【レビュー】ゼルダの伝説 Breath of the Wild

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野生の息吹が目覚める

ゼルダの伝説 Breath of the Wild(以下、ゼルダBotW)は任天堂が開発した最初のオープンワールド(公式にはオープンエアだが便宜上記事内ではオープンワールドと呼称する)型のゲームだ(任天堂IPという意味ではゼノブレイドクロスが最初だが)。

ゼルダの伝説オープンワールド化はファンの間では特に要望の多かった要素だったのでは無いだろうか。しかし、オープンワールドと言う概念をシリーズ作品に取り入れて成功するか(楽しいものとなるか)は全くの別問題だ。
また、「アタリマエを見直す」と表現された設計アプローチも果たしてどう機能するのか全く予想ができなかった。
この2つの未知のポイントが発売前のゼルダBotWにおいて大きな期待であり、同時に大きな不安でもあった事は確かだ。

 

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド - Switch

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド - Switch

  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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本作は非暴力ポストアポカリプスだ

本作のストーリーは簡単な書き方をしてしまえば「ポストアポカリプスもの」だ。
ゲームにおいてはオーソドックスなものの1つなのだが、活用の仕方が一般的なものとは少々異なる。
一般にポストアポカリプスが採用されるケースと言うのは「プレイヤーが暴力(犯罪)を行使する事を肯定しやすい環境」であるためだ(有名なタイトルで言えばFalloutThe Last of Usなど)。
しかし、本作においては魔物を斬り倒すという暴力(?)は存在するものの、人命を奪うなどの犯罪とは全くの無縁だ。
筆者はポストアポカリプスの設定は好きだが、犯罪性を肯定するために導入されるのは(見飽きたと言う意味も含めて)余り好きでは無い。
ゼルダBotWのようなポストアポカリプスの設定がもう少し増えて欲しい所である。

本作はポストアポカリプス的な世界となったハイラルを舞台とするが、ストーリー自体ががっつり存在するというものではなく、100年前の大きな戦いの影響によって荒廃したフィールド探索する事で過去の出来事を推測・考察するような”環境ストーリーテリング”が主だと言って良いだろう。
フィールドを探索する事でいくつも発見できる瓦礫は100年前の街の名残りであり、いたるところにある大破した機械兵器(ガーディアン)は戦争の名残りである。
その痕跡を基にして昔はどのような文化や営みがあったのか、そしてどのような戦いがあったのかを想像させるようにデザインされているのは世界観を自然に伝える手法として成立している。

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ストーリーは失われた記憶を取り戻す形で表現される

本作のストーリーらしい部分のストーリーテリングは「失った過去の記憶を取り戻す」という形式で表現されている。
リンクは長い眠りの中で過去の記憶を忘却し、思い出の地などに訪れる事で記憶を取り戻す。この記憶を取り戻すか否かもユーザーに委ねられており、もしもストーリーに興味のない人がいれば無視して遊んでも問題ないように設計されているのが特徴だ。

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登場回数が少ないのは悲しいがキャラクターは魅力的だ

ストーリーの内容はメインシナリオとしてはガノンを倒す事が最終目標であり、また100年前に何があったのかを知る事がシナリオとなっている。
ゼルダシリーズと言えば本編では大きく扱われないものの、過去作との繋がりや時系列を見つけ出すのもシリーズファンとしては恒例だろう。本作においても考察しがいのある作品だ。

また、筆者がプレイしている所感としてはプレイヤーに対しての動機付けが素晴らしい…いや、嬉しいと感じさせられた。
それはストーリーに絡むミファーやダルケル、ウルボザ、リーバル、ルージュ、インパ、パーヤ、シド…そしてゼルダ。これらの人物がリンク(プレイヤー)に対して絶対の信頼を置いてくれているためだ。
リンクを信じて、全てを託してくれるのだ。
彼らとの出会いによって「ガノンを倒そう」と言う意思はプレイ開始時点よりも遥かに強くなる事だろう。
特に上記の重要人物1人辺りの登場回数(あるいはカットシーン)で言えば片手で数えられる回数であるが、その中でも「その人物がどういう性格なのか」「その人物とリンクの関係性」が無駄なく・わかりやすく表現されているため、逆に「これだけの登場でも、これほど記憶に残るのか」と驚くばかりだ。

しかし、前述の通りではあるが全体的にみると本作のストーリー自体に関しては過去のゼルダシリーズ(特に3Dゼルダ)からすれば少々薄味になっている事は否めない。
また、全てのカットシーンがいつでも見返せるようになっていない事も少々物足りなく感じるポイントだ。

 

キャラクター

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キャラクター達は本作でも変わらず魅力的だ

キャラクターの魅力に関してもう少しだけ記載させて欲しい。

本作のゼルダは非常に共感しやすい女の子として描かれているのでは無いだろうか。
自分の非力さと周囲からのプレッシャーから心が少し折れかけているようだ。
しかし、仲良くなった相手に見せる活発な一面は彼女の本質的な部分なのだろう。

ゴロン族の英傑ダルケルは歴代のゴロン族通り頼れるアニキ的な人物だ。
ヴァ・ルーダニアのイベント最後にダルケルとユン坊のシーンがあるのだが、筆者はこのシーンで胸が熱くなった。

ゾーラ族の英傑ミファーも歴代ゾーラ族と同様に少し切ない物語となっている。リンクに対しての想いや里のゾーラ達、父への想いなどとても切ない。
家族ものに弱くなった事もあり筆者には致命傷だ。

シドはミファーの弟であり、その性格は非常に明るく熱血だ。プレイヤーを調子に乗せてくれるようなキャラクターで大好きなキャラクターだ。

ゲルド族の英傑ウルボザは支えてくれる姉御肌の女性だ。ゲルドと言えばガノンドロフと同族であり、そこに対しても思うところはあるようだ。

100年後のゲルド族をまとめ上げている族長ルージュは周囲の助けもあるが幼いながらもゲルド族をまとめ上げている。しかし、表に見せる事の無い彼女の本当の姿は年相応の可愛らしい女の子なのだ。

リト族のリーバルはリンクを一方的にライバル視しており、セリフなどは鼻につくのだが、それはリンクの実力を認めている裏返しでもある。ヴァ・メドーのイベント最後では少年マンガのライバルが仲間になった時の展開のようなこそばゆい嬉しい感情になる。

他にもリンクに片思いしているシーカー族のパーヤ、長期的なイベントやDLCでも活躍し演奏している曲が印象的なカッシーワなど記憶に残るキャラクターはたくさんだ。

 

システム

本項ではゲームプレイにおけるシステム全般について記載しよう。

 

バトル

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バトルアクションはオープンワールド型のゲームとしては多彩だ

バトルにおいては単純に剣や槍と言った武器を振るだけでなく、お馴染みの横っ飛びやバック宙返り、中遠距離からの弓矢、新アクションとしてはジャストガード(パリィ)と言った非常に多彩なアクションが行える。
ここまでのバトルアクションが行えるオープンワールド型のゲームはそう多くないだろう。
任天堂らしくボタン割り当てなどの操作性は抜群でストレスフリーだ。
アクションゲームにおいては例え操作に慣れたとしても、1つのボタンに複数の機能が割り当てられると、ふとした瞬間に誤操作をしてしまう経験のある人もいるだろう(例えば、アイテム取得と攻撃ボタンが共用の場合、アイテムを取ろうとして攻撃してしまうなど)。
本作においてはそのようなボタンの割り当てを行っていないため、誤操作により思った事と違うアクションをする事は稀だ。
しかし、ハード的な特性上としてJoy-Conのマイナスボタンが押しにくいのは少々難点だ。特にゼルダBotWはマイナスボタンも使う頻度は高いためハード側の配置はもう少し検討して欲しかった所だ。
プロコントローラーであれば問題ないのだが、こちらは別売であるためフェアとは言えないだろう。

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戦闘においては地形や天候も活用できる

様々な武器や環境を利用して戦いを有利に進められるのは楽しく。
特に序盤は操作も覚えきれておらず、自分も数値的に弱いため、敵が強く感じられ「ヤバい!!」と思うケースが多いだろう。
そんな中で機転を利かせた敵の攻略方法が出来た時の達成感は他のゲームではなかなか体験できないものがほとんどだ。
簡単に使える爆弾を利用するのはもちろん、火を使って燃やしたり、上昇気流を発生させて工夫するなんてのも良い。宝箱を敵の頭上に落とすのもアリだ。風だって使える。崖や落石と言った地形利用も良いだろう。時には落雷に頼るなんて事も可能だ。
単純な操作の上手さだけでなく、環境や物理法則(化学含む)でアドリブ性をもって敵と対処できるのはゼルダBotWの凄みだ。
着火させてフィールドを燃やし敵に影響を与えるゲーム、物理法則(物理エンジン)を利用して敵を排除するゲーム自体は個々に存在はしていたが、それらが全て行える事は珍しいだろう。また、プレイヤーが思ったようにそれらが使える品質である事は驚愕だ。
本作においては「こういう事もできるのでは…」と思い付いたことは大半が行える。それほど本作はオープンなのだ。
利用できるもの全てを利用して敵を倒す。卑怯と言われようとも勝てば官軍なのだ。

 

探索

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広大なフィールドは美しい数式によって楽しさを生み出す

大自然の広大なハイラルCEDEC2017において説明がなされた通り、非常に理論的に地形が構築され、またオブジェクトが配置されている。

時にはランドマークをユーザーに見せ、時には隠して別のオブジェクトに注意を向けさせて寄り道を誘う。また、遮られた地形の先に何があるのか興味を惹かせる。
これによってユーザーはまるで自分の意志によってハイラル世界の気になった場所を探索している気持ちにさせてくれるのだが、実際には開発側が意図している設計通りにユーザーが動かされているのだ。これはゲームの設計思想、そしてそれが機能していると言う点において100点とも言えるものだ。
これを言葉にするのは容易いが、これほどの広大なフィールドでそれを行うのは骨が折れる事であるとも容易に想像できるだろう。

「隠す / (徐々に)現れる」と言った配置方法自体は他のゲームにおいても全く無かった訳ではない。しかし、ゼルダBotW以前においてはおよそ感覚・印象・勘の世界の話であり、明文化して数式のような形で表現された事は少なかったのでは無いだろうか。
そしてその数式が正しい事はプレイした人であれば理解できるだろう。

 

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祠の謎解きのバリエーションの豊富さは歴代最高だ

祠は1つ辺りに何かしらのコンセプトを持って制作されているため、過去作の謎解きと比べると圧倒的にバリエーション豊かだ。
歴代の3Dゼルダシリーズでこれ程のバリエーションが出せなかったのは1ダンジョン辺りの構成が巨大であり、またその巨大なダンジョン全体で整合性のとれたデザインにする必要があったためだ(例えば「エリアAの仕掛けでエリアBの状態が変化する」など)。
本作では1祠1コンセプトにまとめ上げているため「他の祠とネタが被らなければ良い」くらいの制限で作れるのがこのバリエーションに繋がっているのでは無いだろうか。もちろん開発者の努力は言うまでもない。

また、1つクリアするのにかかる時間もそう長くないため、気軽に挑戦できる点も嬉しい。
歴代のダンジョンでは初見なら短くても1時間程度はかかる事がほとんどだ。そうなると気軽にはプレイできない(一長一短ではあるが)。
Nintendo Switchと言うハードの特性を考えればパッと挑戦できてサクッとクリアできる構成は親和性が高い。

 

四神獣

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四神獣のギミックは男心を鷲掴みだ

本作で最もやりごたえのあるダンジョン形式のステージと言えば四神獣だ。

これら四神獣の謎解きは非常にダイナミックなものとなっている。
まず、四神獣の前哨戦として各部族の筆頭やリーダーと協力して神獣を弱らせる所から始まる。
神獣からの攻撃をかわしつつ、仲間と協力して攻撃を当てていく。
これが非常に楽しかった。
前哨戦が終わると神獣内部に入っての謎解きパートとなる。
神獣内部はシーカーストーンのマップから実際に神獣を動かす事で発動するギミックが実装されている。
マップ操作でリアルタイムに駆動する神獣を色々な場所から見ているだけで男心が鷲掴みにされる感覚だ。
例えばヴァ・ルーダニアの背中に乗った状態からヴァ・ルーダニアを操作すると姿勢が変更される。これがリアルタイムに動いているのを観ているだけでも感動ものだ(ぼーっとしているとマグマダイブしてしまうが)。
そして謎解きが終わるとボス戦へと遷移する。
ボス戦は少々簡単でボタン配置などの操作系を覚えてしまえば特別苦労する事はないだろう。

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神獣内のボス戦よりも前哨戦の方が盛り上がる

全体的には神獣攻略は非常に楽しめるのだが不満点が無い訳ではない。
まず、神獣と戦う前哨戦だ。
筆者としてはこの前哨戦が一番熱い展開の戦闘に感じた。
そのため、神獣攻略の構成を「侵入・謎解き⇒内部ボス戦⇒神獣戦」の順序にした方が盛り上がったように感じるのだ。
筆者が盛り上がると感じた理由は複数ある。
1つは単純にスケール感だ。
圧倒的に巨大な神獣を相手にして戦っているのは非常に楽しい。
ゼルダBotWにおいては通常これ程のスケール感で戦う事が無いため、特別な雰囲気が段違いだ。
2つ目はシチュエーションだ。
神獣戦では仲間と共に戦う。シドやルージュ、ユン坊、テバなどと一緒に戦うのだが、一人で戦っているよりも仲間のリアクションがある戦闘の方がプレイしていて励みになるし、モチベーションが高くなる。
特にシドの「上がれぇー!!」という叫び声は一緒に戦っている雰囲気が感じられ非常に頼もしく、また楽しかった。
これらの要素が前哨戦で終わってしまうのは少々もったいない。

次に上げる不満点としては神獣内部で戦う事になるボス戦だ。
前述しているが、このボス戦がなんとも難易度が低めだ。
これは「どこから攻略するのも自由」としたための難易度なのだろうが、少々あっけなく倒せてしまうため英傑がやられてしまった説得力に欠ける。
ここには進行度合いに応じて攻撃パターンが増えるなどの要素があると歯ごたえがあったように感じる。

また、ギミックはダイナミックで凝っているとは言えボリュームとしては余り無いため、歴代3Dゼルダのような長大なダンジョンも欲しい所だ。

 

ウルフリンクamiibo

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ウルフリンク

ウルフリンクamiiboをかざすとゼルダBotWの世界にウルフリンクが召喚される。
このウルフリンクは「ゼルダの伝説トワイライトプリンセスHD(WiiU)」と連動しておくといくらか強い状態で召喚できる。

このウルフリンクは本作のamiiboとの連動機能において最も豪華な内容であると思うが、使い勝手は少々悪い。
ウルフリンク自体の性能は悪くは無いのだが、召喚するためには毎回amiiboをかざす必要があり何度も召喚しようと言う気持ちにはなれない。
欲を言えば「ウルフリンクを召喚」ではなく「ウルフリンクに変身」したかった気持ちの方が強い。
広大なフィールドをウルフリンクに変身した状態で駆け回るのは正に野生の息吹を感じる事だろう。
例えそれが叶わぬ夢であったとしても、せめてウルフリンクamiiboでは「ウルフリンクを召喚するアイテム」が入手できる形であって欲しかった。
それがあるだけでも召喚のやりやすさは数段上がった事だろう。

 

剣の試練

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剣の試練

剣の試練はDLCの第一弾として登場したやり込み用の要素と言えるだろう。

試練に挑戦するとリンクは全ての装備がはがされる。
武器も防具も無いスタート直後のような状態だ。
そこから徐々に困難になっていく試練を突破する事となる。
難易度はやや高く、マスターモードでプレイしているならばより難易度は上がるだろう。
通常モードでプレイをしているのであれば時間をかけて慎重に攻略していけば問題は無いハズだ。

とは言え、この要素はやり込みの”おまけ”的な側面が強いため、剣の試練自体もリワードもゲームプレイの幅が広がるようなものとはなっていないのは少々残念だ。

 

英傑たちの詩

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英雄たちの詩

有料DLCとして登場した「英傑たちの詩」についても触れておこう。
DLCの追加要素は3段階に分かれてる。

まずDLCにて最初に挑む事になる新たな祠では「一撃の剣」と言われる特殊な剣を使用するパートから開始される。
この剣を装備すると「敵を一撃で倒し、また自分も一撃でやられる」というシステムになるのだが、正直このシステムは余り上手であるとは言えない。
戦いが大味となるし、また(今作は最も死にやすい3Dゼルダではあるが)死にゲーとして設計されている訳ではないためプレイフィールも中途半端だ。

次に各地の神獣近辺に足を運び祠をクリアしていく。
こちらは祠を出現させる工程においてもちょっとした謎解きのような要素が存在し、祠の内部でも謎解きがある。
その地域の祠を全て攻略すると神獣で登場したボスと再び戦う事になる。
装備は決められたものを使用する事になり、戦う前には「警告(以前と同じだと思うな…と言った内容)」までされるのだが、既に戦った相手であるため余り苦戦する事もないだろう。
なお、これをクリアするとボス戦を何度もやり直す事ができるようになる。

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新しく追加される神獣の内部

最後に待ち構えているのは神獣だ。
四神獣同様にダンジョン全体を駆動させるダイナミックな謎解きが楽しめる。
英雄たちの詩においてはコレが最も楽しい要素では無いだろうか。
とは言うものの謎解きのボリュームとしては四神獣の1体分と同程度であるため少々物足りない。
謎解きが終わればボス戦となるののだが、こちらもまた本編の神獣同様に大して強くは無い。そこまで苦戦する事も無いだろう。

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マスターバイク零式

英雄たちの詩をクリアするとリワードとしてマスターバイク零式が手に入る。
性能は申し分なく、いつでも簡単に呼び出しできるためハイラルを駆け巡るのにはピッタリだ。
しかし、このリワードも少々中途半端と言わざるを得ない。理由は単純で馬と役割が大きく被っているためだ。
せっかくDLCのリワードであるのだから新しい拡張要素であって欲しかった訳だ。
開発初期に存在したと言うスカイウォードソードのような上空からダイブする要素などちょうど良いと思うのだが(完全な新要素では調整が必要となり開発工数が大きく異なってしまうが)。

このDLCゼルダBotWをやりこみたいユーザー向けの内容が中心ではあるのだが、本当にやりこんだユーザーからすれば物足りない感は否めない内容・ボリュームだ。
本編の内容が素晴らしかったために期待値が高くなりすぎた事も影響しているだろうが、やはり新エリアなどは欲しかったところだ。

 

グラフィック

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フィールドのグラフィックスタイルはフォトリアル寄りだ

ゼルダBotWのフィールドはディテールこそスタイライズド(デフォルメ、記号化)されているが、そこで使用されている映像技術のほとんどがフォトリアルに感じられる。
草木の揺れ、光の散乱や反射、フォグによる遠近表現はフォトリアル指向な表現ではないだろうか。オブジェクトはスタイライズドが強いが、映像演出はリアルと言う聴いただけではチグハグだが、全く違和感がない…どころか「野生の息吹」を感じさせる生きた世界が広がっている。
また、テクスチャーの使い方には任天堂の完全子会社であり本作においても部分受託制作を行っているモノリスソフトの影響を少なからず感じる。

フォトリアルとスタイライズドの表現手法はそれぞれ長所と短所が異なると考えている。
フォトリアルでは、精細なグラフィックとなり説得力を持たせる事ができるが、逆にその情報量が多さが表現や地形のわかりにくさに繋がったり、精細であるが故に表現方法にウソがつけなくなってしまう場合が多い。
例えば、フォトリアルな人間がマリオ並みのジャンプをしていたら違和感になるだろう。それを実現する場合、説得力ある設定や表現・エフェクトが不可欠だ。
他にも「見えない壁」の類もフォトリアルな表現では違和感が強くなるだろう。
一方スタイライズドな表現では、無駄な情報を省略して表現する手法であるため表現や地形などを視覚的にわかりやすく見せる事が可能だ。また、フォトリアルよりはウソをついても違和感を感じにくいため柔軟な表現方法が実現可能だ。しかし、その情報量の少なさは重厚感には欠け、やりすぎれば”子供向け”と言う第一印象へとなってしまう(子供向けが悪いと言う事ではないが)。
ゼルダBotWにおいてはフォトリアル過ぎず、またスタイライズド過ぎてもいないと言うバランスが非常に良いと筆者は感じた。

余談だが、リリース当初は雨や雷雨といったエフェクトの激しい天候の際にはフレームレートが落ちる事も多かった。
しかし、後のアップデートによって最適化されフレームレートが落ちる事はほとんど無くなっている。

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二重虹まで確認できた時には余りの作り込みに驚いた

ゼルダBotWにおいては天候に関してもこだわりがある。
雨の前触れ、雨が上がった後に残る湿気による光のぼやけ…特に驚愕したのは上図にある「二重虹」を見つけた時だ。
二重虹は2つの虹が現れる現象で、片方の色のグラデーションが逆転しているのが特徴だ。本作ではその現象まで再現されているのだ。
これを発見した筆者はその余りの作り込み驚愕した。

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水の表現もまた美しい

静止画では少々わかりにくいかも知れないが、ゼルダBotWは水の表現も美しい。
池や湖の水を見て「飲めそう…絶対うまい…」と感じたのは筆者だけでは無いだろう。

 

サウンド

本作のBGMは近年のオープンワールド型のゲームで一般的となりつつあるプレイヤーの操作や環境に応じて変化する「インタラクティブミュージック」と表現されるものが採用されており、世界観の邪魔にならないように作られている。
この手法は古くはゼルダシリーズであれば「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の時代から既に採用されているものだ。
とは言え、それを余りにも前面に出した結果として自然さは生み出されるものの、かつてのような名曲で無くなったのは残念な限りだ。
技術的にはCEDEC2017採用情報などで公表されている様々なものが使用されているのはわかるのだが、何度も聞くため記憶には残るのだが1つの音楽として考えた場合はメロディラインが非常に弱く良い曲とは言えないものが多い。
とは言うものの名曲が全く無くなった訳ではない。

最も最初に聞く神秘的で”もののけ姫”を彷彿とさせる「メインテーマ」

神秘性と不気味さ(なんとなくクロノトリガー感のある)「祠」

追い立てられるような圧迫感のあるトラウマ曲「ガーディアン戦」

カッシーワがいるとエポナの歌のオマージュと気が付く牧歌的な「馬宿」

作中でも屈指の印象に残る曲であろう「カッシーワのテーマ」

時のオカリナ版のアレンジとなっている「ゾーラの里」

あのシーンが脳裏に甦る「リンクの記憶「英傑 ミファー」」

カッシーワの奏でる感動的な構成の「英雄たちのバラッド」

砂漠の決戦が見事に表現された「神獣 ヴァ・ナボリス戦」

どこか東洋的な神秘性の伝わる「聖なる泉の使い」

懐かしい旋律が威圧感によって最終決戦を表現する「ハイラル城」

ゲーム本編では使用されていないようだがNintendo Switch Presentation 2017にて登場したPVにて流れた「Nintendo Switch Presentation 2017 Trailer BGM」も素晴らしい。

 

ボイス

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本作はシリーズで初めてボイスが付いた

ゼルダBotWではシリーズにおいて初めてキャラクターに明確なボイスによるセリフが付いた作品だ。

セリフで喋るのはカットシーンのみではあるがゼルダシリーズとしてはこれも大きな挑戦と言えるだろう。
しかし、違和感やデメリットにこそなっていはいないものの、ボイスありのセリフとなった事が明確なメリットとなっていたかは疑問だ。
過去作のゼルダシリーズのストーリー上にボイスが付与されただけに近く、余り活かし切れていないように感じる。
せっかくボイスが付いたのであれば、ボイスが付いた事に意味のあるストーリーテリングやゲームシステムまで設計して欲しかった所だ。

 

総評

ゼルダの伝説シリーズはゲーム史において何度もスタンダードを築いた偉大なタイトルだ。そして本作もまたスタンダードとなる1作かも知れない。
物理と科学が融合した洗練されたシステム、美しい大自然のグラフィック、計算された広大なフィールド構成…全てが見事に融合して化学反応を起こしている。
また、バグの少なさも特筆すべき点と言って良いだろう。
任天堂と言うメーカーがビデオゲームに対してどれほど真摯に向き合っているか、妥協を許していないかが伝わってくる傑作だ。

しかし、BGMのメロディの弱さや意味があったのか不明なボイスなどのサウンド面には若干の疑問が残る。ここは今後の作品に期待したいポイントだろう。

また、残念ながらDLCに関してはニーズとの乖離が激しく、素晴らしいとはお世辞にも言い難い。
ボリュームとしてもオマケ程度でありガッツリ遊びが増えるものでは無い。

 

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【レビュー】絢爛舞踏祭

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その答えは、YESである

筆者が絢爛舞踏祭と言う作品を知ったのはアニメがきっかけだ。
絢爛舞踏祭はゲームに先駆けて「絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク(2004年)」と言うアニメが放送されていた。そのアニメのキャラクターや潜水艦、ラウンドバックラー(以降、RB)と言われる機体、なによりシチュエーションに興味を惹かれゲームを買おうと決心したのだった。
しかし、ゲームが発売されたのはアニメから約1年後の2005年7月7日。筆者はその間やきもきしながら待っていた事を覚えている。

※本作のスクリーンショットには本来は右上にプレイヤー名が表示されているのだが、画像編集して塗りつぶしを行っている点にご容赦願いたい。

 

絢爛舞踏祭

絢爛舞踏祭

  • 発売日: 2005/07/07
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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ストーリーテリングと呼べるものは皆無だが、その設定は細かい

本作の大まかなストーリーを説明すると「太陽系の100年の平和を実現させる」ことが主題となっている。
主人公であるプレイヤーは海洋惑星となった火星を地球の従属体制から独立を目論む集団の一員だ。活動は「夜明けの船」と呼ばれる未来的な大型潜水艦を中心に政治的活動を含め行われる。

メタ的な視点も物語に導入されているのも特徴で、例えば本作においてプレイヤーはプレイヤーキャラクター(アバター)というインタフェースを介して絢爛舞踏祭の世界に介入し、ある種「世界が平和になるように手引きする」といったような設定となっている。
その他にも様々なメタ的視点が散りばめられており、プレイヤー(アバター)とは何なのか、介入しているゲーム世界とは何なのか、その上でなぜ世界を救うのかという観点を考慮した世界観が構築されている。
これはプレイヤーがゲーム内世界および住人と相互にインタラクトしている事に対しての説得力を強めるような演出でもありながら、一種のビデオゲームの”お約束”を自己批評した末のデザインでもある点は興味深い設計だ。

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動的なドラマを生み出す構造

キャラクターや政治体制、物流、そしてメタ的視点を考慮した上での世界観など設定は非常に細かいのだが、本作においてはストーリーテリングと呼べるような演出などはほとんどない。
物語にしろ会話にしろ説明的なものは一切ないため、NPC達と会話をしていく中でプレイヤーが能動的に点を繋ぎ合わせていくような形式だ。
それにより徐々に世界設定や世界情勢、キャラクターの生い立ちなどを知っていくのが主体である。

絢爛舞踏祭では根本的にはプレイヤーの行うインタラクションや選択自体をストーリーテリングとして扱い、プレイヤー毎あるいはプレイ毎に異なる展開と体験を重視する作りとなっている。
例えば、戦闘によって母艦である夜明けの船が被弾すると、その損傷レベルによっては上図のように艦内に浸水が発生する場合もある(火災となるケースもある)。
これが更に悪化すると隔壁が強制的に閉鎖され、場合によっては浸水エリア内に自分やNPCが取り残されるケースもある(取り残される=死亡確定では無い)。
その際には隔壁外のキャラクターに対して遺言を残す者もいれば、ただただ絶望するようなキャラクターもいる。必死に浸水を食い止めようとするキャラクターもいるのだ(もちろん、その行動をするのは自分になるかも知れない)。
その時に繰り広げられる動的なドラマはプレイヤーにとって正に一生の思い出となるだろう。

とは言え、このような逆境と言えるシチュエーションでも来ない限りは全体的には地味な進行となりがちである点は否めない。
また、ストーリーには時間制限がありゲーム内時間において3年以内に100年の平和を達成しなくてはならない点も賛否あるだろう。
筆者としても「もっと長く、ゆったりとした気持ちで潜水艦内の生活シムを体験したい」と言う想いもあれば、「時間制限が無くてはドラマにならない」と言う想いもある。

 

余談

余談であるが、前述のとおり本作はアニメが先行して放映されている。
しかし、ゲームとアニメでは設定など異なる点は多いため名前など以外は基本的に別作品と捉えるのが良いだろう。
本作はガンパレード・マーチ(以降、ガンパレ)や刀剣乱舞で知られる芝村裕吏氏の作品だ。
そしてガンパレの続編とも言えるのがこの絢爛舞踏祭である。
ストーリーにおいてもガンパレに縁のあるキャラクターが登場するのはファンであれば嬉しいポイントと言っても良いかも知れない。また、その他の芝村氏の関連作品からも登場しているキャラクターも存在している。
芝村氏の作品は設定・裏設定などが非常に多く、また未だに解明されていない設定なども多い。本作においてもそれは同様であるのだが、その辺りは深く知っていなくてもプレイに支障をきたす事は無い。
その辺りはあくまでも世界観をより楽しむものとして捉えると良いだろう。

 

システム

前述のとおり、本作は「ガンパレ」の続編とも言えるタイトルであり、それはシステム面においても同様の事が言える。
当時の水準から考えればオーパーツとも言えるほどにこだわり抜いたNPCのAI設計や世界観構築とそれに対するインタラクションは絢爛舞踏祭と言うゲーム内世界の説得力と厚みを持たせる事に成功している。

しかしながら、全体的に単調で地味な面が多く「シム」的なゲームとしてロールを楽しむ事が好きな人でないとついていけないだろう。
また、俯瞰視点時のY座標カメラ位置がやや独特で慣れるまでは「見えにくい」と感じるかも知れない。
ユーザーによるカメラ制御は横方向への回転のみであるため、縦方向に回転できないのは地味ながら不便だ。

 

キャラクターインタラクション

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記憶と感情と欲求によって行動する多種多様なキャラクター達

絢爛舞踏祭NPCのAIは非常に手が込んだ作りをしている。
NPC達は「記憶」「感情」「欲求」を基にして行動する。

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プレイヤーに話かけてくる、NPC同士で会話する

インタラクションと言う観点から考えたときNPCからプレイヤーに対して話かけてくれるのも筆者としては凄く嬉しいポイントだ。
プレイヤー側から話しかけるゲームは数え切れないほどあるが、NPC側から話しかけてくれる事のなんと嬉しい事か。
世界の中の自己認識には他者の存在が欠かせない。
そのためNPC側から話しかけられると言う要素は「自分(あるいは自分が操作しているキャラクター)が世界に存在している」と強く感じさせてくれるのだ。これはプレイヤー側からのインタラクションしかないものと比較すれば明確に感じるポイントだろう。
ただ、緊急のタイミングでNPCが話しかけてくる事もあり「空気を読め!!」と思う事があるのが少々リアルな点だろう。
また、見えるところ・見てないところでNPC同士の会話も行われており、それによってNPC間の好感度の状態も変化していく点も面白い。

 

記憶

「記憶」は”いつ”、”どこで”、”誰と”、”何をした”と言ったものを記憶しているという事だ。
ゲーム内では例えば「○○(NPC名)から伝言を頼まれた。」「昨日、○○(NPC名)からこんな話をされた」などが実際にNPCとの会話の中で繰り広げられる。

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NPCの記憶構造

記憶は会話だけで無く、その他にもNPCの人物評価においても利用される。こちらは「過去に行われた行動から、そのキャラクターに対しての印象が決定される」ものとなっている。
記憶は3層のキュー構造となっており、上図を用いれば最近の出来事を記憶する記憶領域Aから固定観念となるような過去の出来事が記憶される記憶領域Cまである。
これらの記憶領域はエンキュー可能数が最大値を超えると古いものから消えていくそうだ。そしてこららの記憶領域のエンキューできる合計数は全キャラクターで共通であるが、記憶領域毎の割合は年齢によって違うとの事である(若いキャラクターはAの割合が多く、年齢の高いキャラクターはCが増えていくそうである)。

 

感情

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現在の感情を表すアイコンが表示される

キャラクターには現在の感情を表すアイコンが表示されており、上図であれば”ご機嫌(爽快)”である事がわかるようになっている。
ご機嫌(爽快)な状態のキャラクターに対しては「何か良い事でもあったのかい?」と聞いたりする事ができる。
感情は前述の記憶と結びついており、「少し前にこんな事があって…」と話をされる事もある。

感情にはニュートラルの普通を始め、爽快や悲哀、羞恥など全部で8つのカテゴリーに分かれている。
実際にはもっと細かなパラメーター(感想)が設定されているようだが、表面上には8つカテゴリーによって判断する事となる。
感情の状態によって行えるインタラクション・行えなくなるインタラクションがあるため相手の雰囲気を確認して話しかけるのがベターだろう。

 

欲求

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空腹・睡眠などの欲求により行動するケースもある

各キャラクターには欲求が設定されており、空腹になれば食堂に行ったり、尿意に襲われトイレを目指すキャラクターもいる。
これらの欲求はキャラクター毎にサイクルが設定されている。

ただし、飲まず食わず、睡眠を取らない(取れない)プレイをしても特に問題は発生しない(体力の回復が遅くなる、士気が落ちるなどのデメリットはある)。
特にプレイヤーキャラクターは欲求を意識する事はほとんど無い点は少々残念だ。プレイヤーとしてはこれらの欲求は設定されていないため、食事も睡眠も実際に行ったとしても「やっているフリ」でしかないのだ(体力回復が遅くなるデメリットは同様に発生するが問題になる程のデメリットにはならない)。
少々難易度がハードコアになるかも知れないが、食事・睡眠をしないと倒れる、死亡するようなサバイバル的プレイスタイルを出来るようになるモードがあるともっと良かったかも知れない。

 

ロール

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役職により異なる行動

ゲーム開始直後のプレイヤーはRB(ガンダム的な立ち位置と考えて貰っていい)パイロット部隊である「飛行隊」に配属されている。
配属は自由に変更可能であり、変更したい人物よりも威信点と呼ばれるポイントが上回っていれば解任・就任などを行う事ができるようになる。
また、就任する場合には一定の技能レベルが必要となる部署もあるため、その場合には技能レベルを訓練して上げるか、アイテムによって上げるなどすると良い。

役職は複数あり、前述の飛行隊、飛行隊に指示を出す飛行長、飛行長に指示を出すのは艦長だ。艦長の下には、操舵長、水測長、航海長、水雷長、機関長、軍医 …これらには更に副官も存在する。
これらは平時では特にプレイを気にする事は無いが、戦闘中には行う事に(当たり前だが)違いがある。そのロール(役割)に浸ってプレイするのも悪くは無いだろう。
とは言え、どの役職も地味な作業でありゲームとしての華やかさには欠けるのは少々物足りない。

 

戦闘

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戦闘は地味だ

本作の戦闘はレーダーチャートのようなトポロジーによって行われる。
これは水中戦闘と言う事もあり説得力こそあるものの、ゲームとしてはダイナミズムが欠けており非常に地味と言わざるを得ない。
また、RBや母艦は場合によっては一瞬で撃沈されるケースもあるため注意が必要だ。
特にRBは耐久値が低いため1発の被弾が命取りになるケースも多い。

RB操作の戦闘と母艦操作の戦闘は基本的には違いは無いのだが、母艦操作の場合には各部署への指示出しによって母艦が操作されるため、RBと比べると攻撃も移動もタイムラグが発生する。これによって仲間(NPC)と一体になって艦を運用していると言う手応えと、指揮している手応えの両方を感じられる点は非常に良い。
RB操作は気楽ではあるのだが、筆者としては母艦操作の方が(見た目は変わらず地味なのだが)断然面白いと感じる。

 

政治と物流

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本作の世界には政治と物流が存在する

本作の世界は主に火星を舞台にするが、火星での活躍に応じて、その他の惑星や異星人との関係に変化も生まれてくる。

火星の海域では敵対勢力が航行しているが、その他にも物流が存在している(上図、一番右の緑のラインが物流ライン。緑の円が物流船を表す)。
物流船を拿捕すると資金を含めた多様な資源を確保できたり、物流船の所属する都市の政治的民意に変化を与える事ができるが、やりすぎれば火星内の都市間の機能低下が発生して都市の人口が減ってしまう事もある。物流船を襲うべきか否かは慎重になった方が良いだろう。

また、各都市の政党や、各惑星の政権の状況によっても敵対勢力に変化が生まれる。ただ基本的には敵対勢力を潰して戦力を削ぐプレイ方針でも構わないため、この辺りは深く考えなくても問題は無い。

 

グラフィック

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会話時に使用されるモデリングは優秀だ

本作のキャラクターモデリングはフォトリアルとスタイライズドの中間的な表現を採用している。
また、PS2のリアルタイムレンダリングの標準レベルから考えれば非常に高水準なモデリングとアニメーションも特徴的だ。

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艦内には様々な施設がある

自由に歩き回れるフィールドは母艦である夜明けの船の内部しか存在しない。
また、施設のインタラクションも非常に地味だ。

ゲームとしては余り楽しめるインタラクションは無いのだが、潜水艦と言う狭い共同生活空間においてストレスを出来る限り溜めないように施設を配置可能な限り作りました…と言う雰囲気が感じられる構成になっている点は実に説得力があり評価できる。
インタラクションの地味さは「近未来潜水艦生活シム」だと思えばまぁ我慢できるだろう。

 

サウンド

サウンドは全体的に単調で短い周期でループする曲が採用されている。
決して優れたメロディでは無いが、同じフレーズを何度も聞くため結果として記憶には残りやすい音楽だ。

 

総評

絢爛舞踏祭は登場した時代が早すぎたタイトルの代表格だ。
今でこそShadow of Warのネメシスシステムを代表に動的ドラマを生み出す仕組みが見受けられたり、ウォーキングシムなど全体的に地味な進行の作品であってもマジョリティではないながら一定の評価を得ていたりするが、本作のシステムは今なお かなり尖ったシステムである事は疑いようもない。
ビデオゲームの価値観が多様化した2010年代中盤~後半以降に登場していれば全く異なる評価を得ていた事だろう。

NPCとのインタラクションによる動的ドラマというナラティブがゲームの根幹となっており、筆者は大好きだと声を大にして言う事はできるが、(設定の説得力こそあるものの)全体的に華やかさに欠ける点が多く、万人にオススメできる一作とは言い難い。
「近未来潜水艦生活シム」と言うシチュエーションを満喫してみたいと言う方は是非ともプレイしてみると良いだろう。

 

外部記事

開発者インタビュー-絢爛舞踏祭

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【レビュー】マリオテニス ACE

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マリオテニヌACE

ニンテンドー64にて初登場したマリオテニスシリーズ。
筆者はマリオテニスシリーズをプレイするのもマリオテニス64以来だ。
今回は2018年の初頭にNintendo Direct mini(どの辺りがminiだったのか疑問であったが)にて発表されたNintendo Switch用ソフトであるマリオテニスACEについてレビューを行っていこう。

 

マリオテニス エース - Switch

マリオテニス エース - Switch

  • 発売日: 2018/06/22
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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あるようで無い、無いようであるストーリーはいつもの事だ

マリオテニスACEには1人用のストーリーモードが搭載されている。

マリオシリーズ全般では、その中身自体はあるようで無い、無いようであるストーリーがほとんどだ。本作においてもそれは例外では無い。
ルイージがうっかり邪悪なテニスラケットを手にしてしまう。
するとルイージがラケットに心身共に操られてしまうから、さぁ大変。
何だか色々とヤバそうだからルイージを助けよう(あんまり気は進まないが)。

良くも悪くもゲームプレイが中心であり、ストーリーはあくまでもオマケだ。

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各ステージでちょっとしたストーリーが展開される

基本的にストーリーは紙芝居形式に近い形で展開される。
だがやはりストーリーはそこまで重要ではない。そのステージでどのようなルールで試合を行うのかが説明されると言った事がほとんどだ。
ストーリー上で行われる試合はユニークなものが多く、変わったシチュエーションでの試合ができる事は魅力的だろう。

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チュートリアルも兼ねているストーリー

当然ではあるがストーリーは操作のチュートリアルでもある。
基本的な操作や、本作で追加された新たな操作などを教えてもらえる。
しかし、チュートリアルとしては少々痒い所に手が届いていない。

本作で使用する事になる新しいシステムなどを”強制的に”活用する場面はあれど、プレイヤーが自然にそれを活用するように仕組まれていないため、ストーリーを全てクリアしてもプレイヤー同士での実際の試合との乖離が激しい。
ストーリーを全てクリアしたからと言って試合展開が巧みになる訳ではない。

ストーリーではマリオしか操作できない点も少々不便な点だ。
マリオテニスシリーズではキャラクター毎に性能が異なる(例えば同じパワータイプであっても細部な性能差が存在する)。ストーリーと言うチュートリアル内で各キャラクターの個性やプレイヤー自身の好みが把握できない。

また、ストーリー内のリワードとして獲得したラケットもストーリー内でしか意味を成さない点も勿体ない。
ラケットにまで性能差を付与するかは議論の余地があるが、コスメ的な意味だけでも通常モードにおいても是非とも使用可能にして頂きたかった所だ。

 

システム

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これは我々の知るテニスでは無い。テニスという名の格闘技だ。

マリオテニスACEは「テニス」と名乗った格闘技だ。

強力なショットを放てばラケットが壊れ、試合で使用できるラケットがなくなれば「K.O.」となる。
筆者はテニスゲームで「K.O.」と言う字面を見る事になるとは思わなかった。
しかし、全体的には非常にバランス良く構成されている。
ラケットへのダメージあるいは破壊を狙える強力な”ねらいうち”や”スペシャルショット”。
強力なショットや取れないボールに対して使用する”加速”。前述の強力なショットもジャストタイミングで返す事でラケットにノーダメージで打ち返せるが、加速を使用する事で打ち返しのタイミングが掴みやすくなる。
そしてそれらも決してノーリスクでは無い。
まず、”ねらいうち”や”スペシャルショット”、そして”加速”は通常のラリーで溜まっていくゲージを消費して放つ事になる。
むやみにゲージを消費してしまうと、いざという時に強力なショットを防げなくなってしまう。自分と相手のゲージ量を考慮して、マネージメントしつつ運用する事が重要になるだろう。
また、強力なショット類は大きくジャンプして放つため、相手から打ち返されてしまうと無防備な時間が長く一転してピンチとなる点も注意した方が良いだろう。

更に追加された要素として「テクニカルショット」と言うものが存在する。
テクニカルショットはタイミングよく発動できればゲージを大きく取得できるショット…と言う説明が行われる。
しかし、基本的には手の届かない・普通では追いつけないボールに対してアプローチする手段として活用する事が大半であろう。
これによって足の遅いパワータイプのキャラクターでも多くのボールに対応できるようになっている。
しかし、逆に手元に来たようなボールを打ち返す事は出来ない。
また、タイミングが合っていないと打ち返せても逆にゲージを消費してしまう事もある点がリスクとなっている。

これらの要素はダイナミックであり、カジュアルな要素であるため、大味な要素と感じるかも知れないが、そのバランスは非常に良くまとまっている。
マリオテニスシリーズ自体、(打ち返すだけならば容易であるため)防御がかなり優位であり試合が長引きやすく、またそれ故に単調になりがちであった。
本作でも実力の拮抗した者同士であれば試合が長引く事は変わらないのだが、追加要素によって適度な緊張感の維持と試合を中長期的に考えた戦略を取る事ができるようになっている。

とは言え、テニス自体は良くできているものの、それ以外の面での問題がある。
まずテニスの試合をやる意義が非常に薄い事だ。
試合を数多くこなしてもリワードは何も用意されていないのは問題だ。
テニス自体が楽しい事は嬉しい事だが、それだけでは何回・何十回とプレイするモチベーションには繋がらない。
試合数などに応じてコスメ的なラケットやコスチュームが入手できるなどすれば良かったのだが…。

また、ステージは試合開始時にランダムで決定されるのだが、任意にステージを選択できないのも問題だ。
各ステージではバウンドの性質が変わるため、どのステージでプレイするかは試合における重要な要素の1つである。簡単に選択できない点は不自然だ。
一応、ステージ選択は設定から「ランダム選択の対象から排除する」形で疑似的に決める事はできるのだが不便であることに変わりはない。
そのうえ、例え対象から排除しても一度ゲームを終了してしまうと、その設定は記憶されておらずプレイする度に再設定が必要となるため不便さの二重苦だ。

本作のゲームバランスはシングルスでは良く感じるのだが、ダブルスでは同じようにはいかない。
”ねらいうち”や”加速”、”テクニカルショット”はダブルスでは前衛と後衛の役割を曖昧にしてしまう。そのため、ユーザー同士でダブルスプレイをするのであれば普通のテニスでは一般的では無い陣形を取る方が安定する。
だが、NPCを交えてダブルスをする時にはそうもいかない。
NPCは基本的に前衛時には常に前衛にいようとするし、後衛時には常に後衛で頑張ろうとする。
特に前衛時には困ったもので、後衛が取るべきボールに対してもテクニカルショットを駆使して食らいついてしまう。これによって後衛側のリズムが崩されてしまいプレイフィールに悪影響を及ぼしているのだ。

Joy-Conをラケットに見立てて実際にスイングしてプレイする「スイングモード」は出来が余り良くない。理由は複数ある。
まず一番大きな問題点はユーザーのスイングとキャラクターのスイングが同期しない点だ。マリオやクッパと言ったキャラクターは通常のプレイと同様のスイングをするため、ユーザーがJoy-Conを振った動作とシンクロしていない。
そのため、視覚情報と操作に食い違いが発生しておりタイミングが取りにくくなってしまうのだ。
また、Joy-Conを振った際の判定も曖昧だ。
筆者が十数試合程度プレイした限りでは誤操作・誤認するケースが多く感じた。

 

グラフィック

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彩度が高めのグラフィックは見栄えがある

グラフィックはフォトリアルでは無いため彩度が高めで、コントラストがハッキリしている。
試合中もボールにカラーエフェクトがかかっているため視認性も良い。

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クッパはカッコいい

本作から…と言う訳では無いのだが、クッパのバックハンドショットはオシャレかつカッコいい。スタイリッシュな一撃をブチかまそう。

サウンド

本作ではステージも少なく、ストーリーもそこまで凝っていないため収録楽曲は少なく、印象も薄い。
最も聴き馴染みのある曲となるとメイン画面で流れているメインテーマではないだろうか。

試合中には加速を使用する事でBGMにフィルターがかかったりとインタラクティブな使用のされかたもしている。

 

総評

マリオテニスACEはマリオテニスシリーズ共通のカジュアルさを維持しつつ、ダイナミックな要素を増やしている。
ダブルスでは少々欠点もあるが、全体的なバランスは悪くない。
プレイすれば非常に楽しいテニスゲームを体験できるし、友達とプレイすれば間違いなく熱中する事だろう。
しかし、1人の時にプレイし続けるには余りにも淡泊な内容になっている事は残念だ。

 

外部記事

『マリオテニス エース』最新作で目指した“『マリオテニス』らしさ”に迫る特別インタビュー! - ファミ通.com

【レビュー】星のカービィ スターアライズ

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ピンクの悪魔の集大成?

星のカービィ スターアライズは星のカービィシリーズの正当作品としては初めてとなるHDグラフィックのカービィだ。

発表当初には「星のカービィ スーパーデラックス」のヘルパー要素や「星のカービィ64」のミックスを彷彿とさせる要素などがあったため、歴代のカービィをこれでもかと言わんばかりに詰め込んだ集大成的な作品になるのでは無いかと期待感が大きかった。

星のカービィと言えば偉大な生みの親である桜井政博さんが、当時のハード的な制約から高難易度化の道を歩んでいたゲーム市場において「初心者でも楽しめるアクションゲーム」を意図して制作されたタイトルだ。
今では桜井さんがディレクションする事こそ無くなったものの、老若男女が遊べるゲームとしての地位は確実に築いたのでは無いだろうか。
では、本作は果たしてどのような作品となったのだろう。 

 

星のカービィ スターアライズ - Switch

星のカービィ スターアライズ - Switch

  • 発売日: 2018/03/16
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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いつものように(?)宇宙からの侵略者がやってくる

本作のシナリオとしては恒例の(?)宇宙からの侵略者がやってきてプププランドを始めとしたカービィ達の星が危機に陥る所から始まる。
良くも悪くも、「あるようでない」ストーリーだ。
とは言え、ストーリーに登場するキャラクターやステージ、システムは過去作をオマージュしたものが多く採用されているのはシリーズファンはニヤリとできるだろう。

 

システム

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初心者向けの色合いが強いためチュートリアルもバッチリだ

本作…と言うかカービィシリーズ自体が初心者向けの色合いが強いためチュートリアルなどはしっかりと入っている。
しかし、プレイするステージには習得させたボタン操作を意識したようなレベルデザインや敵挙動がある事は皆無であり、後半ステージであっても難易度が高くなるという事がほとんど無い。
「初心者向け」という大義名分を免罪符にコピー能力やヘルパーなどでゴリ押しすれば何とかなってしまう平坦な構成は少々物足りない。
初心者向けとは言えども、初心者が初心者なりに自然とプレイできたと感じさせる工夫は欲しい所だ。

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4人で協力する事になるステージ

本作では4人で協力して進む事になるのだが、これが何とも画面内をカオスにする。
基本的にどのコピー能力・ヘルパーも強力で、また派手であるため、それが4人もいると流石に自分がどこにいるのか、何をしてるのかがわかりにくいのだ。
では、人数を減らせば…と思われるかも知れないが、ステージには複数名を連れていないと発動しないギミック(その多くは4人必要とされる)が存在するため必然的に複数名を連れざるを得ないのだ(その都度ヘルパーを作ったり消したりすれば良いのだが流石にそれは面倒くさい)。
複数名を連れていく事を強制するのではなく、1人でも攻略できるようにデザインするべきでは無いかと思う。
しかし、友達などとカウチプレイで楽しむ際にはこれくらいカオスであっても(むしろカオスである方が?)盛り上がることだろう。そういう意味では、常に複数名がいる事を要求されるステージ構成などを見るに、全体的に緩くはあるが友達と一緒にプレイする事を想定した作りなのかも知れない。

ステージ内には必ず1つ存在するレインボーピースというものが存在する。
こちらはやり込み要素的な立ち位置だとは思うのだが、集めるとカービィに縁のある人物たちが描いたカービィのイラストが解放される仕組みだ。
とは言え、これらを集める難易度も非常に低いのはやはりバランスに欠ける。
基本的には取得するために必要なコピー能力は近場に用意されているし、「取得しよう」という意志さえあれば簡単に手に入ってしまう。
筆者がプレイする限り、見逃してしまう・取り損ねてしまう可能性を感じたのはせいぜい1つか2つだ(結局取り逃す事は無かった)。

 

フレンズ能力

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64版のミックスを彷彿とさせるフレンズ能力

本作ではコピー能力とフレンズヘルパーの能力を特定のパターンで組み合わると発生する「フレンズ能力」と言われるものが発生する。
こちらは64版のカービィにて登場したミックスと類似点はあるが、全てのコピー能力の掛け算ではなく、特定の組み合わせで可能なものであるため注意だ(とは言えかなりの量が組み合わせは可能だ)。

フレンズ能力は大まかに2パターンだ。
1つは上図のようなコピー能力の威力強化・性質変化をするもの。
もう1つはコピー能力でフレンズを投げ飛ばす・吹き飛ばすといったタイプのものだ。
操作感などが大きく変わるようなスパイスにはならないが、どれも威力やエフェクトはかなり強化されるため積極的に使うと良いだろう。

 

フレンズアクション

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複数名のキャラクターと協力して発動するフレンズアクション

フレンズアクションは複数名のフレンズヘルパーと協力して発動するアクションだ。

このフレンズアクションを発動させると疑似強制横スクロールアクションになったり、横スクロールシューターとなったりとするのだが、これが非常に楽しい。
正直、このフレンズアクションだけを使うステージが1つ2つ欲しいと思ったほどだ。

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ラスボス戦の3Dシューティングは最も楽しい

特にラスボス戦にてプレイする事になる3Dシューター要素は難易度こそ高くないが、プレイしていて非常に楽しかった(これだけであと数パターン別のものが欲しいくらいだ)。
また、このラスボス戦では過去作をプレイしている人であればピンとくる要素があるのもテンションを盛り上げてくれるだろう。

 

ミニゲーム

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恒例となったミニゲームも健在だ

カービィでは恒例であるミニゲームは今作にも存在する。
どれもそう難しい内容ではないが、友達とワイワイ言いながらプレイするには申し分ないだろう。

上記の他にも「格闘王への道」のような「Theアルティメットチョイス」と言われるボスラッシュ的なモードであったり、ヘルパーが主役の「星の○○○○ スターフレンズでGO!」と言ったモードもある。
これらはストーリーと比べれば難易度は高いが、(コンセプト上当然だが)デザインされた難易度とは言えない。
なお、この2つはストーリーをクリアした後に解禁される要素となっている。

 

グラフィック

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HDになっても可愛さ満点

グラフィックスがHD化された本作。
記号化された中で表現されたカービィの特徴とも言える可愛らしさは健在だ。
カービィの柔らかそうな質感のアニメーションや緊張感の薄いリアクションなどは可愛らしい。

フィールドも良くできており、過去作の雰囲気を思わせるステージが高いグラフィックによりリファインされているのは懐かしさと新鮮さの両方を感じさせられた。

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世界の広がりと繋がりを感じさせるステージ選択画面

筆者が特に好きだったのはステージ選択のフィールドだ。
ステージは地域(プププランド)⇒星(ポップスター)⇒宇宙と言った具合にどんどん広い世界からステージを選択していく。
そのため、ポップスターのステージ選択フィールドでは前回のステージであるプププランドを観る事ができるし、宇宙のステージ選択フィールドからはポップスターを観る事が出来る…と言った具合に世界の広がりと繋がりが視覚的に良くわかる。
そのため宇宙にまで出てしまえば「おぉ…こんなところまで来てしまった」と言う気持ちがとても強くなる。
特に宇宙のステージ選択フィールドではワープスターに乗り、ステージが設定された惑星へと向かうことになるのだが、この移動をしているだけでも冒険をしている気持ちになり楽しかった。

 

サウンド

スターアライズのサウンドカービィの名に恥じない名曲だ。
また、過去作から引っ張ってきた曲を使用しているステージもあり非常に嬉しい。改めて名曲ばかりだと感じさせる。
条件はやや厳しいが「サウンドルーム」からゲーム内BGMを聴けるのも嬉しいポイントだ。しかしながら、曲名らしいものが表示されない(ナンバリングのみ)であるため、本記事でもそうなのだが人に説明する際には少々困ったものだ。

本作で使用される楽曲はただ曲として素晴らしいと言うだけでは無い。
ステージでは水中に潜った際にこもったようなサウンドとなるインタラクティブな音楽表現手法となっている点もメロディは残しつつも変化を与えており、とても良いアクセントとなっている。

 

総評

星のカービィ スターアライズはアクションゲームを初めてプレイするにはうってつけのタイトルだ。
可愛らしいキャラクター、素晴らしい音楽は記憶に残るに違いない。
しかし、中級者以上であったり本作のシステムに慣れた頃合いであれば平坦な難易度のステージ構成は少々物足りなさや、繰り返し感を覚えるかも知れない。
シリーズ経験者ならばステージ・音楽・敵などで過去作へのオマージュが多数存在している事は嬉しいポイントに繋がるだろう。

また、アップデートにより特殊なフレンズヘルパー「ドリームフレンズ」がアップデートにより追加される事も期待したいポイントだ。
筆者はとりあえず第一弾として追加されたリック・カイン・クー、マルク、グーイをプレイしたが、どれも過去の登場作品を思わせるアクションが豊富で良かった。
特にマルクは代名詞とも言える”ブラックホール”をSEもほぼそのままに扱えるのは、それだけでも価値がある。

 

外部参照

幅広い年齢層に愛されるカービィならではのデザイン。『星のカービィ』シリーズで培われてきたUIの重要性【CEDEC 2020】 - ファミ通.com

『カービィ』のUIで大事なのは「可愛らしさ」ではなく「あたたかさ」。『星のカービィ』シリーズを支えるUIデザインの伝統と挑戦の実例【CEDEC2020レポート】

「星のカービィ」UIデザインの伝統は「かわいらしさ」ではなく「あたたかさ」だった――カービィから学ぶ“ゲームとプレイヤーを繋ぐ作り”

理想の開発環境を徹底追及!スタッフの視線や意識まで踏み込んで分析したカービィチームの取り組みに迫る「カービィチームの開発力を最大化せよ! ―内製フレームワークで大事にしたこと―」【CEDEC2019】 | GameBusiness.jp

【レビュー】真・三國無双8

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彼を知らず己を知らざれば戦う毎に殆うし

真・三國無双8はナンバリングとしては実に約5年振りとなるタイトルだ。
(以下、真・三國無双三國無双と表記)
本作は制作の発表時に「オープンワールドを採用する」と銘打たれた意欲作となる。
近年(2010年代中頃)、日本メーカーのシリーズ作がオープンワールドを採用するケースが増えているのは言うまでもないだろう。
そんな状況下の中でコーエーテクモゲームスが誇る三國無双は果たしてどのようなゲームに仕上げてきたのだろうか。

発売前、筆者は期待半分不安半分であった(不安が強かった気もするが)。
三國無双シリーズでは過去に三國無双5での事例がある。
三國無双5は初めてPS3に登場した三國無双であったが、主にコンパチのアクションやボリューム面において大きな欠陥を抱える結果となったのだ。
本作、三国無双8も同じような道を歩むのでは無いかという不安が強かったのだ。

 

真・三國無双8 - PS4

真・三國無双8 - PS4

  • 発売日: 2018/02/08
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

三國無双シリーズは基本的に三國志演義をベースに史実とオリジナルの要素を加えてストーリーを進行させているのが特徴である。

考えてみれば当然なのだが、演義では蜀漢が主役に描かれているため曹魏孫呉、晋、それ以外の勢力の話が薄い。
あらゆる武将・勢力をプレイアブルとしているからには特筆すべきストーリーが無くてはならないため、史実寄りの話が採用される事になるのは必然だろう。
また、演義と史実の矛盾の穴を埋めるためにオリジナルの要素が加えられていたりする。

筆者は三國志においては孫呉…特に孫堅(史実)が一番好きなため、上述の内容をかなり強く感じる。筆者としては史実における孫堅の手柄が、演義においては全て関羽のものになっているのはいささか悲しみはある。
せめて孫堅でプレイした時くらいはストーリーを史実の内容そのままにしても良いのでは無いかと思うのだが。

孫呉関連の話が続いて恐縮だが、今作では筆者待望の”程普”がプレイアブル武将として登場したのは嬉しい事だ。
程普は孫呉において最も古参である上に実績も偉大だ。
むしろ、どうしてナンバリングが8になるまでプレイアブルでなかったのかが大きな疑問だ。個人的には2や3くらいで既にプレイアブルでも一切の疑問も無いのだが…。

筆者自身もそうだったが、三國無双シリーズはどれも「三國志(三國志演義)の入門」としてはバッチリだ。

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章の選択をすると言う準ステージクリア制は面倒な仕様だ

シリーズにより振り幅があるのが「IFシナリオ」つまりオリジナルなストーリー要素だ。
筆者の好きな孫呉で言えば「孫堅の生死」がシリーズでも一番振り幅がある。
これはユーザーのプレイアビリティを優先するか、演義・史実の追体験を優先するかの問題だ。
本作においては後者を選択している。
つまり孫堅であれば死亡する章があり、それ以降では登場しない・操作できないのだ。これを救済する形で別途フリーモードは存在するのだが。

本来であれば、この仕様自体に不満は無い。
だが本作は後述するがオープンワールドを採用したゲームなのだ。
そうであるが故に問題が生じてくる。
例えば筆者のように孫堅でプレイしたとしよう。
広大なオープンワールドを走り抜け、レベルや装備などを整えて育て上げた孫堅
しかし、特定の章以降ではプレイできなくなり、別の人物を選択せざるを得ないのだ。
そうなると「またフィールドを走り回って強くせにゃならんのか…」と言う気持ちにどうしてもなってしまうのだ。

また、別の人物を選択する際にも厄介な仕様がある。
孫堅をプレイしたあと、筆者は今作の新しいプレイアブル武将であり好きな人物でもある程普を使用しようと思った。
そして孫堅は2章で退場したため、3章からプレイしようと思ったのだ。
だが、ここでも残念な事が起きる。
程普は1章から登場する武将であるため、1章からプレイしなおさなくてはならないのだ。
3章から初めてプレイアブルとなる孫策周瑜といった武将達は3章からプレイ可能だが、1章から登場している武将の場合には1章から始めなければいけないのだ(程普でクリア済みなら3章からプレイしなおす…と言った事は可能)。
もう一度全く同じ事をしないといけないのかと思うとかなり気が重かった。

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カットシーンは少々味気ない

本作ではストーリーの要所にてカットシーンが存在する。
しかし、そのカットシーンの多くは少々味気ないものだ。
後からでも閲覧可能な特殊なカットシーン以外では上図のような3Dモデルのキャラクターが立った状態で会話(恐らく全体の90%はコレ)が行われるのだが、これが何とも作り込みに欠けている。
人物は基本的に棒立ちであり、たまに汎用のリアクションが行われるのだが、これが演出として非常に淡白に感じるのだ。
またリアクションのアニメーションは使いまわしであるため、人物によっては違和感が出てしまっている点もマイナスだ。

登場人物が膨大になりカットシーンにリソースを割きにくいのは理解できるのだが、それは開発前からわかりきっていた事であるハズだ(いわゆる”リストラ”を選択肢に入れるかによっても異なるが)。
であるならば、ストーリーやカットシーンに対してそれに相応しいアプローチを試行して欲しかった所だ。

 

システム

本作、三國無双8はシリーズに新しい風を吹き込もうとする意欲的な作品である。

 

オープンワールド

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広大なフィールドとなった三國無双

三國無双8では古代の中国を舞台としたオープンワールドなフィールドが展開されている。その面積は凄まじいもので、筆者の肌感覚として近年のものと比較しても非常に広いと感じた。
しかし、その広大なフィールドはハッキリ言って”虚無”の空間だ。
例えどこまで突き進んだとしてもプレイヤーが喜べるご褒美がそこに待っている事は無い。
広大ではあるがゲームプレイにおいて1章もクリアすれば、既にお腹はいっぱいという気分になるだろう。

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フィールド上では野生の獣や賊が襲ってくる事も

フィールド上には武器や回復アイテムを開発するための”素材”が落ちているし、狼や虎、熊と言った危険な獣、そして山賊などが存在している。
また、街ではクエストが受注できる。
だが、どれもゲームとして上手く機能しているとはお世辞にも言い難い。
そこに”ある”だけなのだ。
素材や獣などはプレイに慣れていけば目新しさも無くなり、すぐに無視される存在になるし、実際に無視しても何も問題が無い。
エストにしてもランダム生成された「○○を倒せ」「××を集めてくれ」程度しかなく、報酬も簡単に集められる素材であるため、数回クリアすれば億劫になる。
これらはどれもゲームプレイの密度を誤魔化すための「上げ底イクラ」でしかないのである。

三國無双シリーズは従来から「戦う」と言うインタラクションしかないコンテンツだ。
そんな中でオープンワールドという広大なフィールド(しかも実在する・した土地)を採用するという事はどのような問題が発生するのか。素人目にも思い浮かぶ問題点がいくつかある事だろう。
もしも本作のコレがその回答だとすれば非常に貧しい発想と言わざるを得ない。
これが数世代前のオープンワールドであれば筆者もまだ我慢できたであろうが、海外中心ではあるが現代ではオープンワールドを採用した過去の遺産達の問題点と言うノウハウ・教訓、そしてそれに対してのアプローチが数多くあったハズだ。
果たして本作では、それらはどの辺りに活かされたのだろうか。

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ファストトラベルのスピードは驚異的だ

本作のオープンワールドにも素晴らしいポイントがある。
それはファストトラベルのスピードだ。
筆者は通常のPS4SSDにもしていない環境だが、それでもどんなに長くても10秒はかからない。だいたい5秒程度だ。
近年の水準レベルが20~40秒だと思われるが、そこから比べると爆速だ。
この点に関してはストレスフリーとなっている。

 

バトル

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新たに取り入れられたステートコンボシステム

本作で変更されたポイントはオープンワールドだけでは無い。
バトルシステムに関しても新たな試みが導入されている。
それがステートコンボシステムだ。

ステートコンボシステムはリアクト攻撃やトリガー攻撃、フロー攻撃などから構成されるシステムの総称である。

リアクト攻撃とはプレイヤーと敵との状況に応じて発生し、発生した際には△ボタンを使用して発動する。
例えばわかりやすい所で言うとカウンターなどもこれに該当する。

トリガー攻撃はR1ボタンを押し続けた状態で△ボタンor□ボタンor×ボタンを押すと発動する攻撃だ。それぞれ気絶、打ち上げ、転倒させる効果を持っている。

そしてフロー攻撃は敵の状態によって異なる動きをする通常攻撃だ。
敵の状態に応じてアクションに変化があるため、基本的に前述のトリガー攻撃と組み合わせて使用する事になる。

と、ここまでがバトルの大まかなシステムとして紹介されている。
しかし、これを実際にプレイする限りは今一歩足りない印象だ。
確かに過去作と比べればバトルアクションにダイナミックな動きを出しやすいのだが、それが爽快感に結び付いていないのだ。
それは何故か。理由は複数あると考えている。

まずは最も単純な所では「敵の硬さ」だ。
三國無双8では敵部隊には必ず1人の隊長が存在する(味方も同様だ)。
この隊長クラスの敵を倒すのに骨が折れるのだ。
隊長クラスの敵は、プレイヤーは敵の数倍上回ったレベル、ステータスは攻撃に全振り、武器も上位クラス…この状態でなお簡単には倒れてくれないのだ。これでは無双が得意とする爽快なアクションの邪魔になってしまう。
前述のリアクト攻撃にフィニッシュ攻撃というものがある。恐らくプレイヤーにこれを使用させる目的でこのような硬さになったのだろうと推測できるが、ハッキリ言って余計なお世話である。

次に「敵の密度」だ。
無双と言えば”一騎当千”が基本的なコンセプトだろう。
しかし、本作ではここでも少しばかりそれが活かせていない。
メインクエストとなる主戦場ではそれなりに多くの敵兵士が存在するものの、搦め手側クエストの戦場では敵の数が少々物足りないのだ。
これでは”一騎当千のアクション”とは言えず「普通のアクションゲームよりは敵が多いな」レベルだ。
もちろんハードウェアのリソースとの兼ね合いもあるだろうが、ここは無理してでも最適化や削減、描画の工夫に注力して欲しいポイントである事は間違いなく、これが出来ないようでは”無双”というコンセプトの根幹すら揺るがす問題だ。
そもそもオープニングムービーでは地面が見えないほどの敵をなぎ倒しているにも関わらず、実際のゲームプレイではそれが実現できていないのは現代においては詐欺と言われても仕方がないのでは無いだろうか。
PS2時代にはコンセプトムービー的な側面として許容されたものだが、現代では御法度の手法だと筆者は思う。

最後に「ステートコンボシステム」それ自体だ。
過去作の無双シリーズではアクションを単純なボタンの連打に頼っていた。
本作ではそこに手を加えた形であるが、もう一歩踏み込んで欲しかったのだ。
ステートコンボシステムでは、「打ち上げ⇒叩きつけ」などのコンボが決められるが、筆者がプレイした限りでは”そもそもコンボを決める意味が感じられない”のだ。
例えばステートコンボシステムでコンボを決める事によりダメージが爆発的に上がる、(謎の)衝撃波が発生して周囲の敵が激しく吹っ飛ぶ…などなどあれば積極的に使用したいと思えるのだが…。
前述したリアクト攻撃のフィニッシュ攻撃が最も雰囲気が近いかも知れないが、残念な事にフィニッシュ攻撃は単体にしかヒットしない仕様であるため使用感としてはむしろ若干のストレスだ。

 

インターフェース

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馬の操作感は少し気になった

筆者が三國無双シリーズをプレイするのが久しぶりであった事も影響しているかも知れないが、ボタン割り当ては気になった。

プレイヤーが馬に乗る時にはL2ボタンを押す事になるのだが、降りるときは×ボタンだ。
武将がジャンプするのは×ボタンだが、騎乗でのジャンプはR2ボタンだ。
なぜ類似のアクションであるのにこのようなボタン割り当てとなったのか筆者は理解に苦しむ。キーコンフィグにおいても武将操作と騎乗操作は個別に変更が出来ない。
こちらは慣れてしまえば問題なく操作自体は行えるが…。

 

グラフィック

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近年のグラフィックレベルと比べるとお世辞にもハイレベルとは言えない

三國無双8のグラフィックはコーエーテクモゲームスが提供するビデオゲームの中では私が知る限り最も美しい。
しかし、残念ながらそれは「コーエーテクモゲームスの中で」と言う注釈が必要不可欠である。
これよりも美しいディテールで描かれたソフトウェアならいくらでも思い付くのが正直な所だ。
基本的に水関連の表現は甘いし、全体的にテクスチャも綺麗とは言えない。
キャラクターのモデリングに関しても特別なカットシーン以外では簡素で、町人などからは生気が感じ取れない。

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生活感のある街並みは悪くない

古代の中国の街並みは”良い具合”にゴチャゴチャして汚く生活感がある。
上の画像は程普で建業を歩いている所だが、生活感を感じられたのは個人的には評価できるポイントであった。

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美しく、幻想的なシチュエーションもある

場所や天候によっては非常に美しい景色となる場合もある。
上の画像は孫堅で建業周辺を探索している際にスコールのような大雨に見舞われた際の1枚だ。
逆光と大雨で視界が悪くなっている事で神秘的な景色となった。
だが、やはり基本的には”ハイエンドなグラフィック”には期待し過ぎない方が良いだろう。

また、アップデートによりフォトモードが追加された。
これ自体は非常に嬉しい事だ。戦闘中の一枚を取るにはお世話になる事は多いかも知れない。

 

サウンド

三國無双シリーズは音楽面でも定評がある。
本作においてもそのカッコよさは健在だ。

タイトル画面で流れる雄大な「INTO THE ERA」

相変わらずカッコいい「呂布のテーマ」

強い決心を感じさせる「ADVANCE TO THE FUTURE」

厳しい戦闘を予感させるような「BRAVE DEFENDERS」

力強くもまた優しい「RED LARGE TIDE」

サウンド含め特別なカットシーンなどはギャラリーから何度でも再生が可能である。

総評 

真・三國無双8で採用されたオープンワールドやアクション部分の一新などマンネリ化していた部分に変化を与えようという意欲は手放しに賛辞を贈りたい。
しかし、現状では「二兎追うものが一兎も得なった」のだ。
筆者が尊敬して止まない孫武(孫子)の言葉を借りれば
「彼を知らず己を知らざれば戦う毎に殆うし」
を体現してしまったかのようだ。
実際の意図・経緯はわからないが、本作は「マンネリを打破するための手段」としてオープンワールドやアクションの変化が採用されたように感じる。
これでは技術に使われているだけだ。
理想とする三國無双や本来あるべき三國無双を目指した結果によってオープンワールドや新機軸のアクションが採用されるべきなのだ。
そしてその過程に目を背けたとしても、オープンワールドを採用したことによる弊害に対して、キャラクターが変わるだけで同じ章を何度もプレイさせられる水増し要素、フィールド上の素材・野生動物などの上げ底要素…これらの幻術によって誤魔化そうとしているように感じる。
まるで大平道の張角である。
ゲームとしてプレイできないと言った致命的なレベルではないものの、近年の標準的なオープンワールドや爽快な無双アクションに求められる水準には共に達していない。
コーエーテクモゲームスの開発リソースは知る由もないが、この品質では自分で自分の首を絞める結果にしか行きつかないのではないだろうか。
 「無双」とはどういう事なのか、「オープンワールド」とはどういう事なのかを一度見つめなおし設計から考え直すべきだ。

 

外部記事

『無双8』でオフライン&オンライン協力プレイが10月23日実装! 『無料共闘&体験版』が11月1日配信! 『真・三國無双8』鈴木P&宮内Dインタビュー - ファミ通.com

【インタビュー】「真・三國無双8」プロデューサー鈴木亮浩氏インタビュー - GAME Watch

「真・三國無双8」は何を間違えたのか?失敗点と過去作から学ぶべき点

【レビュー】アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ

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私に出会ってくれてありがとう

筆者がアイドルマスターというコンテンツに出会った理由は比較的レアな部類だろうと思っている。
元々、名前は知っていたものの、アーケードゲームであったり、Xbox系列でのリリースであったりと言う面で筆者は無縁だった(アイドルマスター2の時の一悶着が当時としては一番の印象であった)。
だが、ラジオ制作をしている篠崎高志氏が好きであった筆者は、彼の携わっていた色々なラジオを聴くようになった。
その中の1つがアイドルマスターのラジオ(当時はラジオdeアイマSHOW)だったのだ。
そしてそこからアニメが始まり、媒体もスマホ向けのものがリリースされ、果ては女性向けのものもリリースされ…と多様な戦場で戦うコンテンツとして認識している。

そんな(割とどうでもいい)馴れ初めがありつつ、
今回はスマートフォン向けの音ゲーとして登場した
アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ(以下、デレステ)をレビューしていこう。

なお、近年のタイトルではコンシューマ・スマホ向け問わず将来的なアップデートによりレビューの内容と齟齬が発生する場合がある。
そこにはご了承いただきたい。

 

cinderella.idolmaster.jp

 

ストーリー

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アイドルマスターシリーズの設定は振り幅があるのが魅力的だ

アイドルマスターシリーズの特徴的なポイントとして「媒体によって設定が異なる」 という点がある。
キャラクターのコアとなる設定(外見や性格、家族構成など)が変わる事は無いのだが、それ以外に関しては振り幅があるのだ。
そのためゲーム、マンガ、アニメでそれぞれ異なるストーリーが展開される。そうであるが故にユーザー側はライト層視点ならば「どこが導入となっても良い」ように構築されているし、コア層も「そういうものだ」と受け入れやすい土壌となっているように思う。
そういったユーザーがついていきやすい環境がアイドルマスターシリーズが長く続いている理由の1つではないかと筆者は思う。

アイドルマスターシンデレラガールズのキャラクター人数は180名を超えており、他に類を見ないほどに多い。
キャラクターの個性も非常に多種多様であり、必ず1人はお気に入りになるアイドルを見つける事ができるだろう。
ただボイスに関しては全員ついているわけではない。
年に一度行われるシンデレラガール総選挙(端的に言えば人気投票)などのイベントを契機にボイスが実装される事がほとんどだ。
ボイス未実装のアイドルは少々寂しい気持ちになるかも知れないが、逆に言えば自分が(あなたが)応援する事によってボイスが実装されるかも知れないと言うのは魅力でもあるだろう。

しかしながら、「180名超」という物量はプラスとも言えるがマイナスとも言える。
これは人数が多すぎて尻込みをしてしまう人もいるのでは無いかと思うのだ(現に筆者の友人がそうであったのだが)。
今更これをどうする事もできないため、むしろこの状態を活かして戦う事がアイドルマスターシンデレラガールズというコンテンツの腕の見せ所となる。

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紙芝居形式の話ではあるが内容はバラエティ豊かだ

話をデレステに戻すが、本作においても前述した「媒体によって設定が異なる」 という点は同じだ。
アイドルマスターシンデレラガールズのアニメ(2015年放送)を意識した設定が多くあるものの、デレステ固有のストーリーや時間軸が存在している。

本作のストーリーは「コミュ」と呼ばれる。
コミュはキャラクター個別に用意されたものや複数のキャラクターが会話を繰り広げるものがある。
話自体は笑えるものからシリアスなもの、中には真剣に取り組むあまり衝突するようなものまで多種多様で楽しい。
また、アイドルマスターシンデレラガールズというコンテンツを全く知らなくても徐々にキャラクターの個性を知る事ができるようになっている。
アイドルの人数の多さに尻込みしている人も安心してプレイして良いだろう。

 

システム

本項ではデレステにおけるシステム全般を紹介しよう。

 

LIVE

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楽曲選択画面の新旧GUI

こちらは新旧の楽曲選択画面だ。アップデートにより楽曲の選択の画面が変更されている。新GUI(上図の左側)においてはよりリスト形式に近付いた。
これは楽曲が余りにも増えているためこのようなGUIへと変更されたと推測できる。
しかし、綺麗にまとまった印象こそあるが、視認性は余り良くなく、選択も少々やりにくい。
現在選択されている楽曲以外はやや小さいテキストを頼りに探す必要があるため(絞り込みはあるにしても)「あの曲をプレイしたい」と思った際に探すのは少々大変だろう。

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GUI版のグラフィカルな一覧

GUIではカバーイラストをタップする事で上図のような形式での一覧を表示する事も可能だ。
とは言え、こちらも一覧化しただけであり使い勝手はそう変わらない。
しかしながら、これだけの曲数をこのように一覧化すると圧巻だ。

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3Dライブと2Dライブの好みの方でプレイ可能だ

最初にお伝えするが、上図は筆者が苦肉の策(スマートフォンの画面録画)によってゲームプレイ中のスクリーンショットを撮ったものとなっている。
そのため、(録画環境の影響により)少々解像度が低くなってしまっているが本来であれば1080pでも動作可能だ。

本作はリズムゲーム…いわゆる音ゲーだ。
内容としては一般的でリズムに合わせて落ちてくるノーツを処理していくものだ。スマートフォンアプリであるためフリック操作なども存在する。
プレイ中の画面は3Dによるライブを後ろで流しながらも、2Dモードでプレイする事も可能だ。好みに合わせて設定をするのが好ましい。
リズムゲームとしてユニークなポイントがあるとすれば、落ちてくるノーツを「表現」として利用している点だろう。
歌詞中に「冬」に関する文言があれば、それに合わせてノーツで雪の結晶の形を表現したりと言った遊び心ある譜面にしている事がしばしばある。
3Dモデルによるライブだけではなく、ゲームプレイに直接関りのあるノーツでも楽曲を表現しているのは面白い。

PCやスマートフォンと言うハードは(規格や性能が統一されていないため)ゲームプレイの動作を開発側が保障する事が難しい。そのため、快適にプレイをしたい場合には公式に動作確認が行えているもの(またはそれに近い機種)を選択する事が望ましいだろう。
筆者もそうだったのだが、古い機種を使用した場合にはリズムゲームとしては致命的な「反応しない」「フリック抜け」「ロングノーツ(長押し)途切れ」などが発生してしまう可能性がある。
こればかりはパブリッシャーやデベロッパーに文句を言うのはお門違いであるため、余程動作が気になる場合には「買い替え時」だと思った方が良いだろう。

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縦持ち用のSmartライブ

ライブはスマートフォンを横に持ってプレイするものが標準なのだが、片手でプレイできるように縦持ちでプレイできる「Smartライブ」というものもアップデートによる追加されている。
こちらはリズムゲームとしては問題なく遊べるものの、楽しさと言う観点からすれば通常のライブとは程遠く、時間はあるが横持ちは出来そうにないような状況でない限りは積極的にプレイしようと思わなかった。
上図は練習プレイの画像なのだが、こちらも3Dライブと2Dライブの両方から選択可能だ。

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GRAND LIVE

GRAND LIVEは2019年6月末頃に追加された新しいライブだ。
特徴的なポイントとしては「アイドル15人でのMV」だろう。
それまでは基本的に多くて5人がワンカットに登場する形であったが、GRAND LIVEでは上図の上のように一気に15人が登場するのは魅力的な絵面だ。
何よりも自分好みの編成を15人選択できるのは嬉しい事だろう。

変わったのはMVだけでは無く、ゲームプレイも変化している。
今までは1ユニット辺り5人で編成を行っていた訳だが、文章では少々ややこしいかも知れないがGRAND LIVEでは専用の編成を組む訳では無く3ユニットを設定する事で15人を編成する形となる。

音ゲー部分である実際のライブパートは上図の下2つを参照して頂きたい。
これを観てピンと来る方もいるかも知れないが、GRAND LIVEでのライブパートはかなり劣悪なゲームプレイを強要される。
ゲームプレイを劣悪にさせているのはノーツの小ささだ。
画像はほぼ同じポイントをスクリーンショットで撮ったものになる。
まずは左側の画像を参照して欲しい。
左の画像の下方にはフリックのノーツが落ちてきており、更に最上段にはタップのノーツが落ちてきている。
しかし、「ノーツの縦幅が小さすぎてタップのノーツなのか、フリックのノーツなのか、右フリックなのか、左フリックなのかを判別するのは至難の業」と言わざるを得ない。
落ちてくるノーツを視認しようにも、どれも同じノーツにしか見えないのだ。
右の画像のように設定から色を変更した場合であっても結局のところ縦幅が小さすぎて矢印がどちらか判断できないため、矢印ではなく「色」で覚えるしかなく直感性が薄れている。
また、それだけではなく右上に表示されるコンボ数表示に落ちてくる小さいノーツが被ってしまうため右側のノーツは落ちてきたことに気が付きにくい状態にもなってしまっている。

難易度の高い曲で自身のプレイスキルが低いためにノーツが取れないのであれば納得感はあるが、GRAND LIVEのライブパートは明らかにそれとは一線を画している。
GRAND LIVEの視認性の改善は早急に行っていただきたい限りだ。

 

ルーム

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ルームはリズムゲームとは全く関係ないが時間泥棒だ

本作では「ルーム」と呼ばれる要素がある。
ルーム内では「ぷちデレラ」と呼ばれるミニサイズとなったアイドルが歩き回るエリアを装飾する事ができる。
装飾は家具や床、壁紙などで行うことができる。
興味のない人は非常に簡素なルームで済ませてしまってもゲームをプレイする上では何も問題は無いが、レイアウトにこだわりたい人は延々とプレイできるだろう。
レイアウトに使用する家具などはゲーム内通貨「マニー」を消費して購入する事となる。
マニーはライブをするなどして獲得できるので、資金の少ないゲーム開始時はとにかくライブをする事になる。

アップデートによりレイアウトのプリセット登録が行えるようになったほか、5周年アップデートの一環として保有できるルームの数も増えたのは嬉しい限りだ。
 

ガシャ

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収益形態はF2Pとして一般的なガシャ形式だ

デレステの収益形態はFree to Play(F2P)型のゲームにおいて一般的なガシャ課金(ルートボックス)形式だ。
プラチナガシャではジュエルと呼ばれるものを消費してアイドルを獲得する事となるが、このジュエルを有償で購入する事ができる。
しかし、ジュエルはログインボーナスやイベントなどで少量ながら獲得可能なため普通にプレイする上では無課金であっても全く問題無いという印象だ。
お金を出してでも迎え入れたいアイドルがいる(出来た)時にだけ課金する。
筆者はそれで良いと思っているし、それが健全だろう。
また、いわゆる”天井”も存在するため「どうしても欲しい…」という場合には天井を目指しても良いかも知れない。

なお、ジュエルはガシャの他にもアイドルの3Dライブで着用できる衣装を購入する事にも使用可能だが、こちらは有償ジュエルのみが対象となるためログインボーナスなどで獲得したジュエルでは獲得できない。

 

営業

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いわゆる放置ゲー的な営業

アップデートにより「営業」と言われる要素が追加された。
これはいわゆる放置ゲー的なもので、アイドルに仕事を依頼して完了まで待つものだ。
仕事依頼する事でデメリットは何も発生しないので積極的に使用すると良いだろう。
営業は完了するのに実時間で数時間かかるが、スタミナを消費する事で一気に完了される事も可能だ。
また、アップデートにより営業を行う事で解放されるコミュも実装されるようなったためコミュ解放の営業は積極的に行いたい所だ。

この営業は当初アクセス面に問題を抱えており、前回と同じアイドルを営業に向かわせる場合には再実行が簡単に可能であるが、イベント専用に追加される営業をはじめとして初回の営業の際には数多くのアイドルから選択する必要があり面倒さがあった。
しかし、アップデートにより比較的簡単に営業メンバーを選択できるようになった。
とは言え、追加されたのは「実行する営業に適切なメンバーの自動選出」であるため自分の思ったようなメンバーにしたいケースには対応できておらず若干痒い所に手が届いていない。

 

イベント

イベント内容を詳しくは説明しないが、デレステにおいては月に4回ほどイベントがローテーションで行われている。
イベントは約一週間開催され、イベントのリワードとしてイベント限定仕様のアイドルが獲得できる。
獲得方法はランキング入賞もあるが、ライブする事で溜まるポイントなどに応じて獲得する事も可能である(ただ、ポイントで獲得できるほどプレイしていれば入賞できるのだが)。
イベント内容にもよるが、基本的に前述している「コミュ」も専用のものが公開されており、そちらも併せて楽しむ事ができる。

 

グラフィック

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モーションキャプチャーを使用したアニメーションは素晴らしい

本作のLIVEやMVでは3Dモデルによるライブシーンを観る事が可能だ。
これが本作において最も力の入っているポイントだろう。

3Dモデル自体は標準的なレベルであり、髪の表現やディティールはやや甘く感じるが問題になる程ではない。

デレステにおいてはモーションキャプチャーを使用して制作されている。ここまでは近年なら一般的なレベルであるが、本作においては複数名が登場した状態でのダンスがある。そこにリアルさを演出するために「バラつき」を発生させているとの事だ。
実際に3Dモデルによるライブを観てみるとキャラクター全員が僅かにタイミングが異なっている事が実感できるだろう。
こちらも特筆して珍しいものとは言えないかも知れないが、この辺りにまでこだわって開発されているのは嬉しいポイントだ。

基本的に各アイドルには”SSR”と分類される最高ランクのものが用意されており、SSRでは固有の衣装や髪形となった3Dモデルで3Dライブを観る事ができる。

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MVの手法も変化している

デレステはMVの手法に関しても変化が見て取れる。
筆者はこの手の内容に詳しい訳では無いが最初期のMVと比較すれば、その演出方法のリッチさの向上は火を見るよりも明らかだ。
更にもう少し掘り下げてみると、リリースから1~2年目の期間においては一般的な音楽におけるMVやライブで実際に取り入れられているカメラワークであったり、映像表現が使用されリッチさが大きく向上した時期であるように思う。
そして、3年目辺りになると日本アニメのOP映像などに観られる映像演出が使用されるケースが増えてきており、より幅の広い柔軟なMVとなっている。

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映像演出がエンハンスドされる3Dリッチモード

また、アップデートにより「3Dリッチ」と呼ばれる演出面が強化されたLIVEを楽しむ事ができる。
強化されるのは主にライティングだ。全体的に光源が強化され、陰影も強くなり、反射表現も追加される。
こちらは更にスマートフォンの性能が要求されるが、最近の機種であれば問題なく動作するのでは無いかと思う。
光の表現でここまで印象が変わるのかと驚くばかりだ。

 

サウンド

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アイドルマスターシンデレラガールズの楽曲が数多く収録されている

本作で収録されている楽曲は現在100曲を優に超えている。
楽曲はイベントなどにより月に2曲ほどのペースで増えている。
プレイ初期では一部の楽曲(ソロ曲)はロックされており、前述のコミュにより解禁されていく形となる。

こちらに関してもアイドル同様に物量が多くなっており、アイドルマスターシンデレラガールズに初めて触れる人には少々ハードルが高いと感じるかも知れない。
しかし、こちらもプレイしていけば徐々に覚えていく。気持ち面のハードルさえ乗り越えれば特に問題にはならないだろう。

アイドルマスターシンデレラガールズは楽曲においても非常にバラエティに富んでいる。
アイドルソングのようなものから、バラード、様子のおかしいもの(誉め言葉)まで振り幅が大きく聴いていて飽きない。
こちらもアイドル同様に必ず1つはお気に入りの曲と出会えるのではないだろうか。

(どうでもいいかも知れないが)筆者のお気に入りの曲としては

アイドルマスターシンデレラガールズを代表する「お願い!シンデレラ

まさに圧倒的と言える「こいかぜ」「こいかぜ-花葉-」

妖艶なマッドサイエンティストに思えるがフルで聴くと切ない「秘密のトワレ」

和ロック的な曲調がカッコいい「青の一番星」

クールのカッコよさが前面に出ている「Nocturne」

キュートさが前面に出ている「shabon song」

リズミカルなテンポ感が良くゲームにおける譜面も楽しい「Flip Flop」

デレステ初出で伝説的とも言える色気と可愛さを併せ持つ「Tulip」

一昔前の少女向けアニメのEDを彷彿とさせる「明日また会えるよね」

少しだけ大人のクールな雰囲気を感じさせる「咲いてJewel」

明るい曲調であるが片思いの歌詞でMaster+の譜面が最高に楽しい「きみにいっぱい」

可愛いが前面に押し出された「Kawaii make MY day!」

ロボットアニメのOPかのように熱い「Absolute NIne」「Trancing Pulse」「Trinity Field」

危うさのある歌詞とクールな曲調とMVが非常に魅力的な「クレイジークレイジー

軽快なテンポと小気味良い言葉遊びの歌詞が素晴らしい「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」

歌詞の内容だけでも感動する「EVERMORE」「always」

…などなど筆者の好きな曲を挙げていけば枚挙に暇がない。

ちなみにゲームファンならば聞いたことがあるかも知れないササキトモコさんがアイドルマスターシンデレラガールズに楽曲提供をしている。
どれも独特で特徴的な素晴らしい曲なので是非とも聴いて欲しい。

 

総評

アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージアイドルマスターシンデレラガールズを今から知る入門としても十分に機能し、また通常のリズムゲームとしても完成度は高いと言って良いだろう。
しかし、その多方面的な物量の多さが間口を狭くしている感は否めず、新規ユーザーを取り込もうと思うなら工夫が必要だ(リリースから時間も経っているためニーズは飽和したと判断して、新規ユーザーよりもアクティブユーザーを重視しているかも知れない)。
とは言え、自分の心にあるハードルさえ超える事が出来れば問題なく楽しむ事ができるアプリケーションとなっている。
リズムゲームアイマスシリーズ・デレマスシリーズに興味があるのであれば間違いなくオススメできるタイトルだ。

 

外部記事

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【レビュー】嘘つき姫と盲目王子

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異国の小さな恋の絵本

嘘つき姫と盲目王子は日本一ソフトウェアが2018年01月18日に自社タイトル発表する放送(録画放送)にて初公開したタイトルだ。
筆者は放送されたその映像の絵と設定に魅了され、購入を決意した。
そんな一目惚れな作品のレビューをしよう。

 

嘘つき姫と盲目王子 - PS4

嘘つき姫と盲目王子 - PS4

  • 発売日: 2018/05/31
  • メディア: Video Game
 
嘘つき姫と盲目王子 - Switch

嘘つき姫と盲目王子 - Switch

  • 発売日: 2018/05/31
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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絵本的なストーリーとストーリーテリングは何よりも魅力的だ

嘘つき姫と盲目王子のストーリーは実に絵本的だ。

狼の女の子が姫と偽り、自分が誤って傷付けてしまった王子を治療するために森の魔女を訪ねていく…。
ストーリーは絵本を読み聞かせするような「語られる」形式であり、これもまた雰囲気に非常にマッチしていると言える。

少ないながらアクションパートにおいてもストーリーテリングがあり、王子に対してお願いできるインタラクションが徐々に増えていくのだ。
これが「狼と王子の関係の変化」を表現する事にも繋がっている。
また、アクションのチュートリアルも物語の進行に合わせた形であり、比較的自然に感じられるようになっている。

王子が「全ての事象に対して無防備」という要素も設定上からも説得力があり、また無防備でか弱いがために「守りたい」と言う気持ちが湧く。
それゆえにアクションパートで王子を死なせてしまった際の罪悪感はより一層強くなるのだ。

本作のストーリーは決して哲学的な側面や深みのあるストーリー、あるいはアポリアが描かれると言う訳では無いのだが、小さい頃に読んだ・読んでもらった絵本の話が思い出され、非常に懐かしく、また暖かな気持ちになる内容になっているのは大きなプラスだ。

 

システム

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可愛らしいキャラクターのリアクションだけでも価値がある

本作ではノベル的なパートとアクションパートの2つが中心になる。
前者は基本的に語り部によって語られるストーリーを聴きながらストーリーを楽しむものとなっており、後者では2D横スクロールのちょっとした謎解きをして先へと進む形になっている。
ノベルパートはさておき、ここではアクションパートをメインに話をしよう。

アクションパートでは狼と王子が先(森の魔女の館)へと進むため、設置された謎解きをクリアしつつステージを踏破していく形となる。
姫状態の狼と王子が手を繋いで歩いているその姿はとても微笑ましく、これを観るだけでも価値があるのでは無いだろうか。
ステージ内の謎解きの難易度はそこまで高くないものの、謎解きにおけるレベルデザインは良くできており、また急激に難易度が変わるような事は無く、ステージ毎にステップアップするようになっている。本作のアートスタイルや設定からゲームに不慣れなユーザーがプレイすることも想定されるが、全く問題ないように感じる。
また、例え失敗してやられてしまってもリトライまでの時間は短く、ゲームプレイとしてストレスになる事は無いだろう。
しかし、王子がモンスターなどにより死んでしまった際の狼のリアクションは非常に切なく悲しい。

どうしてもクリアできないようであれば「ステージスキップ」と言うストーリーのみを楽しむためのコマンドが設定されている。
しかし、個人的にはゲームである(ゲームをプレイする事それ自体もストーリー表現である)のだから、このようなコマンドは本当の最終手段であり、できるだけ別の方法で代替すべきではないかと思うのだ。
それ(アクションパートが必須ではないこと)による弊害か、アクションパートは基本的に謎解きをしつつゴールを目指すだけになっており、およそストーリーテリングと呼べるような表現が少ない(全く無い訳ではない。前述のストーリーの項を参照。)。
プレイヤーが詰まっていると判断された場合には旅を助けてくれるNPCが現れたり、もしくはヒントが何か提示されるなど…やりようはあると思うのだ。
そうする事でアクションパートであるゲームプレイ自体においてもストーリーを表現する事が可能になり、ユーザーにとって更に深みのある関係性を表現できただろう。

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高所からの落下でもキノコの上なら安心…?

アクションパートでは考慮不足では無いかと思えるポイントが少ないながら存在した。
狼が姫の姿をしている時と一緒に連れている王子は高い所から落ちると死んでしまうのだが、キノコの上に落ちる分には死なない。
しかし、空中でもある程度は左右への制御が行える狼とは異なり、NPCである王子は慣性のままに落下してしまう。
そのため、下に落下死を防ぐためのキノコがあるにも関わらず、歩きながら落ちる事により発生する横方向への慣性によって落下地点からズレて王子が死んでしまう…と言う事が数回あった(カメラを動かさないと、どこにキノコがあるのか全く見えないポイントもある)。
「慎重に降りろ」と言う開発側の意図した設計である可能性もあるのだが、だとすれば少々性格の悪いキノコの配置だと言わざるを得ない。
もう少し安全に降りられるようにして欲しかった所だ。

また、一部ではあるが高所から降りる際に根本的に着地先が見えないポイントや特定のポイントでカメラワークが不安定になったりするケースなどもある。
ゲームプレイに対して致命的なレベルではないものの少々気になる所だ。

 

グラフィック

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唯一無二のアートは圧倒的な魅力を誇る

嘘つき姫と盲目王子のアートはこれで本当の絵本を作って欲しいと思えるほどに非常に魅力的だ。
不安そうな王子は姫(狼)に手を繋いで貰うと安心したように笑顔になり、姫もまた嬉しそうな表情をする。
王子に花を手渡すモーションも実に可愛らしい。

キャラクターだけでなく、背景なども絵本的で魅力がある。

 

サウンド

筆者に音楽の知識が無い故に稚拙な表現となってしまうが、本作のBGMはその設定やグラフィックとマッチした「悲しみ」「切なさ」と言ったメロディが多く、オルゴールのようなどこかノスタルジックな暖かみのある雰囲気も感じさせる。
しかしながら、ゲームプレイがそこまで長くないために記憶に残るまでには至らないのは少々勿体ないポイントであるかも知れない。

総評

嘘つき姫と盲目王子は非常に魅力的な作品だ。

世界設定、アート、そしてストーリーとその語りには特筆すべき点がある。
レベルデザインも悪くなく、適度な達成感を持ちながらも難解過ぎない謎解きは初心者ユーザーにとっては重要だ。

ゲームプレイ自体は5時間もあればクリアできてしまうため、物足りなさを感じるユーザーもいるかも知れない。
しかし筆者としては、水増しのための無駄なサブクエストの追加や冗長なアクションパートを採用せずに、コンセプトに忠実に簡潔にまとめあげ、1つの作品として綺麗に仕上がっており好感が持てる。

童心に帰って、この遊べる絵本を手に取ってはいかがだろうか。

 

外部記事

『嘘つき姫と盲目王子』企画・キャラクターデザイン担当者、小田沙耶佳氏インタビュー 「私の“好き”をありったけ詰め込みました」 - ファミ通.com