【レビュー】Starlink : Battle for Atlas

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長所は短所

Starlink : Battle for Atlas(以下、スターリンク)はUBISOFTから発売されたトイと連動したゲームプレイが可能なゲームだ。

筆者は2017年のE3でお披露目された際に観た宇宙戦闘の良さそうな手触りとユニークなトイが面白く感じた。
そして2018年のE3ではなんと任天堂の「スターフォックス」とのコラボが発表され、ますます楽しみな1作となったのだ。

今回はスターリンクのレビューを行っていきたい。

 

 

ストーリー

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描写が物足りないストーリー

スターリンクは宇宙を舞台にしたSFだ。
主人公は「スターリンク・イニシアティブ」と呼ばれる主に地球出身者で構成される集団である。
彼らがアトラス星系と呼ばれる領域に来た時、スターリンクの主柱であるセントグランドと言う人物がレギオンと呼ばれる悪のエイリアン集団によって誘拐される。
このセントグランドを救出する事こそが本作におけるストーリーの導入だ。

ストーリーは一般的に用いられる事が多い「マイナス」から展開する内容だ。
マイナスとは何かを失う事に等しいが、本作においてそれはリーダーであるセントグランドだったわけだ。
しかし、(ゲーム開始時点で)プレイヤーはセントグランドの事を知らないため、この設定がプレイヤーの動機付けになっているとは言い難い。
ゲームを進めていきサブシナリオをクリアしていくとスターリンクのメンバー達とセントグランドとの邂逅が描かれる。
しかし、それに関しても「これまでのあらすじ」のようにかなりかいつまんで説明される程度であり、スターリンクのメンバーおよびセントグランドに対して感情移入ができるとは言い難いのが正直な所だ。

本作にはストーリーこそ存在しているものの、「ストーリーを目的にゲームプレイをする」ことは推奨されないだろう。
また、適度に寄り道をしてもプレイ時間にして20時間程度でクリアできるものであり、じっくりと楽しむと言うよりも、サックリと気分転換程度に楽しむと言った方が良いだろう。

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量産された基地

本作には各惑星の各所に基地のような施設が存在する。
基地は最初の段階ではレギオンに占拠されており、敵を排除する事で味方のものにする事ができる。
また基地にはパーツが存在しており、それを入手する事で惑星の特色や文化、歴史を教えてくれるセリフが流れる…と言うプレイシーケンスになっている。

この基地は各惑星に数多く配置されているのだが、その質は残念と言わざるを得ない。
最初に残念に感じるのは「基地の構造」だ。
惑星には灼熱の惑星もあれば、凍てついた惑星もある。砂漠の惑星もあるし、植生が豊かな惑星もあるのだ。
であるにも関わらず、基地の構造は数パターンしか無いうえに全ての惑星で共通の構造でストーリーテリングとして説得力が無い。
最低限、惑星単位では全く異なる特徴を持った基地であって欲しかった所だ。
次は「文化」だ。
上述の通り、セリフでは惑星の様々な歴史や文化が垣間見えるのだが、ゲームプレイをしている上ではそのような文化が存在する / 存在したようには全く感じられない。
例えば、一見すると良くわからない建造物も教えられた文化や歴史を参照する事でどのような役割を持った建造物だったのかが理解できる…と言ったゲームプレイによってリンクするストーリーテリングが欲しかった所だ。
ユニークで美しい惑星に緻密な設定を用意しているにも関わらず、それが上っ面だけで終わってしまっているのは何とも勿体ない。

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微妙に気になるローカライズの質

予め記載するが、ここで記載するローカライズミスはアップデート「クリムゾンムーン」の配信後に修正が行われているようだ。

本作のローカライズはゲームプレイに影響を及ぼすほどの問題ないのだが、「誤翻訳」や「誤表記」、「表記揺れ」が散見された。 
特に上図のような誤表記や表記揺れと言ったミスがあると言う事は「全てのテキストを手動打ち込みによって実装している」と推察されるため、ヒューマンエラーによって発生した問題では無いだろうか。
当たり前の事だが、装備品など量産されやすい要素に対してマニュアルな実装を行うとヒューマンエラーが発生する可能性が高まる。
参照先パラメーターから文言を機械的に選定できるシステムなど、間違いが起こりえない実装を検討して欲しかった所だ。

 

システム

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宇宙を舞台にしたRPGシューター

スターリンクは簡単に言ってしまえば宇宙を舞台にしたオープンワールド型のRPGシューターだ。
機体や武器にはスロットが用意されており、そこにパーツを埋め込むことで機体を強化することが出来る。
またレベルも存在しており、こちらは機体や武器を使い込む事でパイロットのレベルが上昇する。
パイロットのレベルが上昇するとスキルツリーライクな形式でスキルを習得していく事になる。

バトルに関しては大きく分けて宇宙での戦闘と地上での戦闘があり、宇宙での戦闘は上図の左を参照して貰えると良いだろう。
宇宙での戦闘は360度全ての方向に移動する事が可能だ。
敵もあらゆる方向に逃げるため追いかけにくいが、そんな場合にはGUI上に表示される矢印を参考にするのはもちろん、敵機のエンジンには残光があるため逃げる敵機を追いかける際の重要な映像表現となっている。

対して、地上戦は一般的な人間を操作するTPSとほとんど同じ操作感になる。
地上を低空飛行する航空機ような見た目ではあるものの、上方向に移動する事はなくなり前後左右に動いて攻撃したり回避したりする事になる。

宇宙でも地上でも特殊な操作を要求されることは無く、またエイムが少々甘くても敵機へ当ててくれるため、操作感としては比較的簡単な部類のTPSを想像して貰えればいいだろう。
ただし、宇宙戦闘は前述の通り360度で展開するため追いかける方法は少しだけ慣れが必要かも知れない。

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シームレスに惑星に突入できるのは嬉しい

スターリンクオープンワールド型のRPGシューターだが、その中でも大きな魅力となっているのは「宇宙から惑星への突入がシームレス」であると言う点だ。
宇宙から見えているポイントにまるでそのまま突入できているかのようなスムーズさは男心を鷲掴みだ。

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ユニークなトイとの連動

スターリンクはトイと連動したゲームプレイができるゲームだ。
トイと連動するゲームと言えばスカイランダーズなどが有名だろう。
本作でユニークなのは「組み立てたマシンの状態がリアルタイムにゲームとリンクする」と言う点だ。
機体本体やウィングに武装を取り付けたり外したりすれば、それがそのままゲーム内にリアルタイムに反映されるのだ。
なお、本作ではトイが無くともゲームプレイは問題なく可能である。

トイは付属されている専用のコントローラーにマウントする事で認識される。
筆者はNintendo Switch版を購入したためコントローラーは上図の右のような形となる。
トイ自体の完成度は高く非常にカッコいい。ソフトの値段を考慮するとかなり破格とも言える品質と言える。
だが、この画像を見ると「重くないか?」と不安に思う事だろう。
ところがぎっちょん、重量はかなり軽量であり数時間通してプレイしても全く気になる事は無かった。
筆者がプレイした限りで問題が発生したのはトイの部分では無くJoy-conだ。
Nintendo Switch版でトイと連動したプレイをする場合にはJoy-conでプレイする事になるのだが、筆者はJoy-conでプレイする事が久しぶりであった事もありBボタンを押すときに物理的な配置上どうしても右スティックに触れてしまう事が多かった。
これは本作が抱える問題点では無いため強く言うつもりは無いが、右スティックで機体の向きを変更して照準を合わせるためプレイしていてストレスがある。

また、機体に装備する武器を追加するにはトイを購入するか、DLCとして購入しなければならない。
プレイする日によっては未購入の装備が時間制限付きでプレイアブルになるため、それに頼る事も無理ではない。
どちらにするかは自身のプレイスタイルと相談するべきだろう。

この「トイと連動する」と言う要素自体に気になる点があるとすれば、その「ワンオフ性」だろう。
確かにトイとしての質もある程度高く、ゲームとしても楽しめる内容にはなっているものの、本作のゲームが「トイ(物理媒体)である」と言う必要性はそこまで高いとは思えない。
最初こそ目新しさからトイとのシームレスな連携は面白く感じるかも知れないが、それが長続きするものでは無いことは火を見るよりも明らかだ。
amiibo」のように多くのソフトと連動する事を想定していたり、既存のキャラクターの造形物と言うファングッズであったり、そのように売り出すのであれば優位的な需要はあるように思えるが、本作のトイは本作だけのためのトイなのだ。
それは魅力でもあり欠点だ。

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機体や武器を強化する

スターリンクではRPG要素として改造パーツを利用した機体性能の向上を行う事が出来る。
機体や武器にはスロットが用意されており、そこに改造パーツをはめ込む事で強化が行るものだ。
改造パーツには様々な種類があり、例えば機体を強化するものであれば最高速度を向上させるもの、耐久性能を向上させるものなどがある。
このパーツは性能の上昇値がランダムという訳では無く、ランクが設定されており、そのランク毎に上昇するパラメータが全て固定値で設定されている。
また、改造パーツは同種のものを3つ合わせる事によって1ランク上位の改造パーツにする事が出来るようになる。
これによって低ランクパーツであっても良質な高ランクのパーツに変更していく事が可能になっている。

このRPG要素自体は悪くは無いのだが、パーツ自体の価値に少し問題がある。
パーツは敵からドロップするか、ショップのような所で購入する事で入手が出来るのだが、敵からドロップするパーツも結局はショップに並んでいるものと全く一緒なのだ。
これでは「敵を倒す意味」がプレイを続けていくうちにどんどん下がるのは必然だ。
また、ショップではゲーム内マネーで購入する事になるが、そのゲーム内マネーも使い切れないほどに入手出来てしまう。そのため、ショップでパーツを入手するのは実質無料のようなものなのだ。
せめて「敵からしかドロップしないパーツ」や「敵からドロップしたパーツの性能はパラメータの上昇値がランダムになる」などハックアンドスラッシュ的なプレイサイクルの方向性を強化し、「敵を倒すこと」「パーツを入手すること」にもう少し付加価値を付けて欲しかった所だ。

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勿体ない探索要素の完成度

スターリンクオープンワールド型のゲームであり、訪れる事になる各惑星や宇宙空間では探索要素が存在する。
各惑星では上図の左のようなちょっとしたパズルがあったり、上図の中央は敵の拠点を破壊したり、上図の右は惑星の原生生物をスキャンして調査をしたりしている所だ。
その他にも宇宙空間には悪のエイリアン軍団やならず者集団の旗艦があったりする。

このように惑星や宇宙空間の探索が行えるのだが、これに関しても物足りなさが残る。
まず、パズルに関してだ。
難易度自体はそこまで高いものでは無いのだが、リワードはショップでも売っている改造パーツが入手できるだけであり、ハッキリ言ってそこまでやる程の価値があるとは言い難い。

そして、惑星に展開している敵に関してはボリューム不足だ。
敵は各惑星に展開しているのだが、どの惑星でも出現する敵はほとんど同じなのだ。
違いがあるとすれば属性や敵レベル程度で残念と言わざるを得ない。
砂漠には砂漠の、寒冷地には寒冷地の専用の敵が出てきて欲しい所だ。

最後に紹介する原生生物に関しては存在感が非常に薄い。
最初のうちは興味を持って近付くのだが、「スキャンして経験値を貰う」程度しかインタラクションが無く、ゲームプレイに及ぼす影響が余りにも無いため次第に無視してしまう事が大半になるのだ。
同種の原生生物を3回スキャンをすると、その生物に関する情報が手に入るのだが、それに関してもストーリーの項で述べた「基地」と同様に「設定されているだけ」であり、ストーリーテリングやゲームプレイでその設定が活かされることは無い。
設定が活かされており、なおかつその設定を活かして「共闘できる」あるいは「飼育できる」など多くのインタラクションがあって欲しかった所だ。

また、ストーリーの項で少しだけ記載しているが各惑星では味方の拠点を増やしていく事が可能で、味方拠点ではランダム生成されたクエストを受注する事ができる。
しかし、これも作り込みに欠ける。
エストは拠点の種類によって傾向はあるものの、その全てが「敵を倒してくれ」や「アイテムを持ってきてくれ」と言った類似した内容なのだ。
一応、温度の高い惑星では冷却機の調達をお願いされるなどの変化は見て取れるのだが、各惑星の設定を活かしたようなクエストが用意されていると言う事は無い。
そのため、持ってくるアイテムやリアクションが違うだけで結局は全ての惑星でやってる事に全く違いが無い。
各惑星や原生生物に設定された内容が活かされるようなクエストが用意されていて欲しかった所だ。

本作はオープンワールドを採用しているが、それを活かし切れているとは言い難い。
敵や味方、そしてそれぞれの拠点が配置されているものの、それは本当に「配置されているだけ」なのだ。
これら全ての要素はプレイに慣れていってしまえば目新しさも無くなり、次第に無視される存在となっていく。
更に宇宙空間や各惑星には「ランドマーク」とも言えるような特徴的な土地やオブジェクトも無く、宇宙でも惑星でもほとんど何も無いような空間がただ広がっている。
確かに宇宙空間をSF色のあるマシンで駆け抜けるだけでもロマンがあり楽しい気持ちはあるが、ゲームとしてもう一歩踏み込んだ構造を検討して欲しかった所だ。

 

スターフォックス

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スターフォックス

スターリンクNintendo Switch版では任天堂とのコラボによってスターフォックスが登場する。
スターリンク独自のアレンジはされているものの、アーウィンのカッコよさは健在だ。スターフォックスには専用のストーリーも用意されており、スターウルフを追いかけてアトラス星系までやって来たのだ。
その際に偶然にスターリンク・イニシアティブのメンバーと合流する事になったのだ。
また、とあるシーンでは原作にある印象的なセリフをフォックスが言っており、そのセリフは本来は別のキャラ常々言っていたセリフでもあるため、スターフォックスシリーズ自体との時系列的な繋がりも感じさせてくれる。
ゲームプレイ中では特定の攻撃を行うとBGMがスターフォックスのものが流れる点も嬉しいポイントだ。

本編のメインストーリーにも若干の介入が成されているのだが、これに関しては取って付けた感が否めない。
逆にスターフォックス専用ストーリーではスターリンク・イニシアティブ側がオマケ的な立場になっており、もう少しだけ密なやり取りをして欲しい所だ。

マイナスポイントとするつもりは無いが、スターウルフのウルフェンに搭乗できない点も少し残念だろう。
筆者としてはアーウィンよりもX-ウィングのようなデザインの「ウルフェン」の方が好みのため、DLCでも良いので操縦できるようにして欲しかった。

ハッキリと言ってしまうが、本作は「Nintendo Switch版以外を買うのはどうかしている選択」だろう。

 

クリムゾンムーン

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クリムゾンムーン

クリムゾンムーンは無料アップデートによって追加された新要素だ。
新しい要素にはレースやウェーブ形式のバトルを行うものや、賞金首を捕まえるもの、そしてストーリーの補完を行うものが追加されている。

レースでは通常とは若干異なる操作系となり、マリオカートのようなドリフトとブーストが行えるようになる。
通常プレイとはやや異なる操作系を強いられるのは困ったものだが、レース自体はしっかりとレースになっている。

バトルはコロシアムのような専用フィールド内で次々と現れる敵を倒すもので、賞金首の捕縛は各地に逃げている特定の敵を捕まえて監獄に引き渡す仕事だ。
どちらもプレイとしては比較的オーソドックと言える内容だ。

ストーリーの補完できる要素も追加されており、作中の敵がどうして太古に一度滅んだのかを説明しているが、あくまでもオマケ程度だと思った方が良いだろう。

 

グラフィック

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アトラス星系は美しいが物足りない

スターリンクの各惑星は砂漠だったりユニークな植生だったりと非常に美しく面白い。

しかし、各惑星を代表するようなユニークなランドマークが無いのは非常に勿体ないポイントと言えるだろう。
美しくはあるのだが、どこを見渡しても似たような景色であり「絶景」とまでは言い難い。実際に存在する土地では無く、架空のSF作品の空間であれば創造性に富んだ魅力的なランドマークや空間を用意して欲しい所だ。

本作にはフォトモードが搭載されている点は嬉しいポイントだろう。
しかし、これに関しては即時性が低いため、「ここを撮りたい!」と言う咄嗟のタイミングでは思うようにはいかない。
特に戦闘中のカッコいいシーンを撮ろうと思うとかなりの困難があるのは痒い所に手が届いていない。

 

サウンド

スターリンクサウンドは基本的に状況に合わせたBGMが流れるインタラクティブミュージックのような形式を採用している。
そのため、(強制的に)耳に残るようなBGMは少ない。
そんな中でも筆者が特に気に入ったと言えるのは「プライム」と呼ばれる大型ボスに勝利した際のBGMだろうか。SF感の強い1曲だ。

 

総評

「トイとのシームレスな連動」をベースとしたStarlink : Battle for Atlasは、間口の広いRPGシューターであり、またトイ自体の完成度も良い作品だ。
宇宙空間と各惑星を自由に、そしてシームレスに駆け回るのはロマンがあり楽しい要素と言えるだろう。
また、同梱されているトイの存在とその品質を考えれば通常のフルプライス程度の値段である事は驚きしかないのも事実だ。

だが、ゲームプレイの質が悪いとは言わないが、同年代の標準的なオープンワールド型のゲームと比較するとストーリーでもシステムでも、そして質でも量でも見劣りすると言わざるを得ない。
特に「設定は存在するが活かされていない」ことが多いのは勿体ない要素だ。

ボリュームに関してはプレイ時間にして20時間程度であり、飽きてしまう前にクリアする事ができるため、ある意味で意図した設計なのかも知れない。
これに関しては賛否両論あるだろうが、水増ししたような冗長なプレイを強要せずに簡潔にまとめ上げている点は評価点としても良いだろう。

そして本作のトイはスターリンクと言うソフトとしか連動できない。
数年後には比較的質の良いトイだけが永遠に手元に残ってしまう可能性もあるのだ。

 

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【レビュー】聖剣伝説3

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子午線の子供達

聖剣伝説3は学生時代の筆者が長らくやりたくてたまらなかったゲームであった。
聖剣伝説2をプレイし、人生で初めて「ハマった」と言えるほどに好きになったゲームの続編に当たるのだから無理は無いだろう。
しかし、当時はSFC後期の名作ともなれば中古であっても非常に高価であり、小学生や中学生では簡単に手に入る値段では無かったのだ。
筆者が初めて聖剣伝説3を購入してプレイできたのは高校に入ってからだった。
どんなゲームなのかワクワクしながらゲームを始めた事をよく覚えている。

今回は思い出の強い聖剣伝説3をレビューしていく。
なお、今回のレビューで使用するのは聖剣伝説コレクションに収録されている聖剣伝説3となる。予めご了承願いたい。

 

聖剣伝説コレクション - Switch

聖剣伝説コレクション - Switch

  • 発売日:2017/06/01
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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6人の主人公から3人を選ぶ

本作の最大のセールスポイントは「主人公を選ぶことが出来る」ことだろう。

6人の主人公にうち3人をパーティーメンバーとして選ぶことが可能だが、ストーリーとしては一番最初に選択したキャラクターを中心に展開していく。
残りの2人は言うなれば最初に選んだキャラクターの仲間として登場する形となる。

ストーリーは強大な力を持つ「マナの剣」をめぐった3勢力の争いを描いており、本作の物語は主人公たちとそのいずれかの勢力との因縁が描かれる。
前作では端的に表現して「自然と文明の対立」をストーリー全体の流れでは描いていた。
本作においても大枠ではその構図に違いは無いと言えない事も無いのだが、どちらかと言えば「人類の争いに巻き込まれる自然」と表現した方がしっくりくる内容だ。

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物語の大筋は誰であっても変わらない

ストーリーは導入やキャラクター専用の会話、主人公によりラスボスが変化するなどは存在するものの、全体としての流れ自体は大きく変わる事は無い。
例えば、剣士デュランで開始した場合には全く歯が立たなかった強敵”紅蓮の魔導師”を倒すための旅であり、王女リースであれば占拠された故郷”風の国ローラント”を救うための旅だ。
基本的に大きく違うのはこの物語の導入とラストダンジョン、ラスボスであり、それ以外に関してはほとんど違いは無く、6人存在している主人公を活かし切れているとは言い難い。
このストーリーの淡白さは容量の少ないSFCでメインとなるキャラクターを6人用意した影響かも知れないが、もう少しキャラクター毎のストーリーの違いを強調して欲しいかった所だ。
しかし、決して多くは無いが前述しているキャラクターによりセリフが異なる場面は多少存在している。

ストーリー中にパーティーメンバー同士での絡みなどもほとんど無い点も少々残念に思えるポイントだ。
”パーティーを選択できる”のだが折角パーティーを選択しても特に特別な会話が発生する訳では無いため「想像する余地がある」と言えば聞こえは良いが、想像するにしても材料が少なく物足りない印象を受ける。
キャラクター間の関係性を補完するイベントに関しても用意されていて欲しかったと言えるだろう。

 

システム

聖剣伝説3のシステムについて記載しよう。

 

バトル

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前作とは微妙に異なるバトル

本作のバトルはボタンを押す事によってキャラクターが攻撃モーションを行うものとなっているアクションRPGだ。
大枠としては前作である聖剣伝説2と同じだが、細部には異なる点が多い。

まず、前作では攻撃に関係するゲージが存在していたものの、そのゲージが100%にならずともボタン連打によって(ダメージは激減するが)攻撃を行う事が出来た。
しかし、本作においてはゲージ自体が表示されなくなっており、攻撃から再チャージ完了するまでの期間には攻撃が行えないようになっている。
そのため、前作以上に「ヒット&アウェイ」が重要な戦法・立ち回りとなるように変化している。

また、前作では「必殺技」を発動させるためにはボタン長押しによるチャージが必要であったが、本作ではここにも変更が加えられている。
本作においても前作と同様にチャージが必要な必殺技ゲージが存在するのだが、このゲージをチャージする方法は攻撃のヒット回数に変更されたのだ。
例えば、4回攻撃をヒットさせれば必殺技レベル1が発動可能となる…と言った具合だ。
前作においては通常攻撃を使いたい時には必殺技は出せず、必殺技を出したい時には通常技が出せないと言う同質の機能が競合した状態となっていた。
これが聖剣伝説3においては「通常攻撃を行う事で必殺技が発動できる」と言う直列的な共生関係のあるシステムになった事は非常に良い変更ポイントだ。

良い変更はそれだけでは無い。前作では一般的なRPGと同様にステータスがレベルアップで固定上昇していたが、本作ではレベルアップ時に自分で好きなステータスを1つ追加で上昇させる事が可能になった。
1つのステータスを上げ続ける事は出来ないため、実質的にはステータスの固定上昇と大きく変わりは無いのだが自分で選べる事によって感じる「育て上げた感」は大きく違う。レベルアップさせる事が本作のプレイの楽しみの1つになっているのは間違いないだろう。

しかし、本作では戦闘のバランスは逆に少々悪くなってしまっている。
その主な原因は「反撃確定の敵」の出現だ。
レベル2以上の必殺技や魔法によってダメージを与えると、確定で強烈な反撃を行うボスや一部のザコ敵が多く登場するようになってしまったのだ。
これによって折角の強い必殺技や魔法を覚えたとしても、敵からの反撃があるために使用する事が消極的にならざるを得ない状況になってしまっている。
”強烈”と表現したこの反撃は下手をすれば一撃で全滅するレベルの全体攻撃である場合も多くあり、こちらがいくら強力な必殺技や魔法を放ったとしてもこれでは割に合わない。
そのため、ダメージソースの中心は反撃技が出ない通常攻撃に頼らざるを得ないのだ。
本作では前述の通り主人公を選択する事ができるのだが、魔法攻撃主体のキャラクターではこの影響を特に大きく受けてしまい、中盤以降で活躍する事が困難になってしまっている。
なぜこのようなバランスとなったのか疑問が残る所だ。

疑問に残るポイントはまだある。
前作において問題になりやすかった「(パーティーで行動する事を主眼に置いているにも関わらず)キャラクターが地形に引っ掛かる」「魔法エフェクト中に行動不可」と言った点がそのままにされている点だ。
プレイに支障がある要素であるため改善して欲しい要素ではあるのだが、改善するには容量が不足していたという可能性もある(だから”許す”と言う訳でも無いが)。

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バランスブレイカーとの呼び声高きケヴィン

前述の通り、本作は主人公およびパーティーメンバーを6人の中から3人選択する事が可能だ。

例えばデュランは攻撃力や耐久力において頼もしく、アンジェラは魔法攻撃がメインとなる。
そんな中でもケヴィンはその超火力によりバランスブレイカーと言われる事も多い。
ケヴィンの攻撃は2回攻撃となっており、1回の攻撃で2ヒットさせる事が出来るのが理由の1つだ。
しかし、この特性自体はシーフ系の主人公であるホークアイも同様である。
ケヴィンをバランスブレイカーたらしめている要因は彼が「ウェアウルフ(狼男)」であると言う要素が大きいだろう。
ケヴィンは獣人であり、夜になると戦闘中にウェアウルフに変身する事が可能となる。
ケヴィン自体の攻撃力もそれなりに高いのだが、ウェアウルフとなると更に攻撃力が強化され、前述の2ヒットする攻撃の性質も相まって他の追随を許さない非常に高い火力を誇るキャラクターへと変貌するのだ。

良くも悪くもではあるが、本作は対戦ゲームでは無いためバランスブレイカー的な存在がいたとしてもユーザーに有用ならば、それはそれで楽しめるように思う。

 

リングコマンド

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健在のリングコマンド

本作においてもリングコマンドは健在だ。

リングコマンドではアイテムや魔法と言った要素を視覚的に選択できる。
前作である聖剣伝説2と同様にテキストのみで表現されたアイテムでは無く、アイテムの固有のアイコンが表示される事は非常に嬉しい事だ。
注意点としては前作と同様に独自のシステムであるため、シリーズを初めてプレイすると言うユーザーは慣れるまでは少し戸惑う事もあるかも知れない点だろう。
しかし、視覚的にわかりやすいため重宝する要素となっている。
なお、前作と異なる点としてはシステム系のコマンド(ステータスや装備)はリングコマンドから除外され、Yボタンでシステム画面に遷移するようになっている。

また、本作では「倉庫」と言う要素が追加された。
リングコマンドでは10個のアイテムしかセットできないのだが、倉庫と言うシステムによって持ち切れないアイテムや装備を保管してくれるようになったのだ。
これによって多種多様なアイテムが本作に追加された点は収集癖のあるユーザーからしても嬉しいポイントだ。
特に重宝するのはキャラクターにバフを与える「ウロコ」系のアイテムだろう。
主人公の選択によっては序盤から終盤に至るまでお世話になるアイテムになる事だろう。
敵にデバフを与えるアイテムも存在はするのだが敵からのドロップ品であるため、安定供給させるのはやや難しい。
また、手裏剣を代表に敵にダメージを与えるタイプのアイテムなども複数種類存在している。
このようにバフやデバフなどのアイテムが非常に多く追加されているため、宝箱の中身も前作よりも豪華になっており、宝箱を開ける事が多少なりともワクワクする要素になっている。

 

クラスチェンジ

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最大の醍醐味クラスチェンジ

本作において最も特筆すべき要素は「クラスチェンジ」だ。

クラスチェンジは特定のレベルを超えた際に特定の場所でキャラクターを上位職に変更する事が出来る。
クラスチェンジは光方向と闇方向が存在し、
光方向は回復や味方へのバフなど「味方に効果を発揮する魔法」を習得していく傾向があり、
闇方向は火力向上や敵へのデバフなど「敵に効果を発揮する魔法」を習得していく傾向がある。
クラスチェンジする事で単純にキャラクターが強化される事はもちろん、自分好みのビルドを考える事が出来る点も嬉しい限りだ。

ちなみに筆者の黄金パターンでは、
デュランはアタッカーとタンクとヒーラーを兼ねる「ロード」、
リースはその可愛さに癒されつつ敵にデバフをばら撒く「フェンリルナイト」、
ケヴィンはムーンセイバーを使う凶悪なアタッカーの「デルヴィッシュ」
という構成だ。
筆者が純粋にプレイする場合には毎回このメンバーでばかりプレイしていた。

 

隠しボス

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ブラックラビ

本作には特定の主人公でのみ登場する隠しボス「ブラックラビ」 が存在している。
体力が多く、また体力が減った際に凶悪な連続魔法を放ってくるため準備を整えて倒したい所だ。

なお、ブラックラビは専用のドロップアイテムがあるため入手しておきたい。
倒してもドロップしないケースもありリセットが必要になってきてしまうが、聖剣伝説コレクションなどであればクイックセーブ/クイックロードが可能であるため、それを利用するとリセットマラソンは簡単だ。

 

グラフィック

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自然が美しいグラフィック

本作でも美しいドット表現は健在だ。
中でもやはり草木と言った自然の美しさが前面に出ており、聖剣伝説のコンセプト通りの力の注がれ方だ。

また、本作では昼と夜の概念が存在する。
昼は明るく、夜は暗くなるのはもちろんだが、夕方や明け方などもあるため当時では珍しかった時間帯によって変化するフィールドが楽しめるのも本作の魅力だ。

しかし、残念ながらフィールド上の草刈りなどのインタラクションは出来なくなっているため、少々寂しい所はあるかも知れない。

 

サウンド

筆者が言うのもおこがましいが、聖剣伝説3の音楽も史上に残るような名曲たちばかりだ。

前作の”天使の怖れ”のアレンジでもある「Where Angels Fear To Tread」

物語導入のラストで流れる非常に熱い名曲「Meridian Child」

耳に残るノリノリなフィールド曲「Swivel」

山岳地方の少し不気味なフィールド曲「Different Road」

穏やかで夜のような涼しさを感じる「Powell」

リズムが主体の「Rolling Cradle」

シームレスに三段階に変化するラスボス曲「Sacrifice 1~3」

どの曲も是非ともゲームと共に聴いて頂きたい名曲たちばかりだ。

 

総評

聖剣伝説3はストーリーは少々あっさりとしているが、システム面は大幅に強化された続編だ。

パーティーメンバーを選択できる所から始まり、レベルアップ時の上昇ステータスの選択、魅力的なクラスチェンジ、豊富になったアイテムなどゲームプレイ部分で楽しめる部分が多い。
しかしながら、前作でも存在していた「キャラがフィールドに引っ掛かる」などの問題点は基本的にそのまま棚上げされており、簡単に見つかる改善ポイントであるだけに勿体ないと言う他ない。

 

レビューからは脱線してしまうが、聖剣伝説3は2019年のE3にてリメイクが開発中であると発表された。ファンとしては嬉しい限りだ。

 

外部記事

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【レビュー】テイルズ オブ ヴェスペリア

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正義を貫き通す

テイルズ オブ ヴェスペリア(以下、ToV)はテイルズ オブシリーズの本編作品としては10作品目となる記念すべき作品だ。
筆者のテイルズ歴はと言うと「デスティニー」「デスティニー2」「ハーツ」「レディアントマイソロジー」辺りをプレイしたが、全体の歴史からすれば少しかじった程度だ。その点はご了承願いたい。

筆者はToVはタイトル自体は当然ながら知っていたものの、プレイする機会が無く今まで過ごしてきていた。
しかし、テイルズ オブシリーズの中でもファンからの支持が特に厚い作品の1つであるとは知っていたためプレイしたい作品でもあった。
そんな中で、このたびリマスター版が発売されたため購入してプレイしたのだ。

 

テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER -Switch

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  • 発売日:2019/01/11
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【PS4】テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER

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ストーリー

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キャラクターを重視した老若男女楽しめるストーリー

なんといってもテイルズ オブシリーズの作品におけるストーリーの特徴は「キャラクター重視」であると言う事だろう。
緻密で重厚な世界観…哲学的で考察のしがいのある設定…そういう要素からゲームのストーリーを作り、そこにマッチするキャラクターを生み出していく手法もあるだろう。
しかし、テイルズ オブシリーズはその作りとは恐らく逆だ。あくまで筆者の見立てだが。
まず魅力的で特徴的なキャラクター達とその関係性を作り、そしてそこに世界観を乗せているように感じる。
ToVにおいては特に主人公であるユーリを中心に、それと対比するようなキャラクターとしてフレンやディークと言った人物が登場するようになっているのだ。

ToVのストーリーで特徴的なのはキャッチフレーズにもある通り「正義の在り方」がテーマとなっている点だろう。
以下、少々ネタバレを含むため注意願いたい。
主人公であるユーリは「裁けぬ悪に”正義を行使”する」キャラクターだ。
いわば「必殺仕事人」のような存在と言っても良いだろう。
一方で親友であるフレンは対照的で「悪を裁ける世界を作ろうとしている」キャラクターだ。
ヒロインであるエステリーゼもストーリーの中心人物であるのだが、本作のストーリーにおいて最重要と言えるのはユーリとフレンの互いの正義が在り方の違いだろう。
この2人の正義(主張)はどちらも正しく、どちらが悪いとは言えないのだ。
本作の表現(セリフやリアクションなど)はアニメ的ではあるのだが、その物語自体の完成度はしっかりとしており大人から子供まで観る事ができる丁寧な作りと言えるだろう。

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徹底しきれていないコンセプト

しかし、ストーリーにおいて気になる点が無い訳では無い。
物語の序盤~中盤辺りではパーティーメンバーにはそれぞれ自身の目的が設定されているのだが、「結果的に行き着く先が同じだった」と言う展開が少し連続しすぎているように思えた。
例えば、キャラクターAは○○と言う目的があり旅をしており、キャラクターBは××と言う別の目的で旅をしているが、各キャラクターがそれぞれ目指している土地あるいは人物が実は共通の土地/人物だった…と言うのが多いのだ。
確かに”呉越同舟”と言う言葉はあるが、余りにも重なり過ぎている感が否めない。

またネタバレとなるため詳細には伏せるが、終盤の展開に関してもご都合感がありやや勿体なく感じる。
本作の物語のメインテーマは「正義の在り方」であり、裁けぬ悪を裁くユーリと悪を裁ける世の中にしたいフレンの葛藤と対立が主軸となるべきハズだ。
ところが、終盤になり黒幕の正体が明かされる事によって「共通の敵が出てくる」ことになってしまい、その"主軸"がブレて棚上げされてしまっている。
最高の肉に、素晴らしい焼き加減、それを美しい皿の上に乗せた上で、最後にサラダドレッシングをかけてしまったかのようだ。
キャラクターを重視する本作においてはこれで収まりが良いのだろうが、正義の在り方に対する本作なりの「答え」ないし「けじめ」を示して欲しかった肝心の部分であるだけに勿体ない。

2008年の作品であるため強く言うつもりは無いが、3Dモデルの主に動きの面が余り良くない点も気になる所だ。
声優の演技は素晴らしいのだが、「演技とキャラクターとのギャップ」が発生してしまっているのは観ていて気になるポイントだ。キャラクターのフェイシャルモーションやリアクション用モーションが喜怒哀楽+αのパターンだけで構成されており、迫真の演技とマッチしきれていないケースがありギャップが生まれてしまっている。
人気のある作品であるだけに今後のリメイクなどに期待したい所だ。

ユーザーが物語を進行させる上での問題点も少なからず存在する。
ToVでは次に進むべき場所がフィールド上やマップ上に記載が無く、話を忘れてしまうとどうすればいいかわからなくなってしまう。
一応「あらすじ」はシステムから参照する事は出来るのだが、次にどこへ向かうべきなのかの記載は無い事も多く、ストーリーを忘れてしまった場合には致命的な結果になりかねない。
また、ストーリー内のダンジョンではちょっとした謎解きのようなものが用意されているのだが、こちらもややわかりにくいものが多い。
進行が詰まったり、謎解き自体が難しい訳では無いのだが、どこで何をして欲しいのかが伝わりにくくわかりにくい。

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アニメが挿入されるが尺は短い

シリーズではお馴染みとも言えるが、本作では要所において「アニメ」が挿入される。
しかし、要所で入るアニメも尺が短くやや勿体ない。
このようなカットシーンではコントローラーから手を放して没入して観ていられる時間がもっと長いと嬉しい所だ。

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シリーズの醍醐味とも言えるスキット

こちらもシリーズでお馴染みとなっている「スキット」も健在だ。
スキットは紙芝居的な形式でパーティーメンバーが様々な会話を繰り広げる。
様々なタイミングや条件で発生し、「キャラクター間の関係性の補完」や「関係性の進展の表現」に大きく役立っているシステムだ。
会話は全てボイスが付いており、セリフ送りも自動で行ってくれるためテンポが良い。
内容はキャラクター愛が溢れるものが揃っており、これ無くしてテイルズ無しとも言えるだろう。

 

システム

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爽快なバトルシステム

ToVのバトルシステムは「エヴォルドフレックスレンジ・リニアモーションバトルシステム(EFR-LMBS)」と大仰な名称がついているようなのだが、簡潔に言ってしまえば鉄拳やソウルキャリバーのような2.5Dライクな戦闘を想像するのが良いだろう。
基本的には過去のテイルズ オブシリーズのような2D格闘ゲームと似た前進と後退の概念で戦闘が行われるが、専用のボタン入力をする事で3D的に戦場を走る事が可能だ。
3D的に戦場を走り回れば敵の背後から攻撃したり、敵から囲まれないような立ち回りをしたりできるようになる。

とは言え、その操作性はお世辞にも直感的とは言い難い。
まず3次元的なフィールドにおいてアナログスティックの操作とキャラクターの移動が連動しないのは違和感が強い。
例えば、自操作キャラクターを奥に移動させたければスティックは上に倒すのが一般的だろう。しかし、本作ではそのまま上を入力するとジャンプが発生してしまう。
また、敵に近付きたい場合には敵がいる方向にスティックを倒すのが心理だろう。
しかし、ここでもやはりそうはいかない。スティックを左右に倒す事が前進(近付く)/後退(遠ざかる)になっているのだ。
つまり敵が奥にいたとしても、スティックを左右に倒さなければ近付いたり、遠ざかったりが行えないのだ。
3D空間を自由に動けるフリーランもあるのだが、こちらは位置取りを変更するもので攻撃には向かない仕様だ。
テイルズ オブシリーズでは格闘ゲームを彷彿とさせるコンボ技などがバトルにおける花形となっているが、3D空間と2D格闘ゲームの操作系を無理に融合させた感が否めず、直感的に違和感の強い・クセの強い操作になっている点は気になるポイントになってしまっている。

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コンボ系の格闘ゲームのような爽快感

しかし、ToVでのバトルが魅力的でない訳では無い。
バトルでは有効なスキルが非常に多くあり、ある程度のスキルが充実して来ると面白いようにコンボが決まったり、キャラクターの個性が強くなっていき楽しめるようになってくる。

筆者のお気に入りはジュディスだ。
彼女はいわゆるエリアルコンボが得意なキャラクターだ。上図を観て頂ければ彼女の魅力が少しわかるかも知れない。
操作難度はやや高いのだが、敵を空中に浮かせ続けるようなコンボができる。
筆者としては使用していて最も楽しいキャラクターだ。
なお、上図は本ブログの画像サイズ制限に引っ掛からないようにコンパクトにまとめており、やろうと思えばもっと豪快なコンボなども可能だ。

ストーリーをある程度進めていけばオーバーリミッツやフェイタルストライクと言った要素も解禁されていく。
オーバーリミッツはほぼ全ての攻撃や技が繋がるようになる強力なモードで、敵に攻撃をしたり、攻撃をされたりする事で溜まっていくゲージを消費する事で移行できる。
フェイタルストライクは敵に設定されているHPとは別の耐久値を0にすると発動可能になるものだ。ザコ的ならば一撃必殺、ボスには大ダメージを与える事ができるものとなっている。

敵に豪快なコンボを決めながら戦っていくのは楽しいものの、満足にコンボを決められるようになるにはストーリーの進行およびスキル習得が必須であり、それらがある程度揃うまでは楽しさが半分以下になってしまうのは欠点であるとも言えるだろう。
本作のバトルにおける楽しさがコンボやオーバーリミッツ、フェイタルストライクに大きく依存しすぎているため、それらが行えない物語の序盤では面白さが伝わりにくい。
その上、初見のプレイであれば「このバトルがこれから楽しくなる時が来るのか」も当然ながらわからないため、幸先として不安に感じるポイントが何度もあった。
本来ならば序盤には序盤の、終盤には終盤の醍醐味や楽しさが用意されるべきであり、戦闘における楽しさがスロースターターであるのは余りにも勿体なくマイナスだ。

本作では、わかりやすい操作性から手数の多い攻撃を繰り出すユーリや難度はあるが空中戦を得意とするジュディス、魔法による範囲攻撃で一網打尽に出来るリタなど、キャラクター毎のコンセプトや操作感が全く異なる。
この個性は非常に良く出来ており操作キャラクターを変更するだけで全く違う楽しみが待っているのは大きなプラスのポイントと言えるだろう。
しかし、これらは敵によっては相性が悪い場合が度々出てくるのは問題だ。
例えば前述のジュディスであれば「(敵の重量が重い場合に)空中戦に持ち込めない」と言ったケースが登場する。
特にボスの多くが浮かせる事ができない重量級の巨体であるため、全く本領を発揮できないケースも多い。
バトル自体は良く出来ているだけに、全てのキャラクターが全てのバトルでコンセプト通りに動けるように調整して欲しかった所だ。

調整して欲しいと言う観点から言えばバイトジョーを筆頭に根本的にまともに攻撃をさせて貰えないようなボスなどが存在している事も気になる所だ。
「強い敵」であれば理解できるのだが、「攻撃が当たらない・当てにくい敵」と言うのはコンボ重視な戦闘と言うコンセプトから考えても少し控えめにして頂きたい。

マイナスとまでは言わないが、攻撃時にヒットストップがあればコンボの楽しさはより増しただろう。
ヒットストップはプレイヤーに対して「(有効な)攻撃を行った感」がよりハッキリと感じられ爽快感が増す。
それに加えて、コンボを重視する本作であればヒットストップが導入される事で自分と敵の状態の把握がしやすくなりコンボのやりやすさも向上するハズだ。
ただし、本作は味方も敵も複数で戦闘を行う乱闘状態であるため、ヒットストップ中に攻撃を貰ってしまい途切れるなどの弊害も生んでしまうだろう。
ここには別のアプローチが必要となってしまうが、ヒットストップは是非とも導入して欲しかった要素だ。

 

グラフィック

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トゥーンシェーディングは見事だが、やや物足りなさのあるグラフィック

ToVのグラフィックはスタイライズドされ、トゥーンシェーダーを利用したものとなっている。
トゥーンシェーダーによるアニメ的な映像表現自体は見事に実現されている点は素晴らしいと言っても良いだろう。

しかし、2008年の作品であるとは言え、(スタイライズドである事を加味しても)同年代のものと比べるとキャラクターやフィールドはやや物足りない印象を受ける。
特にキャラクターは各アニメーションに専用のものが用意されているとはいえ、「ストーリー」の項でも記載した通り表情などは喜怒哀楽などのパターンで構成されており、「ストーリーを語る」という側面が強いRPG作品としてはチープさが強くなってしまっている。

声優の見事な演技のおかけで気にならないレベルになっているものの、現代でも観れるとはやや言い難く、「当時の水準だから許された」と言うべきだろう。
フィールドの構成や構造にしてもファンタジー世界である事を活かしたような想像力に富んだ地形などは余り多くないのもやや勿体ない。

前述の「ストーリー」の項でも記載済みだが、本作ではアニメーションが挿入されるポイントがいくつか存在している。
しかし、尺が短いのは勿体ないと言える。
ものによっては「もはや不要だったのでは」とすら思える短時間のアニメーションの場合すらある。

サウンド

ToVにおいてダングレストや終盤の通常戦闘のBGMは迫力があり必聴と言えるものだが、全体的にはそこまで印象に残るような曲は少ない。
本作において特筆すべきなのは曲と言うよりも、やはり演技だろう。
昨今(2010年代)は抑揚の少ないナチュラルな演技がトレンドではあるが、(2008年の作品と言うのもあるためか)本作では全般的に抑揚の強いアニメ的な演技が多く採用されている。
とは言え、どのセリフも非常に活き活きとしており、キャラクターの個性や魅力を十分に感じさせてくれる。

また、戦闘終了時にはキャラクター同士での掛け合いがあり、物語の進行に応じて内容に変化が生まれるなど強いこだわりが感じられる。

(個人的には大本眞基子さんや小野大輔さん、稲田徹さんと言った著名な演者が脇役を何キャラも兼ねている事が色々な意味で面白く感じたりもしたが。)

 

総評

テイルズ オブ ヴェスペリアは大人から子供まで楽しめるストーリー、やりがいのあるバトルシステムを両立させる事が出来た一作だ。
ややダークな設定をした主人公ユーリを筆頭にキャラクターも魅力的で、イベントやスキットで見せる声優の演技も印象的だ。

しかし、終盤にコンセプトがブレてしまうストーリーは勿体ない。
物足りない3Dモデル、面白くなるまでが遅いバトルシステムなどもやや足を引っ張ていると言えるポイントだろう。

 

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【レビュー】SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE

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成すべき事を成す

SEKIRO : SHADOWS DIE TWICE(以下、隻狼)は”死にゲー”と形容されるサブジャンル「ソウルシリーズ」の総本山フロムソフトウェアの作品だ。

世界観はソウルシリーズでは西洋の中世/近世ファンタジーであったが、本作では戦国時代をベースとした和風ファンタジーへと大きく変化したのが特徴的だ。
また、RPG要素の大半が撤廃される事も事前に告知がされていたため、「時間をかければ多くの人がクリア可能」であったソウルシリーズとは異なるプレイになる事も予想された。
筆者としては「新たな武器の獲得」などのRPG要素がプレイのモチベーションでもあったため、隻狼のゲームプレイに対して期待半分不安半分であったのが正直な所だ。

また、ダークソウルをプレイしているユーザーならばピンと来た方もいるかも知れないが、「狼」「左手が機能しない」と言うキーワードからアルトリウスを彷彿させるようなファンサービス的な設定も気になるポイントであった。

今回は隻狼のレビューを行っていこうと思う。

 

SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE - PS4

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  • 発売日:2019/03/22
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SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE GAME OF THE YEAR EDITION

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  • 発売日:2020/10/29
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ストーリー

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明瞭に存在するストーリー

隻狼のストーリーは日本の戦国時代における「葦名」と言う架空の国の物語だ。
とある剣聖の武力により国を興したものの、時が経ち葦名は存亡の危機にさらされる。
葦名はその危機を救うために「御子」と呼ばれる人物が持つ異形の力「不死の力」を得ようと身柄を拘束した。
主人公である「狼」は御子に仕える忍びであり、御子を助けるべく行動を開始する。

ストーリーの導入(動機付け)は比較的オーソドックスな「マイナス」から開始されるものが採用されている。
本作で言えば御子様が連れ去れる事がそれにあたり、主人公の行動は御子様の救出を動機としているのだ。
しかし、御子様の救出がプレイヤーに対しての動機付けとまではなってはいない。
何故ならプレイヤーは開始直後では御子様の事を知らないからだ。
一般的には万人が立ち位置を置き換えやすい家族や友人、恋人がその役割を担う訳だが、御子様はそのどれにも該当しない。
そのため、御子様を失った事の重大さが伝わりにくいのだ(もっと正確に表現すると「大事なのは伝わっても、それがどれくらい大事なのかがわからない」と言うこと)。
本作をストーリードリブンなゲームとして捉える(ストーリー目当てにプレイする)のは間違っていると思うが、少なくともストーリーがゲームプレイを牽引するには弱いと言える。

ストーリー全体では日本の時代劇を彷彿とさせる設定やシチュエーションが用意されているのだが、ソウルシリーズ独特のセリフ感が失われた訳では無い。
その独特な威圧感や底知れない雰囲気を持ったセリフ回しは健在で、例え登場回数が少なかったとしても各キャラクターを非常に魅力的にさせている。

本作のストーリーはダークソウルやブラッドボーンなどの”ソウルシリーズ”と形容されるようになった作品群と比べて明確な、そして明瞭に訴えてくるストーリーが存在している。
もちろん、それはあくまでも「ソウルシリーズと比較した場合」であり、0から100まで丁寧に描かれているという訳では無いのだが、それでもソウルシリーズとは全く異なるストーリーの描かれ方だ。
これは狼と言う明確な主人公が存在しているが故に実現できたことだろう。

 

システム

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殺陣のような立ち回りを再現したチャンバラバトル

隻狼のバトルシステムではチャンバラを実に見事に再現できている。
チャンバラと言って連想できるものと言えば、やはり剣劇の「剣と剣で戦いあう」ものだ。
攻撃は剣で行い、防御も剣で行う。これをゲームプレイとして落とし込めているのだ。

まず隻狼では生命力となるHPの他に「体幹」と呼ばれるゲージが存在している。
上図では敵の上にゲージがある事が見て取れるだろう。
赤いゲージは体力で、その下にある黄色またはオレンジ色に変化しているゲージが体幹ゲージだ。
この体幹ゲージはスタミナにも近い概念のゲージで、蓄積しても時間経過と共に徐々に回復していく。しかし、このゲージが最大値まで溜まると残HPの量に関係なく一撃必殺の攻撃「忍殺」が行えるようになるのだ。
上図でもゲージが最大値まで溜まった際に敵の心臓付近に真っ赤なマーカーが発生しているのがわかるだろう。
この状態で攻撃ボタンを入力すれば忍殺が行われ、上図のように敵のHPが満タンであっても一撃必殺なのだ。

この体幹ゲージは敵に攻撃をガードさせたり、敵の攻撃を弾く事で蓄積させる事が可能だ。
前者では体幹ゲージが蓄積する量が少ないため、「敵の体幹ゲージを回復させない」と言う用途がほとんどだろう。
そのため、体幹ゲージを蓄積させるのは後者の「弾き」が主役だ。
弾きはダークソウルシリーズにおける「パリィ」に相当するようなもので、敵の攻撃をタイミング良くガードする事で発生する。
このように書くと難易度が高い技術のように思えるかも知れないが、実際には弾きの受付時間は長めに設定されている。
また、本作の敵はスピードこそ速いものの初期のソウルシリーズと同様にほとんどの攻撃で前隙がしっかりと用意されているため、落ち着いて対処すれば弾くことは決して難しくは無い。

体幹ゲージを蓄積しての一撃必殺の忍殺は確かに魅力的だが、それが簡単に出来るようでは死にゲーにはならない。
この体幹ゲージは「HPの残量が多いと回復速度が速い」と言う特徴も見逃してはならないポイントだ。
HPが満タンの状態では敵の体幹ゲージは瞬く間に全回復してしまう。特にHP量が多いボスクラスでは忍殺はなかなか狙えないようになっている。
しかし、HPを30%くらい削っただけでも体幹ゲージの回復速度に雲泥の差が生まれるため体幹ゲージを蓄積させやすくなるのだ。

ここで更に注意するべきなのは、この体幹ゲージはプレイヤーにももちろん存在する点だ。
敵の攻撃を弾けずにガードだけになってしまった場合には体幹ゲージが大きく蓄積してしまうし、攻撃でダメージを受ければ体幹ゲージの回復速度が低下し、攻撃やダッシュやジャンプなどを行っている場合には体幹ゲージが回復しない。
そして、プレイヤーの体幹ゲージが最大まで蓄積してしまった場合には無防備な時間が長く発生してしまう仕様となっている。
最大蓄積時に敵とは異なり即死する事が無いのはアンフェアには感じるが、それでも自身の体幹ゲージが蓄積していってしまうのは緊張感がある。
特に体幹ゲージが蓄積してしまうのはHPが低下しているケースが大半であるため、その緊張感は倍増だ。
また、敵の体幹ゲージも放置していれば回復が始まってしまうため、自身の体幹ゲージの回復をせずに攻撃を行って敵の体幹ゲージの回復を阻止するか、それとも敵の体幹ゲージを回復されてでも自身の体幹ゲージも回復するのかというリスクとリターン(駆け引き)が生み出されている。

本作ではHPと体幹と言う2種類のゲージが存在しているが、これらは相互に影響を及ぼすパラメーターとなっているため、戦闘中の行動が無駄になりにくくなっているのは素晴らしいメカニズムと言えるだろう。
もしもこれが相互関係の無いパラメーターであった場合には「HPを削る意味」あるいは「体幹ゲージを蓄積させる意味」が非常に薄くなってしまい、もはや全く別のプレイフィールへと繋がってしまった事だろう。
また、ブラッドボーンにおいては被ダメージを攻撃で回復できる事によってアグレッシブな戦闘を実現したが、隻狼においては防御行動とも言える行動すら攻撃手段として機能するように変化している。
見た目の「チャンバラらしさ」を実現しつつもゲームプレイとして高い次元で成立していると言う”二兎追うものが二兎を得た”本システムは素晴らしいデザインだ。

しかし、基本的なバトルシステム自体の完成度は素晴らしいものの、壁際のカメラワークの劣悪さは強いフラストレーションだ。
本作では上記の通り、敵の攻撃を弾くような立ち回りが多く、必然的に敵の攻撃でノックバックが発生する事も多い。
であるにも関わらず、壁際までノックバックしてしまうとカメラワークが敵キャラクターはおろか、自キャラクターまで認識しにくい状態になってしまう。
特にボス戦は広さこそマチマチだが、閉鎖空間で比較的長時間にわたって戦う事になるため、壁際まで到達してしまう事もありがちだ。
なにより、この劣悪なカメラワークによって死んでしまった時のなんといえない理不尽さを感じずにはいられない。
この問題点はアクションゲームとしては痒い所に手が届いていないものであり、カメラワークの改善を行って欲しい所だ。
とは言っても、問題自体はピンポイントと言えるレベルであり、壁際にさえ行かなければ常に快適なプレイフィールだ。

 

義手忍具

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忍者らしさを強くする義手忍具

ここまで隻狼の話を聞いただけでは主人公が「侍」だと誤解しそうなものだが、主人公は紛れもなく忍者だ。
それを強く印象付けてくれるのが「義手忍具」である。

主人公である狼は物語の最序盤で左腕を失う。
その失った左腕の代わりになるのが義手忍具だ。
義手忍具は忍者が使用する忍具を内蔵することが出来る義手の事で、これによって手裏剣や鉤縄と言った忍者らしいアイテムを使う事が出来る。
多くの義手忍具は使用するために「形代」と言うアイテムを消費する必要があるため、いつでもどこでも何度でも使用できる訳では無い事も注意が必要だ。

義手に内蔵されている鉤縄は忍者らしい動き、そして立体的な移動が1ボタンで簡単に可能になっている。
こちらは上図の中央がそれにあたり、鉤縄での移動では形代を消費する事は無い。
鉤縄はフィールドに設定されている特定のポイントに引っ掛ける事が可能で、ポイントが灰色で表示されている場合には距離が足りていない事を示し、緑色のポイントになればボタン入力で鉤縄を引っ掛けて移動する事ができる。
これは本作において必須の移動手段であり、場所によっては飛び降りないと距離が足りないように設置されている場合もある。

鉤縄を除くこれらの義手忍具は「特定の状況で強い効果を得る」ように設定されているものも存在する。
例えば手裏剣だ。
手裏剣は飛び道具として使う訳だが、その威力自体は非常に低い。
うっとおしい動物タイプの敵ならば一撃で葬り去る事もできるが、人型の敵は始末しきれない。
また、敵がこちらに気付いている状態ならばガードによって弾き飛ばされてしまう。
そんな手裏剣だが、空中にいる相手に当てると特効が発生する。
HPへのダメージもそうだが、体幹へも大きなダメージを与えられるようになっている。
全ての忍具にこのような特効が用意されている訳では無いのだが、対峙している敵に特効が利きそうなのであれば試してみても面白いだろう。

 

スキル

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数少ない成長要素

隻狼はダークソウルやブラッドボーンと比較すると圧倒的にRPG要素が少ない。
そんな中でも唯一と言える主人公の成長要素がスキルだ。
「なんで”スキル”は横文字なんだ」「代替するカッコいい日本語名は無かったのか」と若干思わなくもないが無粋だろう。

スキルでは敵に与える体幹ゲージへのダメージが上昇するものがあったり、上図の右のような「流派技」と呼ばれる特殊攻撃が習得できたりする。
特に前述のスキルは有用なものも多いため、早めに習得しておきたい。
そして後者の流派技だが、これは少々残念だ。
実戦に耐えうる流派技も一部存在するものの、その大半がゲームスピードが速い本作のような敵には全く機能しない前隙が大きい流派技なのだ。
その上、モノによっては前述の義手忍具でも使用する事になる”形代”を消費して発動する有様で割に合わない。
スキルは敵を倒したポイントを消費する事で習得していく事になるのだが、決して安くは無いポイントを消費して使い道がほとんどない技を獲得してしまうのは悲しい所だ。
例えば「隙は大きいが、当てられれば敵の体幹ゲージ回復を一定時間停止できる」など、前隙の大きさに見合った(もしくはそれ以上の)大きなリターンがあるのであれば使用する事もあっただろう。
見た目が派手なだけで、使い道のない流派技が多いのは嘆かわしい。

ここでやはり気になるのは、RPG要素の大半が撤廃されているために冒頭に記載した発売前の印象通りの気になるポイントに繋がっている事だろう。
まず、RPG要素が無くなってしまっているためにダークソウルやブラッドボーンのように時間さえかければ多くの人がクリアできるとは言い切れない。難易度を調整するような機構も存在していないため尚更だ。
近年ではクリアする事の重要性自体は低くなっているが、だからと言ってクリアがしにくくなっている事に目を瞑る事は出来ない。
そして、RPG要素の撤廃によりキャラクタービルドや武器防具収集がプレイのモチベーションに繋がっていた筆者のようなプレイヤーには小さくは無いマイナスだ。

 

ボス

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強さとしてやや淡泊なボス達

隻狼のボスのキャラクター性は非常に魅力的だ。
特に本作ではカットシーンなどでキャラクターのセリフがしっかりと用意されているボスも多く、底知れない雰囲気を持ったセリフ回しから漂う圧倒的な強者のオーラは非常にカッコいい。
しかし、人間に近い体格をしたボスが大半を占めているため、インパクトは少々見劣りすると言わざるを得ないだろう。

見劣りするのは見た目だけでは無い。その強さに関しても同様だ。
まず、ボスのHPは2ゲージ分以上あり、1本分を削り切ると攻撃パターンが数個追加されるケースは度々あるのだが、戦闘方法が一新されるような「第二形態」が存在する事は非常に珍しくなっている。
そして、前述の”弾き”を始めガード性能全般が優秀過ぎる所があり、弾けなくともガードさえ出来ればHPへのダメージは無い事が大半だ。
ガード不能技には「危」という文字が画面上に表示され、文字通り危険な事がすぐにわかる。
ガード不能技とは異なる性質の「ガードを貫通してダメージが入る攻撃」をしてくる敵は極めて少ない。
また、主人公は無尽蔵のスタミナを持っており距離を取る事も容易くなっている。
結果として、優秀なガード性能を押し付ける事で早々にボスの攻撃パターンを覚えきってしまう事が容易で、”二段階目”もほとんど無いためHPゲージが2本分あろうともプレイヤーがやる事には変化は生まれず、問題なく…否、問題になるポイントすら無く倒せてしまう。

「筆者の場合では」と言う前提で記載するが、敵の攻撃パターンや特徴を覚えて機械的に(ほとんど"音ゲー"と同じ感覚で)処理しきってしまう事が多く、操作やボタン配置に慣れた中盤頃からはボスであっても多くて2~3回の挑戦で撃破できてしまう事が大半であった。
そのため、義手忍具を活用する(色々な事を試してみる)必要性に迫られる事が無く、ボス戦における義手忍具と言う要素に「わざわざ感」を強く感じた。
3D系ゼルダの伝説のような「特定の義手忍具を使わないと(ほとんど)太刀打ちできない」くらいのパズル的な攻略方法にするべきかは議論の余地があるが、少なくなった”第二形態”の代わりに「敵の攻撃方法の動的変化」などを導入してみても面白かったのではないかと思っている。
攻撃方法の動的変化とは、敵のHPゲージを1つ削り切った段階でのプレイヤーの行動傾向から、HPゲージの2本目からはそれに対して対策となりうる攻撃パターンが解禁される…と言ったものだ。
例えば、突き攻撃に対して左右に回避するような立ち回りをしがちなプレイヤーに対して、HPゲージ2本目からは薙ぎ払うような攻撃が解禁されたりするイメージをして貰えると伝わりやすいだろうか。
つまり、プレイヤーの行動傾向をフィードバックして敵が立ち回ってくるようにしてみてはどうか…という事だ。
これで本当に面白くなるのか(多くの人に受け入れられるか)は保証できないが、あくまで筆者の好みとしてパターンを覚えて精度良く行動をするだけのゲームよりも、状況に応じて臨機応変にアドリブ性をもって行動できるゲームの方が達成感が強いのだ。

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人権の無いボスも多い

序盤で登場したボスと類似した見た目でほとんど同様の技を使うボスが中盤頃から度々登場する点も少々気になる所だ。
本作のような動的変化の無いアクションゲームは元も子もない事を書いてしまえば「覚えゲー」だ。
敵の行動パターンを知り、その隙を理解する事で倒す事ができる。
しかしそれは違う言い方をすれば「一度理解した敵に人権は無い」に等しい。
攻撃パターンや大きな隙が生まれるタイミングを熟知している敵はもはや相手にすらならない。
フロー理論」と言うものをご存知の方もいるだろう。
フロー理論とは「没頭する事に対する再現性を研究したもの」だと思って貰っても良い。
フロー理論によれば、人が没頭する条件の一部に「不安や緊張感があること」「自分よりも僅かに高いスキルを要求されること」と言うものがあるのだ。
初めて挑むボスならば勝てるかどうかもわからないため不安だろう。
そして、ソウルシリーズや隻狼などは(僅かであるかはさておき)高い精度のスキルを要求される事も多い。
確かに、フロー理論における”没頭”の条件に合致しているように感じる。
しかし、以前に勝利した事のある相手の場合ではどうだろうか。
「勝てるとわかりきっている相手」では不安や緊張感は無く、「既に乗り越えた相手」は自分のスキルレベルよりも低いのだ。
ダークソウルやブラッドボーンにおいてはボスが使いまわされる事は非常に稀であっただけに、何故このような敵の使い方をしてしまったのかはわからないが残念と言う他ない。

 

死と回生

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噛み合いきらない生と死

隻狼は死にやすいゲームだ。
そのため、「死」と言う事象をゲームのシステムに組み込もうとしている。
考え方としてはダークソウルやブラッドボーンと同様だが、そのアウトプットは少々異なるものに変化している。

まずゲームプレイ中のタイムスケールとして最も短いサイクルである「回生」だ。
回生とはプレイヤーが戦闘中にHPが0になってもHPの最大値の半分で復活ができるシステムだ。
回生を一度使うと、リスポーン位置に戻る(死亡含む)、または忍殺などを行わないと再使用はできず、その状態でHPが0になると死亡となる。
一見ありがたい仕様のようにも感じるが、結局はHPの最大値の半分という非常に半端な状態での復活であり、「最後のあがき」と言う側面が強い要素だ。
しかし、HPゲージが2本あるボス戦において1本目のゲージを奪う前に回生した場合には、HPゲージ1本目を奪う際に忍殺を行うためボス戦中に再度回生が行えるチャンスが巡ってくるケースもある。
そのため、ボス戦で早々にやられてしまったとしても、トータルで見た場合には必ずしも不利が付きまとう事は無いようになっており、「ゲージを奪えばまた回生できる」と言う気持ち的な仕切り直しにも役立っている。

次に冥助と言うシステムだ。
冥助はプレイヤーが死亡してリスポーン位置に戻った際に確率で発生する。
通常死亡した場合には経験値とお金は所持の半分となるのだが、冥助が発動すると「経験値やお金がロストしない」のだ。
だが、ハッキリ言って本作のゲームプレイからしてこれは全く意味を成していない。
根本的に死亡回数が多い本作のようなゲームにおいて冥助が発動した頃にはロストするものが無いくらいスッカラカンである事がほとんどだ。
冥助の発生確率は10~30%なのだが、これはもはや「確率がもっと高ければ…」とかそういう次元の話では無い。
ストーリーテリングの面からも全く機能していないため、根本的に全く意味のないシステムなのだ。
このようなシステムにするくらいなら「確率でアイテムが貰える」にしてくれた方がまだ実用性があるくらいだ。

最後に死のデメリットも説明しておこう。こちらはタイムスケールとしては少しロングスパンな要素となっている。
プレイヤーが死に過ぎた場合には「竜咳」と言うものが発生する。
竜咳とは簡単に書くとプレイヤーの不死の代償として周囲の者に発病するものと説明され、これが酷くなるとNPCとのイベントなどが滞ってしまうなどのデメリットが発生する(あと一応、冥助の確率が下がる)。
確かに、プレイフィールとしては自身が不甲斐ないせいで善良なNPCに迷惑をかけてしまうのは申し訳ない気持ちにはなるうえ、最初のうちは死ぬ事へのデメリットがあると言う事実だけでもプレッシャーが生まれる。
しかし、プレイを重ねるにつれゲームシステムとしてはそこまで強烈なデメリットでは無い事がわかっていき、次第に竜咳が蔓延しても余り気にする事が無くなってしまうのは折角の設定が活かし切れておらず勿体ない。

冥助や竜咳と言う「死」へのアプローチは「死ぬ事にフィーチャーしているからにはシステム面でも何か組み込まなくては」「今までのソウルシリーズとは異なる方法にしなくては」と言う目的と手段が逆転したような考えから導入されてしまったような気がしてならない。

 

フィールドアクション

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RTAを意識したかのようなフィールド設計

隻狼では前述の通り鉤縄を使用した立体的な移動が可能になっているほか、草むらに隠れて敵から見つからないように移動する事もできる。
また、(前述”ボス”の項で少しだけ触れているが)主人公は無尽蔵のスタミナを有しており素早く走り続ける事ができる。
更に、壁キックによる追加ジャンプもできるのだ。
ん?普通の人間はそんなことできない?主人公は忍者であるためこれくらい出来て当然だろう。

これらによって道中の敵の大半を無視して進むことが可能になっている。
前述の義手忍具・鉤縄を駆使して立体的に移動してしまえば敵の追跡は簡単に撒けるし、無尽蔵のスタミナで走り抜けてしまえばこっちのものだ。
ボス戦に関しては流石に無視して進むことはできないようになっているが、逆に言えばボス戦以外は無視する事は容易い。

ソウルシリーズではRTA(リアルタイムアタック)が行われる事も多かった。
本作のフィールドではそのようなプレイも見越した様々なルートの設計が行われているように感じる。

 

グラフィック

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戦乱による荒廃と神秘的な和を感じさせるフィールド

隻狼のグラフィックは美しい。
キャラクターの造形にはフロムソフトウェア特有のクセが感じられるものの、フィールドのデザインは戦国自体の戦いによる荒廃と日本らしい神秘的な美しさが融合しており素晴らしいの一言だ。

フィールドには瓦屋根の上を走ったり、床下や天井裏など忍者あるある的なポイントも用意されている事も忘れてはならない。

 

サウンド

音楽は当然ながら和テイストだ。
ゲームプレイ中では敵との戦闘状態になった際にBGMが強く挿入される形となっている。
現代的なインタラクティブミュージックの手法の1つだが、BGMの使い方としてほどよい緩急だ。
初回特典のミニサウンドトラック分のものしか曲名がわかっていないが、筆者としては聴く事になる回数も多かった「強者」はお気に入りだ。

また、本作ではほとんどのカットシーンでセリフ付きのボイスが挿入されるのも特徴なポイントと言えるだろう。

 

総評

隻狼はチャンバラアクションと神秘的なフィールドが織りなす唯一無二の死にゲーだ。

チャンバラアクションは見た目とシステムの両面で高次元に成立しており素晴らしいの一言だが、機械的に処理するだけの単調なボスや意味を成していない「生と死」のシステムなどなど、光るポイントはありつつも詰めの甘さが残っている。

しかし、本作がやり応えのあるアクションゲームとして素晴らしい作品であることは忘れてはならないポイントだ。
RPG要素を廃したり、ストーリーを強化したり、舞台を日本にしたりと続編あるいは次回作にも十分に期待が持てる多くのチャレンジを行った事も評価したい。

 

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【レビュー】ファイアーエムブレム ヒーローズ

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キャラクタービルドの聖地

ファイアーエムブレム ヒーローズ(以下、FEH)は2017年にサービスが開始されたファイアーエムブレム(以下、FE)シリーズのスマートフォン向けアプリだ。

FEHはいわゆるシミュレーションRPGのゲームであり、歴代のFEシリーズに登場した様々なキャラクターが登場する作品だ。

今回はスマートフォン向けアプリである本作のレビューをしていこうと思う。
なお、昨今のゲームの大半が該当する事ではあるがスマートフォン向けアプリでは特にアップデートによる追加・変更の頻度が高いため古い情報が記載されている場合もある。
可能な限り記事もアップデートしたいと思っているが、古い情報が載っている場合にはご了承願いたい。

 

fire-emblem-heroes.com

 

ストーリー

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ほとんど無いと言っても良いストーリー

FEHにおけるストーリーの完成度は残念と言わざるを得ない。

ストーリーという項目こそ存在しているものの、その内容はほとんど無いと言っても過言ではないものだ。
本作におけるストーリーの役割とは新規実装されたキャラクターが敵としてお披露目される舞台であり、その新規キャラクターにしても一言か二言くらいのテキストが用意されている程度だ。
確かに過去のタイトルのキャラクターに新たなセリフが用意されていること自体は嬉しい要素とは言えるのだが、キャラクター性を目当てにプレイを開始すると肩透かしを喰らうだろう。

また、FEHのオリジナル物語であるアスク王国のヴァイス・ブレイブという組織を中心として話は進んでいくのだが、その物語自体は厚みは無く淡泊な印象を受ける。

せっかくファイアーエムブレムシリーズのオールスター的な作品であるのだから、本編では有り得ないようなキャラクター同士の掛け合いがあって欲しかったと思うのが普通だろうが、本作においてそのような展開は非常に少ない。
イベント「想いを集めて」のクリア状況に応じて展開されるストーリーがクロスオーバー的な会話が存在したり、個別のキャラクターに焦点を当てたストーリーが展開されたりする数少ない要素となっている。

シミュレーションRPGと言うジャンルの中で「キャラクター性」を強い個性としたFEシリーズにおいて、ストーリーやキャラクターの描写が物足りない点は残念だと言わざるを無いポイントだろう。

 

システム

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マップは狭いが戦略が凝縮されたSRPG

FEHはシミュレーションRPGのゲームだ。
本作においてはレギュレーションによって差異はあるのだが、基本となるものは戦場が「6x8」という狭いマップで、ユニットは最大で4枠となっているのはシリーズとしては特徴的と言える。
これはスマートフォン向けアプリである事から、比較的短時間で1戦が終了できるように配慮されているためと思われる。

ファイアーエムブレムシリーズお馴染みともいえる「三竦み」や「特効」などの要素は健在だ。
三竦みはシリーズでも途中から導入されたシステムだが、本作においては若干特色が異なる。
シリーズならば剣が槍に、槍が斧に、斧が剣にそれぞれ弱い特性を持っているが、本作においては各ユニットには「色」がその三竦みを表している。
赤は青に、青は緑に、緑は赤に弱いのだ。
例えば、赤色の物理近接キャラクターは剣使いとなるのだが、赤色の魔法使いなども存在する。そのため、赤の魔法使いであれば緑色のキャラクターに対して強気にだせる訳だ。
また、シリーズ同様に有利も無ければ不利も無い三竦みの枠外も存在する。
灰色の「無色」と呼ばれるものがそれに該当し、一部例外はあるものの弓を扱うユニットなどはその筆頭だ。
前述の通り、本作においてはユニット数も少ないため1ユニットがカバーするべき仮想敵(例えば、「赤色には倒されない」などの役割)の比重も重くなっている。
キャラクターの特性などを良く考えてパーティー編成をする必要があり、単純な数値上のステータスが強いだけでは勝つ事は難しい。

誰もが手軽に始められるFree to Play(Free to Start)タイプのスマートフォン向けアプリである本作であるが、戦闘における戦術性や戦略性の見劣りはほとんど無い…どころかマップの狭さやユニット数の少なさがあるため、(シリーズとしては)独特な非常に奥が深い戦術性・戦略性が存在していると言えるだろう。

なお、シリーズで特徴的な「ユニットがやられると復活しない」といった要素は本作では排除されているため、その点は安心して良いポイントだ。
また、「攻撃を回避する」を始めとした運が絡む要素に関しても撤廃されているため、シリーズ経験者はより堅実な戦術・戦略を練る必要がある点は注意した方が良いだろう。

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大きめのマップで多めのユニット扱う制圧戦

上述したバトルの他にも「制圧戦」と区分されるレギュレーションも存在する。
制圧戦の場合には8x10マスの少しだけ広い戦場マップとなり、味方と敵の出撃人数も2倍に増加する。

制圧戦では拠点が用意されており、その拠点を陥落させる事を目指す。
拠点の数はマップにより4つだったり6つだったりするが、本拠地を陥落させた方が勝利となるルールだ。
ユニットがやられた場合には予め設定した控えユニットが出撃するため、現状の戦場に出撃しているメンバーを全て撃破しても気を緩めてはいけない。

 

バトルコンテンツ

FEHにおける主なコンテンツについても一部だけ触れておこう。

 

ストーリーマップ

ストーリーマップは前述の通り、新規実装キャラクターを紹介する役割が主となるコンテンツだ。
話自体はアスク王国のヴァイス・ブレイブと言う機関が中心となったオリジナルの話が展開される。

ストーリーマップでは「メインストーリー」と「外伝」などが存在する。
メインストーリーと外伝は章単位で構成されており、1つの章辺りメインストーリーは5つ、外伝は3つ分のバトルシチュエーションが用意されている。
バトルフィールドでは新規実装キャラクターが敵として配置されており、ステータスやスキル構成が把握できる。
また、戦闘前には一言二言のセリフが挿入されるため、原作を知らないユーザーであっても僅かではあるがキャラクター性も把握できる。

バトルの難易度は「ノーマル」「ハード」「ルナティック」の3種類で、ある程度の戦力さえ整っているユーザーであればクリアするのにそれほど苦労する事は無いだろう。
また、各バトルの初回クリア時には後述の「召喚」で使用する事になるオーブが1つ入手できるため、各難易度を積極的にクリアしていきたい所だ。

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初心者向けのコンテンツも用意されている

ストーリーマップでは初心者用の基礎学習が行えるコンテンツ「クイズマップ」も用意されている。
筆者としては「習うより慣れろ派」なのだが、基礎知識をしっかりと知っておきたいと言うユーザーは(ケーススタディーであり応用力までは身に付きにくい所はあるが)まずは「基礎編」だけでもクリアしておくと良いだろう。

 

闘技場

闘技場はFEHにおけるエンドコンテンツのような位置付けの遊びだ。

端的に言えば、自分が育て上げたメンバーを他プレイヤーが育てたメンバーと戦わせて勝利を目指す…と言った内容だ。
他プレイヤーと戦うと言っても直接的なPvP(プレイヤーvs.プレイヤー)という訳ではなく、あくまでも他プレイヤーが設定した部隊を動かすCPUと戦うといった具合の非同期型の対戦となっている。
そのため、マッチングなどを気にする必要も無く気軽にプレイする事が可能だ。

闘技場では勝利する事でスコアが加算されていき、最大5連勝分までのスコアの合計値で他ユーザーと競う事となる。
詳細には書かないが、このスコアが高ければ良い報酬が貰える仕組みと思って貰って良いだろう。
スコアを競う1シーズンは一週間単位で行われており、そのランクによってオーブなど嬉しいアイテムが貰える。

しかし、この闘技場でスコアを上げる方法には少々問題点がある。
スコアは基本的に「対戦相手のステータスが高ければ、高いスコアが出る」ような仕組みなのだが、相手の能力を高くするには自分の出撃メンバーのステータスを上げていく必要がある。
そうなってくると、ステータスが低く設定されている魔法使いや騎馬、飛行と言ったキャラクターではハイスコアが狙いにくく、ステータスが高い重装(アーマーナイト)でしか一定以上のハイスコアを狙いにくい状況になってしまっているのだ。
もちろん、魔法使いや騎馬、飛行を利用しても ある程度の高いスコアは出せるのだが、更に上位を目指す場合にはどうしても限界が出てきてしまう。
そのため現状では一定以上のランクにおいて「皆が皆、似たり寄ったりの部隊編成・スキル構成」となりがちなのだ。
最近では「死闘系」と呼ばれるスキルなどが実装され、重装以外でもハイスコアが狙えるような調整が行われているもの、そもそも「死闘系」のスキルの入手が難しい側面が強い。
また、重装のハイスペック化も相まって「死闘系」を使用したとしても十分なスコアが獲得できるとは言い難いのが実情だ。

 

飛空城

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より難易度の高い疑似PvP”飛空城”

飛空城は闘技場と同じくFEHにおけるエンドコンテンツのようなものとなっている。

プレイヤーは通常の戦闘と同様に「6x8」のマップで他ユーザーが作成した部隊と戦う事となるのだが、飛空城において作成するのは部隊編成だけでは無く、「マップのオブジェクト配置も行う」のだ。
攻撃時には他ユーザーが配置した部隊やオブジェクトに対処しつつ攻略する必要があり、防衛時には自軍を操作するCPUの事も考慮しつつ部隊やオブジェクトを配置する必要がある。
攻撃においても防衛においても難易度は高めではあるが、それ故に敵を撃退できた時の喜びも大きい。
FEHというコンテンツにおいて最もエクストリームなエンドコンテンツとなっている。

なお、防衛時の戦闘は後から再生が可能となっており、自軍のCPUが想定通りに動作しているかなどのチェックも行える。

こちらのスコアは単純な勝利や防衛によって変動するため、闘技場のようにステータスに依存するところは少なく、比較的多様なユニットを配置しやすいのは面白いポイントだ。
とは言うものの、強力なユニットだけの編成がしやすいため「本当の意味で多様性があるか」と問われるとやや疑問が残る仕様だ。
これは筆者の考えだが、「ユニットコスト制限」を設けるだけでもかなり違うと思うのだ。例えば部隊編成において「全ユニットのステータスおよびスキルコストの合計値が○○以内」「全ユニットの移動距離の合計値が××以内」などの条件を設ける訳だ。
これによって今まで不遇とも言えたキャラクターやスキルにも光が当たる可能性が大きく上がるのでは無いかと思う。

 

英雄決闘
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リアルタイムのPvP

「英雄決闘」は2021年12月に実装された本作で初めてのリアルタイムのPvPコンテンツだ。

このモードではユニットを動かす上でのルールが異なっており、「1ユニットを動かすと、相手のターンになる」という、より将棋に近いものになっている。
そのため、一気に攻勢をかけるような戦術は出来ない。
また、マップ上には「制圧エリア」と呼ばれる領域が存在し、このエリアにより多くユニットが配置されていればポイントが貰えるようなドミネーションルールも存在する。
そして相手を全滅させるか、最終的なポイントがより多い方が勝利となる。
リアルタイムPvPである事を考慮したルールになっているのは良いポイントだ。
通常のコンテンツとは全く異なる立ち回りが要求されるが、本作のルールにおいては二人零和有限確定完全情報ゲームの状況が成立するため、相手の失着を待つ戦略(ミニマックス理論)が基本戦術となるだろう。

このコンテンツのリワードは積み上げ方式を採用しており、ランキングのようなものがない。
戦う事でポイントを貰う事が可能で、勝てばより多く取得できるような形式となっている。
そのため、良く言えば殺伐とならずに楽しむ事が可能だが、悪く言えば競技性がやや低くなってしまっている。

とは言え、本作で初めてのリアルタイムなPvPであるため、よりコアなユーザーにとっては他ユーザーと競い合える嬉しい要素だと言えるだろう。
そのうえ、その他のコンテンツでは攻略的な側面が強かったが、動的な部分が増えた本コンテンツは動画映えもある程度は期待できるモダンな楽しみ方ができる内容だ。

 

イベント

FEHでは定期的にイベントが開催されている。
本作のイベントでは「他ユーザーとスコアを競う」と言う要素自体はあるものの、それが前面には出ておらず、あくまでもユーザーが自分のペースで楽しめるような内容となっている。
開催期間も比較的長く、毎日2~3回ほどの僅かなプレイでも十分なイベント進行報酬が受け取れる事が多い。

イベントには「かんたんタップバトル」「大制圧戦」「投票大戦」「戦禍の連戦」「想いを集めて」などがある。
どれもプレイする事で貰える報酬は悪くなく、時間的拘束時間も少なく済むためコツコツとプレイするのが良いだろう。

しかし、逆に言えばイベントは「ストーリー」と同様にどれも淡白な内容であり、やや物足りなさを感じる。
例えば、単純に思いつくものなら「ユーザー間の競争意識を高めるイベント」などエンドコンテンツと呼べるようなイベントがあっても良いように思えるのだ。
現在でも一応は「ユーザーのイベントの貢献点」のようなものがランキングになっており、その順位によって報酬も変化するのだが、上位を目指したいと思えるようなものにはなっているとは言い難い。
上位を目指すよりも、イベントの進行で確実に貰える報酬の方がよっぽど貴重であったり、価値が高いのが現状だ。
それはそれで嬉しいのだが、イベントの中に1つくらいは「競争」するイベントがあっても良いのでは無いだろうか。
また、報酬の内容にしても闘技場や飛空城で役に立つような代物であるケースも多く、本タイトルのイベントは「エンドコンテンツ」というよりも「エンドコンテンツのためのコンテンツ」なのだ。

とは言え、FEHのイベントにおいて群を抜いて面白い「偶像の天楼」というものもある。
これは指定されたキャラクターを使用してランダムに変化する敵を倒していくようなイベントなのだが、このイベントの最大の特徴は何と言っても「キャラクターをビルドしていき進行していく」という点だろう。
後述するが本作において最も魅力的なキャラクタービルドという成長を行いながらステージをクリアしていく本イベントはFEHという作品の最も楽しい部分だけを煮詰めたような内容になっている。

 

キャラクタービルド

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奥深いキャラクタービルド

FEHにおいて最も魅力的な要素を挙げるとするならば、それはキャラクタービルドだ。

本作のキャラクターのステータスは「HP」、「攻撃」、「速さ」、「守備」、「魔防」、そして「スキル」と「武器」が存在している。
基本能力であるHP、攻撃、速さ、守備、魔防はだいたいの想像がつくと思うので説明は割愛し、ここでは武器とスキルに関して簡単に説明をしておこう。

スキルはA、B、Cの3つの枠が存在している。
Aスキルは主に「戦闘に影響を及ぼすもの」となっている。
Bスキルは主に「広義なサポート」を行うもの。
Cスキルは「バフやデバフ」と言ったものが中心だ。
これらのスキルを組み合わせてキャラクターが輝く方法を模索するのはキャラクタービルドをするのが好きな人にはたまらないだろう。

武器は名前の通りキャラクターが使用する武器で攻撃力を上昇させる。
しかし、大半の武器はそれだけでは無く何かしらのユニークなスキルを内蔵している事がほとんどだ。
例えば、武器によっては特定のAスキルに相当する効果が内蔵されているなど、武器によって様々だ。
名前こそ「武器」だが、ほとんどスキルと同義だと思った方が良いかも知れない。

ビルドの方向性は多種多様

リリース当初こそキャラクタービルドの自由度は低かったものの、「スキル継承」や「聖印」「武器錬成」と言った追加要素によって非常に幅広いビルドが可能になっている。

スキル継承は端的に表現すれば「キャラクターを消費して、そのキャラクターの武器やスキルを別キャラクターに受け継がせる要素」だ。
ただし、例外もあり”ファルシオン”や”封印の剣”などの特殊な固有武器・スキルは継承する事は出来ない。そのため、継承できない固有武器・スキルを持っているキャラクターは個性が出しやすいキャラクターであるとも言えるだろう。
もちろん、固有武器やスキルを装備させず汎用のものを使用する事も可能であるため、自分好みのビルドを考えると面白いだろう。
なお、固有武器や武器錬成に関してはアップデートによって順次追加がなされている。
特にステータスやデフォルトスキルでやや遅れを取っている初期実装キャラであっても強力あるいはユニークな性能で頭角を現す場合も多い点は魅力的なポイントだ。

聖印はイベントなどで定期的に追加されている装備品のようなものだ。
聖印にはスキルが内蔵されており、前述のA、B、Cの3つのスキル枠とは別にキャラクターにもう1つだけスキルを任意に付与できるに等しい。
聖印に内蔵されているスキルはA、B、Cのいずれかのカテゴリーのスキルであるため、キャラクターをより手厚くサポートできる要素だ。

また、その他にも特定のキャラクター同士を一緒に出撃させる事でキャラクターを強化できるようにする「祝福付与」や「支援」「ダブル」。
お気に入りのキャラクターを強化できる「召喚師との絆の契り」「神竜の花」と言った要素も存在している。
ファイアーエムブレムシリーズでは数多くのキャラクターが登場してきたが、好きなキャラクター達を活躍できるようにビルドを考えて楽しむ事が出来るようになっているのはシリーズファンとしても嬉しい限りだ。

とは言え、実装当初から比べると非常に多くの要素が追加されており、「今から始めてみよう!」と思うユーザーには覚える事が多く少々とっつきにくい所は否めないだろう。

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激化レイヴン

典型的なビルドの例を挙げてみよう。
上図は一般に「激化レイヴン型」と呼ばれるビルドを行ったものだ。
「○○レイヴン」と呼ばれる魔法には「無色に三竦み有利属性の判定となる」効果が内蔵されており、これをAスキル「相性激化」の効果によって更に有利な状態にする。
これにより自身の得意属性(緑属性なら青に強い)+無色に無類の強さを誇るキャラクターに仕上がるのだ。
欠点としてはスキル相性激化のデメリットにより苦手属性からの攻撃にはより一層弱くなってしまう点だが、これはパーティーの構成と運用で補う必要がある。
この激化レイヴン型は初心者でも比較的作りやすく、また得意属性+無色キラーと言う2つの役割を持たせる事が可能であるため非常に重宝するビルドだ。
なお、上図のセシリアの場合にはBスキルに「緑魔殺し」を付けて得意属性+無色+同色魔法キラーの3つの役割を持たせている。

このようにスキル効果の組み合わせによるシナジーを考慮してビルドを行っていくのが本作の最大の醍醐味なのだ。

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ネタビルドには楽しさが詰まっている

また、実戦向きでは無い「ネタビルド」のような方向性に挑戦してみるのも面白い。
例えば、上図は筆者のネタビルドの筆頭であるアーダンだ。
彼は速さと魔防は無いに等しいが、守備が50を超える耐久性を持っている。
そして彼には武器に「守りの剣」、Aスキルに「金剛の構え」を継承させている。
これにより敵から攻撃をされた場合に限り、守備が追加で+13(守りの剣で+7、金剛の構えで+6)され、守備の値は60を軽く超える鉄壁となるのだ。
物理攻撃にしか対応していないこのビルドでは実用性はほとんど無いのだが、物理攻撃ならば苦手属性であっても完封すらできる耐久性は見ていて面白い(贅沢を言えば「金剛の構え4」を装備させたいが)。

このように様々なスキルを組み合わせて、凶悪な性能もしくはユニークな性能を持ったキャラクターを作り上げる事ができるのは楽しいの一言だ。

 

召喚

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召喚

FEHにおいてキャラクターを獲得するには「召喚」と呼ばれるシステムを利用するのが一般的だ。
一部のイベントでは条件を満たす事で獲得できる配布のキャラクターも存在しているが、それだけではなかなか戦力が厚くならないケースがほとんどだ。

「召喚」とは平たく言えばガチャだ。
本ゲームはルートボックスなどとも呼ばれるようなガチャ課金形式でのマネタイズ(運営)となっており、課金を行う場合には類似の方式を採用する他のゲームと同様に自分の財布と相談しながらするのが健全だろう。

また、召喚には「オーブ」と言うアイテムを消費するのだが、本作においてオーブはログインボーナスなど無償配布される分だけでも結構な量を貰えるため、手軽に遊んだりする分にはそこまで苦しい思いはしない。
上位を目指したり、好きなキャラクターを強くしたいなどの場合には必要になってくる事も多いだろうが。

詳しい説明は省くが、本作のガチャにおけるシステムでは「最高レアリティ星5のキャラが出なければ、星5の出現率が上がる」と言うものになっている。
星5でのみ排出されるキャラクターもいるため一見するとありがたい仕様なのだが、このシステムでは痒い所に手が届いていない点が最大問題となる。
結論から先に書いてしまえば「自分が欲しいキャラを出せない」のだ。
確かに本作においてはどのようなキャラであっても活躍できない事は無い。
初期実装のキャラクターと最新のキャラクターで性能差は否めない点はあるものの、スキル継承や固有武器実装、武器錬成などでいくらでも挽回する事ができる。
この点は確かに魅力と言えるポイントではある。
しかし、実際にガチャをする場合は「誰でも良い」のではなく、「お目当てのキャラクター」がいる事が大半だ。
当然だが星5の出現率が上がったからとて「お目当てのキャラクター」が出てくるとは限らない。まして、本作ではFEシリーズのキャラクターが続々と実装されてきており、星5限定排出のキャラクターも多くなってしまっている。
そのため、目当てのキャラクターを獲得できる確率が時間と共に滝のように下がってしまっており、いくらガチャをしても目当てのキャラクターが一向に引けない事が多くなっている訳だ。
その上、狙っていない星5キャラクターを引いてしまった場合には出現確率が初期値にまで戻されてしまうため、(ここは感情先行の話になって申し訳ない所だが)例え引いたのが良いキャラクターであっても悲しさは倍増してしまうのは非常に勿体ない。
運営側には「星5限定排出対象キャラクターの整理(削減)」や「確定ガチャ権の販売」やガチャ数に応じてキャラクター指定で獲得できるいわゆる「天井」の実装を早急にお願いしたい所だったが、リリースから3年が経過した2020年の4月に新キャラクター召喚ガチャに限り天井が遂に実装された。
全てのガチャが対象ではない点は寂しい所だが、天井の敷居も低いため多くのユーザーが恩恵を受けやすくなっているのは評価できる設計だ。逆に「もう少しで天井だから追加でガチャを回してしまおう」と言う心理が働き、今までよりも余分にガチャを回してしまう事すら考えられるものになっている。

 

グラフィック

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様々なイラストレーターによって描かれたキャラクター

FEHでは様々なイラストレーターによってキャラクターが描かれている。
そのなかにはFEに縁のあるイラストレーターが参加していることも多く、ファンにとっては非常に嬉しいポイントだ。

イラストは「立ち絵」「攻撃絵」「奥義絵」「被弾絵」の4パターンからなっている。
原作からかなり時間が経っているキャラクターもいるため、現代仕様にリファインされた彼らを観るだけでも価値はあると言えるだろう。

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戦闘アニメーションも悪くない

FEHのマップ上や戦闘ではデフォルメされたチビキャラクターが躍動する。
見た目が可愛らしく迫力と言う意味では欠けるかも知れないが、原作を再現した攻撃アニメーションを見せるなどファンにはたまらない演出も多い。
戦闘をスムーズにしたい場合には設定によって戦闘アニメーションをカットできるため、ゲームプレイに集中したい場合にはアニメーションをOFFにしたり、キャラクターの活躍がみたい時にはアニメーションをONにして使い分けるのが良いだろう。

 

サウンド

FEシリーズの楽曲はメロディが良く、耳に残るような名曲たちが多い。
本作で流れる音楽はそんな歴代のFEシリーズのBGMを数多く使用しており、歴代シリーズのファンが非常に嬉しいポイントである事はもちろん、知らないユーザーであってもオススメできる楽曲ばかりとなっている。

 

総評

ファイアーエムブレム ヒーローズはシリーズのクロスオーバー作品でありながらシリーズファンに喜ばれる要素が少し物足りず、またシリーズの個性とも言えるキャラクター性においても少し物足りない作品となってしまっている。
しかし、ゲームプレイ部分におけるシミュレーションRPGの面白さとキャラクタービルドの奥深さは間違いなく素晴らしく、噛めば噛むほどに旨味が出てくる作品に仕上がっている。

 

外部記事

ファイアーエムブレム ヒーローズ お祝いイラスト集 | Nintendo

「ファイアーエムブレム ヒーローズ」のコンセプトは“スタンドバイミー”。開発者インタビューで明かされたファイアーエムブレムシリーズの新たな挑戦 - 4Gamer.net

 

【レビュー】三國志13

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濃密なる三國志ライフ

筆者は三國志シリーズのプレイ経験は8からであるため、それほど古参の付き合いではないとは思う。
しかし、それでも筆者の好みはわかるようになった。
三國志シリーズではいわゆる君主プレイと全武将プレイの2パターンあるが、筆者は全武将プレイである方が趣向に合っていたのだ。
しかし、全武将プレイは10を最後に登場する事はなく、筆者としては若干の消化不良感を覚えながらシリーズをプレイしていた。
今回は久しぶりに登場した全武将プレイである三國志13をレビューする。

なお、本レビューは「三國志13 with パワーアップキット」のレビューとなる。

 

三國志13 with パワーアップキット - PS4

三國志13 with パワーアップキット - PS4

  • 発売日:2017/02/16
  • メディア:Video Game
 
三國志13 with パワーアップキット - Switch

三國志13 with パワーアップキット - Switch

  • 発売日:2017/03/30
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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ベースとなる時代を選んで進めるが気にする必要は無い

三國志シリーズは基本的に三国志演義をベースとしている。
シナリオは各時代から開始する事が可能で、例えば「黄巾の乱」であったり「赤壁の戦い直前」などの時代から好みの武将(正確には武官や文官)を選択して三国志演義の世界を追体験するような形となる。
三國志シリーズは三国志演義に沿ってプレイするのも良いし、自分好みのプレイをしても良い。

本作は全武将プレイだ。
全武将プレイとは三国志演義(三國志13)に登場する全ての人物でゲームをプレイできるという事だ。

また、登録武将といわれるプレイヤーが作成する事ができるオリジナルの武将でプレイする事も可能だ。

ゲームプレイにより自分だけの三國志を紡ぎ出す事が本作のストーリーと言えるだろう。

 

システム

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チュートリアルなども存在する

本作では「英傑伝」と言うシステムが用意されており、そこで本編の操作方法を学ぶことが可能だ。
三國志シリーズは総じて最初のとっつきにくさが強烈であるため、不安がある場合にはここを少しだけでもプレイしてから本編に行くと良いだろう。

 

本編

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様々な三國志ライフを堪能できる

三國志13は全武将プレイで様々な武官・文官(便宜上、一律で武将と記載する)あるいはオリジナルの人物になって三國志世界を楽しむ事が可能だ。
そのため、軍団全体を率いる君主でプレイしたり、軍団の中にいる一人の武官あるいは文官としてプレイしたり、あるいは何もしないニートのような在野の雄としてもプレイできる。
そう。本作のゲームプレイでは何をしても良い。そして、何もしなくても良いのだ。
これは全武将プレイの大きな特徴だろう。
筆者は「気ままな在野になってどの勢力が伸びるのか静観する」なんてプレイも良くやるのだが、疑似神視点のようなプレイが出来るのは個人的に非常に嬉しい。

そんな中にあって三國志13のパワーアップキットにて新たに登場した概念「威名」はロールプレイを更に強化している。
君主や将軍として中華統一というエンディングだけではなく、例え在野であっても商人などで特定条件をクリアすればエンディングを見る事が可能になっているのだ。
これによって非常に幅広いロールプレイを実現している。

では、前述の商人プレイを例に説明しよう。
商人は単純に物品・兵糧売買の差額によって儲けを得る事が基本的なプレイとなるが、商人として名声を得ていくと懇意の勢力に対して兵糧や兵士を出資できるようになる。
そして、その見返りとして多くの資金を貰ったり、勢力に対して要望(「特定の勢力を潰してくれ」など)を出したりする裏世界を牛耳るようなプレイが可能になるのだ。
なお、商人では一定の金額まで資金を貯める事ができればエンディングを迎える事も出来る(エンディングを延期して、そのままプレイする事も可能だ)。
そのため、例えどの勢力にも仕官していない在野の士であってもエンディングに到達する事ができるのだ。
その他にも将軍や侠客と言った威名(ロール)が存在しており、それぞれ様々な特有のコマンドが用意されておりプレイの幅を強化しているのは全武将プレイとの相性が非常に良いと感じた。
また、制約はあるもののこれらのロールはいつでも変更が可能であり、状況に応じて自分に有利な威名を名乗る事も良いだろう。

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初見プレイヤーには不安しか与えないGUI

とは言うものの三國志13…いや、三國志シリーズにはわかりやすい大きな問題を抱えたままだ。
それはそのコマンドの多さだ。これはもう上の画像を観て頂ければそれだけで伝わるだろう。
シリーズ未プレイのユーザーがこのような画面を目の当たりにした際に、その情報量の多さに尻込みをしてしまう絵が容易に想像できる。
この辺りのとっつきやすいGUIデザインは是非とも検討して頂きたい限りだ。
また、本作のコンソール版は恐らくPC版ベースに微調整を行っている程度であると思われ、操作性においてやや最適化が不足している。
コンソール版でも操作しやすいデザインも併せて検討願いたい所だ。

もしも初めて三國志シリーズをプレイし、それをこの三國時13にすると言う人は一番最初は選択肢(やるべきこと・やれること)の多い君主は選択せずに、操作感や雰囲気を掴むために気ままにまったりとプレイできる武官や文官を、パワーアップキット版であれば在野の商人としてプレイすることをオススメする。
また、通常版・パワーアップキット版共に最初にプレイするのであれば能力の高い人物を選択するのが良いだろう。

また君主として中華統一を目指した場合には、この手のゲームにありがちな序盤~中盤までは面白いものの、そこを脱してしまうと大勢が決してしまうため「もはや勝負にならない」状態になりダレてしまう(飽きてしまう)事が多い。
歴史シムであるため、下手な要素を付け加えるのは雰囲気を壊してしまうが、大勢が決したからこそ楽しめるようになる要素を追加するなど何か工夫を考えて欲しい所だ。

 

戦闘

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RTS的な戦闘システムは戦術性・戦略性もあり面白い

三國志13の戦闘システムは三國志12を改良したリアルタイムに動作する形となっている。

リアルタイムに変化する戦場で有利になるように立ち回る事で例え相手の兵数を下回っていても勝利する事が可能だ。

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戦法により味方にバフ、敵にデバフを仕掛けよう

戦闘において重要な要素の1つは「戦法」だ。

戦法は戦闘中に溜まっていくゲージを消費する事で味方にバフをかけたり、敵にデバフをかける事も可能だ。もちろん敵に大ダメージを与えるものも多く存在する。

また、戦場で親密度の高い武将がいる場合には効果量や効果時間上昇などの追加効果が発生する事もあり、普段からの交友関係も大事だ。

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ジャイアントキリングを狙うならば挟撃は欠かせない

自軍よりも強大な敵を相手にする場合に欠かせないのは「挟撃」だ。

上の画像では若干わかりにくいかと思うが、挟撃は敵軍勢を複数の方向から同時に攻撃する事で発生する。
挟撃が発生した部隊は士気が下がるため攻撃力も防御力も落ちる。
更に士気が落ち切った部隊は混乱状態に陥り反撃不可の状態にまでなる。
ここまで来てしまえば相手の部隊を壊滅させるのは容易いだろう。
この挟撃は2部隊だけで発生させる事が可能であるため、強力な敵部隊を上手く誘引して各個撃破狙うのも良い戦術となるだろう。

しかし、この挟撃は当然ながら自軍に発生するケースも考えられる。
自軍が挟撃されないように立ち回るのはもちろんだが、挟撃されてしまった場合には士気が無くならないように戦法などでカバーする必要もあるだろう。

劣勢の戦場で自分の軍勢の采配によって獲得した勝利には代え難い達成感があり、自分だけのストーリーを紡ぎだしている感覚が得られるだろう。

 

エディット

パワーアップキット版のみではあるが、エディット機能が搭載されている。
エディット機能では既存武将の設定値変更やアイテムの設定値変更、戦闘で使用する戦法エディット、そしてイベント編集などが存在する。
ここからはエディット機能に関する内容を記載していこう。

このエディット機能において残念だと言える部分があるとすれば、「勢力エディット」のような任意の勢力に任意の武将を配下にさせた状態でゲームを開始できる機能が未だに実装されていない点だろう。
ゲームプレイをユニークな設定で開始したいユーザーは筆者だけでは無いハズだ。

 

史実武将編集

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自分好みの能力値に編集できる

三國志シリーズのパワーアップキット版ではもはやお馴染みであるが、史実武将の能力値に関して編集が可能だ。
シミュレーションゲームである三國志は基本的に三国志演義をベースに査定が行われている所があり、これに納得のいかないユーザーは史実に近い能力設定にする事も可能だ。もちろん自分好みに設定するのも面白いだろう。

また、オリジナルの武将を作成する「登録武将」ももちろん存在する。
こちらではゲーム内で登場しない武将を再現したり、自分好みの武将を作成したり好きに作成させる事が可能だ。
なお、登録武将に関してはパワーアップキットで無くても搭載されている機能だ。

 

史実名品編集

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ゲーム内で登場するアイテムの追加や編集も可能だ

パワーアップキット版では名品編集ではゲーム中に登場する名品(アイテム)に関して編集する事が可能だ。
能力値の上昇量や武将の特技への補正なども編集できるため、自分の考える値に変化してみても良いだろう。

また、登録武将と同様に名品に関してもオリジナルの名品を設定する事も可能だ。

 

史実戦法編集

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戦闘で活躍する戦法の追加・編集も可能だ

パワーアップキット版では戦場で使用する事になる戦法に関しても編集する事が可能だ。

ただし戦法の編集の効果に関して自由に設定する事はできず、あくまでもベースとなっている戦法の効果量を上下させる事が可能な形となっている。
例えば上図の戦法であれば「防御力アップの能力を追加・変更」は行えないが、「機動力の上昇量を+90に変更」は可能だ。

こちらに関してもオリジナルの戦法が登録可能となっているが、編集時と同様にベースを設定して変更する形式であるため自由な戦法作りは行えない。
痒い所に手が届いていないため、再現武将の再現戦法を作りたい…なんて時には丁度いいベースとなる戦法が無く困る事もあるかも知れない。

 

イベント編集

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ゲーム内で発生するイベントを自作可能だ

三國志13のパワーアップキット版で最もインパクトがある追加要素がこの「イベント編集」だろう。

自分で指定した条件の時に、自分で作成したイベントを発生させられるものとなっている。
ゲーム内で登場しない三國志関連のイベントを自分で再現して作成したり、全く関係ないハチャメチャなイベントを作ったりすることも可能だ。
なお、イベントにはサイズ制限があり余りにも長大なイベントを作成する事はできない。

イベント編集は非常にロマン溢れる内容になっており、面白い可能性を大いに秘めているものの、1つのイベントを作成するだけでもそこそこの時間が必要であるため、その事を念頭に置いてじっくりと取り掛かると良いだろう。
また、何でもかんでも自由なイベント作成できる…とまではいかない点も注意または工夫が必要だ。

 

その他の編集
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ゲーム中にも編集は可能だ

ゲームプレイ中であっても編集可能だ。
ゲームプレイ中に武将の能力値を弄ったり、名品の持ち主を変更したりもできる。

一部はゲームプレイ中にのみ編集可能な要素もある。
都市編集では都市の発展状況など、勢力編集では同盟などの状況に関して編集が可能だ。
また、都市を繋ぐ関所のような「集落」と呼ばれるものがあり、そこの設定を変更する事もできる。

 

グラフィック

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各武将のイラストは迫力満点だ

三國志シリーズではお馴染みではあるが、各武将のイラストは迫力満点だ。
また、今作では全員では無いものの内政時と戦闘時でイラストが変化したり、年齢によっても変化したりする武将も存在する。

また、武将名鑑ではシリーズ過去作の顔グラフィックも確認する事ができるようになっている。

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都市とフィールドがシームレスに切り替わるのは嬉しい

ゲームプレイ中には都市を映す内政用の画面と中華の広範囲を見渡すための画面が用意されているが、それらは全てシームレスに表示される。
グラフィック自体はそこまで精細とは言えないものの、都市で内政をやりつつ、外部で行われている戦闘の状況を確認すると言った機能性が良い。
何よりも都市と都市が地続きであると実感できるため見せ方としては非常に良いポイントだ。 

 

サウンド

BGM変更機能からゲーム内BGMが視聴可能だ。
BGM変更機能ではシチュエーション別に流れるBGMを変更する事が可能となっている。
本作のBGMは三國志11の”破竹”ほどインパクトの強い曲は無いが、BGMは盛り上がるもの・落ち着くものなど良いものが揃っている。

壮大な野望を感じさせる「曹操のテーマ」

安らぎのある「孫権のテーマ」

雄大な「皇帝のテーマ」

勢いのある戦闘を感じる「戦闘(優勢)」

頼もしさを感じる「勇壮」

この辺りが筆者のお気に入りだ。

 

総評

三國志13は筆者待望の全武将でプレイ可能な三國志シムだ。

リアルタイムに変化する戦場は面白く、例え在野であっても面白い形で世界に介入できる。
正に全武将プレイは三國志の世界を自由に体験できるのだ。

しかし、そのコマンドの多さによって圧迫感のあるGUIは初心者にとっては致命的なほどの苦痛に感じる事だろう。
メーカーにはここに何かしらの対処を行って欲しい所だ。

ユーザーはGUIの複雑さを理由に毛嫌いするのではなく、自分が出来る事を徐々に増やす事でその面白さに気が付くハズだ。

 

外部記事

“自分のこだわりを投影できる武将プレイ”を目指した。「三國志13 with パワーアップキット」利川哲章プロデューサーへのインタビュー - 4Gamer.net

「三國志13 with パワーアップキット」では,拡張版の枠を越え,プレイスタイルまで変えたい。利川哲章プロデューサーへのインタビュー - 4Gamer.net

【レビュー】よるのないくに2

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月の欠けた紺碧の夜

最初に書いておこう。筆者は前作「よるのないくに」をプレイしていない。
本作「よるのないくに2」がシリーズ初めてだ。
そのため、前作をプレイしていればこそのシーンに対してのリアクションは行えなかった。ご了承願いたい。

よるのないくに2は群雄が割拠した2017年に発売されたゲームだ。
本来であれば筆者はこの手のタイプのゲームをプレイすることは無いのだが、群雄の勢いが余りにも凄かったためAAAや大作では無いゲームがしたいと思っていたのだ。
そんな時にちょうど筆者の購入スケジュールの隙間に「よるのないくに2」が発売される事を知り、購入に至ったわけだ。
そんな経緯でプレイをした「よるのないくに2」のレビューを書いていこうと思う。

 

よるのないくに2 ~新月の花嫁~ - PS4

よるのないくに2 ~新月の花嫁~ - PS4

  • 発売日:2017/08/31
  • メディア:Video Game
 
よるのないくに2 ~新月の花嫁~ - Switch

よるのないくに2 ~新月の花嫁~ - Switch

  • 発売日:2017/08/31
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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百合要素が主軸ではあるがシナリオは悪くない

本作のストーリーにはいわゆる”百合”のような要素が強い。
世界設定を大まかに説明すると「明けない夜の中、人々は魔物と化した世界」だ。
人々が平穏に過ごせる範囲が少なくなっており、それを維持するための「刻の花嫁」と呼ばれる生贄が必要とされる。主人公はその生贄に選ばれてしまった親友を助けようとするのだが…。

全体的なストーリーを通してみれば悪くない印象ではあるのだが、不満点も存在する。
1点目はノーマルエンドとトゥルーエンドの差分だ。
ネタバレであるため詳細には書かないが、トゥルーエンドにて明かされる内容を考えるとノーマルエンドが成立しないのでは無いかと思えるのだ。
2点目はストーリーの描き方だ。
カットシーンにおけるカメラワークやエフェクトなど演出面で”魅せる工夫”が無く、全体的に淡泊な仕上がりになっているのは少々勿体ない。

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百合の描き方にも少々不満が残る

主軸となっている百合の要素にも少々の不満が残る仕様がある。

主要となるキャラクターは8人ほど存在するのだが、本作はある程度の周回プレイを想定しているのか、性格的およびゲームシステム的な個性を1週目のプレイだけで全員分把握する事が機会的・構造的に少々難しい。
「百合」のような要素を取り入れているにも関わらず、各キャラクター性を理解できる工程が用意されていないのはグラブを持ちながら素手でキャッチボールをするようなものだ。

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前作プレイヤーには嬉しい要素もある

なお、本作には前作の主人公であるアーナスも登場している。前作プレイヤーには嬉しい要素ではないだろうか。

 

システム

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ストーリーと噛み合った制限を多用したシステム

本作のゲームプレイシーケンスをざっくりと説明すると、「ブリーフィング⇒出撃(フィールドに出ての探索とバトルアクション)」の繰り返しとなる。
しかし、ただ単純にコレを繰り返す訳ではない。ストーリー設定上の理由(月が欠けていき新月になってはいけない理由がある)から出撃可能回数に制限があるのだ。そして出撃回数が上限に達してしまうと事でゲームオーバーとなってしまう。
つまり、出撃した際にはできるだけ効率良くフィールドを攻略していく必要がある。
ところが、出撃にもおいても制限が存在する。出撃による探索は時限性なのだ。
限られた時間の中でフィールドを探索し、敵と戦い、行動可能な範囲を徐々に増やしていく事になる。
時間制限については最初は驚くほどに短いのだが、主人公をレベルアップさせる事によって増加する。
まとめると出撃時にはフィールドを効率良く探索しつつ、敵も効率良く倒していき、出撃可能回数到達までにボスを倒す必要がある。

とは言うものの全体的な難易度はそこまでシビアに設定されている事は無いため、クリアするだけならば問題ないようにデザインされている。
しかし、ストーリーの項で前述したように本作では主人公と一緒に出撃できるキャラクターがそれなりに存在しているのだが、彼女達の個性を知るには出撃回数制限がされているシステムが相反した要素となってしまう。
彼女達の性格的個性を知ったり、親密になったり、バトルにおいての特性を知るには出撃をしないといけない訳だが、無駄な出撃をしてしまうとストーリーの攻略のハードルが上がってしまう。
また、出撃させないままでいるとレベルが低いままとなるため、余計に一緒に出撃させにくい悪循環となってしまうのだ。
百合的な要素(キャラクター間の関係性の表現)を含んでいるのであれば、ストーリー上で仲間になったキャラクターと必ず出撃する事になるチャプターを用意するなど、もう少しキャラクターの性格的・システム的個性を「強制的に」ユーザーに教えるような機会を設けた方が良かったように思う。

しかしながら、ストーリーとシステムが噛み合っている点は良いことだろう。
また、好き嫌いはあるかも知れないが単純なフィールド探索ではなく様々な回数制限や時間制限によってユーザーが感じる焦燥感も本作のストーリーテリングとして非常に有用なものではないだろうか。
なお、アップデートにより2週目以降は日数制限が無効となり、ストーリーテリングとしての焦燥感は薄れてしまう事だろう。

本作のゲームプレイにおいてストレスに感じるポイントも述べておこう。
それはフィールド探索やバトルにおいて敵も味方もAIが貧弱であり融通が利かない事が多い点だ。
特にリリィである味方のNPCと従魔と言うサポートNPCはプレイヤーキャラクターとの間にコリジョン(当たり判定)があるのだが、キャラクター同士が衝突してもNPCが動いてくれない、または押し出せない事が考慮不足による設計上のバグを生み出している。
特定のフィールドに存在する狭い路地のようなところにキャラクターが入ってしまうと退路をNPCが封じてしまって出られなくなってしまうのだ。
退路を封鎖しているNPCをどかそうと追突しても微動だにしないため、筆者はやむなくゲームをリセットせざるを得なかった。

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バトルシステムは”大らか”な作りだ

フィールドの探索時に発生するバトルはわかりやすい表現をするならば「無双シリーズ」のものに近い。徘徊しているようなモンスターを簡単なボタン操作の組み合わせでバッサバッサと斬り倒していく。

仲間のNPCとバディ(作中ではリリィと呼称)を組んで出撃をするのだが、バトル中にはキャラクター毎に異なる特定の行動を行うと「ダブルチェイス」と呼ばれる強力な協力技を使用できる。
発動させるための条件はキャラクター毎に異なる訳だが、特にリリィの攻撃に合わせてプレイヤーが攻撃を行う事で発動するタイプのダブルチェイスは良くできているように感じた。
なぜなら、リリィが攻撃を行った際の声を聴いて、それに合わせてプレイヤーが攻撃する事でかなりタイミングを合わせやすいからだ。
他のタイプ条件では発動難度が高いリリィも存在するため、正直これが意図した設計であるかは微妙なラインに感じるのだが、共闘感を良く演出できている。

更に戦っているとゲージが溜まっていき、そのゲージを消費する事で発動する「リリィバースト」という強力な技も存在する。
こちらは狙わずとも普通に戦っていれば発動可能である。

バトルシステムは悪くないのだが、「当たり判定が1回で十分なのでは」と感じるような攻撃が多段ヒットし、敵でも味方でもガリガリ削れる事も多く感じられ、全体的に大らかな設計が多いのは少々気になるポイントだろう。

 

グラフィック

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グラフィックは少々物足りなさがある

グラフィックにおいては(本作の特色から言って当然ではあるのだが)キャラクターの造形に一番力を入れていると思われる。
しかし、それでもスタイライズド(デフォルメ)な表現を採用した同世代のキャラクターモデリング水準と比較してしまうと少々物足りないのは事実だ。

探索する事になるフィールドは更に簡素で「絶景」と言えるようなロケーションは少なく、テクスチャーに関してもお世辞にも綺麗だとは言い難い。
そのため、基本的にはストーリーやキャラクターの物語を楽しむのがメインと考えた方が良いだろう。

 

サウンド

本作の楽曲は良いと感じさせるメロディが多いのは良い点だろう。
メロディはPS2時代のような若干の古さを感じる気はしなくもないが、筆者はそれも含めて評価したい。

しっとりとした暗く悲しい曲や落ち着きのある安らぎを感じるような曲が多いが、バトルシーンでは非常にカッコいい(それこそ無双シリーズのような)曲も存在する。

総評

よるのないくに2はストーリーとシステムなどが噛み合いながらも、明らかに考慮不足な点や簡素すぎるグラフィックが目立ち、足を引っ張る結果となった勿体ない作品だ。
開発リソースにおいて苦労したようではあるが、満月になるにはまだまだ足りない点の多い欠けた月のような作品となってしまっている。