【レビュー】ファイアーエムブレム 風花雪月

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フォドラの夜明け

キャラクターベースSRPGの始祖的存在のファイアーエムブレム(以降、FE)シリーズであるファイアーエムブレム風花雪月(以降、FE風花雪月)はWiiの「暁の女神」以来となる実に10年以上ぶりの据え置き向けFEだ。
筆者は「封印の剣」からFEシリーズのファンになったが、このFE風花雪月を見逃すハズもない。

FE風花雪月は2017年1月の「ファイアーエムブレム Direct」にて開発が公表されたが、詳細は2018年のE3まで公開されていなかった。1年以上も新たな情報が無かったためヤキモキした事を覚えている。
そして2019年のNintendo Directで更に詳しい内容や発売日が発表されたが、それでも物語やゲームプレイシーケンスにおいてわからない事も多かった。

今回はFE風花雪月のレビューをしてみたい。
なお、今回のレビューでは画像で若干のネタバレと感じる可能性のある要素が含まれている。ネタバレが気になる場合には注意されたい。

 

ファイアーエムブレム 風花雪月 -Switch

ファイアーエムブレム 風花雪月 -Switch

  • 発売日:2019/07/26
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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興味深い謎多き世界観

FE風花雪月のストーリーの特徴はなんといってもフォドラと言う地域を舞台に「3つ学級が存在する」という事だろう。
フォドラで最も歴史のあるアドラステア帝国出身者の集う「黒鷲の学級(アドラーラッセ)」
アドラステア帝国から独立した過去を持つファーガス神聖王国出身者の集う「青獅子の学級(ルーヴェンラッセ)」
貴族たちの同盟によって成り立っているレスター諸侯同盟出身者の「金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)」
プレイヤーはフォドラで最も影響力のあるセイロス教の総本山「ガルグ=マク大修道院」の教師となり、これらの学級から1つを選択し、教師として学級そして各キャラクターと関わっていく事となる。
選択した学級によって、特に中盤以降に大きくストーリーが変化する。

ストーリーは序盤から様々な謎が用意されている。
プレイヤーが教師として身を置く事になるセイロス教団は背教者などに対して容赦なくその場で抹殺する事も厭わないなど排他的でどこか胡散臭い。
しかし、あからさまに胡散臭すぎるのも逆に怪しくすら思えるなど、どれが正しいのか、どれがミスリードなのかわからないようになっている。
セイロス教団に限らず本作では例え味方であっても決して善行を積み重ねた者ではないのは世界観に説得力を与える事に成功している。

また、本作は二部構成となっている点も忘れてはならない大きな特徴だ。
第一部では学生たちを共に過ごしていくのだが、第二部では5年後を描いておりフォドラが戦禍に飲まれている。
第一部と第二部のコントラストが良く効いており、特に声優の演技に関しても5年分の成長を感じさせる過酷な時代を生きる大人になった演技をしているのが素晴らしい。

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フォドラの文化を感じさせる要素たち

各章の始まりには独特のタッチの絵と共にフォドラの文化について語られる。
これによってフォドラと言う地域性が良く表現されているのは良い演出だ。

その他、書庫ではセイロス教や各国の成り立ちなど興味深いテキストが用意されていたり、魚や食事の簡単な説明文においても世界観を補完している。

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巧みなストーリーテリング

本作で最も特筆するべきものと思えるのはそのストーリーテリングだ。
ストーリーは本編以外にも数多く用意されており、「外伝」や近年のFEシリーズでは代名詞とも言える「支援会話」が存在する。
ゲームプレイとなる学校生活という設定から一見明るいように感じられるものの、支援会話や外伝で垣間見る内容ではほとんど全てのキャラクターに暗いバックボーンがある事がわかる。
その陰と陽がストーリーのコントラストとして機能しているのだ。
これらの横軸とも言える要素が非常に密度濃く作られており、世界観を強固に支えている。

これらの支援会話や外伝は本編だけでは知る事ができない世界設定について知る事が出来る内容が多く非常に興味深く観る事ができる。
それらを参照する事により、「例え同じクラス、同じ地域の出身であっても、その親族などが反乱を起こして征伐」されていたり、「親同士での小競り合いや殺害」などが裏で発生していたりする事がわかる。
また、作中で明言されていない内容であっても支援会話や外伝を数多く参照して世界観の知識が増える事によって何があったのか推測ができるようになっている構造は非常に巧みだ。
キャラクター同士だけでなく、その親族や家系図、ひいてはフォドラとその隣国の歴史や風土といった要素がプレイヤーの頭の中でパズルのピースのようにハマっていき、世界観や相関図が構築されていく様は爽快ですらある。
何気ない会話の中で出てきた1つのセリフであっても設定に裏打ちされた発言である場合も多く、キャラクターのバックボーンが理解できてから思い返して「なるほど…!!」となる事も多い。

その他にもメインストーリーの伏線になるような内容が学校内の散策パートでの会話で用いられているなど、やり込めばやり込むほどに作り込まれていると感じるだろう。

逆に言えば本作のストーリーは本編だけでは思惑など理解しきれない部分もあり、魅力を100%感じ取る事は難しいかも知れない点が一長一短となるポイントであろう。
しかし、支援会話や外伝を一切無視してプレイするというのであれば「根本的に作品とユーザーの相性が良くない」とも言えるため単純に「一短」だとも言い切りにくい。

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プレイヤーは教師だ

FEシリーズでは「キャラクターをどのように育てたいか」、「どのように育って欲しいか」という将来を見据えて育成していくゲームプレイが主軸の1つとも言えた。
プレイヤーが教師として学級の生徒たちに関わっていくのは、まさにゲームプレイとシンクロしている設定だと言えるだろう。

しかし、生徒たちは何も教師に言われたことをこなすだけではない。
育成がある程度の段階まで進んでくると、時よりキャラクターが自発的に「こういう技能を伸ばしたい」「こういう職業を目指したい」と提案してくることもある。
もちろん、その提案を受け入れるかどうかはプレイヤーの選択に委ねられるが、キャラクターが自身の考えを持って行動をしているように感じられる要素は「教師として嬉しい」と思わせてくれる。

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満載のこだわり

その他のこだわりも記載しておきたい。

まず、最も些細な内容であるが「自動送り」が実装されているのはありがたい。
本作は会話内容がフルボイスとなっているのだが、筆者はフルボイスの作品の場合には会話の自動送りが実装されて欲しいと常に願っている。
声優が感情を込めて喋るセリフとプレイヤーが書いてあるテキストを読み進めるのではテンポが違い過ぎるからだ。
「自動送り」が無い作品もいまだに多いが、本作では実装されているためセリフを聴く事に集中する事ができるのは地味ながら嬉しいポイントだ。

本作では2人1組で技能を上げる「グループ課題」やプレイヤーとキャラクター2人の計3人で「食事」を行う事ができる。
これらはキャラクターの特定の組み合わせに応じてセリフが専用のものに変化したり、またそのキャラクターの支援レベルによってもセリフの内容に変化があるのは見応えがある要素だ。
この支援の状況に応じたセリフ内容の変化は様々な箇所で適用されており、支援会話自体も僅かに変化するケースもあり、非常にこだわり抜かれている。

また、本作ではキャラクターの会話中に選択肢が用意されている事が多く、とにかくシナリオ面が充実している。
選択した内容によって会話内容が大きく変化する事は少ないものの、主人公の性別でも選択肢に変化がある点もこだわりが感じられる。

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些細な問題だが、痒い所に手が届かない

全体から考えれば非常に些細な問題ではあるのだが、痒い所に手が届かないものも散見される。

まず、最も手が届いていないのは「生徒の名簿」だろう。
名簿では生徒の能力値を始めとして、簡単な出自や趣向などが名簿から参照できるようになっている。
これを参照する事によってキャラクターの好き嫌いと言ったゲームプレイに繋がる要素を確認できるのはもちろん、世界設定を知る手掛かりとしての役割も担っている。
ところが、自身の学級以外の生徒の名簿を観る術が乏しいのは勿体ない。
もちろん、他学級の生徒も簡単に参照できるようにするべきかは悩ましい所だが、例えば世界観を壊さないように他学級を担当する教師にお願いする事で見せて貰える形にするなど、最低限として参照する手段は用意して欲しかった所だ。
なお、DLCにて会話した際に生徒の名簿を観られるようになる機能が追加されている。
DLC要素であるため純粋な改善では無いが、ありがたい追加要素だ。

次に気になるのは選択肢で一番上の項目がデフォルトで選択された状態になっている事だろう。これはやや不親切と言わざるを得ない。
近年では誤った選択をしてしまわないように「どれも未選択」をデフォルトの状態にしておくのがセオリーとなっているように思える。
もしも、ボタン連打してしまうようなプレイをする人ならば、あらぬ選択をしかねない設計だ。プレイヤーはボタンを無駄に押さないように心掛けた方が良いだろう。

 

キャラクター

レビューから逸脱した内容となってしまうが、筆者のお気に入りのキャラクターの一部を紹介させて欲しい。

 

リシテア

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リシテア

リシテアは理由あってとにかく早く一人前に、大人になりたいという願望を持っているキャラクターで、少し生き急いでいる印象が強いだろう。
どうして彼女がそのような生き方をしているのかは是非ともゲームをプレイして支援会話を参照して欲しい。
とは言え、そのような無理に背伸びをした生き方を続けていた影響なのか、甘いお菓子が好きだったり、やたらとお化けが怖かったりと変な部分が子供のままになっている可愛らしい一面も持っている。

ユニットとしての彼女はステータスの総合値こそ低くなりがちなものの、魔力だけがひたすら成長し、FE封印の剣の「リリーナの再来」とも言える火力は驚異的だ。
その上、魔法は射程が伸びる装備やスキルが存在するため、装備/スキルが整っていれば攻撃性能において群を抜いたキャラクターとなる事は間違いない。

 

ローレンツ

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ローレンツ

ローレンツのキャラクター性はステレオタイプな貴族性を更に強く掘り下げたものになっているのが特徴的だ。
彼の発言の数々は最初こそいわゆるテンプレートな「いけ好かない貴族」の空気感を覚えるのだが、彼を掘り下げれば掘り下げるほどに素晴らしい人物である事がわかる見事な設定だ。
筆者の感覚ではあるが、第一印象とクリア後とでは全く評価が異なる人物ではないだろうか。

ユニットとしての彼は白兵戦と魔法による遠距離戦の両刀が可能な才能を持っており育成のしやすさがあるのが特徴的だ。
しかし、レベルアップの成長の仕方によってはどっちつかずな器用貧乏になりかねない事も事実であり、「単騎で天下を取れる」ようなタイプとは言いにくい。

 

マリアンヌ

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マリアンヌ

マリアンヌは自身の血筋に絶望しており、自己肯定感が非常に低く傷付きやすい繊細な精神性でありながら、下位承認あるいは自暴自棄な発言も目立つ。
それらの発言も自身が他者から傷つけられる事を酷く恐れるあまりに行っている予防線の意味合いもあるように読み解けるが、とにかくとても心配になるキャラクターだ。
しかし、5年後には決意を感じさせるセリフが端々にあり、その強く美しく成長した姿はプレイヤーを親類が感じるような気持ちにさせてくれるだろう。
特に必殺発動時の「私…やらなきゃ…!!」という覚悟を決めているセリフは筆者のお気に入りだ。

ユニットとしての彼女はヒーラーとして育てていくのが無難だろう。
特に遠くの味方を回復できるリブローを覚えるため重宝する。
剣士としての才覚もあるため、いざという時のために鍛えておいても良いかも知れないが、優先度としては非常に低くなるだろう。

 

イングリット

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イングリット

イングリットは貴族出身ではあるが、その跡取りではなく騎士となることを夢みている。
基本的に真面目で正義感が強いが、食べる事が大好きでそれを幼なじみから弄られる可愛い一面もある。

ユニットとしては速さが成長しやすいが、力不足にはなりがちな印象だ。
そのため、敵の攻撃を回避しながら引き付けて削り、仲間が止めを刺して経験値を得るといった事がやりやすい。
戦闘中のボイスは清廉な声質を残しつつも勇ましさを前面に押し出しており、非常に筆者好みの演技だった。

 

イエリッツァ

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イエリッツァはアップデートによって仲間として追加されたキャラクターである。特定のルートでのみ仲間になる。
普段の彼は寡黙でほとんど喋る事は無いのだが、その幼少期は非常に複雑な家庭事情で育っており、その影響からなのか非常に強い破壊衝動を持っている。
しかし、学級の生徒の中には彼ととても縁の深いキャラクターがおり、破壊衝動に悩みながらもそのキャラクターと関わっていく姿は印象的だ。

 

システム

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キャラクターの育成

FE風花雪月においてメインディッシュといえるシステムを挙げるとするならば、それは「キャラクターの育成」だ。

プレイヤーは各学級の各キャラクター達に指導を行い、どの技能を伸ばしていくのかを指示する事ができる。
キャラクターには予め個性が設定されており、得意とする技能・苦手とする技能が存在していたり、「紋章」と言う血統のようなものがあったり、またレベルアップ時に上昇しやすいステータスがあったり、時には最初は苦手な技能であっても指導を繰り返す事で得意技能となるものも用意されている。
得意・苦手はあるものの特に「これは必須」のような技能は無いため、プレイヤー自身の好みで育成する事が可能だ。
キャラクターの個性に合った・個性を伸ばすような育成をしていく事が好きな人にはたまらない要素と言えるだろう。

また、従来通りではあるが多くのキャラクターには「支援」と呼ばれる仲の良さのようなパラメーターも存在しており、キャラクター同士の友好度が高くなる事で「ストーリー」の項で記載した支援会話を観る事ができる。
また、支援はキャラクター同士が隣接していれば、そのキャラクター同士の支援レベルに応じて戦闘でもステータスにバフがかかるなどの機能も従来通り実装されている。

このように「キャラクターをどのように育てるか(どうなって欲しいか)」「どのキャラクターとどのキャラクターを仲良くさせるか」を考えながらプレイしていく本作の体験は教師のようであり、親のようでもある。

そして本作のゲームサイクルは非常に熱中しやすいバランスだ。
本作のプレイシーケンスは端的に表してしまえば「育成⇒結果⇒戦闘⇒育成…」というプレイサイクルとなるのだが、その1つ1つのプレイ時間はそこまで長く無く設計され、また実行した結果もすぐにわかる。
そのため「もう少しコレを伸ばしていこう」「じゃあ次はこっちを伸ばそう」など次々と新しい目標(育成プラン)が湧いてくる。
止め時を見失う没頭性は非常に見事だ。
ただし、難易度をルナティックなど高難易度にすると戦闘の時間的比重が大きくなり、育成~戦闘のサイクルのバランスが崩れてしまうのは少々勿体ない所だ。

 

バトル

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関係性がシンプルに戻った戦闘

ここではバトルに関して記載をしていく。

まず、FE風花雪月では覚醒以降の作品と同様に難易度設定として「カジュアル」と「クラシック」が存在する。
カジュアルでは自軍のユニットが倒されたとしても復活するようになっているが、クラシックでは古来のFEシリーズのようにユニットがロストして復活する事は無い。
敵ユニットの強さなどが変化する「ノーマル」「ハード」なども存在するため、SRPGの初心者から上級者まで安心してプレイする事ができる。

次に追加・変更が加えられている要素について記載する。

本作で最もインパクトのある変更は「三竦みの廃止」だろう。
FEシリーズと言えば「聖戦の系譜」から「剣<槍<斧<剣…」という関係性の「三竦み」が代名詞的に活用されていた。
しかし、本作では大胆にも三竦みを撤廃しているのだ。
これを聴いて不安を覚える方もいるかも知れないが、本作のゲームプレイを考えれば三竦み撤廃は非常に素晴らしい英断と言える。
本作では「生徒を成長させる」ことをゲームプレイの主軸に置いているが、そこに「三竦み」という要素は相性が悪いためだ。
例えば、時間をかけて盾役キャラを育てたとしても、育てたキャラが槍使いとして育成した場合には戦場が斧装備の敵だらけとなったりすれば、その育成が無に帰してしまう事に他ならない。
三竦みを撤廃した事により攻撃役は常に攻撃役として、盾役は常に盾役として機能するようになっており、育成が無駄になる事がないのだ。

戦闘中に行動を巻き戻せる「天刻の拍動」というものも追加されている。
これも良い要素だと言えるだろう。
上述している通り、FEシリーズではユニットロストしてしまう要素が代名詞として語られる事が多い。
しかし、実際にそうなった場合にはそのままプレイを継続するプレイヤーは少なくリセットをするのが大半だと思われる。そうなると戦闘を最初からプレイする事になり、とにかく時間がかかってしまう。
そのため、行動をやり直せる「天刻の拍動」は時短に繋がるのだ。
もちろん、プライドによって使いたくない人は使う必要は無い。

戦闘で役に立つ行動として「戦技」「計略」と言うものが追加されている。
「戦技」は武器種の熟練度が向上する事で覚える技で、自分のターンであれば覚えている戦技を発動する事ができる。
その効果は様々で特定の敵に特効ダメージを与える技や能力を下げる技などが存在する。
しかし、その代わりに武器の耐久値を多めに消費する事になるため「いつ」「どの武器で」使うかが重要だ。
とは言え、ユニットが成長してくると普通に攻撃した方が効率が良くなってしまう事が増え、一部を除き多くの戦技の有用性が薄くなってしまうのは少々勿体ない。
通常攻撃と戦技のバランスはもう少し検討して欲しかった所だ。
「計略」はユニットに「傭兵団」を設定する事で使用可能となる戦法で、その効果は傭兵団によって異なる。
計略は味方ユニットと連携する事で「連携計略」となり、威力や命中に補正がかかる。
この計略は魔獣と呼ばれる大型の敵ユニットに対して使用する事が多いのだが、計略による攻撃は反撃を受ける事がないため強力な人型ユニットにも非常に有効だ。
計略は1回の戦闘中に1ユニット辺り数回しか実行できないが、反撃なしに攻撃できると言う特性はやや強力すぎる。
回数制限があるとは言え、もう少しリスクがあっても良かったように思える。

では、これらの変更点の影響や戦闘全体のバランスはどうなったのか。
戦闘は本作が育成が主軸になっているためか、戦闘自体のやり応えはやや低いというのが筆者の感じた所だ。
どのキャラクターでも、どの武器でも、どの兵種でも十分に強く、計略なども強力で苦戦を強いられる事はほとんど無い。少なくとも1週目を難易度ノーマルでプレイした筆者はそのように感じる。
本作の戦闘とは「戦闘自体が楽しい」と言うよりも「育成した成果をお披露目する場」なのだ。
敵ユニットの行動を計算しながらパズルのように戦ったり、味方ユニットの配置などによるポジティブなシナジー効果によって上手に立ち回ると言う訳では無く、自身が育成したキャラクターが思った通りの強さを発揮できるかを確認したりする場が戦場となっている。
本作はあくまでも「キャラクター(生徒)の成長」を楽しむのが主体だという事は忘れてはいけない大きな要素だろう。

 

散策

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生徒たちと過ごす自由時間

FE風花雪月では戦闘以外のパートが存在する。
それが「散策」だ。
散策ではガルグ=マク大修道院にて生徒や先生たちとの交流をする事ができる。

キャラクターに対しては贈り物や落とし物を渡す事ができるほか、食事に誘ったり、お茶会に誘ったりすることが出来る。
また、主人公の技能を向上させる事も可能だ。
散策ではこれらの行動が行える回数が決められており、プレイヤーはどのような行動をするべきかマネージメントしながら散策する事となる。

上述している「落とし物」は良く出来たシステムだ。
キャラクターは章が移り変わる度に待機場所が変わる事が多いのだが、落とし物はキャラクターが前章で立っていた位置に落ちている。
しかし、全てのキャラクターの立っていた位置を覚えるのは難しい。
だが、落とし物の1つ1つにはキャラクターの個性が反映されており、落とした物と生徒の外見や名簿などを照らし合わせる事により、落とし主のキャラクターを推測する事ができるようになっているのだ。
この落とし物を落とし主に返すという作業をこなしていく事でキャラクターの好き嫌いと言った個性が自然と把握できるようになっているのは良い構造と言えるだろう。
特に本作のように多くのキャラクターがいる場合には、1人1人の個性まで把握しにくい事が多い。自身の要素を理解し、それに相応しいアプローチを行った良い例だと言えるだろう。
しかしながら、ストーリーの項でも述べている通り他学級の生徒の情報を知る術が乏しいため、他学級の生徒の落とし物は場合によりブルートフォースアタック的に落とし主を探すようになってしまうのは痒い所に手が届いていない。
なお、これも前述の通りDLCにて名簿が会話で見られるようになったほか、落とし物がどの学級のものかも表示されるようになった。

この散策パートでほとんど不満は無いが、「あれば嬉しかった」と言える要素なら上げる事ができる。
それは「ランダムイベント」だ。
本作ではとにかく事前に用意されたイベントがあるのみであり、後はそのイベントをいつ消化するかをプレイヤーが決められる程度と言って良い。
そのため、散策パートでの驚きがやや物足りないように感じられる。
そこでランダムで発生する突発的なイベントがあっても良いように思えるのだ。もう少しわかりやすく表現すれば「パワプロのサクセスのような仕組み」と言えばピンと来るかも知れない。
このような偶然の産物によってキャラクターの能力値や技能に変化が生まれるのも面白いのではないだろうか。

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他ユーザーの選択が確認できる

アカウントがNintendo Switch Onlineに加入していればちょっとした要素が追加される。
他のユーザーがどのような選択をしたのか確認できたり、戦場のマップでは他ユーザーがやられたポイントが表示されたりするのだ。
これらの要素のためにNintendo Switch Onlineに加入するのは何か間違っている気がするが、既に加入済みの特に初心者ユーザーならば使ってみても面白いだろう。

 

煤闇の章

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第四の学級

煤闇の章とはFE風花雪月におけるDLCで追加されたサイドストーリーの事だ。

FE風花雪月のDLCでは衣装やクエスト、キャラクターなどが追加されたが、この煤闇の章が最大の目玉と言っても過言では無いだろう。

 

ストーリー

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やや半端なストーリー

煤闇の章は本編の進行とは全く関係なくプレイする事ができる完全に独立したシナリオとなる。
また、物語の進行はメインのストーリーを進めていくのみで、専用のサブクエストは用意されていない。

煤闇の章ではガルグ=マク大聖堂の地下にある”アビス”と呼ばれる世界が舞台となる。
アビスは表の世界を歩けない者達ばかりが住む場所で、そこには「灰狼の学級(ヴォルフクラッセ)」と呼ばれる第四の学級が存在していた。
主人公達は第四の学級の生徒たちと共にアビスの治安維持のために侵入者を排除し、またアビスが狙われる謎を解き明かそうとしていく。

展開されるストーリーの大筋は本編と比べるとシンプルだ。
本編ではメインストーリーと支援会話、外伝で互いに補完しあうような深い構成となっていたが、煤闇の章ではメインのストーリーの情報だけで物語の起承転結が完結するようになっている構成なのだ。
本編と同様の奥深さを生み出すには至っていないのは少々肩透かしを喰らったように感じるかも知れない。

煤闇の章はボリューム自体もそれほどは無く、5~10時間程度でクリアする事が可能だ。
そのような短めのストーリーである事も相俟ってか、物語の畳み方が少々雑になってしまっているのは勿体ない。
味方や敵の描写をもっと濃密に描き、終盤の山場の展開へのメリハリや助走をしっかりと付けて欲しかったように感じる。

煤闇の章のストーリーでは本編で明かされない部分を知る事が出来る事は良いポイントだが、その内容が本編やDLC煤闇の章に厚みを持たせるような設定かと言われるとそういう訳でもない。
あくまでも煤闇の章で完結したストーリーとなっている事も折角のファンのためのDLCという側面を考えるとこちらも勿体なさを感じる所だ。

 

システム

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サクッとプレイできる

キャラクターを様々に育成していく事を主軸に置いていた本編とは異なり、煤闇の章は決められた戦力でマップを攻略する必要がある。
そのため、過去のFEシリーズのような詰将棋に近いプレイフィールが味わえる。

難易度は本編よりも若干高いようには感じるが、育成部分がほとんど無いため、何も考えずにサクサクと進行できる。結果的には本編よりも手軽にプレイしやすい印象だ。
そのため、SRPG初心者やFEシリーズに興味のある人はこちらからプレイするのも悪くないかも知れないが、この煤闇の章はスタンドアロンに起動できるパッケージ版などは販売されておらず若干惜しいように感じる所だ。

 

グラフィック

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もう一歩物足りなさのあるグラフィック

FE風花雪月のグラフィックは少々物足りないというのが正直な所だろう。
スペック面でやや劣るNintendo Switchとは言えども、もう少し上を狙えたのではないかと思えてならない。
システムが異なるため単純な比較は意味を成さないが、より美麗に描写されたNintendo Switchタイトルもあるだけに惜しい。

人物のモデリングにおいて特に気になるのは瞳だろう。
「目は口程に物を言う」という言葉があるように人物の造形の善し悪しを決定する最も大きな要素が目である。
本作ではその目の、特に瞳の透明感や潤いが感じられないため必要以上にクオリティが低く見えてしまい勿体ない。

フィールド関連も余り良いとはいえない。
散策で歩く事となるガルグ=マク大修道院やフル3Dで描かれるようになった戦場もテクスチャーの品質が余り良くない。
ロケーションの雄大さなどを楽しむゲームでは無いとは言え、もう一声欲しかった所だ。

しかし、グラフィック面でこだわりを捨てている訳では無い。
例えば各学級のキャラクターは全員が学級に応じた制服を着用しているのだが、その大半はキャラクター性を象徴するようなワンポイントや気崩し方をしているのだ。
また、散策において行動可能数を使い切った状態である程度時間が経過すると上図の右上のように夕焼けになる。 
コーエーテクモゲームスが開発を主導している影響かキャラクターのアニメーションは全体的に良く出来ており、特に戦闘中に魅せるキャラクターアニメーションは良い動作だ。
このようにグラフィックそれ自体の質は良いとは言えないのだが、それを補うように他の要素で見せ方をカバーしている。

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カッコいい必殺のカットイン

本作の映像関連で最も良いと感じるのは戦闘中の必殺発動時に挿入されるキャラクターのカットイン演出だろう。
戦闘中に実際にどのように挿入されるかは「バトル」の項で載せている画像が参考になるので参照にして欲しい。
近年のFEではこのように必殺時にカットインが入るが、今作ではイラストでは無く少し動きがある3Dモデルであるため、カットインのカッコよさを引き立たせている。
気合のこもったセリフと一緒に発生する必殺の演出は最高だ。

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戦場でのズームアップは嬉しい要素だ

本作の戦場ではズームアップ操作をする事で実際に近い寸法の表示を行うことが出来るのだが、その状態でユニットを移動させる事もできるのは嬉しい要素だ。
もちろん普通のSRPGのようにマス目ベースでユニットを移送させる事も可能だ。
普段使いできるほど素晴らしい機能だとは言い難いが、実際の縮尺でキャラクターとフィールドの関係性を観る事が出来るのは嬉しい。

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細かな遊び心

地味ながら遊び心を忘れない。
ロード画面では昔ながらの2Dドットのキャラクターユニットが登場する。
このロード画面のキャラクターはコントローラーの傾きやボタン操作でリアクションがある。
こういった小さな遊び心こそ作り込みを感じさせてくれるポイントと言えるだろう。

 

サウンド

FE風花雪月の音楽は素晴らしい楽曲がてんこ盛りだ。
教会というシチュエーションにマッチした印象的なパイプオルガンの音色や相変わらず耳に残るカッコいい戦場曲は是非とも聴いて欲しい。
また、近年のFEシリーズで採用されている戦場BGMと戦闘BGMのシームレスな変化にしても鳥肌が立つほどにカッコいい演出だ。

パイプオルガンで厳かにアレンジされたFEシリーズのメインテーマ「炎の紋章」

孫子の一節を用いた戦闘準備時の曲「その疾きこと風の如く」「侵略すること火の如く」

戦場時と戦闘時がシームレスに切り替わる非常にカッコいい「フォドラの暁風」「天裂く流星」「剛撃」

ボーカルメインテーマのフレーズを引用しつつ第一部と第二部でアレンジの異なる楽曲に仕上げた本作で最もカッコいいと言っても良い戦場・戦闘曲「鷲獅子たちの蒼穹」「天と地の境界」

日常のようなほのぼのとした「安息と陽だまり」

神秘的でシャーマニズムな雰囲気を覚える「覚醒」

このほかにも記憶に残る素晴らしい曲がたくさん存在している。
これらのBGMはプレイ中に聴いたことがある曲であればゲーム内でもサウンドテスト的な形式で自由に聴く事が出来るため、その点も嬉しいポイントだろう。

 

ボイス

キャラクターのボイスに関しても少しだけ記載しておきたい。

戦闘においてキャラクターが必殺を発動した後には、その近くにいるキャラクターが「やりますね」といった内容の掛け合いをしてくれる。
これがあるだけでキャラクター達の空気感の表現に一役買っており嬉しい要素となっている。

また、各キャラクターのセリフは室内などの閉鎖空間のステージではボイスにリバーブがかかる演出がされているのも丁寧だ。

「ストーリー」の項でも記載しているが本作は物語が二部構成であり、第一部と第二部では演技が異なる。
第二部では単純に5年という歳月を経ているのもあるが、学校時代での成長や戦禍を生き抜いていた経験を反映した決意や覚悟を感じさせる演技が特徴的だ。
生徒たちが大きく成長した事を感じさせてくれる非常に素晴らしい演じ分けとなっている。
しかし、特定の支援会話などは第一部と第二部のどちらでも観る事ができるものが存在しており、そのような支援会話を第二部に突入した段階で参照すると「見た目こそ第二部だが、演技は第一部に近いもの」になっている点は若干ながら気になるかも知れない。
ディレクションとしては第一部と第二部の中間を目指した演技になるように指示がされているらしいのだが、第一部と第二部の演じ分けの差が大きいキャラクターもいるため、器用な演じ分けをしたことが逆に仇となってしまっている。
支援会話に関して同じセリフ内容で第一部用と第二部用の2パターン用意できればベストだったであろうが、それは贅沢過ぎる要求だろう。

 

総評

ファイアーエムブレム 風花雪月はシリーズの最高峰とも言える隙の少ない傑作だ。

深く練り込まれた世界観はプレイヤーの知的好奇心をくすぐり、生徒との交流または生徒同士の交流は観ていて飽きないだけでなく世界観が更に奥深いものであると思知らせてくれる。
キャラクターの個性を伸ばしていける育成は没頭性が高く、つい時間を忘れてしまう中毒性のあるテンポ感も見事だ。
音楽も素晴らしく、特に戦場と戦闘でシームレスに変化する演出は恒例となりつつあるが素晴らしい事に変わりはない。

育成を重視しているためか戦闘自体のやり応えには少々欠けるところがあり、またグラフィック面にしても(動きこそ良いが)物足りなさを感じるのが正直な所だ。
しかし、それらはほどんど些細な問題であり、1週目をクリアする頃には、まず間違いなく2週目を別の学級(視点)でプレイしたいと思っている事だろう。

しかし、DLCで追加された内容は全体的に淡白な印象である事は残念でならない。
ボリュームもそうだが、内容においてももっとFEファンや風花雪月ファンが喜ぶ内容がてんこ盛りであって欲しかった所だ。

 

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【レビュー】じんるいのみなさまへ

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ユートピアディストピア

最初に記載するが筆者はADVなどのゲームに疎く、また得意ともしていない。
その事を念頭に置いてレビューを参照して欲しい。

ADVが得意でない筆者が本作「じんるいのみなさまへ」に興味を持ったのは、ひとえにその設定の魅力であるところが大きい。
「女の子達がゆるゆると荒廃した秋葉原で生活をする」というシチュエーションだけで面白そうだと感じたのだ。
事前に公開されたスクリーンショットの時点で3Dモデルやフィールドの作りの甘さは感じたが、設定の魅力がそれを上回っていた。

今回は筆者の苦手ジャンルとも言えるADVのタイトル「じんるいのみなさまへ」をレビューしてみたい。

 

じんるいのみなさまへ - PS4

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  • 発売日:2019/06/27
  • メディア:Video Game
 
じんるいのみなさまへ - Switch

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  • 発売日:2019/06/27
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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ゆるゆるポストアポカリプス

本作のテーマは「ゆるゆるポストアポカリプスでゆるゆるサバイバル」と言って間違いでは無いだろう。
本来ならば過酷なポストアポカリプスと言うシチュエーションをこのように展開した発想は素晴らしい。
もちろん女の子がキャッキャしているのを見るのも一興ではあるのだが、物語の冒頭からSF色を感じさせるストーリーと崩壊した世界を現代的な女の子が探索すると言うシチュエーションは「なぜこのような世界となったのか」という謎をついつい考えながらストーリーを観てしまった。
ストーリーは一本道で物語が分岐するような選択肢が無い点は少々物足りなさを感じる所だが、ストーリーとシチュエーションを楽しみたいのであれば気になる事もないだろう。

本作では雑誌や同人誌、アニメ、映画などの知識を基に荒廃した秋葉原でサバイバルをする事になる。
ストーリーの進行では頻繁に科学や生物に関する情報が出て来るため、半ば中学や高校の科学の授業でも受けているような感覚さえあるが、ズラズラと科学知識をひけらかされる訳では無く、比較的ライトに説明がなされるため嫌味に感じる事は無かった。
むしろ、それらの知識を駆使して生き抜いていく彼女達がたくましくさえ感じるほどだ。

ストーリーでは食料の安定確保のために野菜を育てたり、魚を釣ったりするのだが、それらに必要な道具は当然ながら手元に無い。
しかし、そこで挫けないのが彼女達だ。
彼女達がストーリー中で魅せる「無いなら作っちゃおう精神」は鉄腕DASHでも視聴しているのかと錯覚するくらいのものだ。
更に、ストーリーが進むと動物の肉を食べようと言う事になるのだが、動物の解体という最もエグイ部分にしてもあっさりと食肉に加工して見せる姿はさながらカメ五郎さんだ。

本作のストーリーで筆者が特にお気に入りなのは8章だ。
8章では彼女達が「とあるメッセージ」を受け取る事となる。
それは崩壊した世界に取り残された彼女達に向けた大切なメッセージなのだ。
家族や友人たちと二度と会う事ができないと言う状況は「もしも自分だったら」と考えずにはいられない内容だ。
この手の話に滅法弱くなった筆者はこのシーンで思わず涙してしまったほどだ。
とは言え、この章でキャラクター同士がイチャイチャするシーンは少々無粋だったように感じる。8章は全体から見ても非常に大切な章であると思えるだけに、この章に関してはもう少し暗いトーンで統一してメリハリを付けた方が良かったのではないかと思える。

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しっかりと設定が用意されたストーリー

ストーリーの序盤からある程度は仲が良さそうな彼女達だが、一人一人の個性の方向性はバラバラであり普通に考えると仲が良くなるきっかけが無さそうに見えるメンツだと言える。

また、ストーリーが進むと野菜を育てたり魚を獲ったりする事になるのだが、全般的に「何故か都合が良い展開」になる。
野菜は種を蒔いてから数日で収穫可能となるし、世界は崩壊しているのに魚貝類は普通に獲れるのだ。

これらの「なぜ接点の無さそうな彼女達が仲良しなのか」「なぜ都合良くいくのか」と言ったものに関してはしっかりと設定が用意されている。
それは物語の終盤に閲覧が可能となる「ロッカーに残されたメモ」を参照する事で知る事ができたり、DLCのストーリー内で知る事が出来たりする。

なお、ストーリーだけを楽しむだけであれば本編だけで問題ない。
しかし、世界設定の謎を知りたい場合にはDLCを購入した方が良いだろう。
DLCでは「専用のストーリー」や「ロッカーのメモの追加」があり、どれも謎を知るためのピースとなっている。

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不親切な箇所も多い

本作のストーリー自体は決して悪くは無いのだが、それ以外の部分が大きく足を引っ張ってしまっていると感じざるを得ない。

まずストーリー中の会話において主人公に行動を託すような会話はあるが、実際のゲームプレイでは行えない・行わないなど意味深に用意されている会話が散見されるのは少しばかり気になる所だ。
例えば「近くの店から探索しよう」と会話したにも関わらず、すぐさま「どこからでも好きに探索して良いんだよ」と言う会話がなされプレイヤーへの指示が二転してしまっておりやや困惑する。
また、自動販売機やガチャポンに関する会話においても「本当は自動販売機 / ガチャポンを利用できたのでは」と感じる。
あくまでも筆者の憶測の話となるが、このようなセリフに関してはゲームプレイとして実装しようとしたが、実際には何らかの理由で組み込めなかった残滓ではないだろうか。

本作では上図の左のように移動中にはテキストによってキャラクター同士で会話が行われる。
連れていくキャラクターおよびゲームの進行状況によって会話の内容は変化するものの会話パターンが非常に少ない(1組辺り2パターンx進行状況?)。
そのため、同じ会話の繰り返しとなってしまうのは少々残念だ。
また、移動中はひたすら歩く事になるため、テキストのみの会話では雰囲気的に寂しいものがある。
そもそも移動中にテキストを表示されても文章を読むには適切な状況ではないとも言えるだろう。
この会話テキストを読むために歩みを止めてしまうようでは移動中にテキストを表示させる意味が無く本末転倒となる。
やはり会話セリフに関してはキャラクターに喋らせて”ムード”を作って欲しかった所だ。

次に不親切に感じるのはフィールド上に配置されている会話イベントだろう。
これは上図の右が参考になるのだが、フィールドには特定のポイントでキャラクター達が会話するイベントが用意されている。
しかし、上図右を見てわかる通り特定のポイントが「余りにもノーヒント」なのだ。
有名な建物やわかりやすいオブジェクトにある訳でもなく、何の変哲もない路上に設定されており気付きようが無い。
当然ながらマップにも表示されていない要素であるため気が付かないままにゲームをクリアしてしまう勿体ない要素となっている。

ストーリーとゲームプレイが乖離している点も勿体ない要素だ。
ストーリーを進行するためには「目標」として指定されたアイテムを入手する必要がある。
しかし、そのアイテムを既に所有している場合であっても「入手するためのポイントに赴く必要がある」のはゲームプレイ部分を実装している意味を成していない。

ストーリーを進行するための目的地に関しても不親切さがある。
フィールド上に表示されるイベント進行アイコンとアイテム探索アイコンが同じケースが多くわかりにくいのだ。
せめて色を変えて欲しかった所だろう。

またその他にもミスと思しき箇所も散見される。
設定ミスなのか不具合なのか会話のボイスが再生されなかったりするのは問題がある。
声優が収録する際に使用したテキストとゲーム内に実装したテキストに差分が出てしまったのか、発せられるボイスと表示されるテキストで内容が異なるケースもある。
一番最初のスタート画面にしてもデフォルトで選択されているのが「はじめから」になっているのは考慮が足りていない。

上述した事の繰り返しとなってしまうが、本作は「実装をしようと設計したものの、何らかの都合により未実装となってしまった」ように感じる事が多い。
会話内容が二転したり、ノーヒント過ぎるフィールド上の会話イベントであったり、ストーリーとゲームプレイとの乖離であったり、どれもプレイしていると「本来は別の形で実装する事を想定していたのでは」と思わずにはいられない「制作途中感」があるのだ。

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DLC「スハーヤ 朱香」

本作ではDLCで追加される「スハーヤ 朱香」というキャラクターが存在する。
彼女はDLCを購入していたとしてもシナリオの2週目から登場するキャラクターとなる。
彼女がいる事で既存のシナリオに会話が追加されていたり、シナリオ自体に変化が起きるケースもある。特に科学や生物に関して更に詳細な知識が加えられるケースは多いだろう。

また、DLCルートのシナリオではSF要素が強くなるが、これは前述の通りDLCの立ち位置が世界設定の謎を回収するために用意されているためだと言えるだろう。

 

システム

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ゆるゆるサバイバル

本作では3Dで構築された荒廃した秋葉原駅周辺を探索する事ができる。
探索では野菜を作ったり、廃品を回収したり、魚を釣ったりしてアイテムを入手する事になる。
この際のアイテムの入手に関しては特別何かしらプレイスキルが求められる訳では無く、1日の行動可能時間を消費する事となる。
ここだけ聞けば行動のマネージメント要素のようにも思えるが、例え行動可能時間を消費しきってしまったとしても「翌日の探索(アイテムの入手)にかかる消費時間が大きくなる」のみでありデメリットと呼べるものでは無い。
そのため、リソースには常に余裕がありサバイバル感は終始低い。
これに関しては賛否あると思うが、筆者としては「女の子のゆるゆるポストアポカリプスサバイバル」というテーマを体現した一貫性のあるシステムのように感じ、良いとまでは言わないが悪いものでは無いように思える。

しかし、サバイバルを導入したゲームにありがちな健康度や総重量などを導入していないために「食材」や「機材」と言ったリソースが存在する意味や獲得する意味が無いままになってしまっているのは勿体ない。
テーマでもある「ゆるゆるサバイバル」を実現しつつも、これらのリソースが活かせる別のアプローチをして欲しかった。

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不便な地図

本作では秋葉原駅周辺を歩いたり走ったりして移動する事になる。
自分の足だけが頼りの移動は確かに面倒ではあるが、ある程度の面倒さが無ければポストアポカリプス世界のサバイバルと言う設定を用意する必要が無いだろう。

移動よりも気になるのは地図だ。
まず、地図には自分がいる現在地の記載が無い。
そして、ストーリーを進行するために次にどこに行くべきなのかも記載が無い。
確かに「自分の見ている景色と地図を見比べる事で徐々に土地勘がついてくる」と考えれば良い要素とも言えるのだが、レガシーなわかりにくい要素とも言えるだろう。
なお、アップデートにより「地図上に現在地と目的地の追加」を実装している。

 

グラフィック

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ローエンドだが秋葉原駅周辺を再現したフィールド

本作の3Dモデルはお世辞にも”標準レベル”とは言い難く、PS2クラスと言っても過言ではないのは残念だ。
制作にはUnityが使用されているようだが、確かに素の状態のUnity感を強く感じる(Unityを少しでも触った事があるならば伝わるだろう)。
建造物のディティールや水の表現、空中に浮いている(接地していない)操作キャラクター、日本語が反転したテクスチャー、走行と歩きの中間モーションが無い事など大小さまざまに気になる所が点在する。
また、グラフィックの粗を目立ちにくくする目的もあるのか被写界深度表現がキツく、遠景がかなり強めにボケて観えるのも逆に気になる。
「どんなに良い絵も、どんなに悪い絵も、30分観れば慣れる」とは筆者の持論だが、それでももうちょっと何とかならなかったのだろうか。

とは言え、本作の3Dフィールドが全てが悪い訳では無い。
秋葉原駅周辺と言うそれほど広くは無い領域ではあるが、それが再現されているのは良いポイントと言えるだろう。
だがしかし、時間経過で景色が変わらない事は勿体ない。
夕焼けなどがあれば荒廃した秋葉原と相俟って良い景色となったであろう。

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イベントスチル

いわゆるイベントスチルもそこまで多く無いが、筆者が特段イベントスチルにこだわっていないためか気になる事は無かった。

 

サウンド

「ゆるゆるポストアポカリプス」である本作では曲に関しても「ほんわか」したものが多いのが特徴的だ。
また、ループが短くメロディもはっきりとしているため「単純接触効果」が強く、記憶に残りやすい曲となっている。
筆者の気に入った曲を紹介したい。

頻繁に聞くためすぐに耳に残る「風が吹いたら」「まどろみのたんぽぽ」

フワフワでポカポカな「陽射しになれ」

優しく落ち着いた「世界の終わりは春しおん」

陽気で、どこか郷愁感もあるエンディング曲「プレシャス☆ガール」

本作ではサウンドテスト的な形で劇中BGMを聴く事ができるため、地味ながら嬉しいポイントと言えるだろう。

 

ボイス

本作のボイスに関しても記載しておきたい。

特に主人公の京椛を演じる佐東茉奈さんは、やや舌足らずでキャラクター設定以上に幼い印象を覚えてしまうが、それでも細かい部分で聴かせる自然体の演技は可愛らしく感じられるだろう。

もちろん、その他のキャラクターの演技に関しても悪くないのだが、開発側と収録側で意思疎通がイマイチだったのか音響監督の指示出しミスが散見される。
「ストーリー」の項で記載した通り「ボイスと表示テキストで差分が出てしまっている」ことも気になるのだが、テキストの汲み取り違いを起こしているケースも散見されるのだ。
例えば、「よろしくねー」というセリフがあるのだが、これは文脈としては「よろしくない」の意味で使われている。しかし、実際に収録されたものに関しては「よろしくお願いします」の意で「よろしくねー」が発せられたりしている。
ストーリー全体を把握している脚本家なりディレクターが収録に立ち合えていなかったのだろう。

 

総評

「じんるいのみなさまへ」とは「ユートピアディストピア」だ。
暴力や犯罪の免罪符として扱われ殺伐としがちなポストアポカリプスものに、「女の子がゆるゆるとポストアポカリプス世界を生きる」という方向性に視点を向けたコンセプトは素晴らしい。
本作のシチュエーションはディストピアでありながらユートピアなのだ。

しかし、わかりやすい表面的な部分のクオリティーの低さが目立ってしまい、これでは描きたい本質的な部分をユーザーに受け取ってもらうのは難しいと言わざるを得ない。
本作はコンセプトこそしっかりしているが、それを具体的にゲームとして落とし込むという領域に昇華できていないのだ。

もっと単純なビジュアルノベル的なもので良かったように感じるが、本作の「ユートピアディストピア」を表現するならば本作のようなストーリーテリング・ゲームプレイを行いたい。
その気持ち・発想は非常に理解できるのだが、技術レベル(スキル・資金・時間という意味での"リソース")が全く追いついていないのは明白だ。
シチュエーションの設定には賛辞を贈りたいが、「やりたい事」と「出来る事」を明確にして開発に臨むべきだ。
その結果として開発側もユーザー側も不幸になってしまったのが本作だろう。

 

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【レビュー】妖怪ウォッチ4 ぼくらは同じ空を見上げている

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ぼくらは同じ空を見上げている

筆者が妖怪ウォッチ4に興味を持ったのはゲームプレイが一新されたと言うポイントが大きい。
それまでのシリーズは良くも悪くも「古典的なRPG」の印象があり、わざわざプレイしようと言う気になれなかったのが正直な所だった。
そこがグラフィックはもちろん、システム面も大幅にテコ入れされ変化した姿を見てプレイしてみようと思った訳だ。

筆者は今まで妖怪ウォッチシリーズに全く手を出してこなかった。
ゲームはもちろんだが、アニメに関しても話題になっているのは知っていたが実際に見た事は無い。
そのため、今回のレビューに関しては「シリーズ初心者がプレイした場合にどう感じるのか」が強く反映されているのではないかと思う。

 

妖怪ウォッチ4 ぼくらは同じ空を見上げている -Switch

妖怪ウォッチ4 ぼくらは同じ空を見上げている -Switch

  • 発売日:2019/06/20
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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妖怪ウォッチシリーズのオールスター

妖怪ウォッチ4はシリーズの集大成・オールスターともいえる内容だ。
ゲームに登場した主人公はもちろん、アニメや劇場版で主人公であったキャラクターも登場する。
歴代シリーズを知っている人であれば嬉しい要素となるだろう。
また、例え筆者のようにシリーズを全く知らなかったとしても「いきなり知らない過去の事件の話をされる」ような置いてけぼりを喰らう事は無いため、徐々にではあるがしっかりと世界観を認識できるようになっている。

筆者はシリーズに疎いが、メインストーリーはどうやら「シャドウサイド」および「FOREVER FRIENDS」を主軸に編纂したような内容となっているもののようだ。
もちろん、これらを知らなくても全く問題なく楽しむ事ができる。
ストーリーは章形式で展開していき、メインクエストをクリアする事で次の章へと進行するスタイルとなっている。
章のラストとなるクエストを除いて、大半のクエストでは基本的に数多く登場する妖怪の紹介をするための役割である事がほとんどだ。
そのため、クエストの中には章あるいはストーリー全体の内容とはリンクしていないようなケースも存在している。

妖怪ウォッチでは「妖怪」が登場する事になるのだが、その妖怪は必ずしも古来から知られている「猫又」や「雪女」と言ったものが登場する訳では無い。
「ヒキコウモリ」など近年の時世に乗っ取ったユニークな妖怪も多数出現する。
もちろんこれらは「ただのダジャレだ」と言ってしまう事も出来るのだが、妖怪が必ずしも古来のものしか存在しないのは不自然とも言えるだろう。
古来の妖怪には古来の時世の中で誕生した理由があるのだ。
そうであれば現代の時世を反映した「引きこもり」という認識・概念が妖怪として表現される事は古来の妖怪の出自と何ら違いは無いのである。
このように人の認識が妖怪となったりするのは、日本の”つくも神”のような発想が根幹と言えるだろう。

ストーリーは群像劇のようになっており、現代、未来、過去を渡り歩いて問題を解決していく事になる。
トゥーン調のグラフィックも相俟ってアニメのような感覚で楽しむ事ができ、フィールド上にいる人物には話しかけるキャラクターや天候が変わる事でセリフが変更される場合もありこだわりが強く感じられる。話しかけた人にはマーキングされるため、聴いていないセリフがある場合にはマップから簡単に把握できるのも地味に嬉しい所だろう。
また、ネタバレになるため多くは記載しないが、本作のラスボスは「百鬼夜行」と関連した存在で「クトゥルフ」を想起させる設定も付与されているのが特徴的だ。

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丁寧さがもう1歩だけ足りていない

ストーリーでは大きなマイナスでは無いが、もう1歩良ければと感じるポイントが存在する。

前述の通りストーリーは群像劇のような形式で進んでいくのだが、未来編(シャドウサイド)と過去編(FOREVER FRIENDS)の話が中心になっているため、どうしても現代編のケータやフミと言ったキャラクターの影が薄いと感じざるを得ない。
折角の現代・未来・過去の夢の共演であれば、もう少し現代パートもストーリーに絡めるようにして欲しかった所だ。

キャラクターのリアクションも好みが分かれる所だろう。
本作のキャラクターのリアクションは古風なアニメのようなオーバーリアクションである事が多い。
特に序盤ではオーバーリアクションをオーバーリアクションで返すようなオーバーリアクションの応酬で、くどいようにも感じる事がある。
もう少しメリハリを付けても良かったのではないかと思える。
中盤頃からは少し落ち着いて来るが、序盤のノリは好みが分かれるように感じる所だ。

移動中などに画面左上でテキストのみの会話が行われるケースもあるのだが、これは少し不親切だ。
会話が行われるのは移動中などであるためテキストを読んでいる余裕が無いし、立ち止まってテキストを読んでいるようでは移動中に表示される意味が無く本末転倒だ。
本作では一応、移動をオートにする事が出来るのだが、その機能にしても常に使用したい訳でない。
ここはやはりボイスによってセリフを喋って聴かせて欲しかった所だろう。

フィールドの道端にはアイテムが落ちているのだが、「フランスパン」や「干物」と言ったものまで当たり前のように落ちているのは余りにも古風と言わざるを得ない。
「なんでパンが道に落ちてるねん」などのツッコミ待ちなのだろうが、筆者も思わず十数年くらいタイムスリップでもしたかのように感じる設計だ。
この辺りはあくまでも「ゲーム」あるいは「ギャグ」であり、「世界観」を重視し過ぎていないと言う考えなのだろう。

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サブクエストも悪くない

本作ではメインストーリーとは関係の無いサブクエストに該当するものも存在する。
これらのクエストも基本的には特定の妖怪をフィーチャーしたものとなっており、クリアするまでのシーケンスはメインクエストと同様だ。
中には「ゲゲゲの鬼太郎」とコラボしたクエストも用意されている。

ネタバレとなるため多くは語らないが、筆者が特に気に入ったサブクエストは上図の左の洞潔のクエストだ。
エスト進行の演出も素晴らしく、非常に完成度の高いクエストだと言える。
もしも本作をプレイするのであれば是非とも、このクエストをクリアしてみて頂きたい。

 

システム

妖怪ウォッチ4におけるシステム面に関する内容を記載する。

 

バトル

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こだわり満載のバトルパート

妖怪ウォッチ4のバトルシステムはこだわりが満載だ。

バトル中にはケータを始めとした人間を操作する事はもちろん、ジバニャンなどの仲間にする事ができる妖怪は全て操作できるのは素晴らしいポイントだ。
人間キャラクターは6人、妖怪は約100体ほど存在している。
妖怪の総数は過去作と比較すると大きく減っているためシリーズファンには悲しいポイントかも知れないが、登場する妖怪に関しては全て直感的なアクションRPG的操作をする事が出来るようになっており何にも代えがたい喜びだろう。
なお、戦闘中以外では任意の人間キャラクターを操作し、好きな妖怪を一緒に連れて歩ける点も嬉しい要素だ。

妖怪には「ロール」のような概念が存在しており、アタッカー、ヒーラー、タンク、シューターに分類される。
また、「性格」が8種類存在しており、妖怪の性格によって行動パターンに違いが出て来るようだ。
妖怪それぞれに役割があったり、性格が設定されていたりと一人一人に個性を感じさせてくれるのは凄く嬉しいポイントではある。
とは言えゲームプレイ中のその役割はやや曖昧に感じた。
特に気になるのは「AIがロールに沿った行動を行ってくれていない」ように感じる点だろう。
(筆者の体感ではあるが)特にAIにヒーラーキャラクターをお願いしても基本的にお構いなしに最前線で敵を殴りに行ってしまうし、タンクも積極的にヘイトを奪うように行動しているとは感じにくい。
性格によって行動パターンに違いが出るとの事なので性格によってはロールにマッチした行動をしてくれるのかも知れないが、プレイした限りでは「全員アタッカーかな?」と感じる立ち回りをしている場面の方が多く思えた。
そのため、筆者は妖怪のロールを考えて編成するよりも、自身が回復役に徹してサポートする立ち回りをした方が安定した戦いができるように感じる事が多かったのだ。
また、戦闘中は操作するキャラクターを自由に切り替える事が可能であるため、「体力が減っていればヒーラーに操作変更」「ヘイトがヒーラーに向かっていればタンクに操作変更」など状況に応じて操作キャラクターを変えるのも良いかも知れないが、それすなわち「全ロールを一人で請け負う」ことに他ならないため手元が忙しいプレイにはなるだろう。

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関係性が相反した「通常攻撃」「スキル」「YP」

バトルはこだわりを魅せるが、そのシステムの各要素の関係性はシナジーが生まれているとは言えない。

人間や妖怪は妖気パワー(YP)を消費して通常攻撃やスキルを発動する事になる。
スキルは攻撃や補助、回復などが存在しており、一度使用するとチャージが完了するまでは再使用する事が出来ないし、チャージが完了したとしてもYPが足りなければ使用する事が出来ないのだ。
YPの回復手段は人間と妖怪で異なる。
妖怪はYPが時間と共に回復する(そのためか妖怪は通常攻撃ではYP消費無し)。
人間の場合には上図のように敵から妖気を吸い取らなければYPは回復しない。
つまり「通常攻撃」と「スキル」と「YP」は同質の競合した性質になってしまっているのだ。
これを3つに分解して詳細に説明していこう。

【その1.攻撃中はYPが回復できず、YP回復中は攻撃ができない】
これは人間キャラクターのみの話となる。
上図のようにYPを吸い取っている最中には攻撃やスキル発動と言った行動は当然ながら行えない。
つまり、「攻撃 / スキル行動」と「YP回復行動」は「片方を実行すると、もう片方は行えない」という競合した性質の行動と言えるだろう。
そのため、戦闘中は「攻撃 / スキル⇒YP回復⇒攻撃 / スキル⇒…」と言った一連のサイクルにならざるを得ずゲームプレイ(バトル)が間延びしてしまうのだ。
このような競合した性質を持たせる場合には「攻撃できないリスクを冒して、YPを回復する」と言う「リスクとリターン(かけ引き)」の構造を作るべきだったように思う。
例えば、「YPは攻撃やスキル発動とは全く異なる性質の行動に使用する」などの使い方の工夫によって輝いたように思える。

【その2.通常攻撃と攻撃用スキルでは役割が被っている。】
こちらは攻撃系スキルのみの話となるが、これはわかりやすいポイントだろう。
通常攻撃も攻撃用スキルも共にYPを消費するにも関わらず、全く同じ事をしてしまっているのだ。
「スキルの方が強い」「スキルの方が当てやすい」「スキルにはダメージ+追加効果がある」などの差別化はあるが、それは正確には差別化では無く「通常攻撃の上位互換」だ。
これでは通常攻撃の存在意義を自らの手で無くしてしまっている。
妖怪であれば通常攻撃でYPを消費する事は無いが、それならば更に通常攻撃の価値が下がると言って良いだろう(スキル発動の”つなぎ”でしかないと言うこと)。
このような同質の関係の要素を盛り込むのは余り良いとは言えない。
スキルはあくまでも「通常攻撃では得られないリターン」を得るべきであり、通常攻撃もまた「スキルには無いメリット」があるべきだろう。

【その3.YPとスキルのチャージでは役割が被っている。】
これも想像しやすいポイントと言える。
スキルはYPが足りなければ発動できないが、それだけでなく再発動までのチャージ時間が経過していなくても発動できない。
どちらも「スキルを発動するための条件」であると言う役割が被ってしまっているのだ。
YPさえあればガンガン発動できる or チャージ時間完了まで再発動不可の片方で十分だったように思えてならない。
または根本的に「通常攻撃する事でYPがチャージされ、スキルが発動可能となる」といった共生関係・依存関係の構図に変更することで、プレイヤーの行動に無駄が生まれにくいエレガントな設計であったように思える。
共生関係・依存関係の構図にする事で「その2.」で述べた同質の関係とそれによる問題も解消されるため一石二鳥とも言えるだろう。

以上の3点を述べたが、もちろんこれらはあくまでも筆者の考えであり、ここで述べた筆者の提案を入れ込んでも楽しさが向上する保証は無いし、入れ込もうとすれば世界観にマッチするような説得力ある設定を新たに捻り出さなければならないと言う問題もある。
しかし、このようにバトル全体へのこだわりは感じられるものの、既存の世界設定にゲームシステムが引っ張られ過ぎているのか、要素1つ1つの関係性はややグチャグチャしているのだ。
良く言えば「易しく、おおらか」な作りだが、悪く言えば「用意してあるだけでシナジーが無く、やや雑」だと言えるだろう。

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人間や妖怪は強化ができる

本作では人間キャラクターや妖怪を個別に強化する事が可能だ。

人間キャラクターはそれぞれに攻撃が得意であったり、補助が得意であったり、回復が得意であったりと特性が異なる。
この人間キャラクター達はパーク的なスキルツリーの取得によってバトル中に使用できる新たなスキルや能力値の向上などを行う事が可能だ。
自分好みの強化を行っていったり、キャラクター性に合った強化を行うと良いだろう。

妖怪に関しても個別に強化が可能となっている。
アイテムを消費する必要があるが、HPや攻撃力などを一定量まで上昇させる事ができる。
妖怪は人間キャラクターと異なり「ランク」が存在しており、ランクの高い強力な妖怪の方が基本的には強いのだが、この強化を行う事によって自分の好きな妖怪も活躍可能な能力値にする事も無理ではない。
もちろん、高ランク妖怪を強化すればもっと強くなるが、必要なアイテムが異なるため簡単に強化できると言う訳では無い作りだ。

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妖怪の魂を使用して妖怪をスカウト

予め記載しておくが、「魂」は『こん』であり『たま』と読んではいけない。いいね?

魂とは妖怪を倒した際に確率で入手可能なアイテムだと思って貰えば良いだろう。
魂には「白魂」「赤魂」「金魂」が存在しており、これらを使用する事によって妖怪を仲間にしていく事ができるシステムとなっている。

また、これらのアイテムから前述した妖怪の強化や装備品の作成・強化ができるため、妖怪を仲間にした後であっても使用用途は多い。
しかし、装備品の作成と強化は実行する毎にアニメーションのカットインが差し込まれるためテンポが良くないのは少々気になるポイントだ。
人間キャラクターや妖怪全員分を作成しようと思うとかなり邪魔に思える仕様となっている。

 

探索

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フィールドには妖怪がはびこっている事も

フィールドには妖怪がはびこっている場合がある。
妖怪を探知して探すと隠れている妖怪を発見できるのだ。
発見した妖怪はアイテムをくれたり、バトルになったりする。
そう。妖怪は常に人々の周囲にいる事をゲームプレイ中のストーリーテリングとして伝えているのだ。

フィールドには昼や夜と言った時間の概念も存在しており、ベッドやベンチで休憩する事で好きな時間帯に変更する事も可能となっている。
昼夜は見た目やBGMこそ変化が伴うものの、ゲームプレイとしては大きな変化は無いものとなっている。
とは言え、真夜中に出歩いているのは「少しイケナイことをしている感」を出す良い演出だ。

ストーリーの項で前述しているがフィールド上にはアイテムが落ちている。
ポップする場所は決まっているが、落ちているアイテム自体はランダムのようだ。
回復アイテムである事が多いため、ありがたく頂いておこう。

こちらもストーリーの項で少しだけ触れているが、本作では目的地にオートで走行してくれるシステムが存在する。
エストに目的地が存在していれば、十字キーの上を押す事でオートでそこまで走ってくれるのだ。
非常に便利ではあるが、稀にオブジェクトや地形に引っ掛かる事もあるため慢心はいけない。

フィールドの探索中に気になるポイントがあるとすれば、ダッシュとジャンプが同じボタンで長押しか単押しの違いしか無い所だろう。
ジャンプしないといけない場所などはほとんど存在しないため、マイナスな要素とまではならないが少々不便に思えるかも知れない。

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ファストトラベルは存在するが、利便性は良くない

本作ではファストトラベルのようなシステムが用意されているが、その使い勝手はレガシーだ。

まず、不便なのはファストトラベルのシステムはシナリオが進んでから解禁されるため、特定のポイントをファストトラベル可能な状態にするには既に歩き回ったフィールドを再び訪問して該当するポイントに行かなくてはいけない事だろう。
わざわざ感が強く面倒に思える。

また、ファストトラベルはいつでもどこでも出来るのではなく、できるポイントまで行く事でファストトラベルが可能になる。これはかなり古臭いシステムだ。
マップが今いるフィールドしか表示されない事もファストトラベルの使い勝手を落としている。

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ミツマタマーク探し」や「トレジャー写真」と言ったやり込み要素

やり込み要素の側面が強い「ミツマタマーク探し」「トレジャー写真」と言った探索要素も存在する。

ミツマタマーク探し」は見つける際にはある程度の場所がわかるテキストのヒントが用意されており、それを基にしてマークを探す事になる。
しかし、中には「地面にある丸いもの」など丸いものが何かはピンと来ても場所が具体的に特定できないフワフワし過ぎているものがあるのは気になる所だ。
このような場合、結局はフィールドをブルートフォースアタック的に調べる必要が出てきてしまい面倒と言わざるを得ない。

「トレジャー写真」は「ミツマタマーク探し」と似ているが、テキストのヒントでは無く絵や写真を手掛かりに隠されたアイテムを見つけるものだ。
視覚的なヒントであるため、こちらの方がより素直な内容と言えるだろう。
 

グラフィック

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最高に魅力的な日本の街並み

様々なこだわりが感じられる妖怪ウォッチ4だが、その中でも筆者が最も素晴らしいと感じたものがあるとすれば、それはフィールドだろう。
フィールドは大きく分類して現代、未来、過去、妖魔界が存在しているが、特に人間たちの暮らしている現代や未来、過去のロケーションは素晴らしいの一言だ。
現代や未来ではモダンな街並み、過去では昭和の雰囲気が漂う古い街並みが再現されており、どこか特定の土地では無いが非常に日本的な都市が再現されている。
他作品の話で恐縮だが、筆者は現代的な建物が並ぶフィールドをキャラクターが歩く様子にカスタムロボロックマンエグゼと言った作品をふと思い出し懐かしくも思えた。

フィールドはエリアで区切られており、エリアは広すぎず狭すぎずといった所だろう。
未来編のフィールドが最も充実しているため見応えがあり、現代や過去でも同程度のエリアが用意されていると嬉しかったのが正直な所だ。

また、本作では時間帯によって景色も変わってくる。
特に現代や未来における夕焼けの郷愁感は素晴らしい完成度だ。
本作の映像では被写界深度表現により遠近感が表現されているが、更に熱による光の屈折から生じるボヤケ感もあり「夏の暑さ」も感じさせてくれる演出もしているように見える。

気になるポイントがあるとすれば、カメラのズームイン/アウトが欲しかったと言う点だろう。もっと自由なカメラ操作ができれば更にスクリーンショットが捗るだけに残念だ。
しかし、全体的なモデリングやテクスチャー…特に建物などは若干甘く感じられるためズームイン/アウトを行うと粗が目立ってしまうかも知れない。

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アニメーション・リアクションもこだわりが強い

本作ではキャラクターのアニメーションやリアクションの各種モーションが個別に用意されており、こちらもこだわりが感じられる。
歩行、走行、待機モーションなどはもちろんだが、滑り台など細かなポイントでも個別のモーションが用意されている。
ゲームプレイ自体には影響しない地味な要素とも言えるが、キャラクターが世界に存在している感を強くする事ができる重要な要素だ。

走行中に反転するとスライディングのようなモーションが発生する。
進行方向が傾斜であった場合には傾斜方向に顔が向く(上り坂なら上向き気味に、逆も然り)。
室内では(専用モーションは無いが)玄関で靴を履いたり脱いだりするうえ、地味ながら玄関から室内に入った位置によって脱いだ靴が置かれるポイントが変わる。
これらは非常に細かいポイントながらこだわっているのがハッキリと伝わるものとなっている。

他にも天候でキャラクターの恰好が変更されたりもする。
プレイヤーキャラクターに関しては自転車に乗る都合からかレインコートを着用する。
その他のNPCの人間キャラクターは傘を差し、雨天用のセリフに変更される。

 

サウンド

BGMはメロディが強く、耳に残る良い曲と言って良いだろう。
また、一部フィールドではエリア毎にアレンジが変更された曲が使用され、エリア切り替わり時に極力自然にBGMが切り替わるようなインタラクティブミュージック的な使われ方がされているなど聴いていて思わず嬉しくなるポイントだ。
筆者のお気に入りの曲は

アレンジ違いでシームレスな切り替わりが行われるフィールド曲「龍見川端」「さくらぎヒルズ」

昭和を思わせるメロディ「さくら元町」

妖怪感の強いやや古めのメロディが印象的な「vs ドタバタ妖怪」

展開と共に非常にカッコいい「最終決戦」

これらの作中のBGMは物語が進むとゲーム内アプリと言う形で曲が聴けるようになるので非常にありがたい。

本作における演技は抑揚が強めである事も特徴だろう。
特に現代編のキャラクターは抑揚が強めであり、未来編のキャラクターはターゲット層を比較的高くしているように思われ抑揚が抑え気味となっている。

 

総評

妖怪ウォッチ4は様々なこだわりが感じられる一作だ。

シリーズのオールスターであり集大成とも言えるストーリー。
人間も妖怪も操作できるゲームプレイ。
ノスタルジーが感じられる日本の街並みを再現したフィールド。
穏やかなフィールド曲や妖怪感溢れる曲などBGMも悪くない。

影の薄い現代編やバランスが歪なバトルは勿体ないように思えるが、足を引っ張る大きなマイナスだとは思えない。
シリーズを知っているプレイヤーの方が楽しめる事は間違いないが、シリーズ初心者でも問題なく楽しむ事ができるようになっている。

 

外部記事

フル3DのアクションRPGに進化した『妖怪ウォッチ4』開発者インタビュー - YouTube

【レビュー】Starlink : Battle for Atlas

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長所は短所

Starlink : Battle for Atlas(以下、スターリンク)はUBISOFTから発売されたトイと連動したゲームプレイが可能なゲームだ。

筆者は2017年のE3でお披露目された際に観た宇宙戦闘の良さそうな手触りとユニークなトイが面白く感じた。
そして2018年のE3ではなんと任天堂の「スターフォックス」とのコラボが発表され、ますます楽しみな1作となったのだ。

今回はスターリンクのレビューを行っていきたい。

 

 

ストーリー

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描写が物足りないストーリー

スターリンクは宇宙を舞台にしたSFだ。
主人公は「スターリンク・イニシアティブ」と呼ばれる主に地球出身者で構成される集団である。
彼らがアトラス星系と呼ばれる領域に来た時、スターリンクの主柱であるセントグランドと言う人物がレギオンと呼ばれる悪のエイリアン集団によって誘拐される。
このセントグランドを救出する事こそが本作におけるストーリーの導入だ。

ストーリーは一般的に用いられる事が多い「マイナス」から展開する内容だ。
マイナスとは何かを失う事に等しいが、本作においてそれはリーダーであるセントグランドだったわけだ。
しかし、(ゲーム開始時点で)プレイヤーはセントグランドの事を知らないため、この設定がプレイヤーの動機付けになっているとは言い難い。
ゲームを進めていきサブシナリオをクリアしていくとスターリンクのメンバー達とセントグランドとの邂逅が描かれる。
しかし、それに関しても「これまでのあらすじ」のようにかなりかいつまんで説明される程度であり、スターリンクのメンバーおよびセントグランドに対して感情移入ができるとは言い難いのが正直な所だ。

本作にはストーリーこそ存在しているものの、「ストーリーを目的にゲームプレイをする」ことは推奨されないだろう。
また、適度に寄り道をしてもプレイ時間にして20時間程度でクリアできるものであり、じっくりと楽しむと言うよりも、サックリと気分転換程度に楽しむと言った方が良いだろう。

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量産された基地

本作には各惑星の各所に基地のような施設が存在する。
基地は最初の段階ではレギオンに占拠されており、敵を排除する事で味方のものにする事ができる。
また基地にはパーツが存在しており、それを入手する事で惑星の特色や文化、歴史を教えてくれるセリフが流れる…と言うプレイシーケンスになっている。

この基地は各惑星に数多く配置されているのだが、その質は残念と言わざるを得ない。
最初に残念に感じるのは「基地の構造」だ。
惑星には灼熱の惑星もあれば、凍てついた惑星もある。砂漠の惑星もあるし、植生が豊かな惑星もあるのだ。
であるにも関わらず、基地の構造は数パターンしか無いうえに全ての惑星で共通の構造でストーリーテリングとして説得力が無い。
最低限、惑星単位では全く異なる特徴を持った基地であって欲しかった所だ。
次は「文化」だ。
上述の通り、セリフでは惑星の様々な歴史や文化が垣間見えるのだが、ゲームプレイをしている上ではそのような文化が存在する / 存在したようには全く感じられない。
例えば、一見すると良くわからない建造物も教えられた文化や歴史を参照する事でどのような役割を持った建造物だったのかが理解できる…と言ったゲームプレイによってリンクするストーリーテリングが欲しかった所だ。
ユニークで美しい惑星に緻密な設定を用意しているにも関わらず、それが上っ面だけで終わってしまっているのは何とも勿体ない。

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微妙に気になるローカライズの質

予め記載するが、ここで記載するローカライズミスはアップデート「クリムゾンムーン」の配信後に修正が行われているようだ。

本作のローカライズはゲームプレイに影響を及ぼすほどの問題ないのだが、「誤翻訳」や「誤表記」、「表記揺れ」が散見された。 
特に上図のような誤表記や表記揺れと言ったミスがあると言う事は「全てのテキストを手動打ち込みによって実装している」と推察されるため、ヒューマンエラーによって発生した問題では無いだろうか。
当たり前の事だが、装備品など量産されやすい要素に対してマニュアルな実装を行うとヒューマンエラーが発生する可能性が高まる。
参照先パラメーターから文言を機械的に選定できるシステムなど、間違いが起こりえない実装を検討して欲しかった所だ。

 

システム

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宇宙を舞台にしたRPGシューター

スターリンクは簡単に言ってしまえば宇宙を舞台にしたオープンワールド型のRPGシューターだ。
機体や武器にはスロットが用意されており、そこにパーツを埋め込むことで機体を強化することが出来る。
またレベルも存在しており、こちらは機体や武器を使い込む事でパイロットのレベルが上昇する。
パイロットのレベルが上昇するとスキルツリーライクな形式でスキルを習得していく事になる。

バトルに関しては大きく分けて宇宙での戦闘と地上での戦闘があり、宇宙での戦闘は上図の左を参照して貰えると良いだろう。
宇宙での戦闘は360度全ての方向に移動する事が可能だ。
敵もあらゆる方向に逃げるため追いかけにくいが、そんな場合にはGUI上に表示される矢印を参考にするのはもちろん、敵機のエンジンには残光があるため逃げる敵機を追いかける際の重要な映像表現となっている。

対して、地上戦は一般的な人間を操作するTPSとほとんど同じ操作感になる。
地上を低空飛行する航空機ような見た目ではあるものの、上方向に移動する事はなくなり前後左右に動いて攻撃したり回避したりする事になる。

宇宙でも地上でも特殊な操作を要求されることは無く、またエイムが少々甘くても敵機へ当ててくれるため、操作感としては比較的簡単な部類のTPSを想像して貰えればいいだろう。
ただし、宇宙戦闘は前述の通り360度で展開するため追いかける方法は少しだけ慣れが必要かも知れない。

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シームレスに惑星に突入できるのは嬉しい

スターリンクオープンワールド型のRPGシューターだが、その中でも大きな魅力となっているのは「宇宙から惑星への突入がシームレス」であると言う点だ。
宇宙から見えているポイントにまるでそのまま突入できているかのようなスムーズさは男心を鷲掴みだ。

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ユニークなトイとの連動

スターリンクはトイと連動したゲームプレイができるゲームだ。
トイと連動するゲームと言えばスカイランダーズなどが有名だろう。
本作でユニークなのは「組み立てたマシンの状態がリアルタイムにゲームとリンクする」と言う点だ。
機体本体やウィングに武装を取り付けたり外したりすれば、それがそのままゲーム内にリアルタイムに反映されるのだ。
なお、本作ではトイが無くともゲームプレイは問題なく可能である。

トイは付属されている専用のコントローラーにマウントする事で認識される。
筆者はNintendo Switch版を購入したためコントローラーは上図の右のような形となる。
トイ自体の完成度は高く非常にカッコいい。ソフトの値段を考慮するとかなり破格とも言える品質と言える。
だが、この画像を見ると「重くないか?」と不安に思う事だろう。
ところがぎっちょん、重量はかなり軽量であり数時間通してプレイしても全く気になる事は無かった。
筆者がプレイした限りで問題が発生したのはトイの部分では無くJoy-conだ。
Nintendo Switch版でトイと連動したプレイをする場合にはJoy-conでプレイする事になるのだが、筆者はJoy-conでプレイする事が久しぶりであった事もありBボタンを押すときに物理的な配置上どうしても右スティックに触れてしまう事が多かった。
これは本作が抱える問題点では無いため強く言うつもりは無いが、右スティックで機体の向きを変更して照準を合わせるためプレイしていてストレスがある。

また、機体に装備する武器を追加するにはトイを購入するか、DLCとして購入しなければならない。
プレイする日によっては未購入の装備が時間制限付きでプレイアブルになるため、それに頼る事も無理ではない。
どちらにするかは自身のプレイスタイルと相談するべきだろう。

この「トイと連動する」と言う要素自体に気になる点があるとすれば、その「ワンオフ性」だろう。
確かにトイとしての質もある程度高く、ゲームとしても楽しめる内容にはなっているものの、本作のゲームが「トイ(物理媒体)である」と言う必要性はそこまで高いとは思えない。
最初こそ目新しさからトイとのシームレスな連携は面白く感じるかも知れないが、それが長続きするものでは無いことは火を見るよりも明らかだ。
amiibo」のように多くのソフトと連動する事を想定していたり、既存のキャラクターの造形物と言うファングッズであったり、そのように売り出すのであれば優位的な需要はあるように思えるが、本作のトイは本作だけのためのトイなのだ。
それは魅力でもあり欠点だ。

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機体や武器を強化する

スターリンクではRPG要素として改造パーツを利用した機体性能の向上を行う事が出来る。
機体や武器にはスロットが用意されており、そこに改造パーツをはめ込む事で強化が行るものだ。
改造パーツには様々な種類があり、例えば機体を強化するものであれば最高速度を向上させるもの、耐久性能を向上させるものなどがある。
このパーツは性能の上昇値がランダムという訳では無く、ランクが設定されており、そのランク毎に上昇するパラメータが全て固定値で設定されている。
また、改造パーツは同種のものを3つ合わせる事によって1ランク上位の改造パーツにする事が出来るようになる。
これによって低ランクパーツであっても良質な高ランクのパーツに変更していく事が可能になっている。

このRPG要素自体は悪くは無いのだが、パーツ自体の価値に少し問題がある。
パーツは敵からドロップするか、ショップのような所で購入する事で入手が出来るのだが、敵からドロップするパーツも結局はショップに並んでいるものと全く一緒なのだ。
これでは「敵を倒す意味」がプレイを続けていくうちにどんどん下がるのは必然だ。
また、ショップではゲーム内マネーで購入する事になるが、そのゲーム内マネーも使い切れないほどに入手出来てしまう。そのため、ショップでパーツを入手するのは実質無料のようなものなのだ。
せめて「敵からしかドロップしないパーツ」や「敵からドロップしたパーツの性能はパラメータの上昇値がランダムになる」などハックアンドスラッシュ的なプレイサイクルの方向性を強化し、「敵を倒すこと」「パーツを入手すること」にもう少し付加価値を付けて欲しかった所だ。

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勿体ない探索要素の完成度

スターリンクオープンワールド型のゲームであり、訪れる事になる各惑星や宇宙空間では探索要素が存在する。
各惑星では上図の左のようなちょっとしたパズルがあったり、上図の中央は敵の拠点を破壊したり、上図の右は惑星の原生生物をスキャンして調査をしたりしている所だ。
その他にも宇宙空間には悪のエイリアン軍団やならず者集団の旗艦があったりする。

このように惑星や宇宙空間の探索が行えるのだが、これに関しても物足りなさが残る。
まず、パズルに関してだ。
難易度自体はそこまで高いものでは無いのだが、リワードはショップでも売っている改造パーツが入手できるだけであり、ハッキリ言ってそこまでやる程の価値があるとは言い難い。

そして、惑星に展開している敵に関してはボリューム不足だ。
敵は各惑星に展開しているのだが、どの惑星でも出現する敵はほとんど同じなのだ。
違いがあるとすれば属性や敵レベル程度で残念と言わざるを得ない。
砂漠には砂漠の、寒冷地には寒冷地の専用の敵が出てきて欲しい所だ。

最後に紹介する原生生物に関しては存在感が非常に薄い。
最初のうちは興味を持って近付くのだが、「スキャンして経験値を貰う」程度しかインタラクションが無く、ゲームプレイに及ぼす影響が余りにも無いため次第に無視してしまう事が大半になるのだ。
同種の原生生物を3回スキャンをすると、その生物に関する情報が手に入るのだが、それに関してもストーリーの項で述べた「基地」と同様に「設定されているだけ」であり、ストーリーテリングやゲームプレイでその設定が活かされることは無い。
設定が活かされており、なおかつその設定を活かして「共闘できる」あるいは「飼育できる」など多くのインタラクションがあって欲しかった所だ。

また、ストーリーの項で少しだけ記載しているが各惑星では味方の拠点を増やしていく事が可能で、味方拠点ではランダム生成されたクエストを受注する事ができる。
しかし、これも作り込みに欠ける。
エストは拠点の種類によって傾向はあるものの、その全てが「敵を倒してくれ」や「アイテムを持ってきてくれ」と言った類似した内容なのだ。
一応、温度の高い惑星では冷却機の調達をお願いされるなどの変化は見て取れるのだが、各惑星の設定を活かしたようなクエストが用意されていると言う事は無い。
そのため、持ってくるアイテムやリアクションが違うだけで結局は全ての惑星でやってる事に全く違いが無い。
各惑星や原生生物に設定された内容が活かされるようなクエストが用意されていて欲しかった所だ。

本作はオープンワールドを採用しているが、それを活かし切れているとは言い難い。
敵や味方、そしてそれぞれの拠点が配置されているものの、それは本当に「配置されているだけ」なのだ。
これら全ての要素はプレイに慣れていってしまえば目新しさも無くなり、次第に無視される存在となっていく。
更に宇宙空間や各惑星には「ランドマーク」とも言えるような特徴的な土地やオブジェクトも無く、宇宙でも惑星でもほとんど何も無いような空間がただ広がっている。
確かに宇宙空間をSF色のあるマシンで駆け抜けるだけでもロマンがあり楽しい気持ちはあるが、ゲームとしてもう一歩踏み込んだ構造を検討して欲しかった所だ。

 

スターフォックス

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スターフォックス

スターリンクNintendo Switch版では任天堂とのコラボによってスターフォックスが登場する。
スターリンク独自のアレンジはされているものの、アーウィンのカッコよさは健在だ。スターフォックスには専用のストーリーも用意されており、スターウルフを追いかけてアトラス星系までやって来たのだ。
その際に偶然にスターリンク・イニシアティブのメンバーと合流する事になったのだ。
また、とあるシーンでは原作にある印象的なセリフをフォックスが言っており、そのセリフは本来は別のキャラ常々言っていたセリフでもあるため、スターフォックスシリーズ自体との時系列的な繋がりも感じさせてくれる。
ゲームプレイ中では特定の攻撃を行うとBGMがスターフォックスのものが流れる点も嬉しいポイントだ。

本編のメインストーリーにも若干の介入が成されているのだが、これに関しては取って付けた感が否めない。
逆にスターフォックス専用ストーリーではスターリンク・イニシアティブ側がオマケ的な立場になっており、もう少しだけ密なやり取りをして欲しい所だ。

マイナスポイントとするつもりは無いが、スターウルフのウルフェンに搭乗できない点も少し残念だろう。
筆者としてはアーウィンよりもX-ウィングのようなデザインの「ウルフェン」の方が好みのため、DLCでも良いので操縦できるようにして欲しかった。

ハッキリと言ってしまうが、本作は「Nintendo Switch版以外を買うのはどうかしている選択」だろう。

 

クリムゾンムーン

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クリムゾンムーン

クリムゾンムーンは無料アップデートによって追加された新要素だ。
新しい要素にはレースやウェーブ形式のバトルを行うものや、賞金首を捕まえるもの、そしてストーリーの補完を行うものが追加されている。

レースでは通常とは若干異なる操作系となり、マリオカートのようなドリフトとブーストが行えるようになる。
通常プレイとはやや異なる操作系を強いられるのは困ったものだが、レース自体はしっかりとレースになっている。

バトルはコロシアムのような専用フィールド内で次々と現れる敵を倒すもので、賞金首の捕縛は各地に逃げている特定の敵を捕まえて監獄に引き渡す仕事だ。
どちらもプレイとしては比較的オーソドックと言える内容だ。

ストーリーの補完できる要素も追加されており、作中の敵がどうして太古に一度滅んだのかを説明しているが、あくまでもオマケ程度だと思った方が良いだろう。

 

グラフィック

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アトラス星系は美しいが物足りない

スターリンクの各惑星は砂漠だったりユニークな植生だったりと非常に美しく面白い。

しかし、各惑星を代表するようなユニークなランドマークが無いのは非常に勿体ないポイントと言えるだろう。
美しくはあるのだが、どこを見渡しても似たような景色であり「絶景」とまでは言い難い。実際に存在する土地では無く、架空のSF作品の空間であれば創造性に富んだ魅力的なランドマークや空間を用意して欲しい所だ。

本作にはフォトモードが搭載されている点は嬉しいポイントだろう。
しかし、これに関しては即時性が低いため、「ここを撮りたい!」と言う咄嗟のタイミングでは思うようにはいかない。
特に戦闘中のカッコいいシーンを撮ろうと思うとかなりの困難があるのは痒い所に手が届いていない。

 

サウンド

スターリンクサウンドは基本的に状況に合わせたBGMが流れるインタラクティブミュージックのような形式を採用している。
そのため、(強制的に)耳に残るようなBGMは少ない。
そんな中でも筆者が特に気に入ったと言えるのは「プライム」と呼ばれる大型ボスに勝利した際のBGMだろうか。SF感の強い1曲だ。

 

総評

「トイとのシームレスな連動」をベースとしたStarlink : Battle for Atlasは、間口の広いRPGシューターであり、またトイ自体の完成度も良い作品だ。
宇宙空間と各惑星を自由に、そしてシームレスに駆け回るのはロマンがあり楽しい要素と言えるだろう。
また、同梱されているトイの存在とその品質を考えれば通常のフルプライス程度の値段である事は驚きしかないのも事実だ。

だが、ゲームプレイの質が悪いとは言わないが、同年代の標準的なオープンワールド型のゲームと比較するとストーリーでもシステムでも、そして質でも量でも見劣りすると言わざるを得ない。
特に「設定は存在するが活かされていない」ことが多いのは勿体ない要素だ。

ボリュームに関してはプレイ時間にして20時間程度であり、飽きてしまう前にクリアする事ができるため、ある意味で意図した設計なのかも知れない。
これに関しては賛否両論あるだろうが、水増ししたような冗長なプレイを強要せずに簡潔にまとめ上げている点は評価点としても良いだろう。

そして本作のトイはスターリンクと言うソフトとしか連動できない。
数年後には比較的質の良いトイだけが永遠に手元に残ってしまう可能性もあるのだ。

 

外部記事

『Starlink: Battle for Atlas』ディレクターインタビュー―スイッチ版独占『スターフォックス』アーウィンの詳細も合わせてお届け【E3 2018】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【レビュー】聖剣伝説3

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子午線の子供達

聖剣伝説3は学生時代の筆者が長らくやりたくてたまらなかったゲームであった。
聖剣伝説2をプレイし、人生で初めて「ハマった」と言えるほどに好きになったゲームの続編に当たるのだから無理は無いだろう。
しかし、当時はSFC後期の名作ともなれば中古であっても非常に高価であり、小学生や中学生では簡単に手に入る値段では無かったのだ。
筆者が初めて聖剣伝説3を購入してプレイできたのは高校に入ってからだった。
どんなゲームなのかワクワクしながらゲームを始めた事をよく覚えている。

今回は思い出の強い聖剣伝説3をレビューしていく。
なお、今回のレビューで使用するのは聖剣伝説コレクションに収録されている聖剣伝説3となる。予めご了承願いたい。

 

聖剣伝説コレクション - Switch

聖剣伝説コレクション - Switch

  • 発売日:2017/06/01
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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6人の主人公から3人を選ぶ

本作の最大のセールスポイントは「主人公を選ぶことが出来る」ことだろう。

6人の主人公にうち3人をパーティーメンバーとして選ぶことが可能だが、ストーリーとしては一番最初に選択したキャラクターを中心に展開していく。
残りの2人は言うなれば最初に選んだキャラクターの仲間として登場する形となる。

ストーリーは強大な力を持つ「マナの剣」をめぐった3勢力の争いを描いており、本作の物語は主人公たちとそのいずれかの勢力との因縁が描かれる。
前作では端的に表現して「自然と文明の対立」をストーリー全体の流れでは描いていた。
本作においても大枠ではその構図に違いは無いと言えない事も無いのだが、どちらかと言えば「人類の争いに巻き込まれる自然」と表現した方がしっくりくる内容だ。

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物語の大筋は誰であっても変わらない

ストーリーは導入やキャラクター専用の会話、主人公によりラスボスが変化するなどは存在するものの、全体としての流れ自体は大きく変わる事は無い。
例えば、剣士デュランで開始した場合には全く歯が立たなかった強敵”紅蓮の魔導師”を倒すための旅であり、王女リースであれば占拠された故郷”風の国ローラント”を救うための旅だ。
基本的に大きく違うのはこの物語の導入とラストダンジョン、ラスボスであり、それ以外に関してはほとんど違いは無く、6人存在している主人公を活かし切れているとは言い難い。
このストーリーの淡白さは容量の少ないSFCでメインとなるキャラクターを6人用意した影響かも知れないが、もう少しキャラクター毎のストーリーの違いを強調して欲しいかった所だ。
しかし、決して多くは無いが前述しているキャラクターによりセリフが異なる場面は多少存在している。

ストーリー中にパーティーメンバー同士での絡みなどもほとんど無い点も少々残念に思えるポイントだ。
”パーティーを選択できる”のだが折角パーティーを選択しても特に特別な会話が発生する訳では無いため「想像する余地がある」と言えば聞こえは良いが、想像するにしても材料が少なく物足りない印象を受ける。
キャラクター間の関係性を補完するイベントに関しても用意されていて欲しかったと言えるだろう。

 

システム

聖剣伝説3のシステムについて記載しよう。

 

バトル

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前作とは微妙に異なるバトル

本作のバトルはボタンを押す事によってキャラクターが攻撃モーションを行うものとなっているアクションRPGだ。
大枠としては前作である聖剣伝説2と同じだが、細部には異なる点が多い。

まず、前作では攻撃に関係するゲージが存在していたものの、そのゲージが100%にならずともボタン連打によって(ダメージは激減するが)攻撃を行う事が出来た。
しかし、本作においてはゲージ自体が表示されなくなっており、攻撃から再チャージ完了するまでの期間には攻撃が行えないようになっている。
そのため、前作以上に「ヒット&アウェイ」が重要な戦法・立ち回りとなるように変化している。

また、前作では「必殺技」を発動させるためにはボタン長押しによるチャージが必要であったが、本作ではここにも変更が加えられている。
本作においても前作と同様にチャージが必要な必殺技ゲージが存在するのだが、このゲージをチャージする方法は攻撃のヒット回数に変更されたのだ。
例えば、4回攻撃をヒットさせれば必殺技レベル1が発動可能となる…と言った具合だ。
前作においては通常攻撃を使いたい時には必殺技は出せず、必殺技を出したい時には通常技が出せないと言う同質の機能が競合した状態となっていた。
これが聖剣伝説3においては「通常攻撃を行う事で必殺技が発動できる」と言う直列的な共生関係のあるシステムになった事は非常に良い変更ポイントだ。

良い変更はそれだけでは無い。前作では一般的なRPGと同様にステータスがレベルアップで固定上昇していたが、本作ではレベルアップ時に自分で好きなステータスを1つ追加で上昇させる事が可能になった。
1つのステータスを上げ続ける事は出来ないため、実質的にはステータスの固定上昇と大きく変わりは無いのだが自分で選べる事によって感じる「育て上げた感」は大きく違う。レベルアップさせる事が本作のプレイの楽しみの1つになっているのは間違いないだろう。

しかし、本作では戦闘のバランスは逆に少々悪くなってしまっている。
その主な原因は「反撃確定の敵」の出現だ。
レベル2以上の必殺技や魔法によってダメージを与えると、確定で強烈な反撃を行うボスや一部のザコ敵が多く登場するようになってしまったのだ。
これによって折角の強い必殺技や魔法を覚えたとしても、敵からの反撃があるために使用する事が消極的にならざるを得ない状況になってしまっている。
”強烈”と表現したこの反撃は下手をすれば一撃で全滅するレベルの全体攻撃である場合も多くあり、こちらがいくら強力な必殺技や魔法を放ったとしてもこれでは割に合わない。
そのため、ダメージソースの中心は反撃技が出ない通常攻撃に頼らざるを得ないのだ。
本作では前述の通り主人公を選択する事ができるのだが、魔法攻撃主体のキャラクターではこの影響を特に大きく受けてしまい、中盤以降で活躍する事が困難になってしまっている。
なぜこのようなバランスとなったのか疑問が残る所だ。

疑問に残るポイントはまだある。
前作において問題になりやすかった「(パーティーで行動する事を主眼に置いているにも関わらず)キャラクターが地形に引っ掛かる」「魔法エフェクト中に行動不可」と言った点がそのままにされている点だ。
プレイに支障がある要素であるため改善して欲しい要素ではあるのだが、改善するには容量が不足していたという可能性もある(だから”許す”と言う訳でも無いが)。

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バランスブレイカーとの呼び声高きケヴィン

前述の通り、本作は主人公およびパーティーメンバーを6人の中から3人選択する事が可能だ。

例えばデュランは攻撃力や耐久力において頼もしく、アンジェラは魔法攻撃がメインとなる。
そんな中でもケヴィンはその超火力によりバランスブレイカーと言われる事も多い。
ケヴィンの攻撃は2回攻撃となっており、1回の攻撃で2ヒットさせる事が出来るのが理由の1つだ。
しかし、この特性自体はシーフ系の主人公であるホークアイも同様である。
ケヴィンをバランスブレイカーたらしめている要因は彼が「ウェアウルフ(狼男)」であると言う要素が大きいだろう。
ケヴィンは獣人であり、夜になると戦闘中にウェアウルフに変身する事が可能となる。
ケヴィン自体の攻撃力もそれなりに高いのだが、ウェアウルフとなると更に攻撃力が強化され、前述の2ヒットする攻撃の性質も相まって他の追随を許さない非常に高い火力を誇るキャラクターへと変貌するのだ。

良くも悪くもではあるが、本作は対戦ゲームでは無いためバランスブレイカー的な存在がいたとしてもユーザーに有用ならば、それはそれで楽しめるように思う。

 

リングコマンド

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健在のリングコマンド

本作においてもリングコマンドは健在だ。

リングコマンドではアイテムや魔法と言った要素を視覚的に選択できる。
前作である聖剣伝説2と同様にテキストのみで表現されたアイテムでは無く、アイテムの固有のアイコンが表示される事は非常に嬉しい事だ。
注意点としては前作と同様に独自のシステムであるため、シリーズを初めてプレイすると言うユーザーは慣れるまでは少し戸惑う事もあるかも知れない点だろう。
しかし、視覚的にわかりやすいため重宝する要素となっている。
なお、前作と異なる点としてはシステム系のコマンド(ステータスや装備)はリングコマンドから除外され、Yボタンでシステム画面に遷移するようになっている。

また、本作では「倉庫」と言う要素が追加された。
リングコマンドでは10個のアイテムしかセットできないのだが、倉庫と言うシステムによって持ち切れないアイテムや装備を保管してくれるようになったのだ。
これによって多種多様なアイテムが本作に追加された点は収集癖のあるユーザーからしても嬉しいポイントだ。
特に重宝するのはキャラクターにバフを与える「ウロコ」系のアイテムだろう。
主人公の選択によっては序盤から終盤に至るまでお世話になるアイテムになる事だろう。
敵にデバフを与えるアイテムも存在はするのだが敵からのドロップ品であるため、安定供給させるのはやや難しい。
また、手裏剣を代表に敵にダメージを与えるタイプのアイテムなども複数種類存在している。
このようにバフやデバフなどのアイテムが非常に多く追加されているため、宝箱の中身も前作よりも豪華になっており、宝箱を開ける事が多少なりともワクワクする要素になっている。

 

クラスチェンジ

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最大の醍醐味クラスチェンジ

本作において最も特筆すべき要素は「クラスチェンジ」だ。

クラスチェンジは特定のレベルを超えた際に特定の場所でキャラクターを上位職に変更する事が出来る。
クラスチェンジは光方向と闇方向が存在し、
光方向は回復や味方へのバフなど「味方に効果を発揮する魔法」を習得していく傾向があり、
闇方向は火力向上や敵へのデバフなど「敵に効果を発揮する魔法」を習得していく傾向がある。
クラスチェンジする事で単純にキャラクターが強化される事はもちろん、自分好みのビルドを考える事が出来る点も嬉しい限りだ。

ちなみに筆者の黄金パターンでは、
デュランはアタッカーとタンクとヒーラーを兼ねる「ロード」、
リースはその可愛さに癒されつつ敵にデバフをばら撒く「フェンリルナイト」、
ケヴィンはムーンセイバーを使う凶悪なアタッカーの「デルヴィッシュ」
という構成だ。
筆者が純粋にプレイする場合には毎回このメンバーでばかりプレイしていた。

 

隠しボス

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ブラックラビ

本作には特定の主人公でのみ登場する隠しボス「ブラックラビ」 が存在している。
体力が多く、また体力が減った際に凶悪な連続魔法を放ってくるため準備を整えて倒したい所だ。

なお、ブラックラビは専用のドロップアイテムがあるため入手しておきたい。
倒してもドロップしないケースもありリセットが必要になってきてしまうが、聖剣伝説コレクションなどであればクイックセーブ/クイックロードが可能であるため、それを利用するとリセットマラソンは簡単だ。

 

グラフィック

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自然が美しいグラフィック

本作でも美しいドット表現は健在だ。
中でもやはり草木と言った自然の美しさが前面に出ており、聖剣伝説のコンセプト通りの力の注がれ方だ。

また、本作では昼と夜の概念が存在する。
昼は明るく、夜は暗くなるのはもちろんだが、夕方や明け方などもあるため当時では珍しかった時間帯によって変化するフィールドが楽しめるのも本作の魅力だ。

しかし、残念ながらフィールド上の草刈りなどのインタラクションは出来なくなっているため、少々寂しい所はあるかも知れない。

 

サウンド

筆者が言うのもおこがましいが、聖剣伝説3の音楽も史上に残るような名曲たちばかりだ。

前作の”天使の怖れ”のアレンジでもある「Where Angels Fear To Tread」

物語導入のラストで流れる非常に熱い名曲「Meridian Child」

耳に残るノリノリなフィールド曲「Swivel」

山岳地方の少し不気味なフィールド曲「Different Road」

穏やかで夜のような涼しさを感じる「Powell」

リズムが主体の「Rolling Cradle」

シームレスに三段階に変化するラスボス曲「Sacrifice 1~3」

どの曲も是非ともゲームと共に聴いて頂きたい名曲たちばかりだ。

 

総評

聖剣伝説3はストーリーは少々あっさりとしているが、システム面は大幅に強化された続編だ。

パーティーメンバーを選択できる所から始まり、レベルアップ時の上昇ステータスの選択、魅力的なクラスチェンジ、豊富になったアイテムなどゲームプレイ部分で楽しめる部分が多い。
しかしながら、前作でも存在していた「キャラがフィールドに引っ掛かる」などの問題点は基本的にそのまま棚上げされており、簡単に見つかる改善ポイントであるだけに勿体ないと言う他ない。

 

レビューからは脱線してしまうが、聖剣伝説3は2019年のE3にてリメイクが開発中であると発表された。ファンとしては嬉しい限りだ。

 

外部記事

#1 聖剣伝説2では誰も聴いたことがない音楽を!【菊田裕樹】【SEM TALK】 - YouTube

#2 聖剣伝説2、3は企画書がないところから制作がスタート!?【菊田裕樹】【SEM TALK】 - YouTube

『聖剣伝説3』石井浩一氏&田中弘道氏インタビュー。オリジナル版開発者が語る、トライアングルストーリー誕生の経緯やキャラクター制作秘話 - ファミ通.com

【インタビュー】Nintendo Switch「聖剣伝説コレクション」インタビュー - GAME Watch

【レビュー】テイルズ オブ ヴェスペリア

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正義を貫き通す

テイルズ オブ ヴェスペリア(以下、ToV)はテイルズ オブシリーズの本編作品としては10作品目となる記念すべき作品だ。
筆者のテイルズ歴はと言うと「デスティニー」「デスティニー2」「ハーツ」「レディアントマイソロジー」辺りをプレイしたが、全体の歴史からすれば少しかじった程度だ。その点はご了承願いたい。

筆者はToVはタイトル自体は当然ながら知っていたものの、プレイする機会が無く今まで過ごしてきていた。
しかし、テイルズ オブシリーズの中でもファンからの支持が特に厚い作品の1つであるとは知っていたためプレイしたい作品でもあった。
そんな中で、このたびリマスター版が発売されたため購入してプレイしたのだ。

 

テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER -Switch

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【PS4】テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER

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ストーリー

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キャラクターを重視した老若男女楽しめるストーリー

なんといってもテイルズ オブシリーズの作品におけるストーリーの特徴は「キャラクター重視」であると言う事だろう。
緻密で重厚な世界観…哲学的で考察のしがいのある設定…そういう要素からゲームのストーリーを作り、そこにマッチするキャラクターを生み出していく手法もあるだろう。
しかし、テイルズ オブシリーズはその作りとは恐らく逆だ。あくまで筆者の見立てだが。
まず魅力的で特徴的なキャラクター達とその関係性を作り、そしてそこに世界観を乗せているように感じる。
ToVにおいては特に主人公であるユーリを中心に、それと対比するようなキャラクターとしてフレンやディークと言った人物が登場するようになっているのだ。

ToVのストーリーで特徴的なのはキャッチフレーズにもある通り「正義の在り方」がテーマとなっている点だろう。
以下、少々ネタバレを含むため注意願いたい。
主人公であるユーリは「裁けぬ悪に”正義を行使”する」キャラクターだ。
いわば「必殺仕事人」のような存在と言っても良いだろう。
一方で親友であるフレンは対照的で「悪を裁ける世界を作ろうとしている」キャラクターだ。
ヒロインであるエステリーゼもストーリーの中心人物であるのだが、本作のストーリーにおいて最重要と言えるのはユーリとフレンの互いの正義が在り方の違いだろう。
この2人の正義(主張)はどちらも正しく、どちらが悪いとは言えないのだ。
本作の表現(セリフやリアクションなど)はアニメ的ではあるのだが、その物語自体の完成度はしっかりとしており大人から子供まで観る事ができる丁寧な作りと言えるだろう。

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徹底しきれていないコンセプト

しかし、ストーリーにおいて気になる点が無い訳では無い。
物語の序盤~中盤辺りではパーティーメンバーにはそれぞれ自身の目的が設定されているのだが、「結果的に行き着く先が同じだった」と言う展開が少し連続しすぎているように思えた。
例えば、キャラクターAは○○と言う目的があり旅をしており、キャラクターBは××と言う別の目的で旅をしているが、各キャラクターがそれぞれ目指している土地あるいは人物が実は共通の土地/人物だった…と言うのが多いのだ。
確かに”呉越同舟”と言う言葉はあるが、余りにも重なり過ぎている感が否めない。

またネタバレとなるため詳細には伏せるが、終盤の展開に関してもご都合感がありやや勿体なく感じる。
本作の物語のメインテーマは「正義の在り方」であり、裁けぬ悪を裁くユーリと悪を裁ける世の中にしたいフレンの葛藤と対立が主軸となるべきハズだ。
ところが、終盤になり黒幕の正体が明かされる事によって「共通の敵が出てくる」ことになってしまい、その"主軸"がブレて棚上げされてしまっている。
最高の肉に、素晴らしい焼き加減、それを美しい皿の上に乗せた上で、最後にサラダドレッシングをかけてしまったかのようだ。
キャラクターを重視する本作においてはこれで収まりが良いのだろうが、正義の在り方に対する本作なりの「答え」ないし「けじめ」を示して欲しかった肝心の部分であるだけに勿体ない。

2008年の作品であるため強く言うつもりは無いが、3Dモデルの主に動きの面が余り良くない点も気になる所だ。
声優の演技は素晴らしいのだが、「演技とキャラクターとのギャップ」が発生してしまっているのは観ていて気になるポイントだ。キャラクターのフェイシャルモーションやリアクション用モーションが喜怒哀楽+αのパターンだけで構成されており、迫真の演技とマッチしきれていないケースがありギャップが生まれてしまっている。
人気のある作品であるだけに今後のリメイクなどに期待したい所だ。

ユーザーが物語を進行させる上での問題点も少なからず存在する。
ToVでは次に進むべき場所がフィールド上やマップ上に記載が無く、話を忘れてしまうとどうすればいいかわからなくなってしまう。
一応「あらすじ」はシステムから参照する事は出来るのだが、次にどこへ向かうべきなのかの記載は無い事も多く、ストーリーを忘れてしまった場合には致命的な結果になりかねない。
また、ストーリー内のダンジョンではちょっとした謎解きのようなものが用意されているのだが、こちらもややわかりにくいものが多い。
進行が詰まったり、謎解き自体が難しい訳では無いのだが、どこで何をして欲しいのかが伝わりにくくわかりにくい。

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アニメが挿入されるが尺は短い

シリーズではお馴染みとも言えるが、本作では要所において「アニメ」が挿入される。
しかし、要所で入るアニメも尺が短くやや勿体ない。
このようなカットシーンではコントローラーから手を放して没入して観ていられる時間がもっと長いと嬉しい所だ。

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シリーズの醍醐味とも言えるスキット

こちらもシリーズでお馴染みとなっている「スキット」も健在だ。
スキットは紙芝居的な形式でパーティーメンバーが様々な会話を繰り広げる。
様々なタイミングや条件で発生し、「キャラクター間の関係性の補完」や「関係性の進展の表現」に大きく役立っているシステムだ。
会話は全てボイスが付いており、セリフ送りも自動で行ってくれるためテンポが良い。
内容はキャラクター愛が溢れるものが揃っており、これ無くしてテイルズ無しとも言えるだろう。

 

システム

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爽快なバトルシステム

ToVのバトルシステムは「エヴォルドフレックスレンジ・リニアモーションバトルシステム(EFR-LMBS)」と大仰な名称がついているようなのだが、簡潔に言ってしまえば鉄拳やソウルキャリバーのような2.5Dライクな戦闘を想像するのが良いだろう。
基本的には過去のテイルズ オブシリーズのような2D格闘ゲームと似た前進と後退の概念で戦闘が行われるが、専用のボタン入力をする事で3D的に戦場を走る事が可能だ。
3D的に戦場を走り回れば敵の背後から攻撃したり、敵から囲まれないような立ち回りをしたりできるようになる。

とは言え、その操作性はお世辞にも直感的とは言い難い。
まず3次元的なフィールドにおいてアナログスティックの操作とキャラクターの移動が連動しないのは違和感が強い。
例えば、自操作キャラクターを奥に移動させたければスティックは上に倒すのが一般的だろう。しかし、本作ではそのまま上を入力するとジャンプが発生してしまう。
また、敵に近付きたい場合には敵がいる方向にスティックを倒すのが心理だろう。
しかし、ここでもやはりそうはいかない。スティックを左右に倒す事が前進(近付く)/後退(遠ざかる)になっているのだ。
つまり敵が奥にいたとしても、スティックを左右に倒さなければ近付いたり、遠ざかったりが行えないのだ。
3D空間を自由に動けるフリーランもあるのだが、こちらは位置取りを変更するもので攻撃には向かない仕様だ。
テイルズ オブシリーズでは格闘ゲームを彷彿とさせるコンボ技などがバトルにおける花形となっているが、3D空間と2D格闘ゲームの操作系を無理に融合させた感が否めず、直感的に違和感の強い・クセの強い操作になっている点は気になるポイントになってしまっている。

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コンボ系の格闘ゲームのような爽快感

しかし、ToVでのバトルが魅力的でない訳では無い。
バトルでは有効なスキルが非常に多くあり、ある程度のスキルが充実して来ると面白いようにコンボが決まったり、キャラクターの個性が強くなっていき楽しめるようになってくる。

筆者のお気に入りはジュディスだ。
彼女はいわゆるエリアルコンボが得意なキャラクターだ。上図を観て頂ければ彼女の魅力が少しわかるかも知れない。
操作難度はやや高いのだが、敵を空中に浮かせ続けるようなコンボができる。
筆者としては使用していて最も楽しいキャラクターだ。
なお、上図は本ブログの画像サイズ制限に引っ掛からないようにコンパクトにまとめており、やろうと思えばもっと豪快なコンボなども可能だ。

ストーリーをある程度進めていけばオーバーリミッツやフェイタルストライクと言った要素も解禁されていく。
オーバーリミッツはほぼ全ての攻撃や技が繋がるようになる強力なモードで、敵に攻撃をしたり、攻撃をされたりする事で溜まっていくゲージを消費する事で移行できる。
フェイタルストライクは敵に設定されているHPとは別の耐久値を0にすると発動可能になるものだ。ザコ的ならば一撃必殺、ボスには大ダメージを与える事ができるものとなっている。

敵に豪快なコンボを決めながら戦っていくのは楽しいものの、満足にコンボを決められるようになるにはストーリーの進行およびスキル習得が必須であり、それらがある程度揃うまでは楽しさが半分以下になってしまうのは欠点であるとも言えるだろう。
本作のバトルにおける楽しさがコンボやオーバーリミッツ、フェイタルストライクに大きく依存しすぎているため、それらが行えない物語の序盤では面白さが伝わりにくい。
その上、初見のプレイであれば「このバトルがこれから楽しくなる時が来るのか」も当然ながらわからないため、幸先として不安に感じるポイントが何度もあった。
本来ならば序盤には序盤の、終盤には終盤の醍醐味や楽しさが用意されるべきであり、戦闘における楽しさがスロースターターであるのは余りにも勿体なくマイナスだ。

本作では、わかりやすい操作性から手数の多い攻撃を繰り出すユーリや難度はあるが空中戦を得意とするジュディス、魔法による範囲攻撃で一網打尽に出来るリタなど、キャラクター毎のコンセプトや操作感が全く異なる。
この個性は非常に良く出来ており操作キャラクターを変更するだけで全く違う楽しみが待っているのは大きなプラスのポイントと言えるだろう。
しかし、これらは敵によっては相性が悪い場合が度々出てくるのは問題だ。
例えば前述のジュディスであれば「(敵の重量が重い場合に)空中戦に持ち込めない」と言ったケースが登場する。
特にボスの多くが浮かせる事ができない重量級の巨体であるため、全く本領を発揮できないケースも多い。
バトル自体は良く出来ているだけに、全てのキャラクターが全てのバトルでコンセプト通りに動けるように調整して欲しかった所だ。

調整して欲しいと言う観点から言えばバイトジョーを筆頭に根本的にまともに攻撃をさせて貰えないようなボスなどが存在している事も気になる所だ。
「強い敵」であれば理解できるのだが、「攻撃が当たらない・当てにくい敵」と言うのはコンボ重視な戦闘と言うコンセプトから考えても少し控えめにして頂きたい。

マイナスとまでは言わないが、攻撃時にヒットストップがあればコンボの楽しさはより増しただろう。
ヒットストップはプレイヤーに対して「(有効な)攻撃を行った感」がよりハッキリと感じられ爽快感が増す。
それに加えて、コンボを重視する本作であればヒットストップが導入される事で自分と敵の状態の把握がしやすくなりコンボのやりやすさも向上するハズだ。
ただし、本作は味方も敵も複数で戦闘を行う乱闘状態であるため、ヒットストップ中に攻撃を貰ってしまい途切れるなどの弊害も生んでしまうだろう。
ここには別のアプローチが必要となってしまうが、ヒットストップは是非とも導入して欲しかった要素だ。

 

グラフィック

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トゥーンシェーディングは見事だが、やや物足りなさのあるグラフィック

ToVのグラフィックはスタイライズドされ、トゥーンシェーダーを利用したものとなっている。
トゥーンシェーダーによるアニメ的な映像表現自体は見事に実現されている点は素晴らしいと言っても良いだろう。

しかし、2008年の作品であるとは言え、(スタイライズドである事を加味しても)同年代のものと比べるとキャラクターやフィールドはやや物足りない印象を受ける。
特にキャラクターは各アニメーションに専用のものが用意されているとはいえ、「ストーリー」の項でも記載した通り表情などは喜怒哀楽などのパターンで構成されており、「ストーリーを語る」という側面が強いRPG作品としてはチープさが強くなってしまっている。

声優の見事な演技のおかけで気にならないレベルになっているものの、現代でも観れるとはやや言い難く、「当時の水準だから許された」と言うべきだろう。
フィールドの構成や構造にしてもファンタジー世界である事を活かしたような想像力に富んだ地形などは余り多くないのもやや勿体ない。

前述の「ストーリー」の項でも記載済みだが、本作ではアニメーションが挿入されるポイントがいくつか存在している。
しかし、尺が短いのは勿体ないと言える。
ものによっては「もはや不要だったのでは」とすら思える短時間のアニメーションの場合すらある。

サウンド

ToVにおいてダングレストや終盤の通常戦闘のBGMは迫力があり必聴と言えるものだが、全体的にはそこまで印象に残るような曲は少ない。
本作において特筆すべきなのは曲と言うよりも、やはり演技だろう。
昨今(2010年代)は抑揚の少ないナチュラルな演技がトレンドではあるが、(2008年の作品と言うのもあるためか)本作では全般的に抑揚の強いアニメ的な演技が多く採用されている。
とは言え、どのセリフも非常に活き活きとしており、キャラクターの個性や魅力を十分に感じさせてくれる。

また、戦闘終了時にはキャラクター同士での掛け合いがあり、物語の進行に応じて内容に変化が生まれるなど強いこだわりが感じられる。

(個人的には大本眞基子さんや小野大輔さん、稲田徹さんと言った著名な演者が脇役を何キャラも兼ねている事が色々な意味で面白く感じたりもしたが。)

 

総評

テイルズ オブ ヴェスペリアは大人から子供まで楽しめるストーリー、やりがいのあるバトルシステムを両立させる事が出来た一作だ。
ややダークな設定をした主人公ユーリを筆頭にキャラクターも魅力的で、イベントやスキットで見せる声優の演技も印象的だ。

しかし、終盤にコンセプトがブレてしまうストーリーは勿体ない。
物足りない3Dモデル、面白くなるまでが遅いバトルシステムなどもやや足を引っ張ていると言えるポイントだろう。

 

外部記事

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【レビュー】SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE

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成すべき事を成す

SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE(以下、隻狼)は”死にゲー”と形容されるサブジャンル「ソウルシリーズ」の総本山フロムソフトウェアの作品だ。

世界観はソウルシリーズでは西洋の中世/近世ファンタジーであったが、本作では戦国時代をベースとした和風ファンタジーへと大きく変化したのが特徴的だ。
また、RPG要素の大半が撤廃される事も事前に告知がされていたため、「時間をかければ多くの人がクリア可能」であったソウルシリーズとは異なるプレイになる事も予想された。
筆者としては「新たな武器の獲得」などのRPG要素がプレイのモチベーションでもあったため、隻狼のゲームプレイに対して期待半分不安半分であったのが正直な所だ。

また、ダークソウルをプレイしているユーザーならばピンと来た方もいるかも知れないが、「狼」「左手が機能しない」と言うキーワードからアルトリウスを彷彿させるようなファンサービス的な設定も気になるポイントであった。

今回は隻狼のレビューを行っていこうと思う。

 

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4

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SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE GAME OF THE YEAR EDITION

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ストーリー

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明瞭に存在するストーリー

隻狼のストーリーは日本の戦国時代における「葦名」と言う架空の国の物語だ。
とある剣聖の武力により国を興したものの、時が経ち葦名は存亡の危機にさらされる。
葦名はその危機を救うために「御子」と呼ばれる人物が持つ異形の力「不死の力」を得ようと身柄を拘束した。
主人公である「狼」は御子に仕える忍びであり、御子を助けるべく行動を開始する。

ストーリーの導入(動機付け)は比較的オーソドックスな「マイナス」から開始されるものが採用されている。
本作で言えば御子様が連れ去れる事がそれにあたり、主人公の行動は御子様の救出を動機としているのだ。
しかし、御子様の救出がプレイヤーに対しての動機付けとまではなってはいない。
何故ならプレイヤーは開始直後では御子様の事を知らないからだ。
一般的には万人が立ち位置を置き換えやすい家族や友人、恋人がその役割を担う訳だが、御子様はそのどれにも該当しない。
そのため、御子様を失った事の重大さが伝わりにくいのだ(もっと正確に表現すると「大事なのは伝わっても、それがどれくらい大事なのかがわからない」と言うこと)。
本作をストーリードリブンなゲームとして捉える(ストーリー目当てにプレイする)のは間違っていると思うが、少なくともストーリーがゲームプレイを牽引するには弱いと言える。

ストーリー全体では日本の時代劇を彷彿とさせる設定やシチュエーションが用意されているのだが、ソウルシリーズ独特のセリフ感が失われた訳では無い。
その独特な威圧感や底知れない雰囲気を持ったセリフ回しは健在で、例え登場回数が少なかったとしても各キャラクターを非常に魅力的にさせている。

本作のストーリーはダークソウルやブラッドボーンなどの”ソウルシリーズ”と形容されるようになった作品群と比べて明確な、そして明瞭に訴えてくるストーリーが存在している。
もちろん、それはあくまでも「ソウルシリーズと比較した場合」であり、0から100まで丁寧に描かれているという訳では無いのだが、それでもソウルシリーズとは全く異なるストーリーの描かれ方だ。
これは狼と言う明確な主人公が存在しているが故に実現できたことだろう。

 

システム

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殺陣のような立ち回りを再現したチャンバラバトル

隻狼のバトルシステムではチャンバラを実に見事に再現できている。
チャンバラと言って連想できるものと言えば、やはり剣劇の「剣と剣で戦いあう」ものだ。
攻撃は剣で行い、防御も剣で行う。これをゲームプレイとして落とし込めているのだ。

まず隻狼では生命力となるHPの他に「体幹」と呼ばれるゲージが存在している。
上図では敵の上にゲージがある事が見て取れるだろう。
赤いゲージは体力で、その下にある黄色またはオレンジ色に変化しているゲージが体幹ゲージだ。
この体幹ゲージはスタミナにも近い概念のゲージで、蓄積しても時間経過と共に徐々に回復していく。しかし、このゲージが最大値まで溜まると残HPの量に関係なく一撃必殺の攻撃「忍殺」が行えるようになるのだ。
上図でもゲージが最大値まで溜まった際に敵の心臓付近に真っ赤なマーカーが発生しているのがわかるだろう。
この状態で攻撃ボタンを入力すれば忍殺が行われ、上図のように敵のHPが満タンであっても一撃必殺なのだ。

この体幹ゲージは敵に攻撃をガードさせたり、敵の攻撃を弾く事で蓄積させる事が可能だ。
前者では体幹ゲージが蓄積する量が少ないため、「敵の体幹ゲージを回復させない」と言う用途がほとんどだろう。
そのため、体幹ゲージを蓄積させるのは後者の「弾き」が主役だ。
弾きはダークソウルシリーズにおける「パリィ」に相当するようなもので、敵の攻撃をタイミング良くガードする事で発生する。
このように書くと難易度が高い技術のように思えるかも知れないが、実際には弾きの受付時間は長めに設定されている。
また、本作の敵はスピードこそ速いものの初期のソウルシリーズと同様にほとんどの攻撃で前隙がしっかりと用意されているため、落ち着いて対処すれば弾くことは決して難しくは無い。

体幹ゲージを蓄積しての一撃必殺の忍殺は確かに魅力的だが、それが簡単に出来るようでは死にゲーにはならない。
この体幹ゲージは「HPの残量が多いと回復速度が速い」と言う特徴も見逃してはならないポイントだ。
HPが満タンの状態では敵の体幹ゲージは瞬く間に全回復してしまう。特にHP量が多いボスクラスでは忍殺はなかなか狙えないようになっている。
しかし、HPを30%くらい削っただけでも体幹ゲージの回復速度に雲泥の差が生まれるため体幹ゲージを蓄積させやすくなるのだ。

ここで更に注意するべきなのは、この体幹ゲージはプレイヤーにももちろん存在する点だ。
敵の攻撃を弾けずにガードだけになってしまった場合には体幹ゲージが大きく蓄積してしまうし、攻撃でダメージを受ければ体幹ゲージの回復速度が低下し、攻撃やダッシュやジャンプなどを行っている場合には体幹ゲージが回復しない。
そして、プレイヤーの体幹ゲージが最大まで蓄積してしまった場合には無防備な時間が長く発生してしまう仕様となっている。
最大蓄積時に敵とは異なり即死する事が無いのはアンフェアには感じるが、それでも自身の体幹ゲージが蓄積していってしまうのは緊張感がある。
特に体幹ゲージが蓄積してしまうのはHPが低下しているケースが大半であるため、その緊張感は倍増だ。
また、敵の体幹ゲージも放置していれば回復が始まってしまうため、自身の体幹ゲージの回復をせずに攻撃を行って敵の体幹ゲージの回復を阻止するか、それとも敵の体幹ゲージを回復されてでも自身の体幹ゲージも回復するのかというリスクとリターン(駆け引き)が生み出されている。

本作ではHPと体幹と言う2種類のゲージが存在しているが、これらは相互に影響を及ぼすパラメーターとなっているため、戦闘中の行動が無駄になりにくくなっているのは素晴らしいメカニズムと言えるだろう。
もしもこれが相互関係の無いパラメーターであった場合には「HPを削る意味」あるいは「体幹ゲージを蓄積させる意味」が非常に薄くなってしまい、もはや全く別のプレイフィールへと繋がってしまった事だろう。
また、ブラッドボーンにおいては被ダメージを攻撃で回復できる事によってアグレッシブな戦闘を実現したが、隻狼においては防御行動とも言える行動すら攻撃手段として機能するように変化している。
見た目の「チャンバラらしさ」を実現しつつもゲームプレイとして高い次元で成立していると言う”二兎追うものが二兎を得た”本システムは素晴らしいデザインだ。

しかし、基本的なバトルシステム自体の完成度は素晴らしいものの、壁際のカメラワークの劣悪さは強いフラストレーションだ。
本作では上記の通り、敵の攻撃を弾くような立ち回りが多く、必然的に敵の攻撃でノックバックが発生する事も多い。
であるにも関わらず、壁際までノックバックしてしまうとカメラワークが敵キャラクターはおろか、自キャラクターまで認識しにくい状態になってしまう。
特にボス戦は広さこそマチマチだが、閉鎖空間で比較的長時間にわたって戦う事になるため、壁際まで到達してしまう事もありがちだ。
なにより、この劣悪なカメラワークによって死んでしまった時のなんといえない理不尽さを感じずにはいられない。
この問題点はアクションゲームとしては痒い所に手が届いていないものであり、カメラワークの改善を行って欲しい所だ。
とは言っても、問題自体はピンポイントと言えるレベルであり、壁際にさえ行かなければ常に快適なプレイフィールだ。

 

義手忍具

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忍者らしさを強くする義手忍具

ここまで隻狼の話を聞いただけでは主人公が「侍」だと誤解しそうなものだが、主人公は紛れもなく忍者だ。
それを強く印象付けてくれるのが「義手忍具」である。

主人公である狼は物語の最序盤で左腕を失う。
その失った左腕の代わりになるのが義手忍具だ。
義手忍具は忍者が使用する忍具を内蔵することが出来る義手の事で、これによって手裏剣や鉤縄と言った忍者らしいアイテムを使う事が出来る。
多くの義手忍具は使用するために「形代」と言うアイテムを消費する必要があるため、いつでもどこでも何度でも使用できる訳では無い事も注意が必要だ。

義手に内蔵されている鉤縄は忍者らしい動き、そして立体的な移動が1ボタンで簡単に可能になっている。
こちらは上図の中央がそれにあたり、鉤縄での移動では形代を消費する事は無い。
鉤縄はフィールドに設定されている特定のポイントに引っ掛ける事が可能で、ポイントが灰色で表示されている場合には距離が足りていない事を示し、緑色のポイントになればボタン入力で鉤縄を引っ掛けて移動する事ができる。
これは本作において必須の移動手段であり、場所によっては飛び降りないと距離が足りないように設置されている場合もある。

鉤縄を除くこれらの義手忍具は「特定の状況で強い効果を得る」ように設定されているものも存在する。
例えば手裏剣だ。
手裏剣は飛び道具として使う訳だが、その威力自体は非常に低い。
うっとおしい動物タイプの敵ならば一撃で葬り去る事もできるが、人型の敵は始末しきれない。
また、敵がこちらに気付いている状態ならばガードによって弾き飛ばされてしまう。
そんな手裏剣だが、空中にいる相手に当てると特効が発生する。
HPへのダメージもそうだが、体幹へも大きなダメージを与えられるようになっている。
全ての忍具にこのような特効が用意されている訳では無いのだが、対峙している敵に特効が利きそうなのであれば試してみても面白いだろう。

 

スキル

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数少ない成長要素

隻狼はダークソウルやブラッドボーンと比較すると圧倒的にRPG要素が少ない。
そんな中でも唯一と言える主人公の成長要素がスキルだ。
「なんで”スキル”は横文字なんだ」「代替するカッコいい日本語名は無かったのか」と若干思わなくもないが無粋だろう。

スキルでは敵に与える体幹ゲージへのダメージが上昇するものがあったり、上図の右のような「流派技」と呼ばれる特殊攻撃が習得できたりする。
特に前述のスキルは有用なものも多いため、早めに習得しておきたい。
そして後者の流派技だが、これは少々残念だ。
実戦に耐えうる流派技も一部存在するものの、その大半がゲームスピードが速い本作のような敵には全く機能しない前隙が大きい流派技なのだ。
その上、モノによっては前述の義手忍具でも使用する事になる”形代”を消費して発動する有様で割に合わない。
スキルは敵を倒したポイントを消費する事で習得していく事になるのだが、決して安くは無いポイントを消費して使い道がほとんどない技を獲得してしまうのは悲しい所だ。
例えば「隙は大きいが、当てられれば敵の体幹ゲージ回復を一定時間停止できる」など、前隙の大きさに見合った(もしくはそれ以上の)大きなリターンがあるのであれば使用する事もあっただろう。
見た目が派手なだけで、使い道のない流派技が多いのは嘆かわしい。

ここでやはり気になるのは、RPG要素の大半が撤廃されているために冒頭に記載した発売前の印象通りの気になるポイントに繋がっている事だろう。
まず、RPG要素が無くなってしまっているためにダークソウルやブラッドボーンのように時間さえかければ多くの人がクリアできるとは言い切れない。難易度を調整するような機構も存在していないため尚更だ。
近年ではクリアする事の重要性自体は低くなっているが、だからと言ってクリアがしにくくなっている事に目を瞑る事は出来ない。
そして、RPG要素の撤廃によりキャラクタービルドや武器防具収集がプレイのモチベーションに繋がっていた筆者のようなプレイヤーには小さくは無いマイナスだ。

 

ボス

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強さとしてやや淡泊なボス達

隻狼のボスのキャラクター性は非常に魅力的だ。
特に本作ではカットシーンなどでキャラクターのセリフがしっかりと用意されているボスも多く、底知れない雰囲気を持ったセリフ回しから漂う圧倒的な強者のオーラは非常にカッコいい。
しかし、人間に近い体格をしたボスが大半を占めているため、インパクトは少々見劣りすると言わざるを得ないだろう。

見劣りするのは見た目だけでは無い。その強さに関しても同様だ。
まず、ボスのHPは2ゲージ分以上あり、1本分を削り切ると攻撃パターンが数個追加されるケースは度々あるのだが、戦闘方法が一新されるような「第二形態」が存在する事は非常に珍しくなっている。
そして、前述の”弾き”を始めガード性能全般が優秀過ぎる所があり、弾けなくともガードさえ出来ればHPへのダメージは無い事が大半だ。
ガード不能技には「危」という文字が画面上に表示され、文字通り危険な事がすぐにわかる。
ガード不能技とは異なる性質の「ガードを貫通してダメージが入る攻撃」をしてくる敵は極めて少ない。
また、主人公は無尽蔵のスタミナを持っており距離を取る事も容易くなっている。
結果として、優秀なガード性能を押し付ける事で早々にボスの攻撃パターンを覚えきってしまう事が容易で、”二段階目”もほとんど無いためHPゲージが2本分あろうともプレイヤーがやる事には変化は生まれず、問題なく…否、問題になるポイントすら無く倒せてしまう。

「筆者の場合では」と言う前提で記載するが、敵の攻撃パターンや特徴を覚えて機械的に(ほとんど"音ゲー"と同じ感覚で)処理しきってしまう事が多く、操作やボタン配置に慣れた中盤頃からはボスであっても多くて2~3回の挑戦で撃破できてしまう事が大半であった。
そのため、義手忍具を活用する(色々な事を試してみる)必要性に迫られる事が無く、ボス戦における義手忍具と言う要素に「わざわざ感」を強く感じた。
3D系ゼルダの伝説のような「特定の義手忍具を使わないと(ほとんど)太刀打ちできない」くらいのパズル的な攻略方法にするべきかは議論の余地があるが、少なくなった”第二形態”の代わりに「敵の攻撃方法の動的変化」などを導入してみても面白かったのではないかと思っている。
攻撃方法の動的変化とは、敵のHPゲージを1つ削り切った段階でのプレイヤーの行動傾向から、HPゲージの2本目からはそれに対して対策となりうる攻撃パターンが解禁される…と言ったものだ。
例えば、突き攻撃に対して左右に回避するような立ち回りをしがちなプレイヤーに対して、HPゲージ2本目からは薙ぎ払うような攻撃が解禁されたりするイメージをして貰えると伝わりやすいだろうか。
つまり、プレイヤーの行動傾向をフィードバックして敵が立ち回ってくるようにしてみてはどうか…という事だ。
これで本当に面白くなるのか(多くの人に受け入れられるか)は保証できないが、あくまで筆者の好みとしてパターンを覚えて精度良く行動をするだけのゲームよりも、状況に応じて臨機応変にアドリブ性をもって行動できるゲームの方が達成感が強いのだ。

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人権の無いボスも多い

序盤で登場したボスと類似した見た目でほとんど同様の技を使うボスが中盤頃から度々登場する点も少々気になる所だ。
本作のような動的変化の無いアクションゲームは元も子もない事を書いてしまえば「覚えゲー」だ。
敵の行動パターンを知り、その隙を理解する事で倒す事ができる。
しかしそれは違う言い方をすれば「一度理解した敵に人権は無い」に等しい。
攻撃パターンや大きな隙が生まれるタイミングを熟知している敵はもはや相手にすらならない。
フロー理論」と言うものをご存知の方もいるだろう。
フロー理論とは「没頭する事に対する再現性を研究したもの」だと思って貰っても良い。
フロー理論によれば、人が没頭する条件の一部に「不安や緊張感があること」「自分よりも僅かに高いスキルを要求されること」と言うものがあるのだ。
初めて挑むボスならば勝てるかどうかもわからないため不安だろう。
そして、ソウルシリーズや隻狼などは(僅かであるかはさておき)高い精度のスキルを要求される事も多い。
確かに、フロー理論における”没頭”の条件に合致しているように感じる。
しかし、以前に勝利した事のある相手の場合ではどうだろうか。
「勝てるとわかりきっている相手」では不安や緊張感は無く、「既に乗り越えた相手」は自分のスキルレベルよりも低いのだ。
ダークソウルやブラッドボーンにおいてはボスが使いまわされる事は非常に稀であっただけに、何故このような敵の使い方をしてしまったのかはわからないが残念と言う他ない。

 

死と回生

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噛み合いきらない生と死

隻狼は死にやすいゲームだ。
そのため、「死」と言う事象をゲームのシステムに組み込もうとしている。
考え方としてはダークソウルやブラッドボーンと同様だが、そのアウトプットは少々異なるものに変化している。

まずゲームプレイ中のタイムスケールとして最も短いサイクルである「回生」だ。
回生とはプレイヤーが戦闘中にHPが0になってもHPの最大値の半分で復活ができるシステムだ。
回生を一度使うと、リスポーン位置に戻る(死亡含む)、または忍殺などを行わないと再使用はできず、その状態でHPが0になると死亡となる。
一見ありがたい仕様のようにも感じるが、結局はHPの最大値の半分という非常に半端な状態での復活であり、「最後のあがき」と言う側面が強い要素だ。
しかし、HPゲージが2本あるボス戦において1本目のゲージを奪う前に回生した場合には、HPゲージ1本目を奪う際に忍殺を行うためボス戦中に再度回生が行えるチャンスが巡ってくるケースもある。
そのため、ボス戦で早々にやられてしまったとしても、トータルで見た場合には必ずしも不利が付きまとう事は無いようになっており、「ゲージを奪えばまた回生できる」と言う気持ち的な仕切り直しにも役立っている。

次に冥助と言うシステムだ。
冥助はプレイヤーが死亡してリスポーン位置に戻った際に確率で発生する。
通常死亡した場合には経験値とお金は所持の半分となるのだが、冥助が発動すると「経験値やお金がロストしない」のだ。
だが、ハッキリ言って本作のゲームプレイからしてこれは全く意味を成していない。
根本的に死亡回数が多い本作のようなゲームにおいて冥助が発動した頃にはロストするものが無いくらいスッカラカンである事がほとんどだ。
冥助の発生確率は10~30%なのだが、これはもはや「確率がもっと高ければ…」とかそういう次元の話では無い。
ストーリーテリングの面からも全く機能していないため、根本的に全く意味のないシステムなのだ。
このようなシステムにするくらいなら「確率でアイテムが貰える」にしてくれた方がまだ実用性があるくらいだ。

最後に死のデメリットも説明しておこう。こちらはタイムスケールとしては少しロングスパンな要素となっている。
プレイヤーが死に過ぎた場合には「竜咳」と言うものが発生する。
竜咳とは簡単に書くとプレイヤーの不死の代償として周囲の者に発病するものと説明され、これが酷くなるとNPCとのイベントなどが滞ってしまうなどのデメリットが発生する(あと一応、冥助の確率が下がる)。
確かに、プレイフィールとしては自身が不甲斐ないせいで善良なNPCに迷惑をかけてしまうのは申し訳ない気持ちにはなるうえ、最初のうちは死ぬ事へのデメリットがあると言う事実だけでもプレッシャーが生まれる。
しかし、プレイを重ねるにつれゲームシステムとしてはそこまで強烈なデメリットでは無い事がわかっていき、次第に竜咳が蔓延しても余り気にする事が無くなってしまうのは折角の設定が活かし切れておらず勿体ない。

冥助や竜咳と言う「死」へのアプローチは「死ぬ事にフィーチャーしているからにはシステム面でも何か組み込まなくては」「今までのソウルシリーズとは異なる方法にしなくては」と言う目的と手段が逆転したような考えから導入されてしまったような気がしてならない。

 

フィールドアクション

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RTAを意識したかのようなフィールド設計

隻狼では前述の通り鉤縄を使用した立体的な移動が可能になっているほか、草むらに隠れて敵から見つからないように移動する事もできる。
また、(前述”ボス”の項で少しだけ触れているが)主人公は無尽蔵のスタミナを有しており素早く走り続ける事ができる。
更に、壁キックによる追加ジャンプもできるのだ。
ん?普通の人間はそんなことできない?主人公は忍者であるためこれくらい出来て当然だろう。

これらによって道中の敵の大半を無視して進むことが可能になっている。
前述の義手忍具・鉤縄を駆使して立体的に移動してしまえば敵の追跡は簡単に撒けるし、無尽蔵のスタミナで走り抜けてしまえばこっちのものだ。
ボス戦に関しては流石に無視して進むことはできないようになっているが、逆に言えばボス戦以外は無視する事は容易い。

ソウルシリーズではRTA(リアルタイムアタック)が行われる事も多かった。
本作のフィールドではそのようなプレイも見越した様々なルートの設計が行われているように感じる。

 

グラフィック

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戦乱による荒廃と神秘的な和を感じさせるフィールド

隻狼のグラフィックは美しい。
キャラクターの造形にはフロムソフトウェア特有のクセが感じられるものの、フィールドのデザインは戦国自体の戦いによる荒廃と日本らしい神秘的な美しさが融合しており素晴らしいの一言だ。

フィールドには瓦屋根の上を走ったり、床下や天井裏など忍者あるある的なポイントも用意されている事も忘れてはならない。

 

サウンド

音楽は当然ながら和テイストだ。
ゲームプレイ中では敵との戦闘状態になった際にBGMが強く挿入される形となっている。
現代的なインタラクティブミュージックの手法の1つだが、BGMの使い方としてほどよい緩急だ。
初回特典のミニサウンドトラック分のものしか曲名がわかっていないが、筆者としては聴く事になる回数も多かった「強者」はお気に入りだ。

また、本作ではほとんどのカットシーンでセリフ付きのボイスが挿入されるのも特徴なポイントと言えるだろう。

 

総評

隻狼はチャンバラアクションと神秘的なフィールドが織りなす唯一無二の死にゲーだ。

チャンバラアクションは見た目とシステムの両面で高次元に成立しており素晴らしいの一言だが、機械的に処理するだけの単調なボスや意味を成していない「生と死」のシステムなどなど、光るポイントはありつつも詰めの甘さが残っている。

しかし、本作がやり応えのあるアクションゲームとして素晴らしい作品であることは忘れてはならないポイントだ。
RPG要素を廃したり、ストーリーを強化したり、舞台を日本にしたりと続編あるいは次回作にも十分に期待が持てる多くのチャレンジを行った事も評価したい。

 

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