【レビュー】グランディア

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忘れられない冒険になる

グランディアセガサターンにて発売されたRPGで、後年にPSに移植されるなどしている。
筆者とグランディアは少し距離が遠い所におり、セガ派の友人がプレイしている所を見せて貰った印象くらいしかなかったのが正直な所だ。
そのため、ほとんど初見でのレビューと言って良いだろう。

なお、今回はリマスターされたグランディアHDコレクション版でのレビューとなる。

 

グランディア

グランディア

  • 発売日:1999/06/24
  • メディア:Video Game
 
グランディア

グランディア

  • 発売日:1997/12/18
  • メディア:Video Game
 

グランディア HDコレクション ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)

 

ストーリー

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当時のアニメの影響が色濃いジュブナイル

グランディアのストーリー演出やセリフ回しに関しては「天空の城ラピュタ」や「未来少年コナン」など1980~1990年前後のアニメテイストが色濃いジュブナイルもののストーリーが特徴的だ。
物語構成にしても伏線がしっかりと用意されており、展開を匂わせるような発言もあるため、プレイのモチベーションに昇華できるように工夫されている事も評価できる。
メインストーリーの一部のシーンには当時としてはまだ目新しいものだったボイスが付いている事も特徴的で、ボイス付きのセリフに関してはテキストが自動送りされ、特に切羽詰まったシーンでは食い気味にセリフが発生するなどしっかりとシーンに合った会話テンポになるように演出されている点も完成度が高い。
また、多くはないが3Dモデルとアニメを併用したカットシーンが存在する点も特筆すべき表現方法と言えるだろう。

主人公であるジャスティンはパールという港町で暮らす少年で、等身大の子供らしい遊びをしながら過ごしていた。
元々冒険心の強いジャスティンは許可を得て近郊にある遺跡の見学に行くのだが、未開のルートから太古に存在していたといわれるエンジュール文明の古代都市アレントにいるという女性リエーテのメッセージを受け取る。
冒険心に火が付いたジャスティンはエンジュール文明の謎を解き明かすために旅立つ決意をする事になる…というのが冒頭の導入だ。
このように本作は一般的に多い何かを失って始まるようなものにはなっておらず、純粋な探求心によってスタートする。
自分の足で旅立ちを迎えるため、旅立ちの際の「今までの日常との決別」をしっかりと演出しているのはジュブナイルとしての物語をしっかりと描いていると言えるだろう。
中盤に突入する頃には全く知られていない未知の土地を冒険する事になっていきフロンティアを開拓していくようなワクワクを感じさせ、終盤にはエンジュール文明と関連した壮大な展開となっていき、切ないシーンや熱いシーンがプレイヤーを引っ張っていく。
未熟なジャスティンという少年の主人公は時に挫折しそうになる事もあるが、ひたすらに自分の信念によって成長していく姿は魅力的だ。
また、様々なキャラクターが仲間となり前へと突き進むジャスティン達を助けてくれるが、この仲間達もまた伝統などに縛られずに己の信念によって行動しているキャラクターが多い。
この「周囲の人間や伝統と言った環境に影響されずに自分の意志によって行動を行う」という人物像は本作のエンジュール文明の都市アレントの名前の元となった可能性がある近現代哲学者ハンナ・アレントの思想があると見ても良いかも知れない。

上述の通り、本作には未解明のエンジュール文明「光翼人」に関連した遺跡が多数登場する。
これらの遺跡はエジプトのピラミッドやマヤのマチュピチュイースター島のモアイなどの雰囲気をベースとしたデザインになっており、現実世界との地続きさをどこか演出している節がある。
そのため、「神話や伝承の物語が実際に起きた出来事である」とより身近なものとしてプレイヤーが受け止めやすくなっており冒険心を掻き立ててくれる作りになっている。

なお、本作にはクリア後用の特典ディスク「デジタルミュージアム」というものが存在するようなのだが、HDリマスター版ではこちらは何故か未収録となっているようだ。

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充実したテキストは特筆すべきポイントだ

メインのストーリー以外にも特筆すべきポイントとして「NPCとの会話」がある。
街の人々との会話もしっかりと作られており、誰かと話しかければ必ずと言って良い程にジャスティンなどのパーティーメンバーがそれに対して受け答えをするようになっているのだ。
そのため、本当の意味で「会話」になっているのは非常に好感が持てる演出だ。
また、会話パターンも豊富で、複数回会話が変化したり、進行状況によって変化するなどボリューム満点だ。

旅を演出してくれる食事や野営シーンも素晴らしい。
ストーリー中では宿屋で食事を行ったり、テントを張って野営したりするのだが、それが冒険感や共同体感を高めてくれる。
また、これらのシーンでは仲間キャラクターとの会話が用意されており、食事中に会話をすると言う何とも生活感のある演出も好印象だ。

本作をプレイするにあたって注意するべき点として、少なくはあるが進行がわかりにくい部分が存在する点だろう。
画面上に表示されているコンパスによってイベントの位置を調べたり、出口を調べたりすることはできるが、どこに行けば良いのか、どうすれば進行できるのか、どこを調べれば良いのかといった進行の手順が明確になっていない部分が散見され、痒い所に手が届かない。
当時のゲームには多かったものではあるが、プレイしていて戸惑う部分は少なからずある事は覚悟しなくてはならない。

また、選択肢の先頭がデフォルトでフォーカスされているため、会話送りをした際にボタン連打によって誤って違う選択をしてしまう危険がある事も頭の片隅に置いた方が良いだろう。

 

システム

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バランス良く設計されたバトルデザイン

グランディアの戦闘は仲間とタイミングを考慮して連携する事が大切だ。
端的に表現するとATBライクな形式で仲間キャラクター毎の待機時間が経過したタイミングで行動の指示をするような形式のシステムを採用している。
指示を出してから実際に行動が発動するまでにはタイムラグが用意されており、この「指示⇒発動」までの発動準備期間が本作のキモとなるように構成されているのが特徴となっている。
まず、プレイヤーは味方キャラクターに指示が行えるタイミングが来た時点で「何をするべきか」を考える必要がある。連続攻撃で畳み掛けるようにするか、敵に狙われているキャラクターは防御行動をするかなど、指示出し可能な順番が来た時の戦場の状況から考えて戦う必要があるのだ。
そして発動準備期間は最も注意しなくてはならない。
詳細には異なったりするが簡潔に説明すると味方も敵も「指示⇒発動」に遷移するまでの期間に攻撃を受けてしまうとカウンター判定になったり、最悪の場合には行動がキャンセルされてしまうなどのデメリットが発生するのだ。
そのため、「指示」が可能になった段階で、「発動」するまでにどれくらい時間がかかりそうかを考慮しながら適切な行動を選択をする必要がある。
火力は高いが発動までが長い行動をするべきなのか、火力はそこそこだが発動までが早い行動をするべきなのか、そもそも攻撃などせずに防御した方が安全なのか、敵の状況をみて判断する必要があるため、単純に強い技にカーソルをあててボタンを押すだけのゲームにならない。
敵の状況や行動タイミングをしっかりと確認することで、上手くいけば敵をほとんど無力化して立ち回るといった事も可能になっている。特に仲間が複数人いる状態で敵が1体のような状況ではタコ殴りだ。
ただし、レベルデザインもそれを考慮しているためボス敵などが単体で出現する事はほとんどなく、あったとしても1対1になるようなシチュエーションであるなど難易度がバラつく事は余り無い丁度良いものにもなっている。

キャラクターの育成方法もしっかりとデザインされている。
各キャラクターには装備可能な武器種が設定されていたり、各属性の魔法を覚えさせることが可能になっている。
この各武器種や各属性魔法の熟練度を上げていく事で、それに応じた能力値が上昇したり、必殺技を習得する仕組みになっている。
レベルアップと言う要素の他にも戦えば戦うほどにキャラクターが成長する要素を用意している訳だが、スキルレベルが低いものは熟練度が成長しやすいなど平坦に成長させやすい工夫もされており遊びやすい。
なお、魔法はレベル1~3のランクが設定されており、MPもランク毎に設定されているというTRPG的なシステムで現在では独特なシステムになっている。
そのため、レベル1の魔法を何回使用しても、レベル3の魔法の使用回数が減る訳ではなく、敵や状況に応じた使い分けを選択肢に入れやすくなっている。

敵の強さの上昇度合いやショップのバランスも非常に整っている印象だ。
敵は適切なステップを踏んで段階的に強化されていき、理不尽にいきなり強敵が現れるような事はほとんどなく、レベリングをやり込むなどしないのであれば終始丁度良い危機感を持った戦闘が楽しめる。
ショップの装備品の価格設定も良く、次の街に到着する頃の資金の溜まり具合で装備を整えるとちょうど財布が空になるような金額設定になっているのだ。
ゲームプレイがしっかりとデザインされている証左と言えるだろう。

全体的にバランス良く整えられている本作であるが惜しい部分もある。
本作は戦闘中のコンボ(通常攻撃)によってスキル発動に使用するSPが回復する。その着眼点は素晴らしいのだが、消費量と回復量の天秤のバランスは余り良くない。
時間がかかるボス戦でもない限りは通常攻撃で満足にSPを回復できるとは言い難く、マイナスな要素とは言わないが恩恵を感じる事はほとんど無いと言っても良い。
また、通常攻撃でSPが溜まるが魔法で消費するMPを回復する手立てがアイテム以外に用意されていない。
例えば、通常攻撃でSPが溜まり、スキルでレベル1魔法のMPが、レベル1魔法でレベル2魔法のMPが溜まるような階層的な構造だと更にエレガントだったのではないだろうか。

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当時としては珍しい3Dダンジョン

グランディアでのダンジョン探索は3D黎明期である事もあり、3Dモデルのフィールドである事を活かそうとした要素になっているのが特徴となっている。
マップをグルグルと回したり、3Dモデルのオブジェクトを移動させたりしてフィールドを探索させるようになっている。
また、古めのゲームらしくノーヒントに宝箱が隠されているなど、能動的な探索の楽しさがあり、それが本作のメインテーマである「冒険」を増長させている。

古い時代の作品であるが、ユーザーフレンドリーである点は見逃せないポイントだ。
「ストーリー」の項でも記載しているが、画面上にはコンパスが表示され、少々クセはあるがそれを駆使する事によって次に行くべき場所であったり、出口の方向を”ある程度”ではあるが知る事が出来るようになっている。
更にダンジョン探索においてはセーブポイントで全回復が行えるなど、現代では標準とも言える親切さを当時の時点で備えている点は素晴らしい。

しかし、3Dダンジョンは難点が存在しない訳では無い。
それは(コンパスがあったとしても)迷子になりやすいという点だ。
中盤頃ともなるとダンジョンは入り組んでおり、ランドマークとなるようなものもないため周囲は似たような景色で埋め尽くされてしまう。
それに加えて、本作の売りでもある3Dフィールドをグルグルと見渡せてしまう事が仇となって自分がどの道から来たのか把握しにくくなり迷子となってしまうのだ。
コンパスがある事によって幸いにも絶望的な感情になる事がないのが救いだが、自分がどこにいるのか、ここは来たことがない場所なのかがわかりにくいのはフラストレーションに繋がってしまう。

なお、本作は各ダンジョンは物語の進行と共に再侵入が不可になっていく。
そのため、取り残しなど気になる場合にはしっかりと探索を終えておく必要がある点は進行の際の注意点だ。

 

グラフィック

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3Dと2Dを併用したアートスタイル

本作の映像面の特徴は3Dマップに2Dキャラクターを乗せている点だろう。
当時はハードスペックの兼ね合いから主流の表現手法の1つだったものだ。
本作と同様の手法を用いた代表的な作品にはゼノギアステイルズオブシリーズなどが挙げられるが、これらに関しては本作に影響を受けたというよりは環境に依存した収斂進化と言った方が正しいのだろう。

フィールドによる世界観表現も見事で、未開の地では風貌が全く違う地形、植物、敵が出現する。
また、マップ上にある3Dオブジェクトの小物に少しだけインタラクトできたりもする。

 

サウンド

アニメに大きく影響を受けているように見受けられる本作だが、BGMに関しても1980~1990年頃のアニメ的な雰囲気がふんだんに採用されている。

要所で流れる壮大で爽やかなメインテーマ「グランディアのテーマ」

不意打ちになった際の緊迫感ある戦闘曲「戦闘2」

賑やかさと騒がしさがせめぎ合う「ガンボの祭」

妖しく神秘的な古き時代を感じさせる「地下遺跡」

歌劇的な雰囲気を思わせる壮絶な「迫り来る危機」

本作のボイスなどに関しては当時に主流のアニメ的な抑揚が強めの演技となっている。
「ストーリー」の項でも前述している通り、ボイスの使い方なども総じて非常に凝っている。
キャラクターは戦闘中にも技名を叫ぶほか、後半(Disc2)になると戦闘中のセリフに変化があるなどの細かい部分のこだわりも素晴らしい。

 

総評

グランディアは全体がバランス良くデザインされているだけでなく、当時のアニメを強くリスペクトした「アニメをゲームにする」といった強い意気込みが感じられる名作だ。

子供の冒険心を題材としたジュブナイルもののストーリーや豊富な会話テキスト、巧みに設計されたバトルシステム、ユーザーフレンドリーを欠いていないダンジョン探索など特筆すべき点は多い。
3D黎明期の作品ではあるのだが、現代でも十分に楽しむ事が可能な高い完成度を誇るRPGタイトルだ。

 

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【レビュー】大貝獣物語

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異世界転生で貝の勇者

筆者が大貝獣物語と出会ったきっかけは良く覚えていないのが正直なところだ。
物心ついた時には家にはビデオゲームがあり、ソフトもそれなりにあり、その中の1作として所有していた。
小さい頃には本作の勇者の館システムや音楽が好みでプレイをしていたように記憶している。
しかし、周囲の友達で本作を持っている人は誰もおらず、情報交換しようにも相手がいなかったのも苦めの思い出として印象深い。

今回は大貝獣物語について記載したい。

 

大貝獣物語

大貝獣物語

  • 発売日:1994/12/22
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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幻大陸シェルドラドに召喚される主人公

大貝獣物語のストーリーは近年(2010年代後半)では王道ともなりつつある異世界転生ものの物語となっている。
ストーリーの冒頭では異世界にいる勇者を幻大陸シェルドラドに召喚するのだが、召喚される勇者(主人公)とは恐らくはプレイヤーの事であると言う認識で良いだろう。

物語は幻大陸シェルドラドにて封印されていた悪の大魔王ファットバジャーが覚醒し、それによって宇宙から隕石のようなものの落下が引き起こされ地上に住む人々に多くの被害が発生する。
これ以上の厄災を起こさないためにもファットバジャーを討伐するべく異界から主人公が召喚されるというのが物語の導入だ。

本作では多くの仲間キャラクターが用意されているのだが、特定の仲間を連れている時など条件で専用の会話イベントが発生する事もある。
また、仲間の過去を掘り下げるイベントも用意されているなど、サブストーリー部分もしっかりと用意されている。
ただし、仲間同士の関係性を掘り下げるようなイベントは数える程度しかないのは注意点だ。

プラスやマイナスと言った要素では無いのだが、大魔王を倒すべく異世界から勇者を召喚したり、幻大陸シェルドラドにおける回復アイテムの名称が「カミダノミン」という名前であったりと、シェルドラド文化はどこか他人任せな所があるのは特徴的なのかも知れない。

本作のストーリーにおける気になる事があるとすれば、ストーリーの進行方法がわかりにくい箇所が散見される点だろう。
これは古いゲームにはありがちではあるのだが、何を調べて欲しいのか、何を持ってきて欲しいのか、どこで何をすれば良いのか伝わりにくいケースが散見される。
また、当然ながら「あらすじ」などが用意されている事もないため、次にどこに行けば良いのかを忘れてしまうと致命的な結果になりかねない。
特に行動可能範囲がどんどん広がっていく物語の後半で目的地を忘れてしまうと最も致命的だ。

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二部構成のストーリー

ここでは少々ネタバレを含んだ記載となる事をご了承願いたい。
ネタバレが嫌な方は「システム」の項まで読み飛ばす事をオススメする。

本作の物語は二部構成となっているのが特徴的だ。
第一部は前述の通りファットバジャー編となるのだが、第二部では宇宙から飛来した敵と戦う事になるSF色ある物語が展開される。

第一部は封印されたファットバジャーを倒す事が大目標だ。
第一部の期間中の物語ではファットバジャーを完全復活させるべく生贄を捧げる集団が登場するなど、とにかくファットバジャーがラスボスであるというミスリードを行っている。
そしてファットバジャーを倒すと第二部がスタートする事になる。
第二部ではファットバジャーが宇宙より呼び込んだ隕石が擬態した宇宙船であると判明し、その宇宙船に乗った宇宙生物の侵略からシェルドラドを守る話となる。

ここで注目したいのは2点だ。
1点目はファンタジー色が強かった物語に急激にSF色の強い話が差し込まれるという点だ。
第一部まではどこか東洋テイストのある中世ファンタジーのような世界観しか登場しないのだが、第二部に突入すると急に潜水艦などの機械工学的な世界観が顔を覗かせる。
なによりも、ファンタジー世界の主人公達とSF世界の宇宙生命体との戦いという構図になっているのは今なお珍しい組み合わせだ。
2点目は宇宙より飛来した宇宙生物はファットバジャーによって召喚された存在であるという点だ。
主人公はシェルドラドの民によって異世界より召喚された存在であり、本作のラスボスもまたファットバジャーの求めに応じて宇宙という異世界より召喚された存在なのだ。
本作の構図はお互いが似た役割を与えられた者同士の代理戦争でもあるのは興味深い設定だ。

 

システム

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オーソドックスなガム型バトルシステム

本作のバトルシステムはドラゴンクエストなどに代表されるクラシックでオーソドックスなRPGのシステムだ。
ターン制で進行し、キャラクターの速さの順に行動が行われる。

戦闘では大まかに通常攻撃、魔法、特技が存在している。
MPを消費して発動する魔法は基本的に固定ダメージしか与えられないため、弱点属性の魔法でない限りはダメージソースとして考えると頼りない事も多い印象だ。そのため、攻撃魔法よりも回復魔法にお世話になるのではないだろうか。
特技は通常攻撃の1.5倍の威力でダメージが出せるなど後半でも強力だが、発動のためにHPを消費するものやデバフが発生するものもあり万能と言う訳ではない仕様になっている。
しかし、魔法にしろ特技にしろレベルアップでHPとMPは全回復する仕様であるため、MP消費であったり特技のデメリットはそこまで気にならない。

本作にあるユニークなシステムとしてBTS(バトルトークシステム)と言うものが用意されている。
BTSとは戦闘中に戦闘相手のカーソルで仲間を選択すると発生する短い会話の事で、仲間同士の関係性などを知る事ができる数少ない要素になっている。
BTSを行ったキャラクターの組み合わせによっては能力が上昇するなどの効力がある場合もある。

進行もある程度デザインされているように見える点も悪くない。
特定のキャラクターを仲間にしていない場合に物語が進行しないケースがあるのだが、もしも仲間にしていない場合には以前の街に戻らなければならない事になる。
しかし、その頃のレベルでは「ワープル」と言うファストトラベルの魔法を習得するようになっているため以前の土地に戻るのはそこまで大変にはなっていないのだ。
その他、敵のレベルカーブも急激に変化するような事はなく、キャラクターの成長に応じて、それなりに適度に強くなっていくようになっており、一定の遊びやすさはデザインされている。

本作のバトルにおいて気になるのはエンカウント率の高さだろう。
戦闘はランダムエンカウントなのだが、そのエンカウント率がとにかく高く、数歩も歩けば敵に当たるのは平常運転だ。
エンカウント率の高さが災いして、なかなかフィールドやダンジョンの探索が進まずフラストレーションに繋がりやすい。
では、本作はエンカウント率を下げれば問題解決なのかと言うと、それは臭い物に蓋をしているだけであり本質的な解決方法ではない。
本作の本質的な問題は「バトルが面白くない(デザインがミスマッチしている)」ことなのだ。
ドラゴンクエストフォロワーのようなクラシックなターン制のRPGスタイルでは、プレイの最初の頃こそ成長速度が速く楽しいものに感じられていても、時間が経つと共にキャラクター達の成長速度も遅くなり、成長によって魔法や特技などが出揃ってしまえば全ての戦闘において強力な攻撃を使うだけの単純な消耗戦になりがちである。
その結果、敵の見た目が変わるだけでプレイ内容に変化が生まれず「回数を重ねれば重ねるほど飽きやすい」という噛めば噛むほど味が無くなる「ガム」のような形式になっていることが問題の本質と言える。
つまり、頻繁過ぎるエンカウントは「味が無くなるのを早めている」に過ぎないのだ。
このようなデザインとなった背景として当時は「少ない容量ながらに、いかに長くゲームを遊んで貰うか」という観点があったのかも知れないと推察している。
しかし、面白みの薄い戦闘を高頻度で行って途中で飽きさせてしまっては本末転倒なハズである。
例えば、戦闘自体の楽しさを体験させたいのであればメタ要素やアドリブ性が求めれる要素が絡む戦闘にしたり、高いエンカウント率を採用するのであれば上手く立ち回れば1~2ターンで決着がつく爽快感のあるテンポの良い戦闘にするなど、志向にあったデザインであればまた違った印象になったのではないだろうか。
エンカウント率と戦闘システムがミスマッチしたデザインになっているのは勿体なく思えてしまうポイントだろう。

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序盤からパーティー構成を自由に決められる「すけっと」システム

大貝獣物語において特徴的なシステムに「勇者の館」というものがある。
勇者の館は「最序盤から仲間を選択してパーティーを組める」と言うシステムだ。

パーティーに加える事が出来る仲間はそれぞれ「攻撃力が高い」「回復が豊富」「耐久性が高い」など役割や特徴があるため、パーティーバランスを考慮して選出するのが望ましい。

この勇者の館は序盤から様々な仲間を使うことが出来る事に面白さはあるものの、「早々に1軍と2軍に分かれてしまう」という問題点が生まれてしまっている。
理由は単純で「勇者の館で待機しているメンバーは育たない」ためだ。
2軍と化してしまったメンバーに関しては、レベリングなどはもはややり込み要素の域となってしまい、最前線での起用はなかなか選択しにくい状態になってしまうのが実情だ。
勇者の館で待機しているメンバーも成長してくれたり、かなり近代的だがレベルの低いキャラクターは入手できる経験値に補正が入るようなシステムになっているとキャラクターの豊富さがより活かせたように思える。

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戦闘以外の仲間も存在する

本作では戦闘以外で冒険を手助けしてくれる仲間も存在する。
フィールドで一見取れない宝箱が取れるようになったり、邪魔なオブジェクトを排除したりする事ができる。

冒険を手助けしてくれる仲間は毎回メニューから呼び出す必要があるのはテンポの悪いやや面倒な仕様だ。
また、イベント進行用アイテムを使用する際にも毎回メニューから実行する必要があるのも同様に面倒だ。
必要な場面で決定ボタンをするだけで実行された方が良かったのは間違いないだろう。

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ユニークな街の要素

本作では街の構成にもユニークさがある。

お世話になるユニークな要素は状態異常は宿屋では無く魔法医院という病院のような施設で治す必要がある点だろう。
宿屋で寝れば全ての状態異常が治る訳では無く、医院に行かなければならない。
医院と言う生活感のある施設は世界観を表現するのにも一役買っていると言えるだろう。

街を探索する要素としてスタンプラリーも用意している。
スタンプラリーは街の特定のポイントにスタンプが隠されており、スタンプを集めればアイテムなどを入手する事ができる。
しかし、隠し場所がわかりにく過ぎるものも多いうえ、場所によってはイベントの進行により取り逃すと二度と取れないケースもあるのは少々配慮不足に感じる所だ。
そのため、コンプリートを目指す場合には注意が必要になる。

「わが町」という自分の街を作れるシステムも非常にユニークだ。
とある場所で4区画に自分の好きな施設を配置させる事が可能で、自分好みの施設を建設した小さな町を作る事が出来る要素となっている。

グラフィック

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そこそこ良いグラフィック

大貝獣物語は戦闘画面などで描かれているグラフィックは悪く無いが、フィールドやダンジョンを移動する際のキャラチップやマップチップは少々チープさを覚える完成度だ。
また、戦闘中の特技や魔法のエフェクトは単純な図形で表現されているものも多くややリッチさに欠けるのは少々勿体ない所だろうか。

その他、GUIは全体的にレスポンスがやや悪く、街やダンジョンからフィールドマップに切り替わる際のレスポンスも遅く、フラストレーションになる場合もあるだろう。

 

サウンド

どこか日本の歌謡曲のようでもある古めのアジアンテイストのBGMは印象的だ。
筆者の好きな楽曲を一部紹介したい。

謡曲のような美しいメインテーマ「序曲」

謡曲のようなフィールド曲「幻大陸を行く」

単純接触効果により記憶に残る「街のにぎわい」「のどかな村々」

過酷な登山を見事に表現した「ハードクライム」

敵の企みを思わせる「真の闇せまる」

80~90年代の日本サウンドを感じる戦闘曲「力と技と」

謡曲あるいは古い日本ドラマのBGMのようなボス戦曲「決戦」

緊迫感あるイントロが印象的な「決死の戦い」

威圧感のある曲調が印象的な「試練の戦い」

ラスボス戦に相応しい「ラストバトル」

本作のBGMは今でもなお非常に珍しいメロディを採用しており、独特で特徴的と言えるだろう。

 

総評

大貝獣物語は興味深いストーリー構造を持ったRPGだ。
ファンタジー世界の住人とSF世界の住人の抗争であり、共に召喚された者同士の抗争でもあるという「違うようで同じ、同じようで違う」対比が生み出されている。

バトル部分は単調であり、エンカウント率の高さが飽きを加速させてしまうのは勿体ないが、最序盤から多様な仲間を組み合わせて冒険を進めるようになっているのはユニークさがある。
謡曲のようなBGMも独特で趣があり印象深い。

全体的なバランスは良くまとまっている遊びやすい1作になっていると言えるだろう。

【レビュー】モンスターハンター ライズ

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新たなる夜明け

モンスターハンター ライズ(以下、モンハンライズ)はカプコンより発売されたモンスターハンター(以下、モンハン)シリーズのタイトルだ。
モンスターハンター ワールド(以下、モンハンワールド)を経てのNintendo Switch向けのモンハンと言う事で、一体どのような形態で実現するのかを興味深く初報を観た記憶がある。
とりあえず、モンハンワールドと同様にシームレスなマップを実現しているとのことで一安心であったし、カプコン内製のゲームエンジン「REエンジン」によって製作されているNintendo Switchタイトルであるというのも興味深かった。

 

 

ストーリー

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シンプルなストーリー

今回のモンハンは3rdぶりとなる和風の世界観が特徴だ。
テーマになっているのは「妖怪」や「怪談」で、それをモチーフとしたモンスターが登場するほか、その登場演出は怪談話を思わせるカットシーンが用いられている。
ストーリーは前作にあたるモンハンワールドからではあるが、比較的しっかりとストーリーらしいパートが挟まるようになっているため、ある程度はゲーム進行の目的を提示してくれる。
とは言え、大まかな流れは歴代のモンスターハンターシリーズとは変わらず、暴れ回っているモンスターの討伐を依頼されるような形式で、奥深い人間ドラマや緻密な伏線が張り巡らされているようなストーリーを期待するのは間違っている。

本作で特徴的な点があるとすれば登場するNPCに初めて明確な名前が付いたという点だろう。
歴代のモンハンでは明確な名前ではなく、役職などで呼ぶような事が大半であったのだが、本作ではちゃんと名前が設定されるようになった。
これによって記号的だったキャラクターではなくなり、より愛着をもちやすくなったのではないだろうか。

また、本作の世界観に関してはフィールド探索にて入手できる「手記帳」というもので補完できる部分もある。
この手記帳には本作のアップデート内容に関するイースターエッグ的なメッセージを匂わすものとしても活用されており、ファンには興味深い内容ともなっている。

 

システム

 

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更に立体的になったアクション

モンハンは様々な特徴を持った武器を駆使してモンスターと戦っていくARPGだ。

本作でプレイヤーが扱う事になる武器は大剣や太刀、スラッシュアックス、弓など過去作に登場した武器種は全て登場するので安心して欲しい。
武器種によって立ち回りが異なるため、プレイを続けていって「少し飽きてきたかな」という時に武器を変更してプレイしてみると新たに楽しさを見出せるハズだ。
特に基本操作に慣れていないと扱いが難しい武器などは、時間を置いて改めて触ってみると新たな発見が体験できるのではないだろうか。
デミグラスソースのハンバーグに飽きてきたら、おろしポン酢に変えてみると食が進むのと同様と言えるだろう。
なお、クエスト中でもキャンプ施設にアクセスする事で武器を変更できるのも健在である。

使う武器を決めたら次は主食となるモンスターとの戦闘だ。
モンスターは攻撃の前隙や後隙があり、疑似的なターン制のように自分が攻撃できる場面、モンスターの攻撃をしのぐ場面になるようにデザインされているので手応えはありつつもプレイしやすいハズだ。
モンハンシリーズでは選択した武器を駆使して、モンスターの隙をつきながら倒していく事になるのだが、ただ目の前の敵を倒すだけではなくゲームプレイがサイクルとして成立するようにしっかりと作られている。
モンスターを倒す⇒倒したモンスターの素材で武器や防具を強くする⇒更に強いモンスターに挑むといったスパイラル的な構造になっているのだ。
このサイクルに乗ってプレイする事で継続的なモチベーションに繋がるほか、「熟練度によるプレイスキルの向上」と「数値的な性能の向上」という1粒で2度オイシイ、ARPGだからこその良さ(達成感)を味わえるのがモンハンシリーズの本質的な楽しさであると言えよう。

モンハンと言えばマルチプレイも大切な要素だ。
オンラインプレイではモンハンワールド同様にプレイしながらのマッチングも可能となっており、いわゆる野良のプレイであっても気軽に行う事ができるのは嬉しいポイントだ。
また、プレイ中の参加人数に応じて動的に難易度が変更されるようになっているため、何らかの理由により途中でオンラインから抜けてしまった人がいても安心な設計だ。
本作ではオンラインプレイのほか、Nintendo Switchならではのローカル通信によるマルチプレイに対応している。
PSP以降のモンハンでは日本の文化的なレベルまで浸透したプレイ方法でもあるため、本要素が嬉しい人は多いだろう。

シリーズのお馴染みとなったエンドコンテンツの1つ、護石の作成は今作でも健在だ。
簡単に書くと護石はスキルが設定されているアクセサリーのようなものだが、護石を生成する際に設定されるスキルはランダムに決定されるため、自身が望んだスキルを持った護石を手に入れるためにはかなりの試行回数が必要となる。
何度も繰り返して挑戦する事になるエンドコンテンツらしい要素と言えるだろう。
しかし、護石を大量に生成すると少し困った事になる。
大量に生成するとインベントリが圧迫されてしまい整理がつかない状態になってしまうのは想像に難くないだろうが、その中で以前に作った有用な護石も埋もれてしまうのだ。
この仕様で特に困るのは護石の整理をするときで、有用な護石を誤って整理してしまいかねない恐怖感がある。
護石に対して「お気に入り」のような機能を付けて残しておきたいものだけマークできるようにするなど、誤って整理してしまわないような工夫が欲しかった。

護石作成の周回などのためにクエストを何度も繰り返し行う際に気になるのはロード時間だが、本作の全体的なロード時間は短めでとても快適なプレイフィールだ。
エスト受注後にフィールドに行く際のロードは少しだけあるが、それ以外の部分でのロードは全くと言って良い程になくストレスフリーとなっている。
これ程に最適化されているのは見事と言うしかないだろう。

本作でも無料のアップデートコンテンツとして新たなるモンスターが登場した。
とは言え、なぜここまで無料にこだわるのか疑問で、マルチプレイの扱い方を検討する必要はあるが有料DLCにしても良かったのではと思えてならない。
ユーザーとしては確かにありがたい事ではあると思うが、制作側が無理に酷使される必要は無いハズだ。
また、追加されるモンスターのどれもがエンドコンテンツ向けばかりであるのは少々不安だ。
ある程度のレベルのユーザー向けのコンテンツしか追加されないため、初心者や始めたてのユーザーはその恩恵にあずかる事はできない。
ある程度のレベルのユーザー層にだけフォーカスした結果、逆三角形のような頭でっかちな比重のタイトルになってしまっているのは不安だ。
コアなユーザー達もハイレベルなモンスターだけを求めている訳ではないと思うため尚更だ。
もう少しランクの低いモンスターも追加して、多様性を実現しても良いのではないだろうか。

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新たなる要素たち

モンハンライズにて初めて登場した要素や特徴的な要素も紹介しておこう。

まずは翔蟲だ。翔蟲はどこでもマニュアルで使用できるワイヤーアクションのようなもので、大きくジャンプしたり、素早く移動したりする事ができる。
翔蟲を使用した専用技も実装されており、その一例が上で示したGIF画像であるため参考にして欲しい。
過去シリーズではモンスターハンター3にて水中戦による3次元的なアクションが導入されたり、モンスターハンター4からは段差などを多用した立体的な地形とそれに伴ったアクションが採用されたりと、地形を利用した受動的なものではあるが立体的なアクションは行えた。
それが今作では自分の任意の、能動的なものとして立体的なアクションとして行うことが出来るのだ。
歴代とは全く異なる立ち回りが可能になっているほか、大剣やヘビィボウガンなどの移動に難がある武器も翔蟲のおかげで瞬間的な機動性が高まっている。
プレイヤーのアクション要素の拡張によって戦闘が簡単になり過ぎていないか気になる方もいるかも知れないが、モンスターもそれに伴って攻撃後の追撃行動が増えているなどバランスが整えられているためリスクとリターンはしっかりと調整されている。

次に欠かせない新要素はハンターのサポートをする新たなオトモ「ガルク」だ。
今まではアイルーと言う疑似的なマルチプレイ体験をするためのサポートキャラクターがPSP時代のモンスターハンターから登場していた。
ガルクはそれとは別の方向性で狩りを手助けするオトモになっている。
ガルクの場合には主に移動を非常に快適にしてくれる存在として確立されており、純粋にプレイヤーの行動を拡張するような形となって差別化を行っているのだ。
この移動の快適さを味わってしまうと、ガルクは今後のシリーズには欠かせない存在になってしまったと言えるだろう。

戦闘中のボイスが豊富となったのも本作の特徴だろう。
モンハンワールドの時にもボイス面は強化されたが、それよりも更に増している。
人によっては「今までのモンハンっぽさがなくなっている」と思うかも知れない点は一長一短ではあるが、敵の行動に応じたセリフが流れるようになっているため、シリーズの経験の浅いプレイヤーであってもモンスターのヘイト管理や大技が来るのが即座にわかるなど戦局を把握しやすくなっている。
なお、ボイスに関しては歴代シリーズ相当の”モンハン語(架空言語)ボイス”も選択する事は可能だ。

ソロプレイ専用のメインストーリーにあたる「里クエスト」は難易度がかなり抑えられているのも特徴的だ。
歴代シリーズでもソロプレイ専用のクエストは難易度は抑え気味であったが、本作ではそこから更に難易度が落とされている。慣れたプレイヤーならば装備をそこまで整えずとも5分程度での討伐も決して難しいものではない。
これは初心者のための配慮なのかとも考えたのだが、そうであるのならば難易度を落とす事よりも気にして欲しい場所がある。
本作では新たに追加された要素以外のシステム面でのチュートリアルがほとんどないのだ(新要素にしても、いきなりテキストがダイアログ形式で表示され困惑するのだが)。
今までのモンハンにもあった要素に関しては、攻撃の仕組みはもちろん、各種武器の個性、各種アイテムの使いどころの説明、状態異常の特性などなど、どれもこれもゲーム中にはちゃんとした説明がなく、知りたければ自分で試してみたり、テキストを読むしかない。
ここ数作のモンハンでは初心者にとってはアクションがやや複雑になっている懸念があるにも関わらず、だ。
例えば、かつての初心者オススメ武器であった大剣も現在ではしっかりとダメージを叩き出す事を考えるとある程度のコンボルートとそれを実現するための立ち回りを覚える必要があったりと全体的にシンプルさがなくなりつつある。そのため、初めてのプレイヤーにオススメしやすい武器の選択肢がかなり減っている印象だ。
そればかりか、翔蟲という新要素は発動させるためにはボタンを複数組み合わせて入力する必要があり、操作面でも初心者がついていくにはハードルが高いように感じられる。
これではルーキーフレンドリーとはお世辞にも言い難い。
「本作で初めてモンハンに触れる」という人はそこそこの根性が求められるため、筆者としてはどれだけのルーキーがついて来られるのか心配になってしまう作りだ。
議題を元に戻すと、結局のところ里クエストの難易度の低下という設計は「初心者のため」というよりも、「ソロプレイに長く時間をかけずに、マルチプレイにすぐに行けるようにしておきました」という経験者向けの配慮というのが正しい解釈なのだろう。

新しいクエストの形式として「百竜夜行」というものも存在する。
百竜夜行はモンスターが次々と登場し、砦を防衛するというタワーディフェンス的な側面のあるコンテンツだ。
百竜夜行のクエストではフィールド上の施設に機能を設定させる事が可能で、自分で使用するための大型ボウガンを配置したり、自動でモンスターを迎撃してくれるものがあったりする。
これらを駆使して数ウェーブ発生するモンスターの進行を防いでいくのがプレイシーケンスとなる。
この百竜夜行、やや大味な面はあるもののマルチでワイワイとプレイすると楽しめるコンテンツかとは思うが、ソロで黙々とやるにはなかなかに厳しい内容になってしまっている。
理由は単純で、多数出現するモンスターを迎撃して進行を防ぐというゲームプレイをする必要がある関係上、ソロプレイではとてもじゃないが手が足りないのだ。
自動で迎撃してくれるような施設設定を行う事はできるが、戦力としては物足りない側面が強く、あくまでもオマケ程度でしかない。
百竜夜行はソロプレイでもクリアは可能な調整はされているのだが、基本的にはマルチプレイを前提としたコンテンツであるという事は覚えておいた方が良いだろう。

本作では以前までのシリーズでは恒例であったホットドリンクやクーラードリンクが廃止された事も変化点として記しておきたい。
ホットドリンクやクーラードリンクは寒冷地や砂漠などの厳しい自然環境の対策として持っていくアイテムであったのだが、それが完全に必要なくなったのだ。
モンハン初期シリーズに感じられたような狩猟生活というシム体験をしたかったユーザーには寂しい仕様に映るかも知れないが、寒冷や酷暑といった環境がシステム的には形骸化していたため、”やむなし”と言える判断だろう。
例えば、「アイテム枠が4つ」のように持ち込み数を非常に少なくしていれば、クエストにホットドリンク(クーラードリンク)を持っていくにあたってのリスクとリターンが成立したが、モンハンシリーズのアイテム枠はそれなりにあるため「持って行かない」という選択肢がほとんど成立しない。
あるとすればうっかり忘れてしまった時だけだ。
過去作ではボウガンの弾がアイテム枠を圧迫していた時代もあったが、近年ではアイテムのインベントリがカテゴリー別に枠が設定されるようになったりと利便性の向上によって、ホットドリンク(クーラードリンク)という存在の形骸化に拍車をかけてしまっていた。
そのような経緯もあり、ホットドリンクやクーラードリンクが無くなるのは時間の問題で、それを本作で行ったのは英断だったと言えよう。
また、それと同時にモンハンシリーズは「狩猟生活シム」とは一線を置く方向に更に舵を切ったと言う事もできる。

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大きく強化された探索要素

本作では翔蟲による立体的な移動が実現したのだが、それを活かしたフィールドの探索要素も大きく強化されている。
今作のフィールドではいわゆる「見えない壁」が極力排除されているのも特徴的で、翔蟲を壁面に向かって使用する事でまるで忍者のように壁を走ったり、崖の上まで登ったりする事ができるのだ。もちろん、崖を登り切ってしまう事もできる。
そして、そのようにフィールドを駆けまわって探索をする事でクエスト中の基礎ステータスを上昇させる生物(環境生物)がいたり、戦闘で有用な効果を発動する環境生物を捕獲したりする事ができるほか、環境生物やモンスターを撮影して図鑑に載せる事ができるやり込み要素もある。
更にレアな環境生物や前述しているが探索で見つかるコレクションアイテムの読み物「手記帳」もフィールド内に隠されている。
このように立体的でシームレスなフィールドを探索する意味が大きく強化されているのだ。あるいはフィールドが立体的になったが故に探索要素を強化したと表現した方が正しいかも知れない。
そのため、過去シリーズと比較するとフィールド内を歩き回るだけでも楽しいものに仕上がっていると言えるだろう。
なお、拠点であるカムラの里でも少しだけではあるが翔蟲を使用して立体的な移動ができる。

 

操竜

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モンスターの操作が遂に可能に

モンハンライズでは遂に印象的なモンスター達を一時的にではあるが操作する事が可能になった。
それが「操竜」である。

フィールド上にモンスターが複数体登場する事は過去シリーズでも頻繁にあったが、モンハンワールドにおいては縄張り争いへと進化した。
しかし、それは生態系の再現として世界観の厚みはもたらした素晴らしい要素ではあるものの、傍観するだけの要素でありゲームシステムとしては真にシンクロしていなかったのも事実だ。
しかし、本作では一定時間内だけではあるがモンスターを操作して能動的に戦わせる事ができることで、フィールドにモンスターが複数体存在する事により強い意味を持たせる事が出来るようになったのは素晴らしい。
何よりもアイコニックなモンスター達を自ら操作できるようになったのは偉大なマイルストーンだ。

 

サンブレイク

狩りの舞台は、遠い異国の地へ

モンスターハンター ライズ サンブレイクはモンハンライズにおける大型の拡張コンテンツだ。
前作にあたる「アイスボーン」と同様の立ち位置であり、過去作でいう「G系統」の作品だと考えて良いだろう。

 

ストーリー

西洋モチーフのモンスター達

サンブレイクでは活動拠点がエルガドという異国の土地へと移す事となる。
そこでは百竜夜行とはまた異なる異変が起きているとの事であり、その調査を行い原因と対処を行うために行動していく。

このサンブレイクにおいては西洋の怪物がモチーフとなったモンスターが新たに登場している。
パッケージモンスターであるメル・ゼナは吸血鬼だが、他にも狼男やフランケンシュタインなど、本編では和の妖怪に焦点を当てていたのと打って変わって海の向こうの類似の立ち位置の存在をフィーチャーしている。

サンブレイクのおけるストーリーにおいて特筆するべきポイントを挙げるとするならば、最終アップデートにて追加されたモンスター「アマツマガツチ」における演出であろう。
NPCと一緒に強敵と対峙する事になるほか、過去シリーズをプレイしている人には胸が熱くなる演出が用意されているため最終戦に相応しいものとなっていると言えるだろう。
この一戦はモンスターハンターシリーズのストーリーとして新しい一歩を踏み出したと言っても過言ではないものとなっている。

 

システム

能動的な行動を促す戦闘デザインと大幅強化のエンドコンテンツ

サンブレイクの戦闘ではキュリアと呼ばれる寄生生物がフィールドに蔓延っている影響により、モンスターから攻撃を受けると専用の状態異常を受けてしまう。
しかし、この状態異常こそが戦闘をアグレッシブさを生み出しているのだ。
キュリア状態となると時間経過と共にプレイヤーのHPを削り取るいわゆるスリップダメージのようなものが付与されてしまうのだが、それと同時に敵を攻撃する事でHPを回復するという効果も付与される。
そのため、敵に攻撃されながらでも、プレイヤーに攻撃を促すため「ドン・フライ vs. 高山善廣」かのような殴り合いをする土壌をお膳立てしているのは戦闘デザインとして素晴らしい。
このデザインはかつては「狂竜症」でも類似のデザインが取り入れらていたり、別作品で恐縮だがBloodborneにおいても同様のデザインが採用されている。
プレイヤーが積極的に、アグレッシブに攻めに行く理由を作るようにしているのはゲームとして非常に良い発想だ。

強化されたのは当然ながら戦闘デザインだけではなく、戦闘前のキャラクタービルド面も大幅に強化されている。
まず武器のカスタマイズ部分だが、こちらは強化していく事で攻撃力や斬れ味などの武器ステータスの向上が可能だ。
しかし、専用のスロット制になっているため、どの方面を強化していくのかをカスタマイズする必要がある。
そして、エンドコンテンツとして機能する防具の強化は最大のアップデート内容と言えるだろう。
防具に設定されている防御力やスロット、スキルと言った全ての面を専用の素材を消費する事で変化させる事が可能な「傀異強化」が行える。
これによって有用なスキルをテンコ盛りした防具の作成も決して夢ではないが、ランダム要素となるために理想的な構成にしたいと思うとかなりの試行回数が必要だ。
そのため、クエストを多くプレイする理由付けとして機能するようになっている。

その他、護石関連も大きく強化されており、破格のスキルやスロットが付いた護石が入手できるようになるなどエンドコンテンツが大きく強化されている。

個性あるNPC達と一緒に狩猟に

このサンブレイクでは歴代モンハンシリーズにおいて画期的な新たな一歩となる「NPCとの狩猟」が可能となった。
本編の「ストーリー」の項でも記載したが本作ではNPCに明確な名前が付き、キャラクターの個性が強く出るようになっていた。
そんなNPC達と一緒に狩猟ができるようになったのだ。

当初は「盟勇クエスト」という限られたクエストのみに同伴という形であったが、アップデートに伴ってほぼ全てのクエストに同伴が可能となった。
連れていけるNPCは最大2名で、組み合わせによっては専用のボイスも聴く事が可能となっている。
また、NPCにはそれぞれ行動の傾向や武器適正が設定されているため、そちらも考慮しても良いだろう。

 

グラフィック

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和風のビジュアルスタイル

「ストーリー」の項でも触れているが、本作は妖怪などをモチーフとしており和風テイストが強いのが特徴的だ。
モンスターのデザインはもちろん、モンスターの挙動などもユニークだ。
筆者が特に気に入った新モンスターは河童がモチーフの「ヨツミワドウ」で、河童が得意とされる相撲を彷彿とさせるモーションで暴れまわる。
挙動のコンセプトが明確で個性が強く可愛らしいのが特徴的だ。

モンスターは川などの水辺で暴れまわると濡れたような表現になったり、遠くのモンスターなどはフレームレートが落とされ負荷を下げる工夫がされたり、様々なアプローチがされているようだ。
Nintendo Switch向けであるためディティールの部分ではモンハンワールドよりは劣る部分はあるものの全体的な品質はかなり高くまとめ上げられている。
フレームレートも安定しており、サードパーティー製としてはトップクラスの最適化が行われているように感じられる。

モンスターと戦う事になるフィールドもモンハンワールドと同様に完全シームレスになっている。
フィールドは森林地帯や砂漠、寒冷地などシリーズ恒例のカテゴリーがしっかりと存在している。
シリーズファンにとって嬉しいのは過去作の一部のフィールドがシームレスになって復活している事だ。言われなければ…というか言われても気が付かないくらいにディティールが良くなっているため、かなり新鮮な気持ちで探索できるだろう。

モンハンワールドでは通行の可否が視認して区別しにくくなっていた部分も改善されている。
モンハンワールド時代には土地勘がない時に「あれ?ここ通れるのかな?」と思って通行しようとすると、実際には見えない壁があり通れない道だったりする事が多い印象だったのだ。つまり、ディティールがかなり良くなった事が災いして、通行可否の区別がフィールドを視認するだけでは判別がつきにくくなっていたのだ。
しかし今作では「システム」の項でも書いた通り、壁を登ったりと言った立体的な動きが行えるため見えない壁のようなものがフィールドから限りなく排除されている。
つまり、見える場所の大半は実際に行く事ができる場所になっているのだ。
視認した通りに移動できる点も本作のストレスフリーなポイントだと言えるだろう。

フォトモードとは少し違うがカメラモードがある。
こちらも「システム」の項で記載している通りフィールド上のモンスターを撮影して図鑑に載せたりできるほか、撮った写真を自己紹介用の情報欄であるギルドカードに設定したりできる。自室に写真を飾る事も可能だ。
また、かなりマニアックな利用用途かも知れないが疑似的な一人称視点として里やフィールドを歩く事にも使用できる。
なお、カメラで撮影した写真はスクリーンショットとしてもNintendo Switch本体に画像として残るのでありがたい。

様々な装備を組み合わせてオシャレを楽しみたいプレイヤーもいる事だろう。
装備に関しては各部位でそれぞれ表示/非表示を設定できるため、顔が見えるようにしたい時などに活用できる。
また、アップデートにて「重ね着」が追加され、「見た目だけこの装備が好み」といった場合に利用可能だ。
ステータスやスキルを気にせずに任意の装備の見た目にできるため、オシャレ装備にしたい人は利用すると良いだろう。

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生活感のある里や自宅

生活感のある里や自宅はアクセシビリティも良くデザインされている。
ファストトラベル的に各施設に移動できるが、歩いていっても億劫にはならないような施設配置にまとめ上げられている。
その上で、日本的な建築や生活感もしっかりとあり、集落であるという空気感も感じられる高い次元のバランスで構築されている。

 

サウンド

和風テイストのボスモンスター戦BGMは非常にカッコいい。
里のBGMはカムラの里と自宅とでシームレスにボーカルがオン/オフされる。

和風テイストが光る「神が去りし、廃忘の社」

疾走感と緊迫感のある「雪風に浮かぶ、龍の墓標」

本作出典では無いが雰囲気にマッチする「閃烈なる蒼光」や「妖艶なる舞」も素晴らしい。

モンスターの紹介ムービーのようなカットシーンは琵琶演奏によるおどろおどろしい雰囲気で行われ、本作のテーマ性をより強く感じさせてくれるだろう。

 

総評

モンスターハンター ライズはモンスターハンターシリーズの遊びの幅を大きく広げる事に成功したタイトルだ。
翔蟲を用いてスピード感が増した戦闘、探索要素の増えた立体的なフィールド、カメラでのモンスター撮影など遊びの幅が大幅に広がっており、触っているだけでも楽しいモンスターハンターになっている。
その他、グラフィックの品質やロード時間などの面で見てもNintendo Switchサードパーティー製のタイトルとしては最も最適化が丁寧に行われたタイトルの筆頭であるとも言えるだろう。

しかし、「モンスターを狩猟して生活する」と言ったようなシリーズ初期に感じさせた要素は本作では更に減退しているため、シム的な楽しみ方をしたい人にはベストマッチとはいかないだろう。
また、ある程度の経験者は最初から最大限楽しむ事が可能だろうが、初心者への配慮不足が多い点は非常に心配している所であり、ルーキーがついて来れる内容になっているかは不安が残る作りだ。

 

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【レビュー】MAGLAM LOAD

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魔王、コンカツす

MAGLAM LOADはサモンナイトシリーズを手掛けた経験のあるメーカーであるフェリステラが開発した新規タイトルだ。
そのような事情から筆者は応援の意味も込めて本作を購入した形となる。

では、MAGLAM LOADのレビューをしていこう。

 

MAGLAM LORD/マグラムロード – Switch

MAGLAM LORD/マグラムロード – Switch

  • 発売日:2021/03/18
  • メディア:Video Game
 
【PS4】MAGLAM LORD / マグラムロード

【PS4】MAGLAM LORD / マグラムロード

  • 発売日:2021/03/18
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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魔王も勇者も絶滅危惧種

まずはストーリーを大まかに説明しておこう。
神々と魔族との争いがなくなり、故あって封印された「魔剣(マグラム)を生み出す魔王」はかつての魔力を失い、更には人間が築き上げたという「政府」によって絶滅危惧種に指定されてしまう。
全盛期のパワーを取り戻すため様々なキャラクター達と協力関係となるコンカツをする事になるのだが、その魔王こそが主人公となるキルリザークだ。
ストーリーは上図のような一般的なADVの紙芝居形式で展開されていき、魔王や勇者がなぜ人間が治める政府の手によって絶滅危惧種となって存在しているのか、なぜ復活のための魔力が乏しい世界なのかなどのストーリーの謎がメインストーリー(メインクエスト)で明かされていく。
本作のストーリーには大掛かりな伏線や緻密な歴史が用意されている訳では無いのだが、魔王を倒す役目を持っていた勇者など様々なキャラクター達と出会い、各キャラクター達が自身の個性を活かして協力しながら物語が進んでいき、メインストーリーを読み解いていけばキャラクターの関係性は良く考えられている事がわかるだろう。
本作は濃厚なストーリーを楽しめるというよりも、キャラクターの会話を楽しむような側面が強いものになっていると認識しておくのが正しいと思った方が良い。

ストーリーの質は悪いという程のものではないのだが、序盤のペーシングは上手くいっていないように感じられる。
序盤にはストーリーで世界設定を多く説明してしまうため、ゲームプレイ部分が触れない時間が多くなってしまうのだ。
ゲームプレイ部分が用意されている以上、ゲームプレイ部分を触ってみたい気持ちが強い序盤には展開の遅さが噛み合っていない。
ストーリー進行がADV形式であるため、どうしてもテキスト頼りの進行になってしまうのも影響として大きいのかも知れない。
そのような意味で本作はADVを主体としたかったのか、ゲームプレイ部分を主体としたかったのかは曖昧になってしまっている。

本作はボイス付きのセリフが大半であり、そのような構造の場合において筆者としては地味に嬉しいポイントとして会話の自動送りが実装されている点は見逃せない。
ただし、自動送り設定は継続されないため、次の会話のたびに自動送りを再設定をする必要がある点は少々残念だ。

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各キャラクターには好感度が設定されている

ストーリーの会話中にはキャラクターの好感度を上げる選択肢などが用意されている。
キャラクターの好感度は一定のラインに達すると、そのキャラクターとのデートをすることが出来る。
デートはキャラクターにフォーカスを当てたサブストーリーのようなものだと言えば想像しやすいだろう。
その内容はキャラクター性を掘り下げるというような内容ではなく、シチュエーションを楽しむようなものになっており、前述した”キャラクター同士の会話を楽しむ”という路線と同様だ。
なお、キャラクターの好感度に応じてエンディングに変化が発生する形式となっているので、お気に入りのキャラクターがいれば重点的に好感度を上げていくと良いだろう。

 

システム

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チープさはあるが軽快なARPG

本作のゲームプレイは3Dマップのシンボルエンカウント形式で、戦闘ではサイドビュータイプのアクションRPGとなっている。
昔のテイルズオブシリーズに近いものを想像すると理解しやすい人が増えるかも知れない。
操作としてはボタン入力で攻撃していくシンプルなもので、その操作感はかなり軽快だ。駆け引きのバランスなどが奥深いものではないが、1戦闘辺りのテンポが良くサクサクと進められるのは良いポイントと言えるだろう。
敵には剣、槍、斧の3種の魔剣(マグラム)といわれる武器のどれかが弱点として設定されており、戦闘中にシームレスに武器をコロコロと切り替えて戦うのが基本となる。弱点属性の武器でないとダメージがかなりカットされてしまうため、相手の弱点に合わせて切り替えるのがセオリーだ。
武器に関しては倒した敵の素材を使って生成していく事が出来る。
生成に必要な素材のドロップ自体はそこまで厳しいものでは無いため、ある程度の敵を倒していれば生成可能になっている事だろう。

詳細なゲーム中のストーリー的設定は省略するが戦闘中は仲間キャラクターを操作するのが基本形となり、戦闘中にダメージを与えるなどする事で「GD」というゲージを溜めると魔王自身を操作して戦う強化モードのような状態となる。
基本的にはボス戦で使う事でスムーズに攻略できるが、この強化モードは少々強すぎる所があり、ただでさえ駆け引きのデザインが甘い本作の戦闘を更に大味にしてしまっているため好みがわかれる事は予想される。

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昇華しきれていないポイントの数々

ゲームプレイ部分に関してもストーリーと同様に悪いという程のものではないのだが、プレイしていて気になるポイントは多々あると感じてしまうだろう。
そのポイントについて以下に列挙していく。

まず、本作には複雑なシステムはないのだが、チュートリアルがテキストで済まされてしまうのは少々不親切だ。
その上、チュートリアル一覧からはまだ行う事ができないような行動も閲覧できてしまい困惑してしまう可能性がある。
もう少し丁寧な対応になっていると好感が持てたハズだ。

プレイアブルとなる仲間キャラクターは何名か存在するのだが、得意な武器や属性が異なるだけでモーションなどは共通であるのは残念だ。
使用感はほとんど…というか全くと言っても良い程には同じであるため、使い分けるような事はなく、個性を感じにくいのは寂しい仕様と感じざるを得ない。
プレイアブルなキャラクターを登場させているからには、それに相応しいプレイ体験が伴っていないと逆にチープな印象を与えてしまう。

ヒットストップが意図とは逆のプレイフィールになっている点も勿体ないポイントだ。
本作の敵は自分が攻撃する場面、敵が攻撃する場面と疑似的なターン制となるようにしっかりとデザインされているようには見受けられる。
しかし、怯まない敵の場合にはヒットストップ中に敵が行動し始めてしまい、疑似的なターン制のようにデザインされたゲームテンポが崩れてしまっているのだ。
せっかくヒットストップで攻撃の手応えや爽快感を与えようとしているにも関わらず、そのヒットストップのせいでダメージを受けてしまい、結果としてネガティブな印象の方が強くなってしまうという本末転倒になっているのだ。
本作はプレイヤーの攻撃時の後隙が小さく連続で攻撃しやすく作られている。その連続攻撃を中断させ、簡単には倒されないようにするためにこのような構造にした可能性はあるのだが、対処療法的でありポジティブな影響を与えられているとは言い難い。
プレイヤーの攻撃の後隙もしっかりと作り、その上で疑似的なターン制が成立するようなヒットストップ時間を設ける事で爽快感とゲームとしての駆け引きが両立できたのではないかと思える。

サブクエストも問題がある。
大半のサブクエストにはストーリーが付随していないうえに、特定の敵を倒したりアイテムを入手するだけという同じ事の繰り返しであるためどうしても飽きが来てしまうのだ。
その上、サブクエストをクリアしていく事でメインクエストの推奨レベル相当の水準になるため、「サブクエストはあくまでもやり込み要素としてデザインされている」とは少し考え難い。
メインクエストに関してもストーリーがあるだけでゲームプレイ部分はサブクエストと同様の構造であるため、メインクエストのモチベーションにも水を差してしまう。
水増しのようなサブクエストのプレイを推奨してしまっては、自らゲーム体験の寿命を早めてしまうような選択になっている。

ラスボスのデザインにもフラストレーションは溜まるかも知れない。
本作のラスボスは無駄に多い体力設定、攻撃を当てにくい、同じことの繰り返しという三重苦で、中々のストレスがある事を覚悟する必要がある。
また、それまでに登場したボスとはシーケンスが全く異なり、ギミック的な要素がいきなり登場する事もストレスに拍車をかける。
段階的にラスボスの攻略デザインに近いボスが登場していればまた異なった印象だったかも知れないのだが、本作ではラスボスになって突如として面倒な仕様の戦闘が登場するため困惑してしまう事だろう。
最後は手強いボスを用意したかったのかも知れないが完全にやり方を誤っている印象だ。
なお、ラスボスの体力設定に関してはアップデートにて下方修正されている。

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少しだけだが探索要素もあるフィールド

3Dマップでは前述の通り敵シンボルが徘徊しているほか、素材などが落ちていたりと少しだけ探索要素がある。
セーフエリアと言う休息ポイントも用意されており、そこで回復なども行えるため、レベリングをしたい時などには重宝する事だろう。

ただし、本作の3Dマップは固定の俯瞰視点であるため、画面手前の索敵がしにくいのが少しストレスに感じるかも知れない。

 

グラフィック

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ADVらしい要素

ADVパートでは立ち絵やイラストがメインとなっている。
ゲームパートでは3Dモデルになるが、かなり簡素であり高品質なものだとは言えないが、そもそも本作をAAAタイトルなどと比較するのもお門違いだろう。

少ないがスチルもあり、ギャラリーでは見返す事が出来るほか、キャラクターのイラストも確認できる。
ただし、スチルは本当に少ないためADV要素をメインに考えている場合には肩透かしを喰らってしまう可能性は頭に残しておこう。

 

サウンド

楽曲はそこまで多い訳では無いのだが、ギャラリーで作中の楽曲をいつでも聴けるのはありがたい仕様だ。
特に筆者が気に入った楽曲は「狂奔ノ宴」で、思わず"進撃の巨人"が始まったかと思ってしまった。

 

総評

MAGLAM LOADはADVとARPGの両方を楽しめる一作だが、裏を返せば二兎を追ってしまった感は否めない。
全体的な駆け引きの調整不足や設計、ペーシングのミスマッチが見受けられ勿体ないポイントが多いのだ。
もちろん、二兎を追わずして二兎を得る事は出来ない訳なのだが、それが可能なだけの開発リソースがあったようには感じられない。

決して悪くはない作品ではあるがADV面でもARPG面でも物足りなさを感じてしまう。
本作のフィードバックによって次に繋がる事に期待したい。

 

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【レビュー】三國志14

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中華全土を染め上げろ

三國志14は歴史シミュレーションタイトルで君主プレイ型の国盗り合戦を主体とした作品だ。
本作は今までのような作風とは異なる「色を塗ること」で領土拡大をするようなものとなると発表され、より戦略的な国盗り合戦が行えるように感じて興味を持っていた。
そしてその後、パワーアップキット版が発売されると聞いてとうとう我慢が出来なくなってしまい購入したのだ。

なお、今回は三國志14 with パワーアップキット(以下、PK)版をベースにレビューを行っていく。

 

三國志14 with パワーアップキット

三國志14 with パワーアップキット

  • 発売日:2020/12/10
  • メディア:Video Game
 
三國志14 with パワーアップキット

三國志14 with パワーアップキット

  • 発売日:2020/12/10
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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史実と演義の二兎を追った三國志

三國志14では中国の三国時代の要所を演義ベースで体験できる内容となっている。
ストーリーはシリーズ恒例だが、三國志における特定のタイミングのシナリオに準拠した勢力配置で開始される形となっており、三国時代の契機となる「黄巾の乱」や様々な英雄が乱立した「群雄割拠」などの時代を選択してゲームがスタートする。

あくまでも三国志演義ベースのシナリオではあるが、登場する人物などは史実にしか登場しない人物もおり、史実ファンも演義ファンも嬉しい良いとこ取りをしている印象だ。
特に近年の三國志シリーズは徐々にその傾向が強くなっている。

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各種イベントは任意に発生させられる

特定の条件で三國志および三國志演義で有名なイベントが発生する。
イベントは自動で発生するものも存在するが、条件を満たした状態であれば手動でプレイヤーが任意に発生させる事ができるものが大半だ。
そのため、「○○が死亡する」「△△の勢力が強くなる」といったようなイベントをあえて発生させないようなプレイも可能になっている。
エンディングも任意のものが用意されており、大半の都市を支配する事でエンディングになる事も可能で、全ての敵勢力を潰し切る必要は無い。
ただし、全土統一した場合をグッドエンディングとした場合には、それよりは良くないエンディングになってしまうのは注意が必要だ。

 

システム

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面を塗る事が大切な国盗り合戦

三國志14はシリーズ初となるヘックス形式の戦争シミュレーションで、勢力の君主として古代中国全土を統一する事が目的となる。
本作のシステムの大きな特徴として「面を自軍の色で塗る」ことを重視したシステムになっている点が挙げられる。
大雑把に説明すると塗りは各拠点の周囲が拠点を確保している勢力の色に塗られていくほか、部隊が通った道のりもその部隊の勢力の色で塗られる。
この面に塗られている色が意味するのは単純な”勢力圏”というものに留まらず、補給線(兵站)をも意味しており、例えば部隊が自身の色から孤立した領域にいると行動不能に陥ったり、士気がどんどん下降したりしてしまう。
そのため、強力な武将に大量の軍勢を率いさせても、補給線を断たれてしまえば赤子も同然の戦力となってしまうリスクが付きまとうのだ。
どうやって敵の補給線を断ち、自分の補給線を途切れさせないかを意識するのが根幹のゲームプレイとなっている。

筆者のプレイフィールとしては防衛が非常に有利な印象で、なぜなら敵が自領内に入った際に搦手を利用して補給線を断つように動く事で多くの敵を無力化して一方的に叩くことがしやすいためだ。
当然ながら逆に攻めに行くハードルは高めで、敵の色で塗られた領内に入り込む必要があるため、どのように補給線を維持しながら安全に攻めるかを考える必要がある。
また、本作の攻城戦は専用の攻城戦に有利な部隊を用意しなくてはまず落とす事は不可能になっており、その点も注意が必要だ。
迎撃に来た敵部隊に対しての露払いを行う部隊と、敵の城に取り付いて攻め落とす部隊をそれぞれ用意するのが定石となるだろう。
このように戦闘と言う局所的な部分だけのフィーチャーではなく、「どのようなルートを通って拠点に攻め込むか」「どこに待機して敵の補給線を断つか」といった戦闘における過程すらも大切になっている構造のゲームプレイはプレイヤーの創意工夫が試されるため非常に楽しいものとなっている。
また、本作はRTSのような形式ではなく、1ターンが一ヶ月を上旬/中旬/下旬で分割して時間が流れるようなものとなっており、簡潔に書くと1ターン辺りに10日分の指示を事前にまとめて出すようなイメージだ。
そのため、敵の行動や進行ルートに関しても「相手はここを通るだろう」といったような予測を立てて相手の先を読むように指示を出す必要があるため、単純な数字の暴力だけではない戦闘になる点も面白い。

前述の通りだが、本作では一ヶ月を上旬、中旬、下旬の10日単位で時間が流れるため、ゲームのペーシングは歴代でも比較的遅めの印象だ。
しかし、1つ1つの作業がサクサクと進められるため、ついつい次の作業に手が伸びてしまいプレイをやめるタイミングを失ってしまう中毒性がある。
かくいう筆者も「もう少しだけ…」と思いながら、ついつい10時間以上もプレイしてしまっていた。
その中毒性が生み出される要因の1つとして考えられるのは、領土拡大の”戦闘”と自領の拡充を行う”内政”を全て古代中国を表現した1枚マップ上でシームレスに行っている事が挙げられる。
本作のような国盗り主体の君主プレイの場合には「天下統一」というのが最終目標であり、戦闘も内政もその手段でしかない。
つまり、方法が異なるだけで目的が同じ作業を行っているのだ。
もしもそこに「戦闘は専用の別マップで行われる」などのシーンの切れ目を作ってしまったとしたらどうだろうか。
こうなってしまうと戦闘用マップに切り替わったとたんに内政に関する作業をいったん頭の中から忘れなくてはならなくなる。
つまり、「戦闘」と「内政」が隔絶されたものとなってしまい、プレイヤーの熱中度にどこか水を差してしまう。シーンの切れ目が熱中の切れ目にも繋がってしまうのだ。
もちろん、前作のような全武将プレイであれば目標は様々であるためシーンの切れ目があっても良いとは思うのだが、本作のような天下統一という単一の目標の君主プレイのみの体験の場合には1枚マップによるシームレスな体験は非常に相性が良いもののように感じられる。

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シリーズ恒例の問題点は問題点のままだ

時間を忘れて熱中してしまう楽しさがある本作だが、改善して欲しいと思ってしまう点もいくつかある。
しかも、その問題点の多くはシリーズお馴染みのものである点は勿体ない。

まずシリーズお馴染みだが、GUIのわかりにくさは相変わらずで初見ユーザーは困惑する事だろう。
本作に関してはGUIの主張を低くして画面の邪魔にならないような配慮をしているように見受けられるのだが、その方針の影響により各種GUIのアイコンの主張が薄く、最初に何をすれば良いのか、現在どうなっているのかがわかりにくくなっている。
また、全体的にPC版ベースのGUI構成になっているためにコンソール版ではスキルの任意発動などに煩雑な手順が必要で非常に面倒になってしまっており最適化不足感は否めない。
そのためプレイヤーは「習うより慣れろ」の精神でプレイする必要がある。

次もシリーズ恒例の問題点だ。
国盗りゲームとしては十分過ぎるほどの面白さを有した本作であるが、大勢が決まってしまうとやりがいのあることが極端に減ってしまうという従来の問題を引きずったままになっているのは勿体ない。
大きな勢力になった時には「降伏勧告」という要素が選択できるようになったりと無駄な労力を使わずにペーシングを簡略化させるようなものも用意はされているのだが、ハッキリ言って本質的な解決になっていない。
つまり筆者が言いたいのは「大勢が決まった段階で着手できる楽しみ」を用意しておくべきだという事なのだ。
大勢が決まったときに小勢力が逆転できるようにする要素は違うと思うので、そうではなくエンディングをより素晴らしいものにできるやり込みをいれてみて欲しい。
例えば、勢力の総人口や総資産、総兵力などの国力の総合指標が◯◯以上だとAエンド、◯◯ならBエンド、それ以下ならCエンドなどに分岐するイメージで良いだろう。
エンディングに関連した要素や条件を増やすことで大勢が決まったときにこそできる遊びを是非とも入れて欲しいというのはあくまでも一例で、筆者が言いたいのは(繰り返しではあるが)後半になってからこそ楽しめる要素を用意しておくべきだろうという事だ。
 

パワーアップキット

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パワーアップキット

本項ではパワーアップキットにて追加された要素について紹介したい。

「交易」というシステムが追加されている。
ローマやパルティアといった外国と親交を結び、自軍にとっての恩恵を受けるような要素となっている。
交易を実行する際には外国を訪問する武将を選択したり、手土産となる資金や兵糧といったリソースが必要となったりするため、交易が可能であったとしても序盤ではなかなか利用しにくい。
他勢力と差別化を図りたい中盤頃にはコツコツと手を出しても良いかも知れない。

地域に「地の利」という要素が加わり、特定の地域を一定数確保すると自軍に有利な様々な種類のバフが発生するようになる。
前述した交易に関しても地の利の1つだ。
バフの内容は地域によって異なり、それぞれのバフ効果はどれも優秀であるため積極的に領土を確保したいと思わせるようになっている。

烏桓や山越などの「異民族」の勢力が新たに登場している。
しかし、彼らは正直言って影が薄い。
異民族が積極的に出張ってくることが少ないため、意図的に争おうと思わなければ出会う事が少ない。
また、中華統一にあたって異民族を制圧する必要はなく、異民族が保有する兵力も異様に多いため、そもそも制圧する意味も薄い。
それらの影響により、ただ存在しているだけで影が薄い勢力になってしまっているのだ。
やり過ぎれば理不尽過ぎるものになってしまうものではあるが、「高い友好度がないと該当地域で大規模に暴れまわってくる」「友好度が高いと該当地域で積極的に友軍として参戦してくれる」くらいのもう少しインパクトのある存在になっていても良かったのではないだろうか。

各勢力の初期位置をランダムに変更できる「国替」が登場したのは地味に嬉しいポイントだ。
筆者は自分好みな勢力図でプレイしたいと思うことが多かったため、ベストな方法ではないが嬉しい機能だ。
ただし、できれば所属武将など含めて全ての要素を任意に設定できるものが欲しい所だ。

PK版を購入するべきか悩んでいる方もおられるかと思うが、本作のPK版に関しては「追加要素」程度であり、ゲームプレイの拡張や体験の変化がある訳では無いため無理にPK版を選択する必要は無いだろう。
また、後述する編集機能に関しては一部を除いて高額なPK版であってもDLCの購入が必要となってしまう点も注意が必要だ。

 

編集機能

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各種編集機能

本作では歴代のシリーズとは異なりDLC形式で各種編集機能にアクセスする事が出来る。
武将の能力値やスキルを編集できる「武将編集」やイベントを新たに作れる「イベント編集」といった機能がある。
ただし、前述の通り高額なPK版であっても武将編集機能など一部の編集機能を使用する場合にはDLCの購入が必要となるため注意が必要で、この仕様にはガッカリするかも知れない。

なお、イベント編集機能はPK版固有のものとなっており、PK版を購入していればアクセスが可能になっている。

 

グラフィック

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ディティールは粗いが、プレイには問題ない

3Dモデルなどのクオリティはお世辞にも高くはないがプレイには支障はなく、高品質な3Dモデルを期待されているタイトルと言う訳でも無いため大きなマイナスポイントにはならないだろう。

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動きを付けたイラスト

武将のイラストに関してはシリーズ同様に美麗で素晴らしく、今作に関してはイラストに動きを付けるという試みが成されている。
過去作から使いまわされているイラストに関しては動きがややぎこちないものの、本作で新たに書き起こされたイラストに関しては動きも滑らかで雰囲気を醸し出している。

 

サウンド

本作のBGMは一聴惚れするような楽曲がある訳では無いが、内政などの作業中に延々と聴く事になるため耳には残りやすい。
BGMはどこか陽気な雰囲気があり、今までとは趣が異なる印象を受けた。

 

総評

三國志14の高い中毒性のあるゲームプレイは非常に魅力的だ。

戦闘と内政がシームレスな古代中国は君主プレイとの相性が抜群で止め時を失う体験になっている。
ヘックス形式で表現された戦闘に関しても補給線を意識しつつ侵攻/防衛をする必要がありジャイアントキリングも可能な作りになっているため抜群のやりがいだ。

後発の高額なPK版であっても通常版で配信されたDLCは購入が必要となっている点はガッカリしてしまうかも知れない点は今から購入しようという方は注意が必要だ。
また、PK版独自の要素にしても既存機能に追加されている程度であり、体験が大幅に変化/拡張される事は無いため無理に手を出す必要性も薄い。
プレイしたいという場合には自身のニーズと相談してどれを購入するか検討すると良いだろう。

 

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【レビュー】ウマ娘 プリティーダービー

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私の夢は

ウマ娘 プリティーダービーを制作するのは2010年代に群雄割拠したスマートフォンゲーム界で一大勢力へと台頭したCygames、そしてプロデューサーにはアイドルマスターシリーズを手掛けた石原章弘氏という大きな期待を背負う布陣だった(※石原氏は2019年に退任および退職)。
筆者としても石原氏がプロデュースするという事でかなりを期待を持っていたが、競馬関連の知識はと言うと有名な競走馬の名前を知っている程度で完全なニワカだ。

本作はかなり長期間の延期をしたタイトルとしても知られており、かくいう筆者もかなり待たされた。
2018年放送のアニメの放送した年にリリース予定であったと記憶しているので、2021年放送のアニメ第2シーズンに併せる形で配信されたという事はおよそ3年の延期である。
2021年の配信予告の際にはまた延期するのではないかとの不安もあったが、当初からは格段のグレードアップをした姿でリリースされた。

今回はウマ娘 プリティーダービーのレビューをしてみたい。
なお、本レビューはスマートフォン向けアプリとしてレビューを行う。
また、本記事はアップデートに並行して可能な限り加筆・修正を行っていきたいと考えているが、内容に齟齬が発生する可能性がある点はご了承いただきたい。

 

umamusume.jp

 

ストーリー

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歴史上で活躍した競走馬にフォーカスした物語

競馬にて起きた史実をベースとしたストーリーで、競走馬の経歴およびその競走馬に関わった人達の足跡を基に緻密な擬人化を行っており、そして物語として落とし込まれているのが本作の特徴だ。
落とし込み方をかなり大雑把にカテゴライズしようとすれば学園スポーツもの兼アイドルものだと言えるだろう。
参照できるストーリーは大まかに「メインストーリー」、キャラクター毎に用意された「ウマ娘ストーリー」、ゲームプレイパートで展開される「育成シナリオ」が存在する。
「メインストーリー」はゲームのアップデートと共に増えていくストーリーとなっており、各章でフィーチャーされるウマ娘が存在している。そしてフィーチャーされたウマ娘の基となった史実の競走馬や関係者の出来事を巧みに組み込んだ物語となっているのが特徴的だ。
ウマ娘ストーリー」は基本的には既に獲得済みのウマ娘のみが閲覧可能であるが、後述する「ガチャ」でピックアップされているウマ娘に関しては4話まで誰でも参照する事が可能となっている。各ウマ娘は4話分だけでも非常に魅力的に描かれており、観終えた頃にはそのウマ娘を育成したい気持ちにさせるような導線としても見事に成立している。
ゲームプレイパートで展開される「育成シナリオ」はベースラインには共通したシナリオがあるものの、各種テキストは育成するウマ娘専用のものとなっている。
また、史実をベースとしたシチュエーションのシナリオも用意されていたり、レースの勝敗によってテキスト差分があるなど細かい部分も作り込まれている。
その他にも、不定期に開催されるイベント専用のストーリーなどもあり、そちらも品質が非常に高い仕上がりだ。

「メインストーリー」や「ウマ娘ストーリー」では3Dアニメのようなカットシーンもあったり、1枚絵のイラストで魅せるなど演出面がリッチなシーンも多いが、基本的には3Dモデルを使用した紙芝居形式で展開される。
しかしながら、3Dモデルは非常に良く動き、会話していないウマ娘もしっかりとリアクションするため、紙芝居形式ながらも高品質な印象を受けるだろう。
ストーリーを追う上でもありがたいのは「メインストーリー」や「ウマ娘ストーリー」など、1話の次に2話といった形で立て続けにそのまま簡単に観れるようにデザインされておりストーリーを追いやすい作りにもなっている。
また時代も様々な競走馬をモチーフにしたウマ娘達は性格も様々であるため、シナリオの展開もバラエティーに富んでいる。
本作をプレイすれば、最初こそ競馬や競走馬に興味がなかったとしても「実際にはどういう馬だったのだろう」と知りたくなることは間違いない。

ゲームプレイ部分である育成シナリオには上述した通り全てのウマ娘で共通の汎用イベントも存在するのだが、そのテキストや選択肢のテキストはしっかりとキャラクター性にマッチするように書き分けられている見事な仕事だ。
また少し脱線した話題にはなるが、文脈に関係なく乱用される「その時、ふと閃いた」という魔法の言葉は一周回って愛着すら湧くだろう。

この育成シナリオはウマ娘毎に異なるマイルストーンが設定されており、それを達成する事で次に進めるような形式となっている。そして、達成が出来なかった場合には残念ながらそこで育成はそこで終了となってしまう。
この育成部分のストーリーも全体的にはリッチに出来ているのだが、目標が達成できず育成が途中で終了する事になってしまった場合にはそれ専用のテキストが用意されておらずストーリーがブツ切りのようになってしまっているのは勿体ないポイントだ。途中で育成を終える結果となったしても、もう少しソフトランディングになっていれば更にリッチになっていた事だろう。

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細かい部分でも世界観を表現している

細かい部分ではゲーム中には「馬」という文字が少し変更されて使用されている。
これは本作の世界に馬という生き物がおらず、その代わりにウマ娘がいるためだという。
そのため、馬という字も本作のフォントでは下部の点が2つだけで表現されており、ウマは二足歩行であるという事を示している。
世界観をしっかりと持たせる良い演出だ。

スマートフォンに表示される通知に関してもシステム的なメッセージではなく、しっかりとキャラクターのセリフとなって表現されている。
こちらもプレイヤーを興醒めさせないとても良い配慮だ。

また、細かい設定があえて曖昧なままにデザインされている点も世界設定の懐の深さに寄与しているように見受けられる。
ウマ娘達が通う中等部や高等部のある学園はあるがウマ娘が卒業したらどうなるのか、学園に通わないウマ娘達と普通の人間との関係性はどうなっているのか、中等部や高等部で分かれているが何年制なのかも不明で、先輩後輩の関係性が全体で成立するように考えると時空が歪んでいるようにすら感じられる。
また、そもそも本作の世界における歴史はどうなっているのかなどなど冷静に考えてみれば不明な事は多い。
このように曖昧な部分を残す事によって、世代が違ったり、血縁関係だったりと史実と本作とでは設定が異なるが故に発生しかねない違和感を見事にクッションできているように感じる。
そして何より現実では成しえなかった夢の共演を果たせているのはロマンと感慨深さを感じずにはいられないだろう。

 

システム

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どこかで見覚えのあるシステムを見事に落とし込んでいる

本作は実況パワフルプロ野球(以下、パワプロ)のサクセスライクな育成をする事でウマ娘を育てるナラティブ性のあるゲームプレイがメインコンテンツだ。
ウマ娘にはそれぞれ基本となる適性が設定されており、それをベースに後述するスキルや継承、サポートカードを駆使して短所を補ったり、長所を伸ばしたりする事になる。育成はウマ娘の個性に応じて行うのがキーポイントと言って良いだろう。
「ストーリー」の項でも少しだけ触れているが、育成のシナリオではウマ娘毎に異なる目標がマイルストーンとして設定されており、最大でゲーム内時間で3年間、ターン数にして約72ターンの期間で育成を行えるのだが、設定された目標を達成できなければそこで育成が終了してしまう。
特に戦力の整っていない始めたてのタイミングではウマ娘によっては育成を最後までやり遂げるだけでも1つの高いハードルがあるケースも多い。
初心者プレイヤーはまずは育成を最後まで出来るように戦力を整える事を目標にすると良いかも知れない。特にチュートリアルで来てくれるウマ娘達の中には育成しやすいウマ娘が含まれるようにデザインされているため、育成しやすいウマ娘で育成のノウハウを溜めていくと良いだろう。
逆に言えば始めたての初心者プレイヤーでもすぐに達成感や成果を得やすいようなコンテンツは不足しているため、そのつもりである程度は長い目でみてプレイする必要はあるだろう。

ウマ娘を育成する事で伸ばしていく基礎能力はスピード、スタミナ、パワー、根性、賢さの5つだ。
基本的にはスピードとスタミナが重要なのだが、その他のパラメーターが低いとレースでの勝利が安定しなかったりする。平たく言えば全てのパラメーターが重要と言っても差し支えない。
また、レース中に勝てなかった場合にスピード不足なのか、スタミナ不足なのか、それともその他のパラメーターの影響で本領を発揮できなかったのか。
その辺りの詳しい情報が明確な数値ではわからないため、ウマ娘のレース時の挙動をしっかりと把握する事も重要だ。
この辺りは「あえて」数値を表示しない事で曖昧にしてウマ娘である彼女達がシステム的な存在ではない事を、そして二人三脚で歩んでいる事を表現したいのかも知れない。
なお、一応はレースで勝てない時にアドバイスは貰えるのだが、それが適切なアドバイスなのかは疑問が残る所だ。

これらの基礎能力を育成で重視する度合いはウマ娘の適正によっても変化してくる。
先行逃げ切りタイプや最後にごぼう抜きするタイプ、短距離向きのウマ娘もいれば長距離向きのウマ娘もいる。
それらによってもどのステータスをどれくらい伸ばすべきかは変化するので、育成の参考にすると良いだろう。

「スキル」はパワプロで例えてしまうと「特殊能力」に相当するようなもので、特定の条件の場合に発動する。
スキルの発動は条件が整っていれば必ず発動するようなものではなく、基礎能力である賢さが影響しており、この能力値が低いとせっかく覚えたスキルも実戦でなかなか発動しないため注意が必要だ。
習得するスキルに関しても育成しているウマ娘の特徴を捉えて上手く合致するスキルを優先的に取得するのが好ましい。

「サポートカード」は育成開始時に決める事になる育成中のイベントに関連したりするなど育成を強力に補助してくる要素だ。サポートカードは後述する「ガチャ」で主に入手できる。
育成開始時には6枚のサポートカードを選択する事になり、選択したカードのキャラクターが育成を補助してくれるような形となる。
育成中にサポートカードとして設定したキャラクターと絆を深めると「友情トレーニング」が発生して育成効率が更に上昇する仕組みなのだが、これもパワプロのサクセスに類似のシステムがあるため、そちらを想像するとわかりやすい方もいるかも知れない。
サポートカードには基本的には得意なトレーニングが設定されており、育成したいウマ娘との相性を考えて、どのサポートカードを選出するのかを決める必要がある。

実際に育成が始まると上図の真ん中のような形でどの能力を鍛えるのかを選択しながら進行していく事になる。
育成では1ターンを消費して、トレーニングなど何か1つの行動を選択するような形で進行する。
ウマ娘には体力が設定されており、体力が低い状態でトレーニングを行うと失敗してしまう可能性が高まる。そんな時には休養で1ターン消費して体力を回復するのが好ましい。
この辺りの駆け引きもパワプロのサクセスと同様の構造だが、例え失敗してしまったとしてもパワプロのように致命的な結果になる事はないため、その点は安心して良いだろう。
と言っても、トレーニングの失敗は貴重な1ターン無駄にしてしまっている事には変わりないため、トレーニングの成功率を確認しつつ、無理をせずに育成するように心掛けよう。

ウマ娘達の育成の成果が発揮されるのは「レース」だ。
このレースはゲームプレイとして何かを要求される事は全くないのが特徴だ。
スマホゲームが飽和した2020年前後には既に「自動周回」や「放置ゲー」と言われるようなゲームプレイを伴わないスタイルがフィーチャーされる事も多かったが、本作は「放置する事をゲーム体験として落とし込んでいる」のは素晴らしい。
レースが始まるとプレイヤーは応援するしかない。
つまり、自分とウマ娘が共に行ってきた育成の成果を見守るという体験をプレイヤーに与えているのだ。ウマ娘に対して親心を芽生えさせてくれるような体験だと言えるだろう。
これは操作するだけがゲームプレイや体験では無い事を教えてくれる好例だ。

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育成とレースの短いサイクル、継承による長いサイクル

この「育成とレース(成果)」のサイクルは非常にテンポ良く進める事ができる。
育成してウマ娘の能力を高くし、レースで走らせると、「もっと上を目指すぞ」「この能力値が課題だな…」などと思ってしまい、ついつい時間を忘れて次の育成へと手が伸びてしまう中毒性がある。
育成とその成果を確認するレースの一連のサイクルこそ本作において比較的短いスパンで回転する醍醐味の1つだ。

そして「継承」という要素が更に1つ外側のサイクルを生み出している。
このシステムもパワプロのサクセスにも近い概念があったものだが、ウマ娘の育成を開始するタイミングで育成完了済みのウマ娘を選択し、その力を借りて能力や適性などに好影響を発揮する要素となっている。
この手の競走馬には血統が重視される側面もあるため、それを踏襲した要素としても観る事ができる非常に腑に落ちるシステムでもある。
この継承というシステムはウマ娘の育成完了までを1タスクとしているため「育成とレース(成果)」と比較すると比較的長いスパンで回転するサイクルとなっている。
育成完了済みのウマ娘によって別の新しいウマ娘を育成しやすくして、そのウマ娘が更に別のウマ娘を強くしていく…といったような、徐々に強いウマ娘が育成できるようになっていく本作のもう1つのキモとも言えるサイクルとなっている。

これらの構造をまとめたのが上図だ。
育成とレースという短いスパンを積み重ねて育成を完了させ、継承によって別のウマ娘をより強く育てる。
そのウマ娘を再び育成していき、完了すればまた継承によって更に別のウマ娘をより強く育て…と言った相乗効果のあるスパイラルが形成され、より持続性のあるゲーム体験へと繋がっているのだ。

多くの点でパワプロのサクセスと類似した要素やイベントがあるのだが、パワプロほど極端な成果が出るランダムイベントは余り多くない。
特にスキルに関しては”スキルを獲得できる権利”は得られるが、いきなりスキルを獲得できるようなイベントはない。
そのため、継承やサポートカードなど育成開始時に行った選択の時点で、どこまで育成できるかが大まかには決まってしまうと言っても良いだろう。
開始時点でどのような方針で育成するかを決めておくのが非常に大切だ。

なお、育成がメインであるため関連する要素が色々とあり、ちゃんとプレイできるのか不安に思う方もいるかも知れない。
しかし、全体的なチュートリアルもしっかりしているため、ある程度のゲームプレイシーケンスを捉える事は出来るため問題ないだろう。
継承やサポートカードなど、自分で工夫する必要がある場面もあるが、その辺りは最悪でも「おまかせ」で自動設定する事も可能だ。

本作のシステム面で改善して欲しい部分があるとすれば「継承因子の仕様」だろう。
継承は上述した通り、育成が完了したウマ娘の能力を引き継ぐようなシステムになっているのだが、どのような能力を引き継がせる事ができるかは育成完了時にランダムで決定される「因子」による所が大きい。
このランダム性がかなり厳しいものがあるのだ。
簡潔に書くと因子は育成完了時のウマ娘の能力が高ければ良い因子になる”可能性”が生まれる。そう。可能性が生まれるだけなのだ。
その上、因子としては良いものだったとしても、それが欲しかった因子であるかはまた別問題である。
そのため、何回プレイしても一向に因子に恵まれない、欲しい因子が来ないという事は非常に多い。
と言うよりも、理想の因子が来るまでの道のりは果てしなく長いものを覚悟した方が良いだろう。
良い因子を引き当てられないと育成もある程度の水準で頭打ちとなってしまい、プレイヤーとしても同じような育成が続いてしまう事によってより良い育成が出来ているという実感が得られにくくなる。
もちろん、ランダム性を完全に排除してしまうとエンドコンテンツとして問題が生じてくるが、継承する因子の方向性なりをある程度だけ絞り込めるなどしても良かったように思えるのだ。
この辺りの仕組みはもう少しだけ検討して欲しい所だ。

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育成中に発生するミニゲーム

少々細かい部分だが育成中には上図のようなクレーンゲームと言うミニゲームが発生する場合もある。
本編部分以外にも本来ならば無くても問題ないハズのこういった部分の作り込みまで行っているのは見事と言う他ない。

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育成以外のエンドコンテンツには課題あり

育成済みのウマ娘は前述した「継承」の他にもチームで走るレースに参加させる事が出来る。
チーム競技のレースは簡単に書けば育成済みのウマ娘達で競うレーティングバトルだ。
他プレイヤーのウマ娘チームとレースを行ってハイスコアを狙うようなものとなっている。

育成済みのウマ娘でレースを行うためエンドコンテンツのように思われるかも知れないが、このコンテンツをエンドコンテンツと考えた場合には物足りない側面が強い。
なぜならプレイヤーがレースに対して介入できる要素がほとんど何も無いためだ。
育成時には育成とその成果を確認するサイクルが成り立ったが、このチームレースでは追加で育成できるような事は無い。
そのため、プレイヤーが出来る事と言えば消費アイテムを使ってウマ娘の調子を上げたり、天候操作をしたりするくらいになってしまう。
チーム競技レースには階級に応じたリワードが用意されているため「育成時にチーム競技レースに強いウマ娘を作る」という動機にはなるかも知れないが、このコンテンツ自体がプレイしていて楽しいものになっている訳ではないのである。
あくまでも育成済みのウマ娘を活躍させられる”オマケ”の場が用意されている、そして育成の目標を提供してくれているのだと認識した方が良いだろう。

将来的にUGC的な要素と組み合わせ、育成したウマ娘達による掛け算の楽しさが生み出されるエンドコンテンツなど、育成済みのウマ娘が真の意味で活躍し、それ自体にやりがいのある楽しいコンテンツが生み出される事に期待したい所だ。

 

ウイニングライブ

高品質な3Dライブ

レースに勝利するとウイニングランならぬ「ウイニングライブ」というものが用意されている。
上位3名がメインで歌って踊り、1位となったウマ娘がセンターの座を勝ち取る事となる。大切に育てたウマ娘がセンターで輝くその姿には感動を覚えるハズだ。
楽曲は基本的には最初から解禁はされておらず、該当するレースで結果を残していく事で解禁されていくものも多い。
解禁された楽曲に関してはホーム画面から好きなタイミングで、好きなウマ娘で観る事が出来るようになる。

 

エキシビジョン

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自由に自チーム、他プレイヤーと練習ができるエキシビジョン

アップデートにてエキシビジョンという機能が追加された。
これは出走レース、出走条件などを決めて自分が育成したウマ娘、あるいは他プレイヤーのウマ娘とレースができる機能だ。 

ウマ娘には確認できないマスクデータも多数存在するようで、どのように育成すればより強いウマ娘になるのかを研究する手段が暗中模索になりがちだ。
それをもう少し研究しやすくする環境として利用できるのがこの「練習」だ。
自分が育て上げたウマ娘達を編成して、好きなレース条件にて出走させる事が出来る。
強いウマ娘を育成するための研究をするために利用する事も可能だろう。

ルームマッチは他プレイヤーが育成したウマ娘達とレースをする事が出来る。
YouTubeなどでのゲームのライブ配信が前提となっている現代では一緒に盛り上がったり、配信者同士の対戦が行えたりと「配信映え」しやすい要素としても活用できるのも時代に即している。

 

ガチャ

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ガチャ課金形式のオーソドックスなマネタイズ

マネタイズ手法はガチャ課金(ルートボックス)形式のオーソドックスなものだ。
ウマ娘を入手できるガチャとサポートカードを入手できるガチャの2種類が存在する。

入手したウマ娘は育成する事ができるようになるため、興味があるウマ娘がピックアップされているならば狙ってみると良いだろう。
同じウマ娘が排出された場合には端的に書くと育成が有利になるアイテムが貰えるが、一度入手したウマ娘は何度も育成を行えるので、とりあえずは1度引ければ御の字だろう。

サポートカードは前述しているが育成する際に非常に重要だ。
こちらは育成を安定させたいならば多く引いておきたい所だろう。
既に獲得済みのカードを入手した場合には重ねる事が可能だ。重ねる事でこちらも育成をより有利にできる。

本作にはいわゆる「天井」も用意されており、その天井は気持ち低めの設定にはなっている。
しかし、ウマ娘ガチャとサポートカードガチャのそれぞれに天井が設定されており、また両方のガチャはどちらもとても重要であるため、天井が比較的低めだから良心的かというとそれはまた別問題だろう。
とはいえ、本作はPay to Winのようなガチャ至上主義の作品ではなく、無課金や微課金のプレイヤーであっても本作の楽しさを十分に体験できるハズだ。

 

グラフィック

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細かな表情の変化まで表現している

本作はスマホゲームにおいてはハイクオリティなキャラクターモデリングが印象的だ。
モーションキャプチャーによって作られた3Dモデルのアニメーションも絵柄と良くマッチした動きになっており、それでいてキャラクターの表情の変化はアニメらしいデフォルメされたものとなっている。
全員が全く異なるという訳では無いが、各キャラクター毎に走るモーションが微妙に異なるなどの個性も感じられる。
これらによって各キャラクターが非常に活き活きとして動き、本質的な品質の高さを感じさせる。
細かい部分では雨の日のレースでは服に濡れたようなテクスチャーになるなどの変化も見られる。

なお、レースで走る事になる競馬場のモデリングは細部に確認するとやや粗い。
しかし、それが目立たないようにカメラワークやブラーエフェクトによってディティールに視線がいかないように工夫がされており、背景の粗さは全く気にならないと言って良いだろう。

レース中のカメラワークも秀逸だ。
カメラはマニュアルで操作するような形ではなく、展開に応じて自動で切り替わるようなものとなっている。正面から捉えたり、表情が見える程度の側面から捉えたり、アオリ気味に映すようなカメラワークの演出など迫力満点だ。
カメラはレース展開を中心に映すカメラと自身のウマ娘を映すカメラの2種類をシームレスに切り替える事が可能となっている。
願わくば実際の競馬の現地観戦と同じ視点での鑑賞が追加されれば嬉しい限りだ。

レースでは縦画面が基本となるが、アップデートにより横画面でのレースにも対応した。
縦画面では迫力のある演出と共に観戦する事が可能で、横画面ではレース全体を見渡す事が出来るようになっておりテレビなどでの競馬中継に近い感覚になっている。
ただしどちらも一長一短で、前者は特定のウマ娘にフィーチャーして観戦するため演出はリッチだがレース展開はややわかりにくい。
後者に関してはレース全体を俯瞰して確認可能であるため試合展開を把握できる反面、演出面が少々弱い。
状況などに応じて使い分けるのが良いだろう。

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美しい3Dライブ

「システム」の「ウイニングライブ」の項でも前述しているが3Dライブパートは高品質で、キャラクターのモデリングが高品質なだけでなく、カメラワークやシーンの切り替え方、ライティング、各キャラクター達がそれぞれのダンスを踊り、同じ振り付けであっても微妙なズレがあるなどの表現もあるなどリッチだ。
更にライブの後半にはウマ娘が汗をかいているなどの細かい表現も見受けられるなど演出も素晴らしい。

 

サウンド

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3Dライブと言うご褒美

「ストーリー」の項で記載している「メインストーリー」および「ウマ娘ストーリー」はフルボイスとなっているほか、3Dライブシーンでは歌も挿入される。
歌に関してはポジションによる歌い分けも最初から実装されているため、推しが見つかったプレイヤーには非常に嬉しい要素だろう。楽曲面も王道アイドルなものやカッコいいロックなものなどなどが実装されている。
筆者の好きな楽曲の一部を紹介させて欲しい。

何度も空気感の変わるゲーム内では1度だけしか観られない「GIRLS' LEGEND U」

元気溢れる王道なアイドルソング「Make debut!」

戦闘ものアニメが始まりそうな熱さのある「NEXT FRONTIER」

キラキラとした中にやすらぎのある「ENDLESS DREAM!!」

電波ソングの皮をかぶった感動曲「うまぴょい伝説」

脳内を強烈に汚染し、キャラクターの個性も強く感じられる「トレセン音頭」

アニメ2期のメイン曲でもある「ユメヲカケル」

口ずさみたくなる「DRAMATIC JOURNEY」

楽曲自体も映像演出も激しさとかっこよさのある「Ms. VICTORIA」

これらの楽曲はアイドルマスターシリーズが好きならば一度は目にした事のある作詞・作曲者が手掛けている点も感慨深い。

作中のBGMに関してはアニメと共通のものも使用されているため、アニメを観ていた人にとっては嬉しいポイントだ。
また、レース中に流れるBGMは、最終直線で変化したり、ゴールのタイミングに合わせてしっかりと終わるように設計されていたりするようで、インタラクティブミュージック的な活用も見受けられる。
筆者がお気に入りのBGMも紹介したい。

煌びやかな雰囲気を持つ「重賞パドック

ストリングスの旋律が大一番の緊迫感を感じさせる「日本ダービー 有馬記念 URA決勝」

 

総評

ウマ娘 プリティーダービーの育成システムや3Dライブなど、どれも本作が確立したものではないのだが、枯れた技術の水平思考的な取捨選択によって磨き上げられ高い品質を獲得した結果、唯一抜きん出て並ぶもののない新たなるスタンダードへと踏み入っている。

その中でも特に巧みに作り上げられたストーリーやリプレイ性の高い育成などは最高だ。
競走馬の史実をベースとしたストーリーやキャラクター設定によって知的好奇心がくすぐられ、その品質の高さも相俟って開発者側の執念や情熱を感じる仕上がりだ。
そして、ゲームプレイヤーと競馬を、そして競馬ファンとゲームを繋ぐ架け橋となっている点も素晴らしい。

 

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【レビュー】アイドルマスター ポップリンクス

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英雄集結

筆者は常々思っていた。
アイドルマスターってシリーズを統合させたコンテンツって出さないのかな」と。
そう。それがとうとう実現したタイトルが現れたのだ。
それこそがアイドルマスター ポップリンクス(以下、ポプマス)である。

今回はポプマスのレビューを行っていこうと思うが、今後のアップデートによって内容との齟齬が生まれる可能性がある点は注意願いたい。
なお、アップデートと並行して可能な限り記事の内容も更新したいと考えている。

 

poplinks.idolmaster-official.jp

 

ストーリー

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ストーリー

ポプマスはアイドルマスターシリーズを統合した作品であるが、それを活かしたようなストーリーは全くと言って良い程に無いのは少々残念だ。
シリーズの垣根を超えた夢の共演のようなストーリーが見たかったユーザーは少し肩透かしの印象を覚えてしまうかも知れない。
また、ストーリーがなく、上図のような簡単なテキスト程度しかアイドルの一面を垣間見る要素が用意されていないため、本作からキャラクターを知ろうとするのはハードルが高い。
アイドルマスターシリーズ初心者はアイドルの見た目の好みで”推し”を見つけ出す必要があるだろう。

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細かい部分まで配慮されたテキスト

しかし、細かな部分の配慮は流石はアイドルマスターだ。
例えば、スマホの他アプリでもよくあるがゲーム内の状態に応じて通知がなされる。
しかし、ここで淡白なシステム的なテキストではなく、しっかりとセリフとしてシステムの状態を知らせるようになっているのだ。
ゲーム内世界のアイドル達がしっかりと存在している事を感じさせてくれる素晴らしい演出だといえるだろう。

 

システム

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ツムツムライクなパズルゲームだ

ポプマスは身も蓋もない表現をしてしまえば「"ツムツム"ライクなパズルゲーム」だ。
画面上には数種類に色分けされた音符マークのオブジェクトが配置されており、同色オブジェクトを指でなぞって消していくシステムとなっている。
制限時間は約1分間となっており、その時間内でのアイドルマスターシリーズの任意の楽曲を聴きながらプレイする事が出来る。

アイドルは3人1組のユニットで活動する事になり、それぞれのアイドルにはスキルを設定する事が可能だ。
アイドルの属性と一致しているスキルであれば着脱可能となっており、アイドル間のスキルのシナジーを考慮してスキル選びをするのが良いだろう。
パズルをプレイ中にはアイドルマスターシリーズの様々な楽曲を聴きながらプレイする事ができるようになっている。好きな曲や知らなかった曲を聴きながらプレイ可能だ。
とは言え、アイドルマスターシリーズの楽曲である事によってゲームプレイで何かシナジーが生まれている訳では無いため革新性が低い点は少々勿体ない。
後発のツムツムライクなパズルゲームであれば、アイドルマスターであるからこそ可能なゲームプレイ体験も提供して欲しかった所だ。

しかし、本作が安定した面白さを提供できている事も事実である。
アイドルマスターシリーズが好きで、ツムツムライクパズルゲームにも興味があるのであればプレイして損する事は決してないだろう。

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訴求力の低さが懸念される

本作で最も懸念されるポイントを上げるとすればエンドコンテンツの弱さだろう。
本作にはツムツムライクパズルゲーム以外に何度もプレイして楽しむ要素はない。
定期的に開催されるイベントにしてもパズルゲームを通常通りプレイするしかないためイベントと言えども特別な体験にはならないのだ。
そのため、継続的にプレイし続ける訴求力が弱いと感じざるを得ない。
つまり、本作は一日に何時間もプレイされる事を想定されておらず、スキマ時間に少しだけプレイする事を前提にデザインされているゲームであるという事は知っておいた方が良いだろう。

 

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スキルが整っていなければクリア困難な課題は考えものだ

本作にはプレイヤーのレベルのような概念として「ランク」が存在する。
パズルをプレイする事によって貰える経験値(ファン数)が一定以上になるとパズルの課題に挑戦する権利を獲得でき、課題をクリアする事でレベルが上がる仕組みだ。
しかし、この課題は余り良いとは言えないのが正直な所だ。
初期の数少ないスキルではプレイヤーの熟練度や工夫だけではどうしようもないようなクリア難易度が高い課題や運任せにせざるを得ない課題が登場する事があるのだ。
アイドルに装備できるスキルはガチャによって引くアイドルと一緒に入手できる形となっているため、後述もするがガシャ課金形式の本作のマネタイズの導線としては正しいのだろうが、プレイヤーとしては良い気分ではない。
パズルをする事で入手できるゲーム内マネーを使用しても専用のガチャを行う事は可能で、そちらでもアイドルおよびスキルを入手可能だが、そちらはそちらで何十回、何百回とパズルをこなしていく必要があり時間がかかる。
結局のところ、「Time to Win(時間をかけてクリアする)」か「Pay to Win(金をかけて時短クリアする)」の二択を迫るクラシックなマネタイズ手法なのだ。

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能力値の上昇やジャケットの作成

アイドルを3人1組に編成したユニットはRPGのようなパーク取得のような形でVocal、Dance、Visualの各種能力値を高めることが出来るコーチングと言うものがある。
ここで強化される能力値はユニット単位で上昇するものであるため、アイドル個人には反映されないものである。
ポイントさえあれば左下の限界値まで取得していく事が可能で、限界値に到達すると割合を削ってポイントを獲得する事になる。
そのため、Vocal、Dance、Visualのポイントが高ければ同色の音符を消した際のスコアが伸びたり、Vocal、Dance、Visualの割合に応じてユニットタイプが切り替わりパズル時のバフが強化されたりする。
リリース当初は強化は1つ1つ選択していく必要があるため面倒だったが、約2ヶ月経過した2021年3月末のアップデートにて一気にババっとパーク取得できるように変更されている。

アイドルにはレベルも設定されている。
ガチャによって同じアイドルを入手した場合にはレベル上限を上げる事が可能な一般的に多い方式を採用している。
レベルが上がる事で上述のVocal、Dance、Visualの各種パラメータが少し上昇するため、こちらもパズルゲームにてハイスコアを狙うのであれば大切だ。
レベルを上げるにはパズルゲームなどプレイする事はもちろんだが、「トレーニング」といういわゆる放置ゲー的な要素によって多めに経験値を獲得できる。
ただし、このトレーニングは一括で実施したり、一括で実施結果を確認したりできないのは不便なところだ。

ジャケットの作成では自分が好きなようにアイドルやステッカーを配置してCDジャケットのようなものを作ることが出来る。
カッコよくするもよし、推しアイドルで固めるもよしだ。

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ホーム画面には少しだけ欠陥がある

細かい部分だが地味にフラストレーションになる部分がある。
それはホーム画面だ。
ホーム画面は上図のようにSD化したアイドルなどが街中を歩いているような画面で、ここからパズルを行ったりするハブとしての機能を果たしている。
また、街中にいるアイドルに触れる事で簡単なセリフを参照する事が出来たりする。
これ自体はホーム画面としての機能を果たしているのだが、問題なのはスライド操作をした際にアイドルなどのキャラクターに触れてしまう事なのだ。
画面を横にスクロールしたくてスライドやフリックしているにも関わらず、画面上にいるSDキャラを誤ってタッチしてしまい、本来したいハズの画面スクロールができなくなってしまうのは機能として少しだけ欠陥のあるデザインだ。
特に画面の指で振れやすい部分にSDキャラなどがひしめいていると誤操作する確率が増えてしまう。
一部の機能は「メニュー」のアイコンをタップする事でアクセスが可能だが全てではない。
やりたい事は伝わるのだが、大きなストレスでは無いとは言え本来の機能を損ねてしまうのは本末転倒だ。

 

ガシャ

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ガシャ課金形式でアイドルをスカウトしていく

本作のマネタイズ手法は一般的に多い「ガシャ課金(ルートボックス)形式」のものとなっている。
ガシャではアイドルをスカウトする事が可能で、アイドルをスカウトできると付随したスキルも一緒に入手できる。
同じキャラを引いた場合にはアイドルのレベル上限を伸ばす事が可能になる。
本作のガシャはいわゆる”天井”がないため、引く際には注意が必要だ。

特徴的なものとしては「オファー」というものがある。
これは共通衣装バージョンのアイドルに限り、任意のアイドルをスカウトできるものとなっている。
「推しが絶対に欲しい!」といったような場合にはありがたい機能だろう。
ただし、専用衣装バージョンのアイドルはガシャでのみ獲得可能であるため、共通衣装で良いから絶対に欲しいという場合に使うと良いだろう。

 

グラフィック

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SDキャラがメインに躍動する

強くデフォルメされたアイドルマスターシリーズのアイドル達が特徴的だ。
グラフィック面は全般にリッチと言う訳では無いが、3Dモデルでは無いため年月を経ても古びにくい特徴を有していると言っても良いだろう。

 

サウンド

アイドルマスターシリーズの様々な楽曲を聴く事が出来るのは本作の魅力だ。
筆者もそうなのだが、シリーズの全ての楽曲を知っている訳では無いユーザーも多いであろうだけに、そのきっかけとなれる可能性を秘めている。
前述しているがパズルゲームは1プレイが約1分ほどである。
そのため、曲のループは短めとなっており、サビ部分をかなりの回数聴く事になる。
その単純接触効果によって耳に残る事は間違いない。

 

総評

アイドルマスター ポップリンクスはアイドルマスターシリーズの全アイドルと全楽曲を内包するツムツムライクなパズルゲームだ。

ストーリー面が薄くアイドルの個性を把握しにくいためアイドルマスター初心者が「推し」を見つけ出すのは少しだけハードルが高い気もするが、シリーズ経験者が横の繋がりを見出すにはピッタリだ。
良くも悪くもではあるが短時間で遊びやすいパズルゲームでもあるため、気軽にプレイしやすいタイトルとなっている。

 

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