファイナルファンタジーⅥ

ファイナルファンタジーXVI

ファイナルファンタジー クリスタルクロニクル

プリンセスピーチ Showtime!

Fate/Samurai Remnant

Fallout 4

FREDERICA

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントムストライカーズ

ポケットモンスター スカーレット/バイオレット

ポケットモンスター ソード/シールド

ポケモン スリープ

ポケモン レジェンズ アルセウス

星のカービィ スターアライズ

星のカービィ ディスカバリー

ホワイトライオン伝説 ピラミッドの彼方に

 

MAGLAM LOAD

マリオテニス ACE

Metal Gear Solid

Metal Gear Solid V : The Phantom Pain

モンスターハンター ストーリーズ2 ~破滅の翼~

モンスターハンター ライズ

 

妖怪ウォッチ4 ぼくらは同じ空を見上げている

よるのないくに2

 

ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~

ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~

ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術師と秘密の鍵~

Rise of the Ronin

ラストストーリー

リアセカイ

リバース:1999

LOOP8

ルーンファクトリー5

Red Dead Redemption 2

LOST EPIC

Lost Ember

ロックマンエグゼ

 

わるい王様とりっぱな勇者

【レビュー】天穂のサクナヒメ

米は力だ!

天穂のサクナヒメは日本のインディーチーム”えーでるわいす”が制作し、もはや筆者が語る必要もない程に有名になった日本産インディータイトルだ。
その人気は発売当時から凄まじく、日本のインディーシーンとしては間違いなくトップクラスの知名度を誇る作品となっているだろう。
とはいえ、筆者は本作をプレイする機会がなかなか嚙み合わなかった。プレイしたい気持ちはありつつもそのタイミングで別のタイトルが同時期にリリースされていたのだ。
そうこうしている間になんと本作がアニメ化するにまで至っている。
更に2024年11月にはコンソール向け外伝、スマホ向けゲーム、新作アニメが計画されている事が公表されるなど日本のインディーゲームシーンとしては最大のヴィクトリーロードと言っても過言ではない状態にまでなっている。

 

天穂のサクナヒメ-Switch

天穂のサクナヒメ-Switch

  • 発売日:2020/11/12
  • メディア:Video Game
天穂のサクナヒメ-PS4

天穂のサクナヒメ-PS4

  • 発売日:2020/11/12
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

稲作を中心に据えて、日本の歴史もモチーフとしている

ヤナトの国の豊穣神サクナは神界においては非常に高貴な血を引く神であり、その威光を利用してぐうたらな生活を満喫していた。
ある日、人の世で居場所を追われた人々が神域へと逃げてきてしまう。
逃げ込んだ人々は神事に重要な米を食べてしまった上に、サクナは米を保管していた倉を焼失させてしまうという大失態を演じてしまう。
サクナと逃げてきた人間達は罰として鬼の住むという孤島「鬼島」へと文字通り島流しとなり、鬼が発生している理由を調査するまで追放処分となる。
悠々自適な生活をしていたサクナは、鬼島を開墾して自分で衣食住を確保させねばならない180度異なる生活をしなければならなくなってしまった。

物語や設定のモチーフとして活用されているのは日本の神話や寓話が中心となっている。
ヤナトの国は日本(ヤマト)をベースとしているものであり、サクナを始めとした登場する神々も神道的な側面も強い。
ヤナトの人の世では悟教という教義が存在している事が広まっているようで、それは仏教をモチーフとしたものであるようだ。
また、外国から来た人間はフォロモス教というキリスト教に近い一神教を信仰している事もわかる。
このように古来の日本の宗教観と外来の宗教観などの違いの雰囲気も感じさせてくれる。

王道ながら満足感の高いストーリーになっている

本作は物語展開自体は非常に王道である。
最初の頃には変わらずダラダラと過ごしたり、今までとの生活水準との落差から脱走を試みたりと問題行動を連発するが、そんな中でも時より仲間を想う優しい心が垣間見える。
そして、仲間達と一緒にサクナが泥臭く労働を行っていくなかで絆も芽生え成長していく姿を描いている。
物語をいわゆる三幕構成のような山と谷の構成にしており、また三幕構成の中にも小さな三幕構成を入れる事で長時間に及ぶゲームの物語に対して興味を引き続けられるような構造をしているのである。

また、各キャラクターにもバックボーンが用意され、それをストーリーの中でしっかりと回収していくのも物語としての満足感に寄与している。
各キャラクターは人の世において何かしらの出来事に巻き込まれており、それを原因として問題のある行動をしている事が少なくない。
それをサクナ達との交流によって解消していく事がサブストーリー的な形として描かれているのだ。
一緒に生活している仲間達でもあるだけに思い入れも強くなるだろう。

物語は稲作の歴史をなぞるようにもなっている。
農法の発展や天災による被害など稲作にまつわる歴史を簡単ながら追体験できるようになっているのだ。
米作りの歴史と技術に興味を持つキッカケとも成りえるのは知的好奇心を刺激する題材だ。

一緒に食事をする事で仲間達との絆を感じる

仲間達と一緒に夕餉(夕食)を食べる。
仲間達は食事中に会話も発生するため、その姿は共同生活の一体感を感じさせてくれる。
食事中の会話の話者は食事の手を止めているなど表現もしっかりと行われ雰囲気が作られている。

この時間中にも日本神話や古い日本の風習的な雰囲気も強く感じさせる。
例えば、肉食に関しての忌避感がある旨のセリフがあったり、忌避感がありつつも口実を作って実際には食していたというセリフがあったりと実際に日本で存在したものである。
全体としてはもちろんフィクションだが、歴史的な文化・風習を知るきっかけともなる要素が散りばめられている。

 

システム

天穂のサクナヒメでは稲作シミュレーターとも言えるゲームプレイとメトロイドヴァニア的なゲームプレイの二種類のゲームをサイクルによって構成されている。

 

稲作

充実の米作り

本作における稲作は簡単に書いてしまえば「高品質のお米を作る事によってサクナが強くなる」という形でゲームプレイに落とし込んでいる。
高品質のお米を作るためには探索によって肥料となる素材を調達する必要があり、上質な米が作れればサクナが更に強くなり探索ももっと出来るようになる。
このように探索とキャラクター強化がしっかりと依存関係のあるサイクルで成り立つようにデザインされている。

島では3日毎に季節が巡るようになっており、12日で春夏秋冬が巡るようになっている。
実際と同じくらいの時間がかかってしまうと流石にゲームとしては難しいが、本作ではテンポ良く稲が成長していく。
しかし、その季節に応じた稲作の仕事を行う必要がある事には違いがなく、仕事のない冬場を除けばなかなかの過密スケジュールである。
行うべきタスクが常に用意される事でプレイヤーの止め時を失わせる事に成功している。

稲作は実際のものに近い各工程に分かれて行われるが、プレイヤーが操作して稲作を行う面積は実際に生活に必要になるであろう量から考えれば明らかに狭いが、そこはしっかりとゲームとしての側面を考慮したバランスになっている。
面白さと体験のバランスもしっかりと配慮されているのも見事である。

以下ではいくらかの稲作の工程を紹介していく。

種籾

まずは「種籾選別」を行って良質な種を選別する。
泥水選や塩水選によって種の重量密度を判断できるようにして選別を行う事になる。
しかし、もちろん選別を行えば収穫量の減少にも繋がるものである。
選別が終わったら「育苗」で田植えが可能な状態になるように発芽させる。

田起こし

育苗を行っている間にするのは「田起こし」だ。
田起こしをする事で土を柔らかくし根張りをしやすい状態にできる。
また、田起こしを行う際には「堆肥」を撒いて土壌に稲が生長できるだけの栄養分をこの時点で確保しておくのがベターだ。

田植え

「田植え」の工程としては広く知られている稲を田に植える事になる。
しかし、稲同士の間隔を広くするか、狭くするかという問題もある。広ければ稲に栄養が行き渡りやすいが作れる量が減ってしまうし、狭くすればその逆だ。

また、植えた後にも稲の管理は必要だ。
水の量や温度を確認して適正を見極める必要があったり、栄養を奪ってしまう雑草が生えてしまったり、害虫による被害も発生してしまう事もある。
そもそも水量も稲自体の成長時期に応じて適切に管理する必要もある。
それらに日々対処できるように防草や防虫効果のある肥料を撒くなど対応や対策をする事になるだろう。
これらはゲーム内のキャラクターからおおよそのアドバイスを聴くことができるほか、ゲーム内で入手できる資料も様々な情報を得る事ができるため参考にできるようになっている。
また、そもそも実際の稲作の方法も参考になるため、稲作シミュレーターとしての稲作入門の側面を強く感じさせてくれる。

収穫と稲架掛け

稲が成熟したら「収穫」だ。
収穫したものはいきなり食べても品質が良くないため乾燥が必要となるが、その時に行うのが「稲架掛け」だ。
収穫した稲を束ねて洗濯物の要領で乾燥させる。
乾燥と言うだけあり、天候にも左右されるため雨天ではなかなか乾かない。
これらも田園風景として稲作のビジュアルイメージとして強いものだろう。

脱穀と籾摺り

稲が乾燥したら次に行うのは「脱穀」だ。
稲の穂先から可食部となる籾を落とす作業である。
ゲーム開始当初は非常に古風な脱穀方法となるため地味ながら少し時間のかかる作業であるが、それも「かつてはこんな大変な作業だったのか」と思いを馳せる事ができるだろう。

籾が落ちたら食べられるように籾殻を除去する「籾摺り」を行う。
これは自身の好みで問題ないが籾殻を少しだけ取り除いた状態が「玄米」となり、完全に除去したものが「白米」となる。
玄米は栄養価が高いためサクナが食べた時の効果が高まるが、白米にすればサクナの成長量が伸びるという違いがゲーム内での扱われ方である。
これはゲームプレイ状況に応じて使い分けると良いだろうが、基本的には白米にしてサクナを強くした方が好ましい。

ディティールが見事な稲作シミュレーター

地味な作業ながら手間がかかる米作りは稲作シミュレーターとして機能しているのが本作固有の大きな魅力である。
本物の稲作とは流石に比べようもないものの、本作の稲作もそれなりに手間暇の時間がかかる。
しかし、作業を繰り返すことで作業スピードが向上するスキルが解禁されるためサクナが作業に慣れて言っている事が表現されているし、農具が進歩する事で感じる便利さも実感として体感させてくれるのも素晴らしいポイントだと言えるだろう。

これらはしっかりとチュートリアルが設けられているうえ、いきなり全て行う必要がないようにストーリーの進行と共に段階的に行うようになっている事も配慮が行き届いている。
そのため、ずっと稲作のチュートリアルが続くような事もなく進行テンポのバランスが考えられている。

 

ダンジョン探索 / 戦闘

アクション要素も手触りが良い

本作のもう1つのゲームプレイは2Dサイドビュー形式のメトロイドヴァニア的なアクションだ。
基本的には稲作がゲームプレイの中心に据えられているため、稲作によってサクナ自身の能力が向上しないと与ダメージが1程度になってしまう。
そのため、プレイヤースキルだけではどうにもならず、全体を通して稲作をゲームプレイにおいて必須の要素としている。

フィールド内には素材が落ちていたり、敵を倒す事でドロップしたりする。
こういった素材は食材として活用する事ができたり、米作りの肥料などに活用できるものとなっていたり、あるいは装備品を整えるために使用できたりと探索によって環境やキャラクターを成長させるサイクルとして機能するようにしっかりとデザインされている。
また、入手できる素材は春の七草を代表に季節によっても変化するものもあるため、季節を感じる食事ができるのも嬉しい。

夜になると敵が強くなってしまうので日中に活動する事が望ましい。
これは家に帰って仲間達と夕餉を食べるように促しており、このような仕組みがなければ帰宅しない事も増えてしまうだろう。

出現した敵は攻撃によって排除する事になるが、簡単操作ながらしっかりと手応えのあるアクションである事も素晴らしい。
レバーを倒している方向に応じて攻撃手段が変化し、それを組み合わせて戦う事が出来るようになっている。
例えば、地上で上方向にアナログスティックを倒して攻撃すればエリアル攻撃へと派生して地上へ叩きつける攻撃することができる。
この場合の叩きつけた敵にも攻撃判定があるため複数の敵を巻き込んで戦えるようにも出来ており、見た目がカッコいいといった表面的な側面ではなく機能としてもある程度用意されている。
非常にシンプルながらアクションの爽快なポイントがしっかりと組み込まれている。

 

グラフィック

古い日本の風景を感じさせてくれる

古い日本を感じさせてくれる茅葺屋根の民家などの嬉しいビジュアルだ。
もちろんメインともなる稲作においても黄金に輝く成長した稲は美しく感じる事だろう。

キャラクターの3Dモデルも可愛らしく、またリアクションと言ったアニメーションもしっかり作られている点も好印象である。
なお、サクナに関しては装備によって見た目が変化するという要素も存在する。
見た目の変化は設定により「戦闘時のみ反映」などが行えるので安心だ。

動物も様々に登場して活躍する

様々な動物達が登場するのも嬉しいポイントだ。
犬、猫、鴨などと共生する事になるが、彼らもそれぞれの役割が用意されている。
例えば、鴨であれば稲に害のある虫や雑草を食べてくれるため、稲作に直結する仕事を行ってくれる。
これらもかつては当たり前であった「人々の生活の中にある動物との関係」を改めて思い起こさせてくれる要素としても機能している。
そして、犬と猫に関しては撫でてあげたり、抱っこしたりする事もできる。
非常に可愛らしく肉体労働中心の生活の中の癒しとしても機能している事がわかるハズだ。

 

サウンド

印象的な日本の空気感のある牧歌的なBGMはゲームの雰囲気にマッチしており
また、ぐうたらなサクナらしいコミカルなBGMもユニークだ。
作中ではメインテーマとも言える田植え唄(ヤナト田植唄)など本作のテーマに沿ったものもストーリー演出と併せて活用されるのも記憶に残るハズである。
また、昼用と夜用のBGMがシームレスに変化するなどモダンな作りもしっかりと行われている。

環境音として動物や鳥の鳴き声も多く聴くことができる。
特に鳥の声は日本でも非常にポピュラーなものばかりで親近感を感じるものだ。

キャラクターボイスはストーリー中はしっかりとフルボイスになっている。
わがままなサクナや訛りの強い”きんた”と”ゆい”などキャラクター毎の個性がしっかりと表現されている事もキャラクターへの愛着へと繋がるだろう。

 

総評

天穂のサクナヒメは日ノ本の根源ともいえる稲作を中心に据えて日本インディーシーン最高峰まで登り詰めた作品だ。

簡単操作でありながらディティールも両立させた稲作シミュレーターとしての側面は日本人が当たり前に触れてきた「米」という文化を掘り下げており、そこにある文化や苦労や楽しさが体験として感じる事ができるものになっている。
ストーリーも王道ながらもしっかりと満足感のあるものになっているうえ、メトロイドヴァニアライクなダンジョン探索のゲームプレイもしっかりとやり応えがあるなど非常に隙の少ない傑作だと言えるだろう。

 

外部記事

Sakuna: Of Rice and Ruin Localization Blog #2 | XSEED Games

サクナヒメ (ヤナト田植唄) ED - BGM #朝倉さやLiveレコーディング - YouTube

「Hello! インディー」 第37回 ゲームづくりはまず米づくりから!? 『天穂のサクナヒメ』開発者インタビュー。 | トピックス | Nintendo

【『天穂のサクナヒメ』特別対談】「やっぱり日本人にとって米というものが特別 なんだと感じさせられた」前代未聞の<稲作ゲーム>の魅力に離島の米農家が迫 る【えーでるわいす なる氏×米農家 村上氏】

天穂のサクナヒメの丁寧な耕作とローカライズ - GamesIndustry.biz Japan Edition

『天穂のサクナヒメ』インタビュー!手塩にかけてこだわったコンボアクション&稲作シム

稲作シミュレーションは海外でも話題に?『天穂のサクナヒメ』の海外レビューを分析!

農林水産省が究極の稲作ゲーム『天穂のサクナヒメ』の直撃インタビューをfacebookで公開!

ゲームシナリオの解剖学from各務都心:第38回『天穂のサクナヒメ』 結束していく疑似家族 米作り並みに精緻な物語

稲作RPG『天穂のサクナヒメ』Nintendo Switch版の予約はPS4版の倍。コミケの声かけから任天堂の期待作に - AUTOMATON

稲作アクションRPG『天穂のサクナヒメ』における「農林水産省攻略wiki説」は本当なのか? - AUTOMATON

『天穂のサクナヒメ』防病/防草/防虫効果の仕様修正や、酢に防病効果が追加されるなどアップデート実施。稲作要素が少し現実に近づく - AUTOMATON

稲作アクションRPG『天穂のサクナヒメ』昼の時間の長さは、季節によって変化する。検証した上でもわかった、稲作だけにとどまらない細かな作り込み - AUTOMATON

『天穂のサクナヒメ』開発者と、隠岐の島の米農家の対談が公開される。“GoogleドライブのPDF”で掲載する荒業 - AUTOMATON

『天穂のサクナヒメ』開発者、5メートルの巨大稲穂をあっと言う間に開発してしまう。現実のニュースネタを3日で形にする軽快フットワーク - AUTOMATON

農具ライクRPG『サクナヒメ』がTwitterでトレンド入り。本格的な米作りが話題に、「農林水産省公式HPが攻略wiki」と注目集める

大正と令和の米騒動がまさかのコラボ。劇場映画『大コメ騒動』と『天穂のサクナヒメ』のコラボチラシ配布が順次開始へ。2021年1月8日に公開予定

【ゲーム雑談紀行】『天穂のサクナヒメ』についてインタビュー! あまりの反響に困惑 - 電撃オンライン

 

【レビュー】ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!

熱血で硬派そうなウマ娘

ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!(以下、ハチャウマ)は筆者としては待望のコンソール向けウマ娘作品である。
本作は熱血くにおくんシリーズを元ネタとしたゲーム内容となっており、デベロッパーもARC SYSTEM WORKSとなっている。
くにおくんベースとなっている事からパーティーゲームとしては間違いない内容ではあるが、今回は本作のレビューを出しておきたい。

 

 

ストーリー

ウマ娘の世界を別角度から観る事ができる


本編であるウマ娘でも登場する春のファン感謝祭を題材としたゲームとなっている。
今年のファン感謝祭は「ハチャメチャグランプリ」というものを開催する事となったようで、秋川理事長がクジ引きで決定したと言うウマ娘達でチームを組み、やや無法なスポーツを行っていくものとなっている。
その中でチームメンバーの悩みと成長が描かれている。

チームはスペシャルウィーク率いる「コスモス」、エアグルーヴ率いる「フリージア」シンボリルドルフ率いる「ローズ」、ダイワスカーレット率いる「リリィ」などがあり、DLCによってもチームが追加される。
ストーリーはこれらのチーム単位での個別の物語が展開されるのだが、チーム毎に浮き彫りになる問題が異なることがストーリーのフックとなっている事はもちろん、チームでは普段は絡みの少ないウマ娘同士が一緒になる事で会話を聴くことが出来たりと嬉しい要素もある。

本編やアニメやマンガなどで部分的に描かれたウマ娘世界であるが、本作でも物語としても映像面としても違った角度で見る事が出来るため世界観を知る解像度を上げる魅力がある。

 

システム

ハチャウマはくにおくんシリーズを母体としたスポーツベースの無法な対決が行われる。
種目は大障害、バスケ、ドッジ、大食いの4種目で、競技の合計スコアによって優勝チームが決定するような仕組みとなっている。
ストーリーではチームは固定で設定されているが、対戦などでは自由な組み合わせでチームを組む事も可能となっている。

ゲームとしては種目別に遊ぶことも可能だが、4種目の総合成績で順位を競うようなゲームにもできるので友達と遊ぶ際には色々と取り決めると良いだろう。
順位を競う事にはなるのだが、くにおくん同様に最後に順位とは別にプレイスタイルに応じてスコアが貰える要素もあり、それによって逆転も不可能ではない作りともなっている。
各競技の制限時間はそれほど長くなく、1試合2~3分程度で収まるようになっている。
そのうえ、競技時間中はプレイヤー全員が操作し続ける事になるため、暇な時間や消極的な時間が発生しない。
プレイヤーの手元の忙しさがある事が熱中度合いにも水を差しにくい作りになっている。

各競技には効果の高い能力が設定されているのだが、出場させたウマ娘によってその能力値が大まかに異なっている。
4種目の総合成績を狙う形式のような複数競技制では出場した後にウマ娘疲労によって調子を凄く落としてしまうため、誰をどの順番で出場させるのかも考慮する事が望ましい。
そのため、競技に有利なウマ娘を出すのか、それとも後々の競技の事も考慮して選出するのかもポイントとなる。
特にチームリーダーとして設定されたウマ娘に関しては能力値補正によって能力が向上するのだが、そのチームリーダーをどこで出場させるかもキモとなるだろう。
また、ウマ娘にはそれぞれ固有のスキルを持っており、スキル性能に関してはウマ娘によっても競技によっても変化するので事前にどういう状況で有用なスキルなのかは把握しておいた方が良いだろう。

厳密性と公平性には欠けるため競技的な側面でプレイする場合には2本先取や3本先取まで考えなければならないだろうが、友達と一緒にプレイする事で盛り上がる事は間違いない内容だ。
また、ローカル対戦ではルールをある程度カスタムして楽しむことも可能になっている。
もちろん一人でプレイしても楽しめる内容になっている。

 

大障害

大運動会のような大障害

大障害はエリア毎に区切られており、そのエリア毎の着順でスコアが上昇するのが基本のルールとなっている競技だ。
スコアは着順の他にも、コース内に落ちている蹄鉄コインを入手する事でも上昇する。

コース内には競技名の通り障害物が存在しており、スタミナを消費する「熱血」を行う事でスムーズに乗り越える事ができる。
しかし、スタミナが枯渇状態になっていると障害物をクリアするのに時間がかかってしまい順位を落としやすい。
スタミナを消費すれば早く移動する事もできるので、適度に消費しつつ障害物の事も考えながらマネージメントすると上手く立ち回れるだろう。

それ以外にもコース内にはアイテムが落ちており、それを活用して他のウマ娘を出し抜いたり、妨害をしたりする事も可能だ。

また、ウマ娘には固有のスキルが設定されており、こちらもまた急加速したり、他のウマ娘を妨害したりと様々な効果を持つ。
固有スキルを発動させるにはゲージが溜まるのを待つ必要があるため、ウマ娘のスキル性能が発揮できる状況を見極めて発動させたいところだ。

 

バスケット奪取ステークス

"すとりーと"ではないバスケット

バスケット奪取ステークスは4人でボールを奪い合ってバスケットゴールに入れる事でスコアを競う競技だ。
コート内では相手が持っているボールを奪うことが可能だが、それを読んでスピンという行動をすればボールが奪われる事を回避する事も出来る。

ボールをシュートする際には長押しが重要だ。
長押しするとゲージが表示され、タイミングよくボタンを離せばゴールから距離が離れていてもボールが入る確率が高くなるような仕組みになっている。
また、ゴール近くでシュートをするようにすると上図のようにダンクシュートも決める事ができる。
遠くからシュートを決めると獲得ポイントに補正が入るが、投げられたボールは他プレイヤーに阻止されて奪い取られてしまう可能性もある。
奪い取られてしまうと相手の方がゴールにも近いため非常に不利となるため、相手がゴール付近に既に陣取っている場合には慎重に選択するべきだろう。
対して、ダンクシュートはゴールに直接ボールを入れる事になるため補正はないが確実に点を入れる手段となる。
とは言え、こちらもゴール付近までボールを持っていかねばならず自身の周りに他プレイヤーがいる場合にはボールを奪われる機会が多いという事でもある。
このように「他プレイヤーの位置取りによってリスクとリターンに差がある」ことが駆け引きとなっている。

ボールには種類も存在しており、試合時間が進むと特殊なボールが投入される。
これによって逆転性が生まれるような仕組みだ。

 

ウマドッジチャンピオンシップ

部活ではないドッジボール

ウマドッジチャンピオンシップは4人でボールを当て合いを行って体力を削り合って、生き残った順位に基づいてスコアが加算されていくような競技である。
複数ラウンドで戦う事ができるので、各ラウンドの順位で得たスコアの合計によって勝者が決定する。

ボールを相手に投げる際には長押しする事で強力な必殺シュートに変化する。
必殺シュートは地上と空中で変化がある。
しかし、投げられたボールはタイミングよくボタンを押せればキャッチする事も可能である。
避けてしまうと当然だがボールはフリーになってしまうため場合によっては守勢が継続してしまう事もある。
とは言えキャッチではキャッチミスしてしまえばダメージになってしまうので、相手の攻撃を避けるのかキャッチするのかの判断も大切だ。

これだけではキャッチのリスクの方が高いのだが、キャッチする事ができると「超必殺シュート」のためのゲージを増やす事ができる。
超必殺シュートは上の画像のような異次元の挙動をするキャッチする事もできない非常に強力な攻撃手段だ。
こちらは試合を決定づけるようなレベルの性能を誇るため発動タイミングも大切になるだろう。

またこのルールでもボールには種類が存在する。
大きさや投擲速度に変化があるため、逆転にも繋がる特殊なボールは積極的に使いたいところだ。

 

大食いダービー

よく食べるウマ娘らしい競技も

4チームが2人1組となってフードファイトを行う競技となっている。
1人は料理を運び、もう1人が運ばれてきた料理を食べて、その食べた量をスコアとして競う競技となる。
料理には色が設けられており、同じ色の料理で揃えると食べる速度が落ちないため、持っていく料理の色も気にしながら奪い合う事になる。

このフードファイトでもウマ娘固有のスキルを発動させる事が可能だが、画面中央辺りに散らばっている料理と色を確認して確保するという関係上、慣れていないとスキル発動することまで頭のリソースを割けない事が最も多い競技かも知れない。

 

部室

部室を作れるハウジングも

ストーリーなどのゲームプレイを行う事で得られるゲーム内通貨を使用する事で部室内に配置できるインテリアを購入できる。
インテリアの種類は非常に数多く用意されており、生活感を感じさせてくれるような小物が取り揃えられているのは嬉しい所だ。

しかし、小物が多く用意されているものの、部室内に置くことができる上限コストは少なめだ。
だいたい上図程度の物量が限界である。
類似の小物を並べて置きたいといった際には、それだけでコストを埋め尽くしてしまい少し消化不良感がある。
現状の2倍とまでは言わないがもう少し増やして欲しい限りである。

部室における上限コストを増やす事はできないが、部室自体を増やす事は可能だ。
増やした部室は上限コストなど条件面は全て同じだが、部室毎にコンセプトを変えてレイアウトはできるためUGC系が好みの人はハマるだろう。

 

ゴルシちゃんの大冒険Ⅱ

これ単品でも成立しうるミニゲーム

強制横スクロールしながら敵を倒しつつゴルシちゃんを強化して進めていくミニゲームだ。
このゲームをプレイしていくと装備を入手でき、装備は次回以降のゲームに反映させる事ができるような仕組みとなっている。
一応はゴルシちゃんがケール博士に捕まったマックちゃんを助けに行くというストーリーもあるが「ゴルシちゃん」となっているだけに中々に破天荒なものだ。

ゲーム中では敵を倒す事で経験値がドロップし、レベルが上がるとランダムで攻撃手段を獲得したり、入手済みの攻撃手段を強化したりする事ができる。
他作品の例えで恐縮するところだが、Vampire Survivorsライクな要素でゲームを進行するものとなっている。

入手できる装備品はランダムでスキルが設定されているほか、先に進めば進む程に高性能な装備品になっていくハクスラ的な要素にもなっている。
そのため、常にタスクが発生し続けるうえに常にリワードも発生し続ける事となり、黙々とプレイできてしまう中毒性がある内容になっている。
ともすれば、これ一本で作品として成立しうるものと言って良いだろう。

 

グラフィック

ドットながら表情豊かでとても良く動くのは嬉しい

ウマ娘達がとても良く動く可愛いドットで表現されている。
ウマ娘の動きは汎用モーションもあれば、一部にキャラクターの個性を感じさせる専用モーションもある。
メニューの選択画面でも非常に良く動くウマ娘達は賑やかで可愛らしく、スマホアプリ版の本家やアニメなどでも余り見られない一面が確認できる。

競技場となるフィールドは3Dモデルとなっており、競技を観戦しているキャラクターの中には本作でプレイアブルではないウマ娘や元ネタ側のキャラクターもおりイースターエッグ的に細かく観る楽しみも存在する。

 

サウンド

ストーリーはフルボイスとなっているのが嬉しいところだ。
BGMに関してはウマ娘にて使用されているお馴染みの楽曲が使用されている。
メインテーマとしては本作オリジナル楽曲「どどっと優勝!大感謝祭!!!」が用意されており、賑やかなハチャメチャ感のある耳に残る良い曲だ。

 

総評

ウマ娘 プリティーダービー 熱血ハチャメチャ大感謝祭!はウマ娘を知っている人はもちろん、知らない人であっても友達と一緒に遊ぶ際の選択肢に並べて置くべき一作だ。

簡単な操作でプレイできるため老若男女問わずに同じ土俵で遊びやすく、それでいて一試合のテンポも試合中のテンポも良い。
また、内包されているミニゲームも遊び応え十分で、延々とプレイできてしまう中毒性もある。

何よりもメインコンテンツにしてもサブコンテンツにしてもプレイヤーが手を動かし続ける必要があるものが揃っており、それが熱中度が継続する要因ともなっている。

 

外部記事

【ハチャウマ】『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』のパロディイラスト公開。“ファミコン”ではなく“ウマファミ”で動く?【ウマ娘】 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

『ハチャウマ』からあえて『ウマ娘』要素を抜いても、“アクションゲーム”として楽しめるのか? 往年のゲーマーがプレイし、開発者にドット絵やシステムへのこだわりを聞いてみた | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

【レビュー】聖剣伝説 Visions of Mana

異文化への受容

聖剣伝説 Visions of Mana(以下、聖剣VoM)は聖剣伝説シリーズの非常に久しぶりの最新作となる。
それまでにもリマスター作品群や聖剣伝説3 Trials of Manaの大幅リメイクなどで一定の評価上げており、その中で聖剣伝説30周年の生放送(2021年)にて新作を開発している事をサプライズ発表した経緯がある(これ自体は予定していたものではないようで、視聴していたユーザーの反応を鑑みて独断で行った部分もあるようだ)。
聖剣伝説シリーズはスクウェア・エニックスのIP群の中でも立場の弱いIPとなっていた状況であるだけに、これほどの決意を持って支えているスタッフがいるのは嬉しい事である。
また、この時期(2020年前後)のスクウェア・エニックスはリリースしたコンシューマ・スマホ両面のゲーム品質の悪さから2024年に組織改革があり、それに伴っていくらかのゲームが日の目を見ずに開発中止となった事が公表されていた。
この聖剣VoMに関しても開発時期が一歩遅れている状態であれば、弱いIPという立場であることを考えると切られていた側の作品であった可能性も否定できない。
筆者自身が一番最初に幼い時にガチでハマった作品と言える聖剣伝説がいくつかの奇跡に支えられ再始動する事が嬉しい限りである。

今回はその新作である聖剣VoMのレビューを行っていきたい。

 

聖剣伝説 VISIONS of MANA -PS5

聖剣伝説 VISIONS of MANA -PS5

  • 発売日:2024/8/29
  • メディア:Video Game
聖剣伝説 VISIONS of MANA -PS4

聖剣伝説 VISIONS of MANA -PS4

  • 発売日:2024/8/29
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

現代人の価値観と異なる文化が描かれている

聖剣伝説シリーズではアニミニズムあるいは日本の神道のような世界観が印象的なファンタジー作品であり、本作でも概ねそのような構造の舞台設定である。

火の村ティアナで暮らす青年ヴァルは精霊に火の御子の役目を賜ったヒナを守護する守り人として活動する事になる。
御子はマナの木に魂を捧げて大地に恩恵をもたらすための存在であり、世界観としてはその役目を率先して行いたいと思うほどの栄誉のようだ。
しかし、平たく言わずともそれは生贄であり、それを嬉々として受け入れている姿は我々の現代の価値観とは大きく異なるものである。
そうは言っても当人達にも大小なりとも葛藤はあるようで、特に登場する敵側の人物の多くにはその価値観に否定的である人物が多いのだ。
そのためプレイヤーはどちらかと言えば敵側の言い分に親近感を覚えるハズであり、それが物語の捻じれになっている。
そういった文化圏において各地で同じように選ばれた御子を率いてマナの木を目指す冒険をするのが本作の物語となる。

このような物語設定であり、なおかつ分岐もない古風でリニアな作りであるため、この物語を見聞きしているプレイヤーとしては完全な異文化の風習、あるいは現代解釈による改変を挟まない旧時代の伝承・民話・御伽噺を原文通りそのまま映像化して観せられているかのようである。
例えば、現実世界においても(嬉々として受け入れていたかはさておき)生贄の文化があった事は知られているだろう。
時に天災を鎮めるものとして、時に神事の一環として、時に故人を弔う手段として。
現代人も「太古にはそういう価値観があったんだな」という事は理解できるが、その価値観を前提とした物語を読むのはギャップが強いであろう事も理解できるのではないだろうか。
同様に作中で繰り広げられるキャラクターの心情・信念はおおむね理解できるが、現代的な価値観とは大きく齟齬があり、エンディグを迎えた際にも「これで良かったのか」「これが幸せなのか」という現代人の感覚として非常に曖昧な境界で描かれている。
そのためプレイヤーには「異文化の異物的価値観を許容できるか否か」という事が問われており、それによって物語の好き嫌いもわかれてしまう可能性が高いものとなっている。

現実のメタファーとしての物語のテーマは少し問題がある

本作を「現実のメタファー」としてのファンタジーと読む場合においても同様に少し複雑な思想であるようにも感じられる。
ここでは物語の核心にもなる大きなネタバレとなるため見たくない方は1つ下の画像の所まで読み飛ばしを推奨する。

まず、本題を説明する前に本作の物語の経緯、設定、行く末を語らなければならない。
本作がなぜ御子の魂を捧げる必要があるのかと言うと、簡潔に書いてしまえば元々は同じマナの木の恩恵を受けた異世界同士であったハズが、人間の欲望によってマナの供給バランスが崩れて世界が融合してしまい、その結果として災害を含む様々な弊害が発生して世界のバランサーであるマナの木自体が機能停止してしまったことに由来する。
御子を生贄とする風習とは機能停止したマナの木に代わって御子が魂を捧げる事でなんとか誤魔化しながら世界を維持してきた自主的な活動だったのである。
そして、エンディングではマナの木に魂を捧げる必要がなくなったと解釈できるエピローグへと至るが、筆者はそれは世界を元のあるべき形へと戻したという認識である。

これを現実のメタファーとして考えた場合には「世界の再分断」を意味するのではないだろうか。
古代ではアレクサンドロス大王が欧州とアジアを征服してオリエント文化との融合によるヘレニズム文化を築き、中世の大航海時代にはアメリカ大陸や東アジアなどを掌握しながら世界を繋ぎ、現代ではインターネットによって個人単位で外の世界へと繋がった歴史がある。
これらはどれも国や地域との文化的な繋がりと言うポジティブにも感じられる要素がある一方で、そこには様々な犠牲や格差や差別、そして環境や資源に関する問題の遠因と言ったネガティブな側面も内在して今に至っている。
つまりは本作をその流れで読み解いていくと、人間の欲望によって強引に繋げられた世界を捨てて、かつてのそれぞれの文化圏の中で収まっていた時代に戻ろうと言う復古主義あるいは老子思想的な立場だと受け取る事ができてしまう。

その考え方それ自体は破綻していないものの、現実的に実践できるような解としては非常に乖離したものであるのは想像に難くないだろう。
「世界が繋がっているから差別や格差が起き、それに伴って環境問題までも起きているのであって、古代のような小国寡民の時代の自給自足の生活を理想としましょう!」というのは問題からの逃避にも近い解答内容である。
なぜなら、皆が困っているのは「それはできない」という大前提があるからなのだ。
「明日から農業しましょう」と自分の家族だけではなく、隣人に対しても言ってまわり実際に行ってくれる人は1%未満になるハズである。
仮に実際に実現できてしまったとしても現在の生活インフラが全て崩壊し、数えきれないほどの犠牲を生んでしまう事は避けられないだろう。
もちろん、先に述べたように根本から破綻した考えではないため、その思想それ自体を否定するつもりはないし、個人がそういった牧歌的な生活を実践するのは素晴らしい人生だろう。
しかし、それを世界全体の理想として標榜するのはズレているし、実践可能な解としてはかけ離れたものである。
本作を現実のメタファー、そしてアポリアに対しての向き合い方としての面では考えない方が無難だろう。

歴代の聖剣伝説シリーズを思わせる単語やキャラクターが多数登場

聖剣VoMではファンサービス的に過去作のキャラクターの名前が使用されているほか、スターシステム的に過去にも登場した出演する。
もちろん、同じなのは見た目の部分だけであり、物語上の設定は全く異なるものである。
それ以外にも物語上の設定なども過去シリーズを踏襲して混ぜ合わせたようなものが散見される作りとなっておりシリーズをプレイしている人にとっては嬉しい要素だろう。

 

システム

シンプルながら手応えもしっかりとあるARPG

聖剣VoMは弱強攻撃や溜め攻撃、ジャンプとエリアル攻撃、回避などのモダンなアクションを用いて遊べるARPGとなっている。
相手の攻撃を捌かなければ勝てないような難易度ではないのでゲームの初心者でも触りやすい作りではないだろうか。
パーティーは最大3人で、戦闘中でも操作キャラクターを変更する事が可能だ。
そうは言ってもCPU操作の仲間にコマンドによる指示出しもできるので、HP回復やバフをお願いすれば問題ないため、基本的には好きなキャラクターを操作する形で良いだろう。
戦闘はフィールド上でシームレスに行われるが、戦闘可能な領域として円形範囲で仕切られる仕組みである。
そのため場面転換こそないがフィールド移動とエンカウントによる戦闘が明確に区切られている。

上記以外の戦法として「必殺技」もある。
必殺技は与ダメージや被ダメージによって溜まるSPゲージを消費する事で発動できる専用演出の用意された全体攻撃だ。
必殺技はその名に違わず強力な火力にであるため積極的に使用したいが、消費するSPゲージはパーティー共有されるゲージとなっている。
そのため、パーティー内で最も火力が出せるキャラクターで発動する事が好ましい作りである。

「精霊器」という特殊な効果を与える付け替え可能な技もある。
精霊器は1人1つ所持できる装備品のようなスキルであり、精霊器の種類によって効果が異なるが、中には敵の動きを停止させる強力で使い勝手の良い効果もある。
こちらは再発動のためにはクールタイムが必要となる。
この精霊器は後述するキャラクターのクラスチェンジと関わるため、精霊器の性能だけで選ぶのではなくトータルコーディネートが必要だ。

戦闘において気になる点も記載しておきたい。
まず、上の画像でも少し感じるかも知れないが戦闘エフェクトは派手気味である。
これは見栄えの良さがある一方で、視認性の悪さにも繋がるものである。
しかし、幸いなことに本作はそこまで繊細な立ち回りが要求されるようなゲームではないため結果的にはそこまでネガティブな要素とはならないだろうが記載はしておきたい。

最も問題に感じるのはカメラワークであるだろう。
ロックオン機能こそあるものの、ロックオンしているにも関わらず敵が画面に収まるように自身の操作や敵の動作に追従してくれないのだ。
もはやロックオンの恩恵を実感しにくいようなレベルで、これでは何のためのロックオン機能なのか立場を揺るがすようなレベルである。
現代のデファクトとは全く異なり、なぜこの挙動なのか、なぜ不可解な仕様が野放しにされたのか、その意図もよく汲み取れない。

キャラクタービルドにも幅があり楽しいが育成の方向性は限られる

聖剣VoMではRPGらしいキャラクタービルドもいくつか用意されている。

まず、キャラクターには各属性の精霊器を装備する事によってクラスチェンジが可能だ。
クラスを変更すると見た目や属性の他にも使用武器にも変化があるため、アクション自体のモーションなどにも変化あるので味変を楽しむことができる。
各属性クラスチェンジは個別に強化要素もあり、ポイントを消費してスキルを順番に取得していくものとなっている。
クラスに応じて得意とする分野が異なるため、有用なサポート効果を目当てにしても良いし、火力を追い求めるのも良いだろう。
なお、クラスのスキルを全てマスターすると基本クラスでマスターしたスキルを設定できるようになる。
自由なスキル構成がお望みの場合には基礎クラスに頼る事になるだろう。

また、装備にはアビリティシードという枠も存在する。
アビリティシードはステータス上昇が行えるほか、追加で魔法を装備させる事が出来る。
余りオススメできたものではないが、本来は使えない魔法を装備させる事で臨時のヒーラーなども担えるようになっている。

キャラクタービルドは紹介した通り色々とあるが、有用なものと考えるとその方向性は限られる。
これは例えば魔法アタッカーの素養の高いキャラクターは、その方向性を伸ばす精霊器やアビリティを装備させる方が効率的である。
ごく当たり前の話なのだが、そうなってしまうと魔法アタッカーで物理アタッカー寄りの精霊器の存在意義が非常に薄くなってしまう。
これはプレイヤーに「自分で選択している感」という錯覚を生み出す事には機能しているが、ゲームプレイの幅と言う意味では実際には機能不全だ。

自然豊かなエリア区切りのフィールド

探索する事になるフィールドはエリア区切りとなっており、窮屈には感じない程度のまずまず広さである印象だ。
少し困るのはエリアの行けない領域は採用率の高い露骨な崖があるのではなく、見えない壁によって制限されている。
そのため視覚情報から行けるか否かが判断できず機能性がやや悪い。

どこまでが活動可能範囲なのかはミニマップを確認する必要があるだろう。
ミニマップ上にはフィールドの構造やクエストなどの目的地がわかるほか、未回収の宝箱の位置までもが表示される便利仕様である。
しかし、これは便利である一方でミニマップへの依存度が上がってしまい、ゲーム中にミニマップを見ている時間が増えてしまう本末転倒な事になってしまうのは一長一短だ。

フィールドでは精霊の力を利用したギミックが用意されている事もある。
ギミックを発動させるには物語進行によって入手できる精霊器を必要とするため、物語進行上の侵入エリア制限や世界観表現としての側面が強いものだ。
そのため、パズルのようなものではなく、移動手段のようなものに近い認識だと良いだろう。

それ以外にも探索要素がいくつか用意されている。
既に述べた宝箱がある事はもちろん、アナグマ族からアイテムと交換できるクマミツが配置されていたり、聖剣伝説 Legend of Manaにて登場したサボテンくんが聖剣伝説3 Trials of Manaの時と同様に見つけるような遊びもある。
フィールド自体は自然の息吹が感じられる鮮やかなビジュアルであるため、そのディティールに目を向けやすくお膳立てしてくれる要素だ。

フィールドの要所にはセーブ兼ファストトラベルポイント「竜脈」が用意されている。
竜脈にアクセスすればファストトラベル先として選択できるようになるほか、ステータスが全回復する親切設計だ。
ファストトラベルの仕様は少し特殊で、同じエリア内ならばマップ上からいつでも移動可能だが、別のエリアに移動したい場合にはファストトラベルポイントからアクセスする必要がある。
また少し気になるポイントとして開放済みの竜脈のマップ上からの名前が全て「竜脈」となっているのだ。
せめて「○○の竜脈」と固有の名前を付けて、名前からどこなのか想像しやすいようにするべきである。
ファストトラベル先として選択する際に名前の一覧に竜脈が3つも4つも並んでいてもどれがどこなのか名前から判断できないのは勿体ないし、物語や世界観のような側面から考えても淡白すぎる印象になってしまう。

動物達の力も借りて冒険する

物語が進行すると新しく登場したピックルや過去作でも登場した神獣フラミーブースカブーに乗って冒険が行えるようになる。

これによって新たな土地に行く事が出来るのは当たり前だが、少しユニークなのは物語が進行しないと上陸できないようになっており、結局はリニアな作りになっている。
そのため、物語として次の地点か、以前に行ったことのある場所に再訪する際に使うものとなっている。

この辺りで気になる部分も記載したい。
まず移動をサポートしてくれる動物達だが、新キャラクターであるピックルは最初から少し影が薄く、ブースカブーは物語進行と共に影が薄まる。
ピックルに関しては必要になる程の広さのフィールドが少なく、戦闘するためには降りなければならずと活躍がしにくい状況が整ってしまっている。
ブースカブーに関しては登場した時点では海路経由で新天地に赴く必要があるため必須となるが、空を飛べるフラミーに乗れるようになると存在意義を全て失ってしまうのだ。
これは過去作でも同様の問題が存在していたのだが、解決はしていないようである。

また、ブースカブーやフラミーに乗っている時はミニマップこそ表示されるものの、全体マップを確認できないのは不便だ。

 

グラフィック

シリーズコンセプトらしい荘厳で神秘的な自然が描かれている

聖剣VoMは美しく鮮やかな自然がプレイヤーを魅了する。
その中でも重要なシンボルでもあるマナの木は聖剣伝説2のパッケージ絵をモチーフとしており、神聖で荘厳なデザインが3Dでしっかりと表現されているのは見事だ。
それ以外でも各土地に応じた特色ある自然が描かれており、冒険の地を移す際のコントラストにもなっている。

街中ではフィールド上には人間やモンスター以外にも普通の動物も暮らしている姿が見受けられる。
インタラクションはできないが生命を感じる事ができる要素であり、非常に小さな要素であるのは間違いないが、テーマ的にもビジュアル的にも豊かな自然を表現している本作の世界観を下支えしているものともなっている。

それ以外ではシリーズを踏襲した要素も残されている。
メニュー関連ではリングコマンドによる視覚的に理解しやすいGUIがされていたり、ショップ店員はシリーズお馴染みの謎の踊りを踊っている。
後者に関しては3Dモデルで見るのは実に奇妙な光景で、これが現代でも必要なのかは今一度検討しなおしても良かったかもしれない。

攻撃モーションはもっとメリハリがあっても良さそうだ

攻撃モーションはモッサリに感じるレベルではないものの、動きがやや平坦で力強さや迫力に欠ける印象がある。
これはデベロッパーこそ異なるが「聖剣伝説3 Trials of Mana」のレビューの際にも同様の指摘を行っており、全体フレームは同じにしても前隙や後隙を調整してメリハリを強めた方が好ましいように感じられる。
試しに筆者が映像を調整した比較画像を2種類用意したので参照してみて欲しい。
筆者編集版の2種はそれぞれ調整コンセプトが少し異なるのだが、共通しているのは攻撃発生までのモーションを多めに取り、実際の攻撃発生は一瞬で送るように調整を行っている。
このモーションだけを見ても実際にプレイしない事には伝わりにくいかも知れないのだが、筆者が編集を行ったモーションの方がメリハリが強調されており力強さが増しているのが伝わるだろうか。
擬音で差異を表現するならば、オリジナルでは「ブン、ブン」という鈍い音が聞こえてきそうであるのに対して、筆者が編集して調整したものは「ヒュ、ヒュ」と鋭い音が聞こえてきそうに感じると思う。

本作では複数体の敵との戦闘が前提として想定されているためヒットストップのような演出もない。
そうなるとモーションの良し悪しが純粋なモーションの部分だけで決定しやすい。
ただし、これがフォトリアル路線であったり、前述したヒットストップの有無などでも調整具合は異なってくるが、本作のようなスタイルであればもっと大胆にメリハリをつけて良かったように感じられる。

 

サウンド

BGM関連は菊田氏が携わっている影響からか聖剣伝説2~3のような雰囲気の楽曲が多いように感じられる。
これらは恐らく意図的な部分が強いと思われる。
いくつかチョイスして紹介したい。

シリーズのOPと似た雰囲気を感じさせる「楽園の絆」

聖剣伝説3時代のフィールド曲を感じさせる「日照る街道」

涼やかで雄大さを感じる「風薫る街道」

聖剣伝説2の”呪術師”を思わせる「精霊の住処」

聖剣伝説3のボス戦を思わせる「誉ある獣」

 

総評

聖剣伝説 Visions of Manaは久しぶりのシリーズ新作ながらしっかりと期待に応えられるレベルに落とし込んだ一作だ。

ゲームプレイ部分は要求操作を控えめにして誰でも遊びやすくしつつ、しっかりとキャラクタービルド部分を作って幅を利かせており、ポップなビジュアルから興味を持った初心者にもゲーム慣れしている人にもそれなりの手応えが感じられるARPGとして成立している。

しかし、ストーリー部分はプレイヤーに異文化を受け入れる事を要求しており、必ずしもそれが腑に落ちる内容になっているとは言い難い。
久しぶりの新作であればもう少しだけ万人受けしやすい題材あるいは着地を選んでも間違いではなかったように思える。

 

外部記事

イラストから辿る「#聖剣伝説」の世界観 #聖剣伝説VoM【#InsideSQEX】 - YouTube

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』Developer_Direct 2024.1.19 - YouTube

『聖剣伝説 ヴィジョンズ オブ マナ』小山田Pインタビュー。誰が見ても『聖剣伝説』であると感じられるよう、まずはビジュアル面からアプローチ。開発はネットイース・桜花スタジオとの初タッグ | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com

[インタビュー]シリーズ最新作「聖剣伝説 VISIONS of MANA」では何を大事にしたのか。小山田 将プロデューサーが完全新作に込めた思いを語る

ファンとしての情熱が結実した、「聖剣伝説」リブートプロジェクトの集大成 『聖剣伝説 VISIONS of MANA』開発者インタビュー

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』小山田Pインタビュー。なぜ新作を作ることができたのか、そこには“聖剣らしさ”を追い求める強火系プロデューサーの姿があった - AUTOMATON

NetEase Games桜花スタジオ吉田亮介氏・小澤健司氏インタビュー。「言語コミュニケーションなし」「とにかく数字にする」日本×中国横断ものづくりの攻略法・傾向とは - AUTOMATON

新情報あり:『聖剣伝説』新作インタビュー。クラスの種類やゲームボリューム、オンライン要素はどうなる?【ヴィジョンズ オブ マナ】 - 電撃オンライン

小学生の頃から『聖剣伝説』ファンだった少年が、大人になり枯れかけたマナの樹を蘇らせるまで。『聖剣伝説 VISIONS of MANA』小山田将プロデューサーインタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

17年ぶりに蘇ったマナと聖剣と精霊たち『聖剣伝説 VISIONS of MANA』開発者インタビュー―小山田P・吉田D・小沢Dに発売後だから訊ける開発の裏側とシリーズの現在 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

【インタビュー】「聖剣伝説 VISIONS of MANA」プロデューサー小山田将氏インタビュー。リメイク版「聖剣伝説3」を経て、完全新作へかける熱いこだわりを語る - GAME Watch

広大なフィールドと奥行きのあるアクションを体験!「聖剣伝説 VISIONS of MANA」先行プレイ&インタビュー | Gamer

【レビュー】バテン・カイトス

ひとり夜の底を行く我らを、海よ、いざないたまえ…

バテン・カイトスモノリスソフトナムコ(現:バンダイナムコ)傘下時代のRPGタイトルだ。
本作はゲームキューブにのみ販売されていたタイトルであったため、認知度が低く売り上げとしても特筆するようなものはない。
しかし、その独特な内容からカルト的な人気が根強いものであった。

今回はリマスター版をベースにレビューを行うが、そもそもこのリマスター版にしても販売されるなどとは夢にも思っていなかったのが筆者の感想であった。
認知度や当時の売り上げから考えたとき、その企画を通す事が非常に困難である事が想像に難くないからだ。
そんな中でも本作のような隠れた名作をリマスターしてくれた事には感謝するほかないだろう。

 

バテン・カイトス I&II HD Remaster -Switch

バテン・カイトス I&II HD Remaster -Switch

  • 発売日:2023/9/14
  • メディア:Video Game
バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海

バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海

  • 発売日:2003/12/5
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

独特な設定によって作られてるからこそのストーリーテリング

太古にあった邪神との戦争によって大地が荒廃し、人々が天空へと逃れた世界が舞台となっている。
浮遊大陸で構成されている世界では人々は徐々に「こころの翼」と言われるものが背中に生えるようになっていた。
そんな中で太古の邪神を封じたと言うエンド・マグナスと呼ばれるアイテムを巡る陰謀を阻止するための旅に出るというのが物語の導入となっている。

主人公はカラスという家族を帝国に殺された事で復讐に燃えている青年で、プレイヤーはその青年に宿った”異界の精霊”という珍しい構成となっている。
つまり、「プレイヤーはプレイヤー自身としてゲームに向き合う」というメタ的な視点を組み込んだ上での設定になっているのだ。
そのため、カラスを始めとしたゲーム内キャラクター達は精霊である画面の向こうのプレイヤーに対して「よろしくな」「どう思う?」などを聞いてくるのが特徴的である。
このような構成にしているため「ゲーム内キャラクター達とゲーム外のプレイヤー」というゲーム構造の実態に則した世界観が構築されているのだ。
物語中では精霊であるプレイヤーに対して問いかけてくる選択肢も用意されているが、物語進行に関わるような選択肢はなく、選択肢によって内部パラメータが変動して戦闘で特殊な技が発生しやすいか否かだけに影響する。
また、このような構成を活かした叙述トリック的な物語展開もありプレイヤーに意外性をもたらす事にも寄与してくれている点も特筆するべきポイントとなるだろう。

JRPGらしく仲間となるキャラクターも登場する。
帝国の思惑を阻止しようと行動する少女シェラ、帝国出身ながら正義感のあるリュード、寡黙で戦闘に長けるサヴィナなど個性があり魅力的なメンバーが揃う事も本作にとってプラスに働いている。
中でも面倒見が良い大人の大男ギバリは癖の強い仲間達をポジティブな方向に導く非常に頼りになる存在であり印象的な存在として映るだろう。
対して敵側はステレオタイプな描かれ方であるケースがほとんどであり、敵勢力の行動理念的魅力はやや物足りないと感じるろう。

物足りなさはあるがキャラクターの掘り下げもしっかりとある

物語の終盤では仲間達について掘り下げるサブストーリーが発生する。
本編では語られないようなキャラクターの心情や過去についてしっかりと描いており、本作をプレイするのであれば是非とも体験して欲しいと言える内容だ。

しかし、仲間キャラクターを掘り下げるサブストーリーが終盤にしかないのは勿体ないと言わざるを得ない。
メインストーリー中で仲間の誰かの影が薄くなるような事はないように構成されているとはいえ、序盤・中盤・終盤の三幕構成にするなどもう少し段階を踏んだボリュームになっていればなお嬉しい所だ。

 

システム

スピードとポーカーを掛け合わせたようなユニークな戦闘システム

バテン・カイトスのバトルシステムは「マグナス」と言われるカードを用いた非常にユニークな戦闘スタイルである。
キャラクターには剣や防具のようないわゆる”装備品”の概念がなく、マグナスに封じられた剣などを取り出して攻撃や回復を行うといった世界観に即した独特なものだ。
そのため、マグナスというカードでデッキを構築して敵と戦う事になる。
デッキの総枚数と手札枚数などはキャラクター強化によって増加していき、最初のうちは少ないデッキと手札からカードを選択する事になるが、後半になればデッキも手札も増えるため素早い判断力がより試されるようになってくる。
序盤ではわかりやすいように作られ、後半にもなればしっかりと手応えが出るように配慮されたデザインになっている。

では、もう少し具体的に独特な戦闘システムについて噛み砕いておきたい。
戦闘中では上図のような形でカードを選択する事となるが、このカード選択には制限時間が設けられている。
制限時間とは具体的には「キャラクターの攻撃モーション」の事で、攻撃モーションが完了するまでに次のカードを選択しておかなくてはならない。
また、リザーブ可能なカードは次のカードまでであるため、2枚も3枚も事前に選択しておく事ができない作りである。
あくまで「カードによる攻撃が完了した後に使用する次のカードまで指定できる」のだ。
もたもたしていると攻撃モーションも終わってしまい、そうなってしまうと攻撃が途切れて自分のターンは終了…という事になってしまう。
そのため、有効時間内にしっかりとカードを選択していってダメージなどを伸ばしていくのが基本となる。

また、手札は使ったそばから補充される仕組みである事も重要なポイントだ。
攻撃や回復に使用するカードは手札の中だけでやり繰りする必要はなく、例えば攻撃で1枚使用すれば、その場で1枚新たに補充される。
上の画像を参照してもカードをセットすると自動で補充されているのが確認出来ることだろう。
つまり、次に選択するカードは補充されたカードを使用しても良いという事である。
最初の手札が少々悪かったとしても「補充されるカードを信じて使用するカードを選択する」という事も念頭に置いて行動すると運を引き寄せやすい作りになっている。

戦闘方法自体がアクション性のあるカードゲームのような形式で他に類似がないようなものであるが、そのダメージ計算も独特である。
カードを連続で使った際のダメージ計算は「全てのカードの合計」が最終的に反映される。
攻撃力20、攻撃力10のカードを選択すると最終的には相手に30ダメージを与える。
これだけを見ると「何が違うんだ?」となってしまうが、この計算式には属性ダメージを考慮しなくてはならない。
属性ダメージは反属性を一緒に使用してしまうと相殺されてしまう特性が存在する。
攻撃力20の炎ダメージ、攻撃力10の水ダメージという2枚のカードで行動してしまうと、炎と水のダメージが相殺されてしまい最終的には「炎ダメージが10」しか敵に与えられないという結果になってしまうのだ。
つまり、20の炎ダメージを与えた後に追加で水ダメージが10入るというような「その都度のダメージを与える」ような計算式ではなく、選択したカードの属性相殺も加味した最終的な総量がダメージとなるのである。
そのため、デッキあるいはカードの選択を誤るとダメージを相殺させてしまい、たくさんカードを選択したにも関わらず攻撃力を失ってしまう可能性があるのだ。
デッキを構築する際には反属性のカードは入れないように組むなどの工夫をする事が推奨される。

他にも特徴的な要素がある。
デッキを構成するカードであるマグナスは時間経過で別のものに変化する事もあるのだ。
例えば「タケノコのマグナス」は時間が一定以上経過すると「竹のマグナス」へと変化して使用した時の効果自体も全く異なるものになる。
この要素で一番影響が出るのが「回復系マグナス」である。
仲間のHPを戦闘中に回復する手段は回復系マグナスを使用するしかないのだが、回復系マグナスの多くは料理である事が多い。
しかし、その料理も一定の時間が経過してしまうと腐ってしまい回復が望めないマグナスへと変質してしまうのだ。
すぐにダメになってしまう事はないが、回復手段を定期的に確保しておくのも大切である。

「役」を作る事でダメージ倍率に補正が乗る

ここまでで本作のゲームルールの基礎的な部分を記述したのだが、この仕組みを更に上手く活かしているのが「プライズ」という”役”の存在だ。

カードであるマグナスには四隅に「精霊数」と言われる数字が記載してある。
この数字は「特定の条件」で揃えて連続使用する事でダメージが上昇するような効果がある。
特定の条件とは数字を数字の順に並べたり、数字を揃えるなどポーカーの役のようなイメージを持つと理解しやすいだろう。
例えば「1,2,3,4,5」や「2,2,5,5,5」のような形で整えると役が発生してダメージを伸ばすことができる仕組みである。

カードの四隅に書かれた精霊数の選択方法は右スティック(原作ではCスティック)が対応しており、例えばそのカードの右上に書いてある数字を採用したい場合にはスティックを右上に倒す事で右上の数字を選択できる。
しかし、四隅をスティックで入力する事になるため、度々意図しない選択になってしまう事もあるのはやや不満に感じる部分だろう。
せめて上下左右の配置されていればもう少し誤選択が減ったように感じられる。
なお、状態異常の中にはこのカードの数字選択を阻害するようなものもあり、システムを活かしたユニークな状態異常がしっかりと用意されており面白い要素となっている。

カードの四隅の数字で役を作れればダメージが上昇する訳だが、その役を伸ばすためには複数の精霊数が記載されたカードが重要となる。
序盤では数字が多くても右上と左下の2つ程度しか書かれてないカードである事が多いが、物語が進行していけば3~4つ書かれたカードがどんどん排出される。
これは役を成立させる土俵に乗りやすくなる反面、役を成立させるための数字がそれぞれのカードの四隅のどこに配置されているかを素早く認識して使用するカードを選定しなければならなくなる。
何故なら、前述した「攻撃モーションが終わるまでに次のカードを出さなくてはならない」という時間制限があるためだ。
つまり、強い攻撃が出しやすくなる一方で、そのためのプレイヤースキルが必要になるというリスクとリターン…難易度設定のバランスにもなっている。
これが筆者が本作をスピードとポーカーを掛け合わせたような体験と言っている部分である。

本作はこのような遊び方を理解しきれていないまま「カードを出してダメージ出すだけ」という認識のもと戦闘を行うとテンポが良くないように感じてしまうだろう。
しかし、制限時間の中で素早くポーカー的な役を作らなければならないという遊び方を理解すると、逆に「時間が足りない!」とすら感じるケースも出てくるのである。
「プレイヤースキル的に難しい事が要求されている訳ではないが、迅速な判断で的確な選択を行う必要がある」というのは万人が同じ土俵で高い面白さを感じられる見事なゲームデザインであり、ゲームの面白さを生み出す仕組みとしてあるべき姿の1つだと言えるだろう。
この独特なゲームルールは非常にポジティブな体験でもある一方で、本作の戦闘ルールが他に類似がないため誤解のされやすさも同時にあるように思える。
特に序盤では選択可能な最大カード枚数が少なく役を揃えても余りダメージ倍率が伸びない。
これはゲーム進行と共に難易度が上昇するようにした配慮ではあるのだが、恩恵の薄いシステムだと誤解しやすさにも繋がる可能性がある。

この仕組みで少し工夫が欲しかった要素としては「防御」のマグナス関連だ。
ここで説明したものと全く同様の仕組みで、敵から攻撃を受ける際に防御用のカード(マグナス)を選択していく事で被ダメージを抑える事ができる。
しかし、防御専用のカードを採用してしまうとデッキを圧迫して攻撃時に使えるカードが少なくなり、結果として回転率が落ちて火力も落ちてしまう。
そのため、防御用カードを採用せずに回復用のカードだけは保険で入れておく程度がデッキ構成としては戦いやすいのが実情である。
そのような状況になってしまうならば、あらかじめ「攻撃時に使用するデッキ」と「防御時に使用するデッキ」を別にしておいた方が良かったように感じられる。
こうする事で防御にて使用するカードの存在感が薄いという事態はいくらか避けられたであろう。

一気に上げるとお得なレベルアップの仕組み

レベルアップの仕組みも独特で、戦闘で経験値を溜めて施設でレベルアップさせて貰うという形となる。
つまりは戦闘後に直接レベルが上がらないのである。
また、レベルアップの際の能力値上昇はランダムとの事だが、経験値を溜めて一度に多くレベルアップさせるほどステータスの上昇量が多くなる。
そのため、可能な限りレベルアップを後回しにする事を推奨するような仕組みなのだ。
ゲームプレイの癖のようなものは千差万別あるだろうが、このような「溜めてから一気に強くする」というカタルシス的なプレイ方法を好むプレイヤーも少なくないだろう。
本作ではそれをシステムとして組み込んでいるのである。

戦闘システムとしてのキャラクターの個性は薄い

本作には仲間となるキャラクターはいくらか登場し、ストーリーと言う側面でのキャラクター性は個性が際立っているものの、戦闘面でのそれは非常に薄いものである。

仲間キャラクターはステータスの上昇傾向や取り扱う属性において個性はあるものの、「このキャラクターでなければできない」ような事はほとんどないのだ。
そのため、気に入ったキャラクターのパーティー構成で使い倒せるメリットもある一方で、キャラクターを使い分ける意味はほとんどないのだ。

いわゆる”JRPG”にはアタッカーやタンクなどの明確なロールが設定されるケースは少なく、戦闘における個性が薄いこと自体は珍しくないため大きなマイナスではないものの戦闘の仕組みがユニークであるだけに勿体ないように感じてしまう。
例えば、マグナスの役の条件が緩くなるキャラクター、特定の役しか成立しなくなるがダメージ上昇倍率が高くなるキャラクターなどシステムに介入するような、そしてシステムを活かして楽しさにエッセンスを加える個性があっても良かったように思うのだ。

ちょっとした謎解きによって進行するダンジョン

本作のダンジョンは簡単な謎解きによって進行するような場所がちらほらと存在する。
ダンジョンで用意されている謎解きは物語の歴史的背景・設定と密接な関係を持っている訳ではなく、一種の遊びとしての側面が強いものである。
これはゼルダの伝説 時のオカリナ以降のゲームには比較的採用例が高いのだが、本作もまたその潮流だと言えるだろう。
謎解きの難易度としては理不尽なものはないものの、クォータービューでのパズルのようなものがある場所は少々ストレスがたまりやすい。
それはパズル自体というよりも「上を入力すると左斜め上に移動する」という見た目と移動方向が一致しない状態となり非常に困惑するためである。
この辺りはプレイしやすい調整を行って欲しい所だ。

また、ダンジョン内では当然ながら敵と戦闘する事になる。
敵とはシンボルエンカウント方式で戦う事になり、エリア移動によって敵がリポップするため探索の際には注意が必要だ。

 

リマスター版

リマスター版ではいくつかの追加要素によって遊びやすさが増している。

まずはオートセーブだが、これはもうそれ以上に語る事がないので次の要素を紹介したい。
本作ではゲームスピードの高速化が可能になっている。
キャラクターモデルのアニメーションなどの速度倍率を上げる事ができ、移動や戦闘を高速に行う事ができるようになっている。
しかし、戦闘においては攻撃モーションが高速化されている。
これは「システム」の項でも述べたように戦闘で次のカードを選択する猶予時間は「現在の攻撃モーションが完了するまで」である。
そのため、利便性というよりも難易度の上昇を伴うものになっているのだ。
これはやり込み勢向けの一種の縛りプレイとしての活用の方が現実的に思える。

敵を一撃で倒すモードも追加されている。
これはゲームバランスを完全に崩壊させるものではあるが、物語だけ読みたいようなカジュアルな層には嬉しいのかも知れない。
このモードと、上述の高速化を併用すればパパっと進行する事ができる。
場合によっては「敵は難なく倒せるレベルになっているが、敵がドロップするカードだけ欲しい」といったニーズの時に活用するのもアリだろう。

これらの追加要素はゲーム中に変更が可能なので、状況に応じて使い分けなどをしてみても良いだろう。

 

グラフィック

ハイファンタジーらしい想像の斜め上をいく美術が素晴らしい

本作は3Dモデルのキャラクターとプリレンダの背景というかつての時代では非常に多く採用されていたスタイルを持つ。
特筆するべき部分としてはプリレンダのフィールド背景美術となるだろう。
どれもが幻想的なハイファンタジーであり、ロマン主義的なフィールドや前衛芸術的なフィールドなど多岐に及んでいる。
中にはナムコのオマージュ的なエリアもあったりするなど知っていれば笑いながらツッコミを入れてしまうような場所まである。
また、雪が積もっているような場所ではラッセルしていく表現をしているなどの細かな表現も見て取れる。

対して、リアルタイムレンダリングされた3Dモデルは少々微妙だ。
特にキャラクターはフェイシャルの変化がないため不気味で怖い印象を受けてしまう。
基本的に俯瞰で遠くからキャラクターを写すことが多いので、怖さを感じる機会は少ないかも知れないがキャラクターの顔が大きめに表示されるショップなどは目がキマっており怖いだろう。

 

サウンド

バテン・カイトスでは独特なハイファンタジーの世界観にマッチした楽曲が印象的である。
時にファンシーな空気感も出しながら、しっかりと壮大な音楽が作品を彩っている。

静かなイントロから盛り上がりのメリハリが効いている「光星煌く旅路の果てへ」

幻想的で落ち着いた雰囲気を帯びる「風気の狭間」

クラシカルな空気感によって癒される「天海花御堂」

印象的なイントロと僅かな哀愁も感じさせる戦闘曲「The true mirror」

本作ではキャラクターのボイスありのセリフも多く用意されている。
特にメインストーリーは全てボイスが付いており、当時の水準と比較してもしっかりとモダンなレベルになっている。

 

総評

バテン・カイトスは独特な世界観と独特なシステムによって今でもなお独自の輝きを持った作品である。

ゲームプレイヤー自身としてゲームに介入するようにした物語設定とその構造を活用した事による意外性のある展開は面白い。
登場する仲間キャラクター達も個性豊かで愛着のあるメンバーばかりだ。
カードベースの戦闘は求められているプレイヤースキル自体は高くないものの、手札のカードを迅速かつ正確に選択して役を成立させる事が推奨されており、それはゲームの面白さを生み出す仕組みにおける構造的理想形の1つである。

余り知られていない作品ではあるものの、間違いなく独自の強い輝きを持った良作である。

 

外部記事

Interview: Baten Kaitos I & II HD Remaster is out now! Here are some thoughts from the original development team - News - Nintendo Official Site

アートディレクター 本根氏の反応 - Twitter

ゲームキューブの名作『バテン・カイトス』は“語り継がれるだけの価値がある”作品だった。「プレイヤー=主人公に憑りついた“精霊”」という独特の設定で語られるストーリーがアツい…!

「伝説の名作RPG」の魅力に迫る!『バテン・カイトス I & II HD Remaster』インタビュー! – Nintendo DREAM WEB

日暮 央さん『バテン・カイトス Ⅰ&Ⅱ HD Remaster』キャラクターデザイン秘話(キャラかみ 2023年11月号より) – Nintendo DREAM WEB

【レビュー】Metal Gear Solid

Les Enfants Terribles

Metal Gear Solid(以下、MGS)は小島秀夫監督が手掛けたエスピオナージアクション、いわゆるステルスアクションゲームだ。
MGSによってビデオゲームにおけるストーリーの可能性を大きく世界に知らしめた作品だ。

筆者がわざわざ書くのも野暮なものではあるが今回はMGSをレビューしたい。
なお、今回はリマスター版でのレビューとなる。

 

SW版 METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1

SW版 METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1

  • 発売日:2023/10/24
  • メディア:Video Game
PS5版 METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1

PS5版 METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1

  • 発売日:2023/10/24
  • メディア:Video Game
メタルギア ソリッド

メタルギア ソリッド

  • 発売日:1998/9/3
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

"遺伝子"を主軸としたメッセージ性の強いシナリオ

核廃棄場として利用されているシャドーモセス島にてテロリスト集団が蜂起し、核兵器を使用する事を政府に通告。
テロリスト集団はそれを停止する代わりに伝説的英雄ビッグボスの遺体を要求したという。
主人公であるソリッド・スネークアメリカ政府からの非公式任務として基地への単独潜入を行い、敵勢力の核発射能力有無の確認および人質となっている重要人物の保護を目的として行動する事になる。

ストーリーは基本的に非常にシリアスで地に足のついたものになっている。
歴史的な実際の出来事にウソを混ぜ込むことでより説得力を感じさせる表現を行い、政治的な腹芸によって政治組織のそれっぽさも強く演出されている。
それは敵対組織だけではなく、スネークの所属する組織ですら一枚岩ではない事が示されるために誰が敵で誰が味方なのかがわからない状況下になる事も"それっぽさ"を助長させている。
数多く会話する訳ではないにも関わらず敵キャラクター達の魅力も伝わるようになっており、その敵達が投げかける問いかけには今の時代でもなお思う所があるハズである。
また、それらの中には辛く苦しい事があっても「それでも生きる」ことを説いている事が多い。
当時の時代背景としても湾岸戦争に始まり、日本ではバブル崩壊後でもある。
それらの暗い空気感が社会にあっても、死なずに生きようとする意志を本作では示してプレイヤーを勇気づけている。
そして遺伝子技術などのSF的な超技術などの脚色を用いる事で本作のメッセージ性とリアリティを強調しているのである。
遺伝子技術は当時は非常に盛んに議論を呼んでいた分野でもあり、筆者の記憶にも遺伝子組み換え作物(1996年頃)に関しての是非に関しての報道も行われていた覚えがある。
映像作品ではジュラシックパーク(1993年)にて遺伝子技術を用いた物語となっているほか、本作の後年にはガンダムSEED(2002年)シリーズが遺伝子技術を題材とした初代ガンダムのリブート作品を展開するなど当時の社会的関心の強い題材でもあった証左と言って良いだろう。

もちろん、高名な映画的な演出も見どころだ。
カットシーンは当時には主流であったプリレンダムービーではなく、リアルタイムレンダリングのものを採用し、カメラワークやエフェクトやセリフなどを巧みに使っている。
それは現代でもその凄さの一端は味わえるだろうし、今なおこのレベルで演出が表現されている作品は少ない。
例えば、オープニングにしてもゲームプレイに移行している中でキャスト表示がされるなど最初から最後までプレイヤーに魅せるための工夫を散りばめている。
各種会話に関してもキャストが一緒に収録している事もあり、セリフに被るような食い気味に行われるような場面も多くあり、状況の緊迫感と迫力を会話テンポから感じさせるような演出も見事である。

ゲームとしての工夫も見て取れる。
当時はボリュームを出すことに苦心する時代であったことから、フィールドエリアを行ったり来たりする必要のある物語にする事で少ないリソースの中でのボリュームを出しているのだ。
これはシナリオとゲームプレイ部分の両方をディレクションできる小島監督だからこその工夫だが、当時はまだそのような体制であった作品も少なくなかった時代ではある。
また、プレイ再開時にあらすじを参照する事が可能で前回でどこまでクリアしたのかがある程度閲覧できるようになっているので比較的親切な設計だ。

後の小島作品との類似性のある設定が既に登場しているのも面白い部分かも知れない。
本作では「左右非対称の理論」というゲーム独自の理論が登場するが、これはDeath Strandingにおける「絶滅体」や「カイラル」と近しい概念の設定も見て取れるのだ。

大ボリュームの無線会話

ストーリー中では無線によって外部の仲間達とコンタクトを取る事が可能だ。
この無線も本シリーズの物語の醍醐味の1つである。
無線はストーリー進行以外でも様々な状況に応じて変化があり、それらを聴いて回るのもまた面白いものになっている。
無線は攻略のヒントにもなっており、作中で何らかのギミックによる有効手段がある場合は無線によって有力な情報を入手する事が可能になっている。
そのうえ、情報も小出しになるようにしており、一回の無線でギミックを全て喋ってしまうような無粋な事を極力避けているため適度にプレイヤーの効力感を保つような配慮も見て取れる。

無線の内容はシリアスなものはもちろんだが、雑学・豆知識的なものまで様々であり、これが本作のモチベーションの1つにもなっていると言って過言ではないだろう。
また、現代ではピンと来ない部分にはなってしまうのだが、初代のPS時代においてこれ程の量のボイスの量と演技の質を持ってゲーム内に収録した事は驚くべきことでもある事は本作を語る文脈としては書いておいても良いだろう。

前作の出来事や本編直前の出来事も知る事ができる

ストーリーは前作に当たるMetal GearおよびMetel Gear 2 : Solid Snakeのその後を描いているが、本編内では過去作でどのような事があったのかをテキストで参照できるようになっている。

また、ゲーム本編が開始される直前の出来事に関してはタイトル画面の項目から確認する事ができる。
直前の出来事は録画データという体裁で参照する事になり、ゲーム本編では直接関わらない内容である事を意識したストーリーテリングになっている点は見事だ。

両方とも参照せずとも十分に内容を楽しむことは可能だが、より深く楽しむためには目を通しておいた方が良いだろう。

 

システム

トップビューを基本としたステルスアクション

MGSは3D移行の過渡期であり2D時代のMetal Gearシリーズを彷彿とさせるトップビューをベースとした操作となっている。
一部のアクションでは限定的なサイドビューになったり一人称視点になったりと視点変更されるハイブリッドではあるが、なんにしても現代で広く用いられる表現方法とは少し異なるため今から初めてプレイをする人にとってはやや取っ付きにくい部分はあるだろう。
しかし、これは当時の水準から考えれば破格のゲーム体験の1つだったと言って間違いはない。
何故なら、初代PSではフル3Dというのは少々厳しく、キャラクターを3Dで描画し背景は2D(プリレンダ3D)で描画する事がメジャーであったためだ(逆の方式を採用したケースも存在する)。
つまりはフル3Dではない以上、フィールドはいわばただの1枚画像であり、定点カメラにするほかないのが一般的であったのだ。
そんな環境下でこの品質の作品が、しかも全面フルボイスで登場したという点は今では味わえない文脈の上での感動があった事は記載したい。
現代のゲーマーにあえて凄さを伝えるとするならば「今でも普通に遊べる」という事が驚異的な事なのである。

とはいえ、アナログスティックにしてもPSではニンテンドー643Dスティック登場以降に後発で導入した程度であるため、アナログスティックの角度に応じた歩き/走りのスムーズな使い分けもまだ甘かった時代である。
そのため移動方法は「停止 or 走る」の二択しかなくキャラクターの距離の微調整がやや行いにくい。

当時のプレイ環境を逆手に取ったユニークな試み

PSや時代的文脈を活用した演出もユニークだ。
登場したばかりのコントローラーの振動、これまた登場したばかりのメモリーカードの読み取り、かつてのテレビ画面にてゲームをプレイする際に外部端子からの入力受付時に表示されたビデオという文字をもじった「ヒデオ」などである。
どちらも当時の時代背景に依存した表現であるため現代でその面白さを感じ取るのは大変厳しいものがあるが、文脈としては知っておくべきものだろう。

シリアスなシナリオや映画的映像演出の側面ばかりが注目されがちな小島監督であるが、しっかりと「ビデオゲームだからこその表現」「ビデオゲームだからこその遊び」を取り入れているバランス感覚は見事だ。

 

リマスター版

資料が参照できる

リマスター版では「マスターブック」「シナリオブック」というものが用意されており、設定資料などを閲覧できる。
現代では入手がしにくいものでもあるため嬉しいファン要素だ。

また、「セーブデータ編集」という機能により”SNATCHER”や”ときめきメモリアル”などの仮想データがあるものとしてゲームをプレイする事も可能である。
これらのデータがある事で特定の場所で有名なセリフが聴ける事だろう。

Nintendo Switch版では無線音声におけるチュートリアルの一部が無音となってしまっている。
これは当時のパッドとの差異が発生してしまっているための配慮であると思われるが、少々寂しいポイントになってしまっている。
差異はあるにしても、そのまま音声を流すようにして欲しかった部分だ。
なお、本件に関しては修正アップデートも予定されているようだ。

 

グラフィック

PSでは珍しいフル3D

MGSでは初代PSとしては非常に珍しいフル3Dを採用している。
初代PSにおいてはそのハード的制約から2Dと3Dの複合によって表現する事が一般的であり、その点から見ても意欲的な作品であると言えるだろう。
各種モデルやテクスチャーもしっかりとゲームの世界観が伝わる品質であり、当時としては高水準なものだ。

キャラクターは3Dで描かれているがフェイシャルまではないものとなっている。
会話の際にはキャラクターの顔が微振動する事でセリフを喋っている事を伝える演出になっており、その他のカメラワークなどの演出も相まって今の時代に見てもチープには感じにくくなっている。

 

サウンド

ゲーム冒頭のBGMから印象的だが、そもそもの全体の使用楽曲も量が多くない事から何度も同じ曲を聴くことになり記憶に残りやすい。

音声面で特筆するべきポイントは「ストーリー」の項ても触れているが何と言ってもボイスである。
会話などのボイスがとにかく豊富に用意されているだけではなく、その会話の質も非常に高いものになっている。
これはキャストを一堂に会して収録している事も影響として大きいのだろう。
キャラクター同士の会話は間の取り方、まくし立て方など空気感の伝え方は見事だ。
特に「グラフィック」の項でも記載した通り、キャラクターのフェイシャルはないためそれを補完する意味でも本作のボイスの質は非常に効果的な役割を果たしていると言えるだろう。

 

総評

Metal Gear Solidはメッセージ性の高いシリアスなストーリーと遊んで楽しいゲームプレイが融合した傑作だ。

映画的な演出やストーリーに着目されがちで確かに間違いなくその部分は比肩し難き内容でもあるものの、しっかりとゲームとして遊んで楽しい内容に仕上がっている事も忘れてはいけないものである。
「ゲームだからこそ可能な表現」を用いており、単純な映画的ゲームを脱した今でもプレイする価値のある伝説的なタイトルだ。

現代でプレイしても十分に面白い内容であるとは言えど、当時の環境面を意識した演出をゲームプレイに組み込んでいるなど、現代人にはピンと来ないネタも多い事は少し寂しい限りだ。

 

外部記事

【SF史に残る(べき)ゲームたち】第1回:メタルギアシリーズ――現代SF最高の達成

20年越しに潜入するぞ【1】精神科医が潜入するメタルギアソリッドの世界 - YouTube

【レビュー】百英雄伝

数多の英雄達の群像劇

百英雄伝はクラウドファンディングによって資金を得て開発されたJRPGである。
本作には前日譚となる「百英雄伝 Rising」が先行して発売されているなど、本編のリリースに当たってのランディングはしっかりと行われていた印象だ。

開発チームは幻想水滸伝のスタッフが集結しており、本作はその精神的な系譜の作品となる。
筆者は幻想水滸伝に関しては友人がプレイしている所を少しだけ見た記憶がある程度で、その記憶も本当に幻想水滸伝だったのかも正直言って若干怪しい…それくらいの知識であり名作として名前は知っている程度だ。
しかし、開発の中心的人物でもあった村山吉隆氏の訃報が発売を待たずして伝えられた事も記憶している人は多いかも知れない。
特に大きく期待されていたタイトルであっただけに、その売れ行きと評判を聞かないままに旅立ってしまったことには寂しさが強い。

今回は百英雄伝についてレビューを書いていく。

 

 

ストーリー

胸を熱くさせる展開が用意された物語

諸国連合国と帝国の間で和平が成立してからいくらか経過した時代であり、レンズといわれる化石燃料などのようなエネルギー資源となっている古代遺産を共同で発掘するという計画を実行するところから物語は始まる。
主人公ノアは諸国連合の警備隊に所属して共同発掘する事を目的とした任務に従事する事になる。
しかし、思惑と陰謀によって平和が崩れていく事になるのが物語の導入である。

幻想水滸伝と同じく本作では様々な、そして数多くのキャラクターが仲間として登場するのが目玉となっている。
仲間になるキャラクターも人間の他にも獣人や木の姿をした種族など多岐にわたっている世界観をほとんどフルボイスで制作している。
プレイヤーは様々な国の様々な人種の価値観と触れていく楽しさがあるだろう。
そこで仲間になるキャラクターは会話で仲間になるものから、専用クエストをこなす事で仲間になる者などのバリエーションもあるため、数は多いが極力パターン化しないような工夫がしっかりとされている。
中には特定の敵を指定数討伐するように依頼されることもあるが、事前に条件を満たしていれば改めて倒しに行く必要がないようになっており面倒にならないような配慮もされている。

本作のストーリーにおいて優れているのはストーリーテリングだ。
本項の冒頭に記載した通り、本作では各国の思惑などに巻き込まれるキャラクター達を描いている。
そこで生まれる葛藤や苦悩を戦闘を通してゲームプレイの中で描いているのだ。
そのため、戦闘後にドラマが進展するだけではなく、戦闘中にもドラマが展開していくようになっているのである。
その内容自体はベタと言えばベタなのだが、結果として武侠ものらしい熱い展開がしっかりと表現されている。

数多くの英雄達を活かせるセリフパターン数は見事

仲間になるキャラクターは100人を軽く超えるが、ストーリーではしっかりとそのキャラクター達を活かしている。
例えば、編成しているメンバーに応じてのセリフ変化もあるうえ、それもしっかりとフルボイスなのだ。
この手のゲームでは「仲間にはなるが、メインストーリーでは一言も喋らず空気」のようになるケースは少なくないが、本作では極力そうならないように正面から物量と対峙しているのである。

また、とあるシステムをアンロックすると本編では描かれない各キャラクターの過去に関してもテキストで参照する事が出来るようになる。
ある程度のキャラクターの深掘りになっているので、興味があるキャラクターは積極的に確認するのも良いだろう。

仲間関連で気になる点があるとすれば仲間にするためのクエストが一覧化していつでも参照できない事だろう。
「○○をしたら仲間になってあげる」といったような事を言われることも少なくないのだが、それがこれだけの人数がいるにも関わらずシステム的に参照する事ができないのである。
どこで、誰と出会い、何を必要としているのかを自分で覚えておく必要があるのは流石に面倒でありレガシーにも程がある。
もう少しモダンな作りにしても良かったように感じられる。

英雄達を活かした要素も素晴らしい

主人公達が駐屯する事になる拠点では様々な施設を開発する事が出来るようになる。
中でも数多い英雄達を活用できる「劇場」はそれ単体で作品として成立しうるようなユニークなコンテンツである。

劇場は言うなれば劇中劇であり、仲間にしたキャラクター達を活用したお芝居をフルボイスで観る事が出来るコンテンツだ。
演目自体も複数用意されているうえに各キャラクターの各配役がフルボイスで収録されている。更にはキャラクターの演技もキャラクター性に応じた個性が出るようにもなっているのだ。
そのため、役にマッチするようなキャラクターを選んでも良いし、あえてミスマッチさを楽しむなどの様々な組み合わせで楽しめる作りであり同じ演目であっても配役を変更して何度も楽しむことが可能だ。

移動中にもテキストはあるがゲームプレイに適さない

それ以外の部分でもゲーム進行の移動中などに画面右下で物語進行などに関してのキャラクターの会話が展開されストーリーやキャラクター性を補完してくれている。
これらも全ての仲間キャラクターに用意されているのは見事な作り込みである。

しかし、これはゲームプレイ中の状況と余り噛み合わない。
移動中にテキストを外枠で表示されても読みにくく、逆にテキストをしっかりと読むために画面右下に集中しているとゲームプレイ自体が行いにくいのである。
更に物量を増やしてしまうような発言であるのは重々承知だが、こういった機能を組み込むのであればボイスによる実際の会話が差し込まれるべきであっただろう。

 

システム

ランダムエンカウントのフィールド探索

百英雄伝ではフィールド・ダンジョン探索が存在するが、ランダムエンカウントによって戦闘も発生する。
フィールドは縮尺の異なるワールドマップをハブとしており、ワールドマップを移動して街やダンジョンに行くクラシックな方式を採用している。
また、ダンジョン内にはちょっとした謎解きギミックもあるなど、こちらもクラシカルだ。

ダンジョン内の宝箱からアイテムを入手したり、敵を倒してもアイテムをドロップしたりする。
しかし、アイテムのインベントリには上限が設けられている点は注意が必要となる。
特に回復アイテムなどの戦闘で使用するであろうアイテムも3個で1セットでインベントリの収納枠を圧迫する。
そこに宝箱やドロップ品などの装備品を含めたアイテム類が加算されていくため、不用品を多く持ち込んでしまうとアイテム回収ができなくなってしまう。
これらのバランスの兼ね合いを考慮する必要もあり、回復アイテムも上限があるのでダンジョン攻略にマネージメントが必要となる。

拠点の建築

仲間達が暮らすことになる拠点を開発して拡張していく要素も存在している。
拠点を開発していくにはフィールドで拾った素材が必要になるほか、特定の仲間がいないと開発できないものもある。
拠点の開発が進めば様々な施設を利用する事ができ、更には仲間を派遣して素材を得るような要素もある。

しかし、この拠点はいくつかの問題点が見受けられる。
まず、アクセス性の悪さは最も気になるところだろう。
拠点はプレイヤーの中心ともなる土地であり必然的に頻繁にアクセスするにも関わらず、各機能の施設へのアクセスが悪いのだ。
確かに街としての規模感が大きい方が対外的な見栄えのカッコよさはあるだろうが、実際に住む時と同じで頻繁に利用する住民(プレイヤー)からすればアクセスが良い方がありがたい。
本作ではやたらと拠点が広く、複数の施設を利用したい時が割と面倒なのである。
確かに拠点では各施設の近くにワープできるようなポイントが設けられてはいるものの、痒い所にまで手が届くようなものではない。
この辺りはもっとアクセス性を意識した施設の配置を検討して欲しい所である。

オーソドックスなターン制コマンド選択式の戦闘

百英雄伝の戦闘はターン制のコマンド選択方式のバトルを採用している。
画面の上部では自分と敵の行動順を確認可能にもなっている。

戦闘ではルーンと言う技・魔法を使用する事でMPやSPというリソースを消費して大ダメージや回復を行う事になる。
特にSPに関しては毎ターン1つ獲得でき、最大5つまでストック可能だ。
戦闘中にチャージできるリソースを消費して強めの行動が行える攻撃手段は重宝するだろう。中でもSP消費でバフ効果が付いていたり、範囲攻撃になっていたりする固有スキルがあるキャラクターもいるため、そういったキャラクターはより重宝するハズだ。
そういった行動が行えない場合には通常攻撃を行ったり、アイテムを使用する事になるだろうが、前述したようにアイテムは所持上限があるのでザコ敵にもホイホイ使っているといざという時に困るかも知れない。
ある程度のマネージメントが必要となる訳だが、それによって難易度が上がっているとは余り感じないだろう。
パーティーメンバーで回復役を複数名確保しておけばある程度の余裕を持って攻略が行えるハズだ。

特定のキャラクターの組み合わせによって発動できる「英雄コンボ」は仲間キャラクターを活かした要素だが実戦的な活用はしにくい勿体ない要素となっている。
英雄コンボでは固有のアクションアニメーションによって攻撃を行う事になる点は面白いのだが、いくつかの理由で実戦向きではない。
まず、そもそも組み合わせのパターン自体が少なく発動させるためのメンバーを戦闘に組み込むのは制約が多くなってしまう。
英雄コンボを発動させたいがためにパーティーメンバーのバランスを欠いてしまっては本末転倒である。
そして全体的に演出が長いのも迷惑だ。
演出時間は通常攻撃よりも大幅に長くなるケースが多いうえ、英雄コンボの演出中は追加操作などは何もなくただ見ている事しかできないため戦闘テンポが一気に悪くなってしまう。
そのうえ、大して強くないのが拍車をかける。
例えば、3人技などもあるのだが、その場合には3人分の行動を犠牲にして英雄コンボを発動させることになる。
そうまでして発動させる価値がある行動ではないのだ。
英雄コンボは組み合わせによって効果も異なるためコスパの良いものも確かに存在するが、単純なダメージソースと言う側面だけで採用しようと考えているならほとんど全てがその恩恵は低い。
多くのキャラクターを戦闘で活用できる要素であるだけに、もっと有用な効果が設定されているべきであり、更に言えば大量の英雄コンボの組み合わせが用意されるべきである。

なお、この戦闘はオート戦闘も可能だ。
オート時の行動傾向は「MP使用禁止」や「アイテム使用禁止」「行動順の早い敵優先」など大雑把に設定する事はできるものの、痒い所に手が届くような設定までは行えない。
あくまでもザコ敵専用の機能に留まっているが、逆に言えばザコ敵では活用する事が多いだろう。
というよりもHPの削り合いという単純な戦闘システムであるため、本機能を活用しないとハッキリ言って早々にダレてしまう。
無駄にアイテムを使わないようにだけ設定を行って道中はオートで戦闘するのが精神衛生上良いハズだ。

SRPG的な合戦

ストーリーではSRPG的な合戦も用意されている。
仲間にしたキャラクターがユニット内の部隊として配置され、キャラクターによってバフなどの効果が設定されているが、基本的にはそこまで深く考えずとも問題ない。
仲間や敵が軍勢として戦争を行う合戦はイベント戦闘に近いものであり、物語演出の延長線上であるという受け止め方が良いだろう。

一応、この合戦では「軍団コマンド」というアクティブスキルが発動可能だ。
軍団コマンドは味方にバフをかけたり、敵部隊にデバフをかけたりといった効果がある。
そしてこのコマンドは一度の合戦で指定回数分しか使えないので、使いどころを間違えないようにすると良いだろう。
そうは言っても、このコマンドが戦局を大きく左右するかと言うと、そこまでの依存度はないので、こちらもゲームプレイで物語を演出するフレーバーとしての側面と言っても間違ってはいないものである。

英雄同士の一騎打ち

ドラマチックな戦闘を演出する一騎打ちも存在する。
一騎打ちでは相手の行動を把握して攻撃と迎え撃つを選択していく事になる。
そして、ゲージが溜まれば「しかける」という必殺技のようなものも使えるようになる。

こちらも上述している合戦と同様に物語の演出としての側面が強いものであり、ゲームプレイとして奥深い駆け引きの何かがある訳ではない。
ドットベースのキャラクターながら相対するキャラクターとの一騎打ちによってドラマチックなストーリーの演出に繋がっている。

数多のミニゲーム

その他にも本作には本編とは関係のないカードゲーム、ベーゴマバトル、釣り、レース、競馬、料理対決などのミニゲームが多数実装されている。
いくつか紹介しよう。

カードゲームは大雑把に書くと3つの場に3枚のカードを配置してその数字の合計が高い方が勝利するルールである。
カード自体の数字に加えて色を揃えたり、数字を揃えたりと言った「役」を整える事で更に戦力が上がるようになっている。
それに加えて、カード自体にもスキルのようなものが設定されており、条件が整えばその効果でも戦力を上げる事が出来る。

競馬は本作の中でもやりがいのあるサブコンテンツだと言っても良いだろう。
敵がドロップしたタマゴを孵化させてレースに出して能力値を上げていき、一定数レースに出した後は交配を行って更に強いモンスターを作っていくようなものになっている。
レース勝利報酬ではランダムにスキルが獲得できるアイテムが入手できるため、レースを行う事で強くなるサイクルが構築されている。

ゲームプレイの種類はあるが、どれも現代的な遊びにはなっていない

ゲームプレイはターン制コマンド選択式バトルもあれば、戦争シムのような合戦もあり、かと思えば英雄同士の一騎打ちも存在する。
そしてミニゲームにしても釣り、料理対決、カードバトル、ベーゴマバトルなどなど多くのバリエーションが用意されている。
しかし、収録されているそれらの全てが表面的なデザインに留まっており現代的なビデオゲームの水準で想起される遊びとしては非常に薄い味付けである。

どのゲームプレイを見渡しても、単純な足し算と引き算によるリソースの削り合いか、プレイヤーの制御性に乏しい運要素で構成されており、プレイヤーの工夫できる余地が少ない遊びになっているのだ。
テーブルの上に出されたゲームのどれもが”ゲーム風”になっているだけでゲームにはなり切れてない。
まるでハードウェア的な制約の多かったファミコン時代のゲームシステムを遊んでいるかのようで現代でプレイするには苦しいものがあるものばかりだ。
結局のところ、複数用意されている戦闘もミニゲームも「ストーリーを演出するためのフレーバー」でしかなく、繰り返し遊ぶことに耐えうるデザインにはなっていないのである。
物語進行として戦闘が発生するので”戦闘っぽい演出”を差し込んではいるが、それ自体で面白さを生み出す何かには決してなっていない。

例えば戦闘だけ取ってみても、戦闘ではSPゲージのチャージによってスキル発動を行える仕組みが用意されている。
であるなら、SPのチャージ状況の奪い合いを行えたりする仕組みを軸に添えるだけでも駆け引きは違ったものになったハズだ。
もちろん、ターン制の行動順を活かした仕組みを導入する方法でも良いだろう。
単純なリソースの削り合いではない何かが作れなかったのだろうか。

ミニゲームに関しても指摘したい内容はおおむね同様だが、3本勝負で2本勝っていれば勝利になるいわゆる2先ルールであるにも関わらず2勝した時点で勝利にならず、無駄な3本目の戦いを要求されるといった冗長なゲームプレイになってしまっているのは余りにも配慮が不足しすぎている。

また、全体として最適化やバグ取りも不足気味だ。
メニュー操作しろ、エンカウントにしろ、戦闘にしろ、最もアクセス頻度が多い機能であるにも関わらず微妙な間がありテンポが良くない。
特にNintendo Switch版では注意した方が良いだろう。
そのうえ、稀にゲームがクラッシュしたり、筆者の場合には進行不能バグにも遭遇してしまった。
このレビューが出ている頃にはパッチが配信されて改善されている部分もあるかも知れないが何も生み出す事のないストレスはもっと配慮して頂きたい限りだ。

そして100人を超える仲間を活かしきれていないのは考慮不足である。
仲間になるだけで、その人数が活かせるようなコンテンツに欠けているのだ。
例えば戦闘要員として引き連れて行けるのは6人+サポート要員1人であり、仲間の総数の10%未満だ。
拠点ではパーティーメンバー以外の仲間を派遣してリワードを得られるコンテンツも用意されてはいるものの、それをフル活用しても30%も活用できない。
戦闘に直接関連するかはさておいても連れて行ける人数を増やす方法もあるだろうし、戦闘要員ではないメンバーを活用できるコンテンツは最低限用意しておくべきである。
そもそもとして本作のコンセプトは数多くの英雄を仲間にする事にある。
であるにも関わらず仲間にした後の事が全く検討されていないのは現代水準のゲームとしては問題がある。

 

グラフィック

大胆なビジュアルスタイル

百英雄伝は2Dドットベースのキャラクターとフル3Dの背景という組み合わせのビジュアルスタイルになっている。
これは近年のレトロ志向な作品では比較的採用されるケースの増えてきているものとなっている。
キャラクターはドットとしては頭身が高めであり、非常に良く動くのも魅力的だ。
特に戦闘では専用モーションによる攻撃など見応えのあるダイナミックなものになっている。
また、主人公達の拠点となる街や自室は外観を変更できるようにもなるなどユーザーの好みを反映できる点は嬉しい要素だ。

 

サウンド

楽曲達も物語の彩度を上げている。
作中の楽曲は拠点を発展させることで聴くことが出来るようにもなる新設設計だ。
楽曲の使いまわしは余りないのだがイントロからカッコいいものも多いため、聴き返した際に「あ!この曲か!!」となりやすいのも非常に良くできた楽曲だと言えるだろう。
筆者が好きな曲もいくらか紹介しておこう。

メインテーマともいえる「百英雄伝~英雄達の出立」

牧歌的な印象を覚える「エルンサイド」「村」「本拠街~発展」「恵みの丘」

壮大で力強い「本拠街~繁栄」「シャークシップ」

神秘性を感じさせる「森」「ルーン遺跡」

笛の音がカッコいい通常戦闘曲「バトル1」「バトル2」

サウンド面ではボイス量がとにかく凄い点は特筆すべきものとして記載しておきたい。
「ストーリー」の項でも記載済みではあるが、メインストーリーと直接関係のないキャラクターを連れて行ってもボイス付きのセリフが用意されていたり、劇場ではキャラクターの劇中劇がフルボイスで堪能できたりと目を見張るものがある。

 

総評

百英雄伝は印象的なクラシックスタイルのビジュアルとストーリーを楽しむ作品だ。

個性の強いキャラクター達は魅力的で、メインストーリーに必須ではないキャラクターであっても一言二言ながらしっかりとセリフが用意されているなど群像劇として恥じない作り込みでプレイしていて嬉しい要素だ。

しかし、ゲームプレイに関しては全ての面においてクラシックを通り越してレガシーだ。
数多くの種類のゲームプレイを用意しているものの、そのどれもが足し算と引き算と運だけで成り立っており、プレイヤーが工夫できる余地が少なくやり応えに欠けている。
メインストーリー上の必須のインゲーム要素はストーリー演出も交えたものがあり熱くさせてくれる部分はあるが、体験の8割を占めるそれ以外の部分は非常に作業感が強い。

 

外部記事

[インタビュー]「百英雄伝」の完成度や,アンケートで選ばれなかったDLCのシナリオはどうなる? 気になるところを聞いた

村山吉隆氏が死去。「幻想水滸伝」シリーズや「百英雄伝」などを手がけたゲームクリエイター

「幻想水滸伝」を超える開発規模!戦争における人々の感情を描く大作RPG『百英雄伝』の開発者が語る

『百英雄伝』の開発陣が「頭がおかしいほどの作り込み」を語る――Switch版やクリア時間についても言及

人間に焦点を当てた戦争群像劇RPG『百英雄伝』開発者インタビュー - YouTube

幻想水滸伝の魂を継ぐ『百英雄伝』クリエイターインタビュー - YouTube

【TGS2023】100人以上の英雄が全員活躍!『幻想水滸伝』元クリエイターによる新作JRPG『百英雄伝』試遊レポ&インタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

【インタビュー】100人以上の仲間と共に、激動の歴史の中で主人公たちの理想が試される王道JRPG「百英雄伝」インタビュー - GAME Watch

【レビュー】LOST EPIC

それは神殺しの騎士たちの物語

LOST EPIC(以下、LE)はインディーシーンで採用例の多いソウルライク x メトロイドヴァニアタイプのARPGだ。
筆者がLEを購入したのはほぼ偶然のようなもので、発売日頃にショップを除いた際にラインナップされていたために購入したという浅い経緯である。

なお、筆者がプレイしたのはパッケージ版が発売されるよりも以前のVersion1.02時点のものであるため何かしら修正や調整が行われている可能性がある点は留意されたい。

 

LOST EPIC -Switch 【初回封入特典】ステッカー 封入

LOST EPIC -Switch 【初回封入特典】ステッカー 封入

  • 発売日:2024/8/8
  • メディア:Video Game
LOST EPIC -PS5 【初回封入特典】ステッカー 封入

LOST EPIC -PS5 【初回封入特典】ステッカー 封入

  • 発売日:2024/8/8
  • メディア:Video Game

 

ストーリー

物語もダークソウルから大きな影響を受けている

LEの物語の大筋は以下の通りだ。
かつて大戦争ののち、古き神がいなくなり新しき神々によって統治された。
新しき神々に寵愛を受けた神民という存在は栄華を享受していたが、一方でそうではない殲民達は死の淵に立っていた。
その滅びに抗うべく新しき神々を打ち倒す「騎士」という存在が生まれたという。
騎士であるプレイヤーは神域へと赴き、神々を打ち倒すというのが大筋のストーリーとなる。

見た目こそポップな雰囲気はあるが、ストーリーはソウルシリーズからの影響の強いダークファンタジーなものになっている。
サブクエストも用意されており、サブクエストにもちょっとしたストーリーが付随しているが、こちらもやや暗めの内容になっている事が多い。
物語的なテキストはソウルシリーズ同様に最低限度程度になっており、最終盤になると世界の成り立ちに関する会話がガッツリと出てくるが、それ以外は非常に簡素なテキストだけに留めて設定を”匂わせ”する程度に統一している。

物語面で気になる点があるとすればソウルシリーズからの影響が強すぎる事だろう。
セリフの言い回しも、情報の匂わせ方も余りにもソウルシリーズ過ぎるのだ。
絵柄にはポップな雰囲気もあるだけに、もう少しそれを活かしたオリジナリティーがあっても良かったように感じられる。

 

システム

ちょっとしたアバター作成が可能だ

LEでは簡易的なアバターキャラクターの選択が行える。
また、実際にゲームプレイが開始されれば、装備武器の見た目がしっかりと反映されるのはもちろん、見た目にアクセントを付けるアクセサリーも用意されている。
これによって仮面を付けられたりと自分好みの見た目に寄せられるだろう。

爽快さもある軽快なアクションは魅力だ

LEのゲームプレイはメトロイドヴァニアや2Dソウルライクの系譜の作風であるというとイメージしやすいだろう。
横スクロールアクションが基本となっており、スタミナ消費する事で攻撃や回避などが行えるものとなっている。
また、敵にはゲージが設定されており、攻撃する事で溜まっていく。
このゲージが最大まで溜まると大ダメージを与える事が可能になるような仕組みもあるため積極的に攻撃をしていく事を推奨しているのは良い導線だ。

攻撃方法は通常攻撃とシンギと言われるスキルがある。
シンギは最大で5つ設定可能で、一度使用すると再発動までクールタイムが必要となるが、非常に強力なシンギを習得・活用できれば攻略を大きく手助けしてくれるためゲームプレイへの影響力は高いものである。
また、このシンギの一部には敵の大技に対してカウンターのように与える事で大ダメージ与えつつゲージも大きく蓄積できるものがあるほか、回復やバフが行えるものもあり、設定するシンギは色々な役割を持てるようにしておくと良いだろう。

この戦闘の仕組みは全体的に非常に軽快かつ爽快感のあるものに仕上がっている。
しかし、シンギ関連で困った点がいくつかある事も注意しておきたい。
まず大きなものとしてはシンギのクールタイム完了が視覚的にも、あるいはSEによる音でも演出されないのでわかりにくい点だ。
確かにシンギ使用後にはアイコンに再使用を表すゲージが溜まっていくような表現は行われている。
しかし、「完全にクールタイムが終わっているのか、まだ僅かにリキャストが完了していないのか」という微妙な状況が非常にわかりにくい表現になっているのである。
「よし!ここでシンギを出そう!」と思ったはいいものの、実はまだクールタイムが完了していなかったという事が少なくないのである。
ここは光るなり、音が出るなり、もう少し主張があって良かったのではないだろうか。
次にシンギを立て続けに使用する場合に向きを変更しにいくいというのが痒い所に手が届かない時がある。
フィールドでは敵に囲まれるケースも少なくなく、そんな時には前方にシンギを繰り出した後に、後方に別のシンギを…という事がしたくなるのだが、立て続けに発動させる場合には同一方向にしか出せないか、あるいは猶予フレームが短いためか出しにくいようなのだ。
これはもう少し取り回しが良くなるような調整が欲しい所である。

キャラクタービルドが難易度を大きく左右する

LEではキャラクター強化はいくつかの方法で可能だ。

まず、武器・防具の作成と強化である。
敵がドロップした素材を用いて武器を生産したりアップグレードさせることができる。
素材には能力が付与されている場合があり、そのような素材を使って作成すると武器には麻痺などの追加効果が付与できる。
この追加効果はボス敵にも有効に作用であるのは嬉しい調整だ。
そのため積極的に付与させるのが吉だろう。

また、作成した武器には前述したスキルに相当するシンギが設定されている。
設定されているシンギはその武器を装備して一定量使用する事で獲得でき、同一の武器種であれば別の武器に持ち替えても使用できるようになる。
そして、シンギは特定の2種類を融合させて奥義に変化されることができるようになる。

レベルアップ時にはスキルポイントが与えられる。
このスキルポイントを割り振る事でキャラクターの基礎能力値が上昇する。
恩恵のある能力値は使う武器種によっても異なってくるので、どの能力値を上げていくかはある程度は絞っておいた方が良いだろう。

ダンジョンは配色にやや難あり

メトロイドヴァニア的なダンジョン構造で、ギミックなどを攻略する事で踏破したり、ショートカットが開通したりする。
そして、一定のチェックポイントまで到達できればファストトラベルの場所として活用できるようにもなる。
また、終盤になると新しい能力によってフィールドを再探索するような仕組みも設けてあり、限られたリソースでボリュームを出せる工夫も感じられる良い作りである。

ギミックの難易度は理不尽なものはないがダンジョンは配色がやや甘いのは気にになるポイントだ。
例えば、上図を参考にして頂けると少しわかるかも知れないが「上に乗れる判定のある地形なのか」がパッと見た限りで若干わかりにくい。
「ここは上には乗れないただの背景です」と言われても納得してしまうような際どい色使いなのだ。
この辺りはもっと明確にコントラストを付けるなど行ける場所と行けない場所を区切ったデザインが欲しい。

ミニゲームの王様である釣りもある

ダンジョン内の水辺の要所では釣りのミニゲームを遊ぶことも可能だ。
釣りあげた魚はそのサイズがオンライン上でランキングされる。
非常にささやかなミニゲームではあるがまったりと気分転換はできるだろう。

 

グラフィック

鮮やかなビジュアル

LEのビジュアルスタイルは非常に色彩が鮮やかだ。
ダークファンタジーな世界観ではあるものの、多彩な色合いによって世界が表現されている。
ただし、終盤に差し掛かるととあるシステムによって今までに見えなかった世界を知覚して世界を再攻略していくようなフェーズになるのだが、色合いがほとんどなくなってしまう事になりせっかくの鮮やかさがなくなってしまうのは勿体ない。

キャラクターは関節ベースでキビキビと軽快に動作する。
装備している武器も見た目がしっかりと反映されるほか、キャラクターに衣装アイテムを装備させてより個性を付ける事も出来る。
現代で「コレはあって欲しい」という要素はしっかりと用意されている。

 

サウンド

道中に長く聞くことになる「In to The Sanctum」「God Slaying Knights」「Sacred Corridor Ⅰ~Ⅲ」などは特に印象的だ。
収録楽曲はダークファンタジー感のテイストがあるものが多く、荘厳で威圧感のあるものが揃っている。

セリフ自体が根本的にそう多くはないがボイスがしっかりと用意されているほか、環境に応じたエフェクトが音声に乗るなどの細かな配慮もされている。

 

総評

LOST EPICはソウルライク&メトロイドヴァニアの基本形を堅実にゲームにした作品だ。

軽快なアクションと武器や技によって異なる立ち回りを楽しめるうえに、メトロイドヴァニアらしい探索要素もしっかりとあるためゲームプレイ部分の満足感はしっかりと築き上げられている。

ただし、ソウルライクのような仕組みは見受けられるが普通に遊ぶ分には高難易度という程ではないため、そこの達成感を一番に求めている場合には少しミスマッチかも知れない。
また、ポップな見た目や色彩だが、ストーリーはソウルシリーズの影響が強すぎるように感じられ本作固有の個性が薄いのは勿体ない。

 

外部記事

『LOST EPIC』小村一生インタビュー:壮絶苛烈なゲーム人生