【レビュー】Dark Souls

 

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アドバンスドJRPG

ダークソウルは前作に当たるデモンズソウルと共に「ソウルライク」などと呼ばれるサブジャンルを確立したゲームの始祖とも言えるタイトルだ。

筆者が始めてプレイしたのは発売されてからしばらく経ってからであった。
当時はプレイ動画などでもかなり話題になっており、筆者が偶然見たときにその中世ファンタジーのような世界観やその世界の探索に魅力を感じてプレイしようと思ったのだ。

そんな中で今回は新たに発売されたダークソウル リマスターをプレイしたのでレビューをしていこうと思う。

 

DARK SOULS REMASTERED (特典なし) - PS4

DARK SOULS REMASTERED (特典なし) - PS4

  • 発売日: 2018/05/24
  • メディア: Video Game
 
DARK SOULS REMASTERED - Switch

DARK SOULS REMASTERED - Switch

  • 発売日: 2018/10/18
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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想像を掻き立てるストーリー

本作にストーリーと呼べるような要素はほとんど無いと言っても過言では無い。
本作の主人公は「不死」と呼ばれる存在と成り果てた者だ。
これは「不死(死なない)」と言う設定が「何度も死ぬ」ことになるゲームプレイに対して説得力を持たせる事に成功しているのは特徴的だ。
また、全てのボスを倒した限りでは「あー…世界観がなんとなく…」くらいしか把握できない事だろう。
このような淡泊な表現(ストーリーテリング)は短所に見えるが、これは同時に本作の大きな長所ともなっている。

本作のストーリーはどちらかと言えば「察する」ことが多い。
時にはNPCのセリフから、またある時にはアイテムに書かれているテキストから、更にまたある時にはNPCあるいは敵の動きから読み解ける。
本作には点を数多く散りばめており、その点と点を繋ぐ線をユーザーに委ねているのだ。
このような表現方法はかつての日本のRPGをどこか彷彿とさせる。
まだ容量が少なかった時代には容量不足や表現不足を補う手法として類似の表現(点を散りばめるような表現・省略の表現)が採用される・採用せざるを得なかった事が多かったように思う。
容量が増えた昨今の作品では丁寧にストーリーを説明してくれる事が多い訳だが、本作のストーリーに関してはユーザーが興味を持たない限りは一切歩み寄ってくる事は無い。
ゲームプレイ重視でストーリーに興味を持たないユーザーもいる事だろう。
そのようなユーザーにとってもプレイの妨げをしない作りとなっていると言えるし、興味を持ったユーザーは多くの考察を重ねる事だろう。

なお、ダークソウルの前作とも言えるデモンズソウルは設定こそ似ている箇所が多いものの作品としての繋がりは無く、ストーリーを理解する上での事前知識としてはほとんど不要だ。

 

システム

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絶品のアクションRPG要素とフィールド探索

ダークソウル(ソウルシリーズ全般)のゲームプレイの魅力は何と言ってもアクションRPG要素と探索要素だ。

キャラクターに好きな装備をさせたり、好きな能力値に育て上げたりするのは自分が強くなっている事が明確に数値で実感できるため非常に楽しい。

また、中世ファンタジーをベースとしたフィールド・ダンジョンは探索のしがいがあり「マジかよ…!!」と思えるような所にヒントも何もなく宝箱や隠し通路があったりする(オンラインプレイの場合には他ユーザーがヒントを書き残してくれている事もある)。
それらを偶然にも発見できた時の喜びは何ものにも代え難い。
ノーヒントの探索要素や宝箱を開ける時のワクワク感が詰め込まれている点も昔のJRPGを思い起こさせるようなポイントだ。
これらの要素は(当然だが)何も知らない初回プレイ時の場合に特に楽しめる要素であり、既プレイヤーは記憶を消して再プレイしたいとも思える要素になっている。

本作のフィールド設計は”初見殺し”である事が多いのも特徴的だ。
それこそが本作の「死にゲー」たる主な所以だろう。
ソウルシリーズは後作になるとバランスが変わってくるのだが、本作のレベルデザインでは「敵が強くて死ぬ」というよりも「初見殺しのような敵配置で殺される」ような事が大半になっているのだ。
数々の初見殺しトラップを経験していくうちに、自然と石橋を叩いて渡るような慎重さをもって踏破するクセが付いていく事だろう。
この辺りの設計は古めのビデオゲームに多いためルネサンス的な側面はもちろんだが、当時の時代としては「人生オワタの大冒険」に代表されるルネサンス的な部分を誇張表現した初見殺しゲーの系譜とも言えるだろう。

しかしながら、本作ではゲームプレイにおける冗長な部分をプレイさせられる期間が長いと言う点は明らかな欠点だ。
本作では最終局面が開始されるようなタイミングで「スキップトラベル」のような機能が解禁される。
そのため、それまでの間は「鍛冶屋に行こう」「アイテムを購入しよう」などと思った際には自分の足でそこまで行かなくてはならない。
もちろん、その部分がゲームプレイとして成立しているのであれば文句は無いのだが、基本的に過去に通った道に存在している敵はプレイヤーの経験値やキャラクターの能力値が向上しているため、ハッキリ言って相手にならない程のザコ敵と化している。
それらを相手にせずに全て無視して目的地だけを目指しても良い訳なのだが、そのようなプレイになるのであれば「そもそもプレイヤー自身の足でその場所まで赴かせる」と言う行為自体が無駄と言う事に他ならない。
このような冗長なプレイを強いられているのは本作のゲーム進行のテンポを大きく落としてしまっている要因になっている。
なお、このような冗長な部分はシリーズの後作において改善されている。

 

バトル 

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ソウルシリーズを象徴する"致命の一撃"

ソウルシリーズのバトルシステム自体はアクション要素が強い。

敵の隙を伺い剣や槍で攻撃を行い、タイミングよく敵の攻撃を回避する。
武器や防具にも様々なユニークなものが存在しており、武器ならば巨大な特大剣から禍々しい鎌、重厚なメイスなどがあり、防具ならば王道な中世騎士や忍者衣装もある。
また、魔法や呪術などのファンタジー要素の強い攻撃方法もある。
これらを駆使して自分好みの武器や魔法などでダンジョンやボスを攻略できるのは非常に楽しい要素だ。
単純に使いやすさで選ぶも良し、見た目にこだわって選ぶも良しだ。

ソウルシリーズにおいて最も象徴的なアクションがある。
それが「パリィからの致命の一撃」だ。
実際にパリィと致命の一撃を行っているのが上図となっている。
敵の攻撃をタイミングよくパリィする事で”印象的な効果音”が発生し、そのまま攻撃ボタンを入力する事で致命の一撃に派生する。
パリィと致命の一撃は多くの人型の敵に対して有効であり、時にはボス戦でも可能だ。
致命の一撃が決まれば大ダメージを与えられるほか、その印象的な効果音も相まって非常に爽快だ。ドヤ顔を決めたくなる事だろう。
敵の攻撃をパリィする行動は一見すると難易度が高いように思えるかも知れないが、本作のパリィはソウルシリーズの中でも比較的簡単な部類だ。
理由としては単純で敵のモーションがハッキリしているケースが多いためだ。
本作ダークソウルにおいては移動する時には移動、攻撃する時には攻撃とメリハリがしっかりしており、また攻撃における前隙と呼ばれる予備動作も長めだ。
ボタン連打のようなプレイでなく、しっかりと敵を見ているならばパリィも十分に狙える事だろう。
ダークソウルをプレイするのであればパリィをたくさん決めて、ドヤ顔もたくさん決めていくのが爽快だ。

しかし、本作においては操作系において若干のフラストレーションがたまるポイントが存在する。
1つ目は入力した操作がキューイングされる点だ。
盾でパリィを失敗した際を例にするのがわかりやすい。
敵の攻撃が来る際にパリィを行おうとした際にタイミングが遅れ、普通に盾で攻撃を受けてしまったとしよう(パリィのボタンは入力済み)。
そうなると攻撃を受け切った後に入力済みとなっているパリィの動作が実行されてしまうのだ。
こうなると失敗の二段重ねのような気持になりストレスが溜まりやすい。
2つ目は回避方向の融通の利かなさだ。
ロックオン時には回避方向が基本的に4方向(前後左右)しかないのだ。斜め方向などへの回避は行えないために痒い所に手が届いていない操作感はモヤモヤする事もあるかも知れない。

 

キャラクタービルド

ソウルシリーズは近年では「死にゲー」「難しい」などのイメージが先行して「難しすぎて楽しめないのでは無いか…」と不安に感じている未プレイユーザーも多いのでは無いかと思う。
だが、ソウルシリーズにおいてはRPG的なキャラクターの成長要素によってかなり強くなる事が可能だ。
そのため、時間をかけてキャラクターを強くすればエンディングまで到達する事は決して難しいものでは無いのだ。

HPや攻撃力を強化するのはもちろんだが、武器や防具も強化できる。
プレイヤースキルの向上だけでなく、キャラクタービルドによって強くできるため多くのユーザーが安心してプレイできるのでは無いかと思う。

また、周回する(エンディングを迎える)事で敵が強くなるため、ハードコアなプレイヤーは凶悪に強くなった敵とも戦う事ができる作りだ。

 

Artorias of the Abyss

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深淵歩きアルトリウス

Artorias of the AbyssはダークソウルにおけるDLCで追加された要素だ。
リマスター版においては最初から同梱されている。

アルトリウスとはゲーム本編において”深淵歩き”と言う二つ名と共にテキストでのみ登場した存在だが、そのアルトリウスの最後を知る事ができる。
そもそも本編においてもアルトリウスは演出面において優遇されている所があり、アルトリウス関連の装飾品や大狼シフとの戦闘中における凝った演出など印象に残りやすい。
そんなアルトリウス関連のイベントが追加されている訳だ。

ゲームプレイ部分としてはおおよそ2ダンジョン分ほどのボリュームがあり、新たな武器や防具、魔法が取得可能だ。
アルトリウスに関する装備も追加されるため、(後作の”ファランの不死隊”のように)アルトリウスの意思を継ぎたいような筆者のようなユーザーには必須の内容だ。 

 

グラフィック

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硬派な中世ファンタジー

本作はアップでも観れるほどに優れたグラフィック…とまでは言えないものの、硬派な中世ファンタジーを再現した世界観は圧巻だ。
また、退廃的な要素も多く儚げであり美しい。 

 

サウンド

本作においては基本的にボス戦でのみBGMが差し込まれ、フィールドBGMなどはほとんどない。
とは言え、強力なボスや印象に残るボスも多い事から、それらのボスと一緒にBGMも耳に残る。

中盤最大難所で嫌な記憶が蘇る人もいるであろう勇壮な「Ornstein & Smough」

印象的なイントロから始まる「Dark Sun Gwyndolin」

記憶に残る演出もあり悲しげな「Great Grey Wolf Sif」

伝説的な騎士アルトリウス「Knight Artorias」

これらは本作のBGMの中でも特に筆者のお気に入りだ。

 

総評

ダークソウルは強いやり応えを提供しながらもユーザー自身が難易度を調整できるようにしてある非常に懐の深いゲームだ。
初心者から熟練者まで幅広いプレイヤーが自分なりの楽しみを得る事ができる作品となっている。

また、まるで淡泊ながら考察しがいのあるストーリーやヒントの無いフィールド探索など、端々からかつてのJRPGの系譜を感じるのだ。
かつてのJRPGをもしも現代の技術で自然な形のビデオゲームにしたとき、それはダークソウルのようなスタイルのゲームになったのではと思えてならない。

しかし、微妙にストレスがある操作感や非常に冗長な拠点間移動などはプレイしていて気になるポイントにはなるだろう。

 

外部記事

Golden Joystick Awards 2021にて「オールタイムベスト」選出 - Twitter

だけどやっぱりゲームが作りたくて――「DARK SOULS」の宮崎英高氏に聞いたフロム・ソフトウェアという会社のあり方 - 4Gamer.net

ゲーム制作未経験から世界的ヒット作「ダークソウル」を生んだ宮崎英高氏にインタビュー - GIGAZINE

【レビュー】戦場のヴァルキュリア4

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戦場に影を落とすフレンドリーファイア

戦場のヴァルキュリアシリーズはBLiTZ(Battle of Live Tactical Zone systems)と呼称するシミュレーションRPGとシューターをミックスしたような固有のシステムによってゲームプレイを実現させたゲームだ。
本作はナンバリングとしては久しぶりとなる戦場のヴァルキュリア4をレビューしていきたいと思う。

なお、筆者は過去シリーズはプレイしていない(正確には僅かにプレイした事はあり、アニメに関しても視聴している)。
過去作の知識などが余り無い事にはご容赦願いたい。

 

戦場のヴァルキュリア4 新価格版 - Switch

戦場のヴァルキュリア4 新価格版 - Switch

  • 発売日:2020/10/22
  • メディア:Video Game
 
戦場のヴァルキュリア4 - Switch

戦場のヴァルキュリア4 - Switch

  • 発売日:2018/09/27
  • メディア:Video Game
 
戦場のヴァルキュリア4 新価格版 - PS4

戦場のヴァルキュリア4 新価格版 - PS4

  • 発売日:2020/10/22
  • メディア:Video Game
 
戦場のヴァルキュリア4 - PS4

戦場のヴァルキュリア4 - PS4

  • 発売日:2018/03/21
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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日本のアニメを彷彿とさせるストーリー

本作のストーリーはシリアス路線の日本アニメのようだ。
戦場や環境など主人公達が立たされている状況は常に過酷であり夢も希望も無い。
しかし、デフォルメされたキャラクターによって物語全体が暗くなりすぎる事が無いような構成だ。
フォトリアルなキャラクターを使用したゲームでは間違いなく違和感になる演出であるが、本作ではそのデザインからわかる通り日本のアニメを彷彿とさせシリアスなアニメを観ているような気分にさせてくれる。
設定自体は陰鬱で過酷であるが、アニメ的な表現によって受け入れやすさの敷居を下げる事に成功していると言えるだろう。

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敵が魅力的である事は何よりも良い事だ

ストーリーは全体的に良く、特に筆者が良いと感じたのは魅力的な敵キャラクターだ。
ゲーム中では凶悪なほどに強く、しかしそれでいて敬意を感じさせてくれる魅力的な敵は本作において非常に良い役割を持っている。

また、本作は過去作と同様の第二次ヨーロッパ大戦を別視点から描いており、シリーズファンならばニヤリとできるポイントもある事だろう。
過去作をプレイしているならばアニメを視聴したレベルの知識しかない筆者よりも更に楽しみがあると言う事であり羨ましい限りだ。

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どうにもテンポの悪いストーリーの見せ方

しかし、ストーリーにも欠点が無い訳では無い。
まず最初の問題点は物語の導入だ。
主人公をはじめとした主要なキャラクターの性格や過去が徐々に明かされる形式であるため唐突な導入となっている。
キャラクターや戦局が動き出していく4章辺りまでは興味をそそられる展開が少なくシナリオに興味を持てるまでに若干の時間を要する。

また、テンポの悪いストーリーテリングも気になるポイントだ。
本作のストーリーは上図のような紙芝居形式の演出が大半だ。
セリフはフルボイスであり、次のセリフを観るためにはボタンの入力を必要とする。
筆者は常々思う事だが、フルボイスのゲームには是非ともオート送りが欲しい。
理由は簡単だ。
声優が感情を込めて喋るテンポとユーザー(筆者)が表示されているセリフのテキスト読み進めるテンポが全く違い、後者の方が圧倒的に速い。
こうなると何を喋るのかわかっているのに喋り終わるのを待ってボタンを押さなければならず、どうにもテンポ感が削がれストーリーに集中しきれない。
物語に没入・集中したいハズであるのに、喋り終わる事に集中してしまうと言う本末転倒な演出では無いだろうか。ストーリーをじっくりと観たい時には極論コントローラーから手を放して、アニメや映画を観るように味わいたい筆者としては、このような仕様は好みではない。
本作に限った話では無いが、フルボイスであればテキストのオート送り機能を是非とも実装していただきたい。

また、話を小刻みに見せられるのもゲームプレイ全体のテンポを落としている。
本作はゲーム内のノートに貼り付けられた写真をユーザーが選択する事でストーリーを閲覧していく形式だ。これ自体は歴史を思い起こさせる・紐解くような演出でありストーリーテリングとして機能していると感じる。
しかし、その構成はテンポが良くない。
話⇒ゲームプレイ⇒話ならわかりやすいが、本作(恐らく過去作も)では話⇒話⇒話⇒ゲームプレイ⇒話⇒話⇒…となるような構成となっている。
時には数秒のテキストのためにだけに用意された話もあり、その度にユーザーに写真を選択する事を強いる。
筆者としては次のゲームプレイまでの全てのストーリーを閲覧させ、その後に再閲覧可能な形として分割された写真が選択可能となるようにしている方がスッキリする。

最後に気になるポイントは主要キャラクター以外の役割だ。
本作には多くのキャラクターが登場するが主要キャラクター以外の個性を把握するには「隊員断章」と呼ばれるメインストーリーとは異なる章を出現させてプレイする必要がある。
つまり、メインストーリーではほとんど関与が無いため、場合によっては個性をほとんど知らないままにゲームのエンディングまで到達してしまう事だろう。
キャラクターの中には他の作品をモチーフにしたと思われるキャラクターも登場しているなど個性が強いのだが、隊員断章を閲覧しなければ色物キャラクターが多いだけと言う印象にもなりかねない。
また、多くのキャラクターが登場するが出撃対象にしていない仲間が活かされるシステムになっていないのは勿体ない。これだけ多くのキャラクターが登場するのであれば出撃隊員に設定されていない仲間も活躍が可能なシステムが欲しい所だ。

 

システム

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シミュレーションRPGとシューターを組み合わせたBLiTZ

最初に記載しておくが、上の画像は本ブログにアップロード可能なサイズが10MBまでであるために通常よりも低解像度となっている。ご容赦願いたい。

シリーズの代名詞とも言えるシステム「BLiTZ」はシミュレーションRPGとシューターの要素を組み合わせた非常にユニークなシステムであり面白い。
BLiTZは過去作で既に完成形とも言えるシステムであり、本作では大きく変化したポイントが余り無いのは一長一短とも言えるかも知れないが、ユニークで面白い事には変わりない。

BLiTZのシステムを大まかに説明すると、シミュレーションRPGのように自軍攻撃ターンと敵軍攻撃ターンが交互に繰り返されるターンベースだ。
自軍のターンの場合にはポイント(CP:コマンドポイント)を消費する事でユニットを操作する事が可能になる。
操作しているユニットは1回だけ攻撃などの行動が可能だ。敵を射程内まで捉えて攻撃するのが基本だろう。
敵軍のターンの場合には敵軍が攻めてくる事になるが、自軍のユニットは視認した状態の敵兵士が射程範囲内に入ると自動で迎撃を行ってくれる。
迎撃は当然ながら敵軍も行ってくるため進軍には注意が必要だ。
視認した・された状態での攻撃は回避する・される可能性がある。
そのため、攻撃を確実に当てるためには死角から不意打ちを狙う必要がある。
特に敵エース級の兵士は回避能力が高く、まともに当てるためには不意打ちである必要があり煩わしく感じられる事もあるだろう(爆弾系などは回避されるとダメージ減少となる)。

今作で追加された新兵種である「擲弾兵」は敵でも味方でも驚異だ。
擲弾兵による攻撃は曲射砲であるため、障害物を越えて砲撃が飛んでくる。
そのため、攻撃時だけでなく防衛時の迎撃においてもかなりの脅威となる。
威力も高く、範囲攻撃でもあるため敵として配置されている場合には優先して排除するのが良いだろう。

現状のシステムでも面白いが今後に向けた要望があるとすれば、地形や科学を利用した攻略などが導入されても面白いのかも知れない。
例えば、「高所落下させた敵や味方は高さに応じてダメージが入る」「草地を燃やす事で広範囲に影響を及ぼせる(ただし、草地は無くなり隠れられなくなる)」などなど。
もっと直感性のあるシステムを導入する事も可能では無いだろうか。

本作において気になるポイントがあるとすればオブジェクトの判定の曖昧さだ。
例えば、射撃戦においてありがちな壁際での攻防(カバーアクション)などでは遮蔽物の当たり判定が曖昧でわかりにくい。一見すると当てられそうだが、実際には壁にヒットするなど理不尽に感じるケースもある。
また、戦車や装甲車などの車両で走行中も壁際などで妙なポイントで引っかかるような感じがありフラストレーションに繋がる事もある。

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戦闘中に発動する個性

戦場では条件が揃うと確率で「ポテンシャル」と呼ばれるスキルを発動する。

ポテンシャルはプラスの効果のものとマイナスの効果の両方が存在しており、それによってキャラクターの個性を表現している。
また、前述している隊員断章をクリアする事で対象のユニットのマイナスポテンシャルがプラスのポテンシャルに変化したりもする。

 

マップ

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存在意義が疑われるブリーフィング

本作のブリーフィングは存在意義が疑われる作りだ。

何はともあれ上図を観て欲しい。
もはや出オチだがユーザーはこれだけの情報でユニット配置しなくてはならない。
一応、簡単な注意点を口頭で説明してくれるのだが、基本的に大まかな作戦の流れしか説明されない。

この仕様はハッキリ言って問題だらけだ。
ユニットはそれぞれ近距離が得意な突撃兵、遠距離が得意な狙撃兵や擲弾兵などをユーザーが選択して配置する事になるのだが、上図のように何も情報が無いため誰が(どの兵科が)どれくらいの人数を必要そうであるのかわかりようが無い。
そのため、全ての戦闘で過不足なくバランスの取れたユニット配置をとりあえず行うようにするしかないのだ。
この手のゲームにおいて初見殺しのような敵配置やイベントはつきものだが、文字通り開始直後から初見殺しを喰らうのはプレイの効率を落とすし、何よりもブリーフィングの意味を成していない。
この仕様ならばもはや出撃メンバーをユーザーに選択させる必要が無く、固定メンバーが予め設定されていればそれで良いのでは無いかとすら思える。

もちろん、前述の通りこの手のゲームには初見殺しなどはつきものであるため、ブリーフィングの段階で全てのユニットが表示されている必要は無い。
せめて、開始地点から視認可能な敵だけでも事前に開示して欲しい所だ。

また、バトルに遷移する際の演出も冗長であり面倒に感じる。
特に同じステージを複数回プレイしようとする場合に気になるポイントなのだが、1回のスキップではバトルが開始されない事も多いのだ。
キャラクターなどの会話などから実際にバトルに発展するまでに、スキップボタンを何回か実行する必要があるのは不親切と言える。
このような場合、スキップボタンを押す理由は「会話イベントが不要」だからであり、そのユーザー心理を考慮したシーケンスを検討・実装して欲しい所だ。

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距離も高低差も不明なマップは致命的だ

同様に戦闘中に参照可能なマップも機能性が欠けている。

こちらも上図を観て欲しい。
このマップからは地形の情報(詳細な高低差や距離感など)が全くわからない。
そのため、攻撃しようとしても選択した兵科では実は射程が足りない、高低差があり実は攻撃できないなどが発生するのだ。
ターンに使用可能なCPの数は限られているため「何もできなかったけどまぁ良いか」とはなりにくい。

BLiTZのようなタイプのゲームであるならば戦術・戦略上、マップは非常に大事な要素だと思うのだ。
本来の指揮官(ユーザー)ならばマップの情報から「この味方からこの敵までの距離は○○であるから、まず君はコイツを狙撃してくれ」など指示を出す材料になるハズだろう。
しかし本作のマップ情報では指揮官(ユーザー)は「射程内かわからんけど、とりあえずお前動いて、撃てたら撃て」と言う戦略も何も無い場当たり的な指示をするしかない。
これではとても有能な指揮を行ったとは感じにくく、むしろ絵に描いたような無能上司タイプの指揮官だ。
「なぜこの兵士を選択する必要があるのか」「なぜこの兵士をその場所に移動・配置するのか」などを考えながらプレイできるものにして欲しい限りだ。

 

訓練開発

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劣悪なアクセス性の訓練開発

本作では「訓練開発」と言われるシステムによって部隊の強化が行える。

兵科のレベルを上げる「訓練場」や兵器開発・改良が行える「研究開発所」、ORDERを習得できる「サロン」といったものが用意されている。
しかし、これらのシステムへのアクセスのテンポの悪さは気になる所が多い。
選択したり訓練・開発を行うたびにキャラクターの簡単なセリフがモーダルダイアログ形式で差し込まれ、実際に行いたい訓練や開発がサクサクと出来ないのはストレスに思える。
ユーザーは訓練・開発が行いたいのであり、キャラクターのボイスを聴きに来ている訳では無い。
これらのセリフでキャラクターの個性を出そうとするのであれば、シナリオ面だけでしっかりと表現する事に徹して欲しかったし、そもそもとしてモーダルダイアログ形式によってキャラクターのカットとボイスを再生している事に問題がある。
SEのようにキャラクターのボイスを使用すれば操作が邪魔されないため快適に感じたと思うのだ。

 

グラフィック

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水彩画のような「CANVAS

映像は「CANVAS」と呼称している水彩画のようなタッチの鮮やかでありながら淡いタッチのグラフィックが特徴的だ。
とは言え、(当たり前だが)基本的に戦場しかマップが無いために「景色が綺麗」などは余り感じる事が無いのは勿体なく思えるし、キャラクターモデリングや戦場の風景などは近くで見るには若干苦しいディテールに感じる。
また、キャラクターは多いのだが、主要キャラクター以外のモーションは汎用となってしまっている。濃いキャラクター達がいるにも関わらず個性を出せていないのは勿体ない。

 

サウンド

音楽に関しては緊迫したものが多い印象があるが、総じて記憶に残るようなメロディは少ないように感じる。
しかしながら、本作では特定の条件を満たす事で劇中のBGMをいつでも聞く事が出来るようになるのは嬉しい要素だ。

 

総評

戦場のヴァルキュリア4のストーリーはバランス良くできており、シリーズお馴染みのBLiTZというシステムを利用した戦闘もユニークで非常に面白い。
しかし、ブリーフィングやマップ、訓練開発などの頻繁にアクセスするシステム周りが足を引っ張っており、面白さに対して小刻みにフレンドリーファイアをかましている感は否めない。

総合的には面白い事には変わりは無く、じっくりと楽しめる一作だ。
今後のシリーズ作にも期待できる仕上がりになっている。

 

外部記事

『戦場のヴァルキュリア4』開発者インタビュー!戦場と友情、雪と色彩 - YouTube

引き継ぎ可能な『戦場のヴァルキュリア4』PS4版体験版が26日配信。擲弾兵や兵科バランス、DLCについて質問 

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【レビュー】Red Dead Redemption 2

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時間強盗

Red Dead Redemption 2(以降、RDR2)は2018年に発売されたタイトルの中でも最も注目を集めていた作品と言っても過言では無いだろう。
そもそもパブリッシャーのRockstar Gamesと言えば「ゲーム業界の冨樫先生」と言っても過言ではないぐらいにリリース数が少なく、しかし高品質なゲームを提供してきている。
そんなメーカーの出すゲームともなれば期待せずにはいられないだろう(と書いているもののRockstar Gamesのゲームをプレイするのは久しぶりだ)。

なお、筆者はベースとなったRed Dead Revolverおよび前作Red Dead Redemption(以降、RDR)をプレイしていないため、その辺りはざっくりとした知識しか無い事を予めご了承願いたい。

 

 

ストーリー

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映画を観ているようなクオリティ

RDR2のストーリーはディティールが抜群だ。

映画のような高品質の映像に加えて、海外声優の演技はどれも繊細な感情が表現されている。ローカライズにおける日本語訳に関しても非常に丁寧であり、よくある「ん?」となるような翻訳は筆者が記憶にある限りは全くと言って良いほど無かった。
濃密な西部劇映画を観ている気分にさせてくれる本作のストーリーのディティールは他の追随を許さない史上最高峰のクオリティに仕上がっている。
本作はRDRの過去を描いているが前知識など全く無くても基本的には問題ないだろう。逆に前知識を入れる事で逆算からオチが読めてしまう事はあるかも知れないが。

プレイヤーは無法者が淘汰されつつある時代を生きるギャングの一員アーサー・モーガンだ。
アーサーは尊敬するダッチに従っている。ダッチギャングのメンバーが豊かに、そして自由に生きられる場所・方法を模索する。
ダッチに従っているメンバーもクレイジーと言う言葉がピッタリと合う”マイカ”や頼りになる参謀の”ホゼア”など非常に個性が強い。
特に筆者がお気に入りのキャラクターは寡黙だが豪胆さと冷静さを併せ持っている"チャールズ"や「40秒で支度しな」とでも言わんばかりのパワフルさと包容力を持った"スーザン"おばさん、物語が進むにつれてどんどん頼もしくなる"セイディ"だ。
もちろんRDRの主人公であるジョンも捨てがたく、何よりも主人公であるアーサーは非常にクールだ。
ダッチのギャングメンバーには好きになれないような人物もいるが、ストーリーを長く進めていく事でそれを含めて愛おしい家族のように感じられる事だろう。

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メアリーとの関係は繊細だった

サブシナリオも非常に充実している。
家の建設にお金を貸す事もあれば、狩猟を教える事もある。ラジコンの船でミニチュアの船を破壊するものも存在する。
とにかくバラエティー豊かで楽しめる内容が多い。

筆者が特にグッと来たサブシナリオはアーサーのかつての恋人であるメアリーとのイベントだ。
詳細には是非ともプレイして頂きたい所ではあるが、二人は今でも心の奥底で秘めた想いがあるが二人の関係は”立場”と言う分厚い透明なガラスの壁で隔てている。
非常に素敵で繊細な関係性を実に見事に表現している。

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痒い所に手が届かない字幕と過度なQTE、世界観にマッチしない日本語フォント

史上でも最高峰のストーリーと言っても過言ではない本作であるが、残念に感じるポイントが多かったのも事実だ。

まず、誰が喋っているのかわかりにくいのは勿体ない。
デフォルトの設定では主要キャラクター以外には「誰のセリフか」が書いておらず、設定を変更する事で話者の名前表示が行えるが、上図左のように複数の一般NPCの場合にはインクリメントされたインデックスが追記されて区別がなされるのみであるため「複数人が同時に喋るとき」には誰がどのセリフを喋っているのか把握しにくくなっている。
また、本作の一般NPCは喋っていても字幕があるケースと無いケースが混在しているため街中などでは余計にわかりにくい状況を生み出している。
一般NPCが進行において重要な内容を喋る事はないためクリティカルな問題では無いのだが、字幕の表示方法や話者の判別方法にももう少しこだわりを見せて欲しかった所だ。

次に気になるのはQTEの頻度と種類の多さだ。
シナリオにおいてことあるごとに要求されるQTEは正直言ってめんどくさい仕様だ。
また、本作のQTEでフラストレーションが溜まりやすい大きな要因として「ボタン連打なのか、ボタン長押しなのかわかりにくい」ことが挙げられる。
例えば上図の真ん中がQTEシーンなのだが、右下にボタン入力の指示が出ているのがわかるだろう。しかし、これを見せられてもボタン連打なのかボタン長押しなのか区別が出来ない。
また、シーンによっては突発的に射撃を要求されるもあり、失敗すると即死亡のような面倒な仕様でもある。
リスタートポイントは細かく設定されているため、すぐに再チャレンジできるようになっているが、筆者としてはカットシーンではカットシーンが観たいのだ。
QTEが差し込まれる事によりカットシーンでは無くQTEに集中してしまうのは本末転倒だ。

日本語フォントのミスマッチも気になる所だ。
これは上図の右を参照して欲しい。
これはショップで銃を購入する際のインターフェースだ。
カタログ形式で銃を選択できる事自体は世界観の雰囲気があり非常に良いポイントではあるのだが、日本語フォントが100歩譲っても世界観に合っていない。
これは日本語フォントでは無く、日本語自体がミスマッチしている可能性もあるが、ここまで世界観表現にこだわっているのであればローカライズ手法としても工夫が欲しかった所だ。

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融通の利かないシナリオはゲームプレイと乖離している

RDR2のストーリーは物語としての完成度は高いものの、ゲーム(インタラクティブ)のストーリーとしては根本的に立ち位置にも問題があるのも事実だ。

本作のストーリーは前作RDRの過去「どのようにしてダッチ率いるギャングが崩壊していったのか」を描いている。
つまり「未来では有り得ない事は起きない」ことが確実な状況だ。
もっと簡単に書けば「前作RDRで登場した人物はシナリオ中に死ぬことは無い」し、その逆もまた然りだ。
そのため、メインシナリオではとにかく融通が利かない(そもそも正当な理由など無くてもRockstar Gamesのゲームは融通が利かない事が多い)。
「○○が死んでしまった」はまだ理解できるが、「△△に隠れなかった」「××から離れてしまった」など(ほとんどどうでも良いような理由)で簡単に失敗扱いにされる。
正規で無い順路ではクリアする事が出来ないようになっている構成は、オープンワールドを採用している意味を喪失している。
例えば「○○が死んでしまった」ならば死んでしまったものとしてストーリーが進んでも良いハズだ。
しかし、過去を描くと言う選択は何も手を加えなければリニアなシナリオにならざるを得ない。
あるいはリニアなゲームプレイを選択した事が過去の物語を描くと言う手法に繋がったのかも知れない。

ここまでリニアにするのであればカットシーン等で強制的にそのような状況にして欲しかったようにも思う。
例えば「△△に隠れなかった」と言うのはメインシナリオのとある銃撃戦の際に発生したものなのだが、その銃撃戦の状況的にはかなり有利に感じており筆者は隠れる必要性を全く感じなかったのだ。そのため、そのまま銃撃戦を維持していたのだが、隠れずにいると半ば強制的な死亡になってしまう。
必要性を感じないにも関わらず隠れなかっただけで死亡するシーンを作り出すくらいならば、そのシーンに突入した際にカットシーンが差し込まれアーサーが強制的に規定の場所に隠れると言った方法でも良かったと思うのだ。

主人公アーサーの立ち位置もかなり曖昧だ。
ゲームプレイとしての主人公アーサーはほとんど無個性であるためプレイヤー≒アーサーと言っても過言ではないが、本作のリニアなシナリオの中のアーサーはとたんに自身の個性を発揮し始めてしまう(プレイヤーの知らない過去の話や人間関係など)。
そのため本作が「プレイヤーに西部劇を体験」して欲しいのか、「プレイヤーにアーサーの追体験」をして欲しいのかがイマイチ見えてこない。
もしも本作のオープンワールドとしての側面を前者である「西部劇ライフシム」のような形で捉えた場合には、極論として本作のようなリニアなメインシナリオならば(品質は高いとしても)メインシナリオ自体が不要では無いかとも思える。

 

エピローグ

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エピローグ

ここでは重大なネタバレを含む記載があるため注意願いたい。

本作のその後を描いている前作RDRでは登場しないアーサーの最後は想像しやすいだろう。エピローグではプレイヤーが操作するキャラクターがアーサーからジョンへと切り替わる。
エピローグであるジョンの物語も本編同様に非常に濃密であり、本編中では実質的に行く事が困難であった地域にも行けるようになる。
エピローグシナリオも楽しめる要素がふんだんに用意されているのは嬉しい限りだ。

このようなブログに書いたとしても”後だしジャンケン”のように思われるかも知れないが、この展開は筆者の予想通りだった。
RDR2の主人公アーサーとRDRの主人公ジョンを綺麗に繋ぐ方法がこれ以外に思い付かなかったからだ。
物語の中盤にはアーサーが不穏な咳をするようになり「あ。やっぱり死ぬのかな。」と思わせたが、確信したのは物語終盤で病気によりアーサーの顔色が青ざめていったためだ。流石にエンディング後の世界を真っ青な顔色のアーサーが練り歩くとは考えにくいだろう。

「筆者の予想通り」と記載したが正確には異なる。
筆者が予想したのは「RDR2はRDRのリメイクが内包されている」だ。
そうすることでRDR2のゲームプレイで起こした事件や生き残った人物などの状況によって、内包されたリメイクRDRのシナリオに動的な変化を与えられる訳だ。
前述した「○○が死んでしまった」などの融通の利かないリニアな作りを脱する事も可能だろうし、むしろそうでなければRDR2のシナリオは大筋でユーザーの想像通りの道を歩むしか無い。
そこまで制作するのは非常に困難な道のりだろう。
しかし、Rockstar Gamesならばそこまでやってくれるのではと言う期待も僅かにあったし、何よりもそうしなければ予定調和とも言える「過去を描く」と言う手法のシナリオに驚きを与える事は出来ないと考えていた。 
結果としては予定調和的なシナリオでしか無かった訳なのだが。

 

システム

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劣悪な操作系

本作の操作系は近年稀にみるほどに劣悪だ。

パッド(コントローラー)のありとあらゆるボタンを押す事になるし、1つのボタンであっても長押しや連打によって使い分ける事はもちろん、複数ボタンの同時押しも必要とされる。
機能性が全く無いのだ。
そのうえ、同一のボタンに複数の機能を乗せてしまっているため誤操作も多い。
狩った動物を持ち上げようとしてジャンプをしてしまうのは平常運転で、最も酷い時には馬に乗ろうとして近くにいたオジさんを恐喝してしまう事もあった。
自分が行いたい操作とは異なる動作により発生したデメリットは言いようの無い理不尽さがあり大きなフラストレーションに繋がる。
RDR2は史上最高峰のディティールのゲームでリアリティ満点だが、この劣悪な操作系はナチュラルさの欠片も無く不自然でゲームに集中するどころではない。

また、ゲームの進行テンポが遅すぎるのも問題だ。
馬から降りた際に馬の積み荷から銃を取り出す必要があるのもテンポが悪い。
狩った際に動物を規定の向きに変えてから捌き始めるのもテンポが悪い。
焚火の前で食料やアイテムを作成するのもいちいちモーションが入るし、何よりも1回につき1つしか作成できないのもテンポが悪い。
また、地味ながらモーションの切り替わり時などにボタン入力するなど、タイミングが早すぎるとGUIでは反応しているにも関わらず実際には動作しない事もあり、これもテンポを落としている。
何をするにしてもとにかくテンポが悪く時間を使わざるを得ないのだ。
「テンポを犠牲にしてリアリティを得ている」のであれば(古臭い手法ではあるが)まだ褒める事はできるが、先ほど挙げた例に関してはどれも「リアリティを向上させている」と言うには苦しいものがある。

良くも悪くもついつい時間を忘れて没頭してしまう事を「時間泥棒」などと表現する事はあるが、本作の場合は複雑すぎる操作系と遅すぎるテンポによって時間を長く使う事を強要されている。
言うなれば「時間強盗」だ。

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存在感が無いファストトラベル

ファストトラベルはほとんど存在感が無い。

いつでもどこでもアクセスできる訳では無く、上図のように特定のポイントにある地図を参照するか、あるいは街にある電車を利用する事で移動を短縮できる。

実際に使用した場合にはファストトラベルの所要時間はSSD未換装の通常のPS4で1分40秒程度と近年の標準と思われる20~40秒からは大きく劣る。
読み込む必要があるデータ量が多いのは理解できるのだが、この仕様と所要時間ではハッキリ言って使う機会はほとんど無いだろう。

目的地への移動は基本的に馬を使用する事になるが、フィールド上には特別な何かがある事は稀であり、後述のランダムクエストが発生する程度だと思った方が良いだろう。
まったりと映像と雰囲気を楽しみながらプレイを楽しみたいユーザーにはたまらないが、ゲームをプレイしたいユーザーには少々退屈かも知れない。

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充実したランダムイベント

街中や道中で発生するランダム生成されたクエストは充実しており面白い。

NPCを助けてあげたり、あるいはいきなり襲撃される事もある。
助けてあげたNPCはケースによっては街まで送る事もあり、その際には雑談が行われるのだが、それらも話としてしっかりしており面白い。
また、以前に助けた事のあるNPCが店での買い物を肩代わりしてくれる事もあれば、再び同じ災難に合っている事もある。
最初に出合った土地とは距離的に遠い土地で出会うと流石に違和感を覚えるが、それでもプレイヤーを覚えてくれているのは嬉しい事だ。

多くプレイしているとパターンが掴めてくる所はあるとは言え、それでも非常に良くできており筆者としてはランダムクエストを更に充実させて欲しかったと思うばかりだ。

 

デッドアイ

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西部劇のガンマンを演出するデッドアイ

デッドアイは非常に強力なスキルだ。

デッドアイを発動させると時間の流れが遅くなり敵を狙いやすくなるだけでなく、装填されている銃弾の数だけマーカーを付ける事も可能で、マーカーを付けた状態で発砲するとほとんど100%の精度で撃ち抜くことができる。
また、デッドアイ中は耐久能力も向上するため銃撃戦では積極的に使用したいものだ。
リアリティの欠ける要素ではあるのだが、筆者としては「現実のガンマン」と言うよりも「西部劇映画のガンマン」と感じられ非常に好印象だ。

デッドアイに限った事では無いが、筆者としてはやはり純粋なアナログスティックによるエイムはどうにもやりにくく、ジャイロセンサーや加速度センサーを使用したエイムが恋しく感じた。

 

生活

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様々な生活を楽しめる

RDR2では銃撃戦以外にも様々な形での生活を楽しめる。
時には狩猟を行い、狩った肉を焼き、魚を釣り、ポーカーなどの賭け事をしたり、風呂に入ってサッパリできる。

狩猟や釣りの操作系は変わらず面倒なのだが、どれもやり応えは抜群でちょっとしたミニゲーム感覚で楽しむ事が出来るだろう。

ただし、狩猟動物のAIは総じて他要素と比較すると完成度は高くないのは残念だ。
フィールドに存在する動物の種類は非常に豊かであるものの、特に狼や豹などの肉食動物はプレイヤーを見つけたとたんに襲い掛かってくるというゲーム的な側面が強いデザインがされているなど、他の要素と比較してしまうとリアリティが欠けているのだ。
ここまでのこだわりを見せるのであれば、動物の挙動に関してももう一歩踏み込んだ描写をしていて欲しかった。

 

グラフィック

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圧倒的なディティー

RDR2においてグラフィックのディティールは正に圧倒的だ。

木漏れ日やフォグ表現は繊細で、遠方に映る丘や山々は非常に美しい。
オープンワールドを採用したゲームでこれほどのディティールを持ったタイトルは過去にない次元だろう。
ゲーム中では三人称視点と一人称視点の切り替えが可能だが、一人称視点であってもテクスチャの粗さや木々の葉っぱ等の品質は全く落ちていない。

しかし、処理負荷が高いタイミングだったのか時より水の飛沫や雨と言ったエフェクトがバグかと疑うほどに粗くなる事があったが発生頻度は低く全体の品質から考えれば些細な問題だろう。

 

サウンド

音楽に関しては近年のオープンワールドの傾向と同様であり印象に残るものは余り無いが、西部劇的なBGMが挿入されるメインシナリオの一部の銃撃戦はテンションが上がること間違い無しだ。
また、同様にメインシナリオの一部で流れるカントリーミュージックも素晴らしい。

 

ボイス

音声面で最も特筆するべきなのは演技だ。

シナリオで聴かせてくれる迫真の演技に関しても史上最高峰であると感じる。
本作のシナリオは西部劇映画のような内容でストーリーやセリフ自体が単純に良いのは間違いないが、それに加えて演者の演技が抜群であるために良さが数倍に跳ね上がっているように感じる。

また、通常のゲームプレイ時においてもボイスのこだわりを見せる。
主人公(プレイヤー)はNPCに対しての呼び掛けが可能なのだが、それに関しても「NPCの性別や年齢などによるセリフの変化」や「主人公とNPCの距離によって複数パターンのセリフ」が存在するなど芸が細かい。
NPCに関しても、そのキャラクターの出身地に応じてスペイン語や中国語を喋る事もあるなど丁寧だ。

しかし、唯一残念に感じたポイントとして移動中に使用する事が多いであろう(Rockstar Gamesお馴染みの)シネマティックモードはカメラと喋っているキャラクターとの距離によってボイス音量が変化してしまう事だ。
例えば、セリフの途中でカメラ位置が変わるとボリュームが上がったり下がったりするため、撮影失敗した映画を観ているような気分になってしまう。
最低限、セリフが終わるまではカメラ位置がキープされるか、ボイス音量がカメラ位置に依存しないようにするなどして欲しかった所だ。

 

総評

Red Dead Redemption 2は強い光と強い影を併せ持った作品だ。

映像や物語・演技のディティールは間違いなく他の追随を許さないレベルだが、劣悪な操作系と悪すぎるテンポも間違いなく他の追随を許していない。
”リアリティ(説得力)”を操作系・テンポを犠牲にして作り出す手法は余りにも古臭く愚直だ。
仕舞にはテンポが悪いにも関わらず、リアリティからかけ離れているケースもあるなど明らかに残念なポイントすらある。

フォトリアルとゲームプレイは親和性が低い所が多い。
フォトリアルなゲームにおいては「どの部分をリアルに魅せ、どの部分で違和感のない快適さを提供するか」と言う”最適バランス”を問われる。
本作はその最適バランスの欠如によって生まれた強烈な光と影を持つモンスターなのだ。

 

外部記事

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SF史に残る(べき)ゲームたち:第30回『レッド・デッド・リデンプション2』――原暴力への贖罪と、宗教的実存への移行

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【レビュー】実況パワフルメジャーリーグ2009

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一球入魂

実況パワフルメジャーリーグ2009(以下、パワメジャ2009)は当たり前だが2009年に発売された実況パワフルプロ野球(以下、パワプロ)シリーズの一作だ。
本作はNPBでは無くMLBにフォーカスしたシリーズ作品の最終作品となっている。

2009年と言えば日本野球界では歴史に名を遺すWBC2009が開催された年のゲームでもある。そのため、本作ではWBCに関する内容も収録された作品でもあるのだ。
筆者はこの頃にメジャーリーグに興味を持ち始めていたため、メジャーリーグ関連のゲームが無いものかと思っていた際に発売された需要と供給がバッチリ噛み合ったゲームであった。

今回はそんな出会いでプレイをしたパワメジャ2009をレビューしよう。

 

実況パワフルメジャーリーグ2009

実況パワフルメジャーリーグ2009

  • 発売日:2009/04/29
  • メディア:Video Game
 
実況パワフルメジャーリーグ2009 - Wii

実況パワフルメジャーリーグ2009 - Wii

  • 発売日:2009/04/29
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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サクセスのストーリーは少々物足りない

本作には…と言うよりもパワプロシリーズにはストーリーと呼べる要素が無いためサクセスに関するストーリーを中心に記載していこう。
なお、サクセスのシステム面における内容は後述の「システム」の章に記載する。

パワプロシリーズでは最も人気のあると言っても過言ではないサクセスだが、本作においてはそのストーリー面の内容は歴代でも薄めだ。
全体的に盛り上がるようなイベントに欠けるうえ、各キャラクターを魅力的に印象付けるイベントも少なく、やや淡白な印象だ。
また、恒例となっている”彼女”は本作においても存在しているが、彼女たちの魅力も非常に弱い。
そのため、サクセスだけを中心に楽しさを求める人には肩透かしを喰らうだろう。

 

システム

本項ではパワメジャ2009におけるシステム面について記載する。

と、ここで本命の要素について記載する前に本作の走攻守のパワーバランスを大まかに記載しておこう。
本作の走攻守は「王道戦術こそが輝き、それ以外は日の目を見ない」ことになっている。
では具体的に何が日の目を見ていないのかだが、それは「バント」と「盗塁」と「投手のスタミナ」だ。

バントに関しては後述の”YOMIシステム”で詳しく記載するが、ここで簡単に書いてしまうと本作では普通にバッティングするよりも難易度が高い技術になっている。
これでは容易にバントと言う選択肢をユーザーが取る事は難しいと言わざるを得ない。

次に盗塁だ。
本作は圧倒的に盗塁が難しい。走力Aで捕手の肩力がD程度であっても普通に失敗すると言って良い。(走力はA前提でも)成功率は30%かそれ以下の印象だ。
こうなると下手にランナーを動かすのは危険だ。

そして最後は投手のスタミナだ。
本作のスタミナ消費量はとてつもなく激しい。
スタミナがギリギリAになる程度では100球は投げきれない…どころか70球から80球でバテてるのが平常運転だ。
スタミナが200以上あると90球程度は頑張れるため完投・完封も射程圏内になるが、それでも繊細かつ強気な配球を求められる。

このように小技と言われる手段や若干時代遅れとも言える先発完投などは非常に難しいバランスだ。
本作はあくまでも現代野球の王道である「打って点を取る。継投で点を抑える。」と言う事がシステム側から求められてしまうため、幅広い戦術を色々と楽しみたいユーザーや日本野球の感覚に慣れ親しんでいるユーザーには痒い所に手が届かない印象を与えるだろう。
しかし、逆に言えばMLBを中心とした現代野球の考え方であるならば気になる事はほとんど無いものだろう。

 

YOMIシステム

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YOMIシステムは野球ゲームを”野球”にする

本作の最も特筆するべき要素に「YOMIシステム」がある。
これ無くしてパワメジャ2009を語る事は不可能だ。

YOMIシステムは端的に説明すれば「相手の投球位置を予測する」ものだ。
予測は相手投手の投球位置にミートカーソルが近いか否かとなる。
例えば相手投手がインローに投げようとした場合、ミートカーソルをインローに構えていれば的中、インローから遠い所に構えてしまうと外れだ。
予測の的中度は3段階でミートカーソルが赤>オレンジ>黄色の順となっている。
上のGIF画像を確認してみて欲しい。
左は投球予測に成功しており、右は失敗した時のものだ。

予想が的中した場合に発生するメリットは
「投球位置が素早く表示される」
「選手のパワーに補正がかかる」
となっている。
予想が外れた場合のデメリットは
「投球位置が表示されるのが遅い」
「ミートカーソルを動かすとミートが小さくなっていく」
となっている。
またその他にも
「打席中に同じ球種が続くと投球位置が早く表示される」
と言ったユニークな性質も持っている。
少しわかりにくいかも知れないが、これも上のGIF画像を観ると右側のYOMI失敗パターンでは投球位置を示すポイントが表示されるのが遅い事が確認できるだろう。

では実際にこれを使用するとプレイに対してどのような影響があるのか。
端的に表現してしまうと「圧倒的な投手有利」の環境が出来上がるのだ。
これは予測が外れれば投球位置を示すポインターが表示されるのが遅くなる事が影響として最も大きい。
上の画像を確認した限りでは微妙な差に感じられるかも知れないが、筆者が数多く体感してきた限りでは「ボールが消えた」と感じる事すらあるほどのインパクトだ。
これはパワプロシリーズをプレイした事のあるプレイヤーであれば投球位置を示すポインターが表示されない(表示されるまでにかなりのラグがある)状態でバッティングを行う事を想像すればその難易度の高さは伝わるだろうか。

YOMIシステムによって本作は間違いなく圧倒的な投手有利なゲームとなっている。
しかし、この要素によって本物の野球らしい体験がいくつも実現されている事は見逃してはならない点だ。

まず、パワプロシリーズでは絶好の狙い球となる事が多い4シーム(ストレート)の威力は格段に上昇している。4シームはスイングの入力受付時間とボールへのコンタクト時間が最も短い。つまり、予測が外れていると投球位置のポインターが遅延表示がされる影響により瞬時に判断を行わなくてならないのだ。
これによって例えば高めに大きく外した4シームなどが(素早く振らなければ当てられないという打者心理も相まって)空振りを誘うのに非常に有効となる。

また、逆にチェンジアップやスローカーブと言った遅い変化球も絶妙だ。
前述のとおり、4シームは受付時間などの関係から投球後は比較的素早くスイングボタンを入力する必要がある。しかし、遅い変化球は逆にボールにコンタクトできる時間の開始が遅い。
ここまでは通常のパワプロと同様だが、これがYOMIシステムという瞬時の状況判断を伴うシステムと噛み合う事により「遅い変化球だとわかっているのにスイングボタンを早めに押してしまう状況」となりゴロを生んでしまうのだ。

筆者がプレイしたパワプロシリーズはそう多くは無いが、「4シームが脅威」「遅い球とわかっているのにタイミングが合わない」と感じた事は後にも先にも本作のみだ。
打てないことは悔しくもあるのだが、野球と言うスポーツ自体が好きな筆者からすれば、これがまさしく「野球」なのだ。

ここまでピッチングをメインに話を進めて来たがパワーバランス的には不利ながら打者に関してもデータリテラシーが実際の野球に近い点も興味深い。
ここまで語ってきたように本作のYOMIシステムは明らかに投手有利なシステムだ。
打者からすれば予測が的中しても(体感的には)通常のパワプロ相当のバッティングになるだけであり、言い方を変えれば「減点方式(予想が当たって初めて”従来通り”)」だろう。
そのため、予測が外れるほどにバッティングに対してペナルティが付与される。
とは言え、そのような環境となるとプレイヤーが選択する事になるデータリテラシーは「パワプロ」ではなく「野球」に近似してくる。
顕著な例を2点挙げよう。

1点目は「打席での心構え」だ。
YOMIシステム上では打者は基本的に”打てない”が前提に立つ。
そうなると「打てる球が来るまで無理をしない」心理が働くのだ。
自分の得意なコース、失投など何でも構わない。打てるまで待つのだ。
幸いにも野球はストライクが3回コールされない限りアウトにならないではないか…と。つまり、2ストライクと追い込まれるまでは例え明らかなストライクゾーンであっても打てないと感じるのであれば振らなくて良いのだ。
また、前述の通り「投手有利」「小技の不遇さ」が強く、チマチマとランナーを進めるのは得点効率や得点期待値が非常に低い。
そのため、「追い込まれるまでは長打狙い」が基本となるのだが、長打を狙うためには当然ながらゴロではどんなに強い打球でも内野手に阻まれる可能性が高いため悪手だ。
そこで、数少ない甘い球を確実に長打に出来るようにバッティングでボールの下を叩きやすいフライ狙いのものへとプレイを重ねていくうちに自然淘汰的に選択されていく。

2点目は「ファール」だ。
前述の通り、YOMIシステム上では待ち球戦術が基本であると筆者は考えているのだが、これによって今までのパワプロシリーズでは考えられない程に光り輝くバッティング技術が生まれている。
それが”カット”などと表現されるような”ファール打ち”だ。
2ストライクまで追い込まれてしまうと、次のストライクを取られてしまえば当然アウトになる。
であるならば、追い込まれてからの投球では少しでもヒットになる可能性にかけてスイングする事は必然だ。とは言え、なんでもかんでもスイングするわけにもいかない。
ボール球には手を出したくは無いのだが、予測が外れた際に投球位置が見えない(見えにくい)と言うペナルティーがあるため、投球されたボールがストライクゾーンに来るのかボールゾーンに来るのかの判断が非常に難しい。
そんな時に「ヒットは難しいがバットに当てる事はできるボールをカット(ファール)する」のだ。プレイしたての段階では予測が外れた際にボールがどこに来るのかが全く分からず困惑するが、慣れてくると投球位置のポインターでは無く、投手が投げたボールそのものからインコースorアウトコース / 高めor低めがなんとなく掴めるようになる。
そこからストライクゾーンかボールゾーンかきわどい投球に対して無理矢理当てるようにして(必ずできるとは限らないものの)ファールを狙う事が可能なのだ。
文字では少々伝わりにくいかも知れないが、ギリギリのボールに対して何度もファールを打ち1打席で10球以上も粘れた時の達成感は本作でしか味わえない特殊なものだ。

これらの要素によって2010年代後半にMLBにおいて脚光を浴びるようになったフライボールレボリューション(バレルゾーン)の考え方やピッチトンネルの驚異性を2009年の時点で身をもって体感できたのがパワメジャ2009なのだ。
まさに時代を先取りしたようなゲームだと言えるだろう。

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YOMIシステムの強い輝きは強い影も生み出す

しかし、大きな輝きを見せるYOMIシステムだが、調整不足により影を何点か生み出してしまっている。

まず1つ目は「バント」だ。
このYOMIシステムの特性はバントを行う際にも発揮される訳なのだが、これがバント時に自分が出したバットのせいでボールの投球位置が全く見えない。
これによってバントの成功率…いや、そもそもバントでボールに当てること自体が非常に難しくなっている。
本作のようなバランスの場合にバントと言う戦術は基本的に選択する事は無いとは言え、この難易度ではとてもじゃないがヒットを狙う方が確率が高い。

次に気になるのはやはり「予測的中時のバフ」だ。
本作では予測が的中した際に発生するバフと呼べるものは「パワーに補正」くらいであり、その他の要素は従来のパワプロ相当になるだけなのだ。
これはハッキリ言って割に合わない。
予測が的中した際には少量程度で構わないのだが、ミートにロックオンを付与して更に当たりやすくするようにして初めて予想する事に意味が出てくる。
現状のバランスでは甘い球を待ち、ヒットが難しいボールはカットしてファールする事が主体だ。これ自体は正に野球であり非常に面白い要素となっているのだが、本作のバランスでは逆にこれしか選択できないのは勿体ない。
イチかバチか山を張って本塁打を狙うにしても、高速変化球(ツーシームSFF)などでは予測が当たってもバットに当てる事はまず難しい。
予測が的中した時には打者がかなり有利になり、予測が外れた時には投手がかなり有利になると言った極端なバランスにしても良かったのでは無いかと思う。

ちなみに、これからパワメジャ2009をYOMIシステムを使用して始めたいと考えている人は最初は無理してスイングせず、打てない事を前提に考えて打てると確信したボールのみを確実にヒットにするように心掛ける事を推奨したい。
そうする事で自然と自分のヒットゾーンが徐々に広がっていく事だろう。
なおオススメはしないがYOMIシステム自体はOFFにする事は可能だ。
YOMIシステムを使用しない限り、本作の変化球は全体的にいわゆるキレが余り無く脅威とはならないため打者有利の傾向が強くなる。

 

選手エディット

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国内発売のパワプロ系列では唯一の選手エディット機能

選手エディットはゲーム内に収録されている選手のエディットをほぼ自由に行う事ができるモードだ。
エディットによりオリジナル選手を作成する事は出来ないのは少々残念だが、それでも嬉しい要素だ。
変更可能なのは上図に記載している項目となる。顔パーツの変更は行えないため注意だ。

この選手エディットはオプション的な立ち位置ではあるものの、デフォルトの選手査定が100歩…いや1万歩くらい譲歩したとしてもテキトーと言わざるを得ないため、後述のシーズンなどで選手個人・リーグ全体をまともと言える成績にするためには選手エディットが必須だ。

筆者は有名なFangraphsESPNなどを駆使して収録されている全選手の能力値をエディットした。
これらのサイトを利用したのはパワーなどの基本能力だけでは無く、特殊能力に関しても印象先行の曖昧な査定では無く、データ的に正しいと言えるものを設定したいと言う筆者の思いがあったからだ。
例えば、打撃傾向のプル率からプルヒッターを付けるべきか参考にしたり、P/PAの数値から積極打法・消極打法を設定したり、IsoDと三振率などから選球眼を付けるか参考にしたりしたのだ。
このような調べ方をしながら可能な限り一人一人を調査してエディットを行ったため、1球団分の選手をエディットするのに数時間を要した。

これは良く言えば「エディットがあったからこそ忠実にこだわれた」のだが、悪く言ってしまうと「エディットが無ければ絶望的なまでの選手査定」なのだ。

 

サクセス

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選手作成の自由度は驚異的だ

ここではストーリーではない部分のサクセスについて記載していこう。

本作のサクセスでは大きな特徴がある。
それは「リセットによるデメリットが無い」点だ。
これは恐らくだが選手エディット機能が実装されている事が影響しているものと思われる。

これに加え、もう一つの要素「ギャンブラーチケット」によって本作では「ほとんど自由な選手作成」が可能となっている。
「ギャンブラーチケット」とは取得するのに必要なポイントが1以上あればギャンブラーチケットを消費して確率でその能力が得られると言うものだ。得られるのは基礎能力でも特殊能力でもポイントを消費して得られる能力であれば何でも可能だ。
これを駆使すれば(いわゆる"リセマラ"の嵐にはなってしまうが)尋常ではない選手作成まで可能となる。

また、「継承アイテム」と言うものがあり、バットやグラブ、スパイクなどの基礎能力値に補正をかける装備品アイテムをサクセス選手に所持させないままサクセスを完了すると、次回以降のサクセス選手にそのアイテムを持ち越して購入する事が出来るようになる。
これらのアイテムは専用アイテムによってアイテム自体の効果を強化可能であるため、球速やパワーなどの能力値を簡単に大幅アップできるのだ。
更に、後述する「メジャーライフ」によってサクセスで作成した選手を更に強化する事も可能となっている。

サクセスのオススメは他の追随を許さず「グァヴァ・ストロベリーズ」だ。
ここではGMを追いかける事で定期的に貰える給料が増えていく。
そのため、体力回復をサクセス内のショップアイテム購入(コスパが最高の特製パワリンが良い)で行い、ターンを消費する事なく体力を回復できるようになるため効率良く練習が行える。
また、ギャンブラーチケットもショップ購入品のため特殊能力や変化球をガンガン覚えさせる事も可能だ。
更に前述の継承アイテムの購入も容易となり、基礎能力値は簡単に最大値に到達させる事が出来るのもシステムの恩恵を最大限に活かせている。

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最大限に駆使する事でこれくらいの選手がほぼ確実に作成可能だ

上図の選手はサクセスを最大限に活用したのち、メジャーライフによって追加で能力アップを行った選手だ。
この選手では変化球が全MAX値となっていないがこれは筆者の趣向によるもの故だ。筆者は「全能力MAX」というのがパワプロなどに限らず全てのゲームにおいてキャラクターの個性を潰している気がしてしまうため好んでいない。そのため、やろうと思えばここから更に変化球も全て最大値まで伸ばす事も可能である。
これらは非常に時間はかかるが、逆に言えば時間さえかければほぼ確実にこれくらいの選手が作成可能となる。

注意点として、サクセスでしか獲得できない特殊能力やメジャーライフでは上げる事ができない基礎能力などがあるため事前にサクセスで目指す能力を決めておく事が重要だ。

変化球

以下に変化球のおおよその情報を記載するので、サクセスの際には参考にして欲しい。最高球速は4シームで出せる最高球速から最小で何㎞/h遅いかと言う指標だ(つまり変化球の最大球速と思って貰って良い)。
これは投手の最大球速により若干変動するためおおよそと思って貰いたい。
なお、★は筆者のオススメの球種だ。

4シーム[最高速度 球速±0km/h]
2シーム[最高速度 球速-3km/h]★
ジャイロボール[最高速度 球速±0km/h]

スライダー[最高速度 球速-15km/h]
Hスライダー[最高速度 球速-9km/h]
カットボール[最高速度 球速-5km/h]

カーブ[最高速度 球速-26km/h]
ドロップカーブ[最高速度 球速-31km/h]
スローカーブ[最高速度 球速-45km/h]
スラーブ[最高速度 球速-18km/h]
ナックルカーブ[最高速度 球速-18km/h]★

チェンジアップ[最高速度 球速-24km/h]
サークルチェンジ[最高速度 球速-24km/h]
フォーク[最高速度 球速-19km/h]
SFF[最高速度 球速-12km/h]★
フォッシュ[最高速度 球速-18km/h]
Vスライダー[最高速度 球速-15km/h]
パーム[最高速度 球速-35km/h]
ナックル[最高速度 球速-18km/h]★

シンカー[最高速度 球速-23km/h]
Hシンカー[最高速度 球速-9km/h]
スクリュー[最高球速 球速-20km/h]

シュート[最高速度 球速-10km/h]
Hシュート[最高速度 球速-7km/h]
シンキングF[最高速度 球速-4km/h]

なお、本作においても恒例の「オリジナル変化球」があるのだが、そちらはバグなのか不明だがキレなどがほとんど無くなってしまう。
そのため、ベースとした変化球よりも基本的に弱体化されてしまうため注意が必要だ。
強いて言えば、元々キレなど無いスローカーブやパームと言った変化球との相性は良いため、実用性を考えるならばこれらを選択する事をオススメする。

 

シーズン

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パワプロのペナントに相当するシーズン

シーズンはパワプロシリーズにおいて「ペナント」に相当するモードだ。
プレイヤーはGM(ゼネラルマネージャー)となり、選手やチームと言ったマネージメントを行う。
選手采配や指導も行うため、正確にはGMと言うよりもGM兼監督兼コーチと言う立場になっているような気もするのだが、そこまで言うのは少々野暮だろう。

基本的な流れなどは歴代シリーズと変わらない。チームをトレードやFA選手獲得、ドラフトなどで強くしていき、ワールドシリーズの覇者を目指そう。
また、シーズンではリーグ拡張が可能である。新たな任意の2球団を追加して楽しむ事も可能だ。サクセスなどで作った選手で構成したオリジナル球団を投入してみるのが面白いだろう。

しかしながら、シーズンではバグの存在が少々気になるところだ。
特に問題になるのは「クラッチ逆転バグ」だ。
クラッチとは特殊能力の事でパワプロの「チャンス」に相当するものだ。
シーズンではこの性質が逆転してしまうバグが存在している。
シーズンを自動で進行させると顕著にわかるのだが、ミートが低いにも関わらず高打率を記録している打者は高確率でクラッチヒット1、2(チャンス1、2相当)を取得しており、ミートがいくら高くてもクラッチヒット4、5を取得していると低打率に落ちている。
クラッチヒットと言う特殊能力1つでここまで打撃成績に影響があること自体にも問題があると思うが、性質が逆転しているのは何ともスッキリしない。
筆者の場合にはこの性質のため、選手エディットを行った際に全選手のクラッチヒットを消すように設定を行ったほどだ。
シーズンなどに関係なく、その他にも比較的簡単にわかるバグがちらほら散見され、何故これらが改修されなかったのかが不思議なくらいだ。

 

メジャーライフ

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パワプロのマイライフに相当するメジャーライフ

メジャーライフはパワプロシリーズにおける「マイライフ」に相当するモードだ。
プレイヤーは1人のメジャーリーガー(マイナーリーガー)となり、MLBでの活躍を目指す事となる。
メジャーライフではマイライフ同様に現役の実在選手を操作する事も可能であるが、サクセスで作成したオリジナル選手でプレイする事も可能だ。
また、メジャーライフでは特定条件をクリアした際に取得できるアイテムを使用する事でメジャーライフで鍛え上げた選手をサクセス選手のような形で取得する事もできる。
なお、メジャーライフで取得した選手は再びメジャーライフで活躍させる事ができないため注意が必要だ。

メジャーライフは前述のシーズンと同様のアーキテクチャで組まれている節があり、そのためこちらでも同様のバグが存在している。
プレイヤーが操作する分には正直言って気になる事は無いのだが、シーズン終了時のリーグ全体の選手成績が気に入らないと感じる場合には要エディットとなるだろう。

 

選手カード

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地味ではあるが選手カードと言うやり込み要素もある。

入手方法は様々に用意されているのだが、本作では上図のように選手カードによる選手の写真付きカードが収録されている(一部は写真無し)。
これによってメジャーリーガーの知識を得る事も可能な点は嬉しい所だ。

 

グラフィック

パワプロシリーズ自体、そこまで美麗なグラフィックにこだわっていないため、本作においても劇的な何かがある訳では無いが、メジャーリーグ特有の個性溢れる球場は見物だ。
また、サクセスなどで登場するオリジナル球場においても実に個性的である点も見逃せないポイントだ。

 

サウンド

パワメジャ2009の楽曲はパワプロ系列の楽曲と比較して全体的にクールでカッコいいメロディに仕上がっている。
中でもOP曲やサクセスの「モンモンモンキーズ」における試合BGMは必聴だ。

 

総評

実況パワフルメジャーリーグ2009は、YOMIシステムによる圧倒的な投手有利なゲームとなっているのだが、それによって生み出される打撃の緊張感と達成感、そして現代野球との類似性は筆者が知る限りで間違いなくNo.1の野球ゲームだ。
サクセスにおいても自由度が高く、収録されていないような再現選手作成なども行いやすい点も筆者としては嬉しいポイントである。

しかし、致命的では無いとは言え簡単に見つかるようなバグが多いのも事実だ。
また、バントと盗塁の難易度の高さ、異様に消費の激しい投手のスタミナ、調べもしないで査定したとしか思えないデフォルト選手能力など、100歩譲っても気になる調整になっている事も問題点と言わざるを得ない。

筆者としては最も理想に近い野球ゲームであると言えるのだが、それと同時に至らない所もハッキリと見える作品でもある。

【レビュー】大神

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太陽は昇る

筆者が大神という作品に出合ったのはPS2時代だ。
当時から狼という動物が好きだった筆者は、狼が主役のゲームに手を出さないハズが無かった。
今では名実共に史上に残る名作となっている。

それから約10年経った今、筆者も久しぶりにプレイをしたので今回は「大神 絶景版」のレビューをしていこう。

 

大神 絶景版 - Switch

大神 絶景版 - Switch

  • 発売日:2018/08/09
  • メディア:Video Game
 
大神 絶景版 - PS4

大神 絶景版 - PS4

  • 発売日:2017/12/21
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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日本神話や伝承をベースにしたストーリー

大神のストーリーは日本の神話や伝承をベースにしたストーリーとなっている。
そのため、日本人であれば聴いたことのある登場人物もとても多く、親しみやすい事だろう。
とは言え、使用されているのはあくまでもベースのみであり、実際の神話や伝承とは描かれ方は異なる点に注意だ。

ストーリーの大筋は妖怪達によって災いや呪いの蔓延する世界を主人公である大神アマテラスと相棒イッスンのコンビが浄化し、人間を含む動植物に幸福をもたらす事だ。
アマテラスとイッスンは様々な冒険をして多くの人と関わり、多くの生命を救っていく事になる。
本作ではストーリーが主体となりプレイヤーをグイグイ引っ張っていくストーリードリブンなタイプのゲームとなっている。
そのため、プレイ重視で文章を読まずに進めてしまうタイプのユーザーは注意した方が良いかも知れない。

ややネタバレになってしまうが、物語の終盤になるとSF的な要素も出てくる。
しかし、この展開はプレイヤー目線としてはやや唐突・突飛な話に思える。
物語の後半でタカマガハラと言われる土地の存在が語られ、アマテラスは最後にタカマガハラへと向かう。タカマガハラはアマテラスの故郷とも言える土地ではあるのだが、プレイヤーからすれば未開の土地でしかない。
操作するアマテラスの知識≒プレイヤーの知識であるため、プレイヤーが理解・納得しないままにアマテラスがタカマガハラへと向かう行為はプレイヤーとアマテラスを引き剥がすような行為に他ならないように感じるのだ。
もっと端的に表現すれば”打ち切りENDのようなモヤモヤ感”である。
本来は本作の本編に続く"タカマガハラ編"なども存在したと言われるが、その影響である可能性は否めない。

とは言え、ストーリーは全体的には非常に素晴らしい。
特にラスボス戦の演出は傑作と言えるだろう。
ストーリー上で多くの者たちと関わって来たからこそ感じる事ができる感動がそこにある。
また、太陽をモチーフとした存在同士の戦いになっているのも見事な対比として機能している。

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メタ表現も交えたチュートリアル

本作では操作や機能に関してメタ表現を交えて説明される。
これらの説明は単純な説明によってプレイヤーを白けさせる事を防ごうとしている節があり、可能な限りチュートリアルの説明も面白くしようとしており丁寧で好印象だ。

 

システム

本項ではシステムに関して記載する。

初めに大まかな欠点を記載しておこう。
まずはカメラワーク関連だ。
大神のカメラワークは全体的に鈍く、向きを変える際に少々時間がかかりアクションが行いにくいケースがある。ここは若干のストレスに感じる事もあるだろう。
また、エリアが切り替わった際にカメラ位置が記録されない事による問題も気になるポイントだ。
例えば、下方向に入力した状態(アマテラスが手前に来る形)でエリアを出たとしよう。しかし、次のエリアに遷移した際に下方向にトリガーを入れっぱなしにしていると、元のエリアに戻ってしまうのだ。
この状況の問題点がわかるように記載すると、
ユーザーはアマテラスがカメラに正面を向いた状態でエリア遷移しているが、エリア遷移後はカメラはアマテラスの後方に戻っているのだ。
これはカメラの表示位置がエリア切り替えによってリセットされてしまうために発生する問題でもあるし、それを見越した調整をしていないために発生している問題でもある。
このカメラ位置がリセットされてしまうのはもっと単純な問題として見やすいポジションに移動をさせてもリセットされてしまう事を意味しており不親切だ。

大きな欠点では無いながら、大神アマテラスの走行スピードの遅さも気になるポイントだ。
アマテラスは最大3段階のダッシュ速度の変化があるが、最大速度であってもエフェクトにより速く見えるものの実際のスピードはそれほど向上しておらず行きたい場所まで走るのに結構な時間を必要としてしまう事も多い。
ファストトラベルのような機能も存在しているが、使用するにはファストトラベルをするための特定のポイントに赴く必要もあり不便だ。

これらのカメラワークやダッシュ速度、ファストトラベルの仕様はいずれも10年以上前の過去の作品であるが故のものとも言え、傑作と言えども時代を感じさせる要素だ。

 

筆しらべ

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インタラクションが世界に影響を与える

大神と言う作品において最も特筆すべきシステムは「筆しらべ」だ。
筆しらべはユーザーが特定の図を画面内に描くことによって発動するギミックだ。墨瓢箪(MPのようなもの)がある限りはいつでもどこでも使用する事が可能だ。
発動するものは太陽を出現させたり、枯れ木に花を咲かせたり、炎や雷を出現させるものまである。
これらを駆使して敵やダンジョンを攻略していく事になる。

敵やダンジョンなどで活用する事はもちろん嬉しいのだが、筆者が特に嬉しく感じるのは村人などに対してもこれらのインタラクションが”ある程度”有効である点だ。
村人に対して筆しらべを活用すれば、その超常現象に驚くリアクションを見せる。炎や雷を当てる事さえでき、炎で燃やせば黒焦げに、雷が当たれば痺れるようなリアクションになる(死んだりする事は無い)。

一見何気ない要素なのだが、ユーザーの操作に応じてリアクションが変化するというインタラクションはユーザーが「ゲーム内の世界に影響を与えている(介入している)」ことを強く印象付けてくれる。
もしもこれが炎や雷を出しても何もリアクションが無い、反応が全て共通のリアクションとなっていれば「ユーザーが世界に与える影響」は非常に薄く感じてしまった事だろう。

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敵が筆しらべを使う事もある

驚くポイントとしては、本作の筆しらべは(極一部ではあるが)敵も仕掛けてくるという点だ(上図の赤線は敵が使用してくる筆しらべ)。
それまでユーザーのみが使う事ができると思い込んでいた「筆しらべ」と言うシステムを敵側が使用してくる。
これはゲーム側からユーザーに対してインタラクションを行おうとしているようにも感じられるものとなり、バトルのバリエーションとしてだけで無く、ユーザーの予想超えるようなストーリーテリング的な演出としても非常に面白いものとなっている。

 

バトル

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軽快なバトル

大神のバトルシステムはアクション要素が強い。
武器を駆使した攻撃や前述の筆しらべを使用するスピーディーな戦闘だ。
操作の手応えは非常に良く、爽快で軽快なアクションは現代でも全く問題無く楽しめる。

大神アマテラスは神器である鏡・勾玉・剣を駆使して戦う事となる。
これらの神器はそれぞれ特徴が全く異なり、また表と裏にそれぞれセットする事となり、表でセットするか裏でセットするかでも性質が変化する。
戦闘中であっても変更できるため、敵との相性を考えて臨機応変に戦うのも良いし、自分好みの設定でプレイする事も可能だ。

バトルシーケンスはシンボルエンカウントとなっており、バトルフィールドはエンカウントしたエリアを範囲で区切るようになっている。
この辺りも10年以上前の作品であるが故の少々古いものに感じるだろう。

 

ミニゲーム

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気分転換に最適なミニゲーム

「釣り」や「モグラ叩き」と言ったミニゲームもある。

奥深いものでは無いのだが、わかりやすく1プレイが比較的短い(リワードを貰えるまでの所要時間が短い)ため熱中しやすく気分転換にも非常に良い。
釣りに関しては収集要素もあるためコンプリートを目指すのもオススメだ。

 

グラフィック

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輝きを失う事のないアート

大神のアートスタイルは唯一無二だ。
水墨画のようなタッチにより表現されるその世界観は非常に美しく、時を経てもなお、その世界の美麗さは輝きを全く失っていない傑作だ。

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”大神降ろし”は必見だ

大神では邪悪な妖気によって汚された大地を”大神降ろし” によって浄化するシーンが存在する。
このシーンはグラフィックと音楽も相まって必見のシーンだ。
ネガティブな暗い気持ちや存在が、ポジティブなものへと瞬く間に変わり生命や大地の喜びを感じさせるその姿は非常に感動的だ。
このシーンを見るだけで感動で泣けてくるような気持ちになるが、そう感じるのは決して筆者だけでは無いのではないだろうか。

 

サウンド

大神はサウンド面も非常に素晴らしい名曲揃いだ。
日本的な音を残しつつ、バトルでは激しいテンポも取り入れている。

ポジティブで感動的な「大神降ろし」

激しいチャンバラのようなボス戦曲「ウシワカ演舞~ウシワカと遊ぶ」「赤カブト退治」「妖魔王キュウビ退治」

カッコよさと頼もしさを感じさせる「真スサノオ

爽やかで壮大な「両島原」

最終章の厳しい戦いを思わせる「極北の國」

最終決戦の傑作「「Reset」~「ありがとう」バージョン~」「太陽は昇る」

どれも史上に残る傑作と言える楽曲だ。

 

総評

大神はPS2で発売された作品であり、確かに時代を感じる古い手法は見て取れるのだが、それでも全く輝きが失われていない傑作だ。

日本人ならば耳馴染みのある存在が多く登場し、プレイヤーを強く引っ張っていくストーリーや感動的な美しい水墨画のようなアートスタイルは記憶に残り続ける事だろう。
もちろん、日本風な楽曲達も印象的だ。
総合的に考えても素晴らしい完成度となっている。
人生において必ずプレイしておきたい作品だ。

 

外部記事

CAPCOM:大神 絶景版 公式サイト インタビュー

大神Blog

社長が訊く『The Wonderful 101』|Wii U|任天堂 (神谷 英樹さん 篇)

SF史に残る(べき)ゲームたち:第9回『大神』前編――ゲームそれ自体への批評と個人的背景

SF史に残る(べき)ゲームたち:第10回『大神』後編――日本の伝統的な絵画とゲームとの出会い

「大神」はアートじゃない。すごく間口の広い、質の高いアクションアドベンチャーなんです。 - ITmedia Gamez 

インタビュー『大神(OKAMI)』 - 電撃オンライン

【レビュー】ゼノブレイド2

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オレは君と行きたいんだ。楽園に。君と二人で。

今回のレビューは非常に長文となる。その点だけは注意して読んで欲しい。

筆者はゼノシリーズが大好きだ。
元々、敬虔なスクウェア教徒であった筆者はゼノギアスも好きな作品であった。
また、ゼノブレイドでは当時(2010年頃)のJRPGに辟易していた筆者を心の底から驚かせた。JRPGと言うジャンルの未来に対して希望が生まれたような瞬間だったのだ。
それから5年後(N3DSへのゼノブレイドの移植という驚きもあったのだが)、新作となる「ゼノブレイドクロス」も登場した。

そしてゼノブレイドクロスから”わずか”2年後の2017年。
Nintendo Switchプレゼンテーションにおいて「ゼノブレイド2」が2017年内に発売される事が発表されたのだ。その後もE3やGamescomなどでもゼノブレイド2の説明やゲームプレイが公開されていった。
当時の筆者はというと、自分自身から込み上げてくる期待感…ハードルを何とか下げたかった。自身の中のハードルを上げ過ぎたせいで、それがガッカリ感に繋がってしまうのではないかと言う不安があったのだ。
不安になる要素はいくつかあった。
真っ先に挙げるのはリリース間隔だ。ゼノブレイドクロスから2年間しか経ていない。そしてその2年間のモノリスソフトと言えば、ゼルダの伝説 Breath of the Wildやスプラトゥーンと言った任天堂フランチャイズタイトルの一部を受託開発しているのは知られていたし、プロジェクトXゾーンの開発も行っていた。
そんな状況下においてモノリスソフトというメーカーがゼノブレイドシリーズのような巨大なゲームを開発する余裕があると思えるだろうか。普通に考えれば無理な話である。
筆者はそんな状況は脳内では理解できつつも、ハードルを下げるという事は感情が許してくれなった。

そして2017/12/01…ゼノブレイド2は発売してしまったのである。

 

Xenoblade2 (ゼノブレイド2) - Switch

Xenoblade2 (ゼノブレイド2) - Switch

  • 発売日: 2017/12/01
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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ジュブナイル&ボーイミーツガール

ゼノブレイド2のストーリーコンセプトは”ジュブナイル&ボーイミーツガール”だ。
舞台は雲海(現実世界のものとは性質が異なる)だけが広がる世界アルストで、動植物達は巨神獣(アルス)といわれる巨大な生物の上で生活している世界観である。
しかし、近年では巨神獣の数が減り人々が安心して暮らせる土地がなくなりつつあるという。アルストは徐々に、そして確実に衰退しつつある世界なのだ。
主人公であるレックスは雲海の中から物資を引き上げるサルベージャーと呼ばれる仕事に従事する少年だ。そんなある日、とある仕事により特別なブレイド「天の聖杯」と呼ばれている”ホムラ”という少女と出会い、そして彼女が望む”楽園”を目指す冒険を始める。

ゼノブレイド2においてはレックスは最初から最後まで一貫して”楽園”を目指し続ける。
常に皆の先頭を走り、時に挫折しながらも、それでも前に進んでいく主人公だ。
主人公が世界の状況や真実を知る事により最初に抱いていた夢が後回しにされるケースは少なくない。
しかし、レックスはどんな状況に置かれても決して惑わずに夢に向かって走り続ける。その姿はボーイミーツガール(運命的な出会い)と言う設定もあいまって昔見ていたアニメなどを思い出さずにはいられない。
また、過去のゼノシリーズにもあったが本作でもプラトンの思想やそれに影響を受けたグノーシス主義がフレーバーとして散りばめられているほか、本作では「永劫回帰」などのニーチェの思想が強めに引用されているものと思われる。
主人公であるレックスに関しても「超人」あるいはニーチェから影響を受けたアドラーの「共同体感覚」をベースとした主人公像となっているように捉えられる点は設定として興味深い。

ゼノブレイド2はストーリードリブン(物語主導)なゲームプレイとなるのだが、そのボリュームは相当なものであるため、ストーリー含めてじっくりとプレイしたい人にオススメだ。
特にメインストーリーの進行で発生するカットシーンは非常にクオリティが高い。
キャラクターの表情や演技が細部まで作り込まれている事はもちろん、カットシーン中に喋っていないキャラクターもしっかりとリアクションを行っており演出として非常にリッチだ。
他にもカメラワーク、音楽の使い方…映像演出として取り上げられるポイントのどれもが素晴らしく、濃密で高品質な3Dアニメ映画でも観ているようだ。 
シナリオ自体も時に熱くさせられ、時に切なくなるジュブナイルものに仕上がっている。
また、本編では直接語られていない要素やサブストーリーでわかる世界設定なども多く、上述の通りプラトンニーチェといった思想が引用されているためメタ的な視点による解釈も可能であるため、濃い設定が好きな人は考察を含めて更に楽しめるだろう。

そんな本作にもストーリー面で欠点がないわけではない。
それはカットシーンによる映像演出において表現不足と言わざるを得ない箇所がある点だ。特に重要なカットシーン演出では非常に高い品質であるのだが、中盤頃の一部のカットシーンではやや表現が甘く、映像による説得力が落ちているのは非常に勿体ない。

また一長一短な要素として、本作は日本アニメらしい表現(特に序盤~中盤)が使用されている事もあるため、アニメ的表現が好きか否かで受け止め方も異なってくるだろう。
ただし、根本的にグラフィックスタイルがスタイライズドなアニメ調であるため、「アニメ的表現がある」ことを「一短」と言い切るのも少々お門違いだろう。
そういう意味ではキャラクターデザインの段階で好きになれそうか判断するのが良いと言える。

なお、本作は前作ゼノブレイドおよびゼノブレイドクロスをプレイせずとも楽しむ事が出来るようなストーリーとなっているが、可能であれば過去作(特に初代であるゼノブレイド。出来ればゼノギアスゼノサーガも。)をプレイする事で更に面白いものとなる。
ここの記載は少しだけネタバレを含むものとなるが、「なぜホムラやメツの剣は片刃なのか」「最後のトリニティプロセッサーはどこへ行ったのか」「なぜ扉(ゲート)と言われる存在は機能停止していたのか」「なぜ扉(ゲート)は消えたのか」など、本作だけでも理由を考察できるものもあるが、シリーズを知っていればより考察しがいのあるものも多く用意されている。
歴代ゼノシリーズファンにとっても嬉しい要素が満載の重要な作品なのだ。

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ドライバーとブレイドの絆

ゼノブレイド2を”ジュブナイル&ボーイミーツガール”という表現をしたが、ストーリーは「ドライバーとブレイドの絆」が非常に大切に描かれている点も決して見逃してはならないポイントだ。

ブレイド」とはコアクリスタルという物質に生命体が触れる(同調する)事で誕生する亜種生命体と呼ばれる存在だ。
コアクリスタルは誰でも同調できると言う訳ではなく、同調するための適性があり端的に書いてしまえば選ばれた者しか同調は行えない。
そしてブレイドと同調する適性のあった者は「ドライバー」と呼ばれる。
ブレイドは「ドライバーの身体能力の向上」「武器を生み出す」と言った特性の他に「ドライバーの状態・感情を大なり小なり感じ取れる」「ドライバーが死ぬとコアクリスタルに戻る」「戻ったコアクリスタルと同調しても以前の記憶はない」といった設定が存在する。
これらの設定を文章で書いたところで伝わりにくいかも知れないが、ドライバーとブレイドの関係とは「一心同体」の運命共同体であり、かけがえのない家族であり、友人であり、恋人なのだ。
彼らはその絆ゆえにお互いを大切に想い、同様にその絆ゆえに深淵の闇へと堕ちていく者達もいる。
レックスを始めとしたパーティーも一歩間違えれば闇へと堕ちてしまったのではないかと思えてならない。

この辺りの表現はいわゆる「家族もの」などにすっかり弱くなってしまった筆者には非常に心に刺さるものが多かったように思う。
「もしも自分がブレイドだったら」「もしも自分がドライバーだったら」と考えずにはいられない非常に考えさせられる設定だ。

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ブレイドエストとキズナトーク

ブレイドには著名なイラストレーターが描き下ろしたデザインを基に作られた「レアブレイド」と呼ばれるものが存在する。
そのレアブレイドのほとんど全てにそれぞれに対応した専用のクエストが存在しており、それがブレイドエストと呼ばれるものだ。
ブレイドエストでは専用のカットシーンが用意され、レアブレイドのキャラクター性を掘り下げたり、キャラクター性を活かした内容のストーリーを観る事ができるクエストとなっている。
なお、クエストで観たカットシーンに関しては後から見返す事も可能になっている。

キズナトークはキャラクター同士の会話が繰り広げられる。
その内容は多岐にわたり真面目なものや笑えるものなど様々だ。
また、キャラクター性やキャラクター間の関係性、世界設定について補完するものとしても機能している。
ゼノブレイドシリーズをプレイしている方にはお馴染みの要素だろう。
過去作と大きく変化したポイントは全てフルボイスとなったと言う点だ。
このキズナトークは非常に多く用意されており、その中身に関しても主要キャラクターのものを始め、レアブレイド専用のものも用意されている。
キズナトークに関してはブレイドエストのカットシーンとは異なり、後からいつでも見返す事ができない。ストーリーテリング上、仕方がないとは言え少々残念にも思える。
またマイナスとまではいかないが、ボイスを付けるようにしたのであれば是非とも会話のオート送り機能も実装して欲しかった所だ。

ストーリー本編のボリュームも凄まじいのだが、数多くいるレアブレイドをフィーチャーしたカットシーン付きの専用クエストやパーティーメンバーやレアブレイドによるフルボイスのキズナトークなどそのボリューム感は常軌を逸しているレベルであると言えるだろう。

もう1つレアブレイドという存在を語る上で忘れてはならないポイントがある。
レアブレイド達は多種多様なイラストレーターによって描かれているために見た目や雰囲気がまるで違うため、必ずしも様式美的な統一された表現ではない。
しかし、このバラバラである事こそがシリーズにおいての本質的とも言える部分を捉えているポイントなのだ。
「Xeno」とは「異種」を表す言葉である。
過去作のゼノシリーズにおいては「異種族」であったり「異星人」であったりと「自身とは異なる存在との交流」を描いてきた事が多い。
様々なイラストレーターを起用した、表現が統一されていない様々なブレイド達の存在は正に「Xeno」を体現した象徴なのだ。

 

キャラクター

ゼノブレイド2のキャラクターについても記載させて欲しい。
なお、一部ゲームシステムにも突っ込んだ内容を記載している点はご容赦願いたい。

 

レックス

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レックス

主人公であるレックスは非常にまっすぐで熱血だ。
レックスは常に前を向き、誰よりも先頭を走り続けパーティーの皆を引っ張って行く姿はまだ子供とは言え非常に頼もしい。

レックスの主人公像は近年の傾向も鑑みて設定されているようだ。
つまりは近年の主人公像に対してのCounterattack(アンチテーゼ)のような側面もあるのかも知れないが、近年では確かに見なくなってしまったクラシックな主人公でもあるのではないだろうか。
また、前述のニーチェアドラーといった思想を大きく感じさせるものともなっている点は考察や解釈を行う上では見逃せない。

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ピンチでも女の子の前で余裕ぶって見せる表情は作り込みを感じさせる

レックスは下野紘さんが声を担当している。
下野さんの演じるレックスは非常に素晴らしい。
特に感情のこもった力強く叫ぶセリフには感情が大きく揺さぶられるものが宿っている。
他にもニアとのふざけ合ってる感じの仲の良さが伝わってくる演技なども印象的だ。

 

ホムラ

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ホムラ

ホムラは本作のヒロインの1人だ。
ホムラは”天の聖杯”と呼ばれる非常に特殊なブレイドである。

ホムラは基本的におとなしく、誰に対しても優しく少々頼りない印象はあるが芯の部分は強く非常にしっかりしている印象だ。
彼女は母性を体現したような存在であり、他者に対して常に優しく接する。
筆者の受け取り方は…という前置きは入れておくが、ホムラはレックスの事を「年下の男の子」として接しているように感じた。
主人公レックスを「恋愛対象として意識しすぎていない感」がむしろ筆者には好感が持てたポイントだ。

彼女には後述するもう1つの人格”ヒカリ”が存在する。
ゼノシリーズにおいて”母性”や”複数の人格”というキーワードとなるとゼノギアスにおける”エレハイムとミャン”(複数の人格であれば他にも”臆病者とイドとフェイ”)を思い出す人も多いかも知れない。
だが安心して欲しい。本作におけるホムラとヒカリは非常に仲が良いのだ。
この辺りに関してもフロイト的な側面の強かった過去のゼノシリーズというよりも、アドラー的な側面が強いと感じられるポイントと見ても良いかも知れない。

ホムラの戦闘時の能力的には火力特化型で、その瞬間火力はヒカリを上回る。
ヒカリからホムラへとスイッチした際に「ここは加減が必要です」などと言う割に彼女自身は加減を知らないのである。
キズナが育てばブレイドコンボでカンストダメージを叩き出すなど恐ろしい女の子になるのだが、逆に火力が上がりすぎてヘイトを奪ってしまう事も多いため注意した方が良いだろう。

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ホムラは優しくも芯の強いお姉ちゃんだ

ホムラは下地紫野さんが声を担当している。
ファミ通のインタビューやサウンドトラック付属のブックレットによると、ゼノブレイド2においては当初はカットシーンのセリフの時間を計るために起用されており、そのまま製品においてもホムラ・ヒカリを演じる事となったようだ。

ちなみにグッドスマイルカンパニーよりフィギュアが発売されている。
(筆者は既に購入済みだ)

ゼノブレイド2 ホムラ 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

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  • 発売日: 2018/12/22
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

ヒカリ

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ヒカリ

ヒカリは本作におけるもう一人のヒロインだ。前述のとおりホムラの別人格である。

筆者は任天堂公式のゼノブレイド2 Directにてヒカリを見たときに「きっとホムラとは正反対のキャラクターなのだろうな」と予想していた。
つまり「優しいが少々頼りないホムラ」の反対「厳しくバリバリと仕事をこなす事ができるキャリアウーマン的な存在」がヒカリになるのだと思っていたのだ(予想していたのはゼノブレイド2内のベンケイのような性格が最も近い)。
だが、実際にプレイしてみると…なんと可愛らしいキャラクターであることか。
端的な表現をしてしまえば”ツンデレ”に相当する性格をしており、キリッっとカッコよく登場したかと思えば、すぐにポンコツな一面や少々ガサツな一面が判明したりと非常に可愛らしい事がよくわかる。

能力的にはアーツリキャスト関連の能力が揃っており、終盤頃までの心強い存在になってくれる事だろう。
しかし、各国の発展度が向上して上質なポーチアイテムが登場し始めると、ポーチアイテムだけでアーツのリキャストに困らなくなってしまうため、ケースによっては純粋に光属性のブレイドとして起用する側面もあるだろう。

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ヒカリはツンデレでややポンコツな所があり可愛らしい

ヒカリはホムラ同様に下地紫野さんが声を担当しており、その演じ分けは非常に丁寧だ。
ホムラが人当たりが優しい喋り方であるのに対して、ヒカリはかなり自信家な喋り方である事が演技からも非常に良く表現されている。

ちなみにグッドスマイルカンパニーよりフィギュアが発売されている。
(筆者はこちらも購入済みだ)

ゼノブレイド2 ヒカリ 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

ゼノブレイド2 ヒカリ 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

ニア

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ニア

ニアは本作における更にもう一人のヒロインと言っても良いだろう。
彼女の存在なくしてゼノブレイド2は語る事はできない。

ニアはパーティーメンバー内において基本的にはツッコミをする役回りであり、少々生意気で口は悪いのだが、言葉のチョイスやコロコロ変わる表情、良く動く可愛らしいケモノ耳など非常に可愛らしい面も多い。

ニアも他のキャラクター同様にレックス達に隠している事があるのだが、それを知る時には彼女の事が心から愛しい存在になっているだろう。

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ニアは生意気な所もあるが根は素直で良い子だ

ニアは大和田仁美さんが声を担当している。
大和田仁美さんの演じるニアは実に生き生きとしている。
コミカルなシーンでみせる切れ味鋭いツッコミ。
シリアスなシーンの落ち着いたトーン。
どれも印象深いのだが、それはやはり大和田さんの演技あってこそであったと思う。
ファミ通のインタビューやサウンドトラック付属のブックレットによるとホムラを演じる下地さん同様にカットシーンの時間を計るために起用されており、そのまま製品においてもニアを演じる事となったようだ。

ちなみに少々ネタバレを含むデザインだがニアもグッドスマイルカンパニーよりフィギュアが発売される。
(当然筆者は購入済みだ)

 

トラ / ハナ

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トラとハナ

トラはゼノブレイドシリーズではお馴染みのノポン族の少年だ。
トラと言う名前のノポンはゼノブレイドクロスにおいても登場しているのだが同名の全くの別人である(ノポン族のキャラクターは作品毎に同名の別人が登場する事が多い)。
彼は2000年代中期頃のオタク文化的な趣向があるものの、基本的にはノポン族らしくマイペースでワガママだ。しかし、その見た目や声の影響からか憎めないムードメーカーと言うのが最も適切ではないだろうか。

トラの声は野中藍さんが担当している。
ノポン族特有の憎めないキャラクターになっているのは、野中さんの声質のおかげである事も影響しているのではないだろうか。
筆者もゼノブレイド公式Twitterにてトラの声優が野中さんだと公表された際にはピッタリだと思ったものだ。

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ハナ

人口ブレイドであるハナは、トラ(とその父と祖父)がドライバーに憧れた結果に誕生した機械仕掛けのブレイドだ。
仲間達に対しては非常に優しく接するのだが、トラの事を「ご主人」とは呼ぶものの基本的に扱いはぞんざいである。
また、そんな扱いに対してツッコミを入れるトラとのやり取りは微笑ましい。

ハナの声は久野美咲さんが担当している。
物語後半でレックスに対して発した優しく叱咤するセリフやエンディングのやりとりには思わず涙が出てしまった。
久野さんと言うと舌足らずなロリ系を演じる事が多いかと思うが、あの舌足らずな感じがあるからこそトラの事をぞんざいに扱っても悪い子ではないと感じるのではないかと思う。

 

メレフ / カグツチ

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メレフとカグツチ

メレフはスペルビア帝国の特別執権官と言う肩書を持つと同時に帝国最強のドライバーだ。

筆者は当初、メレフは中盤に立ちはだかるハードルとしての存在なのではないかと思っていたため、想像よりも早く仲間なった印象だ。
メンバーの中では最も常識的な人物だ。

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カグツチ

カグツチはメレフのブレイドであり、メレフ同様に非常に常識的な人物である。…料理の知識は皆無のようだが。
カグツチはこの物語において多くのブレイドがどのような事を考えて生きているのかを示してくれる(代弁してくれる)存在でもある。

 

ジーク / サイカ

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ジークとサイカ

ジークは基本的にコミカルなキャラクターだが、シリアスなシーンで見せるギャップはズルいほどにカッコいい。
ふざけているように見えて、本当は強くて頼りになる兄ちゃん的な存在だ。
そんなのカッコよくない訳がない。

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イカ

イカジークのブレイドであり、基本的にはジークに対してツコッミを入れる役回りが多い。
とは言え、サイカジークに対してかなりの好意を持っているのがわかる。
そうであるが故に彼女も一歩間違えればイーラのような存在になってしまったのではないかと筆者はつい想像してしまう(これは他のキャラクターにも同様に言える事だ)。

筆者がジークとサイカの二人の関係性で最もグッとくるのは一見ジークがふざけておりサイカがしっかりしているように見えるが、本質的にはジークの方がどっしりと構えて頼りになる存在である点だ。

 

セイリュウ 
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セイリュウ

セイリュウの立場も非常に懐かしいものを感じた。
筆者が小学生の頃に見ていたアニメなどでは、セイリュウのようなアドバイスや諭す年長者タイプのキャラクターがいた気がするのだ(作品など具体的に出てこなくて恐縮だが)。

セイリュウ千葉繁さんが声を担当している。
千葉繁さんは本作品の演者の音響監督も務めた

 

システム

本項ではゼノブレイド2のシステムに関して記載していこう。

 

バトル

ゼノブレイド2のバトルシステムは筆者がプレイしたゲームの中でも間違いなくトップクラスの完成度のシステムであると断言して良い。
脳内麻薬が溢れ出るような感覚を覚えるレベルの快感は本作のとても大きなポジティブ要素である。

詳細は後述するとして、ゼノブレイド2のバトルの欠点について最初に書いておこう。
それは”難解(万人向けではない)”という点だ。
これは野球と言うスポーツが世界で流行しにくい現象と似ていると筆者は思っている。
野球は得点できるまでのシーケンスがサッカーなどと比べて明らかに難解だ。
「なぜ1塁に向かうのか」「なぜゴロを処理してアウトにできるのか」など楽しむのに必要不可欠となるルール自体を理解するのに一定の教養・知性あるいは知識を要求される。これは理解できるから凄い/偉いといった類いの話ではなく、「遊びの楽しさを理解できる領域(奥深さ)に到達しにくい」という事なのだ。

ではなぜ難解に感じるのかであるが、単純な要素の多さ以外にもチュートリアルにいささか問題があったように思う。
具体的には「戦力が整っていないのに戦術・戦略を教えすぎ」なのだ。
筆者も同様だったのだが、ブレイドコンボやドライバーコンボのチュートリアルが登場したタイミングではパーティーメンバーの戦力が全く整っていなかったため、それらを狙って発動させる事が難しい。
チュートリアルで説明された内容が通常バトルで簡単に再現できない状態では「バトルシステムが難しい」と感じてしまっても仕方ないように思う。
一応、敵の難易度調整として「序盤はアーツや必殺技」「中盤以降は必殺技やブレイドコンボ」で倒す事が想定された体力設定になっているようには感じるが、チュートリアルの仕組み、あるいはタイミングはもう少し検討した方が良かったのではないだろうか。

なお、チュートリアルに関してはゼノブレイド2の公式から一覧が公開されている。
使いこなせていないと感じた場合には再確認してみると良いだろう。
・チュートリアル1(バトル関連)

・チュートリアル2(装備やキャラクター強化など)

・チュートリアル3(探索など)

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美しくデザインされたバトル

ゼノブレイド2のバトルを端的に表現すれば「ぷよぷよ式」だ。
ぷよぷよ”は相手を倒すために連鎖を仕込む。そしてその連鎖が多ければ多いほど強力だ。ゼノブレイド2のバトルシステムに関してもコレと共通項が多い。
"ぷよぷよ"の連鎖させるための事前準備(積み上げ)がゼノブレイド2において「ブレイドコンボ」と呼ばれる属性玉を作り上げる工程と同様と言える。
また、積み上げた連鎖を発火させる方法はゼノブレイド2においては「チェインアタック」と言う要素が相当するのだ。
なお、ブレイドコンボやチェインアタックの詳細は後述する。

では、”ぷよぷよ”のような「積み上げていく事へのリスク」は存在するのかという点だが、そこに関してもしっかりと存在している。
リスクの1つ目は発火の役割を担うチェインアタックがパーティゲージを全消費してしまう事だ。
パーティゲージはHPが0になったキャラクターを復帰させる際にも使用するのだが、このゲージをMAXまで溜めた状態から全て消費する事で発動させる必要がある。つまり、チェインアタックで仕留め切れない状況にでもなれば途端に大ピンチになるのだ。
リスクの2つ目は敵へのダメージ量だ。
強力なユニークモンスターなどは体力が減る事で強力な攻撃を放つようになったりするのだが、連鎖の仕込みを行うためには威力の高いブレイドコンボを決めていかなければならない。
つまり、連鎖を仕込めば仕込むほどに敵が強力な攻撃を発動してくるリスクがあるのだ。
いかに迅速に仕込み、敵の強力な一撃を受けずに発火させるかも重要な要素となっている。

一般的にJRPGと呼ばれるゲームで多い「レベルを上げて(装備を整えて)殴る」構図はシンプルかつ確実性の高い楽しさを生み出す一方で、バトルが予定調和の単純作業と化し飽きが生まれやすい。
本作のバトルの奥深さの所以はこの”ぷよぷよ”のようなパズルゲームとの類似性がある点も考えられる。

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バトルデザインは美しく、隙を生じぬ四段構えだ

本作のバトルシステムの要素の関係性を簡潔な図にすると上図のようになる。
オートアタックはアーツを。
同様にアーツは必殺技を。
必殺技はブレイドコンボを。
ブレイドコンボはチェインアタックを。
…と全ての要素が1つのラインで美しく繋がっている。
これについても説明していこう。

過去作のゼノブレイドシリーズのバトルシステムにおいてはオートアタックとアーツによって戦術を組み立てるものとなっていた。
本作、ゼノブレイド2においてはこの部分においても非常に質の高い改良が行われているのだ。

オートアタックとはいわゆる通常攻撃であり、戦闘中に何もしていない時に発生する威力が低めの攻撃の事だ。
対してアーツは技のようなもので、発動させる事でオートアタックよりも大きなダメージやバフ・デバフ、回復を行うものとなっている。
アーツは連続で使用する事はできず、リキャストと呼称される再チャージ完了まで再発動はできない。

ゼノブレイドゼノブレイドクロスにおけるアーツのリキャストは時間経過により発動可能となるものが基本となっていた。
この構造は捉え方を変えるとオートアタックとアーツがそれぞれ独立あるいは競合した機能となっている事を意味している。

しかし、本作ではオートアタックとアーツの関係性の変更が行われ、非常にエレガントなバトルデザインへと昇華している。
まず、本作においてのアーツが時間経過ではなく「オートアタックを当てる事でアーツを使用できる」ように変更されている。
これにより独立・競合した機能となっていたオートアタックとアーツの関係性が直列的な共生関係・依存関係を持ったシステムになったのは大きいポイントだろう。
更に、「アーツを使用する事で必殺技が使用できる」ようになっている二段構え。
更に更に、「必殺技を繋げる事で強力なコンボとなるブレイドコンボ」というシステムによる三段構え…。
更に更に更に、「ブレイドコンボを積み上げた所で前述した”ぷよぷよ式”の連鎖発火を行うチェインアタック」へと昇華する隙を生じぬ四段構えだ。

この「多重構造の依存関係」で構築されたシステムは、言い換えれば「戦えば戦うほどに自身が強くなっていく構造」であるため、あらゆるプレイヤーの行動が無駄になりにくい。
また、前述しているが敵は体力が低下する事で攻撃の激しさが増す。
これは「戦うほどにプレイヤーが強くなると同時に、敵の攻撃も激しくなる」という"激戦"の構造になっているのだが、それはつまり「戦うほどにリスクとリターンが共に増大していく」ことで面白さのキモとなる駆け引きを生み出しているという事なのだ。

その他の紹介していない回復ポットやドライバーコンボやブレイドスイッチ、キャンセルなどのシステムも全て独立・乖離・競合することなく非常に綺麗にバトルシステムと言うテーブルの上に並べられている。
要素が多いため一見すると理解しがたいゴチャゴチャしたものに見えるかも知れないが、これほどのエレガントなバトルデザインとなっている事には驚くほかない。

 

必殺技
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必殺技を発動させると「ボタンチャレンジ」が発生する

前述のとおり、必殺技はアーツを発動させる事によって溜めたゲージを消費する事で発動する。必殺技は最大で4レベルまでチャージする事が可能だ。チャージしたレベルに応じて必殺技も変化する。

必殺技を発動させると「ボタンチャレンジ」と呼ばれるQTEライクなボタン操作を要求される。
ゼノブレイドシリーズ…特にゼノブレイド2においては地味ではあるが欠かせない要素の1つとなっている。

ではなぜそう感じたのかについて説明しよう。
この必殺技の発動中はドライバーはブレイドに武器を渡している。そのため、攻撃が行えない状態だ。
そんな中で本作におけるQTEライクなボタンチャレンジと言う要素がなかった時の事を想像してみて欲しい。
ボタンチャレンジがないと必殺技発動中はユーザーは手持ち無沙汰となりやるべき事が何もなくなってしまうのだ。つまり、戦闘中にも関わらずただただ映像を観るのみとなり、必殺技の時間が終わるのを待つしかないのだ。
かつてPS時代などのファイナルファンタジーでは召喚獣カットシーンが余りにも長く、ただ観るだけの戦闘となりプレイのテンポを著しく落としてしまっていた時期があった。
時間換算からすればゼノブレイド2においてはそこまでのテンポの悪さにならないにしろ、必殺技の発動中にボタンチャレンジ(QTE)がなければゲームのテンポが削がれていた事は疑いようのない事実だろう。

また、本作のボタンチャレンジは成功する事でメリットを得る「加点方式」のシステムである事も上手に活用できていると感じられるポイントだ。
使用方法で最も批判が多いと思われる「QTEの失敗が即ゲームオーバー」が代表的なように失敗する事でデメリットが発生する「減点方式」はハッキリ言って余り良い使用例ではないだろう。

必殺技にて押す事になるボタンもBボタン固定となっているのも非常に良い選択であると感じる。
戦闘中のような集中しているタイミングでQTEの指定ボタンが可変(押すボタンが毎回違う)となるようなデザインはよろしくないと思うのだ。
ユーザーは、戦闘中であれば戦闘に、カットシーンであればカットシーンに集中したいハズだ(ゼノブレイドシリーズにはカットシーン中のQTEはないが)。
そこに押すボタンが毎回違うような過度なQTEを導入してしまうと、戦闘やカットシーンではなくQTEに注意が向いてしまう。これでは本末転倒だ。

QTEと言えば近年では一般的に”悪しき遺産”として語られる事が多いように思うが、それは使い方の問題だと筆者は考えている。
ゼノブレイド2におけるQTEの使用方法は参考になる所が多いのではないだろうか。

 

ブレイドコンボ
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ブレイドコンボ

ブレイドコンボはブレイドの必殺技を属性によって繋げていき、3回繋げられるとブレイドコンボのフィニッシュとなる。
フィニッシュ時にはブレイドのカットインがカッコよく入り、またそれによって達成感を感じさせてくれる。しかも、チェインアタックで大活躍してくれる属性玉のおまけ付きだ。
カットイン中は味方が無敵となるため、緊急防御としても使用するケースが出てくるだろう。また、前述同様にボタンチャレンジもあるため、カットインの必殺技シーンとは言え観てるだけにならないものテンポが崩れない。

ブレイドコンボは一番最初に発動させた必殺技の属性によって繋がる属性が異なるため、戦力の整っていない序盤~中盤までは安定して出せるブレイドコンボのトリガー属性を覚えておくと良いだろう。

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ブレイドコンボの仕組みは単純だが、GUIからはシステムを理解しにくい

ブレイドコンボを3回繋げてフィニッシュすると敵に対してデバフ効果を与える事ができる。
例えば上図にあるような「ブレイド封鎖封印」や「キズナダウン封印」、他にも「悪臭封印」「ブロー封印」などなど。
厄介な特殊攻撃を使用する相手にはブレイドコンボによって抑え込むと良いだろう。

しかし、ここには問題点があるように感じる。
なぜならばGUIから次に何をすればブレイドコンボが繋がるのかがわかりにくいからだ。
攻略記事ではないためブレイドコンボの決め方はここでは説明しないが、GUIではアニメーション(最低限、矢印表記や点滅)などで次に何をすればブレイドコンボが成立するのかわかるように表記するべきではないだろうか。
※黄金の国イーラ編では、システム自体に変更があるがアニメーションによってわかりやすく再構築されている。

システムを理解してしまえば、このGUIも機能として十分に満足いくようにデザインされている事はわかる。
しかし、逆の視点として「システムを理解するためのGUI」として見た場合は少々混乱を招くようなデザインになっているように感じるのだ。

ゼノブレイド2に限った話ではないが、情報量の多いシステムにおいては画面がゴチャゴチャしやすく、またそれを解消しようとシンプルにすると直感性が薄れるというダブルバインドが発生しやすい。
一度理解してしまえば不便に感じる事はなくプレイフィールに大きな影響を及ぼすものではないとは言え、もう少し工夫が欲しかった所だ。

 

チェインアタック

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チェインアタック

チェインアタックとは端的に表現すれば「どうすれば属性玉を上手に割れるか」を考えてパーティー構成を検討するパズルのような側面を持ったシステムだ。

ブレイドコンボで仕込んだ連鎖を発火させるチェインアタックでは、ブレイドコンボによって積み上げた属性玉を割っていく事になる。
属性玉を割る事に成功すれば追加で攻撃するチャンスが発生するため、チェインアタックで大ダメージを狙うためには必須だ。
この属性玉は通常3回攻撃をヒットさせると割れるのだが、弱点属性(炎の属性玉なら水属性)で攻撃させると2回分ヒット相当のダメージとなり簡単に割る事が可能となる。
また属性玉が複数存在した場合、通常ではランダムにヒットするためどの属性玉に当たるかわからない。しかし、属性玉の弱点属性で攻撃した場合には必ず弱点の属性玉にヒットする。
こうした仕組みを知っておくと大量の属性玉があっても効率的にチェインアタックで連鎖を行えるだろう。

バトルにおいてはこのチェインアタックが最も重要だ。
特に高レベルな格上の相手と対峙する場合には必須とも言える。
高レベルの相手の場合には体力の低下に応じて非常に強力な攻撃を放ってくるケースが多くなる。そうなるとこちらの回復ペースが崩され戦力がジリ貧になりやすくなるのだ。そのため、敵の体力が大きく下がりきる前に多くの属性玉を仕込み、そしてチェインアタックにより発火させ、強力な攻撃が放たれる前に敵を始末するのだ。
つまり、本作のチェインアタックは「それまでの立ち回りの成果を評価する要素」になっているのだ。
チェインアタック前の立ち回りで巧みに属性玉を仕込み、チェインアタックを成功させれば自分よりも格上の相手であっても勝つ事が十分に可能になっている。
画像のように表示上のカンストまでダメージを与える事だってできる。

立ち回り上のブレイドコンボで仕込んだものが絶大な威力になって表れるため非常に爽快でハイな気分にさせてくれる最高の攻撃方法となるのだが、戦力の整っていない序盤のうちは属性玉を割るだけでも苦労するため発動したは良いが削りきれずに逆に返り討ちにあう事も多い。
戦力が整ってきた段階で積極的に使用する事をオススメする。

前述しているが、パーティゲージを全消費してしまうリスク、連鎖の仕込みによって敵が強力な攻撃を放つようになるリスクがあるため、リスクとリターン(味方と敵の状況)を考えて使用しよう。

 

ドライバーコンボ

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敵の物理的な状態を変化させるドライバーコンボ

ドライバーコンボはブレイドの能力(属性)ではなく、ドライバー自身の技によって繋げるコンボだ。
ゼノブレイドシリーズの過去作をプレイしているのであれば「崩し⇒転倒」などと表現すればピンと来るだろう。
本作では「ブレイク(崩し)⇒ダウン(転倒)⇒ライジング(打ち上げ)⇒スマッシュ(叩きつけ)」の順番に行う事が出来るようになっている。
ドライバーコンボはブレイドコンボとは異なり、最終であるスマッシュまで無理に繋げる必要はない。戦況に応じて使用するのが良いだろう。
特にドライバーコンボはブレイクがトリガーとなるため、ブレイクを使えるメンバーを複数名用意したり、ブレイク抵抗を下げる装備をしたりすると安定しやすい。
また、ブレイクが通用する敵であればメンバー構成次第でブレイクとダウンを繰り返し発動させ、敵に何もさせないと言う戦術も可能である。
しかし注意点として、ブレイクが無効となる敵やブレイク抵抗が高い敵も多いため万能と言う訳ではない。
ドライバーコンボは基本的にプレイヤー1人だけでは狙って発動させるのは無理がある事が多い。
しかし、味方AIも賢いため状況に応じてドライバーコンボなどなど決めてくれるため仲間を信じて・息を合わせて戦う事が多くなる。
これによってプレイヤーはより仲間との一体感を得る事ができるのだ。

なお、ドライバーコンボとは少々異なるが「ノックバック」「ブロー」と言ったリアクション攻撃も存在する。
敵を高所から落とす事にも使用できるが、これらの攻撃はブレイドコンボと比較すると、よりアドリブ性の高い瞬発力を求められる使い方もできるのが特徴だ。
例えば敵が強力な攻撃の表示・予備動作をした際がわかりやすい。
「ブレイク」や「ダウン」、「ノックバック」と言った攻撃を行うことで敵の攻撃をキャンセルさせる事ができるのだ。
必ず成功するとは限らないが「ヤバい!!」と感じた際に防御行動として行う場合も多いだろう。

 

フュージョンコンボ

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ブレイドコンボxドライバーコンボがフュージョンコンボだ

フュージョンコンボは前述したブレイドコンボとドライバーコンボの両方を発生させた際に発動するものとなる。
発生した・させた際の効果としては「威力アップ」や「ブレイドコンボの時間延長」などがある。
一見、難しいのだがブレイドコンボやドライバーコンボの仕組みがわかってくれば、問題なく発動できる。

筆者がゼノブレイド2 Directを観た際、フュージョンコンボを決めた際に差し込まれる専用のカットインがゲームプレイのテンポの妨げにならないかと少々心配であった。
しかし、実際にプレイしてみるとこのカットインが戦闘のメリハリとなり心地良い達成感があり非常に爽快であった。

 

ロール

ゼノブレイド2のブレイドにはロール(役割)が存在する(ブレイドに関して後述)。
ロールは攻撃、回復、防御の3パターンだ。
攻撃ロールのブレイドは「敵にダメージを与える」ことが主目的となるが、余りにも大きなダメージを与えすぎるとヘイトを奪ってしまい敵から狙われる危険がある。
回復ロールのブレイドの場合には「味方のHPの回復」が主目的となる。パーティーの耐久性に関わる回復役は敵から狙われるような事がないようにしなくてはいけない。
防御ロールのブレイドは「敵の攻撃を全て請け負う」ことが主目的だ。他のメンバーに攻撃がいかないように立ち回る必要があり、逆に言えば防御ロールが耐えきれないようでは全滅は避けられないと言っても過言ではない。パーティーの主柱と言える存在だ。
これら3つのロールは全てが重要な役割であり、どれか1つでも倒されたり欠けたりすれば戦闘において非常に苦しい状況に立たされるだろう。
なお、ドライバーはブレイドのロールの種類によって能力補正を受けたり、戦闘の役割(CPUの挙動)を変更する事が可能だ。
また、同じロールのブレイドであってもブレイド毎に属性や特殊スキルが異なるため、自分好みの戦法や戦術・戦略を考える工程も非常に楽しい。

このような攻撃・回復・防御といった「ロール」と言う概念がある本作では、当たり前の事ではあるが「最強の万能ブレイド」と言った概念が存在しないのは大きなポイントだ。
ここはあくまで筆者の趣味趣向ではあるが、筆者は「最強の装備」や「全パラメーター最大値」といった要素がキャラクターの個性を潰しているように感じてしまい好みではない。
そのため、"最強のブレイド"のような「絶対の存在」がいない本作は、「キャラクター(ブレイド)の長所を活かす」や「ピーキーな能力をよりピーキーに」など自分なりの様々なビルドを考えたり試したりする事ができるため筆者は非常に楽しむ事ができた。
もちろんキャラクターの個性によらず「ひたすらに超火力を目指す」と言ったビルドを検討する事も可能だ。

 

ブレイド

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コアクリスタルから同調して誕生するブレイド

ゼノブレイド2ではブレイドと言う存在とコアクリスタルと同調する事によって誕生し、仲間にする事ができる。言ってみれば「ガチャ」のようなものなのだが。
コアクリスタルは宝箱であったり、敵がドロップしたり…あるいはイベントで入手できるものもある。
本作ではこのガチャのようなシステムによるランダム性によってプレイヤー毎に、あるいはプレイ毎に異なるナラティブを生み出す事にも貢献している。

ブレイドにはコモンと呼ばれるものと、ストーリーの項で前述しているが著名なイラストレーターによって書き下ろされたデザインを3Dモデル化したレアと呼ばれるものが存在する。
コモンブレイドは見た目は少々地味ではあるのだが、属性や能力値、キズナリング(スキルと思って良い)などはランダムで設定されるので、場合によっては大化けするコモンも出てくる。
レアブレイドモデリングは非常に丁寧であり、各イラストレーターの特徴がそのまま3Dモデルになっている。

このコアクリスタルとの同調は1回につき1つしか行えないため、多くのコアクリスタルと同調しようと思うと時間がかかってしまう。
端的に言えばテンポが良くないのだが、こればっかりはどうしようもないポイントのように感じる。
1回につき1つしか行えないポイントを改善点だと思ってしまう気持ちは理解できるのだが、本作のテーマは「ドライバーとブレイドの絆」であり「運命的な出会い(一期一会)」なのだ。
それをソーシャルゲームライクな10連ガチャのようにしてしまうと、「生命(ブレイド)を誕生させている」と言う感覚からはかなり乖離してしまい、「運命的な出会い」がゲームプレイのストーリーテリングとして機能しなくなってしまう。
「コアクリスタルを多く消費する」「全てのレアブレイドを誕生させる」のはあくまでもコアユーザーのやり込み要素であり、通常プレイにおいては必須ではない、あるいは推奨されていない・想定されている訳ではないプレイであるように思える。

 

少々脱線してしまうのだが、ここからは筆者のお気に入りのレアブレイドの一部ではあるが紹介させて欲しい。

 

KOS-MOS Re: / T-elos Re:
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KOS-MOS Re: / T-elos Re:

これは最早言わずもがなだろう。
ゼノサーガシリーズのKOS-MOST-elosだ。
キャラデザはKOS-MOS Re:を田中久仁彦さん、T-elos Re:をCHOCOさんが担当している。このチョイスだけでもファンにはたまらないだろう。
声は(当然かも知れないが)鈴木麻里子さんが担当している。

性能は非常に高く、また扱いやすい。
KOS-MOSはリキャストアップによるアーツ発動効率の上昇に加え、必殺技レベル2では範囲攻撃しつつパーティー全体回復の効力もあるため万能だ。
T-elosは火力に特化しており、敵を倒したり味方が倒されたりすると火力がどんどん上がっていく。ヘイト管理は大変だが非常に強力だ。

単純に考えればファンサービスではあるのだが、本作で明かされる事実から考察すると決してファンサービスと言うだけではないのではないかと感じてしまう所もある。

なお、両者を仲間にした状態でとあるクエストを行う事で両者のちょっとした掛け合いを観る事ができる。

このゼノブレイド2仕様のKOS-MOS Re:に関してもフィギュアが発売されている。
(筆者は当然購入済みだ)

ゼノブレイド2 KOS-MOS Re: 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
 

 

カサネ

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カサネ

カサネは非常に前向きで明るい女の子ブレイドだ。
キャラデザは”しらび”さんが担当している。
声は水瀬いのりさんが担当している。

詳細はカサネのブレイドエストでわかるが、彼女は簡単に書けば「コナン体質」だ。
彼女がいる事で周囲に災いが発生するのだが、彼女がそれを解決していこうとする。
そのどこまでもポジティブな性格は魅力的だ。

能力的には防御ロールのお手本のようなヘイトを強力に奪うものや正面特効などがある。
また、クリティカル発生時に与ダメージの一定量がHP回復になる非常に有用な特性もあるのだが、武器のハンマーはクリティカル率が低く恩恵が若干薄い点は注意が必要だ。

 

ヴァサラ

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ヴァサラ

ヴァサラは和風な雰囲気を持つ、弱きを助け強きを挫く信念を持ったブレイドだ。
キャラデザは鈴木康士さんが担当している。
声はKENNさんが担当している。

能力としては少々扱いにくく、ヒト型(亜人含む)の敵への即死効果や戦闘中に敵を倒す事で与ダメージがアップするなどはあるものの、どれも汎用性は余り高くない。
状況に応じて、あるいはメンバーのブレイドの属性やアーツを考慮して選出する事になるだろう。

ヴァサラが何よりもカッコいいポイントはそのセリフだ。
自分が刀を使用する事とかけた「我が道を切り開く!!」や防御(ヘイトを奪う)ロールである事とかけた「全ての悪意は我が頂く!!」といったセリフが聴いていて実に頼もしくカッコいい。

 

ヤエギリ

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ヤエギリ

ヤエギリは戦う事しか頭にない戦闘狂だ。
キャラデザは岩本稔さんが担当している。
声は竹達彩奈さんが担当している。

ヤエギリの能力は戦闘狂だけあり非常に高く、また扱いやすいものがそろっている。
リキャストアップによりアーツの回転率を高め、会心アップも斧との相性が良い。
また、対格上・対ボス/ユニークでダメージが上がるなど強敵キラーだが、火力の出過ぎでヘイト管理が難しくなる危険はあるので注意したい。

彼女もセリフがカッコいい。
ボスやネームド相手時にヤエギリへとブレイドスイッチを行うと「楽しい!!楽しいぞぉ!!!」と言ったり、ブレイドコンボ時には「これを耐えたら誉めてあげる!」と自信満々なセリフを言う。
その能力も相まって頼もしさは随一だ。

シュルク / フィオルン

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シュルクとフィオルン

ご存知の方も多いだろうがシュルクとフィオルンは前作の主人公とヒロインだ。
キャラデザは田中久仁彦さんが担当している。
シュルクの声は浅沼晋太郎さん、フィオルンは中尾衣里さんが担当している。

KOS-MOS Re:とT-elos Re:はブレイドとして参戦しているが、シュルクとフィオルンは本人としての登場となる。

シュルクの戦闘能力はチーム全体へのバフが主体となっており非常に強力だ。
また、代名詞とも言える「未来視」も専用にシステムに組み込まれているため必見だ。
必殺技のレベル1はチャレンジバトルでお世話になる事が多いだろう。

フィオルンは基本的に回復タイプなのだが、原作同様の脳筋気質でアタッカーとしても結構な性能を持っている。
しかし、強豪ブレイドひしめく風属性であるためパーティーのバランスを考えて入れる事になるだろう。

考え過ぎの可能性は否めないが、シュルクのスキル「未来視」ではゼノブレイドゼノブレイド2の世界の違いについても感じさせる。
ゼノブレイドの場合、シュルクが未来視で観た未来は確定された未来だった。
これは例えば、未来視で見た敵の攻撃は防ぐなり、避けるなりするしかないのが基本であったのだ。つまり、必ず来る攻撃に対して対処する形だ。
しかし、ゼノブレイド2の世界で見るシュルクの未来視はケースによっては発生することすらない不確定な未来となる。
こちらは、ノックバックやブレイクによって比較的簡単に攻撃の発生そのものを防ぐ事ができるのだ。つまり、そもそもそんな未来が起こさない事もできるのだ。
このような要素からも前作ゼノブレイドの世界が「可能性の閉じた(収束した)世界」であると改めて感じる事もできるのではないだろうか。

 

エルマ

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エルマ

ゼノブレイドクロスの実質的な主人公であるエルマさんも参戦している。
キャラデザは田中久仁彦さんが担当している。
声は桑島法子さんが担当している。

このエルマに関してもシュルク達同様に本人としての登場となる。
キャラが濃いメンバーの中にあって、エルマのような非常に頼りになる大人のお姉さんタイプの存在は貴重だ。

エルマの能力において最も特筆すべきなのは「オーバークロックギア」だ。
オーバークロックギアはゼノブレイドクロスにおいて最もお世話になったバトルのシステムなのだが、エルマが戦闘に参加していれば発動可能となる。
オーバークロックギアを発動すると本家ライクなGUIが表示され、本家と同様に攻撃のヒット数に応じて総合的な攻撃力(威力や回転率など)がグングン上昇していく。
更にここで最も嬉しいのは原作同様にBGMが「Wir fliegen」に切り替わる点だ。
処刑用BGMとも言えるこのBGMがゼノブレイド2でも聴けるのは最高に楽しい。
しかし、時間によるリキャストでないため本家ほどアーツを高速に放ち続ける事はできず、またアーツの役割もゼノブレイド2とゼノブレイドクロスでは異なるため、特有の爽快感までは若干再現できていないのは惜しい所だ。

また、エルマとはゼノブレイド2世界で戦闘を行う事になるのだが、対エルマ戦やエルマを連れてユニークと戦ったりするとゼノブレイドクロスのユニーク(オーバード)戦BGMである「Uncontrollable」が流れる点も忘れてはならない。

 

マップ

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フィールドデザインとマッチしないマップ

本作においてマップは最も残念な仕様だ。

例えば上図はグーラのマップの右半身だ。
グーラには右半身から左半身へと繋がる道が存在しているのだが、このマップを見ただけでは右半身のどこが左半身へと繋がっているのか読み解けない。
実際のプレイでもこのマップと同様にセパレートされたフィールドなのであれば話は違うがゼノブレイド2においては1フィールドは全てシームレスだ。
こうなると自分がいるポイントが右半身で、行きたいポイントが左半身であった場合に(左半身マップに自分の位置は表示されないため)位置関係が適切に参照しにくく、土地勘がない状態では迷子になる事は避けられない。

また、ゼノブレイドシリーズは総じて縦横だけでなく高低差や上下に重なったフィールドが特徴となっている。しかし、本作のマップの仕様ではそれらが繋がりをもって理解しにくい。
一般的な3Dゲームであれば同様のマップ構成であっても気にならないのではと感じるのだが、ゼノブレイド2ほど高低差や上下に重なった入り組んだ地形の密度が濃い場合には航空写真ベースのような見下ろし型のマップではどこの道がどこの道の下をくぐっているのかなど詳細な座標関係がわからないため痒い所に手が届かないのだ。

アップデートによってマップの利便性は向上したものの、マップそのものの機能性自体が向上した訳ではないため、土地勘を得るまでは少々大変だ。
マップは本作にマッチした表現方法を設計してもらいたい限りだ。

しかしながら、本作はオープンワールドと謳ったゲームではないとは言え、この規模のフィールドでありながらもファストトラベルが5秒程度という圧倒的な速度を誇っている点は素晴らしい事だろう。
とは言え、フィールドのテクスチャーの描画が読み込み切っていない状態で開始されるため、描画が全て完了するのは10秒程度だろうか。
これは映像面よりも操作の待ち時間が発生しないようにしたトレードオフと思われる。

なお、DLC「黄金の国イーラ」においてはマップの仕様が変更されており、マップ間の繋がりが把握しやすいように改善されている。
しかし、上下の重なりまでは把握できないままだ。

 

アドバンスドニューゲーム

アドバンストニューゲームは無料のアップデートにより追加されたモードで、いわゆる”2週目”だ。

アドバンスドニューゲームで遊ぶためにはラスボス戦をクリアした状態のデータが必要となる。
アドバンスドニューゲームでは仲間にならなかったブレイドが仲間になるほか、とあるブレイドのレベル4必殺技が解禁される。アイテムも一部のイベントアイテムを除けば全て持ち越し可能だ。

その他にも宿屋にてレベルダウンを行えるようになるなど面白い要素もある。
ただ、筆者としてはレベルダウンは十分に嬉しいのだが、キズナリングのキズナギフト(スキル)が十分に解放されてしまっていると、レベルダウンをしても火力が出てしまうため敵の強さはやはり少々物足りない。
そのように感じる筆者のようなプレイヤーには「難易度調整機能」も存在している。
単純に高難度である"極"を選択する事も可能であるし、難易度を”カスタム”にすれば自分好みの戦闘バランスにする事も可能であったりと痒い所に手が届いている。

なお、これからアドバンスドニューゲームを始める方で新たに仲間になるブレイドを早々に出現させたい場合にはアドバンスドニューゲームを始める前にコアクリスタル(特にエピックやレア)を十分な数を揃えておくと良いだろう。

 

チャレンジバトル

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チャレンジバトルは濃密でやり応え抜群だ

チャレンジバトルはDLCの追加要素として配信された新モードだ。
遊ぶためにはストーリーをある程度は進めておく必要がある。

本作でもっとエクストリームなバトルをご所望の筆者のようなプレイヤーには待望の追加要素の1つだ。
実際にプレイしてみると、その難易度バランスは絶妙だ。
決してゴリ押しでは勝てないようになっており、きちんと味方と敵のマネージメントや特徴を把握し、対策を講じなくてはならないようになっている。
高難易度では戦闘のバランスをパーティーゲージ減少技や即死技に頼りがちに感じなくもないが、敵が放つ即死級の危険な技をブレイドコンボフィニッシュやレベル4必殺技、チェインアタック、リアクション攻撃などで凌いでいくアドリブ性は非常にやりがいを感じる。
敵の体力もかなり多く設定されており、簡単には死なないようになっているのも非常に嬉しい限りだ。
戦闘前の事前準備のビルド構成、戦闘中の立ち回りが共に大切になっており、本作の戦闘における楽しさを余すことなく体験できるものとなっている。

そして何よりもリワードとしてゼノブレイドシュルクとフィオルン、そしてゼノブレイドクロスのエルマがブレイド的な役割で仲間になってくれるのは最高のご褒美だろう。
筆者が何より驚いたのがシュルクやフィオルン、エルマ的なブレイドなのではなく、ゼノブレイドシュルクとフィオルン、ゼノブレイドクロスのエルマとして登場している点だ。
ただのファンサービスかも知れないが、考察してみても面白い要素だ。

 

黄金の国イーラ

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黄金の国イーラ

黄金の国イーラはゼノブレイド2のDLCまたは単独で動作するパッケージとしても購入可能だ。
ボリュームはDLCとしては相当なもので、システム面の変更もあるためほとんど新作と言っても過言ではない程の内容となっている。

 

ゼノブレイド2 黄金の国イーラ - Switch

ゼノブレイド2 黄金の国イーラ - Switch

  • 発売日: 2018/09/21
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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大ボリュームだが、それでも足りていない

ストーリーは本編の500年前をラウラとシンを主人公に置いて描いており、本編では断片的であった部分を補完する役割を持っている。

登場するキャラクター達は非常に魅力的だ。
元気で芯の強いラウラ、優しく見守るシン、おっとりとして天然でお化けが怖いカスミなどなど。
メインシナリオやサブクエストで見せる意外な一面や設定もある。
本編だけでは知りえなかった内容は嬉しい限りだろう。
また、(システムとも言えるのだが)黄金の国イーラにおける最終戦における豪快な演出を用いた戦闘システムは必見だ。

しかし、ストーリー面では少々勿体ないと感じさせる。
ストーリーのボリュームは濃密であるのは間違いないのだが、描こうとしている内容から考えた場合、キャラクター間の親睦が深まっていく過程などの物語の展開が駆け足に感じる部分が多い。

また、ストーリーはゼノブレイド2の世界観をある程度は知っている前提で話が進んでいくため、世界観に関する説明が全くない。
そのため、本作の世界観を全く知らない状態でパッケージ版を購入してプレイした際にはストーリー面において良くわからないまま進んでしまう恐れがある。
これはゼノブレイド2の初心者は困惑する事だろう。黄金の国イーラと言う作品をDLCとしてのみ販売するのであれば「設定を知っているユーザー向け」であるため説明を省略するのは頷けるが、単独起動可能なパッケージ版として考えると非常に不親切な物語構成だ。
黄金の国イーラからプレイしたいと言うユーザーは最低限「ゼノブレイド2 Direct」を視聴してからプレイする事を推奨する。

これらの欠点はどれもDLCと言う立ち位置でこの作品が製作されている事に起因しているように思える。
もしも可能であるならば「ゼノブレイド3」くらいの立ち位置でガッツリと製作する事で「駆け足感」や「世界観の説明」を解消できたのではないだろか。

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サブクエストも優秀だ

黄金の国イーラではサブクエストも優秀だ。

本編をプレイしていれば「あ!」と思える人物が何人も登場する点が面白く、また本編の500年前である黄金の国イーラ編の世界情勢を知る術としても機能しており非常に充実している。
これはメインシナリオを担当した1人でもある竹田さんがサブクエストに関しても関わっているためと思われる。

 

システム

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新作と言っても過言ではないシステム

黄金の国イーラではバトルシステムが本編をベースとしつつも一新されている。
詳細には書ききれないため省略するが、バトル面においては「スイッチアーツ」と「タレントアーツ」が追加されている。

黄金の国イーラでは本編と異なり、スイッチするのがブレイドだけではなく、戦闘する人物をドライバーかブレイドかに切り替える事ができる。
その切り替え時に発動する攻撃がスイッチアーツとなる。
スイッチアーツにはドライバーコンボ系のブレイクやダウンと言った効果が付与されているため、これを使用して敵の状態を切り崩す事が可能だ。
また、被ダメージにはリザーブが存在しており、リザーブされたダメージは赤く表示されている。この赤い領域が表示された状態でドライバーとブレイドをスイッチさせる事で、その分のダメージを回復できる。
これによってキャラクターのダメージコントロールを行うようになっており、本編よりもダメージに対してのマネージメントが更に重要になっている。
また、仲間が入り乱れて戦うため共闘感も強くなっている素晴らしいシステムであるといえるだろう。

タレントアーツは初代ゼノブレイドから久しぶりの復活となる。
これは各キャラクター固有のアーツでそれぞれ特徴が異なる。
HPを消費して全てのアーツをリキャスト完了させたり、全てのアーツのリキャストを消費して敵の行動を止めたりなどキャラクター毎の個性を表現できる非常にユニークな要素だ。

黄金の国イーラでは本編とは異なりパーティーメンバーが実質的に固定となっている。
そのため、シナリオにおける難易度調整や本編で至らなかったチュートリアルが洗練されており、より適切なタイミング・方法で表現できている。
その他に本編におけるブレイドコンボやチェインアタックまでの過程が簡略化されておりパーティーが固定化されている事もあいまって「どうやって連鎖を仕込むか」「どうやって仕込んだ連鎖を発火させるか」を考える必要性が減ったため、戦術性や戦略性は低下したもののこちらも初心者には親切だ。
これらの観点から(本編とはシステムに差異はあるものの)ゲームシステムを理解するには本編よりも黄金の国イーラをプレイする方が良いのではないかと思われる。

また、これらの変更された要素は世界観準拠であるため、ストーリーテリングとしての役割も果たしている事は特筆するべき点だ。
黄金の国イーラで行われるドライバーとブレイドが入り乱れて戦うと言う戦法は500年後を描いている本編では廃れた戦術とされており、ドライバーとブレイドの戦い方が確立されていない時代のものなのだ。
そして、本編と比較しても到達できるダメージ量が明らかに抑えられている(敵の体力設定はダメージ量が低い事を想定したものになっているため安心して良い)。
つまり、戦い方も500年前を再現しているし、数値的なダメージ量を抑える事で不完全な戦い方である事も表現しているのだ。
こういった表現がストーリーテリングとしても機能しておりファンならばニヤリとできるポイントだ。

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キズナグラムのようなヒトノワ

また、過去作に登場しているキズナグラムのようなヒトノワというシステムも採用されている。
サブクエストなどをクリアしていく事で増えていくヒトノワはシナリオを更に補完する役割もあるため、是非ともMAXまで到達してみて貰いたい。

 

グラフィック

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美しく壮大な世界

本作のフィールドデザインは過去作同様に神が宿ったように美しい。
フィールドの広さは過去作ほどではなく、名前しか登場しない村などが存在する事は世界観の奥行き表現には繋がっているものの、同時に見てみたかったと少々残念に感じる部分でもある。
とは言え、その映像の表現力のリッチさは過去作と比較しても格段に向上しているのがわかる。
また、本作は「生きた生物の上に広がる大地」が舞台であるため、遠景に映る大地が生命としてリアルタイムに動いている点も迫力がある。

グラフィックの表現面に関しては前作ゼノブレイドクロスと比較した場合、ライティング・シャドーイング・シェーディング関連が大きく強化されている事がはっきりとわかるだろう。
また、キャラクターの激しい動きにはブラーを使用して、より躍動感が出るように演出されている。

欲を言えば近年増えているフォトモードのような機能が欲しかったと言えるし、それが無理だとしても画面のGUIを全てOFFに出来る機能は欲しかった所だ。

また、本作では可変解像度が採用されている。
リソースの少ないNintendo Switchでは珍しくはないものだが、ゼノブレイド2においては可変解像度がかなり極端に採用されており、密集した敵と戦う場合などは明らかに解像度が落ちているのがわかる。
グラフィックレベルは高水準なだけに解像度が落ちすぎるケースがあるのは少々勿体なさを感じる。

DLC「黄金の国イーラ」では、追加フィールドであるイーラに関して改良が加えられたグラフィックエンジンを採用している事が公表されている。

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オフィシャルアートワークス

ゼノブレイド2ではオフィシャルアートワークスが発売されている。
様々なイラストレーターによるレアブレイドのデザイン画およびコメントやフィールドのアート、後述する戦闘後のキャラ同士の掛け合いなどが収録されており、ファンは必ず手に入れておきたい一冊となっている。

なお、上図は筆者が購入したものを撮影したものだ。

 

アニメーション

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こだわりを感じるアニメーション

キャラクターのアニメーションに関してもこだわりが感じられる。
多くのキャラクターには背面に揺れ物(長髪や布など)があり、ゲームプレイ中に長い時間見続ける事になる背中部分が寂しくならないような配慮もされている。

パーティーメンバーやレアブレイドなどのキャラクターは待機、歩行、走行、立ち泳ぎ、泳ぎ、ジャンプといったモーションに専用のものが用意されている。
一見地味にも思える要素なのだが、これが用意されているのと用意されていないのではプレイフィールに大きな差が生まれる。
何気ない動作1つであっても各キャラクターの個性がより感じる事ができるのは非常に嬉しいポイントであり、そのキャラクターがゲームの中の世界で生きていると感じさせてくれる演出で、本作の品質の高さも同時に感じさせてくれるだろう。
なお、これらのアニメーションに関しては、担当したイラストレーターの意向を開発側が(ある程度)汲み取ったものとなっているようだ。

戦闘中のアニメーションも非常に良く出来ており、キャラクターによって攻撃モーションが異なるのはもちろんだが、攻撃時にはヒットストップも設定されているなどアクションゲームのような爽快さも感じさせてくれる。

 

サウンド

ゼノブレイド2の音楽はゲーム史上に残るべき最高峰の傑作だ。
DLC「黄金の国イーラ」では専用にBGMが追加されており、こちらも傑作の名曲揃いとなっている。
フィールド曲、イベント曲、バトル曲は多くが生音で収録されており迫力や音響、抑揚、繊細さが素晴らしい。
全ての曲が記憶に残る印象的な強いメロディを持ち、ゲームシーンを鮮やかに彩っている。

幻想的な「Xenoblade II - Where It All Beg」「Elysium, in the Blue Sky」は2曲で1曲とも言える曲だ

神秘的でどこか悲しみのある「古代船」

ノリノリの戦闘曲「Exploration」

テンションが上がらざるを得ないイントロから始まる「Incoming!」

暖かみのある牧歌的な雰囲気を持つ「グーラ領 - 森林」

非常に爽やかでコーラス部分が最高にクールな「グーラ領」

美しいピアノの旋律のメインテーマ「在りし日のふたり」

メロディの起伏をしっかりと作りつつも幻想的で美しい「インヴィディア烈王国」

感動的なメロディと歌詞の「Drifting Soul」

負ける気がしない気持ちにさせる本作を象徴する傑作「Counterattack」

最高にノリノリでカッコいいフィールド曲「スペルビア帝国 ~赤土を駆け抜けて~」

色々な意味でヤバい「最強サクラの歌」

Counterattackと並ぶ、象徴的な敵曲「罪深き懇望の果てに」

悲しくも落ち着く「Shadow of the Lowlands」

神秘的な魅力を持った「エルピス霊洞」

圧迫感のある最終盤の戦闘曲「Battle in the Skies Above」

孤独と悲しみから希望へと繋がる穏やかなで力強い「君との未来」

ホムラ/ヒカリ視点で表現された「One Last You」

ゲーム史上でも屈指の完成度を誇るジャジーな戦闘曲の傑作「戦闘!! / イーラ」

ラウラ視点で表現された「A Moment of Eternity」

ここではとても書ききれないのだがサウンドトラックに収録されている全ての楽曲が記憶に残る傑作だと言って良いだろう。
ゼノブレイド2においてルクスリア王国で流れるBGM「Shadow of the Lowlands」 を歌ったANUNAは"Annual Game Music Awards 2017–Artists of the Year"を受賞している。

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2000個と言う限定生産のUSB版

サウンドトラックはCD版の他に数量限定(2000個)の生産のUSB版が存在する(画像は筆者が購入したもの)。
付属するブックレット(限定版CDにも付属)には曲に関する説明などが1曲1曲書かれており読み応え抜群となっているため、気になる人はチェックしておこう。

なお、黄金の国イーラ編の追加楽曲はダウンロード専売となっており、moraなどの配信サイトにて購入可能だ。

 

ボイス

ゼノブレイドシリーズはボイス関連の物量もとにかく多い。
ゼノブレイド2では特にキャラクター同士の掛け合いが強化されており、仲間との一体感・協力感がより強くなっているポイントも筆者としては評価が高い。

戦闘中の行動や掛け合い、特定の行動に対してのリアクションなど、バトルをより良いものへと感じさせてくれる。
例えば戦闘中に回復ポッドを取れば「良いじゃん!」⇒「だよね!」と掛け合いをしてくれる。
戦闘システム自体には直接の影響はない要素であるし些細な事だと思われるかも知れないが、NPC側からの自発的な行動・掛け合いは「仲間と一緒に戦っている」と言う感情が強くなり、とても居心地が良い。

また、この掛け合いはレアブレイド同士でも発生する。
レアブレイドの掛け合いはブレイドスイッチや戦闘終了時などに特定の組み合わせで専用のボイスや掛け合いが発生するものとなっている。
「特定の組み合わせ」と言ってもそれ自体がかなり豊富に用意されており、ドライバーとレアブレイドやレアブレイド同士などの関係性を「ストーリー」の項で記載したブレイドエストやキズナトークとはまた違った角度で補完して解像度を上げる事ができる嬉しい要素だ。
決して必須の仕様という訳でもないこのような要素を用意しているからこそリッチに感じられる部分であるし、それをここまでの物量で提供しているのは筆者としては嬉しいサプライズだった。
なお、レアブレイドの声優に関しては、イラストレーターの希望を可能な限り反映しているようだ。

日本では全く関係のない事なのだが、海外においてはローカライズ(特に海外の声優の演技やリップシンク)に賛否が強いようだ。
ローカライズされるだけマシ」という意見もあるだろう。
しかし、それは0 or 1の極論だ。
ローカライズに失敗してしまうと、それだけで本来存在した面白さや感動が奪われかねない(現に日本向けローカライズでもストーリーやストーリーテリングが意味不明となった作品も数多い)。それはユーザーにとっても開発側にとっても不幸な事になる。
ローカライズやカルチャライズは非常にサジ加減が難しいのは承知しているが、NOAおよびNOEには是非とも丁寧なローカライズをお願いしたいところだ。

 

総評

世の中には「出会えて良かった」「これをプレイしないまま死ななくて良かった」と思える作品がある。
ゼノブレイド2は筆者にとって正にそのような傑作と呼べる作品の1つだ。

クラシックで熱い展開の王道なストーリー。
シーンを盛り上げるビデオゲーム史上でも最高峰の音楽。
戦略性とアドリブ性を両立させたうえで共闘感も感じさせるバトル。
壮大で神懸ったフィールドデザイン。
新作と言っても過言ではないDLC黄金の国イーラ。
GUIやマップなど欠点も存在している事は確かだが、これらはあくまで見た目の問題であるため慣れてしまえばプレイに影響は及ぼす事はない要素だ。本作の輝きに比べれば非常に些細な問題と言えるだろう。

ただし、黄金の国イーラに関してはDLCとしては非常に高品質だと言えるものの、スタンドアローンなパッケージとして考えた場合にはシステム面は初心者に親切であるにも関わらず、世界観の説明がなく初心者殺しであるなど、「黄金の国イーラからゼノブレイド2に入るユーザー」の事を受け入れているようで受け入れていない仕様だ。
この中途半端さは気になる所だ。

 

外部記事

ゼノブレイド2 : プロダクションノート | Nintendo Switch | Nintendo

ゼノブレイド2 Nintendo Switch プレゼンテーション 2017 出展映像 - YouTube

ゼノブレイド2 [Nintendo Direct 2017.9.14] - YouTube

ゼノブレイド2 紹介映像 - YouTube

ゼノブレイド2 トレーラー [ストーリー編] - YouTube

ゼノブレイド2 トレーラー [登場人物編] - YouTube

「ゼノブレイド2」より Shadow of the Lowlands - YouTube

Xenoblade Chronicles 2 - Demonstration - Nintendo E3 2017 - YouTube

【スマブラSP】ある日 ホムラがいなくなった - YouTude

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【レビュー】ゼノブレイドクロス

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神々しきミラの大地

筆者のゼノブレイドとの衝撃的な出会いから3年経った2013年…その時は遂にやってきた。
待望のゼノシリーズ…ゼノブレイドシリーズの新作が発表されたのだ。
発表当初はお馴染みとも言える「X」の文字が画面に映し出されるPVであり、それがゼノシリーズであること、そして人とロボットを操作できる事くらいしかわからない。
とは言え、筆者は小さい頃にアニメ「ゾイド」を観た影響から広大で未開拓なフィールドをロボットに乗って走ったりしつつ、人を操作したインタラクションもしたいと言う願望があった。そのため、「人とロボットをシームレスに乗り降りが可能なオープンワールド型のゲーム」は小さい頃から熱望していた要素であり、ワクワクした気持ちが抑えられなかった。
今回は2015年に発売し、筆者の小さい頃からの夢に一歩近づいたゼノブレイドクロスについてレビューしていこう。

 

XenobladeX (ゼノブレイドクロス) - Wii U

XenobladeX (ゼノブレイドクロス) - Wii U

  • 発売日: 2015/04/29
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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終盤になるまで薄味なストーリー

ゼノブレイドクロスのストーリーはSFが最初から前面に押し出されている。
地球は謎の宇宙生命体の戦闘に巻き込まれ崩壊し、新たに居住可能な新天地を求め大型宇宙船で辛うじて脱出に成功した「白鯨」と言う宇宙船に乗る人類の生き残りが主人公達となる。そこからなんやかんやあり謎の未開惑星ミラに白鯨が墜落してしまう。
ストーリーの冒頭は過去作のゼノシリーズの設定を彷彿とさせるような始まりをするなどシリーズファンには興味深いポイントだ。
また、ゼノブレイドクロスのストーリーは全体的に暗い話が多く、サブクエストなどで展開されるクエストでは選択肢によってはNPCが死亡するケースも少なくないのは特徴的だ。
なお、サブクエストでは有名な映画などをモチーフにしたものも存在する。

ゼノシリーズと言えば濃密な設定・演出のストーリーに期待している人も多い事だろう。
しかし、本作ではストーリーに期待をしていると少し肩透かしを喰らう事になる。
前半はチュートリアルが長く、中盤頃までは比較的アッサリとした内容が続く。終盤になり本作のストーリーの全体像がハッキリと見えてくるとストーリーが大きく転がっていく。また、演出面でも良くなっていき、哲学的な問題も提示されるのだが、逆に言えば終盤に到達するまで味気ないストーリーとストーリーテリングになっているのは勿体ない。
これらは主人公がアバターとなっているが故に発生している問題もいくつかあるように思われる。

本作のストーリー面で特筆するべきポイントがあるとすれば「ストーリーを密度濃く描いた作品」と言うよりも「オープンワールド、主人公がアバターである事を意識したナラティブな要素を強調した作品」となっている点だ。
選択肢によってNPCが死亡すると上述しているが、そのような選択肢が潜んでいるサブクエストが豊富に用意されているばかりか、因果応報的に以前の別のサブクエストでの選択が影響して結果が変化するような場合もあるのだ。
つまり、選択肢を選んだ結果が即座には反映されないためにやり直しもしにくくなっており、結果的にプレイヤー毎に異なる体験がゼノブレイドクロス世界に反映される形となっている。
ストーリーが全体的に薄味な印象となってしまっている本作ではあるが、プレイヤーによって結果が異なるナラティビティーがシリーズの中でも強い作品となる事には成功していると言えるだろう。

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ゲーム中では未使用の設定なども記載された資料集

ストーリーでは最終的に回収されていない設定・伏線が多いのは意見が分かれる点だろう。エンディングにしてもオープンエンドに近い形式であるが、解釈の幅が余りにも広い。
考察のしがいはあるものの、考察しようにも余りにも点(ユーザーが知る事が出来る事実)が少なく、線を繋ぎようがない。そのため、どこまで行っても憶測どころか妄想の域を出ない考察になってしまう。
設定資料集を参照してもやはり謎が多く、世界観の全容が掴めない。その上、設定資料集記載の情報が本編では没になっている設定なのか、本編で提示されていないだけで有効な設定なのかも判断できないのも考察を難しくしていると言えよう。

また、ストーリーテリング面として惑星ミラの各所にブレイド(地球軍)の友軍(NPC)がミラの各所に点在しているのも少々残念だ。
人類の存亡の危機であるシチュエーションから考えれば、これほど広域にわたってNPCが既に各所に展開していると「未開の惑星ミラ」と言う印象は薄れてしまう。
せっかくのフロンティアと言うシチュエーションであるのにも関わらず、それを殺してしまうような相反した演出がされているのは勿体ない。

ここからはあくまでも推測だが、本作には元々はアバターでは無い明確な主人公がいたのでは無いかと思うのだ。
初報のPVに登場する金髪の青年あるいは設定資料集に登場する主人公と記載される人物などが当初の構想であり、リリースされたゼノブレイドクロスは何らかの軌道修正により現在のアバターおよびオンライン対応と言う形になったのでは無いかと思える。
そのため、ストーリーやストーリーテリングにおける作り込みが甘くなっているのでは無いだろうか。

 

システム

ここではシステム全般を記載していく。

 

バトル

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バトルはオートアタックとアーツが基本だ

ゼノブレイドクロスの戦闘は前作ゼノブレイドと同様にオートアタックとアーツが基本となる。
オートアタックは戦闘中にプレイヤーが何もしていない時に自動で発生する攻撃の事で威力が弱めの攻撃だ。
アーツは必殺技のようなもので威力が高かったり、味方にバフ、敵にデバフを与えたりと多様な技が存在している。アーツは連続で使用する事はできず、再発動までは”リキャスト”と呼ばれるチャージ時間の経過が必要になる。

本作の新たな要素としては「ダブルリキャスト」が登場している。
発動可能(リキャスト完了)となったアーツを放置する事で更にチャージが行われ、二重チャージが完了した状態がダブルリキャストとなる。
ダブルリキャストしたアーツは威力や効果時間が飛躍的に向上する。

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クラスによって能力に補正が発生する

ゼノブレイドクロスでは「クラス」と言われる概念が存在し、そのキャラクターのクラスによって武器やアーツ、能力補正が異なる。
技となるアーツは武器に依存しており、クラスをマスターする事で別のクラスであってもマスターしたクラスの武器が選択可能となる。

しかし、プレイヤーの分身でもあるアバター以外のキャラクターはクラスの変更や装備可能な武器種別を変更できないため注意が必要となる。

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バトルは膨大な要素が入り乱れる

本作のバトルには膨大とも言える要素が関係する。

まずは装備だ。
装備はインナー(人)用のものと、ドール(大型ロボット)用のものの二種類が存在する。
これらも非常に種類が多く、また敵がドロップする装備に付与されるスキルはランダムで設定されるため良いスキルを考えながら装備を決める必要もある。良い装備を求めてマラソンをするのが本作のエンドコンテンツと言えるだろう。
装備はものによってデザインが異なり、「どのゲーム内企業が製造したか」によってそのデザインの方向性が異なっている点は世界観に厚みを持たせるユニークな設定だ。
このゲーム内企業はゲーム開始時点では地球の企業のみだが、ゲームが進展する事で異星人が運営する企業も登場するようになり賑やかになっていく。
例えば、日本の侍を彷彿とさせるようなデザインが中心の「六連星」やキュートとセクシーを混ぜ合わせた「偽りなき真心堂」などがあり、プレイヤーは性能や見た目の好みで選んでいたらいつの間にか特定のゲーム内企業に偏っていたなんて事もよくある事だ。
なお、クリア後あるいはDLC購入時にはファッション装備と言われる外見にだけ反映される装備枠が解禁される。そのため、「装備は強力にしたいが、見た目は別が良い」なんて時に使用できる。自分好みのオシャレ装備をすると良いだろう。
更に装備にはデバイスと言われるものを装着でき、これによってスキルを更に追加できるためキャラクターを大きく強化できる。
バイスはモンスターからドロップした素材で製作できるが、大量に必要になる事が多く需要に追い付かない事が大半だろう。
これらを組み合わせてキャラクターのビルドを考えるのはキャラクタービルド好きな筆者のような人にはオススメできる。

次は天候だ。
本作では豪雨や雷雨はもちろん、熱波やオーロラなどとにかく天候の種類が多い。
これらの天気には基本的に全てバフやデバフの効果がある(そもそもバフ・デバフの種類も多い)。更に天候によってはスリップダメージが発生するものも存在するため美しい景観に惑わされないように注意が必要だ。もちろん、非常に有益な天候も存在しているため、そのような天気となった際には天の恵みに感謝しよう。

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総合的にはプラスだが、勿体ない箇所も多い

本作のバトルは総合的に見れば間違いなく面白いのだが、勿体ないと感じる要素も多く目につく。

1つ目はオートアタックの意味だ。
本作では前作ゼノブレイドのようなタレントアーツが廃止された影響によりオートアタックの戦術的価値が全く無くなってしまっている点はプレイにおいて支障は無いものの活かしきれていない勿体ない要素になっている。
極一部の武器にはオートアタックで良い効果を発生させるケースもあるが別ビルドで代用も可能であるうえ、根本的にそのような武器の存在は非常に稀なケースだ。
また、キャラクター固有のアーツが無いために個性が薄くなっている点も気になるだろう。
(次作ゼノブレイド2ではオートアタックの関係性が大きく見直されている。)

2点目は共闘感だ。
本作の全体的なバランスは前作ゼノブレイド(および次作ゼノブレイド2)とは異なり「最強装備を作れば最強」と言う思想に近い。
また前作(および次作)と比較すると、キャラクター毎の攻撃役や防御役のようなロール(役割)的な概念が薄くなっている。
そのため、戦闘においての完成形が存在してしまっており、それが「各個人で最強になること」である。
そこに更に各仲間のロール(役割)の薄さからくる戦闘におけるキャラクター間の依存度の低下が合わさり、前作(および次作)のような共闘感も薄くなってしまっているのは残念だ。
別の表現をすれば、前作および次作では「メンバー全員が自分の役割に沿って連携して助け合いながら戦っている」と感じるが、本作では「各メンバーが敵を全力で殴ればいいじゃん」的なマッチョな思想になっているのだ。
そのため、仲間同士で戦っているにも関わらず共闘感どころか1人で戦っているように感じるような事も多かった。
同様にロールの概念が薄い事と、前述の通りアバター以外のキャラクターはクラスが変更不可である事が影響し、キャラクターによっては性能に格差が発生してしまうのもバランスの検討不足と言えるポイントとなってしまっている。

3点目は非常にわかりやすいポイントだがGUIが煩雑であるのは気になる所だ。
前述の通り本作はとにかく様々な要素がバトルシステムに関係している。
パーティーや敵の体力だけでなく、天候の状態や自分と敵の位置関係など多様だ。
更に装備変更やアーツ変更時に使用する事になるシステム系のGUIにおいても要素が多い。
それらを画面上にズラッと表示しているために単純にわかりにくいと言えるだろうし、多い要素を1画面に収めようとしているがために1つ1つの情報が小さく表示されており視認性が悪い。
正直、筆者はそこまで気にならないのだが、筆者よりも視力の悪いユーザーからすれば機能性を損なう問題であるように強く感じる。
要素が多ければGUIが複雑化しやすく、かと言ってGUIを簡略化しすぎると機能認識として問題が発生するケースもあると言うダブルバインドが発生しやすいポイントではあるのだが、本作のGUIの表示方法は余りにも愚直であり、もう少し工夫が欲しかった所だ。

 

ソウルボイス

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”声があること”に意味を見出したシステム

本作のバトルにおけるユニークな要素としてソウルボイスが存在する。
ソウルボイスは各キャラクターが発動できるもので、特定の条件がそろった場合に発生する。
上図の場合にはヒメリが射撃アーツの発動を要求している。
このサインが出ている最中に実際に射撃アーツを発動する事で味方にバフが発生したりと状況を有利にする事ができるのだ。
ソウルボイスはクラスと同様にアバターは比較的自由な設定が可能なのだが、その他の仲間キャラクターはデフォルトで設定されているソウルボイスを変更する事はできないが、その物量は大変な量だ。

前述の通り、共闘感の薄い本作のバトルバランスおよびデザインであるのだが、この要素に関しては仲間同士の共闘感において非常に良いエッセンスとなっている。
ゼノブレイドシリーズは戦闘中であってもかなり喋る事が特徴となっている。
過去作でも喋る事は共闘感と言う意味合いの他にも、機能面としてアーツや状況の把握に役に立つ側面があった。
本作は更にその要素を強化し「喋ること」にシステム的に明確な価値を持たせているのだ。
ただボイスがあるだけ、もしくはボイスが多いだけでは無いデザインになっているのだ。
ボイスを明確なシステムとして組み込んでいるのはゼノブレイドシリーズ自身の長所を更に活かした要素となっている素晴らしいシステムだ。

 

オーバークロックギア

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高速の戦闘に変貌するオーバークロックギア

ゼノブレイドクロスにおいて戦闘を最も楽しくさせるのがこのオーバークロックギアだ。

オーバークロックギアを発動させるにはTP(テンションポイント)を消費する必要があるのだが、これを消費するにはお釣りが来るくらいの恩恵がある。

まずはバフ面だ。
オーバークロックギアを発動させてからアーツをヒットさせるとヒット数に応じて与ダメージ、リキャスト速度、攻撃耐性に大きな補正が発生する(ヒット数を稼ぐには方法があるがここでは割愛)。

次に特徴的なのはトリプルリキャストだ。
前述ではダブルリキャストを紹介したが、オーバークロックギア発動中はダブルリキャスト状態から更にチャージが可能となる。
これがトリプルリキャストだ。
トリプルリキャストは本来ならばチャージに時間がかかりそうだが、オーバークロックギア発動中であるためリキャスト速度も飛躍的に上昇している。
ここに更に与ダメージ倍率アップの効果も合わさるため通常では有り得ないレベルのダメージを、しかも連続で叩き込めるようになるのは非常に爽快だ。

そしてテンションを最も高めてくれるのはBGMだ。
オーバークロックギアを発動するとBGMが専用の「Wir fliegen」に切り替わる。
ノリノリでカッコいいBGMで高速に強力なアーツを放ち続けるのは脳汁が湧き出る感覚だ。

バトルではこのオーバークロックギアを使いこなす事で格段に有利に、そして面白くなるため、装備やデバイス、アーツなどはオーバークロックギアを発動する事を前提とした構成にするのが基本となるだろう。

このオーバークロックギアはドールでも可能であるが、インナー時とは性質が異なる。
ドールのオーバークロックギアは機体の種類によって性質に違うため、その点にだけ注意した方が良いだろう。

欠点をあげるとするならば、このオーバークロックギアはまとも使用しようと思うとある程度のビルドを作り上げておく事が必須でありハードルが少し高いことである。
もちろん、「最高の性能を引き出すための高いハードルのビルド構築」であればエンドコンテンツとして正しい要素だ。
しかし、「まともに使える」ようになるレベルに引き上げるのすらそこそこの努力をしてビルドを組み立てる必要があるのは非常に勿体ない。
オーバークロックギアの楽しさの一端だけでも最初のうちから体験できるようにはして、「もっと強力になるようなビルドを完成させたい」というモチベーションに繋げるべきである。
楽しむためにハードルを超えなければならないため本作の戦闘の醍醐味部分に気が付かないユーザーすら存在する懸念があるのである。
最初のプレイではオーバークロックギアがどれほど有用で楽しいシステムなのかもわからないハズであり、その楽しさを体験できる機会はしっかりとお膳立てしておくべきだっただろう。

 

ドール 

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ロボットであるドールに乗り込んでのバトル

ゼノブレイドクロスの大きな魅力の1つであるロボットであるドールについて記載しよう。

本作ではインナーと呼ばれる人状態とドールと呼ばれるロボット搭乗状態をシームレスに変更できる。この切り替えは例え戦闘中であっても可能だ。 
また、ドールでの戦闘中には確率で機体内部からの視点に切り替わる。
この状態には全ての技(アーツ)のチャージ状態(リキャスト)が無くなり発動可能状態へと切り替わるため演出だけでなく機能面でも嬉しい要素となっている。

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ドールは変形や飛行が可能だ

プレイヤーが搭乗できるドールは人型形態から車両形態に変形が可能だ。
人型形態は戦闘用の形態であり、車両形態は移動用の形態だと思って貰うと良いだろう。そして、ドールでは条件を満たす事で飛行も可能となる。
これらを駆使して広大なミラの大地を余すところなく探索するのは非常に重要な存在だ。
特に人型とビークル形態をシームレスに変形できるのはクールで、走りながら変形する場合と、立ち止まって変形する場合とで変形モーションが異なる点もカッコいい。

問題点を挙げるとするならば飛行可能となるとジャンプが行えなくなり、BGMも専用のものに切り替わる点だ。
ちょっとした段差でも飛行状態に移行してしまうのは微妙に不便に感じるし、フィールド曲を聴きたい時にも飛行状態は不便だ。

なお、ドールの「フォーミュラ」はプラモデルが発売されている。

コトブキヤ ゼノブレイドクロス フォーミュラ 1/48スケール プラモデル
 

 

オンライン

ゼノブレイドクロスではオンラインでの薄い繋がりが存在する。
最も手軽な要素としてはフィールド上で課題となるモンスターの討伐やアイテムの入手を行うものだ。
また、最も協力性の高いものでは他のプレイヤーと協力して攻略する専用クエストやレイドボスのようなモードも存在している。

しかし、どれもオマケと言ったレベルでありガッツリと楽しめるものとは言えず、ハッキリ言って無くて良かったのではないかとすら思える。
また、リワードでは好きな素材と交換できるポイントを入手でき、これ自体はありがたいのだが、入手できるポイントはそう多くないためニーズには追い付かない事が大半だ。

 

グラフィック

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神懸ったフィールドデザイン

ゼノブレイドクロスのフィールドは神のようなセンスだ。
神秘的で雄大なランドマークに、フィールドごとに全く異なる特色。
どこを見渡しても美しいミラの大地は史上に残る傑作と言って良いだろう。

また、フレームレートなども基本的に安定しており、リソースの少ないWiiUであってもこれだけのフィールドの映像出力が安定しているのは驚異的だ。

グラフィック面ではモブキャラクターの造形が余り良くないのは少しだけ気になるポイントかも知れない。
また、アニメーションではキャラクターの歩行、泳ぎ、待機モーションなどが全てのキャラクターで共通したもの(性別でのみ差異のある汎用モーション)になっており、各キャラクターの個性を感じられないのは残念に感じるポイントだ。

画面上のテキストが全体的に小さい事も明らかな欠点だろう。
本作の要素の多さが災いし画面上の情報量が多く、テキストやアイコンが小さくなっている。
人によっては読みにくいと感じる事もあるだろう。

 

サウンド

ゼノブレイドクロスのBGMは澤野弘之氏が手掛けている。
正直なところ澤野氏のBGMは曲としての完成度は素晴らしいものの、曲自体の主張が激しすぎる所があり、ゲームと言う媒体ではやや悪目立ちしているように感じる面もある。
しかし、澤野氏特有のその壮大なBGMは間違いなく他作品では使用する事はできないものだろう。
本作のBGMは「ゼノブレイドクロスに合っている楽曲」と言うよりも「ゼノブレイドクロスでしか使えない楽曲」なのだ。

非常にカッコいい澤野節抜群の「no9=MONOX (0rCH-SUITE"X")」

神秘的な「NEMOUSU秘OUS」

カッコいいSF感が漂う「Black tar」

圧倒的な強敵「Uncontrollable」

処刑用BGM「Wir fliegen」

壮大なフィールド曲「N周L辺A」

未開のミラを探索するような「z5m20i12r04a28」

静と動のメリハリのある荒野の曲「亡KEI却KOKU心」

神秘的であり幻想的な「46-:ri9」

終わりを呼ぶ者の曲でもある「z15f20i12e09l14d」

楽曲自体はどれも素晴らしいものの、サントラは昼用曲と夜用曲が前後半の1曲扱いで収録されているなど痒い所に手が届かない。この仕様はゲーム音楽ファンとしても不満の残る構成だろう。
また、ゲーム内においてもドールの飛行中に流れる「Don't worry」は曲自体は良いものの使い方がイマイチと言わざるを得ない。
ドールが特定のクエストをクリアして飛行可能となった場合にジャンプ操作が飛行操作へと変更されてしまうため、ちょっとした段差を超えたいだけであるにも関わらず飛行中BGMに遷移するようになってしまう。
BGMの切り替え時には毎回曲の先頭から流れる点も少々ばつが悪い。
ジャンプ操作を2回実行する事で飛行状態に遷移するようにするか、BGMが常に先頭から再生される事の無いようにするべきだったように思える。

その他のサウンド関連では相変わらずボイスの量は多い。
戦闘中には前述しているソウルボイスがあり、戦闘終了後には特定の仲間の組み合わせで専用の掛け合いが発生する。

 

総評

ゼノブレイドクロスは総合的には間違いなくプラスだが、粗と言える部分も多い作品だ。

薄味な期間が長いストーリーおよびストーリーテリング、共闘感が薄くむしろ孤独感すらある戦闘、そして個性が無いキャラクターアニメーションは目立つため特に勿体ない部分だ。
しかし、それでも他の追随を許さない圧倒的なフィールドデザインや澤野節が光る壮大なBGM、そしてオーバークロックギアを使用した脳汁溢れる高速の戦闘は間違いなく体験しておくべき内容だ。

 

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