【レビュー】こちら、母なる星より

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ホンモノとニセモノ

「こちら、母なる星より」はデイジーワールドが企画・制作を行い、日本一ソフトウェアが販売した百合を題材としたADVだ。

前作にあたる”じんるいのみなさまへ”は至らない点はありながらも、シナリオは良く出来ており好感を持っていた。
そんな作品の設定を受け継いでいるように見受けられた本作に興味を持ち、もちろん応援の意味も込めて購入した。

今回はそんな本作のレビューを行おうと思うが、相も変わらず筆者はADVを得意分野としていないのでその点は注意して参照して欲しい。

 

こちら、母なる星より - Switch

こちら、母なる星より - Switch

  • 発売日:2021/10/28
  • メディア:Video Game
 
こちら、母なる星より - PS4

こちら、母なる星より - PS4

  • 発売日:2021/10/28
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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池袋でサバイバル生活

本作はオーソドックスなADV形式の百合を題材とした作品だ。
ストーリーは6人の女の子達の群像劇のような形式となっており、最初からペアが設定されているような形となっている。
物語を進めていくと、どのペアの会話を聞くかという選択が用意されており、物語終盤にはそれまでのプレイで最も選択の多かったペアの物語が展開される場面もあるので自分が気になるペアを選択していくと良いだろう。
このペアの会話は非常に多く用意されているほか、同じ時系列で別のキャラクター達が何をしていたのかを知る事が出来るような構成になっている場面も多い。

本作のストーリーは端的に表現してしまえばポストアポカリプスものである。
パッケージのカバー裏にも記載されているのでネタバレではないという認識で記載するが、本作は宇宙より飛来した未知のウィルスによって人類がいなくなり、そこから長い年月を経た世界が舞台だ。
旅客船のような場所で目覚めた6人の女の子達が廃墟となった池袋でサバイバルをしながら共同生活をしていく事になる。
サバイバルをしていく状況下ではとにかく何も物がないというアドバンテージが0の地点からのスタートだ。彼女達の様々な知恵や工夫あるいは廃墟となった書店などから得た知識を基にして生活をして、更にQOLを良くしていこうとする向上心があるためサバイバル感がしっかりとある。
志向性が似ているとは言え前作との比較となって恐縮だが、比較すると本作の主人公である彼女達はスキル的なアドバンテージも若干低めであるため、本当にレベル1からのスタートに近い物語となっている。
そのような状況のためストーリー中では科学や生物、占星術など広範な題材が扱われているが、その扱い方に関してもソフトで嫌味が無い。
もちろん、メインの題材である”百合”という部分もしっかりと描かれており、彼女達が徐々に仲の良さが増していく姿は本作の見どころだと言えるだろう。

廃墟の街でのサバイバルと言う状況こそ過酷だが、物語ではそのような危機的な状況でも彼女達の精神はかなり落ち着いていたりする。
その他にもスマホの機種が全員同じものだったり、何故か過去の出来事を思い出せなかったり、はたまた廃墟となった池袋にしても純粋に廃墟となったとは思えない。そもそも彼女達は趣味なども違えば出身すら異なっているようで仲良くなったきっかけが想像しにくい。他にもいくつかあるが、これらの様々な状況が非常に不自然なのだ。
女の子たちの会話はもちろんだが、不自然な状況の世界設定が謎となり「何故こうなっているんだろう」とプレイヤーの興味を引き付ける作りとなっている。
プレイヤーの知的な興味を持たせる謎であるが、これは殺伐とした状況になりがち(あるいはその状況にする免罪符として扱われがち)なポストアポカリプス作品を陰鬱にものにならないようにするための工夫として用意されているものでもあるのだ。
これらの謎に関しては物語の後半になるにつれて明かされていく事になり、後半には物語が加速するように展開するため答え合わせをしていくような面白さがある。
なお、タイトルロゴもしっかりと伏線になっている。

筆者は前作のテーマを「ユートピア的ディストピア」と評したのだが、本作にしても大まかには同様である。
しかし、今作にて取り上げているテーマもあるように感じられ、それが「ホンモノとニセモノ」というものであるように感じられる。
それは前作では描ききらなかったSF要素における倫理面での苦悩の側面で、その部分が掘り下げられているのだ。
詳細にはネタバレとなるため伏せるが、本作では彼女達自身やその状況においてニセモノである事を悲観しない。
それを受け入れてポジティブに解釈して進んでいく。本来はニセモノであったとしても彼女達にとってはホンモノなのだ。

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探索ポイント選択時には簡単な会話テキストが流れる

ストーリーの進行では用意された特定の探索ポイントを選択する事も多くある。
選択すると会話が開始され、中には必須ではないちょっとしたサブストーリーのようなものも存在する。
ただし、メインストーリーが進行するポイントとアイコンが同じであるため、うっかり選択すると全てを網羅しないままに次に進んでしまう可能性がある事は注意が必要だ。
また、基本的にはメインの探索ポイントでない部分に関してはテキストのみとなっている。

マップで探索ポイントを選択すると移動を演出する描写および会話がある。
空白となる時間経過を明示的に演出するのは良い事なのだが、会話内容は表示が早すぎてテキストを追いきれないのは勿体ない。
なお、この会話の内容はストーリーの進行と共に変化がある。

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世界観を補完するテキスト

本作の世界観を補完するテキストとしてロッカーが用意されている。
ロッカーはストーリーの後半頃に解禁され、タイトル画面から参照する事が出来る。
この要素では主人公達6人以外のこの世界に生きていた人について知る事が可能だ。
これを参照する事によってこの世界で使われているSF的技術や主人公達を取り巻く環境に関する世界設定の一端を垣間見る事が可能だ。

ただし、テキストが自動送りされてしまうという読む上ではやや難の仕様となっている。この仕様はシステム設定の自動送りをOFFにしても変わらないようだ。
そのため、自分のペースでじっくりと読みにくい。音声による読み上げ形式であればまだしも、テキストオンリーであれば入力によってテキスト送りさせて欲しかった。

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前作をプレイしているなら嬉しい要素も

前作にあたる「じんるいのみなさまへ」と同じ世界観となっているが、前作の知識がなくとも楽しめるためその点に関しては安心して大丈夫だ。
逆に前作をプレイしていると設定が共通しているために、世界設定の謎の部分がわかってしまうと言う事はあるかも知れないが、それでも前作とは異なる驚く設定も用意されている。
また、前作をプレイしていると直接的な繋がりを感じられるファンサービス的な嬉しい要素もあるのはありがたい。

更に意図したものではないだろうが、時代性がマッチしているのも興味深い。
前作も本作もウィルスによって人類が壊滅した世界であるが、前作が登場したタイミングと比べると時代性(2020年頃のCOVID-19の大流行)にマッチする部分が多いのだ。
そのため、本作の世界設定を比較的現実世界の地続きとして捉えやすい環境になっているのではないだろうか。

この辺りの設定の利用で気になるのは「ウィルスによって人類が滅んだ」という事をどのように扱うのかだ。
前作においては「なぜ世界が荒廃しているのか」が謎として機能するようにデザインされていたのだが、本作においては前述の通りパッケージ裏にも記載があるものだ。
前作と同様の世界線、その上にパッケージ裏にも書いてあるような内容を主人公達が知る事になるのは物語の後半に差し掛かったタイミングだ。
プレイヤーが最初から知っているような内容を物語の後半まで引っ張るのは善し悪しがあるように感じられる。
特に前作をプレイ済みのプレイヤーはどこまで前作を踏襲して物語を解釈して良いのかが困惑し続けてしまうのだ。筆者の場合は前作と言うバイアスによって物語を根本から読み間違えてしまわないかという恐怖感が少なからずあった。
プレイヤーを安心させると言う意味でも「人類が滅んだ理由をキャラクター達が早期の段階で理解する」という状況にして物語を進めるようにしても良かったのではないだろうか。
とは言え、前述の通りその前提を知った状態でプレイしていても驚くような部分はあるのでシナリオが前作と全く同じような状況にはなっていない。

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いくつかの気になるポイント

本作は多くの会話がボイス付きで進行するが、自動送りもあり筆者としてはありがたい。
これ自体は嬉しいのだが、筆者好みのベストな状況は「自動送り時には自然な会話のテンポになること」が本質的な目的なのだ。
本作はボイス送りのテンポが少々遅いためその点に関しては満たしていない。
マイナスポイントとまでは言わないが、そこまで出来ていれば更に嬉しかった。

次に気になるポイントは話者の判断に困ると言う点だ。
本作では話者のみをハイライトするような演出がなく、誰が喋っているのかがわかりにくい状況となる。
特に本作では最序盤から登場人物6人が揃ってしまうため、顔と名前を覚えるのがやや大変に感じられるのだ。
キャラクターデザインではいわゆる”ピンク髪”のようなアニメらしい「配色によるキャラ付け」はしていないため覚えにくさはより強いと言えるだろう。
その上、キャラクター達はお互いの事を名前で呼んだり、名字で呼んだり、あだ名で呼んだりとマチマチで、これもまた顔と名前を覚えにくくしている。
話者のみをハイライトする、あるいは物語として徐々にメンバーが増えるなど、顔と名前が一致しやすい配慮が欲しかった所だ。

演出面において最も気になるのは時間経過の演出だ。
「ちょっと遊んでみよう⇒楽しかったー」のような数分~数十分程度の時間の流れを演出として表現していない場面が度々存在しており、結果として会話中に急に時間が飛んだりする事になってしまいテンポ感がややおかしい…というよりも会話を聞いていて困惑する場面がままある。
このようなケースでは一般的には暗転を行って時間が経ったことを表現する事が多いが、そうした標準的な表現が出来ている場面と出来ていない場面がバラバラに存在しており徹底されていないのだ。

また、ボイス関連の部分も気になる所だ。
ボイスがない会話中に、一部だけボイスがある。またはその逆の状況が稀に存在しており意図が良くわからない。コレに関してはバグの可能性もあるのだろう。
また、単純にボイスの設定が間違っているものがある。
簡単に言えばセリフの内容と音声が合っていないもの、口調からして別キャラクターのセリフだったのでは?と思えるものがあるのだ。
この辺りは慎重に精査して欲しかった所だ。

 

システム

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非常にシンプルなADV

本作は非常にクラシックでオーソドックスなADV形式だ。
会話を聞き、時に選択肢があり、選択した際には専用の会話が発生するようになっている。
ストーリーの項でも上述した通り、選択した回数が多かったペアによって終盤に専用の会話が設けられるような形となる。

しかし、何かしらのギミックなどが用意されているような事は無いため、特筆すべきような本作の個性を決定づけるようなゲーム的な部分には期待しない方が良いだろう。
あくまでも女の子たちの関係性とサバイバルとSFの組み合わせというストーリーを楽しむ者であると認識するのが正しい。

 

グラフィック

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表現としては十分だが、リッチとは言い難い

本作ではキャラクターの立ち絵は正面、斜め、背面の3パターンがあるようで、それを工夫してストーリー演出として取り入れるようにしている。
瞬きや口パクもあるので、その辺りは一定のモダンさはあると言っても良いだろう。
ADVらしいスチルもそれなりにあり、1章辺り2~4枚程度の量が用意されている。

本作において物足りなく感じるのは背景で、種類がやや少ないのが演出面として勿体ない。
背景パターンが少ないため、多くの場面で使いまわされてしまうのだ。
会話の内容で十分に状況はわかるため作品としては成立しているが、来た事の無い場所でも使いまわされる背景はベターな選択とは言い難い。
このポイントが何とかなればもう少しリッチに感じただろう。
特にサバイバル生活に際して彼女達は様々な道具や家具などを作っていくが、それをもっとビジュアル面でみせて欲しかった気持ちは強い。
そうする事でよりワクワク感が増したのではないかと思うのだ。

 

サウンド

収録楽曲が多い訳では無いが、爽やかで落ち着いた雰囲気の筆者好みのニューエイジ的な楽曲が多いのは嬉しいポイントだった。
曲のループは短いが、それがかえって単純接触効果を生み出しているように感じられる。

声優の演技も悪くなく、しっかりとキャラクターを活かすように演じられており素晴らしい。
声優のアドリブなのかは不明だが、単純にテキスト通りに読むだけではない細かなニュアンスの演技が良く表現されているのは見事だ。
特に金刺玲頼(かなさし あきら)役の河上明日香さんの演技は非常に豊かなものがあったように感じられる。
もちろん、その他のキャラクターの演技も細かく表現されているので、ある種のアニメやボイスドラマのような感覚でも聴く事ができる。

 

総評

「こちら、母なる星より」のストーリーとキャラクター、落ち着いた癒しのあるBGMは魅力的だ。
女の子達が仲良くなっていく関係性を楽しむ事はもちろん、不自然な謎を残しながら進行する物語はストーリーを進める原動力となるだろう。
筆者は前作を「ユートピアディストピア」と評し、それは今作も健在だが、そこからもう一歩踏み込んだ倫理的な側面も描いている点も良い。

ただし、前作の挑戦し過ぎな部分からの反動なのか非常にシンプルなADV形式となったのは堅実と言える一方で、数多くある他作品との差別化には至らない。
ポジティブな面も多く感じさせるため、今後の挑戦に期待したい所だ。

 

外部記事

コミックス | こちら、母なる星より | 日本一ソフトウェア

小説 | こちら、母なる星より | 日本一ソフトウェア

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【レビュー】テイルズ オブ アライズ

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心の黎明を告げる

テイルズ オブ アライズ(以下、ToArise)はテイルズ オブシリーズの久しぶりとなる新作となっている。
筆者がテイルズ オブシリーズをプレイするのはリマスター版のテイルズ オブ ヴェスペリアぶりであり、新作ともなればとんでもなく久しぶりだ。
今作は新しいユーザー層を得るべく開発された経緯があるとの事で、ビジュアルスタイルからもわかる通りシリーズのステップアップを実現している。

今回はシリーズのリブートともいえるToAriseのレビューをしていこう。
なお、レビューはPS4版のものとなる。

 

【PS4】Tales of ARISE

【PS4】Tales of ARISE

  • 発売日:2021/09/09
  • メディア:Video Game
 
【PS5】Tales of ARISE

【PS5】Tales of ARISE

  • 発売日:2021/09/09
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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虐げられる者の逆襲

ToAriseは「ダナ」と「レナ」という2つの星々の対立が物語の主軸だ。
300年前のレナの侵攻によってダナは5分割して統治され植民地のようになってしまったという。
簡潔に書くとレナの王を選定するためと言われる儀式によってダナの民から生命力を吸い取っており、その現状を打破するべく反乱軍として動く事となるのが物語だ。
中盤辺りまではこのような逆襲や復讐のようなモチベーションに繋がりやすい動機を提示して進行している。
そして終盤になると王選定の儀式の真実などレナ文化の謎にも迫るなど、物語の全貌が見え始めてくる事になるような構成となっている。

本作は近年のいわゆる”JRPG”には珍しくないがファンタジーとSFの要素で構成されている。
魔法が存在する事はもちろん、宇宙船と言ったような存在も登場する世界観だ。
ファンタジーやSF作品らしい専門用語もいくつか登場するが、そこまで難解なものではなく、専門用語が乱立するような状況もそう多くないので理解するには問題ないだろう。
ストーリーの進行シーケンスは非常にシンプルで、街⇒ダンジョン⇒ボスという構造の章形式で構成されている。
街ではどのような事が起きているのかを知り、ダンジョンはボスまでのハードルとなり、ボスを倒す事でその章が完結するような形となる。
そのような意味では時代劇のような構成になっているとも捉える事が可能だ。

ストーリーの内容は老若男女問わずに楽しむ事が可能だが、演技の方向性に関しても同様だ。
2010年代以降のアニメトレンドに多い抑揚の少ないナチュラルな演技をベースとした会話が多くなっており、落ち着いたテンションの会話が大半を占めている。
これは映像表現から見ても同様で、本作が過去シリーズからの飛躍と言う形の決別を行った証なのだろう。

本作の主人公は鉄仮面を被り、痛みを感じず、ダナにて奴隷として労働し、更には記憶喪失という設定が盛々になっているアルフェンという青年だ。
その青年が強制労働中にレナ出身の触れただけで相手に激痛を与えるシオンと出会い、彼女もまたとある理由があってダナに展開するレナの体勢を崩壊させようとしていた。
共通の敵と戦うために手を取り合い、共にレナの従属体制を崩しにかかる革命の始まりが物語の導入だ。
その他の仲間キャラクターも魅力的で、物語の進行と共に信頼関係が築かれていく様はキャラクター性を重視するタイトルとして見所だ。
ただし、最終的には比較的都合の良い敵と戦う事となるため、プレイヤーが行っている血を伴った革命が本当に正しい行いなのかは問われないような状況へと流れていってしまうのは少々勿体ない部分であるかも知れない。その辺りは良くも悪くもキャラクターを重視したテイルズ オブシリーズとなっている。

フィールドの探索中にも会話が発生するのだが、これに関しては良いポイントと悪いポイントが併存している。
ボイスによって会話が行われるため、移動中が賑やかで良く、何より移動中にテキストを読む事にならないのでデザインとしても適切でポジティブな印象だ。
しかし、会話の尺とフィールドの大きさが釣り合っておらず、会話が発生してもカットシーンの次のイベントポイントに到達してしまうと会話が途中で終わってしまう事態が起きてしまうのは勿体ない。
また、フィールド上の敵とエンカウントしても会話が終わってしまうが、こちらは根本的にデザインがミスマッチしている。
本作はシステムとして一定の時間内に敵と連戦すればリワードが多く貰えるようなデザインとなっており、急いで次の敵とエンカウントする事が推奨されるデザインになっている。
そのため、探索中の会話を途切れさせる事に拍車をかける事に繋がってしまっており、デザインが噛み合っていないのだ。
フィールド中に会話を差し込むのであれば、それを考慮したデザインにして欲しい所だ。

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恒例のスキット

シリーズ恒例のスキットはマンガのようなコマ割り形式となっている。
スキットではキャラクターや情勢に関しての掘り下げが行われる。
こちらも過去シリーズと比べると全体的にテンションが落ち着いたものが大半となっており、極端なギャグパートのような会話はほとんどなくなっている。

なお、カットシーンやスキットは後から見返す事も可能だ。
読み忘れた時には重宝すると言えば重宝するが、物語が進行した後に読み返すと演出として少々不都合もあり、可能な限り読み忘れに注意した方が望ましい。

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旅先で行うキャンプが冒険感を増す

フィールド上では野営するポイントが用意されており、HPなどのステータスの回復のほか、料理を作ってバフ効果を得る事もできるほか、仲間達と会話をする事も可能だ。
システム上の要素でもあるが、冒険している感を増してくれる要素としても機能している。

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主張の強すぎるDLCはネタバレにもなりかねない

本作にはゲームプレイを有利に進めるためのDLCや衣装を変更するDLCが販売されている。
しかし、メニューを開いたとき、キャンプを行ったときなどの場面でDLCの案内がエクスクラメーションマーク(!マーク)尽きで表示され主張が強いのは考えものだ。
有料のDLCの主張を強くするのはプレイヤーを冷めさせてしまう可能性がある。
また、表示されているDLCの内容を確認してしまうと誰が味方として登場するのかネタバレされてしまうため注意も必要だ。
もちろん、誰が仲間になるのかは公式サイトでも公表されているとは言え、そういう事を恐れて事前情報を一切仕入れないプレイヤーも一定数は存在するハズである。
この辺りはもう少し配慮しても良かったのではないだろうか。

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クオリティは高いが、親和性の悪いアニメパート

テイルズ オブシリーズとしてはお馴染みでもアニメによるカットシーンパートも存在する。
アニメはufotableによって製作されており、色彩や動画は非常に高い完成度となっている。
しかし、本作には気合の入った3Dモデルが存在するせいで少々困った事になってしまった印象だ。
そもそも論になるが、なぜテイルズ オブシリーズはゲーム内にアニメを挿入させたのだろうか。
アニメに対してのリスペクトはもちろんだろうが、それ以外には恐らく補完が目的だった事が考えられる。
昔の作品では様々な問題によって映像表現が省略表現が主体となっていた。その省略された部分を補うためにアニメを挿入してキャラクターや世界のビジュアルイメージをプレイヤーに落とし込み(脳内補完)しやすくしたかったのではないかと推測している。
しかし、本作ではどうだろうか。
本作は立派な3Dモデルがあり、その3Dモデルが全面に渡って演技をすればよかったのではないだろうか。
特に本作の3Dモデルはトゥーン調という訳でもないし、武器を含めた衣装がアニメシーンとゲームプレイとでは食い違いが起きてしまうなどの映像表現の食い違いも発生してしまっている。
つまるところ立派な3Dモデルではなくアニメによってストーリーを描くと言う手法に「隣にいる人に電話で話しかける」ような「わざわざ感」が出てしまっており、アニメパートという存在が代替可能な必要性・必然性が薄いものになっているのだ。

アニメパートを採用すると言う理由が「以前からアニメを使っているから」というもの以外に思い当たらず、演出としては明確なアドバンテージがあるとは言い難い。
「劇中にアニメが挿入される」というだけの活用方法ではなく、3Dモデルをよりトゥーン調にする、3Dモデルのゲームパートとアニメパートがシームレスに切り替わるなど「リッチな3Dモデルを使いつつもアニメを使う明確なメリットあるいは親和性」があるべきで、またプリレンダにならざるを得ないアニメという媒体を活用する前提でのゲームデザインもするべきだ。
それをしないのであればアニメパートを完全に廃する事も選択肢としてアリなのではないだろうか。
これは品質の高い3Dモデルを利用しているからこそ如実に浮き彫りとなってしまった問題だと言えるだろう。
過去シリーズからの脱却を図った本作であるが、この辺りも挑戦的に脱却をしても問題なかったのではないだろうか。

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これは本当に描くべきだったのか

「システム」の項でも少しだけ記載するが本作では家畜を育てる事が出来る。
しかし、これは本作にとっては問題がある題材である。
何故なら、前述の通り本作の物語のテーマは「虐げる者への逆襲」なのだ。
これまた前述した通り、主人公達ダナ人は奴隷としてレナ人に命を吸い取られている。そのような状況を打破するべく反逆というクーデターを行っていた。
そんなテーマや物語を掲げて行動している中で、動物を家畜として育てて食肉にするのは主人公達への最高の皮肉になってしまっている。

このような題材をテーマとしている中で家畜を扱うのは苦笑いしかできないし、むしろ家畜を扱うならそれも含めた部分を物語にして欲しかったのが正直な所だ。
人によっては後味は悪く感じるだろうが、例えば最後は家畜に逆襲されて人類が滅びる(家畜が主人公達と同じ行為をする)など、家畜を描くのであればそこまで描ききらなければいけないのではないだろうか。
そして、それをしないのであれば「家畜」という要素は差し込むべきではなかった。

 

システム

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テンポ良く進行する爽快感あるARPG

ToAriseの戦闘はシンボルエンカウント式のアクション要素の強いARPGとなっている。
エンカウント方式であるがPS4版であってもロード時間は非常に短いため、その点がストレスに感じる事はまずないので安心して大丈夫だ。
とは言え、この品質のビジュアルでシンボルエンカウントなのはプレイしていてやや違和感があり、マイナスとまでは言うつもりはないが理想的にはやはりシームレスな戦闘が望ましかったとは思ってしまうだろう。
アクション要素とRPG要素が絡む本作だが、難易度も選択できるため自分に合ったものを選ぶと良いが、易しい難易度を選択しても圧倒的なレベル差相手に勝てる訳では無い。
また、序盤のレベリング効率が悪く、後述もするが物価も高いため、操作に慣れていない序盤は苦戦しがちになる可能性が高い事も知っておいて良いかも知れない。

戦闘では通常攻撃とスキルや魔法に相当する術技を使いながら立ち回るのが基本戦術だ。
通常攻撃は特定回数まで連続して発動させる事が可能だが、更に地上と空中で別々に回数がカウントされるため上手く駆使する事でより長くコンボを持続させる事が可能になる…というのが戦闘の基礎情報となる。
有効な攻撃にはヒットストップもある程度あるのでアクションの爽快さも感じられる作りだ。

術技はAG(アーツゲージ)を消費して発動可能で、AGは時間経過と共に徐々に回復するが、攻撃中は回復速度が鈍化する性質がある。
このゲージは戦闘中でのみ有効なものとなっているもので、大雑把に説明するならばアクションゲームにおけるスタミナのようなイメージをするのがわかりやすいだろう。
一般的に多い「MP」のようなマネージメントが必要な要素では無いため、戦闘において次の戦闘を気にする必要がない。気兼ねなく全力を出しやすくデザインされているのは純粋に戦闘を楽しむうえでは良い選択になっている。
なお、術技に関してはシリーズ恒例であるが、術技の発動回数によって新たな技を覚えるような仕組みだ。
そのため、少々使いにくいような術技であっても、技を覚えようと思った場合にはある程度は使い込まなくてはならない。
これは真面目にやろうと思うと中々の苦行を伴う事になるので、無理にやろうとせずに自分のモチベーションと相談して行った方が良いだろう。

時間経過や攻撃を命中させる事で発動可能となるキャラクター固有の特殊技「ブーストアタック」は敵をダウン状態にできる。
これは各キャラクターに異なる特性がついており、例えばスーパーアーマー特効効果などがあり、スーパーアーマー状態の敵に対して使う事でスーパーアーマーを無効化するだけでなくダウン状態へと持ち込み、有効な一打となる。敵の特性やその行動に応じた対策が出来るようになっているのだ。
ボス戦では特殊行動に対してQTEのように専用のブーストアタックが発生する事もある。
また、このブーストアタックはAGを回復するため、術技を使用したコンボの繋ぎとしても利用できる。
つまり、通常攻撃や術技を使い、ブーストアタックでダウンさせつつAGを回復して更に術技で追い打ちするような立ち回りが出来るのだ。

このような行動によって攻撃のコンボ数が増えていったり、敵の体力が低下したりすると画面上に「STRIKE」の文字と効果音が発生し「ブーストストライク」が発動可能となる。
ブーストストライクは発動させると敵を一撃で倒せる攻撃で、カッコいい必殺技のような演出であり、そのうえテンポも良く非常に爽快だ。
戦闘の…特にザコ戦においては、このブーストストライクをいかに効率良く発動できるかが戦闘テンポに大きく差を生み出すうえ、後述するCPの余計な消費をしないようにする必要もあるため、可能な限り畳み掛けてサクッと終わらせるのが理想的だろう。
ブーストストライクが出来るようになるとザコ戦における戦闘テンポが格段上がり爽快感が得られるハズだ。

回復やバフの行動はCP(キュアポイント)を消費して使用する事となる。CPはキャラクター毎に設定されているものではなく、パーティーで共有されるポイントとなっている。
また、CPに関してはHPと同様に戦闘後にも数値が引き継がれるため、マネージメントが必要な要素となっている。こちらはMPのようなものだと思うと良いだろう。
これを意識してか店売りの各種回復アイテムは価格帯がかなり高めで、金策に乏しい本作(特に序盤)ではホイホイとは手が出せない。そのような意味ではゲーム内マネーが形骸化する事を防ぐ事にも一役買っていると言えるだろう。
そのような状況下であるため、回復アイテムに関しては敵からドロップしたものをありがたく使わせて貰う事になるのがケースとしては多くなるのではないだろうか。
しかし、ボス戦の直前のポイントでは回復ポイントが用意されているとは言え、過去シリーズ同様に回復アイテムの所持数制限は最大15個と厳しめで、いざ使うにしても気軽にとは言い難い。
その結果、回復関連のマネジメントは比較的タイトにバランスが調整されているという印象だ。
なお、アイテムの所持数制限緩和は有料DLCという形で配信されている。これは購入する事で戦闘バランス面の体験に影響を及ぼす可能性があるので、そういった面が気になる人は注意した方が良いだろう。

基本的には戦闘は楽しいが、複数体の敵がいる場合に死角から攻め立てられるのが少々不快だ。
複数の敵がいる場合に死角から攻撃される…この要素自体は別に構わないとは思うのだが、ヘイト管理のような概念が希薄であるため、横槍に対して対処する方法が用意されていない事が問題であるように感じられる。
横槍に対して理不尽さを感じさせないようなデザインがされていれば更に嬉しかったように思う。

戦闘におけるエフェクトも少々問題が感じられる。
攻撃時のエフェクトは派手でビジュアルとしてのカッコよさはあるものの、派手過ぎて敵が視認できないのだ。
特に標的が小さめだと敵の攻撃モーションも視認できず、機能性にやや問題が生じている。
単純な演出面の調整でも悪くはないが、機能性を損なわないアイデアが欲しかった所だ。

回復アイテム類の価格帯と主人公の性能がミスマッチなのは序盤では気になるかも知れない。
回復アイテムに関しては上述の通り、かなり高価であり有効な金策のない序盤では気軽に買う事は難しい。
しかし、主人公の固有特性は「HPを消費して高火力を生み出す」ような少しピーキーな性能になっているのだ。
これではマネージメントの観点からこの特性を活かして戦うのは心理的に難しいように感じられる。
もう少し固有の特性を使いたくなるようなお膳立てがあっても良いのではないだろうか。

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フィールドの探索要素

フィールド上にはフクロウを探す探索要素がある。
フクロウを見つけていく事でリワードとしてキャラクターの見た目に影響するアクセサリーを入手できる。
フクロウは画面中央にしっかりと捉えないと見つけた判定とはならないので、よくわからないけど見つかったと言ったような事は稀だと思った方が良いだろう。

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冒険を彩るサブ要素

「ストーリー」の項でも少し触れているが、宿屋やキャンプで料理ができる。料理に関してはシリーズ恒例の要素だ。
料理では味方キャラクターに対してバフをかける事ができる。

動物を飼育してアイテムを入手する要素もある。
大したものではないうえ、食肉になる運命であり、動物を撫でたりといったインタラクトができる訳では無い。

釣りはミニゲーム形式だ。
わかりやすくデザインされつつも、しっかりと手応えがあり時間泥棒だ。
魚の種類もそれなり多く、やり込み要素としても十分な内容となっている。
釣った魚の一部は貴重な換金アイテムとなる。

 

グラフィック

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スタイライズドながら独特な色調のビジュアルスタイル

ToAriseは日本では珍しい頭身の高い韓国的なキャラクターデザインと油絵のような色調という表現手法となっている。
また、俯瞰でフィールドを観た時にはジオラマや粘土細工のような空気感を感じさせる。
昼と夜もあり時間帯によってもフィールドの雰囲気が変わり、空を見上げた時に見える星レナの迫力は雄大だ。
そして何より、ゲームプレイに直結する要素としてはファストトラベルが高速である事は嬉しいポイントだろう。

フィールド構成はエリア区切りとなっており、お世辞にもオープンワールドのような開けた空間を想像してはいけない。
とはいえ、ゲームプレイとしてテンポ良く進行しやすいミニマルな広さとなっているとは言えるだろう。
窮屈には感じないとは思うが、マップから各都市などの位置関係がわからないため主人公達がダナ世界のどこにいるのかが具体的にわからない。
その結果として、エリアとエリアの切り替え地点のような「描かれていない距離感」が把握しにくく世界の広さは感じにくくなってしまっているのは勿体ないポイントだろうか。

キャラクターのモデリングやアニメーションも気合が入っている。
崖際で立ち止まると覗き込むようなモーションとボイスが用意されていたり、水に濡れると肌や衣服が光が水で反射するようなテクスチャーになる。
能力値に影響しない見た目専用の装備も可能で、武器もそれぞれに見た目が異なるので好みのものがあれば活用すると良いだろう。

マイナス要素ではないが、フォトモードがないのは勿体ない。
美しいキャラクターモデルやフィールドがあるだけにフォトモードがあれば非常に嬉しかった。

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お馴染みのアニメパート

頻繁に使われる訳では無いが、度々ufotable制作によるアニメパートが挿入される。
筆者の所感としては「ストーリー」の項で述べた通りだが、改めてここで書くとするならばアニメパート自体のクオリティは非常に高い。
それだけにゲームとアニメの親和性をもっと高い次元で成立させて欲しかったと思ってしまう。

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アーティファクトはどこかで見覚えが…。

ゲーム中の収集要素の1つにアーティファクトというものがある。
このアーティファクトバンダイナムコ作品をモチーフとしたものとなっているので知っていれば「あ!これは!」となる事だろう。

 

サウンド

ビジュアルスタイルに相応しい荘厳なBGMが印象的だ。
地下水道などのダンジョンで流れる勇ましさのあるBGMが筆者のお気に入りだ。

テイルズ オブシリーズらしくボイス関連も非常に豊富で、戦闘中や戦闘後には掛け合い、移動中に発生する会話なども多い。
これらのボイスは「ストーリー」の項でも少しだけ記載したが、物語の進行と共にパーティーの関係性が向上していくと共に変化するのも協力関係の演出として嬉しい。
ボイス関連で特に筆者のお気に入りは中田譲治さんが演じるキャラクターだ。
そのキャラクターはテイルズ オブシリーズお馴染みの大技を使い、その技を発動する際には呪文の詠唱があるのだが、それを本作のハイライトの1つとしても過言ではないくらいのカッコよさがある。

 

総評

テイルズ オブ アライズはシリーズの新しい夜明けを見せた良作だ。

演出としていくつかの食い違いがある部分は気になる所だが、老若男女問わずに理解しやすいストーリーは評価に値する。
非常にテンポの良い戦闘は爽快感とやり応えが魅力的で、タイトに設計された回復も悪くない。
JRPGの代表として歴史あるテイルズ オブシリーズの新たな一歩として名を刻んだ一作だと言えるだろう。

 

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【レビュー】モンスターハンター ストーリーズ2 ~破滅の翼~

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その翼は、世界を変える。

モンスターハンター ストーリーズ2(以下、モンハンストーリーズ2)はモンスターハンターシリーズの世界を舞台としたRPG作品である。
前作である初代は3DSにて発売されており、筆者も前作はプレイしたハズなのだが、ストーリー面に関してはほとんど完全に記憶から消えている。
ジャンケン要素のある戦闘システムがイマイチしっくり来なかった記憶だけある。

そのため、今回はほとんど初見と言っても差し支えはない状態でのレビューとなる。

 

モンスターハンターストーリーズ2 〜破滅の翼〜 - Switch
 

 

ストーリー

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少年向けの3Dアニメのような物語

まずはストーリーの概要をざっくりと説明しよう。
主人公はモンスターと共生し、モンスターと絆を結んで騎乗する能力を持つ”ライダー”という文化が根付いているマハナという村に生まれ育ち住んでいる。
その村には「破滅の翼」を持つという凶兆のリオレウスが世界に災いを呼ぶという伝説がある。
ある時、不気味な赤い光の発生と共にリオレウスが一斉にいなくなるという事件が起こる。それが伝説にある凶兆ではないかと騒がれ、その原因を突き止めようとするのが本作の導入だ。

主人公はプレイヤーのアバターではあり、リアクションはするが喋る事がない無個性なタイプに分類される。
また、マハナ村の中で伝説的に語られるレドという人物の孫にあたり、有名な血筋という設定となっているのだが、これはJRPGに多いフォーマットに追従したような形なのだろう。本作はこのレドの意志を受け継ぐ物語でもある。

メインのストーリーはボイスがついており、自動送りなども実装されているなど親切設計となっている。
スタイライズド調で描かれるキャラクター達は表情も豊かで、演出も含めて3Dアニメを観るように楽しめるが、物語の内容自体はやや少年/少女(ローティーン)向けの側面が強いように感じられる。
その年代をターゲット層とした事に由来するのかオーバーリアクションな演出もあるにはあるが、非常に低頻度であるため大人が観てもそこまで気になる事はないであろう。
なお、ストーリー中で観たカットシーンに関しては後で見返す事が可能となっている。

本作はナンバリングの通り2作目となる作品であるが、ストーリーを楽しむうえで前作を知っている必要は必ずしもない。安心してプレイして可能だ。
しかし、初代である前作のモンハンストーリーズに登場した人物も本作で再登場するため、その人物の過去の出来事を知りたい場合には前作をプレイする必要があるだろう。

ストーリー面の仕様で気になるのはフィールド探索中に発生する会話などのテキストだ。
フィールド移動中にはテキストでの会話が発生する事があるのだが、移動中であるためテキストを読むには適さない状況なのだ。
逆に読むために移動を止めてしまっているようでは、移動中に見せる意味がなく本末転倒である。このようなケースは是非ともボイスでの会話を採用して欲しかった所だ。
また、Aボタンで会話を送る形になっている事も問題がある。
フィールドに落ちている素材を採取するのもAボタンであるためだ。
素材を取ろうと思ってAボタンを押すと、そのタイミングで始まった会話をうっかり送ってしまうという事が度々あった。
会話の形式、ボタン割り当てなど、この辺りの仕様は是非ともプレイスタイルに見合ったものをデザインして欲しかった。

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モンスターハンター”を自己批評したような視点

本家モンスターハンターでは英雄的な扱いを受けるハンター達が、本作では余り良い存在として描かれないのは印象的だ。
何故なら、モンスターを危険生物(害獣)として駆除して回っているハンターに対して、モンスターの特性を理解して共生しているライダーという存在が主人公となっている所が理由として大きい。
ハンターの描かれ方に関して言えば、人類史で例えるならば大航海時代における植民地化を推し進めた時代、あるいは環境破壊や公害などが起きた時代のマインドのように、ある種の”野蛮性”を持って描かれる。
つまり、別の視点からハンターという存在を解釈する事により、今までのモンスターハンタープレイヤーが行ってきた行為(=狩猟)自体が本当に正しい行いだったのかという自戒として受け止める事ができる構造になっているのだ。
そのため、本作はモンスターハンターというシリーズ自体を自己批評した内容ともいえ、新たな視点をモンハン世界にもたらし多様性を生み出す事に成功していると言えるだろう。

とは言え、本作に哲学的な題材や緻密な世界設定(時代考証)、考察しがいのある謎などと言った観点で過度な期待をするのは少々間違っている。
自己批評的な側面こそあるものの、大枠はやはり少年/少女向けの色が濃いのだ。

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RPGとしての潔さ

モンスターハンターとはご存知の通り様々なモンスターが登場する。
そのため、そのモンスター達と出会うきっかけを作る必要があるのはストーリーとして逃げる事の出来ない問題である。
では、それを本作はどのようにして実現しているのか。
「おつかい」である。
本作はモンスターと遭遇して戦うというシチュエーションの全てといっても過言はないくらいには「おつかい」に頼り切っている節があるのだ。
ストーリーは章形式で進んでいくのだが、ストーリーがしっかりと進むのが章の始めと終わりの繋ぎ目の部分くらいであり、新たな章に進む度に「ん…?この流れは…?」と思うと「おつかいクエスト」が発生する。
それはストーリーの概要にて説明した「凶兆」という設定が「凶兆のせいで暴れまわってるモンスターを大人しくさせてくれ」といったような「おつかいをさせるための布石(免罪符)」でしかないようにすら感じられてしまうほどだ。
サブ要素で”おつかい”をさせられるのは「まぁしょうがないか」と思う部分もあるが、JRPGのメインストーリーに手を変え品を変えワンパターンな”おつかい”を差し込むのは一周回ってもはや潔さすらある。
そのため、ストーリーがプレイヤーの興味を引き続けるような牽引力は弱くなっていると思った方が良いだろう。

 

システム

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アイコニックなモンスター達を仲間にできる

モンスターハンター ストーリーズ系列はポケットモンスターフォロワーの作品と捉えるのがわかりやすいだろう。
大雑把にプレイシーケンスのサイクルを記載すると、ランダム生成されたダンジョン(モンスターの巣)の最奥などからタマゴを回収し、孵化させて仲間にし、強くしていくような流れとなる。
仲間に出来るモンスターの能力はランダムで決まる部分もあり、より強いモンスターを仲間にすると言うエンドコンテンツ的な側面も持ち合わせている。
登場するモンスターは多岐にわたり、シリーズの数多くのモンスターが登場するのは嬉しいポイントだろう。

バトルはシンボルエンカウント式のターン制バトルとなっており、仲間のオトモモンスター(オトモン)と一緒に戦闘を行うのが特徴的だ。
主人公はモンスターハンターでお馴染みの武器を装備して戦う。
装備枠は3つあり、戦闘中に武器を変更する事が可能だ。
状況によって有効な武器が異なるモンスターもいるので使い分けるのが理想的だが、後述する三竦みの方が重要であるため、使い分けは必須と言う程ではない。
なお、武器はモンハンシリーズに登場した全種類がある訳ではなく、片手剣、大剣、弓、ランス、ハンマー、狩猟笛の全6種類となっている。
武器毎にそれぞれ特性が異なっているので、スタイルに合わせて持っていく武器を決めると良いだろう。
オトモンは基本的に自動で行動を選択する形となり、オトモンには三竦みのどの行動をしやすいかという傾向が設定されているため、どのオトモンをどのモンスター相手にぶつけるのかを考えるのも大切だ。

バトルで最も重要なのはパワー、スピード、テクニックという3種類の属性がそれぞれ三竦みの関係性となっている点だ。
相手の行動に対して有利な行動を選択できると大ダメージを与えつつ、スキルなどに使用する絆ゲージも大きく溜められるなどメリットが大きい。
また、敵モンスターはどの属性の攻撃をするのかという傾向が決まっているが、”怒り”などの状態変化によって三竦みの使用傾向が変化するので、1つの行動を一辺倒に行うだけでは解決ないように、それでいて知識さえあれば対処もしやすいようにデザインされている。

オトモンも三竦みの行動を行うが、上述の通りオトモンは自動で行動が決定される。
三竦みのどの行動をするかは傾向が決まっているため、敵モンスターに対して有利な行動をするモンスターを場に出すのが重要であり定石だ。
そして、ライダーとオトモンの両方で敵の弱点属性で攻撃できると「ダブルアクション」という状態になる。
この行動になると相手に大ダメージを与えられる上に、相手の行動を1回分消去する事が出来てしまうのだ。
上手く立ち回れば戦闘を一方的に展開できるが、それはゲームデザインとしても心得たもので、ボス敵やそれに準ずるような敵に関しては1ターンに複数回行動を行う。
そのため、そのような強敵相手の戦闘はほとんどダブルアクション前提の難易度だ。
要はジャンケンであるため難しいシステムでは無いが、使いこなせないと相応の苦戦は必至だろう。
このように三竦みが重要である関係上、自分が好きなモンスターだけを使い倒して攻略するのはハードルが高いが、「伝承の儀」という要素によって他のモンスターからスキルを継承させる事によってモンスターが本来得意とする属性以外のスキルを習得する事が可能になっている。
そして、戦闘中に絆ゲージを消費すればオトモンに対して任意のスキル発動を指示出しする事が可能であるため、それらを駆使すれば1体のモンスターでも多くのモンスターを仮想敵とする事も可能である。

三竦み有利な攻撃をした時に多く貰える絆ゲージが最大まで溜まると戦闘中にオトモンに搭乗する「ライドオン」が可能になる。
ライドオンするとHPやデバフが回復したりするほか、強力な必殺技「絆技」も使用可能になる。
戦闘における大まかな流れとしては、
1.相手の弱点属性攻撃でダブルアクションを狙いつつ絆ゲージを溜め、敵の攻撃を凌ぐ
2.ライドオンでHPなどを回復して体制を立て直す
3.絆技で大ダメージ
4.「1.」に戻る
と言った感じと捉えて良いだろう。
弱点属性攻撃で攻撃しつつ、なんとか敵の攻撃を凌いで、絆ゲージが溜まったらライドオンして形勢を立て直すといったようなイメージだ。

なお、ユーザーフレンドリーな要素として戦闘はいつでもスピードアップを行う事が可能になっている。
戦闘を倍速で行いサクサクと進められる。
そして、かなりの格下を相手にする場合には「一掃攻撃」という使用可能になり実行すると一瞬で戦闘を終了させる時短要素もある。
戦闘で入手できる素材もしっかりと貰えるので、気軽に使って良いだろう。

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困ったポイント

ここでは雑多に本作のゲームプレイ部分にて困ったポイントを書いておきたい。

「モンスターは怒り状態の時に三竦み傾向が変化する」と上述したが、現在がモンスターがどの状態なのかが視覚的にわかりにくいケースが散見されるのは困る。
特にわかりにくいのは凶兆の影響によって狂暴化した個体で、最初から赤みがかった発光をしているために怒り状態なのか否かが視覚的にわかりにくい場合がある。
怒り始めた際には「怒り始めた」と言った説明があるのだが、怒りが解除された時には何も説明がないため、うっかりミスが度々あった。
「モンスターの特徴を良く観察しろ」という開発者側のメッセージなのかも知れないが、状態を明確に示して欲しい。

全体の難易度を三竦みに頼ってしまった影響も見受けられる。
こちらも上述の通り、三竦みにおいて有利な属性で攻撃すれば敵の行動を潰せるなど非常に優位に進められるし、それを前提として基本的にはデザインされている。
しかし、敵が三竦みの属性を持たないスキル攻撃が中心になってしまうと、とたんにプレイヤー側の工夫・対処のしようがなくなってしまう。
有利属性がぶつけられれば行動を潰せるが、有利不利の無い属性も存在するのだ。
そうなると、単純な消耗戦となり、本来のゲームデザイン(駆け引き)から逸脱したものとなってしまい、それがフラストレーションに繋がってしまっている。
特に格上相手では行動を潰せないうえに、強力な攻撃をまともに受けるしかできず、ほとんど何もできない状態になってしまう。
三竦みを軸に持ってきているのであれば、初志貫徹そのようなデザインを貫いて欲しかった所だ。

次に気になるのは環境への適用を表現した要素だ。
本作はモンハンシリーズらしく地域によって寒冷などがあり、その場合には専用装備やホットミストを使用しないと攻撃が行えないなどのデメリットが発生する。
これはホットドリンクやクーラードリンクといった今はなきアイテムを彷彿とさせるものなのだが、その仕様がなんとも面倒だ。
まず、ホットミストなどを使用していない状態でフィールドに出ても警告などが何も無いため忘れやすく、戦闘になってから思い出す事がほとんどだ。
戦闘で使用する事になると、アイテムの使用で1ターン浪費してしまうため溜息にならざるを得ない。
また、戦闘前に事前に使用するにしてもメニューを開いてアイテムを選択して使用しなくてはならないなど使い勝手も悪い。
寒冷などの状態になっている事をもう少しわかりやすく表現したり、適用のためのアイテムをワンボタンで使えるようにしたりともう少しなんとかならなかったのだろうか。

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モンスターの力を借りたフィールド探索

フィールドは近年の水準で比較すればそこまで広くはなく、エリア毎に区切られた構成になっている。
前述しているモンスターの巣に関してもフィールド上にランダムに生成される。
フィールドでは本家同様に素材を入手する事が可能で、それらを使ってアイテムや武器防具を整える事となる。
素材の中には本編では見なくなったようなアイテムもあり、古参のプレイヤーには懐かしさがある事だろう。

フィールドには特定のオトモンでのみ踏破できるギミック「ライドアクション」が用意されている。
特定のアクションが要求される場面ではその場での切り替えが可能だ。
しかし、それ以外の場所で連れ歩くオトモンを自由に切り替える事はできず、メニューからイチイチ設定しなおさなくてはいけないのは不便だ。

 

グラフィック

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スタイライズされた色彩豊かな世界

スタイライズドなトゥーン調の映像は色彩が豊かで美しい。
フィールドは昼や夜の概念もあり、時間帯によって雰囲気も変わる。
訪れる村や街によって特色や文化も異なるし、大自然も地域によって特徴が異なり観ていて飽きない。

主人公が装備する事になる衣装はモンハン本編をベースとしているが、スタイライズドされているため印象が異なり新鮮味がある。
頭装備はキャラクターの顔や表情を隠してしまうため非表示にしたい人も多いだろう。
もちろん、本作ではそのような設定も可能になっている。
常時表示/非表示の切り替えはもちろん、カットシーンのみ非表示にすると言った設定も可能だ。

戦闘のモーションは本家であるモンスターハンターでも印象的だったものが数多くあるため、ファンならばニヤリと出来るだろう。
また、戦闘シーンでのカメラワークはRPGだからこそできるダイナミックで迫力がある演出となっている。
更にクリティカル時には豪快なヒットストップ演出が入りアクションゲームのような爽快さもある。
なお、オトモンの必殺技にあたる絆技のモーションは前作のものを踏襲しているケースが多いようだ。

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マイハウスは懐かしさがあるが勿体なさもある

自室である「マイハウス」はモンスターハンター初期の頃のようなこじんまりとした雰囲気があり懐かしさを覚えたのは筆者だけではないハズだ。
しかし、冒険をして様々な村にいくが、自室のレイアウトなどは全て共通なのは少々味気ない。
訪れた村に応じて自室の雰囲気もその地域の文化に沿ったものにガラッと変わっていると非常に嬉しかった。

 

サウンド

シーンを盛り上げてくれるメインテーマ「風の絆」は特に印象的だ。
戦闘BGMはモンハンシリーズお馴染みの楽曲がアレンジされて使用されているものがありファンには嬉しい事だろう。

JRPGとしては珍しくフィールドBGMはない。
これはモンハン本編シリーズのように環境音のみとなっている構成だ。
しかし、レール型のRPGとしては少々寂しいように感じる仕様とも言え、作風にマッチしているかというと議論の余地がある演出だろう。

 

総評

モンスターハンター ストーリーズ2はJRPGのフォーマットを取りながら、モンスターハンター世界に新しい視点を取り入れた作品だ。

歴々と行っていたモンスターハンターにおける狩猟と言う行為に対して自己批評的な観点が取り入れられたストーリーはシリーズ経験者ならば思う所はあるだろう。
システム面もアイコニックなシリーズのモンスター達を仲間に出来るなどの魅力がある。
しかし、JRPGフォーマットに囚われ過ぎたのか、ストーリーの進行を清々しさすら感じる程に”おつかい”に頼り過ぎて「次の展開が気になる」といったようなモチベーションに繋がらないのは残念だ。

 

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【レビュー】わるい王様とりっぱな勇者

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これは、いつか君に倒される物語。

前作にあたる「嘘つき姫と盲目王子」をプレイした事から応援の気持ちもあり購入したのが本作”わるい王様とりっぱな勇者”だ。
その手書きベースで作られた絵本のようなビジュアルはそのままに、本作はRPGとして登場するとの事で、ボリュームの増加もさることながらストーリーを描く事に適したジャンルにシフトしたのは期待感があったというのが筆者のファーストインプレッションだ。

それでは本作のレビューをしていこう。

 

わるい王様とりっぱな勇者 -Switch

わるい王様とりっぱな勇者 -Switch

  • 発売日:2021/06/24
  • メディア:Video Game
 
わるい王様とりっぱな勇者 -PS4

わるい王様とりっぱな勇者 -PS4

  • 発売日:2021/06/24
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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ビジュアルスタイルに違わずの絵本のような物語

本作のストーリーは人間の女の子「ゆう」と森に住む王様ドラゴンがメインとなる物語となっている。
”ゆう”は勇者の子供であるが既に両親は亡くなっており、かつて魔王と恐れられた王様ドラゴンに育てられた経緯がある。
"ゆう"は子供らしい冒険をしているのだが、それを陰からサポートする親代わりの王様ドラゴンとの関係性が微笑ましい。

「魔王を倒すことを目標とする勇者」という使い古されたフォーマットを用いながら、魔王に育てられた勇者という経緯を持ち合わせる事により、二人の関係性と絆をより強く感じさせる物語に仕上げられている。
メインもサブも物語のプロットは絵本のようなテイストを大切にしており、ストーリーテリングにしても前作にあたる”噓つき姫と盲目王子”と同様にナレーションによって絵本を読み聞かせるような形式となっている。
エンディングのスタッフロールの演出にしても物語を補完してくれるものになっており、最後までプレイしたプレイヤーにとって嬉しい内容の仕上がりだ。

物語として予想を超えるような展開は無いかも知れないが、期待を裏切らない物語になっており、絵本のような見た目も相俟ってプレイしていてどこか懐かしい暖かな気持ちになれる本作は、老若男女問わずにオススメできる物語になっている。

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しっかりと物語のあるサブストーリーも魅力的だ

サブクエストもあり、そちらでは個性的な住民などのNPCキャラクターを掘り下げるものになっている。
サブクエストは豊富に用意されているだけでなく、物語としてもしっかり作られているのは好印象だ。
テキストも豊富で、物語の進行に応じてNPCのセリフが変化するなどの細かい差分もあり作り込まれているのが確認できる。

特に筆者のお気に入りのサブクエストは「ハリーとネイサン」や「魔本」のイベントだ。どのような内容なのかはプレイして確認して欲しい。

 

システム

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クラシックなJRPGスタイルながら基本がおさえられている

本作はランダムエンカウント方式のターン制RPGとなっており、通常攻撃、特技、防御などのコマンドを選択して行動を決定するものとなっている。
敵を倒す事で入手できる経験値でレベルが上がり、ステータスが上昇するクラシックなJRPGの基本系だ。
基本的にはオーソドックスな仕上がりで革新的なシステムがある訳ではなく、絵本のような世界を楽しむ事が主体ではあるが、RPGとしての手応えもしっかりとバランスが整っている。
ただし、次のレベルまでどれくらいの経験値が必要なのかが筆者が確認した限りではよくわからず、レベリングを好むようなプレイヤーで定量的な数値が見えた方が好みの場合には少々困るのかも知れない。

目を見張るのはかなり丁寧なチュートリアルが用意されている点で、RPGであればもはや暗黙の了解となっているような部分もしっかりと説明される。
そのため、本作の絵柄に惹かれて購入したゲーム初心者でも安心してルールを把握してプレイできると思って良いだろう。ターゲット層を考慮した配慮がされているのは好感が持てる作りだ。
また、戦闘中に全員の行動を決定した後も実際に行動するまでには猶予時間が設けられており、その時間中にキャンセルして再度行動を選択しなおす事ができる。
ボタンの連打癖などでうっかり行動を間違えてしまった際に活用できる配慮もユニークだ。

また、「逃げる」コマンドは失敗してもデメリットがないため、戦闘したくない場合には積極的に活用できる。
こちらもまたゲームに不慣れな初心者プレイヤーに親切な設計だと言えるだろう。

特技は気力というポイントを消費して発動させる。
気力は毎ターン回復し、防御を行う事でより多く回復するようになっており、回復量としても実用的な範囲となっているので状況に応じて選択する。
特技は範囲攻撃のような形式となっているものがあり、攻撃範囲に入っている敵全てにダメージが入るなどの個性がある。

存在意義の薄いコマンドがない点もゲームとしてのデザインとしてしっかりしている事はもちろん、初心者プレイヤーへの配慮としても素晴らしい。
例えば、よくある腐りがちな要素と言えば「防御」辺りのコマンドだと思うが、本作では前述の通り防御する事で特技の使用時に消費する気力を多めに回復できるようにデザインされている。そのうえ、ボス戦などでは「強力な攻撃をしてきそうだ」と言ったような警告メッセージが表示されるため、しっかりと防御というコマンドの存在を意識した設計にしているのだ。
このように通常攻撃や特技、防御と言った各コマンドが腐る事がないようにしっかりとデザインされている。
これも初心者にとっては好ましい環境のハズだ。何故なら初心者プレイヤーの場合には意味のないコマンドに対しても「意味を求めてしまう」という可能性があるためだ。
ある程度のゲーム慣れしているプレイヤーであれば不要と感じた要素に関しては自然淘汰してしまうだろうが、初心者の場合には「どう使えばいいんだろう」と逆に難しく考えさせてしまいかねない。
その可能性をしっかりと潰して、各要素に意味を与えるようにデザインされているのだ。
当たり前の事とも言えるかも知れないが、それが出来ていない、仕様はあるがデザインされていない、用意されているが存在意義を欠いている要素があるなどと言ったケースは数多くあり、そこが勿体ない要素や残念な要素と評される事は少なくない。
本作は全体的には目新しさのないJRPGのスタイルではあるが、基本がしっかりと押さえられているのは素晴らしいポイントとして挙げても良いだろう。

もちろんRPGとしての「工夫する楽しさ」も用意されている。
仲間キャラクターには相手のヘイト傾向を変化させるようなキャラクターもいるなどのロール的な工夫が行えるし、それを活かして回避率の高い装備で整えるといった追加の工夫も可能だ。
また、上図の右のように特技では攻撃範囲が設定されている場合もあり、上手いこと1回の攻撃で多くの敵を巻き込めるように選択する工夫もできる。このような工夫できる部分を用意する事によってプレイヤーへの手応えもしっかりと提供してある点も見事なバランス感覚だと言えるだろう。

なお、本作において少し変わった仕様を挙げるなら「見逃す」というコマンドがある。
敵に設定された弱点をつくと”へろへろ”状態になり、その状態の敵に対して「見逃す」を使用すると敵を退場させられる。
弱点は何も攻撃だけによらないため、相手によっては簡単に無力化する事も可能になっている。

本作の戦闘において少しだけ困った点があるとすればゲームオーバー時の処遇だろう。
難易度的にはそこまで難しいものでは無いが、やられてしまうとタイトル画面にまで戻されてしまうのは少し面倒な仕様に思えるかも知れない。
直前のポイントから再開などにした方が親切だったかとは思う。

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フィールドのビジュアルは魅力的だが、視認性に問題がある

システムとして見た際のフィールドデザインも良く出来ている。
フィールド上では自身より弱い敵しかいない場合にのみ走って速く移動することが出来る。そして、走っている場合にはエンカウント率が低下するそうだ。
「弱い敵(旨味がない)相手にはエンカウント率が下がって移動速度も上がりサクサク進める」というのはリスクとリターン(駆け引き)の関係性を考えた時にも非常に理にかなっており、変に時間をかけさせないための配慮がされているのは好印象だ。
ただし、方向を変えたりすると走り状態が一旦解除されてしまうので、その点においては地味に不便に感じるだろう。

フィールドは直線的でエリア切り替え地点が黄色く表示され、わかりやすさが重視されている。上図にも黄色く発光する領域が画像下部にあるのがわかるだろう。それがエリアの切り替え地点だ。
しかし、フィールド自体が黄色い場所もあり、視認性がやや悪くなっているのは勿体ない。フィールドに応じてエリアの切り替え地点となる領域の色を変更するか、黄色である事を意識したフィールドの配色にした方が良かったのではないだろうか。

フィールドは四方に各種エリアが存在しているが、ファストトラベルで即座に移動する事も可能だ。
ファストトラベルはメニューから簡単に行えるようなものではなく、特定のポイントにいくと行えるような仕組みだ。
しかし、ファストトラベル可能なポイントが用意されているものの、その数は余り多くなく、配置場所もイマイチ良いとは言えない。
特に各エリアのハブとなる”魔物の村”のファストトラベルポイントは若干アクセスが悪い。頻繁に利用する事を想定した位置に配置して欲しかったのが正直な所だ。

 

グラフィック

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魅力が詰まった手書きベースのビジュアルスタイル

絵本のような雰囲気が印象的な手書きイラストベースのビジュアルスタイルは魅力が満載だ。
キャラクターはとても可愛らしく、ロケーションも美しく暖かみが感じられる。
この雰囲気だけでも本作を買う価値があると言っても過言ではないだろう。

前作にあたる”噓つき姫と盲目王子”と比較すると、モーションの差分イラストが多くなった印象があり、より滑らかにキャラクターの動きを表現できている。
武器のグラフィックもそれぞれ用意されている点も嬉しい要素だ。

GUIも世界観に非常にマッチしたものになっており水を差さない。
例えば、セーブ画面は栞になっており、まさに絵本を感じさせるような演出が成されているのだ。

ファンサービスとしてはコレクションという項目から本作の設定画を参照する事が可能になっている。
これはサブクエストなどを消化する事でアンロックできるやり込み要素でもある。
また、魔物図鑑によってモンスターの情報をいつでも参照可能になっている。魅力的なイラストをいつでも参照できる事も嬉しい要素だ。

 

サウンド

ビジュアルスタイルにマッチしたものが多く、のどかで優しく、可愛らしかったり、幻想的だったりするBGMは印象的だ。
イベントシーンで流れるBGMもシーンを盛り上げるほか、ファンシーな明るさを持ちながらもテンポが良く戦闘らしいサビが印象的な通常戦闘BGMも素晴らしい。
また、ラスボス戦のBGMも最終戦らしさと本作らしさが同時にあり最高の1曲となっている。
BGMはとあるステージでは歪んで聞こえたりと細かい演出としても使われている。

 

総評

わるい王様とりっぱな勇者は細部まで丁寧にデザインされたウェルメイドな一作だ。

物語を語るためにRPGというフォーマットが採用され、あえて変化球を使わずに素晴らしいビジュアルスタイルにマッチした絵本のようなストーリーはメインもサブもしっかりと作られている。
また、メインとサブのストーリーや戦闘、フィールドに至るまで非常に細かい部分にまでデザインが行き届いており、ビデオゲーム初心者に親切である事はもちろん、玄人でもしっかりと手応えを感じさせてくれる内容になっているのは見事だ。

本作の開発チームには変に路線変更をせず、本作と同じ志向性の作品を作ってくれる事に心から期待したい。

 

外部記事

わるい王様とりっぱな勇者(ギャラリー) | 日本一ソフトウェア

【レビュー】ルーンファクトリー5

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新たな舞台で、新たな冒険

ルーンファクトリーといえば牧場物語から派生した作品であり、牧場物語と比較するとアニメから強く影響を受けた作品になっている。
内容としても農業、畜産などの牧場物語にあった要素のほかに戦闘も含まれていたりと、かなり欲張りなデザインも特徴的だ。

筆者は初期タイトルから興味はあったものの、実際に購入したのはWiiにて発売されたルーンファクトリー オーシャンズからである。
本作ルーンファクトリー5も完全3Dのタイトルであるため、その形式もオーシャンズぶりとなる。

今回はルーンファクトリー5のレビューをしていきたい。

 

ルーンファクトリー5 -Switch

ルーンファクトリー5 -Switch

  • 発売日: 2021/05/20
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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キャラクターに大きく比重を置いている

本作はファンタジー世界で農業や戦闘を行いつつ、住民たちと仲良くなっていくのが主軸だ。
物語全体としては事件こそ発生するものの陰鬱だったりする事はなく、見た目の通りの明るく和やかな雰囲気である。物語の後半になり事件の全容が見えてくると深刻さは出てくるが、それでも暗すぎないようなバランスだ。
重厚で緻密な設定を楽しむようなものではないため、ユーザーがそういった物語の伏線や説得力を重要視している場合にはミスマッチだろう。

恒例行事なのだが主人公は記憶喪失の状態から始まる。
記憶喪失であるため行く当てもない。とりあえずリグバースという町のSeedという自警団のような組織に所属して、町での困りごとを解決しながら生活する事になるのが導入となっている。

ストーリーはストーリー自体と言うよりもキャラクターを重視しているのが本シリーズの特徴である。
本作の場合には各キャラクターに「恋愛シナリオ」と呼ばれるキャラクター自身やキャラクター同士の関係性を掘り下げるようなストーリーが用意されている。
そして、各キャラクターに好感度が設定されており、好感度が高まれば恋人となったり、結婚をしたりする事も可能だ。
登場人物の全員が恋人候補ではないため注意は必要だが、シリーズとしてこの要素が好きな人も多い事だろう。キャラクターと仲良くなったり、キャラクター同士の関係性を楽しむのがルーンファクトリーの醍醐味だ。
なお、同性婚などは行えないが、クリア後要素の性別変更を行うと恋人候補を変えることなく主人公の見た目の性別を変える事は可能だ。
ただし、これはあくまでも見た目および声が変更されるだけであり、銭湯にいくと普通に元々の性別の湯に入ってしまうなどの問題点がある事は注意が必要だろう。
なお、本仕様は海外展開を見据えてかアップデートにより同性婚が可能となるようだ。

これは個人的な好みの部分でもあるが、筆者は将来的にはストーリーの演出における統一性を求めたい。
本作のストーリーは上図のようにイラストの立ち絵が主体となっており、3Dモデルはあくまでも雰囲気を伝えるにとどまる使い方をしている。
せっかく3Dモデルを使った方向性にシフトしていくのであれば、 3Dモデルがストーリー演出の全てを担うようになれば更にリッチな作品へとなっていくだろう。

 

システム

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とてつもなく欲張りなゲームプレイ

本作は…というかルーンファクトリーシリーズはARPGだ。
シリーズとして一貫しているのはアクションとしては軽快でやや大味だが、RPGとしてはやり込み要素が非常に多い事が挙げられる。
やり込み要素は戦闘以外にも農業や酪農、釣り、鍛冶、料理など幅広いプレイが可能なとてつもなく欲張りな作品である事が最大の特徴である。
要素は多いが1つ1つはそれほど複雑な工程がある訳ではなく、チュートリアルもあるので安心してプレイできるだろう。

戦闘はシームレスで、フィールド上のモンスターに対してボタン入力で剣や槍などの武器を振って戦うシンプルなものになっている。
疑似的なターン制となるように前隙/後隙があり、ある程度は遊びやすく作られている節はあるものの、ダメージや判定を始めとした全体的なバランスは前述の通り大味だ。
一見すればもう少し調整して欲しくはある部分かも知れないが、これは”あえて”そうしているのではないかと推察している。
本作は様々な事が可能な欲張りな作品であり、ターゲット層も男女問わずに手に取って貰えるものを想定しているだろう。
そのため、プレイスキルによらずにプレイできるように難しい駆け引きは意図的に排除しているのではと考えられるからだ。
なお、難易度の変更も可能になっており、難易度によって駆け引きのバランスが変わる訳では無いが敵の強さが変化する。自分に合った難易度を選択すると良いだろう。

ARPGとしてのアクション部分は駆け引きが大味である代わりに、装備を整えたりレベリングを行ったりと言ったRPG的な成長要素の方にはかなりの比重が置かれている。
そのため、レベリングなどのステータス向上を疎かにして進行していると、敵の攻撃が連続ヒットして一瞬でお陀仏する事も多い。
しっかりとレベリングや装備を鍛え上げて地力を向上する事が大切になっている。
ステータス上昇は一般的なレベルを上げる方法のほか、様々なスキルのレベルを上げる事でも上昇する。
かなり幅広いスキルが用意されており、歩くだけでも上がるスキルカテゴリーがあったりするのは面白い。
多様なスキルカテゴリーがあるため、何かしらの行動をするだけでみるみるうちにスキルが上昇していき、スキルレベルが上昇する事でステータスも上がり、そうこうしているうちにレベルも上がって更にステータスが上がるという成長テンポの良さは爽快感がある。

なお、ステータスは一般的なRPGで目にする項目が多いが、ルーンファクトリーシリーズ特有なものとして「RP」というものがある。
RPは様々な行動をする場合に必要なもので概念的にはMPに近いものだ。
攻撃をするにも、採掘をするにも、料理をするにも、何をするにもRPを消費する事になる。RPが足りない状態で行動すると、代わりにHPをガリガリ消費してしまうため、マネジメントする必要のある重要な要素だ。
RPは料理を食べたり、入浴したりと回復手段がいくつか用意されているので、枯渇した場合にはそれらを活用する事になるだろう。

まとめとなるが、本作のゲームプレイ部分の面白さは「テンポの良さ」に尽きるだろう。
戦闘や農作業、調理など様々な要素はあるが、それらの作業自体は単純な手続きによって実現している。そのため、進行テンポが良くサクサクと進められる。
そして、作業を行うと面白いようにステータスが上昇していく爽快な成長テンポも心地良い。
この全体的なテンポの良さが止め時を忘れさせてくれる魅力を秘めている。

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豊富な第一次産業第二次産業

第一次産業的な採掘や農業、畜産があり、第二次産業的な武器防具や農具の生産、料理など、牧場物語の系譜らしい戦闘以外の様々な要素も盛り込まれている。

まずは第一次産業的な要素の農業や畜産について書いておこう。
農業ではゲーム内で畑が用意されており、その畑を耕して、種を植えて、水を与える事で作物を育てるのが基本となっている。
畑はゲームの進行と共に増えていくような形となっているのだが、そうはいってもプレイヤーは1人だけであり多くの畑まで手が回らないかも知れない。
そんな時に役に立つのが畜産として飼育できるモンスター達だ。
モンスター達はアイテムをあげる事で仲間にする事が可能で、仲間になったモンスターからはミルクや羊毛などの第一次産業品を定期的に入手できるほか、仲良くなる事で農作業の手伝いをお願いする事が可能になり作業効率が上がるのだ。
また、モンスターとは一緒に冒険をする事も可能で、背中に乗って素早く移動できるようになったり、一緒に戦ってくれたりと心強いお供にもなってくれる。

第一次産業によって手に入れたアイテムは武器や防具、料理などの第二次産業品の生産に役立つ。
武器や防具に関しては生産した後に素材を加える事で強化を行う事も可能となっている。
強化に使用した素材によっては武器/防具に強力な効果が付与されるが、強力な素材は相応のスキルレベルが無ければ扱えない。しかし、そういった素材で強化をしていく事でチートかと疑うような性能を持った武器/防具も生み出せるエンドコンテンツ的な側面がある要素と言って良いだろう。
ただし残念なのは、これらの素材がドロップする場所あるいはモンスターの記載が無い点だろう。
「使いたいけど、どこから素材を調達すれば良いのかわからない」という事が多いのはプレイしていて不便に感じる所だ。これからプレイするという方はネットの力を頼りに素材を集めるのが推奨される。

また、この第二次産業は全体的に「作りたい対象と、それに必要な素材を選択するだけ」であり、やや味気ない体験になってしまっているのは勿体ない。
例えば、料理であれば鍋をかき回す、フライパンでひっくり返すなど、料理をするミニゲームのようなものが差し込まれれば格段にお腹が空く体験になったことだろう。
武器/防具生産にしてもハンマーで叩くようなミニゲームを同様に用意して欲しかった。
もちろん、実装のための工数が増えるだけでなく、生産におけるプレイする作業が増えるためリワードの質も調整が必要になるだろうが、選択してボタンを押すだけではない体験をゲームプレイとして落とし込んで欲しかった所だ。

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広いフィールド

ゲーム内では様々な作業を行っていく事になるが、朝、昼、夜など時間の概念もある。
余りにも遅くに寝るとデメリットが発生してしまうため、熱中し過ぎには注意が必要だ。時計がテッペンを超える前にはベッドに入った方が良いだろう。
本作は3Dのフィールドを探索する事になるためか、時間の流れがシリーズの中では比較的遅く設計されており、時間に追われるような忙しすぎるプレイにはならないハズだ。

3Dのフィールドはリグバースの町がハブとなるような形で四方にエリアが存在し、それらのエリアにはシームレスにアクセスできる。
そのため全体の総面積としては中々の広さがあるフィールドになっており、冒険や探索している雰囲気を感じるには十分だ。
フィールド内にはダンジョンがあるが、ダンジョン内に入る際にはロードが挟まる。
ファストトラベルももちろん可能で、フィールドはそれなりに広いので歩いていく必要が無いならばファストトラベルすると良いだろう。

ハブとして機能する拠点となるリグバースの町では特定のポイントを消費する事で”料理大会”などのイベントを開催する事も可能だ。
どの日付で何のイベントを開催できるかは固定になっているが、ポイントがあればイベントを開催できる。
イベントのリワードも重宝するので積極的に開催していくと攻略に役立つ。

フィールドに点在するダンジョンは階層構造になっており、最下層にボスがいるような構成となっている。
ダンジョン内には謎解きとまでは言わないが、スイッチを入れると扉が開くようなギミックによって先に進めるようになっているものが多い。
しかし、スイッチを入れてもどこの扉が連動して開いたのかがわかりにくいは不親切に感じるポイントだろう。
なお、クリア後にはやり込み用の高難度のダンジョンもあるので、装備が整っていれば挑戦すると良いだろう。

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気になるポイント

ここでは雑多に本作をプレイしていて気になってしまうポイントを書いておこう。

まず、第一次産業的な伐採や採掘をしていて気になるポイントが出て来る。
切り株や岩を砕いたりする事は非常に多いのだが、その近くに何かしらのインタラクト可能なオブジェクトがあると、そちらにフォーカスしてしまう事が度々あるのだ。
結果として壊したいオブジェクトが上手く壊せない状態になりがちで、地味にフラストレーションがある操作感となってしまっている。
それぞれのインタラクションに応じてボタンを別々に割り当てる、斧や鍬といった伐採/採掘を行うためのアイテムを装備中はフォーカス優先度が発生するなどの何かしらの工夫が欲しかった所だ。

次に気になるのはロックオンの仕様だ。
本作のロックオンは敵だけでなく、味方も対象となる仕様となっている。これは味方に回復アイテムを投げつける時などに利用する事を想定したのだと思うが、この仕様の影響で最も利用したいシチュエーションで使いにくい。
本作のロックオンの仕様は距離が近いものを優先してロックオンするような節があり、正面に見えている敵などのオブジェクトをロックオンしようとしたら、真後ろにいる味方をロックオンしてしまうなどの挙動となるのだ。
これではとてもロックオンなど使おうという気持ちにはなれない。
結局、筆者は誤動作が怖くてロックオン機能を戦闘で使おうという気持ちには終始なれなかった。

マイナスという程のものではないが「Seedサークル」というシステムは余り活かし切れていない要素のように思える。
Seedサークルは敵モンスターを一時的に身動きを止めたり、一時的に仲間に出来たりするほか、指名手配されているモンスターを捕獲する時にも使用する。
しかし、身動きを止めたり仲間にするのは必ず成功するわけではないし、そもそも仲間にするつもりならモンスターにアイテムを渡して恒常的な仲間にした方がよっぽど良い。
結局は指名手配されたモンスターを捕獲する時くらいにしか使用せず腐りがちなのは勿体ない。

そして最後に最も気になるポイントを書こう。
それは、たびたびエラー落ちする事だ。
頻発するという訳では無いのだが、感覚として「困るな…」と感じるくらいには発生する。
本作にはオートセーブもあるにはあるが、セーブ間隔が余り細かくないため、エラー落ちした際の再起動ポイントが最後にプレイしていたゲーム内の日付の朝から…なんて事も当たり前だ。
エラー落ちはいけない事だが、ソフトウェアにバグはつきものだ。
可能な限り品質を高めつつ、予期せぬことが起きた場合のセーフティーネットもしっかりと設定した方が良かっただろう。
なお、アップデートが行われているため最新バージョンではいくらかマシになっているハズだ。

 

グラフィック

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少し物足りなさのある映像ディティー

3Dモデルは性能では劣るNintendo Switchとは言え、素晴らしいとまでは言わないがキャラクターの造形は可愛らしくそれなりに良いものになっている。
対して、フィールド(建造物含む)のモデリングやテクスチャやデカールには物足りなさを感じてしまう事だろう。

ロケーションは草原、森林地帯や砂漠地帯、寒冷地、熱帯などバリエーションがあり、雨などの天候の変化もあったりする。
しかし、天井があるハズの空間でも雨が降っていたりと細かい部分には粗さが見受けられる。

リリース当初は場面によってフレームレートが安定しない場合もあったが、アップデートにより動的な可変解像度に対応した。
可変解像度はNintendo Switch向けタイトルにおいて珍しいものではないが、本作の場合には設定にてユーザーが任意にON/OFFすることができるようになっている。
動的解像度をユーザーに委任させるケースはレアだ。

 

サウンド

BGMに関しては少し物足りなさを感じる。
特に耳に残るような印象的なフレーズは余り感じられないかも知れない。
しかし、単純接触効果によって記憶に残ると言う事は十分にあるだろう。

SE関連では一部の靴を装備すると足音が変化する場合もある点は面白い。

本作には声優のボイスコメントも参照する事が可能だ。
登場キャラクター全員分のコメントが寄せられており、声優ファンには非常に嬉しい要素だろう。

 

総評

ルーンファクトリー5はルーンファクトリーシリーズお馴染みの農業、畜産、工業、戦闘、恋愛など、1つ1つは荒々しい部分はありつつも広く浅い欲張りな作りが特徴的だ。
それでいてそれらを久しぶりの全面3Dで制作しきっているのは気合が感じられる。

荒々しさや粗さも気になるが、やり込むには十分な物量があるのは魅力的だ。
ただし、アップデートによって修正があるとは言え、たびたび発生するエラー落ちとそれによってそれまでの作業が吹き飛ばされてしまったのは困ったものだ。

 

外部記事

ルーンファクトリー公式ブログ

Nintendo Switch『ルーンファクトリー5』にて面白系バグ大量修正。デート前日に主人公が落下し続ける不具合など | AUTOMATON

『ルーンファクトリー5』次回アップデートにて、「同性恋愛/同性婚」を実装予定。シリーズ初 - AUTOMATON

【レビュー】ファイナルファンタジーⅥ

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仲間を求めて

ファイナルファンタジーⅥ(以下、FF6) はファイナルファンタジー(以下、FF)シリーズで最後のスーパーファミコン(以下、SFC)リリース作品であり、また最後の2Dドット主体のナンバリングタイトルだ。

筆者は物心ついた時から既に数種類のゲームハードがあり、ゲームソフトに関してもそれなりに持っていた。そのゲームソフトの中にFF6もあったのだ。
しかし、最初にプレイしたと思われる小学校の低学年の筆者には本作の魅力…どころか遊び方すら良く理解できておらず挫折していた記憶がある。
筆者が本作の魅力を理解できたのは2段階に分かれており、1回目はJRPGの遊び方を知った小学校の高学年のとき、そして更に魅力を深く知ったのは高校に入ってからだった。

今回は筆者がプレイする度に新たな魅力を認識していったFF6についてのレビューをしていこうと思う。
なお、今回のレビューで載せているスクリーンショットは特別な記載が無い限りはWiiUバーチャルコンソール版のものである。

 

ファイナルファンタジー6

ファイナルファンタジー6

  • 発売日:1994/04/02
  • メディア:Video Game
 
ファイナルファンタジーVI

ファイナルファンタジーVI

  • 発売日:1999/03/11
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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機械 x 魔法 = FF6

FF6は物語主導であり、クラシックなFFシリーズではオーソドックスな構造だ。
本作はスチームパンクな世界観を導入した初めてのFFで、後のシリーズにおいても大なり小なり精神的に引き継がれる重要な要素となっている。
つまり「魔法が存在するファンタジー世界でありながら、現実世界と近い機械文明が発展している」という「SF x ファンタジー」という構図となっているのだ。
一見すると矛盾しそうな組み合わせだが、実際には「魔法と言う存在に現実味を持たせる」ことに成功している。
我々が普段から目にしている機械と近いオブジェクトの存在がある事によって、魔法はそれとは明らかに異質な存在、あるいは超越した存在として理解しやすい。
描き方はどうあれ、このSFとファンタジーという組み合わせは以降のJRPGにおいて王道といっても差し支えの無いほどに浸透した世界設定の1つとなっている。

本作が他のFFシリーズと異なるポイントはそれ以外にも「群像劇」であると言うポイントも挙げられるだろう。
FF6では非常に多くの魅力的で個性的な仲間が登場する。
そして、そのキャラクターが仲間になる経緯や過去に何があったのかも含めて描かれているのだ。
キャラクターの多い本作であるが、パーティーメンバーに入れている人物によってイベント中のセリフなどが追加または変化する場面もあるなど容量の限られたSFC時代の作品では芸が細かいポイントも多い。

また、上図のオープニングシーンも素晴らしいポイントだろう。
通常のトップビューで描写される魔導アーマーでは無く、3体の魔導アーマーを後ろから描写した専用のドットアニメーションで始まる本作のオープニングは非常に印象的だ。
吹雪いている中を進軍するこのシーンは、これから起きる事になる激動の時代の緊迫感を見事に表現した素晴らしいオープニングシーンとなっている。

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キャラクターを掘り下げる印象的なイベント

筆者が特にお気に入りのキャラクターはセリスとカイエンだ。
セリスは本作の物語において最も変化したキャラクターであると言え、パーティー加入直後とストーリーの後半では口調も含めて徐々にそして大きく変化している。
カイエンのストーリーでは家族との絆と思い出が強く表現されており、魔列車や夢世界と言ったイベントは非常に切ない。
物語終盤のセッツァーの飛空艇入手のイベントも見逃せないイベントだろう。
同時に流れる感動的な音楽も相まって非常に印象的であり、FF6を象徴するようなシーンであると言えるだろう。

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ファンタジーを利用した現代風刺

ここからはネタバレを含む記載をするため、クラシックな作品とは言えネタバレが気になる人は次の項(システム)まで読み飛ばして貰った方が良いだろう。

本作は失われた魔法と言う存在を中心にストーリーが展開していく事となるが、その中に含まれるテーマの1つは「行き過ぎた技術革新への懸念」では無いかと思える。
敵として現れる狂人ケフカはその象徴ではないだろうか。
魔法を行使できるようになった代わりに狂人と化したケフカと言う存在はFF6発売当時の社会にあった戦争(当時のタイミングであれば湾岸戦争)や環境問題など「高度に機械化された社会」に対しての「不安(ネガティブ)」な側面を反映した「技術におけるネガティブな側面の化身」だと考えられる。

対して、生まれながらに魔法が行使できるティナはネガティブな側面を理解しつつも「高度/新規の技術と一緒に歩んでいく存在」であり「希望(新たな可能性)」の象徴だ。当時としてはポストモダン、現代においては「デジタルネイティブ」などに代表される存在と捉えても良いだろう。

そして、物語の進行と共に内面が大きく変化するセリスは「人は変わっていける」ことを象徴した存在であるように読み解ける。
本作で描いているのは「ネガティブに感じる世界であっても希望を見出す」ことであり、その答えをファンタジーと言う疑似世界を用いて表現したかったのではないかと感じるのだ。

このような「ファンタジー世界を介して現実世界の問題(アポリア)にアプローチしようとする手法」は今では廃れてしまったものの、かつてのスクウェアでは多くみられた物語表現手法と言えるだろう。 

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3章構成と捉える事が出来るストーリー

本作のストーリーは群像劇だが、その中でも大まかに「ティナ編」「ロック編」「セリス編」の3段階の章に分ける事ができると考えている(これには様々な意見があるとは思う)。

まず序章である第一章は「ティナ編」だ。
筆者がティナ編と定義しているのは物語の開始からティナの暴走するポイントまでだ。
そのポイントまでは失われたハズの魔法を扱うティナを中心として物語が展開する。

次にロック編だ。
暴走したティナを探すところから魔大陸攻略までで、魔法を使えない普通の人々が「魔法」という存在と向き合う事になるパートとなっている。

最後となるのはセリス編は世界崩壊後だ。
前述しているがセリスはFF6と言う作品において最も変化があったキャラクターであると言っても良いだろう。
仲間になって間もない頃は男勝りな口調で厳しい言葉をぶつける事も多いのだが、中盤にてロックとの交流によって徐々に変化が表れる。

群像劇でもある本作の物語は各章の軸となる人物を中心にして展開されていくような構成となっているのだ。

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最も印象的なオペラ

FF6において最も手が込んだイベントと言えば「オペラ劇場」だろう。
初見プレイにおいて本イベントは進行のために何が要求されるのかがわかりにくく、戸惑う作りである事はやや問題に感じるが筆者が指摘したいポイントはそこでは無い。
オペラが始まると劇場から離れた部屋へと行った際にBGM音量が抑えられるなど、インタラクティブミュージックと言えるような環境音楽への強いこだわりを垣間見せる。
また、崩壊後におけるシド死亡時イベントではオペラのイベントと対比させるような演出となっている所も見逃せないポイントだ。

 

システム

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バトルはFFのクラシックスタイルだ

FF6のバトルシステムはActive Time Battle(通称:ATB)と言われるもので、キャラクター(味方と敵)には1人1つのゲージが存在しており、そのゲージが最大までチャージされるとキャラクターが行動できるものだ。
これは単純なターン制バトルとは微妙に異なり、ゲージがチャージされれば行動できるため、チャージ速度さえあれば「敵が1回攻撃する間に、2回連続で行動できる」ケースも十分にある”非同期型ターン制バトル”とも言えるものになっている。
過去のFFシリーズを嗜んでいる人からすれば”お馴染み”のシステムだろう。

とは言えバトル自体はハッキリ言って大味感は否めない。
タイムアタックや縛りプレイでもしない限りは強力な武器あるいは強力な魔法を何も考えずに使っていくのが基本となり、「攻略方法を考えなくては突破できない」など工夫が必要となる事はまず存在しない。
キャラクターのレベルや装備にさえ注意すれば苦戦する事はほとんど無いだろう。
本作(と言うよりもクラシックなFFナンバリングシリーズの全体が)「バトル自体の楽しさ」よりも「レベルや装備などで強くなった事を実感する」と言う「プレイ時間と比例して成長する」ことを重視しているデザインであるように思える。
もっと単純に言ってしまえば「レベルを上げて(装備を整えて)殴る」だけで良いのだ。
このようなデザインは非常にシンプルであり、また一定の楽しさが含まれているのだが、何百・何千と戦闘が繰り返されると「戦闘が予定調和となり飽きやすい」と言う問題が発生してしまう。
言うなれば「ガム」のようなもので「最初こそオイシイ」ものの「噛めば噛むほどに味が無くなる」のだ。
そのため「バトルシステムが命」と感じているユーザーからすれば中盤か終盤頃には退屈になり、敵とのエンカウントにうんざりしてしまう事だろう。

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キャラクターには固有のコマンドが用意されている

FF6は多くの仲間が登場する作品だが、その個性は戦闘においても発揮される。
例えば"自称"冒険家のロックは「盗む」コマンドで敵からアイテムを頂戴する事ができ、ギャンブラーのセッツァーなら戦闘中に「スロット」を合わせてユニークな攻撃が行える。
このように各キャラクターにはそれぞれ固有のコマンドが用意されており、特殊な効果を発動する事ができるのだ。

またユニークなポイントとして、ロックの場合には専用の盗むコマンドを利用したイベントが用意されているのは面白いポイントだろう。
このようなキャラクターのコマンドを利用したイベントが随所にあれば、更に良かったようにも思えるが仕方ないだろう。

 

キャラクタービルド

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自分好みのキャラクタービルドも可能だ

FF6では物語の中盤頃に「魔石」と呼ばれるものが手に入る。
これを入手する事で全てのキャラクターに魔法を習得させる事ができるようになるのだが、この魔石の使い道はそれだけでは無い。
レベルアップ時に「ちから」や「すばやさ」といった基礎能力を向上させるものが存在するのだ。
これを利用して各キャラクターを自分好みのステータスにする事ができる。
本作はステータスなど特に気にせずとも装備さえ整っていれば問題なくクリアする事が可能であるため、あくまでも必須ではない「やり込み」と言うレベルの要素だ。

キャラクター性を活かしたような個性的なステータスを目指したり事はもちろんだが、「すばやさ」を重点的に鍛え上げ単純に強力なキャラクターを生み出すような育成もする事が可能だ。
ちなみに上図は筆者が出来る限りキャラクターの個性が出るように頑張ったデータとなっている。
基礎能力値を上げる魔石は物語の終盤にたくさん手に入るため、キャラクタービルドもしっかりと頑張りたい場合には序盤では極力レベルを上げずに進行して、魔石が充実した時点で一気にレベリングをすると良いだろう。
また、HPとMPのカンストに失敗する可能性も考慮してセーブデータを複数作っておく事も推奨する。
なお、上図のデータは後述する「ファイナルファンタジーⅥ アドバンス」のものだ。

 

ファイナルファンタジーⅥ アドバンス

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ファイナルファンタジーⅥ アドバンス

FF6にはゲームボーイアドバンスで発売(WiiUバーチャルコンソールでも配信)されたファイナルファンタジーⅥ アドバンスと言うタイトルも存在している。
こちらでは元々のFF6に存在したバグの修正や新規ダンジョン、新規装備、新規召喚獣の他、モンスター図鑑とミュージックプレイヤーの機能が追加されている。

ファイナルファンタジーVI アドバンス

ファイナルファンタジーVI アドバンス

  • 発売日:2006/11/30
  • メディア:Video Game
 

 

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モンスター図鑑とミュージックプレイヤー

リメイク版に関してはグラフィック自体には問題は感じないものの、BGMはハードスペックの関係からその域には達しておらず、制約の中でなんとか原作を再現しようと試みた事は伝わるのだがチープになっていると言わざるを得ないのは残念だ。
とは言え、サウンド面はチープになっているもののミュージックプレイヤーの機能が追加されているのは嬉しいポイントだ。
モンスター図鑑にしても敵のグラフィックやステータスがいつでも参照できるなどファンには嬉しい追加要素となっている。
なお、うっかり物語を進行してしまうとモンスター図鑑が全て埋め尽くせなくなるケースもあるためコンプリート癖のあるプレイヤーは注意されたい。

決して悪いリメイクでは無いため、新規要素を目当てにプレイしてみるのも良いだろう。
筆者としてはファイナルファンタジーⅥ アドバンスの解像度と音楽だけを差し替えたバージョンを是非とも発売して欲しいと願うばかりだ。

 

グラフィック

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美しいドット表現

FF6のグラフィックはSFCの末期の作品であるだけに非常に美しい史上でも最高レベルのドット表現だ。
バトル画面で映し出されるフィールドの美しさは想像力を掻き立てられるような壮大な仕上がりになっている。
生命力溢れる自然と崩壊した大地、中世では無い近代調の街並みなど美麗なドットによるフィールドの表現はどれも必見だ。

更にチョコボや飛空艇では疑似的な3Dのようにフィールドを見せる表現が行われたり、トロッコに乗るシーンでの一人称視点のような臨場感のある演出などSFC作品として踏み出した演出も多い。

 

サウンド

筆者がわざわざ言うまでも無い事ではあるが、FF6のBGMは歴史に残る伝説的なBGMのオンパレードだ。

クラシック音楽のような「予兆」

爽やかで寂しい草原に吹く風のような「ティナのテーマ」

ヒーロー感の強い「ロックのテーマ」

作中のオペラ楽曲のアレンジでもあり、物語の進行と共に優しさを知っていくセリスと言うキャラクター性をそのまま表現したような「セリスのテーマ」

孤高で気高く、そしてまた切なさのある和風曲「カイエンのテーマ」

明るく開けた世界を感じさせる「セッツァーのテーマ」

狂気と言う言葉が相応しい「魔導士ケフカ

街で遊ぶ子供達の姿が目に浮かぶような暖かな「街角の子供達」

ビデオゲームにおける戦闘曲の傑作「決戦」

エドガー・マッシュのテーマのアレンジであり、そのイベントと共に非常に感動的な「運命のコイン」

非常に印象に残る作中オペラ「序曲」「アリア」「婚礼のワルツ~決闘」「大団円」

機械の工場的な音によるリズムが特徴的な「魔導研究所」

風のノイズが崩壊後の絶望的な世界観を見事に表現した「死界」

初めて流れるイベントを含め、歴史に名を残す伝説的な「仲間を求めて」

最後を飾るに相応しい「妖星乱舞」「蘇る緑」

ここでは厳選した上記の曲を記載したが、筆者としては全ての曲を羅列したいぐらいの気持ちだ。

 

総評

ファイナルファンタジーⅥは後世のJRPGにも多大な影響を及ぼしたSFCを代表するRPGの傑作だ。

スチームパンクと魔法が織りなすメッセージ性のあるストーリーは美しいドット表現によって描かれる大自然と機械によって更に引き立てられている。
記憶に残るメロディの強い傑作が揃う音楽もゲームと寄り添っており、様々なシーンを盛り上げる演出として成功している。
特に本作が築いた「機械と魔法」という世界観はJRPGの代表的な世界観の1つにまで至っており言うまでもなく伝説的なゲームであると言えるだろう。

ただし、シリーズにおいて本作に限った話では無いがバトルはやや単調である事は否めない。中盤あるいは終盤にもなると代わり映えのしないバトルが面倒くさいと感じる事も多いだろう。

 

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【レビュー】ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス

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黄昏の姫君

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス(以下、TP)はゼルダの伝説 時のオカリナ以降の3Dゼルダファンにとって待望の作品であった。
今でこそ正当に評価できるのだが、当時はゼルダの伝説 風のタクトの強めのスタイライズされたビジュアルスタイルの方向性が受け入れられなかった時代で、TPのリアリスティック路線の絵柄は非常に嬉しかった。
世間どころか世界全体としても同様だったようで、外人4コマで有名なIGNの画像もオチに相当する画像は本作の発表を事前に伝えられていたものに起因している。現在はミームとしても広まっているためご存知の方も多い事だろう。
実際に公に発表したのはメディア向け時代の2004年のE3で、その模様は伝説的な盛り上がりだったと言って過言は無いだろう。
それらの反応のどれもが「時のオカリナ路線のゼルダの伝説への回帰」に対しての歓喜だったと感じている。
筆者としても「カッコいいリンク」が返ってきた事が非常に嬉しかったし、その上で今作は狼にまで変身可能との事で歓喜は最高潮だった。

なお、今回はWiiUにて発売されたゼルダの伝説 トワイライトプリンセスHDをベースにレビューを行っていく。

 

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス HD - Wii U

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス HD - Wii U

  • 発売日:2016/03/10
  • メディア:Video Game
 
ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス - Wii

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス - Wii

  • 発売日:2006/12/02
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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謎の少女ミドナを中心に動く物語

本作も「選ばれし勇者リンクがハイラル世界を救う」という大筋に違いはない。
主人公であるリンクは牧畜農業が盛んな田舎町トアル村で暮らす青年だ。
そんなある日、人間などの生き物が魂や魔物へと変貌してしまう現象「影の領域トワイライト」が発生し、リンクもその領域に取り残される。
トライフォースに選ばれた人物であるリンクは狼へと姿が変化してしまい、そのまま気を失ってしまう。
そんな中で謎の怪しい少女ミドナと出会い、トワイライトと化したハイラル全土を取り戻すためのリンクの冒険が始まる。

ストーリードリブンな作品群ではないゼルダの伝説シリーズではあるが、魅力的なキャラクターは多かった。それは本作も同様だ。
特にヒロインのポジションと言えるミドナは魅力的だ。
ミドナは「時のオカリナ」から続くナビィ的なポジションのアドバイスをするキャラクターであるが、口調は非常に生意気で個性が強く、しかしその奥底には他者への思いやりも存在しており可愛らしい。
また、少々ネタバレとなってしまうが、その真の姿の大人びた容姿は生意気な印象とのギャップあり更に魅力的だ。
物語はミドナを中心に描いており、序盤の行動や言動こそ自分中心に動く事が多いのだが、リンクやゼルダとの出会いによって徐々に心優しい一面が顔を覗かせる。
その他、ミドナ以外にも魅力的なキャラクターは多い。
度胸と根性がある頼れる女性テルマやロリータ衣装と極度の虫好きのアゲハなども魅力的で記憶に残る事だろう。
また、敵側のキャラクター性も個性的だ。
敵ながらリンクの実力を認めるキングブルブリン、非常にクセの強い言動が多いザント、悪役として大物の風格を漂わせるガノンドロフなどは印象的だ。

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黄昏の不気味さ、力の在り方

本作のストーリーのテーマとしては「復讐」や「力の在り方」について問うような内容が多くなっており、それを表現するためかホラーテイストも強めだ。
黄昏(トワイライト)という雰囲気もそのホラーテイストの空気感を強めている。

動物との関わるシーンが多いのも特徴的で、リンクは狼へと変身できるほか、馬や鷹を扱ったり、犬や猫を抱いたりする事ができる。狼状態であれば動物との会話が可能であったりもする。
メインストーリーでは動物の姿をした土地神のような存在から加護を受ける事にもなるなど、歴代でもとにかく動物たちとのインタラクトが多めだ。

とは言え、ストーリーをメインコンテンツとしてデザインしていない事もあり、細かい部分の説得力には欠けるところはある。
本作に考証しても納得できるだけの重厚で緻密なストーリーを求めるのは少々違う事は認識しておいた方が良いだろう。

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時のオカリナ”からの引用の多さはファンには嬉しい

TPは「時のオカリナ」にて分岐した世界線の中の「ムジュラの仮面」などを経た、いわゆる子供リンク世界線の世界となっている。
それを強く意識しているためか、本作では「時のオカリナ」「ムジュラの仮面」を彷彿とさせる要素が点在するのはファンとしてニヤリと出来るポイントだ。

また、シリーズの繋がりを考察する事が好きなゼルダファンにも嬉しい要素は存在する。
最も大きな考察ポイントは本作の中心となる種族「影の一族」だろう。
強力な魔力を有する彼らが封じられた影の世界は「時のオカリナ」にて分岐したゼルダシリーズ全ての世界線に存在する世界であると解釈できるため興味深い題材かも知れない。

 

システム

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時のオカリナ路線の到達点

TPの3Dアクションは時のオカリナから続く3Dゼルダ路線の到達点ともいえる内容だ。
操作する事になるリンクは少々小回りが利かない操作感なのは気になるが、プラットフォームアクションのゲームと言う訳では無いため大きなマイナスとなる事は無いだろう。
戦闘ではシリーズ同様に剣や弓矢などを駆使したアクションはもちろん、ロックオンする事で敵との距離感などを視認しやすくするカメラワークへと遷移する代名詞とも言えた注目システム、戦闘を軽快な展開作りにする「横っ飛び」や「バック宙返り」などは健在だ。
フィールド上に生えている草を刈ったり、看板を切ったりできるなどのゲームプレイとして意味がある訳では無いが、確かな手応えを感じさせる遊び心ある剣を使ったインタラクションも健在である点も嬉しい所だろう。

本作で拡張されたアクション要素も存在する。
例えば、上図のような馬上で剣を振って戦う騎馬戦が増えている。
また、探索によって増えていく特殊な「奥義」というアクションも追加されている。
奥義は習得して使いこなすことが出来れば敵を倒す際にかなり強力な選択肢となるため、取得しておいて損はないだろう。
その上、奥義を取得する際には「時のオカリナ」「ムジュラの仮面」のプレイヤーにとってご褒美ともいえるシーンもある。

ここまで書くと要素が多く感じられシリーズ初心者にとってはついていけるのか不安になるかも知れないが、チュートリアルもしっかりと導入されているので安心して大丈夫だ。
メインのストーリーを追う事がチュートリアルとして機能しているため、テキストだけで説明されたり、いきなり本番になるような事も無く、操作をしながら段階的にステップアップしていくようにデザインされている。

フィールド「ハイラル平原」は「時のオカリナ」と同様に各種街やダンジョンのハブとなる構造でかなり広大になっている点も特筆しておきたいポイントだ。
リンクで走り回り抜けようと思うとかなり時間がかかるが、狼や馬で駆け回るには十分な広さだ。広いハイラル平原は狼や馬で走り回るだけでも爽快感があり魅力がある。
もちろんファストトラベルのような機能もあるため、毎回広大なフィールドを走り回る必要は無い。

また、本作はGCWiiのいわゆる縦マルチで販売されたゲームで、モーションコントロールにも対応している。

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狼となって駆け回るのは爽快だ

既に何度も記載してしまっているが本作の特徴はリンクが狼に…いわゆるウルフリンクへと変身するという事だ。
狼化したリンクは戦闘の汎用性には欠けるところがあるが、比較的運動性能が高く操作していて気持ちの良いものとなっている。
また、動物的な直感を働かせる「センス」によって目では見えないものを視覚化して感じ取ったりといったアクションが行えるほか、動物とも会話ができるようになるユニークな能力も備えている。

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アイテム1つで起きるパラダイムシフト

フィールドやダンジョンは「時のオカリナ」から続く3Dである事を駆使した構造となっており、360°を全て見渡して探索する事が重要だ。
ダンジョンは1つのコンセプトを多角的に広げるようにして構築されている謎解きが主体となっているほか、燭台に火を灯したり、箱を動かして乗り場にしたりといった伝統的な謎解きも多くある。
謎解きは視線誘導や大切な要素が死角にならないように細かな配慮が見て取れる。
過去シリーズと同様で一度間違った捉え方をしてしまうとドツボにはまって進行できなくなってしまうが、そこまで理不尽な謎解きや操作を要求している事はないため冷静になって考え直すと良いだろう。

時のオカリナ」からの伝統ではあるが、アイテムを入手する事でフィールドの見え方が一変するパラダイムシフトは素晴らしい体験だ。
アイテムを1つ入手するだけで「あれが出来る」「あそこにも行ける」とそれまでになかった世界の見え方になり、視野が一気に広がるのだ。

プレイフィールに悪影響があるものではないのだが、設計上として気になる点があるとすれば消費アイテムの扱われ方だ。
ダンジョンに必要となる消費アイテムは、そのダンジョン内の宝箱に用意されている。
ユーザーフレンドリーを考えれば故ではあるのだが、ショップの存在意義、ひいてはゲーム内通貨ルピーの存在意義を揺るがしてしまう要素になってしまっている。
本作固有の設計上の問題点ではないのだが、どうするべきかは悩ましい所なのだろう。

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様々なサブ要素がやり込み心をくすぐってくれる

釣りや虫取りなどなど寄り道の要素も豊富だ。
釣り方に腰が入っていないのは違和感があるが、ついついプレイしてしまうようなものも多い。
釣った魚や捕った虫はコレクションとして見返す事ができ、コンプリートを目指す寄り道も良いだろう。

 

リマスター

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HD版の追加要素

WiiUにて発売されたHDリマスター版では「獣の試練」というものが追加され、ウルフリンクamiiboと連携させる事が可能になっている。
この試練で連携されたウルフリンクamiiboは「ゼルダの伝説 Breath of the Wild」にて使用する事で強めなウルフリンクを召喚する事ができる特典が付く。

フィールド上やダンジョン内ではMiiverseにて使用可能なハンコを入手できる探索要素が追加されている。
なお、Miiverse自体はサービスを終了しているため注意だ。
そのため、今からプレイする場合には単純なコレクションアイテムとしては獲得していく形となるだろう。

また、アイテムの切り替えなどがWiiU Game Padを使用する事でメニューを開かずに行える利便性もある。

 

グラフィック

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広大で不気味な空気感もあるフィールド

全体的にフォトリアルとスタイライズの中間的なデザインで、「時のオカリナ」路線のビジュアルスタイルだ。
全体的な色調はタイトルの通りのトワイライトを想起されるオレンジ色が多く、郷愁感のような切なさや不気味さを醸し出しているホラーテイストも特徴だ。
また、陰の領域と言われるトワイライト化した世界では雲の流れが速く、不気味さを増長させている。

水に濡れるとリンクが全体的に暗めの色調になり濡れた感じを演出したり、敵を全滅させた際に納刀すると専用モーションでかっこよく決める。
強風の時には腕で視界を隠すように風を防ぐようにするなどなど細かい部分も作り込まれており手応えに繋がっている。

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城下町はかなり賑わっている

全ての住人にインタラクト出来る訳では無いが、ハイラルで最も栄えている城下町で描画している人の多さは驚異的だ。

GCWiiのタイトルとしてはオブジェクトが数多く、また小ネタが仕込まれている場合もある。細かく作られているためじっくり観察して世界に浸るのも面白い。

 

サウンド

音楽も非常に魅力的で映像表現と同様にどこか不気味でありながらも切ない本作のテーマに沿った”黄昏時”を思わせるような楽曲が揃っている。
作中には「時のオカリナ」や「ムジュラの仮面」が出典のアレンジ楽曲が多く存在しファンにとって非常にエモーショナルな演出だ。
楽曲の使い方も昼夜のフィールド曲や戦闘曲にシームレスに変化するなどのインタラクティブミュージック的なものが本作でも採用されている

荘厳な雄々しさを感じさせる「ハイラル平原」

妖しさの中に郷愁感を覚える「ミドナのテーマ」

ピアノの旋律が切なく悲しい「傷だらけのミドナ

森で歌を教えてくれた妖精の子と同じニオイがする「森の聖域」

西部劇のようなカッコよさを表現した「忘れられた里」

SEのどこか不気味で不思議な印象を覚えるものが多く記憶に残りやすい
ボイスは時のオカリナ系列と同様に基本的にはリアクションボイスだけだが、可愛らしくも生意気なミドナのボイスは魅力的で、本作の旅にずっと付き添ってくれる相手としては最高だ。

 

総評

ゼルダの伝説 トワイライトプリンセスは3Dゲームのスタンダードを築き上げた伝説的な”時のオカリナ”の系譜の到達点となった作品だ。

魅力的なキャラクター達と不気味な雰囲気のある世界観、様々なやり込み要素も豊富で遊びの幅も広がっている。
ストーリーやダンジョン、BGMなどでのファンサービスもふんだんだ。
本作固有の革新性には乏しいかも知れないが、丹念に磨き上げられた品質によって突出したものとなっている。
クラシックタイプの3Dゼルダとして真っ先にオススメしたい一作だ。

 

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