【レビュー】Assassin's Creed Origins

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その面白さはオリジンだろうか

2017年はビデオゲームの歴史上において特筆するべき年であった。

各メーカーのアイコンとなるようなタイトルが発売され、またその品質はどれも高かった。
それはAssassin's Creed Origins(以下、アサクリオリジンズ)においても同様だ。
筆者はアサシンクリードシリーズであればAssassin's Creed 4 Black Flagが最も好きだった。今作はそれに匹敵する…超えたと表現しても決して否定しない。それくらいの面白さを誇る一作となっていた。

しかし、面白いと感じるのと同時に「これはアサシンクリードだから可能な面白さなのだろうか」という疑問もあった。

 

 

ストーリー

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クレオパトラカエサルが登場する

アサシンクリードシリーズは特定の歴史上の出来事をテーマにストーリーが構成されている。
今作、アサクリオリジンズであれば「古代エジプト」が舞台だ。年代的には紀元前50年前後くらいの出来事である。

クレオパトラプトレマイオスカエサルと言った有名な実在した人物も登場する。
サブクエストにおいては古代エジプトの文化を知る事ができるものも用意されており、この辺りは手が込んでいると感じられた。

また、エジプトの象徴ともいえるピラミッドではなんと開発時点では存在が確認されていなかった内部空間が既に実装済みであったという事態まで起きている。この辺りは開発陣の判断力と調査力の凄さが垣間見えた瞬間であると言えるだろう。

実際にプレイヤーが体験する事になるストーリーの話をしていこう。
本作のストーリーは”復讐劇”となっている。ストーリーは全体的に良くまとまっている印象を受けたし、ストーリーテリングは抜群とは言わないが特に問題がある感じでは無い。日本語版はローカライズも良く、演者の演技も良い。

アサクリシリーズでは恒例となっていた”悪名高き”現代パートが、今作では非常に少なくなっているのは筆者としては好印象だ。
今作の現代パートでは同じUBISOFTが開発・販売しているウォッチドッグスのエイデンらしき人物もほんの少しだけ情報がある(アサクリシリーズとウォッチドッグスシリーズは同一世界の設定)など別作品を知っているとニヤリとするポイントもある事も見逃せない。

しかし、ストーリーに問題…と言うほどのものではないが少し何とも言い難い気持ちになったシーンはあった。

まずはストーリーの導入(プレイヤーへの動機付け)だ。
導入のオーソドックスな手法は”マイナスから始まる”と言うものがある。つまり、「何かを奪われること」と同義だ。本作もその一般的な構図の例外ではない。
主人公バエクは自身の子供であるケムが殺されてしまうのだ。
これがバエクが”復讐”を行う動機であり、またプレイヤーがゲーム内において”明らかな犯罪”を行使する事への理由付け(または免罪符)となっている。
この設定自体に不満があるわけではないが、年齢を重ねれば重ねるほど家族などへの不幸に対して抵抗感・拒否反応が強くなってしまう(The Last of Usの冒頭にしても導入手法は全く同様だし、かなり心にダメージがある)。
また、犯罪の免罪符をこのような形で描くのは余りにも愚直すぎるストーリーテリングであるとも言えるだろう。奇をてらう必要は無いが、工夫は欲しかった所だ。

他にもある。それはカエサルの”あの有名なシーン”だ。
筆者は歴史が大好物であるが、例え歴史好きでなかったとしてもカエサルの”名言”は聞いたことがあるだろうし、そもそも学校でも習うのではないだろうか。
だが、いざ実際にゲームプレイにおいてそれらしいシーン突入すると「(あれ…?これ”あのセリフ”を言うのでは…?)」と心の中で先にストーリーのオチが読めてしまうのだ。いや、この場合”次に何を言うかまで読めてしまうのだ”。まるでジョセフ・ジョースターが如く…。
そして実際にカエサルからそのセリフが発せられると…まぁなんとも微妙な心境になった。それは例えるならベテラン芸人の鉄板ネタや伝統芸能でも見ているかのような気分だ。
有名過ぎるものをストーリーとして組み込むのは慎重になった方が良いのかも知れない。

 

システム

アサシンクリードシリーズは毎年発売されるのが恒例となっていた。このオリジンズまでは。

これまでのアサシンクリードシリーズはマンネリ化が進み、そのゲームプレイはレガシーなものとなっていた感は否めない。そんな中で約2年間のブランクを開けて登場した本作(開発期間が2年間という意味ではない)はアサシンクリードシリーズをモダナイズさせる事を1つの目標として制作されたようだ。
その目標は間違いなく達成されたであろう。

だが、筆者はアサクリオリジンズをプレイしていて疑問があったのだ。
「これはアサシンクリードというコンテンツが成し得た面白さなのだろうか」と。

アサクリオリジンズはエルダースクロールズ(以下、TES)シリーズやウィッチャーシリーズから大きな影響を受けているとされる。それはゲームを少しプレイすれば感じる事でもある。TESなどに代表されるオープンワールドを採用したRPGの要素がふんだんに実装されているからだ。
レベルアップやパークの概念があるし、敵を倒せば敵から武器が手に入る。
こういったゲームプレイは確かに面白い。だが、それは先人達の後追いをしている印象しか筆者にはなかったのだ。
アサシンクリードシリーズで最も面白いと言っても過言ではない本作が、アサシンクリード固有の面白さを提供できていないのは痛烈な皮肉にも思えた。

少々キツい表現をしてしまったが、本作が面白い事には間違いはない。
もしも、購入していないのであれば決して後悔する事のない一作であろう。特に歴史に興味があればより楽しめるだろう。

 

潜入 / バトル

主人公バエクを操作して敵エリアに侵入する際には「見つからないように敵を排除していく」ことがプレイヤーの基本的な行動となるだろう。

今作はレベルの概念があるため、高レベルの敵が駐屯しているエリアに侵入するのはリスクが高い。
要は見つかったら…囲まれたら勝てないのだ(高レベルともなるとワンパンないし2撃でお陀仏もあり得る)。ここがまず過去作と大きく違うプレイフィールだ。
過去作であれば、アサシンブレードを筆頭に様々な武器を駆使して見つかる前から敵を一撃で排除が可能であったし、例え見つかってもバトルに関しては”容易なパリィゲー”でありボタンさえ間違えずに押せれば負けることはほぼ無いと断言できるものであった。
しかし今作の場合、敵が自分よりも高いレベルなら一撃で葬り去る手段が全くないのだ。例えば、アサシンブレード(本作では”ヒドゥンブレード”だが、知名度を考慮してここではアサシンブレードと呼称する)を使用しても敵は死なないのである。
そうなると必然的に勝てるレベル帯のところへと進行/侵入していく事になる。…と言った具合のレベルデザインが本作ではなされている。
少々長く書いたが、これもオープンワールドRPGにおいては一般的な手法だろう。また、このレベルデザインや難易度は設定から変更可能であるため難しいと感じた場合には変更するのも良いだろう。

では次が本題となるが、「同等レベルのエリアに侵入する際のシーケンスはどうなるのか」だ。同等レベルの敵であればアサシンブレードおよび弓矢により敵を一撃で葬り去る事が可能だ。
だが、敵に見つかってしまい囲まれるような状況にでもなると突破するのは難しい。
同格の相手で戦えるのはせいぜい1~2人で、それ以上の敵がまだエリアにいるのであればほとぼりが冷めるまで身を潜めていた方が安全だ。
以上の事からプレイヤーは物陰に隠れながら排除可能な敵をどんどん潰していくのが安全な攻略となるだろう。筆者は基本的にそのように進めていった。
「隠れながら敵を排除するオープンワールド」となるとMGSVを彷彿させるかも知れないが、MGSVと比べてしまうと敵AIの索敵は基本的にガバガバだ(過去作をプレイしているならばそれらと同等と思っても良い)。逆に言えば単純であるが故に把握しやすいというゲームらしい側面もあるだろう。
ステルスアクションの面白さを知る導入としても良い作品なのかも知れない。

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遠距離武器と言うのはゲームバランスにおいて非常に立ち位置が難しい

…と、ここまでで大きな疑問がある。
それはゲームプレイ上の単純な話で「アサシンブレードよりも弓矢の方が圧倒的に有用」である点だ。
当然である。アサシンブレードは見つかるリスクを負いながら敵を排除する武器であるにも関わらず、弓矢は敵の索敵外から敵の排除が可能なローリスクハイリターンの武器なのだ。
もしもこれが銃器であれば"遠距離武器だが音でバレる"という要素になっただろうが、弓矢では完全にアサシンブレードの上位互換なのだ。
本作はアサシン教団の起源を知る物語である。そしてアサシンを象徴する暗器となっていったアサシンブレード。だがプレイしている限りでは(宗教的・思想的な設定を除けば)アサシンブレードではなく、バエクの弓術の方がアサシン教団に受け継がれるべき象徴的な存在なのでは無いかと思えて仕方ない。
アサクリオリジンズのゲームプレイにおいては「伝説的なアサシンブレード」をもっと強力な存在として描いても良かったのでは無いかと筆者は思う。
例えば前述した高レベル帯だ。弓矢ですらまともなダメージが与えられない高レベル帯であってもアサシンブレードであれば一撃で屠る事ができる…「見つかる危険を冒して、高レベル帯すら排除できるリターンを得る」という極端なリスクとリターンがあっても良かったのでは無いかと思うのだ。
それが出来るのであれば(ゲーム内の設定とは言え)アサシンブレードが後世に残っていった事に対してストーリーテリングとしての説得力がある。

 

グラフィック

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近年増えているフォトモードは非常にありがたい

アサクリオリジンズのグラフィックスは基本的に美麗だ。
”システム”の項においては「ゲームプレイに独自性が無い」と表現したが、古代エジプトを舞台としたフォトリアルなグラフィックに関しては間違いなく”オリジン”だ。
また、2018/02/20の無料アップデートにより「Discovery Tour(ディスカバリーツアー)」という戦闘のない、古代エジプトのガイド付きモードが登場するのも興味深い点だ。
これによってよりじっくりと古代エジプトの建造物も見る事が出来るだろう。

街並みや遠方に移る地形、光の散乱や反射表現などどれも美しい。
リアルな汚さを感じさせる川など水関連の表現も好印象だ。
筆者はゲームで動画を撮るよりもスクリーンショットを撮ることが好きなためフォトモードが実装されているのは非常にありがたい事だ。

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炎のエフェクトは美しいが、燃えている松明自体の炎は何故か明らかに粗い

しかし、グラフィック面で気になる点もいくつかある。
まずは”炎”だ。上図を観て頂ければわかりやすいが、炎のエフェクト自体は美しいにも関わらず松明で燃えている炎はジャギー感が明確にわかる程に粗いのだ。
筆者の環境は通常のPS4であるためPS4 Proのエンハンスドな環境ならこの辺りも改善されているのかも知れないが、少なくともフォトリアルなゲームにおいてはこういった粗さは悪目立ちしてしまう印象を受けた。

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今にも殺人でも犯しそうなヤバい目つきをしている

他にもある。NPC達の”視線”だ。こちらも上図を参照して欲しい。
これは筆者がフォトモードで撮影を行った限りでは”偶然”ではない。高確率でNPC達の視線が上図のような”殺人鬼の眼”をしているのだ。スクショ勢である筆者としては、この事態は困ったものでNPCを至近距離で撮影する事は封印したほどだ。
これは明らかに瞳の可動範囲が一線を超え過ぎていると言えるだろう。

 

サウンド

ゲーム内BGMに関してはエジプトを彷彿とさせるような旋律であった事は確かであるし、近年はかなり増えている操作や状況に応じて変化する音楽が採用されているのだが、これが正直言って余り印象が無い。
この傾向はアサクリオリジンズに限った話では無い。
オープンワールドを採用したゲームでは「自然さ」を求める傾向があり、BGMもそれに引きずられる形となり印象に残りにくくなっているように感じる。

 

総評

アサシンクリード オリジンズは、マンネリ化と古臭さに浸食されたアサシンクリードと言うタイトルをモダンな形にまで昇華させている。
シリーズにとって偉大な立ち位置の作品だ。

ゲームとしても非常にバランス良く仕上がっており、数多くの名作が群雄割拠した2017年においても決して埋もれる事なく光を放っていた一作と言える。

欲を言えば、プレイフィールに関してはまだモダナイズに留まっておりアサシンクリード固有の色を出すには至っていない事だろう。
しかし、モダナイズに成功したからこそ次回作にも大きな期待も持てる一作になっている。
しばらくはオリジンズ関連の開発に注力していくようだが、UBISOFTには今後も発売ペースよりもクオリティを重視した開発を是非とも行っていただきたい。

 

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【レビュー】ZOIDS VS.Ⅲ

 

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バトルは常に真剣勝負。手加減はしないぞ。

筆者はロボットものの作品の中ではZOIDSシリーズが一番好きだ(正確にはZOIDSはロボットでは無いのだが)。

筆者がZOIDSに出会ったのは小学生の頃だ。いわゆる無印のZOIDSのアニメを観てその作品が大好きになった(これで大体の年齢はバレるだろう)。
ボーイミーツガールのストーリー。今見ても全く見劣りしないレベルの3Dモデリングで描かれたZOIDSは恐竜や動物をモチーフにしており、デザインは渋いながらもどれもが好みだった。
アニメを観てからと言うもの筆者はZOIDSを自分で操作できるゲームが欲しくてたまらなかったのだ。
そんな中で登場したのがZOIDS VS.シリーズだったし、そもそも筆者がゲームキューブを買うきっかけ自体が初代のZOIDS VS.だった。
今回はそんな筆者の思い出が詰まったシリーズの最終作となった"ZOIDS VS.Ⅲ"をレビューしよう。

 

ZOIDS VSIII

ZOIDS VSIII

  • 発売日: 2004/09/30
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

本作にはオリジナルストーリーが楽しめるミッションモードが搭載されている。

ストーリーはアニメ”ゾイド フューザーズ”をベースに作られており、アニメに登場したキャラクターがシナリオに登場する。
とは言え、ストーリー自体の完成度はそこまで高いものを期待するべきでは無いだろう(ストーリーの完成度はVSシリーズの過去作の方が良かったと言える)。

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チュートリアルがしっかりと入っている

ミッションモードではZOIDSを操作する際のチュートリアルが用意されている。
チュートリアルは飛ばす事も可能なので過去作をプレイしているなら飛ばしても大きな問題にはならない。 

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ストーリーは分岐が存在する

ストーリーには分岐点が存在し、それによってステージなども変更される。
分岐ルートによって解放される機体も存在するため両方ともクリアしておくのが無難だ。

システム

ZOIDS VSシリーズおよびZOIDS VSⅢにて追加されたシステム面を中心にまとめよう。

 

バトル

ZOIDS VSシリーズはバトルフィールド上に存在する敵勢力を全て排除する事が基本的な勝利条件だ(後述するミッションモードでは例外もある)。
自機が撃墜されればリスポーンされる事なく敗北となるかなり古典的なルールだ(そもそも古いため当たり前だが)。

また本作の新要素として”飛行ゾイド”の追加がある。
プテラスやレドラー、ストームソーダーと言った機体がプレイアブルとなっているのが大きな特徴となっている。
しかし、飛行ゾイドが追加された事によって大きな問題が発生している。
それは素人でもプレイせずに思い浮かぶ問題点ではあるのだが、飛行ゾイド相手では攻撃がなかなか当てられないのだ。
過去作と比べるとミサイル系のホーミングが強くなっているとは言え、それでも攻撃を当てるのはかなり難しいと言わざるを得ない。
では、飛行ゾイドは圧倒的に有利なのかと言うとそういう訳ではない。
飛行ゾイドの場合、所持できる弾数が少なく弾切れを起こしやすいのだ。
そのため、「陸上ゾイドvs飛行ゾイド」や「飛行ゾイドvs飛行ゾイド」で戦うとお互いに有効な攻撃手段が無く、長期戦となる事態になってしまう。
飛行ゾイドにも素晴らしい機体が存在するのは確かだが、ゲームとして落とし込めていると言うレベルには至っていないのが現実だ。

弾切れと上述したが、本シリーズでは”弾切れ”が存在する事も欠点としても良いだろう。
ゾイドの射撃武器には弾数制限があり、バトル中にそれを回復する手段は無い。
通常のバトルにおいては滅多に尽きる事は無いのだが、弾数が豊富な事で射撃にしか頼らなくなってしまうし、連射速度は武器により差異はあってもリコイルは無いため無駄撃ちに対してのデメリットがほとんど無いのだ。
また、ミッションモードの特定のステージにおいては逆に弾切れを起こすケースもある。そうなると今度は途端に攻撃手段が無くなりジリ貧化してしまう。
弾数に関してはリキャスト式(チャージ式)にするか、弾倉を補充する方法を導入した方が良かったのでは無いかと思う。

また、そもそもの大きな問題点として本作のゲームバランスが機体性能に大きく依存している点が挙げられる。
いわゆる”キャラゲー”的な立ち位置にいる本作にとっては重大な欠陥だ。
これは明らかに強くないモルガやカノントータスと言った機体に光が当たる事がほぼ無いという事に直結する。ゾイドと言う”キャラクター”にフォーカスを当てているゲームであるならば、この辺りの設計には工夫が欲しかったところだ。
例えば近年では一般的な「コスト制」にし、
強力なゾイドはコストが高く2回落ちると敗北だが、
貧弱なゾイドだと5回まで落ちても大丈夫
…などだ。
かなり大雑把な表現となってしまったが、これがあるだけでも違うだろう。

ここからは筆者の浅知恵による改善案(妄想&当時としてはオーバーテクノロジー)になって恐縮なのだが、
ゾイドという作品においては機体に明確なロール(役割)が割り当てられている事が多い。
例えば前述したカノントータスなどは良い例だろう。見た目からして近距離戦は不得手だが、遠距離砲撃において絶大なパワーがある事は明らかな機体だ。
このようなロール的な要素をもっと活かした方向性に活路があるように思えるのだ。
そのためゾイドによる対戦を面白くするにはロールが意味を成さない1vs1ではダメであり、最低でも4vs4くらいの規模は必要になると感じる。
機体に対してロールを与える事で差別化がしやすく、またカスタマイズも更に重要度が増すのでは無いかと思う。
また、ルールに関しては多様なロールが共存しやすいタワーディフェンスやMOBA的なアクションゲームにするのが良いのでは無いかと思っているが、ここは議論の余地はあるだろう。
ゾイドではMOBAそのものである「ZOIDS FIELD OF REBELLION」が存在するのだが、筆者としてはゾイドのアクションゲームが出てくれれば嬉しい。

ここまでの記載内容では本作が至らない作品のように思えて来るだろう。
しかし、それは誤りだ。
確かに戦う上でのルールの部分には問題は多い。だが、実際にゾイドを操作するゲームプレイ部分は非常に快適で触っていて楽しいのだ。
直感的で手に馴染むようなキビキビとしたスムーズな操作性、機体や武装によって全く異なる個性などは特筆すべきポイントだ。
後述する「ステップ」や「スライディングターン」などもこの操作性を高めてくれている要素だ。
これらの手触りの良さは登場する様々な機体に対して「この機体はどういう操作感なんだろう」という期待感を高めてくれるし、実際に使ってみれば操作性が良かったり、個性が強かったりする。
更に同様に後述する武装を変更するなどの「カスタマイズ」の要素もあるため、自分好みの機体に出来る点も素晴らしい。
ゾイドを自分で操作して楽しみたい」「自分だけのカスタマイズをしたい」といったゾイドファンやロボットゲームファンのニーズは十分に満たした作品に仕上がっている。

 

ステップ

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回避しながら射撃をするのは必須のテクニックとなる

ステップは主に緊急回避として使用されるアクションだ。
ステップの性能は機体によって異なり、低く短く飛ぶ機体から長い距離を飛ぶ機体まで様々だ。
このステップの性能によって機体の回避性能は全く変わってくる。例え走行速度が遅くともステップ性能が良ければ高い回避能力にも期待ができる。
また、ステップは射撃照準のブレが余り無いため攻撃面でも有用だ。
そのためステップ性能は攻防両面において非常に重要なアクションとなる。

 

スライディングターン

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スライディング中は照準がブレない

スライディングターンはZOIDS VSⅢより導入されたシステムだ。
走行中に進行方向とは逆方向にスティックを倒す事で発動する。
逃げから一転、一気に敵の方に方向転換する事に使用するのが一般的だが、特にライガー系など走行中の上下のブレが激しい機体の場合には射撃時の砲身を安定させるために使用するケースもあるだろう。

 

格闘

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見栄えのある格闘モーションだが当てにくく、隙も大きく、威力も余り無い

ZOIDS VSシリーズにおいて、ほとんど全ての機体が格闘攻撃は(ある程度のホーミングはしてくれるものの)当てにくく、また隙が大きい。にも関わらず、威力もたいして無いのだ(一部の機体は凶悪とも言える威力を持っているのだが)。
モーションは基本的にアニメ準拠であったり、機体設定のものを使用しているため好感は持てるのだが、「当たらない、隙がデカい、威力が小さい」という負の三拍子が揃っている状態ではゲームとして機能しているとは言い難い。

なお、ジャンプ状態から格闘を発動させる事もできる。
こちらの場合は隙が少なく、またジャンプ距離に応じて攻撃距離も伸ばす事ができるため実戦的な性能に思えるが、残念ながらホーミングが全く無いため地上格闘よりも数十倍は当てにくい。

 

EX

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EXは簡単に言えば必殺技だ

本シリーズにはEX技と言う必殺技のようなものがある。
これはHPゲージが3分の1程になった際に初めて使用可能になる技で、ゾイドによって使用可能な技が異なる。

しかし、このEX技にも問題点は山積みだ。
まず発動させるためにはAボタンとXボタンを同時押ししなくてはならないのだが、条件はそれだけでなく「機体が”完全に静止”している状態」で無くてはならないのだ。
少しでも動いていると格闘技が発動したりと誤操作しやすい。
そのため、戦闘中に発動可能な状態にさせるのはかなり困難だ。

また、発動中にも問題がある。
発動中は移動系(走行やステップ)と言った操作しか受け付けない事だ。
例えば対戦中に相手がEXを発動した場合、それはEX以外の技が放たれる可能性が0になる事を意味している。
その上、発動中は機体が発光するため非常にわかりやすい。
これでは読み合いにおいては完全に後手に回ってしまう事は避けられない。

更に発動時にも問題がある。
それは当てることの難しさや後隙が大きすぎる点だ。
ザウラー系(上図の凱龍輝も同様)などに代表される荷電粒子砲など、EXが射撃攻撃である機体はまだマシな方だが、格闘系のEX技はとにかく当てにくく隙が大きい。
射撃攻撃も隙は大きいのだが、近距離で発動させるような事は無いため問題は無視する事もできる。
しかし、格闘攻撃ともなると敵に接近しなくてはならないため、自然とリスクの度合いが高まるのだ。
その上、通常の格闘攻撃にあるようなホーミング補正も全く無いため命中精度も低い。
であるにも関わらず後隙は格闘攻撃と最低同程度は存在する。
そのため、威力はあるものの、そのリターンよりもリスクの方が圧倒的に強い要素になってしまっている。

これらの要素から言って余程の状況でない限りはEX技を使用する事は実運用上無いと言える。
この辺りの仕様に関しても検討不足と言う他ないだろう。

 

カスタマイズ 

機体数は30ほどあり、装着可能な武装は機体毎に異なる(同じ武装なら共用可能)。
また、パイロットによっても性能が若干ながら変化する。
性能には影響しないがプリセット式ながらカラーリングも変更可能だ。
それらの中から自分好み機体やカスタマイズを見つけていくのは凄く楽しめる。

機体性能では主にHPや速度、装甲、索敵範囲、ロックオン距離などがある。
上述しているが数値でわかるカタログスペック以外にも、走行の仕方やステップ性能が異なるため操作感やカスタマイズは変わるだろう。
なお、リソースの問題と思われるがカラーリングのバリエーションは前作と比べると少なくなってしまっているのは少々残念だ。

パイロット性能では格闘攻撃、射撃攻撃、旋回性能などに補正を与えてくれる。
こちらはオプションに近いが、キャラクターによってはスペックが明らかに弱く、選択する意味がないケースも多い。
パイロットのスペックに差を生み出すのであれば、個性を生み出す工夫が欲しい所だった。それが難しいのであればパイロットのパラメーターを無しにするのもアリとは言えるが…筆者としてはパイロットにも性能がある方が嬉しい所だったりする。

武装性能は威力や弾数だけでなく、射角や弾速などもそれぞれ異なるため色々と試してみるのが良いだろう。

全体的に機体・武装性能のバランスに関しては余り良いとは言えないが、カスタマイズできる以上はバランスを気にしても仕方ない面はあるだろう。
だが、機体によってはカスタマイズが余りできなかったりするケースもある。
全ての機体においてカスタマイズ性がもっと多種多様であったり、ロール(役割)的なカスタマイズが可能であれば更に良かっただろう。

 

愛機

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ケーニッヒウルフ

このタイミングくらいでしか書く事ができない予感がするので書いておこう。

筆者の愛機はケーニッヒウルフだ(カラーリングは赤)。
ケーニッヒウルフはデザイン自体も非常に好みだ(コマンドウルフのいぶし銀なデザインも好きなのだが)。
そうでなくともケーニッヒウルフZOIDS VS.シリーズにおいて非常に高性能な機体となっている。
単純に参照できるカタログスペック(HPや速度、装甲などの数値)は上の中~上の下といったレベルなのだが、ケーニッヒウルフにおいて特筆すべきなのは「回避能力」だ。
その他の高性能と言える機体などと比べるとステップの距離が長いため、ホーミング性能のあるミサイルであってもステップ1回で避けきる事が可能だ。
また、その他の機体と比べても機体の横幅が小さいため、当たり判定(ヒットボックス)自体が小さい事も回避性能を上げている。

ケーニッヒウルフはやや火力不足な面はあるのだが、主戦力はデュアルスナイパーライフルorパルスレーザーライフルとなるだろう。
デュアルスナイパーライフルはやや火力は高めだが上下左右の射角が狭く照準がややシビアだ。とは言え、ケーニッヒウルフであれば走行モーションでの上下のブレが比較的少ないため狙いやすく、選択肢に入る武装だ。これがライガー系の機体となると走行モーションの上下のブレが酷く、走りながら撃つ事は困難となるためスライディング撃ちやステップ撃ちを主体にせざるを得なくなる。
パルスレーザーライフルは上下左右の補正が強力で一切ブレずに照準を合わせてくれるため使用感は非常に良い。
しかし、威力と連射速度ではデュアルスナイパーライフルに若干劣るため、ここをどう捉えるかになるだろう。

サブウェポンはウェポンバインダー一択では無いだろか。
豊富な弾数、圧倒的なホーミング力を誇るミサイルは魅力的だ。
特にウェポンバインダーのミサイルは特殊な性質を持っている。
通常のミサイルはホーミング可能圏内に来て初めて有効に作動するが、ウェポンバインダーはロックオンさえ出来ればホーミングする。つまりロックオン距離が延びればそれだけ有効射程の長いミサイルとなるのだ。

 

ミッションモード

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本モード専用のユニークなクリア条件も存在する

ミッションモードは前述したとおり、ストーリーやチュートリアルを備えた登竜門的なモードだ。
しかし、このモードには少々問題点がある。それは難易度だ。
前作VS.Ⅱにおいては極一部のステージのみ異様な難易度の高さがあったのだが、本作においては序盤こそ何とかなるものの、中盤辺りから急激に難易度が上がるのだ。
例えば、密集せざるを得ないような狭いフィールドで通常存在しないHPに補正のかかった強力なゾイドが複数登場したりする。
そのため、ストーリー内でも色々と機体は用意されるのだが、必然的に貧弱なHP・攻撃のゾイドでは勝機はほぼ無いのだ。
そうなると必然的に一番最初に提供される超強力なレイズタイガーを使用せざるを得ない。根本的にレイズタイガーしか選択できないモードなのであれば百歩くらい譲れば頷けるデザインだが、様々な機体が選択できるチュートリアル的側面を含んだモードでもあるためマイナスと言わざるを得ない。
これは前述のとおり、機体性能に大きく依存しているルール(ゲームデザイン)によって起きている問題でもあるし、またそれを見越した(機体性能に大きく依存している事を考慮した)難易度調整やレベルデザインとなっていない事も問題だ。

 

ゾイドバトル

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機体・装備・オプションなどで自分好みのカスタマイズをしよう

ゾイドバトルは基本的にプレイヤーが最も遊ぶ事になる所謂エンドコンテンツ的なモードだ。
自分で好きな機体を購入・カスタマイズしてバトルが行える。
購入資金はバトルによって稼ぐ必要があるため、最初はバトルで軍資金を貯めるところからになるだろう。
とはいえ、強力なゾイド、強力な武装を獲得するために何週もさせられるのは苦しみを伴う。バトルのバリエーションは多くなく、どれも「敵CPUの排除」でしかないためパターンゲー(覚えゲー)に繋がりやすく飽きやすい。

当時の環境では現実的ではないためアンフェアな意見だが、現代ならばオンライン対戦・協力などで少しは対処できた問題なのだろう。

なお、本モードでカスタマイズした機体はセーブデータからロードさせる事で後述するVSモードで使用することも可能だ。
カスタマイズした機体で友達と対戦できるのは嬉しい要素だ。

 

VSモード

友達やCPUを相手に自分の好きな機体などでバトルを行うことができる。
ゾイドバトル”にてカスタマイズした機体を選択する事も可能である。

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超大型の機体を操作する事も可能だ

VSモードでは、デスザウラーやマッドサンダーと言ったカスタマイズは行えないが超大型の機体を操作する事ができる。
通常ゾイドからすれば何倍もあるスケール感・超性能を持っているので気晴らしなどで使用してみるのも良いだろう。

個人的にはアニメ版にて驚異的だった重力砲を備えたウルトラザウルスを収録して欲しかった所だ。

 

グラフィック

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ゾイド自体のモデリングやアニメーションは当時としては高水準だ

本作はGCで発売されたソフトウェアとなっているが、
機体のモデリングやアニメーションは当時の水準から考えれば非常に良くできている。 
強いて言うならば、フィールドの構造やフィールド内オブジェクトのモデリング、テクスチャなどは余り凝っていないのは残念な点だろうか。

 

サウンド

サウンド面は1度聴いただけで惚れ込むようなもの余り無いだろう。
筆者はヘビーユーザーであったため思い出にある曲はあるのだが、その補正を排除してしまえば優れた楽曲が収録されているとは言えない。
だが、サウンドテストとしてBGMが聴けるようになっている点はありがたいポイントだろう。

アニメにて登場したキャラクターのボイスが声優を変えることなく収録しているのはファンとしては嬉しいポイントだ(今では禁忌とも言えるが、当時はアニメとゲームで声優が異なる事もまだあったのだ)。

しかし、SEに関してはアニメ版のものを使用できていないのはマイナスだ。
本作でのゾイドの走行音はどれも重量感が無く、アニメ版のようなガシャンガシャンといった機械音に欠けるのはプレイしていて少々物足りない。
また、兵器の発砲音・照射音に関しても同様に迫力のあるSEにはなっていない。特に荷電粒子砲のSEは余りにもサッパリ味だ。

 

総評

ZOIDS VS.Ⅲはゾイドを自分でカスタマイズ・操作できる本作はゾイドファンであれば是非とも手に取るべき1作だ。
しかし、システム面の考慮が甘く「あのゾイドを使いたいのに弱すぎる(またその対策措置が無い)」と言うのは不満に繋がる残念なポイントだ。
だが、手触りの良い操作性や良くできた3Dモデル、モーションは特筆すべきものがあり、これがもはや途絶えてしまったシリーズではあるのは残念だ。

 

余談だが、ZOIDS VSⅢには隠しコマンドによって解放されるキャラクターや機体が存在する。手に入れたい場合にはチェックすると良いだろう。

 

外部記事

スタッフコメント

【レビュー】聖剣伝説2

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聖剣を手に少年は荒野をめざす

聖剣伝説2は筆者が初めて"ハマった"と言えるゲームだ。

ありがたいことに筆者が物心がつく前から家にはゲームハードが複数存在したし、ソフトの数もそれなりにあった。
マリオはもちろんだが、ファイナルファンタジー(以下、FF)といったタイトルもあったのだ(今にしてみればマイナーなタイトルも多かったが)。
そんな中でどうして聖剣伝説2が初めてハマったゲームであったのかも、このタイトルを語る上では重要ではないかと思う。
それは総評にて語るとして、ここではストーリーやシステムなどをレビューしていこう。

  

聖剣伝説コレクション - Switch

聖剣伝説コレクション - Switch

  • 発売日: 2017/06/01
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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導入となるこのシーンはBGMも相まって凄く悲しい気持ちとなる

聖剣伝説2のストーリーやストーリーテリングに関しては非常にオーソドックスだ。
物語の導入方法(プレイヤーに対しての動機付け)にしてもシンプルと言っていいだろう。 また、物語の導入がプレイヤーへの操作系の自然なチュートリアルとなっている点も評価できる。
タイトルとしてはナンバリングとなっているが直接的な関係性はなく、マナなど共通の単語が使用されている程度であるため、本作からプレイしても全く問題ないだろう。

聖剣伝説2の物語の導入は一般的である"マイナス"から始まる。
マイナスとは「何かを失うこと」と同義と思って貰っていい。「家族が謎の組織 / 人物に殺される」なども良くあるパターンだろう。
本作は些細なきっかけから主人公ランディが伝説の聖剣を引き抜いてしまうのだが、本来ならば誰も引き抜けないハズの聖剣を引き抜いてしまった事によって故郷の村では災いが起きる事を危惧されてしまう。最終的に住民の不安を取り除くという名目によって自分の育った村から追い出されてしまうという導入からランディの冒険が始まるのだ。
そして、勝気な女の子プリムやムードメーカー的な妖精の子ポポイといった仲間と出会い、聖剣と関連した各国の思惑に巻き込まれながらも聖剣に込められた役割を果たすために世界の各地を巡る冒険をする事になる。

ストーリー全体としては近代~現代における環境破壊に関してファンタジーを介して描いているように見受けられる。
マナなどに代表される自然と、高度な機械(魔法)文明が激突する事により世界のバランスが乱れ崩壊してしまう事を描いているのだ。
本作が発売された頃は森林伐採や大気汚染などが社会全体の問題として取り上げられていたように記憶している。
そのような現実に存在する問題に対して、ファンタジーを介してアプローチをしようとしているように捉える事ができる。

と大雑把にもストーリーの説明を行ったが、本作はストーリーがゲームプレイの邪魔をする事は無い。
そのため、(幼い筆者がそうであったように)ストーリーに込められた意味を理解せずとも楽しむことができる点はプラスだと思っても良いだろう。

ただし、昔のゲームにはよくあることだったとは言え、次にどこに行けば良いのかわからなくなる、わかっていてもそこがどこにあるのかわからない事は多いかも知れない。

また、SFC時代のストーリーは容量的・表現力的な制約によって、今のゲームからすれば簡略化されたストーリーテリングとなっている事は否めない。
もしも、「今から初めて聖剣伝説2をプレイする」という人がいればその点は注意した方が良いだろう。

 

システム 

聖剣伝説2のシステムについて記載しよう。

 

バトル

聖剣伝説2のバトルシステムはボタンを押して武器を振り、ダメージを与える事が主体となる。

武器は多様な種類が存在する。
最初に使うことになる”剣”は当然あるが、その他に槍や斧、弓…変わり種で言えばブーメランや鞭といったものもある。
バトルで活用される武器のアクションが豊富な点は魅力的だ。
これらの武器は仲間の誰にでも付け替えが可能なので自分好みの武器を使用すると良いだろう。一部ダンジョンでは特定の武器を使用したちょっとしたギミックなどもある点も面白いエッセンスだ。
武器はボタンを入力する事でいくらでも振る事が可能だが、GUIに表示されているゲージが100%にならないうちに攻撃を行ってもダメージが激減してしまうため基本的には連打は非推奨なバランスとなっている。
そのため、本作のバトルは疑似的なターン制にも近いものとなっている。

主人公であるランディ以外のメンバーに関しては魔法を使うことも可能だ。
基本的にプリムは回復魔法を覚え、ポポイは攻撃魔法を覚えていく。
だが、魔法はMPの消費があり、またMPの回復手段が少ないためザコ敵に乱発していくスタイルは推奨されないだろう。
また、敵味方共に魔法のエフェクト中は行動が行えないため、発動するとプレイのテンポが落ちてしまう点はマイナスと言えるだろう。

上記の武器や魔法には熟練度のような概念が存在する。
同じ武器・魔法を使い込めば強力な必殺技や魔法へと発展していく。
しかし、武器の必殺技に関しては使用するにあたって”溜め”が必要となりコレがかなり時間がかかる。
実用的な必殺技レベルとしてはせいぜい3~4であり、それ以上のレベルになると溜め時間が長すぎて余り使う機会が無いのは仕様として残念と言わざるを得ない。
また、魔法に関しても毎回ユーザーがプリムやポポイに指示を出さなくてはいけないのも少々大変だ。

本作ではプレイヤー以外のキャラクターはCPUによる操作となっているが、地形に引っ掛かりやすくプレイヤーの移動についてこれないケースも多々あり、チームで戦う本作においてはやや問題だ。
また、速く移動できるダッシュも存在するのだが、直線移動しか行えず曲がる際にはダッシュを解除しなくてはならないのは面倒だ。
この2点に関しては大きいものでは無いがマイナスとは言えるポイントだろう。

 

リングコマンド

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アイテムがアイコンで一覧表示されるリングコマンド

聖剣伝説2ではメニュー画面の代わりに「リングコマンド」というものが採用されている。上図のようなショップの売買でも同様だ。

このリングコマンドでは武器の変更や魔法の選択、アイテムの使用、防具の変更に至るまでを視覚的に行うことができる。
このシステムは他のRPGと比べると独自色が強いため操作系にて若干の戸惑いを覚えるかも知れないが、武器・防具・魔法・メニューといった要素がアイコンでわかるため視認性が良い。
何よりも「○○の剣」「○○アーマー」と言ったテキストだけの武器・防具・アイテムでは無く、アイコンとして表示される事のなんと嬉しいことか。

ただし、このシステムの弱点として多くのアイテムを保有する事は難しい。
現に防具に関しても所持制限が他のRPG類と比べると明らかに少ないし、回復系アイテムにしても種類が少ない。これはアイテムが多くなるとリングが一周するまでが大変になってしまう事を考慮した結果なのだろうが、収集癖のある(筆者のような)人物からすれば少々悲しい。

 

宝箱

本項は”システム”という概念からは少々逸脱してしまう内容だが大目に見て欲しい。

聖剣伝説2では「リングコマンド」の項でも述べたようにアイテムの種類が非常に少ない。そういった点から宝箱の中身が序盤から終盤に至るまで余りワクワクできないのは筆者だけでは無いだろう。
もちろん終盤になるとドロップされた宝箱からのみ入手可能な貴重なアイテムや強力な防具があるのだが、大半は序盤でも買えるような回復アイテムなのだ。
もう少しだけ敵のドロップアイテムが豪華だと嬉しかった。

 

バグ

本作のオリジナル(SFC)版にはいくつかのバグが存在する。
中にはゲームの進行が不可となる(リセットを余儀なくされる)ようなものも存在するためオリジナル版でプレイをする際には注意した方が良いかも知れない。

(とは言え、筆者が最も熱中して何周もプレイしていた小学生の時には一度も遭遇した事が無く、バグの存在を知ったのはそれから10年近く経ったネットの情報であったのは不思議なものだ。)

 

グラフィック

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美しい自然は見ていて飽きない

聖剣伝説2のドットアートは息を呑むほどに美しい。

新緑の木々、風に揺れる鮮やかな草花…どれも鮮やかで美しいと感じさせるだろう。
ドットスタイルはハードの制約が少なくなった現代でもなお作られているが、本作は今でもトップクラスに美しいように思える品質だ。

また、草花に向かって剣を振る事で刈る事ができる点も地味ながら嬉しいポイントだ。
ゼルダの伝説のようにアイテムが入手できる訳では無いが、人間やモンスター以外へのインタラクションはキャラクターがゲーム内世界に存在している事に対しての厚みが増している。

キャラクターのドット絵もとても良く出来ているが、モンスター達も敵ながらどこか可愛らしいものも多く記憶に残るようなデザインとなっている。

 

サウンド

私が言うのもおこがましいが、菊田さんの手掛けた聖剣伝説2サウンドは間違いなく史上に残るものだ。
私自身、このタイトルで好きな曲はたくさんある。

タイトル画面で流れる幻想的な「天使の怖れ」

吹き抜ける爽やかな風のような「少年は荒野をめざす」

春のように暖かく優しい「森が教えてくれたこと」

静かにして強大な悪意を感じさせる「暗黒星」

最終決戦の雰囲気を醸し出す「予感」

ボス戦のBGM「危機」「呪術師」「子午線の祀り」はどれも秀逸だ。

上記以外にも好きな曲・記憶に残っている曲はまだまだある。
普通にサウンドトラックを購入することも可能だが、Nintendo Switch版の「聖剣伝説コレクション」にはいわゆる”サウンドテスト”のような機能(ゲーム内ではミュージックモードという名称)があり、ゲーム中のBGMを全て聴くことができる。
こういう機能は嬉しい限りだ。

 

総評

聖剣伝説2は「伝説の剣を手に入れてしまった少年の物語」だ。

そのストーリーはシンプルだが決して悪いものではなく、直感的なバトルや魅力的なグラフィックとサウンドは素晴らしい。
まさに伝説的な1本だ。

筆者が聖剣伝説2にハマった時期は小学生の頃だった。
マリオもFFもその時には既に所有してプレイもしていたが、最初にハマったと感じたのは聖剣伝説2だ。

なぜマリオではなかったのか。
マリオの場合、プレイヤーの技術という点で成長する要素は存在するが、数値的(絶対的)な成長要素はほとんどなかったのだ。
つまり、聖剣伝説2では「目に見えて成長する要素」が存在することが大きかったように思う(あと、ボタンを押して剣を振る行為も魅力的だった。)

なぜFFではなかったのか。
FFの場合、数値的な成長は存在するが、ストーリーに関して凝っていたが故に非常に難解であったのだ。特に小学生の時はストーリーがまるで理解できていなかった。
また、コマンド選択式の戦闘システムにしても直感的とは言い難くイマイチ遊び方が把握できていなかった。

もちろん今にしてみればマリオもFFも非常に素晴らしい作品だと理解できるのだが、幼かった筆者には面白さを理解するだけの知識や教養が無かったのだ。
そんな私でも聖剣伝説2の直感的な操作・わかりやすいストーリーライン(それどころかストーリーを理解しなくても楽しめる)・目に見えてわかる成長要素といった要素があったおかげで楽しむことができたのだと思う。

また、個人的にはSFCのパッケージのアートに関しては最も美しいSFCソフトの1つではないかと思う。

 

余談だがPS4およびPS Vita向けに聖剣伝説2のリメイクが2018/02/15に発売している。
リメイク版を初めてプレイするか、SFC版(聖剣伝説コレクションなど含む)を初めてプレイするかで感想は変わるような気もする。

【PS4】聖剣伝説2 シークレット オブ マナ

【PS4】聖剣伝説2 シークレット オブ マナ

  • 発売日: 2018/02/15
  • メディア: Video Game
 

 


外部記事
 

オリジナルスタッフ(宣伝担当)へのインタビュー(リメイク版公式より)

オリジナルスタッフ(UIデザイナー)へのインタビュー(リメイク版公式より)

オリジナルスタッフ(ゲーム/マップデザイナー)へのインタビュー(リメイク版公式より)

#1 聖剣伝説2では誰も聴いたことがない音楽を!【菊田裕樹】【SEM TALK】 - YouTube

#2 聖剣伝説2、3は企画書がないところから制作がスタート!?【菊田裕樹】【SEM TALK】 - YouTube

【インタビュー】Nintendo Switch「聖剣伝説コレクション」インタビュー - GAME Watch

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